マンホールの浮上防止方法とそのマンホール。
【課題】新設マンホールは勿論のこと、特に既設マンホールの浮上防止に現実的且つ有用なマンホールの浮上防止方法とその方法を適用したマンホールを提供する。
【解決手段】組立マンホールMHの直壁11に金網で構成した環状で逆円錐状のかご状部材12をアンカー差筋13で固定し、そのかご状部材12に、礫材を土嚢に入れた中詰材14を充填して加重ブロック体MBを構成し、この加重ブロック体MBの重量と加重ブロック体MB上の路盤の重量を組立マンホールMHに負荷して、マンホール全体の比重を液状化した土壌の比重以上にすることによりマンホールの浮上を抑制する。
【解決手段】組立マンホールMHの直壁11に金網で構成した環状で逆円錐状のかご状部材12をアンカー差筋13で固定し、そのかご状部材12に、礫材を土嚢に入れた中詰材14を充填して加重ブロック体MBを構成し、この加重ブロック体MBの重量と加重ブロック体MB上の路盤の重量を組立マンホールMHに負荷して、マンホール全体の比重を液状化した土壌の比重以上にすることによりマンホールの浮上を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立マンホールの浮上防止方法とその方法を適用したマンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、現在、一般に用いられている、日本下水道協会認定の組立マンホールの標準的構成を示すもので、1はマンホール蓋、2はマンホール蓋受枠、3は高さ調整リング、4は斜壁、5,6は直壁、7は基盤、8はインバートで、一般に接着材等により接合され一体化されている。
【0003】
周知のように、阪神・淡路や中越地震地において、地盤の液状化(流動化)により、数多くの前記組立マンホールが浮き上がり、救援の障害になったことは記憶に新しいところである。
【0004】
そして、2005年1月号の下水道協会誌Vol.42No.507の68頁表−2によれば、新潟県中越地震におけるマンホールの浮上がり、沈下は1,365件であったと報告されており、現在、国土交通省下水道部を初めとして下水道の技術分野において、その解決策について種々検討がなされている。
【0005】
砂のような粒子の集合体である材料は、粒状体と呼ばれ、この粒状体には特有の性質としてダイレタンシーと称される性状、すなわち、せん断によって体積が変化する現象がある。例えば、稠密体はせん断力によって形状は変化するが、体積変化は起きない。ところが、粒状体は、ゆる詰めの状態のものにせん断力を加えると、蜜詰めの状態に変化して体積が収縮する。
【0006】
乾燥した砂では、このような体積変化は瞬時に起きるが、水で飽和した砂では、間隙水が外部へ排出するのに必要な分だけ時間がかかることになるため、地震のような強い振盪による急激なせん断変形が生じる場合には排水が間に合わず、体積収縮を起こそうとすることになり、それにつれて有効応力が減少するため、砂は強度を失って、最終的には液体のような様相を呈することになる。これが液状化のメカニズムである。
【0007】
そして、このようにして土壌が液状化した場合、多量の水分を含んだ土砂の比重は1.0以上2.0となる。
【0008】
一方、組立マンホール(地下構造物)は、内部が空洞で、コップ状になっているので、液状化した地盤より見かけ比重が小さい。地震による地盤の泥水化により、組立マンホールが浮上し、下に浮遊している砂粒子が潜り込んだ結果、組立マンホールは浮上したままとなる。
【0009】
この地盤の流動化による組立マンホールの浮上を防止する方法として、従来、基盤、直壁及び斜壁等を一体化した組立マンホールの質量を大きくする、埋め戻し材料を選定して圧密度を高くする、埋め戻しを固化改良土で行うなどの技術があった。
【0010】
しかしながら、これらの方法は、前述の日本下水道協会認定の組立マンホールの設計変更をしなければならず、しかも既設の組立マンホールには適用しにくいこと、埋め戻し材のコスト増、実用的でないことや本来の即日復旧が困難である等の問題があった。
【0011】
大地震発生が間近であることが叫ばれている今日、新設のものは勿論のこと特に既設マンホールの浮上防止を、現実的且つ有用な手法、すなわち、施工を容易、且つ効率的、継続的に行うことが出来、しかも有効な効果が得られる浮上防止方法の出現が望まれている。
【特許文献1】実用新案登録第3120761号公報
