説明

マンホールの止水構造、その止水構造を用いたマンホールの組立方法及びそのマンホール

【課題】簡易な構造でシール部材を所定の位置に付設することが可能で、雌雄端部の取付後において安定した止水性能を得ることが可能な、マンホールの止水構造及びそのマンホールの組立方法及びそのマンホールを提供すること。
【解決手段】マンホールピースの雌端部の下面に堤体を設け、一方のマンホールピースの前記雌端部の下面に、前記シール部材を当該シール部材の上面が前記堤体の上面より突出するように付設する。その後他方のマンホールピースの雄端部の頂面を前記一方のマンホールピースに付設したシール部材に突き当てて、前記シール部材の移動を拘束しながら前記他方のマンホールピースの雄端部と前記一方のマンホールピースの雌端部との間の間隙を止水することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの止水構造、その止水構造を用いたマンホールの組立方法及びそのマンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンホールは管渠工事の合理化、すなわち作業時における運搬性や施工性などの面から、円筒形状のマンホールを複数のピース(分割体)に分割し、当該マンホールピースを上下に組み立て、当該マンホールピースの各端部間の継手面には、弾性体などのシール部分を介在させて止水性を確保する組み立て式のマンホールがよく知られている。
【特許文献1】実開昭58−11227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のマンホールの止水構造、マンホールの組立方法及びそのマンホールにあっては、以下のような問題があった。
(1)マンホールピースの一方の端部(雌端部)と他方の端部(雄端部)との接合時に、シール部材が雄端部との圧接による外力を受けることによってシール部材の取り付け位置が所定の位置からずれてしまい、安定した止水性能が得られない。
(2)シール部材を雌端部に取り付ける際に付設位置が所定の位置からずれることを防止するため、付設位置の目印を別途雌端部に設ける必要があった。
(3)雌端部に取り付けられたシール部材が雄端部によって圧接された際に生じる弾性変形が取付けの度に異なり止水性能に固体差が生じやすい。また、上記問題の対策としてシール部材を余分に大きくする必要が生じ経済性が悪化する。また、マンホールピースの雌雄嵌合時により大きな押圧力が必要となるため施工性も悪化する。
【0004】
本発明は、上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、簡易な構造で、シール部材を所定の位置に付設することができ、マンホールの組立後において安定した止水性能を得ることが可能なマンホールの止水構造、その止水構造を用いたマンホールの組立方法及びそのマンホールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願の第1発明は、上縁内周部に雌端部を設けかつ下縁内周部に雄端部を設けるマンホールピースを複数用い、一方のマンホールピースの雄端部と他方のマンホールピースの雌端部とをシール部材を介して夫々組み合わせる工程を繰り返してマンホールを形成する、マンホールの止水構造において、前記マンホールピースの雄端部及び雌端部は、頂面と傾斜面と下面とからなり、前記雌端部の下面に堤体を設けてあり、前記シール部材が、当該シール部材の弾性変形を許容するように前記他方のマンホールピースの雌端部の傾斜面と堤体との間の下面に付設してあるとともに、前記一方の端部の雄端部の頂面が突き当てられることにより、当該シール部材が弾性変形して前記一方の端部の雄端部と前記他方の端部の雌端部と間の間隙を止水することを特徴とする、マンホールの止水構造であることを要旨としている。
また、本願の第2発明は、前記シール部材の上面に単数或いは複数の窪み部を設けてあることを特徴とする、本願の第1発明に記載のマンホールの止水構造であることを要旨としている。
また、本願の第3発明は、前記シール部材の内部に単数或いは複数の空洞部を設けてあることを特徴とする、本願の第1発明又は第2発明に記載のマンホールの止水構造であることを要旨としている。
また、本願の第4発明は、本願の第1発明乃至第3発明の何れかに記載のマンホールの止水構造を用いたマンホールピースを夫々組み合わせて形成するマンホールの組立方法において、一方のマンホールピースの前記雌端部の下面に前記シール部材を当該シール部材の上面が前記堤体の上面より突出するように付設し、他方のマンホールピースの雄端部の頂面を前記一方のマンホールピースに付設したシール部材に突き当てて、前記他方のマンホールピースの雄端部と前記一方のマンホールピースの雌端部との間の間隙を止水することを特徴とする、マンホールの組立方法であることを要旨としている。
