説明

マレイミド官能基を含有するオキセタン化合物

本発明の化合物は、オキセタン官能基およびマレイミド官能基を含有する。オキセタン官能基は、カチオン性またはアニオン性の開環を経ることができる反応において単独重合することができ、マレイミド官能基は、単独重合または電子供与体化合物のような化合物と重合することができる。該二重の官能基は二重の硬化処理を可能にする。該化合物は構造[式中、Rはメチルまたはエチル基であり、Rは二価の炭化水素であり、XおよびYは、独立して、直接的結合、またはエーテル、エステル、アミドもしくはカルバメート官能基であり、Qは二価の有機基であり、ただし、XおよびYは、同時に直接的結合であることはない]を有する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、マレイミド官能基を含有するオキセタン化合物に関する。
【0002】
発明の背景
オキセタンは、カチオン性およびアニオン性の両方の開環単独重合を経ることができる反応性の高い環状エーテルである。マレイミド化合物は、フリーラジカル重合をすることができる。
【0003】
発明の概要
本発明は、オキセタン官能基およびマレイミド官能基を含有する化合物に関する。これらの化合物は、オキセタンがカチオン性もしくはアニオン性の開環を経ることができる反応において単独重合性を示すことができ、または電子供与体化合物のような化合物と重合性を示すことができる。二重の官能基は、二重の硬化処理、すなわち熱硬化または放射線硬化の両方を可能にする。この能力により、それらは、多くの用途、例えば、接着剤、コーティング、封入材および複合材での使用に関し興味深いものになっている。
【0004】
発明の詳細な記述
一態様において、本発明の化合物は、式
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、Rはメチルまたはエチル基であり;Rは二価の炭化水素であり;XおよびYは、独立して、直接的結合、またはエーテル、エステル、アミドもしくはカルバメート基であり;そしてQは二価の炭化水素である]により表されることができる。
【0007】
出発マレイミド化合物は、小分子、例えば、6−マレイミドカプロン酸、3−マレイミドプロピオン酸、N−(6−ヒドロキシヘキシル)マレイミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)マレイミド、およびN−(5−イソシアナトペンチル)マレイミドであることができ、または、例えば6−マレイミドカプロン酸もしくは3−マレイミドプロピオン酸を二官能性オリゴマーもしくはポリマー上の官能基1種と反応させることにより調製されるものを含有するオリゴマーもしくはポリマー材料であることができる。
【0008】
出発マレイミド化合物は、小分子であるかオリゴマーまたはポリマー材料であるかに関わらず、構造式
【0009】
【化2】

【0010】
により表されるマレイミド官能基と、出発オキセタン化合物上の第2の官能基に対し反応性を示す第2の官能基を含有する。例えば、先に開示したマレイミド出発材料は、マレイミド官能基に加えてカルボキシル、ヒドロキシルまたはイソシアナト官能基を含有する。
【0011】
出発オキセタン化合物は、小分子か、または、例えば以下に開示する小分子オキセタン出発化合物の1種を二官能性オリゴマーもしくはポリマー上の官能基1種と反応させることにより調製されるオリゴマーもしくはポリマー分子であることができる。どちらの場合も、それは、構造
【0012】
【化3】

【0013】
により表されるオキセタン官能基と、マレイミド出発化合物上の第2の官能基に対し反応性を示す第2の官能基を含有する。
【0014】
小分子である適切な出発オキセタン化合物としては、例えば、
(a)アルコール、例えば、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン;
【0015】
【化4】

【0016】
(b)当分野で公知のように(a)からのアルコールとCBrとの反応により調製することができるハロゲン化物、例えば、3−メチル−3−ブロモメチルオキセタン、3−エチル−3−ブロモメチルオキセタン;
【0017】
【化5】

【0018】
(c)当分野で公知のように二臭化アルキル化合物と(a)からのオキセタンアルコールとの反応から調製することができるハロゲン化アルキル、例えば、3−メチル−3−アルキルブロモメチルオキセタン、3−エチル−3−アルキルブロモメチルオキセタン;
【0019】
【化6】