【非特許文献1】2005年1月号下水道協会誌Vol.42No.507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、新設マンホールは勿論のこと、特に既設マンホールの浮上防止に現実的且つ有用なマンホールの浮上防止方法とその方法を適用したマンホールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は種々検討の結果、土壌液状化時におけるマンホールと土壌との重量バランスを考慮すると共に、過剰な間隙水圧の上昇抑制機能を持つ加重ブロック体をマンホールの躯体に付加することにより、解決出来るという知見を得たので、その知見に基づき本発明を生み出したものである。
【0014】
すなわち、請求項1の発明は、任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさの袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体をマンホールの側壁に取付けることを特徴とするマンホール浮上防止方法である。
【0015】
また、請求項3の発明は、任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさに袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体を側壁に取付けたことを特徴とするマンホールである。
【0016】
かご状部材は、金網、パンチングメタル、鋳造物等やその類似物を主たる部材として構成し、加重ブロック体は、この中に礫材又は任意の大きさの袋に礫材を入れたものを中詰材として充填したものである。この加重ブロック体の形状については特定されるものではないが、施工上環状で逆円錐状又は逆角錐状のものが好ましい。
【0017】
加重ブロック体WBの重量W2は、図2に示す説明図に示すように、加重ブロック体WBをマンホールMHの外壁に設けた場合、加重ブロック体WBの上に路盤がないと考えたときは、マンホールMHの重量W1と加重ブロック体WBの重量W2の加算値が浮力Fより大きな値となるように選定すればよい。又、加重ブロック体WBを内壁に設けた場合も同様である。しかし、加重ブロック体WBを外壁に設けた場合、実際には、加重ブロック体WBの上に路盤が設けられるので、路盤の重量を差し引いた重量のものに選定される。
【0018】
中詰材として用いる礫材としては、かご状部材の網目又は透孔よりも大きい砂利、砕石等が用いられ、礫材がかご状部材の網目又は透孔より小さい場合や、汚泥焼却スラツジや高炉スラグ、ソイルモルタル等を用いる場合は、任意の大きさの袋に入れたものを中詰材として使用し、各中詰材間に間隙が出来るように充填される。
【0019】
このように、加重ブロック体WBとして、かご状部材に、中詰材を中詰材間に間隙があるように充填したものとすることにより、地震発生によって生じた液状化時において上昇した水圧による水流を中詰材間の間隙内に逸水させて間隙圧を吸収抑制し、水圧上昇によるマンホールMHの浮上を抑制する効果がある。
【0020】
この間隙圧上昇抑制効果を助長させる方法としては、図3の説明図に示すように、多孔管HP等の逸水助長手段を加重ブロック体WBに設けることが有効である。
【0021】
加重ブロック体WBをマンホールMHに固定する方法は、かご状部材の構造によって異なるが、例えば金網を用いたものでは、図4の説明図に示すように鋼棒を用いたアンカー差筋によってマンホールMHと係合させる。通常アンカー差筋はかご状部材をマンホールMH外壁に当接してから、マンホールMH外壁に穿設した孔に挿入し、接着材で固定させる。
【0022】
次に施工手順について説明すると、既設マンホールの場合は、図5の(a)図に示すように、埋設マンホールMHの上部周辺を掘削した後、加重ブロックWBをマンホールMHに取付け、埋め戻しをすればよい。従って施工は極めて容易である。
【0023】
又新設マンホールの場合は、従来通り掘削してからマンホールMHを設置し、下部の良質土による通常の埋め戻しを行ってから、加重ブロックWBをマンホールMHに取付け、埋め戻しを行う。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るマンホールの浮上防止方法は、加重ブロック体をマンホールに付加して、加重ブロック体上の路盤の重量をも考慮したマンホール全体の見かけ比重を液状化した土壌の比重以上のものにすると共に、加重ブロック体の間隙圧吸収機能が付加されるため、水圧上昇によるマンホールの浮上を抑制する効果が得られる。
【実施例1】
【0025】