また、本願の第5発明は、本願の第1発明乃至第3発明の何れかに記載のマンホールの止水構造を用いたマンホールピースを夫々組み合わせて形成するマンホールであって、一方のマンホールピースの前記雌端部の下面に前記シール部材を当該シール部材の上面が前記堤体の上面より突出するように付設してあり、他方のマンホールピースの雄端部の頂面を前記一方のマンホールピースに付設したシール部材に突き当てて、前記他方のマンホールピースの雄端部と前記一方のマンホールピースの雌端部との間の間隙を止水してあることを特徴とする、マンホールであることを要旨としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によると下記の効果のうち、少なくとも一つを得ることができる。
(1)マンホール組立時の押圧力によってシール部がめくれたりずれようとしても、堤体によってシール部の移動が拘束されるため安定した止水性能が得られる。
(2)雌端部の下面と堤体とで段差が生ずるため、正確な位置にシール部材を取り付けることができる。また、前記下面に接着剤を塗布する場合においても、接着剤の塗布位置が定まるほか、接着剤の不要なはみ出しも防止できる。
(3)シール部材の窪み部に雄端部の頂面を突き当ててインロー嵌合することにより、当該窪み部が当該シール部材の弾性変形の方向を案内を促進し、所望の弾性変形が得られる。
(4)シール部材の空洞部によって当該シール部材の弾性が高められるため継手間におけるシール部材の密着性が向上し、止水性能がより高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0008】
<1>全体構成
本発明に使用されるマンホールピースは、上縁内周部に雌端部1を設けかつ下縁内周部に雄端部2を設けてあり、前記マンホールピースの雄端部2及び雌端部1は、頂面2c、1cと傾斜面2d、1dと下面2e,1eとからなり、一方のマンホールピースの雄端部2と他方のマンホールピースの雌端部1とを突き合わせてインロー嵌合するとともに、当該2つのマンホールピースの間にシール部材3を介して夫々組み合わせることによってマンホールが形成される。
なお、雄端部2については、後述する雌端部1の説明と合わせて説明する。
【0009】
<2>雌端部1
図1の本発明に係るマンホールの止水構造の断面概略図を参照しながら、本発明のマンホールの止水構造に係るマンホールピースの雌端部1について説明する。
なお、本発明のマンホールの止水構造は、図1に示す当該止水構造をマンホールの全周にわたって連続的に設けたものであることは言うまでもない。
【0010】
[頂面]
前記頂面1cは、当該マンホールピースの外周面1a側に設けられ、他方のマンホールピースの雄端部2に設けた下面2eと対向するように設けられる。前記頂面1cは当該マンホールの軸方向に垂直であってもよいし、他方のマンホールピースとの嵌合後に、当該他方のマンホールピースの下面2eと干渉しない程度に傾斜を設けておいても良い。
インロー嵌合時において、互いの内周面1b、2bに段差を設けていない場合においては、前記頂面1cの幅は、当該他方のマンホールピースの雄端部の下面2eの幅以下とする。
【0011】
[下面]
前記下面1eは、当該マンホールピースの内周面1bに設けられ、他方のマンホールピースの雌端部に設けた頂面2cと対向するとともに、他方のマンホールピースとインロー嵌合可能なように、雌端部1の頂面1cから下方に段差を設けた位置に設けてある。
【0012】
[傾斜面]
前記傾斜面1dは、前記下面1eと前記頂面1cとの段差間の面であって、前記頂面1cから前記下面1eに向かって当該マンホールの軸方向から若干勾配を設けて形成される。
【0013】
[堤体]
また、雌端部1の下面1eの内周面1b側には、当該下面1eの一部が突出した状態、すなわち上方に段差を設けるように形成された堤体11が設けてある。
なお、堤体11の段差面1fは後に説明するシール部材3の取りつけ後において、当該シール部材3の第2側面38との間に若干の間隙4を設けるようにマンホールの軸方向に対して傾斜を設けておくことが望ましい。
【0014】
<3>雄端部
次に、雄端部2について説明する。
雄端部2は、内周面2b側に設けた頂面2cと、外周面2a側に設けた下面2eと傾斜面2dとを有し、前記雌端部1とインロー嵌合可能なように構成される形状であるため、各部の説明を省略する。なお、雄端部2は、下面2eに堤体を有していない点において雌端部1と異なる形状を呈する。
【0015】
<4>シール部材
[各部名称]
図2に、シール部材3と前記雌端部の下面1eとの付設部分の拡大断面図を示す。
前記シール部材3はゴムなどの周知の弾性部材からなる。前記シール部材3の形状は、外周面側1aの側面を第1側面37とし、内周面側の側面を第2側面38とし、また前記雌端部1との付設面を底面34とし、前記底面34がマンホールの全周にわたって前記雌端部1の傾斜面1dと堤体11との間の下面1eに接するように付設される。