【0020】
そして(d)p−トルエンスルホニルクロリドから調製することができるトシレート、例えば、3−メチル−3−トシルメチルオキセタン、3−エチル−3−トシルメチルオキセタン:
【0021】
【化7】

【0022】
が挙げられる。
【0023】
マレイミドおよびオキセタンを含有するより長鎖でより高分子量の化合物が望ましい場合、出発マレイミド化合物もしくは出発オキセタン化合物のいずれかまたは両方を、二官能性オリゴマーまたはポリマー材料との反応により伸長することができる。このオリゴマーまたはポリマー材料上の第2の官能基は、第1の反応がマレイミド出発化合物と二官能性オリゴマーまたはポリマー材料との間で起こる場合はオキセタン出発化合物に対し反応性を示さなければならず、第1の反応がオキセタン出発化合物と二官能性オリゴマーまたはポリマー材料との間で起こる場合はマレイミド出発化合物に対し反応性を示さなければならない。適切な市販用オリゴマーおよびポリマーの例としては、末端ヒドロキシル官能基を有するダイマージオールおよびポリ(ブタジエン)が挙げられる。
【0024】
オキセタンおよびマレイミド化合物の両方を二官能性オリゴマーまたはポリマーとの反応により伸長する場合、Qは、2種のオリゴマーまたはポリマー出発材料の反応に起因する官能基、例えば、エーテル、エステル、カルバメートまたは尿素官能基も含有することができる。
【0025】
一般に、オキセタンおよびマレイミド官能基を含有する本発明の化合物は、オキセタン官能基および第2の官能基を含有する出発化合物と、マレイミド官能基およびオキセタン化合物上の第2の官能基に対し反応性を示す第2の官能基を含有する出発化合物とを一緒に反応させることにより調製する。典型的な反応スキームには、周知の付加反応、置換反応および縮合反応が含まれる。
【0026】
他の態様において、本発明の化合物は、1種より多くのオキセタンおよび1種より多くのマレイミド官能基を含有するポリマー化合物を包含する。そのような化合物は、出発オキセタン化合物および出発マレイミド化合物に対し反応性を示す官能基が垂れ下がっている(depend from)ポリマー出発化合物から調製される。
【0027】
ポリマー化合物は、構造
【0028】
【化8】