図6は実施例1の側面図で、この実施例1は組立マンホールMHの直壁11に金網で構成した環状で逆円錐状の分割型かご状部材12を図7に示すように、アンカー差筋13で直壁11の外側に止め、その分割型かご状部材12に礫材を入れた土嚢14(中詰材)を充填した後、蓋を閉じて加重ブロック体MBとしたものである。尚、この加重ブロック体MBの重量は、負荷した加重ブロック体MBの重量と加重ブロック体MB上の路盤の重量によりマンホール全体の比重が液状化した土壌の比重以上になるようにする。
【0026】
この実施例1では、分割型かご状部材12のアンカー差筋挿入部に鳩目状の補強兼網目縮小金具15を設け、分割型かご状部材12を直壁11に当接した後、鋼棒を用いたアンカー差筋13を直壁11に穿設した穴に挿入し、接着剤16で固定するようにした。
【0027】
図8は、アンカー差筋取付の異なる実施例を示す縦断面図で、この場合は、アンカー差筋としてねじ切ボルト13’を使用し、直壁11に予め埋設したアンカー冶具17に螺合するようにしたものである。
【0028】
図9は、アンカー差筋取付の他の異なる実施例を示すもので、アンカー差筋として長いねじ切ボルト13”を使用し、このねじ切ボルト13”を直壁11に予め設けた取付孔18に挿入し、直壁11の内外でナット19,19で座金20を介して固定するようにしたものである。なお、取付孔18には間隙材を充填し、外側には止水材21を付着させる。
【実施例2】
【0029】
図10は実施例2の側面図を示すもので、実施例1と同じ構造の加重ブロック体MBを実施例1とは異なる取付方法で、直壁11に固定するようにしたものである。
【0030】
即ち、図11に示すように分割型かご状部材12の下部に取付金具22のズレ防止フック23を引っ掛け、下部取付金具22の下部を直壁11に植設したねじ切ボルト13’に座金20を介してナット19を螺合して固定し、又、分割型かご状部材12の上部に図12に示すように、上部取付金具22’のズレ防止フック23’を引っ掛け、取付金具22’の基部の立ち上がり部を直壁11に植設したねじ切ボルト13’に座金20を介してナット19を螺合して固定したものである。
【0031】
図13は分割型かご状部材12の下部の直壁11への固定方法の異なる実施例を示す縦断面図で、直壁11を貫通して設けたねじ切ボルト13”の両端に座金20,20を介してナット19,19を螺合して取付金具22の下部を固定するようにしたものである。
【0032】
又、図14は上部取付金具22’の直壁11への取付方法の異なる実施例を示す縦断面図で、直壁11を貫通して設けたねじ切ボルト13”の両端に座金20,20を介してナット19,19を螺合して取付金具22”の基部の立ち上がり部を直壁11に固定したものである。
【実施例3】
【0033】
周知のようにダクタイル鋳鉄は耐蝕性に優れ、任意の形状を造形することができる素材であるので、実施例3はダクタイル鋳鉄で、環状で逆円錐状のかご状部材24を鋳物で構成した実施例を示すものである。尚、かご状部材24は環状で逆角錐状とした方が製作は容易である。
【0034】
実施例3のかご状部材24はマンホールの斜壁11’に取付ける構造としたもので、内側に斜壁11’の外面に倣うテーパーを付した立ち上り内筒部24aを設けた深皿状本体241と蓋体242から構成され、蓋体242は外縁数箇所でボルトで本体241に結合するように構成されている。
【0035】
本体241と蓋体242は、分割型であっても非分割型であってもよく、又透孔24bの大きさは中詰材の大きさに見合ったものとする。
【0036】
かご状部材24の固定方法は、この実施例では立ち上り内筒部24aの上縁に切欠24cを設け、この切欠24cにアンカー差筋13を係合させて止めるようにしている。
【0037】
従ってこの実施例3のかご状部材24の構造によると、かご状部材24は剛体であるからテーパーを付した立ち上り内筒部24aが斜壁11’の外面に密着して下方への移動は止められ、上方への移動はアンカー差筋13で止められるので、かご状部材24の取付けが容易である。またかご状部材を金網で構成する実施例1や2と比較して耐蝕性に優れているので、長期間埋設されるかご状部材として耐久性において勝っている。
【実施例4】
【0038】
図16はマンホールの直壁11に取付けるために考えられたダクタイル鋳鉄を用いた鋳物製のかご状部材24’の実施例を示すもので、この実施例では、本体241’の下部を上部直壁11と下部の直壁11の接合部に挟む構造としたものである。
【0039】
即ち、本体241’の下部に上部直壁11の下縁を受けるコ字状部241’aと下部直壁11の外面に当接する突縁241’bを設けたもので、図示しなかったが、突縁241’bは下部直壁11に設けられたボルト孔を利用してボルト止めされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】標準的組立マンホールの縦断面図。