前記シール部材3の下面1eへの付設方法は、接着剤などによって固着してもよいし、そのまま載置したり、シール部材3の横幅長を下面1eの横幅長より略大きく形成して当該シール部材3を圧入嵌合するようにしてもよいが、接着剤による固着が付設後の安定性の面から望ましい。
【0016】
[底面]
前記底面34は、前記雌端部1の傾斜面1dと堤体11との間の下面1eにによって付設される。
【0017】
[第1側面]
前記第1側面37は、前記雌端部1の下面1eとの付設時において前記雌端部1の傾斜面1dとの間にちょうど密着するか、或いは若干隙間を設けるように形成される。
前記した若干の隙間を設けるためには、マンホールの軸方向に対する前記第1側面37の傾斜を、マンホールの軸方向に対する前記雌端部1の傾斜面1dより勾配を緩くしたり、予め当該シール部材3本体を前記傾斜面1dに接触しないように若干離間した位置に付設する方法などが挙げられる。
【0018】
[第2側面]
前記第2側面38は、前記雌端部1の下面1eとの付設時において前記雌端部1の段差面1fにちょうど密着するか、或いは若干隙間を設けるように形成される。
前記第1側面37にて説明したように、若干の隙間を設けるためには、前記段差面1fとの間の勾配差を利用したり、シール部材本体を前記段差面1fに接触しないように若干離間した位置に付設する方法などが挙げられる。
【0019】
[窪み部、リップ部]
前記シール部材3のうち、インロー嵌合時における他方の雄端部2の頂面2cに対向する面には、当該シール部材3の全長にわたって連続的に設けられた窪み部31を有する。
また、前記窪み部31を設けることによりシール部材3本体には2つのリップ部を有することとなり、外周面側の凸部を第1リップ部32、内周面側の凸部を第2リップ33とする。
【0020】
[空洞部]
前記シール部材3の基部35の内部には、マンホールの全周にわたって空洞部36を設けてある。当該空洞部36の数は特に限定するものではないが、マンホールの軸方向に対して垂直方向に2箇所並列して設けておくことが望ましい。
【0021】
<5>マンホールピースの組立
次に、上記説明したマンホールピースを複数用いたマンホールの組立方法について説明する。
【0022】
[シール部材の付設]
一方のマンホールピースの雌端部1の嵌合部分を清掃したのち、前記傾斜面1dと堤体11との間の下面1eにリング状のシール部材3を付設する。前記シール部材3は、下面にそのままおいても良いし、接着剤などによって固着しても良い。また、前記シール部材3の上面は、前記堤体11の上面より突出するようにしておく。
なお、マンホールに、より高いシール性を求める場合には、必要に応じてシリコン系のシーリング材などを前記シール部材3に塗布しておいても良い。
前記シール部材3の取りつけ箇所は、雌端部1の下面1eと堤体11とで段差が生じているため、正確な位置が特定でき簡易にシール部材3を取り付けることができる。
また、シール部材3を下面1eに固着する場合には、下面1eと堤体11とで段差が生じているため、正確な位置にシール部材3を取り付けることができる。
また接着剤の塗布位置も正確に把握でき、接着剤塗布後のはみ出しも防止できるという利点を有する。
【0023】
[各マンホールピースの組立]
吊り具などによって他方のマンホールピースを吊り上げた後、前記他方のマンホールピースの雄端部2の頂面を、一方のマンホールピースの雌端部1のシール部材3に突き当てるようにして、インロー嵌合して据え付ける。
【0024】
以上の工程を夫々繰り返すことによって、複数のマンホールピースを順次据え付けてマンホールを構築する。
【0025】
なお、上記工程のうちインロー嵌合後には、必要に応じてマンホールピースの外周面に設けた緊結プレート等を用いてボルト締めすることにより、マンホールピース間を強固に固定してもよい。
【0026】
[シール部材の機能・作用]
図3に、各マンホールピース間のインロー嵌合後のシール部材3の変形を示す断面概略図を示す。
シール部材3の上面に雄端部2の頂面2cが突き当てられて押圧されると前記シール部材3本体が上記雄端部2から受ける押圧力によって、下面1eに接着された底面34が剥離されて左右にずれようとする。
また、マンホールの組立後においても、地震等による振動が発生した場合には、内外周面方向に対して各マンホールピースが相対的に移動し、前記と同様に、シール部材3の底面34が下面1eから剥離されて左右にずれようとする。
その際に、下面1eに設けた堤体11がストッパとなって、シール部材3がずれたり剥離することなく拘束されて同じ位置にとどまることとなる。
【0027】
