マンホール工事用掘削方法及び掘削装置。
【課題】より作業効率の高いマンホール工事を実施するための掘削工法を提供する。
【解決手段】地中に埋設されているマンホールの径よりも大きい円管を当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置する工程と,地上から地下のマンホールに延びる軸体をマンホールの地上開口部からマンホール内に挿入し,軸体のマンホール内の下端から半径方向に延びる当接部材をマンホールの内周面に当接させる工程と,地上で軸体と連結している駆動機構により円管に下向き荷重を加えて,円管を地中に埋め込む工程と,軸体とともに,内周面が当接部材と当接したマンホール部分を含む円管によってくり抜かれた地中部分を引き上げる工程とを備える。
【解決手段】地中に埋設されているマンホールの径よりも大きい円管を当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置する工程と,地上から地下のマンホールに延びる軸体をマンホールの地上開口部からマンホール内に挿入し,軸体のマンホール内の下端から半径方向に延びる当接部材をマンホールの内周面に当接させる工程と,地上で軸体と連結している駆動機構により円管に下向き荷重を加えて,円管を地中に埋め込む工程と,軸体とともに,内周面が当接部材と当接したマンホール部分を含む円管によってくり抜かれた地中部分を引き上げる工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,マンホール工事用掘削方法及び掘削装置に関し,特に,マンホールの補修工事の際にマンホールを掘り出すのに好適な掘削方法及び掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されたマンホールの老朽化に伴い,その補修のために,従来より,マンホールの内側に更生材を内張する工法が知られている(特許文献1,2)。特許文献1及び2の工法によれば,地中のマンホールの内径よりも小さい地面上のマンホール蓋から地中のマンホール内に挿入可能な程度に更生材を変形加工し,マンホール内に挿入した後,加熱・加圧などにより更生材を復元させ,マンホールの内周面に張り付ける。
【0003】
さらに,近年では,強度及び耐劣化性能の高いFRP(Fiber Reinforced Plastic)管をマンホール内に挿入し,充填剤により内周面に密着させて張り付ける工法も施工されている。ただし,FRP管は,その大きさを変形できないため,FRP管を地中のマンホール内に挿入する際は,FRP管の径よりも小さい地上開口部及び斜壁部分をあらかじめ掘削工事により取り除く工事が必要となる。
【0004】
図11は,マンホール工事における従来の掘削工事を説明する図である。図11に示すように,マンホールの上部開口(地上開口部)は,直壁に張り付けられるFRP管の径よりも小さいため(例えば,直壁の内径900mmに対して,地上開口部の内径は600mm),組立マンホールの斜壁より上部を掘削により掘り出し,FRP管を挿入する地中のマンホールの直壁部分の開口を露出させる必要がある。従来,図示されるように,作業床を必要とするため,斜壁の径よりも大幅に広い掘削範囲(例えば,斜壁の内径900mmに対して,掘削範囲の径は約3000mm程度)について,路面のアスファルトを剥がし,掘削機及び作業員による人力により掘削作業を行い,斜壁を露出させ,直壁からはずした後,FRP管を直壁に挿入する作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−2735号公報
【特許文献2】特開2005−105711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,このようなマンホール工事のための従来の掘削工法は,掘削範囲が広く,また,既存の掘削機を用いた作業による騒音・振動が大きく,さらに,施工期間も長い。そのため,多くの時間と人手を要し,結果的に施工費用の増大を招く。
【0007】
そこで,本発明の目的は,上記問題点に鑑み,より作業効率の高いマンホール工事を実施するための掘削工法及び掘削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の掘削方法は,地中に埋設されているマンホールの径よりも大きい円管を当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置する工程と,地上から地下のマンホールに延びる軸体をマンホールの地上開口部からマンホール内に挿入し,前記軸体のマンホール内の下端から半径方向に延びる当接部材をマンホールの内周面に当接させる工程と,地上で前記軸体と連結している駆動機構により前記円管に下向き荷重を加えて,前記円管を地中に埋め込む工程と,前記軸体とともに,内周面が前記当接部材と当接したマンホール部分を含む前記円管によってくり抜かれた地中部分を引き上げる工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