【図2】土壌液状化時に埋設マンホールが浮上しないための条件を示す説明図。
【図3】マンホール浮上防止方法の説明図。
【図4】浮上防止方法を採ったマンホールの概略説明図。
【図5】本発明に係る浮上防止方法の施工手順を示す説明図。
【図6】本発明の実施例1の側面図。
【図7】実施例1におけるかご状部材をアンカー差筋によって直壁に固定する構造を示す拡大縦断面図。
【図8】実施例1におけるかご状部材をアンカー差筋によって直壁に固定する場合の異なる施工例を示す拡大縦断面図。
【図9】同じくアンカー差筋によって直壁に固定する場合の異なる施工例を示す拡大縦断面図。
【図10】本発明の実施例2の側面図。
【図11】実施例2におけるかご状部材の下部を直壁に固定する構造を示す拡大縦断面図。
【図12】実施例2におけるかご状部材の上部を直壁に固定する構造を示す拡大縦断面図。
【図13】実施例2におけるかご状部材の下部を直壁に固定する場合の異なる実施例を示す拡大縦断面図。
【図14】実施例2におけるかご状部材の上部を直壁に固定する場合の異なる実施例を示す拡大縦断面図。
【図15】本発明の実施例3の縦断面図。
【図16】本発明の実施例4の縦断面図。
【符号の説明】
【0041】
11 直壁
12 分割型かご状部材
13 アンカー差筋
14 中詰材
15 補強兼網目縮小金具
16 接着剤
MH マンホール
MB 加重ブロック体
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立マンホールの浮上防止方法とその方法を適用したマンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、現在、一般に用いられている、日本下水道協会認定の組立マンホールの標準的構成を示すもので、1はマンホール蓋、2はマンホール蓋受枠、3は高さ調整リング、4は斜壁、5,6は直壁、7は基盤、8はインバートで、一般に接着材等により接合され一体化されている。
【0003】
周知のように、阪神・淡路や中越地震地において、地盤の液状化(流動化)により、数多くの前記組立マンホールが浮き上がり、救援の障害になったことは記憶に新しいところである。
【0004】
そして、2005年1月号の下水道協会誌Vol.42No.507の68頁表−2によれば、新潟県中越地震におけるマンホールの浮上がり、沈下は1,365件であったと報告されており、現在、国土交通省下水道部を初めとして下水道の技術分野において、その解決策について種々検討がなされている。
【0005】
砂のような粒子の集合体である材料は、粒状体と呼ばれ、この粒状体には特有の性質としてダイレタンシーと称される性状、すなわち、せん断によって体積が変化する現象がある。例えば、稠密体はせん断力によって形状は変化するが、体積変化は起きない。ところが、粒状体は、ゆる詰めの状態のものにせん断力を加えると、蜜詰めの状態に変化して体積が収縮する。
【0006】
乾燥した砂では、このような体積変化は瞬時に起きるが、水で飽和した砂では、間隙水が外部へ排出するのに必要な分だけ時間がかかることになるため、地震のような強い振盪による急激なせん断変形が生じる場合には排水が間に合わず、体積収縮を起こそうとすることになり、それにつれて有効応力が減少するため、砂は強度を失って、最終的には液体のような様相を呈することになる。これが液状化のメカニズムである。
【0007】
そして、このようにして土壌が液状化した場合、多量の水分を含んだ土砂の比重は1.0以上2.0となる。
【0008】
一方、組立マンホール(地下構造物)は、内部が空洞で、コップ状になっているので、液状化した地盤より見かけ比重が小さい。地震による地盤の泥水化により、組立マンホールが浮上し、下に浮遊している砂粒子が潜り込んだ結果、組立マンホールは浮上したままとなる。
【0009】
この地盤の流動化による組立マンホールの浮上を防止する方法として、従来、基盤、直壁及び斜壁等を一体化した組立マンホールの質量を大きくする、埋め戻し材料を選定して圧密度を高くする、埋め戻しを固化改良土で行うなどの技術があった。
【0010】
しかしながら、これらの方法は、前述の日本下水道協会認定の組立マンホールの設計変更をしなければならず、しかも既設の組立マンホールには適用しにくいこと、埋め戻し材のコスト増、実用的でないことや本来の即日復旧が困難である等の問題があった。
【0011】
大地震発生が間近であることが叫ばれている今日、新設のものは勿論のこと特に既設マンホールの浮上防止を、現実的且つ有用な手法、すなわち、施工を容易、且つ効率的、継続的に行うことが出来、しかも有効な効果が得られる浮上防止方法の出現が望まれている。