シール部材3の上面に、雄端部2の頂面2cが突き当てられて押圧される際、当該シール部材3の第1リップ部31は、外周面1a側すなわち雄端部2の傾斜面2dと雌端部1の傾斜面1dとの間に有する間隙4に潜り込むように変形して当該傾斜面間に密着して水封止する。
また、第2リップ部32は、内周面1b側すなわち雄端部2の頂面2cと、雌端部の堤体11の上面との間の隙間4へ追従変形すると同時に、雌端部1の下面1eと雄端部2の頂面2cとの間に密着して水封止する。
なお、シール部材3の基部35に設けた空洞部36によって、シール部材3の変形方向が案内されるとともに、シール部材3本体に適度な弾力性を付与することができ、水封止におけるリップ部の間隙4への変形追従性が向上する。
【0028】
[その他の実施例]
なお、説明の便宜上、図1において上縁内周部側を雌端部とし、下縁内周部側を雄端部と定義しているが、上縁内周部側を雄端部とし、下縁内周部側を雌端部としてもよい。この場合においては、雄端部下面に堤体が設けられるとともに、当該雄端部の下面にシール部材が付設されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のマンホールの止水構造の概略断面図。
【図2】図1におけるシール部材の部分拡大図。
【図3】インロー嵌合後のシール部材の概略説明図。
【符号の説明】
【0030】
1 雌端部
2 雄端部
1a、2a 外周面
1b、2b 内周面
1c、2c 頂面
1d、2d 傾斜面
1e、2e 下面
1f 段差面
11 堤体
3 シール部材
31 窪み部
32 第1リップ部
33 第2リップ部
34 底面
35 基部
36 空洞部
37 第1側面
38 第2側面
4 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上縁内周部に雌端部を設けかつ下縁内周部に雄端部を設けるマンホールピースを複数用い、一方のマンホールピースの雄端部と他方のマンホールピースの雌端部とをシール部材を介して夫々組み合わせる工程を繰り返してマンホールを形成する、マンホールの止水構造において、
前記マンホールピースの雄端部及び雌端部は、頂面と傾斜面と下面とからなり、
前記雌端部の下面に堤体を設けてあり、
前記シール部材が、当該シール部材の弾性変形を許容するように前記他方のマンホールピースの雌端部の傾斜面と堤体との間の下面に付設してあるとともに、前記一方の端部の雄端部の頂面が突き当てられることにより、当該シール部材が弾性変形して前記一方の端部の雄端部と前記他方の端部の雌端部と間の間隙を止水することを特徴とする、
マンホールの止水構造。
【請求項2】
前記シール部材の上面に単数或いは複数の窪み部を設けてあることを特徴とする、請求項1に記載のマンホールの止水構造。
【請求項3】
前記シール部材の内部に単数或いは複数の空洞部を設けてあることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマンホールの止水構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のマンホールの止水構造を用いたマンホールピースを夫々組み合わせて形成する、マンホールの組立方法において、
一方のマンホールピースの前記雌端部の下面に前記シール部材を当該シール部材の上面が前記堤体の上面より突出するように付設し、
他方のマンホールピースの雄端部の頂面を前記一方のマンホールピースに付設したシール部材に突き当てて、前記他方のマンホールピースの雄端部と前記一方のマンホールピースの雌端部との間の間隙を止水することを特徴とする、
マンホールの組立方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載のマンホールの止水構造を用いたマンホールピースを夫々組み合わせて形成する、マンホールであって、
一方のマンホールピースの前記雌端部の下面に前記シール部材を当該シール部材の上面が前記堤体の上面より突出するように付設してあり、
他方のマンホールピースの雄端部の頂面を前記一方のマンホールピースに付設したシール部材に突き当てて、前記他方のマンホールピースの雄端部と前記一方のマンホールピースの雌端部との間の間隙を止水してあることを特徴とする、
マンホール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−303161(P2007−303161A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132698(P2006−132698)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(390025999)中川ヒューム管工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】