【0029】
[式中、「ポリマー」は、オキセタンおよびマレイミド官能基が垂れ下がっているポリマー主鎖であり;mおよびnは、実施者により付加されるオキセタンおよびマレイミド官能基のレベルに伴い変動する整数で、典型的には2〜500であり;Rはメチルまたはエチルであり;Rは二価の炭化水素であり;そしてWおよびZは、独立して、連結官能基、例えばエーテル、カルボキシル、エステル、カルバメートまたは尿素であり、これは、ポリマー上のペンダント官能基と出発オキセタン化合物または出発マレイミド化合物上の対応する反応性官能基との反応により生じる]を有する。
【0030】
ポリマー上のペンダント官能基は、それ自体がポリマー主鎖から垂れ下がっている炭化水素、例えば1〜20個の炭素を有するものにより、ポリマー主鎖に接続されることができる。本明細書の目的に関し、それら垂れ下がっている部分はポリマー主鎖の一部であるとみなす。
【0031】
市販の適切なポリマー主鎖の例は、ペンダントヒドロキシル基を有するポリ(ブタジエン)である。ペンダントヒドロキシル基を、トシル脱離基を含有するオキセタン出発化合物および6−マレイミドカプロン酸と反応させることができる。この場合、連結基Wはエーテル官能基であり、Zはエステル官能基を含有する。
【0032】
他の例として、ペンダントカルボン酸官能基を有するポリ(ブタジエン)を、ヒドロキシルオキセタン出発材料のいずれかの上のヒドロキシル官能基およびN−(6−ヒドロキシヘキシル)マレイミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)マレイミド上のヒドロキシル官能基と反応させることができる。この場合、WおよびZ基はエステル官能基である。N−(5−イソシアナトペンチル)マレイミドをペンダントヒドロキシル基と反応させる場合、Z基はアミド官能基である。
【0033】
ポリマー出発材料は商業的に購入することができ、例えば、Zeon Chemicalsから入手可能なアクリロニトリル−ブタジエンゴムおよびJohnson Polymerから入手可能なスチレン−アクリルコポリマーがある。これらのポリマーからのペンダント官能基は、ヒドロキシルまたはカルボン酸官能基である。
【0034】
他の出発ポリマー材料は、当業者に公知の標準的重合技術を用いてアクリルおよび/またはビニルモノマーから合成することができる。適切なアクリルモノマーとしては、3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和モノおよびジカルボン酸と、アクリル酸エステルモノマー(アルキル基が1〜14個の炭素原子を含有するアクリル酸およびメタクリル酸のアルキルエステル)が挙げられる。
【0035】
例は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、n−オクチルアクリレート、n−ノニルメタクリレート、およびそれらの対応する分枝異性体、例えば2−エチルヘキシルアクリレートである。適切なビニルモノマーとしては、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、およびエチレン的に不飽和な炭化水素のニトリルが挙げられる。例は、酢酸ビニル、アクリルアミド、1−オクチルアクリルアミド、アクリル酸、ビニルエチルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、無水マレイン酸およびスチレンである。
【0036】
他のポリマー出発材料は、当業者に公知の標準的重合技術を用いて共役ジエンおよび/またはビニルモノマーから調製することができる。適切な共役ジエンモノマーとしては、ブタジエン−1,3,2−クロロブタジエン−1,3、イソプレン、ピペリレンおよび共役ヘキサジエンが挙げられる。適切なビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、イタコン酸およびアクリル酸が挙げられる。
【0037】
当業者なら、それらモノマーの適切な組合わせおよびその後の反応を選択するのに十分な専門的技術を有しており、本明細書に開示するようなオキセタンおよびマレイミド官能基を付加するために、ペンダント官能基、例えば、ヒドロキシルおよびカルボキシル官能基を付加することができる。
【0038】
実施例
実施例1:エチルオキセタンマレイミドの調製
【0039】
【化9】

【0040】
250mL容4首丸底フラスコに、機械的撹拌機、温度計、窒素パージおよび緩慢添加(slow-addition)漏斗を備え付けた。6−マレイミドカプロン酸(MCA)(25.59g、0.1213モル)、3−エチル−3−オキセタンメタノール(14.10g、0.1213モル)、4−ジメチルアミノピリジン(1.5g、0.0121モル)およびトルエン(60mL)をフラスコに入れると、微量の不溶固体を含む暗金色溶液が得られた。フラスコの内容物を混合しつつ0〜5℃に冷却した。その後、1,3−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC、25.00g、0.1213モル)およびトルエン(20mL)から調製した溶液を緩慢添加漏斗に入れた。DCC/トルエン溶液を、反応温度を10〜15℃に保持しつつ30分かけてフラスコに加えた。
【0041】
撹拌を10〜15℃で6時間にわたり続けた後、薄層クロマトグラフィー(1/1 酢酸エチル/ヘキサン)は、オキセタンとDCCがともに消滅したことを示した。反応を停止し、白色固体を赤橙色溶液から濾過した。次に、この反応溶液を相当体積の飽和重炭酸ナトリウム溶液で3回洗浄した。その後、トルエンを減圧下で反応物から取り除き、酢酸エチルおよびヘキサンの溶液(体積基準で1/1)で置き換えた。その後、クロマトグラフィーカラムを用いて、270cPの粘度を有する定性的量の透明な黄色オイルを単離した。該化合物は、TGAにより測定して200℃で15%の重量減量を有していた。
【0042】
【数1】

