説明

マンコンベヤの床板装置

【課題】化粧板および裏板を塗装するときの作業効率を向上させることができるマンコンベヤの床板装置を得る。
【解決手段】文字が表された文字板10が嵌められる貫通した嵌合孔11aが形成された化粧板11と、化粧板11の裏面に重ねて設けられた裏板12とを備え、嵌合孔11aの内壁面に隣り合う裏板12の部分には、貫通孔12bが形成されている。嵌合孔11aの内壁面の形状は、化粧板11に垂直な方向から視たときに、四角形状であり、貫通孔12bは、嵌合孔11aの内壁面の角部に隣り合うように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マンコンベヤの乗降口に設けられるマンコンベヤの床板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホールカバーを備えたエスカレータの床板装置が知られている。マンホールカバーは、文字が表された文字板と、この文字板が嵌められる嵌合孔が形成された化粧板と、この化粧板の裏面に重ねて設けられた裏板とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−61170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化粧板および裏板を塗装するためには、文字板を化粧板の嵌合孔に嵌めずに、化粧板と裏板とを重ねた状態で、塗料が溜められた塗料槽の中に化粧板および裏板を入れて、化粧板および裏板を塗料に浸す。その後、化粧板および塗料を塗料槽から取り出して、余分な塗料を化粧板および塗料から落下させる。しかしながら、化粧板と裏板との間に浸入した余分な塗料は、化粧板および塗料を塗料槽から取り出した後に、化粧板と裏板との間をゆっくりと流れる。化粧板と裏板との間を流れる余分な塗料の一部は、嵌合孔を通って化粧板の表面をゆっくりと流れる。これにより、化粧板の表面には塗料垂れが発生してしまう。その結果、化粧板および裏板を塗装するためには、化粧板および裏板を塗装した後に、ヤスリ等を用いて化粧板の表面に発生した付着した余分な塗料を取り除き、さらに、補修のために、塗料が取り除かれた化粧板の表面の一部に塗料を再び塗らなければならず、作業効率が悪いという問題点があった。
【0005】
この発明は、化粧板および裏板を塗装するときの作業効率を向上させることができるマンコンベヤの床板装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るマンコンベヤの床板装置は、記号が表された記号板が嵌められる貫通した嵌合孔が形成された化粧板と、前記化粧板の裏面に重ねて設けられた裏板とを備え、前記嵌合孔の内壁面に隣り合う前記裏板の部分には、貫通孔または前記化粧板側に開口する凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るマンコンベヤの床板装置によれば、嵌合孔の内壁面に隣り合う裏板の部分には、貫通孔または化粧板側に開口する凹部が形成されているので、塗料槽から化粧板および裏板を取り出すときに、化粧板と裏板との間に浸入した塗料が嵌合孔から化粧板の表面に流れ出ることが抑制される。これにより、化粧板と裏板との間に浸入した塗料が化粧板の表面を流れることが抑制される。したがって、化粧板および裏板を塗装した後にヤスリ等を用いて化粧板の表面に付着した塗料を取り除く作業を削減することができ、化粧板および裏板を塗装するときの作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレータを示す側面図である。
【図2】図1のエスカレータを示す平面図である。
【図3】図1のマンホールカバーを示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
【図5】図3のマンホールカバーを示す分解斜視図である。
【図6】図3の化粧板、裏板および補強部材を示す平面図である。
【図7】図6の化粧板および裏板の要部を示す平面図である。
【図8】図3の化粧板、裏板および補強部材を塗装する手順を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るエスカレータの床板装置の裏板を示す斜視図である。
【図10】図9のX−X線に沿った矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータ(マンコンベヤ)を示す側面図、図2は図1のエスカレータを示す平面図である。図において、建物の上階床と下階床との間には、主枠1が掛け渡されている。主枠1は、上階側水平部(図示せず)と、下階側水平部1aと、上階側水平部と下階側水平部1aとの間に位置する傾斜部1bとを有している。下階側水平部1aには、機械室1cが設けられている。
【0011】
主枠1には、ガラス製の欄干パネル2aを有した一対の欄干2が主枠1の長手方向に延びて設けられている。また、主枠1には、複数の踏段3が上階側水平部および下階側水平部1aの間を循環移動可能に設けられている。また、主枠1には、一対の手摺案内レール(図示せず)が主枠1の長手方向に延びて設けられている。各手摺案内レールには、ゴム製の手摺4が循環移動可能に設けられている。
【0012】