【特許文献1】実用新案登録第3120761号公報
【非特許文献1】2005年1月号下水道協会誌Vol.42No.507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、新設マンホールは勿論のこと、特に既設マンホールの浮上防止に現実的且つ有用なマンホールの浮上防止方法とその方法を適用したマンホールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は種々検討の結果、土壌液状化時におけるマンホールと土壌との重量バランスを考慮すると共に、過剰な間隙水圧の上昇抑制機能を持つ加重ブロック体をマンホールの躯体に付加することにより、解決出来るという知見を得たので、その知見に基づき本発明を生み出したものである。
【0014】
すなわち、請求項1の発明は、任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさの袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体をマンホールの側壁に取付けることを特徴とするマンホール浮上防止方法である。
【0015】
また、請求項3の発明は、任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさに袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体を側壁に取付けたことを特徴とするマンホールである。
【0016】
かご状部材は、金網、パンチングメタル、鋳造物等やその類似物を主たる部材として構成し、加重ブロック体は、この中に礫材又は任意の大きさの袋に礫材を入れたものを中詰材として充填したものである。この加重ブロック体の形状については特定されるものではないが、施工上環状で逆円錐状又は逆角錐状のものが好ましい。
【0017】
加重ブロック体WBの重量W2は、図2に示す説明図に示すように、加重ブロック体WBをマンホールMHの外壁に設けた場合、加重ブロック体WBの上に路盤がないと考えたときは、マンホールMHの重量W1と加重ブロック体WBの重量W2の加算値が浮力Fより大きな値となるように選定すればよい。又、加重ブロック体WBを内壁に設けた場合も同様である。しかし、加重ブロック体WBを外壁に設けた場合、実際には、加重ブロック体WBの上に路盤が設けられるので、路盤の重量を差し引いた重量のものに選定される。
【0018】
中詰材として用いる礫材としては、かご状部材の網目又は透孔よりも大きい砂利、砕石等が用いられ、礫材がかご状部材の網目又は透孔より小さい場合や、汚泥焼却スラツジや高炉スラグ、ソイルモルタル等を用いる場合は、任意の大きさの袋に入れたものを中詰材として使用し、各中詰材間に間隙が出来るように充填される。
【0019】
このように、加重ブロック体WBとして、かご状部材に、中詰材を中詰材間に間隙があるように充填したものとすることにより、地震発生によって生じた液状化時において上昇した水圧による水流を中詰材間の間隙内に逸水させて間隙圧を吸収抑制し、水圧上昇によるマンホールMHの浮上を抑制する効果がある。
【0020】
この間隙圧上昇抑制効果を助長させる方法としては、図3の説明図に示すように、多孔管HP等の逸水助長手段を加重ブロック体WBに設けることが有効である。
【0021】
加重ブロック体WBをマンホールMHに固定する方法は、かご状部材の構造によって異なるが、例えば金網を用いたものでは、図4の説明図に示すように鋼棒を用いたアンカー差筋によってマンホールMHと係合させる。通常アンカー差筋はかご状部材をマンホールMH外壁に当接してから、マンホールMH外壁に穿設した孔に挿入し、接着材で固定させる。
【0022】
次に施工手順について説明すると、既設マンホールの場合は、図5の(a)図に示すように、埋設マンホールMHの上部周辺を掘削した後、加重ブロックWBをマンホールMHに取付け、埋め戻しをすればよい。従って施工は極めて容易である。
【0023】
又新設マンホールの場合は、従来通り掘削してからマンホールMHを設置し、下部の良質土による通常の埋め戻しを行ってから、加重ブロックWBをマンホールMHに取付け、埋め戻しを行う。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るマンホールの浮上防止方法は、加重ブロック体をマンホールに付加して、加重ブロック体上の路盤の重量をも考慮したマンホール全体の見かけ比重を液状化した土壌の比重以上のものにすると共に、加重ブロック体の間隙圧吸収機能が付加されるため、水圧上昇によるマンホールの浮上を抑制する効果が得られる。