【0043】
実施例2:メチルオキセタンマレイミドの調製
【0044】
【化10】

【0045】
メチルオキセタンマレイミドの出発化合物は、構造
【0046】
【化11】

【0047】
を有するマレイミドカプロン酸クロリドであり、以下のように調製される。500mL容4首丸底フラスコに、冷却器、機械的混合機、温度計および高温の油浴を備え付けた後、マレイミドカプロン酸(MCA)(40.00g、0.1896モル)、ジメチルホルムアミド(3滴)およびトルエン(125mL)を入れた。フラスコの内容物を85℃に加熱し、すべての固体が溶解するまで混合した。次に、高温の溶液を、機械的混合機、バブラー(bubbler)、緩慢添加漏斗および氷浴を取り付けた同様のフラスコにデカントした。その後、反応溶液を混合しつつ冷却した。
【0048】
塩化オキサリル(36.09g、0.2844モル)を、5〜10℃の反応温度を保持しつつ緩慢添加漏斗を介して反応フラスコに加えた。塩化オキサリルの添加後、氷浴を取り外し、反応物をそのまま室温まで温めた。反応温度が上昇したときに、バブラーはガスが発生していたことを示した。反応物をそのまま一晩混合すると、非常に暗い色の溶液が得られた。その後、それを1L容単首(single-neck)丸底フラスコにデカントし、減圧下でトルエンを取り除いた。その後、トルエン(200mL)をフラスコに加え、3回ストリッピングして酸度を低下させた。生成物はマレイミドカプロン酸クロリドであった。
【0049】
3−メチル−3−オキセタンメタノール(19.36g、0.1896モル)、トリエチルアミン(19.19g、0.1896モル)、4−ジメチルアミノピリジン(2.32g、0.0190モル)およびジクロロメタン(175mL)を、磁気撹拌子、緩慢添加漏斗、乾燥管および氷浴を備え付けた500mL容4首丸底フラスコ中で混合させた。窒素パージを用いてフラスコ内の湿潤空気を置き換えた。その後、反応溶液を混合しつつ10℃まで冷却し、25mLジクロロメタン中のマレイミドカプロン酸クロリド(43.4g、0.1896モル)の溶液を、この温度を保持するのに十分緩慢な速度で加えた。
【0050】
添加後、得られた暗褐色溶液を一晩室温で混合した。薄層クロマトグラフィー(1/1体積、酢酸エチル/ヘキサン)は、マレイミドカプロン酸クロリドの消滅に基づき反応が完了していることを示した。白色固体を反応溶液から濾過した後、これを蒸留水で4回洗浄した(各回300mL)。塩化メチレンを回転蒸発(roto-evaporation)を介して反応溶液から取り除き、酢酸エチル/ヘキサン溶液(体積基準でそれぞれ2/1)で置き換えた。その後、暗褐色溶液をシリカゲルのカラムに通して精製した。次に、溶媒を減圧下で取り除くと、750cPの粘度を有する透明な橙色の生成物が得られた。該化合物は、TGAにより測定して200℃で8%の重量減量を有していた。
【0051】
【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタンおよびマレイミド官能基を含有し、構造
【化1】

[式中、
は、メチルまたはエチル基であり、
は、二価の炭化水素であり、
XおよびYは、独立して、直接的結合、またはエーテル、エステル、アミドもしくはカルバメート官能基であり、
Qは、二価の有機基であり、
ただし、XおよびYは、同時に直接的結合であることはない]
を有する化合物。
【請求項2】
構造
【化2】

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
オキセタンおよびマレイミド官能基を含有し、構造
【化3】

[式中、
ポリマーは、ポリマー主鎖であり、
mおよびnは、2〜500の整数であり、
は、メチルまたはエチルであり、
は、二価の炭化水素であり、
WおよびZは、独立して、エーテル、カルボキシル、エステル、アミドまたはカルバメート官能基である]
を有する化合物。

【公表番号】特表2007−502859(P2007−502859A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532450(P2006−532450)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/012385
【国際公開番号】WO2004/101550
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】