また,上記目的を達成するための本発明の掘削装置は,垂直方向に延び,下端部がマンホール内部に挿入される軸体と,前記軸体の半径方向の周囲に配置され,垂直方向に伸縮して下向き荷重を加えることができる第1の駆動機構と,前記第1の駆動機構を前記軸体に対して昇降可能に連結する連結機構と,前記軸体の下端部に設けられ,下端部から半径方向に伸縮可能に延びてマンホールの内周面に当接する当接部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,マンホールを掘り出すための掘削工事について,その掘削範囲を従来より大幅に狭めることができ,施工時間も短縮され,施工コストが削減される。また,無騒音・無振動による工事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における掘削方法の概要を説明する図である。
【図2】ケーシング10の斜視図である。
【図3】ケーシング10を回転させる駆動機構を示す図である。
【図4】本実施の形態における掘削装置100の構成例を示す図である。
【図5】図4の掘削装置100の構成を示す写真である。
【図6】第1水平伸縮機構114の上面図である。
【図7】第2水平伸縮機構115の上面図である。
【図8】本実施の形態における掘削装置の動作を説明する図である。
【図9】本実施の形態の掘削工法により掘削される地中部分を表す図である。
【図10】従来工法による掘削範囲と本実施形態の掘削工法による掘削範囲を比較する図である。
【図11】マンホール工事における従来の掘削工事を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら,かかる実施の形態例が,本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
図1は,本発明の実施の形態における掘削方法の概要を説明する図である。本実施の形態の掘削方法では,まず,マンホールの径(直壁の外径)よりも大きい円管10(以下,ケーシングと称する場合がある)をマンホールと同心になるように地面に配置し(図1(a)参照),後述する掘削装置100を用いて,ケーシング10に上側から下向き荷重を加え,ケーシング10を地中へ押し込んでいく(図1(b)参照)。また,掘削装置100の垂直に延びる軸体の下端部を,地中のマンホール内に挿入し,当該下端部に取り付けられているアンカー部をマンホールの斜壁内周面に当接させておく。そして,ケーシング10の上端までが地中に埋め込まれると,ケーシング10はそれ以上深さ方向に下降しなくなるので,ケーシング10に加えられる下向き荷重は,軸体を持ち上げる上向きの力となり,アンカー部の斜壁内周面の当接によって,軸体とともに,地中内でケーシング10に囲われるマンホール部分を引き上げる。詳細な動作については,図8にて説明する。
【0014】
図2は,ケーシング10の斜視図である。ケーシング(円管)10は,鋼鉄製の導管構造であり,下端部の縁は,円周にわたってのこぎり刃状に加工されている。ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,ケーシング10に下向き荷重を加えると,のこぎり刃状の縁により,地面を削りながら,地中に埋め込まれていく。
【0015】
図3は,ケーシング10を回転させるケーシング回転機を示す図である。図3は,ケーシング10及びケーシング回転機120の上面を示す。ケーシング回転機120は,その本体に取り付けられる油圧シリンダ121,122を有し,ケーシング10に隣接して配置されたケーシング回転機120の本体から水平方向に延びる油圧シリンダ(水平伸縮機構)121,122が,ケーシング10の外周面の両側に取り付けられ,水平に延びる油圧シリンダ121,122を交互に水平方向に伸縮させることで,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させる。なお,ケーシング回転機120には,ケーシング10が地面内に垂直に挿入されるように,ケーシング10の偏心を防止し,ケーシングの姿勢を垂直に保つガイド機能を有していてもよい。ガイド機能は,例えば,ケーシングの傾きを抑えるようにケーシングの外周面を垂直に支える支持機構により実現される。ケーシング回転機120は,掘削装置100の一部を構成する。
【0016】
なお,ケーシング10は,その全体が埋め込まれた時に,掘り出す対象物であるマンホールの斜壁の深さ程度まで埋まる高さを有する。また,ケーシング10の径は,マンホールの直壁の外径(斜壁の下端部の外径にほぼ一致)よりも大きい径であり,直壁の内径900mm規格のマンホールに対しては,例えば約1400mm程度である。
【0017】
図4は,本実施の形態における掘削装置100の構成例を示す断面図である。掘削装置100は,垂直方向(長手方向)に延びる軸体110を有し,軸体110には,その長手方向に径を小さくすることにより形成される凹部110aが一定間隔毎に複数設けられる。軸体110の下端部には,折りたたみ式の複数のアンカー部110bが取り付けられている。軸体110の下端部がマンホールに挿入される場合,アンカー部110bは,折りたたまれた状態で,マンホールの地上開口部を通過でき,マンホール内部で拡げられると,マンホールの内周面に接触する。特に,径が連続的に変化する斜壁内で拡げられると,アンカー部110bは,斜壁のいずれかの径部分の内周面に当接する。