下階側水平部1aの上部には、床板装置(マンコンベヤの床板装置)5が設けられている。床板装置5は、主枠1に取り付けられたブラケット(図示せず)に支持されている。床板装置5は、櫛板6と、ランディングプレート7と、マンホールカバー8とを備えている。櫛板6、ランディングプレート7およびマンホールカバー8のそれぞれは、同一平面上に配置されている。櫛板6は、櫛部本体6aと、櫛部本体6aに設けられ踏段3の踏板に形成された溝と噛み合う櫛部6bとを有している。ランディングプレート7は、櫛板6よりも踏段3から離れるように櫛板6に隣接して配置されている。マンホールカバー8は、ランディングプレート7よりも踏段3から離れるようにランディングプレート7に隣接して配置されている。下階床と床板装置5との間には、目地9が設けられている。
【0013】
図3は図1のマンホールカバー8を示す斜視図、図4は図3のIV−IV線に沿った矢視断面図である。図において、マンホールカバー8は、文字(記号)が表された文字板(記号板)10と、上面が文字板10の上面と同一平面上に配置された化粧板11と、化粧板11の裏面に重ねて設けられた裏板12と、裏板12の裏面に設けられた補強部材13と、文字板10を裏板12に固定するナット14とを備えている。
【0014】
図5は図3のマンホールカバー8を示す分解斜視図である。図において、文字板10は、文字板本体10aと、文字板本体10aの裏面に設けられた4個のスタットねじ部10bとを有している。文字板本体10aの形状は、文字板本体10aに垂直な方向から視たときに四角形状となっている。化粧板11には、文字板10が嵌められる貫通した嵌合孔11aが形成されている。嵌合孔11aの形状は、文字板本体10aの形状に合うように、化粧板11に垂直な方向から視たときに四角形状となっている。裏板12には、文字板10が嵌合孔11aに嵌められているときにスタットねじ部10bが挿入される4個の挿入孔12aが形成されている。挿入孔12aは、裏板12を貫通している。ナット14(図4)は、挿入孔12aに挿入されたスタットねじ部10bに取り付けられている。これにより、文字板10が裏板12に固定される。補強部材13は、マンホールカバー8の横幅方向に複数個並べて配置されている。
【0015】
図6は図3の化粧板11、裏板12および補強部材13を示す平面図である。図において、裏板12には、裏板12の厚さ方向に裏板12を貫通する4個の貫通孔12bが形成されている。貫通孔12bのそれぞれは、化粧板11の厚さ方向に、化粧板11の嵌合孔11aの内壁面の角部に隣り合うように配置されている。
【0016】
図7は図6の化粧板11および裏板12の要部を示す平面図である。化粧板11の表面には、利用者のための滑り防止用の模様部15が形成されている。模様部15は、複数の凸部15aと、各凸部15aの間に配置された溝部15bとを有している。
【0017】
図8は図3の化粧板11、裏板12および補強部材13を塗装する手順を説明するための図である。図において、化粧板11、裏板12および補強部材13を塗装する場合には、まず、スポット溶接または接着剤による接着などにより、化粧板11を裏板12の表面に固定する。また、同様にして、補強部材13を裏板12の裏面に固定する。
【0018】
その後、塗料が溜められた塗料槽16の中に、化粧板11、裏板12および補強部材13を入れて、化粧板11、裏板12および補強部材13を塗料に浸す。
【0019】
その後、化粧板11が裏板12よりも上方に位置するように、化粧板11、裏板12および補強部材13を塗料槽16の外に取り出す。このとき、化粧板11と裏板12との間に浸入した塗料は、化粧板11と裏板12との間を流れ、貫通孔12bを通って垂れ落ちる。貫通孔12bは、化粧板11の嵌合孔11aの内壁面の角部に隣り合うように配置されているので、化粧板11の嵌合孔11aの内壁面に沿って流れる塗料が裏板12から容易に落下する。これにより、化粧板11と裏板12との間に浸入した塗料が嵌合孔11aを通って化粧板11の表面に流れ出ることが抑制される。その結果、化粧板11と裏板12との間に浸入した塗料が化粧板11の表面を流れることが抑制される。
【0020】
その後、化粧板11、裏板12および補強部材13を乾燥することにより、化粧板11、裏板12および補強部材13の塗装が終了する。
【0021】
化粧板11、裏板12および補強部材13の塗装が終了した後、嵌合孔11aに文字板10を嵌めて、ナット14を用いて、文字板10を裏板12に固定することのより、マンホールカバー8が製造される。
【0022】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエスカレータの床板装置5によれば、嵌合孔11aの内壁面に隣り合う裏板12の部分には、貫通孔12bが形成されているので、塗料槽16から化粧板11および裏板12を取り出すときに、化粧板11と裏板12との間に浸入した塗料が嵌合孔11aから化粧板11の表面に流れ出ることが抑制される。これにより、化粧板11と裏板12との間に浸入した塗料が化粧板11の表面を流れることが抑制される。したがって、化粧板11および裏板12を塗装した後に、ヤスリ等を用いて化粧板11の表面に付着した塗料を取り除く作業を削減することができ、化粧板11および裏板12を塗装するときの作業効率を向上させることができる。
【0023】
