説明

マルチワイヤ配線板の製造方法

【目的】配線の高密度化に優れ、かつ効率的なマルチワイヤ配線板の製造方法を提供すること。
【構成】予め導体回路を形成した基板又は絶縁基板の表面に、接着性樹脂層を設け、絶縁電線を前記接着性樹脂層に固定して必要な配線パターンを形成するマルチワイヤ配線板の製造方法において、前記配線パターンを第1の配線パターンと第2の配線パターンとに分割し、前記第1の配線パターンを形成した表面に、更に第2の接着性樹脂層を形成し、前記第2の配線パターンをその第2の接着性樹脂層の表面に形成すること。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、必要な配線パターンに絶縁電線を用いたマルチワイヤ配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】配線板の製造方法として、従来、予め導体回路を形成した基板又は絶縁基板の表面に、接着性樹脂層を設け、絶縁電線を前記接着性樹脂層に固定して必要な配線パターンを形成するマルチワイヤ配線板の製造方法が知られている。ところで、電子機器の発達に伴い、配線板にも多くの特性が要求されるようになってきている。マルチワイヤ配線板においても、更に配線密度を高めるために、2.54mmの格子間に3本あるいは、1.27mmの格子間に2本の縦横の配線を形成し、さらに45度斜め方向にも配線することが要求されている。
【0003】このような要求に対応するために、芯線と絶縁被覆層からなる絶縁電線の絶縁被覆層の表面に、予め導体回路を形成した基板又は絶縁基板の表面に設けられる接着性樹脂層と同じ種類の樹脂層を形成することが行われている。すなわち、従来の方法で、単に縦横方向に絶縁電線を固定しただけでは、絶縁電線の上にさらに固定される斜め方向の絶縁電線が接着されないことがあるためである。
【0004】また、前記配線パターンを第1の配線パターンと第2の配線パターンとに分割し、前記第1の配線パターンを形成した後に、その第1の配線パターンを加圧加熱プレスによって埋め込み、その上に、さらに前記第2の配線パターンを形成することが、特公平2−13835号公報によって開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の方法のうち、絶縁電線に接着性樹脂層を設ける場合、接着層の厚さは10〜15μmであり、これを超えた場合には、絶縁電線の直径が大きくなり過ぎて、機械による基板表面の接着層への固定が困難になることがあり、第1の配線パターンを埋め込んで、第2の配線パターンを形成する方法は、プレス後の第1の配線パターンの表面は、プレスによって平滑になってはいるものの、接着層までが薄くなっており、その表面に充分な接着力を持たせることが困難であった。
【0006】本発明は、配線の高密度化に優れ、かつ効率的なマルチワイヤ配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のマルチワイヤ配線板の製造方法は、予め導体回路を形成した基板又は絶縁基板の表面に、接着性樹脂層を設け、絶縁電線を前記接着性樹脂層に固定して必要な配線パターンを形成するマルチワイヤ配線板の製造方法において、前記配線パターンを第1の配線パターンと第2の配線パターンとに分割し、前記第1の配線パターンを形成した表面に、更に第2の接着性樹脂層を形成し、前記第2の配線パターンをその第2の接着性樹脂層の表面に形成することを特徴とする。
【0008】本発明の予め導体回路を形成した基板又は絶縁基板は、従来のマルチワイヤ配線板に用いるものが使用できる。また、接着性樹脂層は、従来のマルチワイヤ配線板に使用したものが使用できる。
【0009】この接着性樹脂層を形成する方法としては、直接、樹脂をスプレーコーティング、ロールコーティングやスクリーン印刷法により塗布することができ、また、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム等の転写用基材に塗布し乾燥してフィルム状になったものをラミネートして形成することもできる。このときに、接着性樹脂層の厚さは、50〜150μmが好ましく、50μm以下では、絶縁電線の埋め込み量が小さく、表面が平滑でなくなるために、第2の配線パターンをその上に固定することが困難となり、150μmを超えると、軟らかな接着性樹脂層が厚いために、固定した絶縁電線が固定後に移動し易くなる。
【0010】第2の接着性樹脂層も、前記接着性樹脂層と同様のものが使用でき、その厚さは、20〜150μmであることが好ましい。20μm以下であると、充分な接着力が得られず、150μmを超えた場合は、前記接着性樹脂層と同様に、固定した絶縁電線が固定後に移動し易くなる。
【0011】
【作用】配線パターンを第1の配線パターンと、第2の配線パターンに分け、第1の配線パターンを固定した後に、充分な接着力を持たせる接着性樹脂層を形成するので、配線板の厚さを厚くすることなく、配線密度を高めることができる。
【0012】
【実施例】実施例両面銅張り積層板であるMCL−E−168(日立化成工業株式会社製、商品名)の不要な銅箔をエッチング除去し、内層回路板とし、その表面にガラス布−エポキシプリプレグGEA−168NL(日立化成工業株式会社製、商品名)を重ね、加熱加圧して積層一体化し、厚さ50μmの接着性樹脂シートAS−102(日立化成工業株式会社製、商品名)をラミネートし、数値制御布線機を用いて、芯線径0.1mmでポリイミド被覆層を有する絶縁電線HAW(日立化成工業株式会社製、商品名)を、絶縁電線の中心間隔が0.305mmとなるように並列に固定し、さらに、その固定した絶縁電線と直角方向に、絶縁電線の中心間隔が0.305mmとなるように並列に固定し(図1(a)に示す。)、その表面に、厚さ20μmの接着性樹脂シートAS−102(日立化成工業株式会社製、商品名)をラミネートし(図1(b)に示す。)、芯線系0.1mmでポリイミド被覆層を有する絶縁電線HAW(日立化成工業株式会社製、商品名)を、絶縁電線の中心間隔が0.431mmとなるようにに固定した。この最後の絶縁電線は、前述の互いに直行する絶縁電線に対していずれの方向にも45度となるように、斜めに固定した(図1(c)に示す。)。
【0013】比較例絶縁電線に、芯線径0.1mmでポリイミド被覆層を有する絶縁電線HAW(日立化成工業株式会社製、商品名)の表面にさらに、接着性樹脂層を厚さ15μmに形成したものを用い、第2の接着性樹脂層を形成せずにすべての絶縁電線を固定した以外は、実施例1と同様にして作成した。
【0014】このようにして作成したサンプルは、実施例のものでは、良好に固定されていたが、比較例のものは、縦横方向の絶縁電線と斜め方向の絶縁電線との間に剥離が観察された。
【0015】
【発明の効果】いじょうに説明したように、本発明の方法によって、高密度で効率的なマルチワイヤ配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)はいずれも、本発明の一実施例における要部の断面図である。
【図2】従来例を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
1.絶縁基板 2.第1の接着性樹脂層
3.第1の配線パターン 4.絶縁電線の接着性樹脂層
5.第2の接着性樹脂層 6.第2の配線パターン
7.絶縁電線の接着性樹脂層 8.絶縁基板
9.接着性樹脂層 10.絶縁電線
11.絶縁電線の接着性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】予め導体回路を形成した基板又は絶縁基板の表面に、接着性樹脂層を設け、絶縁電線を前記接着性樹脂層に固定して必要な配線パターンを形成するマルチワイヤ配線板の製造方法において、前記配線パターンを第1の配線パターンと第2の配線パターンとに分割し、前記第1の配線パターンを形成した表面に、更に第2の接着性樹脂層を形成し、前記第2の配線パターンをその第2の接着性樹脂層の表面に形成することを特徴とするマルチワイヤ配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平6−120665
【公開日】平成6年(1994)4月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−266421
【出願日】平成4年(1992)10月6日
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)