【実施例1】
【0025】
図6は実施例1の側面図で、この実施例1は組立マンホールMHの直壁11に金網で構成した環状で逆円錐状の分割型かご状部材12を図7に示すように、アンカー差筋13で直壁11の外側に止め、その分割型かご状部材12に礫材を入れた土嚢14(中詰材)を充填した後、蓋を閉じて加重ブロック体MBとしたものである。尚、この加重ブロック体MBの重量は、負荷した加重ブロック体MBの重量と加重ブロック体MB上の路盤の重量によりマンホール全体の比重が液状化した土壌の比重以上になるようにする。
【0026】
この実施例1では、分割型かご状部材12のアンカー差筋挿入部に鳩目状の補強兼網目縮小金具15を設け、分割型かご状部材12を直壁11に当接した後、鋼棒を用いたアンカー差筋13を直壁11に穿設した穴に挿入し、接着剤16で固定するようにした。
【0027】
図8は、アンカー差筋取付の異なる実施例を示す縦断面図で、この場合は、アンカー差筋としてねじ切ボルト13’を使用し、直壁11に予め埋設したアンカー冶具17に螺合するようにしたものである。
【0028】
図9は、アンカー差筋取付の他の異なる実施例を示すもので、アンカー差筋として長いねじ切ボルト13”を使用し、このねじ切ボルト13”を直壁11に予め設けた取付孔18に挿入し、直壁11の内外でナット19,19で座金20を介して固定するようにしたものである。なお、取付孔18には間隙材を充填し、外側には止水材21を付着させる。
【実施例2】
【0029】
図10は実施例2の側面図を示すもので、実施例1と同じ構造の加重ブロック体MBを実施例1とは異なる取付方法で、直壁11に固定するようにしたものである。
【0030】
即ち、図11に示すように分割型かご状部材12の下部に取付金具22のズレ防止フック23を引っ掛け、下部取付金具22の下部を直壁11に植設したねじ切ボルト13’に座金20を介してナット19を螺合して固定し、又、分割型かご状部材12の上部に図12に示すように、上部取付金具22’のズレ防止フック23’を引っ掛け、取付金具22’の基部の立ち上がり部を直壁11に植設したねじ切ボルト13’に座金20を介してナット19を螺合して固定したものである。
【0031】
図13は分割型かご状部材12の下部の直壁11への固定方法の異なる実施例を示す縦断面図で、直壁11を貫通して設けたねじ切ボルト13”の両端に座金20,20を介してナット19,19を螺合して取付金具22の下部を固定するようにしたものである。
【0032】
又、図14は上部取付金具22’の直壁11への取付方法の異なる実施例を示す縦断面図で、直壁11を貫通して設けたねじ切ボルト13”の両端に座金20,20を介してナット19,19を螺合して取付金具22”の基部の立ち上がり部を直壁11に固定したものである。
【実施例3】
【0033】
周知のようにダクタイル鋳鉄は耐蝕性に優れ、任意の形状を造形することができる素材であるので、実施例3はダクタイル鋳鉄で、環状で逆円錐状のかご状部材24を鋳物で構成した実施例を示すものである。尚、かご状部材24は環状で逆角錐状とした方が製作は容易である。
【0034】
実施例3のかご状部材24はマンホールの斜壁11’に取付ける構造としたもので、内側に斜壁11’の外面に倣うテーパーを付した立ち上り内筒部24aを設けた深皿状本体241と蓋体242から構成され、蓋体242は外縁数箇所でボルトで本体241に結合するように構成されている。
【0035】
本体241と蓋体242は、分割型であっても非分割型であってもよく、又透孔24bの大きさは中詰材の大きさに見合ったものとする。
【0036】
かご状部材24の固定方法は、この実施例では立ち上り内筒部24aの上縁に切欠24cを設け、この切欠24cにアンカー差筋13を係合させて止めるようにしている。
【0037】
従ってこの実施例3のかご状部材24の構造によると、かご状部材24は剛体であるからテーパーを付した立ち上り内筒部24aが斜壁11’の外面に密着して下方への移動は止められ、上方への移動はアンカー差筋13で止められるので、かご状部材24の取付けが容易である。またかご状部材を金網で構成する実施例1や2と比較して耐蝕性に優れているので、長期間埋設されるかご状部材として耐久性において勝っている。
【実施例4】
【0038】
図16はマンホールの直壁11に取付けるために考えられたダクタイル鋳鉄を用いた鋳物製のかご状部材24’の実施例を示すもので、この実施例では、本体241’の下部を上部直壁11と下部の直壁11の接合部に挟む構造としたものである。