また、嵌合孔11aの内壁面の形状は、化粧板11に垂直な方向から視たときに、四角形状であり、貫通孔12bは、嵌合孔11aの内壁面の角部に隣り合うように配置されているので、化粧板11の嵌合孔11aの内壁面に沿って流れる塗料を裏板12から容易に落下させることができる。これにより、化粧板11と裏板12との間に浸入した塗料が嵌合孔11aを通って化粧板11の表面に流れ出ることをより確実に抑制することができる。
【0024】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2に係るエスカレータの床板装置5の裏板12を示す斜視図、図10は図9のX−X線に沿った矢視断面図である。図において、裏板12には、実施の形態1の貫通孔12bとは異なり、化粧板11側に開口する4個の凹部12cが形成されている。凹部12cのそれぞれは、化粧板11の嵌合孔11aの内壁面の角部に隣り合うように配置されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0025】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るエスカレータの床板装置5によれば、嵌合孔11aの内壁面に隣り合う裏板12の部分には、化粧板11側に開口する凹部12cが形成されているので、実施の形態1の床板装置5と同様に、塗料槽16から化粧板11および裏板12を取り出すときに、化粧板11と裏板12との間に浸入した塗料が嵌合孔11aから化粧板11の表面に流れ出ることが抑制され、また、実施の形態1の床板装置5と比較して、裏板12の強度を向上させることができる。
【0026】
なお、各上記実施の形態では、マンコンベヤとして、エスカレータを例に説明したが、動く歩道であってもよい。
【0027】
また、各上記実施の形態では、文字板本体10aの形状が、文字板本体10aに垂直な方向から視たときに四角形状となる構成について説明したが、その他の多角形状であってもよく、また、多角形状に限らず、円形状や楕円形などであってもよい。
【0028】
また、各上記実施の形態では、貫通孔12bまたは凹部12cが化粧板11の嵌合孔11aの内壁面の角部に隣り合うように配置されている構成について説明したが、これに限らず、化粧板11の嵌合孔11aの内壁面に隣り合う裏板の部分に貫通孔12bまたは凹部12cが配置された構成であればよい。
【0029】
また、各上記実施の形態では、文字が表された文字板10を例に説明したが、これに限らず、記号が表された記号板であればよい。
【0030】
また、各上記実施の形態では、化粧板11、裏板12および補強部材13の全てを備えた床板装置5について説明したが、補強部材13を備えず、化粧板11および裏板12を備えた床板装置であってもよい。
【0031】
また、各上記実施の形態では、化粧板11、裏板12および補強部材13を塗料槽16内の塗料に浸して、化粧板11、裏板12および補強部材13を塗装する方法について説明したが、化粧板11、裏板12および補強部材13を塗料槽16内の塗料に浸した後、電着塗装により、化粧板11、裏板12および補強部材13を塗装する方法であってもよい。
【0032】
また、各上記実施の形態では、下階側水平部1aに設けられる床板装置5について説明したが、上階側水平部に設けられる床板装置であってもよい。
【0033】
また、各上記実施の形態では、床板装置5の化粧板11および裏板12として、マンホールカバー8における化粧板11および裏板12を例に説明したが、ランディングプレート7における化粧板および裏板であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 主枠、1a 下階側水平部、1b 傾斜部、1c 機械室、2 欄干、2a 欄干パネル、3 踏段、4 手摺、5 床板装置(マンコンベヤの床板装置)、6 櫛板、6a 櫛板本体、6b 櫛部、7 ランディングプレート、8 マンホールカバー、9 目地、10 文字板、10a 文字板本体、10b スタットねじ部、11 化粧板、11a 嵌合孔、12 裏板、12a 挿入孔、12b 貫通孔、12c 凹部、13 補強部材、14 ナット、15 模様部、15a 凸部、15b 溝部、16 塗料槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記号が表された記号板が嵌められる貫通した嵌合孔が形成された化粧板と、
前記化粧板の裏面に重ねて設けられた裏板とを備え、
前記嵌合孔の内壁面に隣り合う前記裏板の部分には、貫通孔または前記化粧板側に開口する凹部が形成されていることを特徴とするマンコンベヤの床板装置。
【請求項2】
前記嵌合孔の内壁面の形状は、前記化粧板に垂直な方向から視たときに、多角形状であり、
前記貫通孔または前記凹部は、前記内壁面の角部に隣り合うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のマンコンベヤの床板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−20799(P2012−20799A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157669(P2010−157669)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】