【0039】
即ち、本体241’の下部に上部直壁11の下縁を受けるコ字状部241’aと下部直壁11の外面に当接する突縁241’bを設けたもので、図示しなかったが、突縁241’bは下部直壁11に設けられたボルト孔を利用してボルト止めされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】標準的組立マンホールの縦断面図。
【図2】土壌液状化時に埋設マンホールが浮上しないための条件を示す説明図。
【図3】マンホール浮上防止方法の説明図。
【図4】浮上防止方法を採ったマンホールの概略説明図。
【図5】本発明に係る浮上防止方法の施工手順を示す説明図。
【図6】本発明の実施例1の側面図。
【図7】実施例1におけるかご状部材をアンカー差筋によって直壁に固定する構造を示す拡大縦断面図。
【図8】実施例1におけるかご状部材をアンカー差筋によって直壁に固定する場合の異なる施工例を示す拡大縦断面図。
【図9】同じくアンカー差筋によって直壁に固定する場合の異なる施工例を示す拡大縦断面図。
【図10】本発明の実施例2の側面図。
【図11】実施例2におけるかご状部材の下部を直壁に固定する構造を示す拡大縦断面図。
【図12】実施例2におけるかご状部材の上部を直壁に固定する構造を示す拡大縦断面図。
【図13】実施例2におけるかご状部材の下部を直壁に固定する場合の異なる実施例を示す拡大縦断面図。
【図14】実施例2におけるかご状部材の上部を直壁に固定する場合の異なる実施例を示す拡大縦断面図。
【図15】本発明の実施例3の縦断面図。
【図16】本発明の実施例4の縦断面図。
【符号の説明】
【0041】
11 直壁
12 分割型かご状部材
13 アンカー差筋
14 中詰材
15 補強兼網目縮小金具
16 接着剤
MH マンホール
MB 加重ブロック体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさの袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体をマンホールの側壁に取付けることを特徴とするマンホール浮上防止方法。
【請求項2】
請求項1記載のマンホール浮上防止方法において、加重ブロック体に多孔管等の逸水助長手段を設けたことを特徴とするマンホールの浮上防止方法。
【請求項3】
任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさに袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体を側壁に取付けたことを特徴とするマンホール。
【請求項4】
請求項3記載のマンホールにおいて、加重ブロック体に多孔管等の逸水助長手段を設けたことを特徴とするマンホール。
【請求項1】
任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさの袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体をマンホールの側壁に取付けることを特徴とするマンホール浮上防止方法。
【請求項2】
請求項1記載のマンホール浮上防止方法において、加重ブロック体に多孔管等の逸水助長手段を設けたことを特徴とするマンホールの浮上防止方法。
【請求項3】
任意形状のかご状部材に、礫材又は礫材を任意の大きさに袋に入れたものを中詰材として充填した加重ブロック体を側壁に取付けたことを特徴とするマンホール。
【請求項4】
請求項3記載のマンホールにおいて、加重ブロック体に多孔管等の逸水助長手段を設けたことを特徴とするマンホール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−127919(P2008−127919A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316328(P2006−316328)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(593153532)財団法人下水道新技術推進機構 (10)
【出願人】(591116092)株式会社福原鋳物製作所 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(593153532)財団法人下水道新技術推進機構 (10)
【出願人】(591116092)株式会社福原鋳物製作所 (23)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]