【0018】
さらに,掘削装置100は,軸体110を中心として,軸体110から水平方向に90度間隔で4方向に延びる水平支持部111を備え,各水平支持部111の先端部分には,例えば油圧駆動機構(油圧シリンダ)により垂直方向に伸縮する細長状の垂直伸縮機構112の上端部が固定されている。垂直伸縮機構112は,軸体110と平行に垂直方向に延び,可動部分が固定長さ部分に対して入れ子式に出入りすることで伸縮可能であって,水平支持部111の昇降に伴って,垂直伸縮機構112の端点も垂直方向に移動可能である。
【0019】
リング状の台座113は,各垂直伸縮機構112の下端部に取り付けられ,4つの垂直伸縮機構112の下端部を円周上に連結する台座である。台座113は,ケーシング10とほぼ同一の径を有し,後述するように,ケーシング10の上端に,この台座113を載置し,垂直伸縮機構112の伸縮機構により,ケーシング10に下向き荷重を加える。台座113のリング幅は,ケーシング10の厚さよりも十分に大きい。
【0020】
また,水平支持部111には,水平方向に伸縮する第1水平伸縮機構114が少なくとも2つ設けられ,図示されるように,第1水平伸縮機構114が伸びると,その先端部が軸体110の凹部110aに嵌る構造となっている。すなわち,第1水平伸縮機構114の先端部が軸体110に嵌った状態は,水平支持部111及びそれに取り付けられた4つの垂直伸縮機構112が,軸体110に連結された状態である。
【0021】
さらに,垂直伸縮機構112にも,水平方向に伸縮する別の第2水平伸縮機構115が取り付けられ,第1水平伸縮機構114と同様に,第2水平伸縮機構115が伸びると,第1水平伸縮機構114と別の位置で,その先端部が軸体110の凹部110aに嵌る構造となっている。第1水平伸縮機構114と同様に,軸体110の凹部110aに嵌った状態では,水平支持部111及びそれに取り付けられた4つの垂直伸縮機構112が,軸体110に連結された状態となる。後述するように,第2水平伸縮機構115は軸体110と嵌合し,第1水平伸縮機構114の嵌合をはずすことで,垂直伸縮機構112を伸縮させて,水平支持部111を垂直方向に昇降させる。水平支持部111,第1水平伸縮機構114及び第2水平伸縮機構は,軸体110と垂直伸縮機構112とを連結する連結機構を構成する。また,第1水平伸縮機構114及び第2水平伸縮機構ともに,油圧駆動機構(油圧シリンダ)で構成される。ただし,掘削装置を構成する各伸縮機構は,油圧駆動に限らず,他の駆動機構を利用したものであってもよい。
【0022】
図5は,図4の掘削装置100の構成を示す写真であって,ケーシング10の上に台座113を介して垂直伸縮機構112が載置され,ケーシング10を埋設する際の配置を示し,ケーシング10には,ケーシング回転機120の水平伸縮機構121(122)も取り付けられている。
【0023】
図6は,第1水平伸縮機構114の上面図である。第1水平伸縮機構114は,対向する位置に2つ設けられ,その先端部は,図示されるように,軸体110の凹部110aの形状に合う先端形状を有する。図6(a)は,第1水平伸縮機構114が収縮した状態で,軸体110の凹部110aに嵌合したおらず,図6(b)は,第1水平伸縮機構114が伸長し,軸体110の凹部110aに嵌合した状態を表す。
【0024】
図7は,第2水平伸縮機構115の上面図である。第2水平伸縮機構115は,各垂直伸縮機構112毎に4つ設けられ,その先端部は,図示されるように,軸体110の凹部110aの形状に合う先端形状を有する。図7(a)は,第2水平伸縮機構115が収縮した状態で,軸体110の凹部110aに嵌合したおらず,図7(b)は,第2水平伸縮機構115が伸長し,軸体110の凹部110aに嵌合した状態を表す。
【0025】
図8は,本実施の形態における掘削装置の動作を説明する図である。図8では,掘削装置100,ケーシング10,マンホールの斜壁部分の断面図が示される。図8(a)において,ケーシング10を地面に配置し,その上に垂直伸縮機構112を載置する。このとき,垂直伸縮機構112は縮められた状態である。また,第1水平伸縮部114が伸びて,軸体110に連結される。軸体110の下端部は,マンホール内に挿入されており,その下端部のアンカー部110bは,マンホール挿入後,折りたたまれた状態から拡げられる。アンカー部110bの拡張作業は,作業員による手作業で行われてよいし,必要な駆動機構により機械動作により行われてもよい。
【0026】
次に,図8(b)に示されるように,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,垂直伸縮機構112を下向きに伸びるように動作させて,ケーシング10に下向き荷重を加えることで,ケーシング10を地面内に埋め込んでいく。
【0027】
垂直伸縮機構112の最大伸長長さでケーシング10全体が埋め込まれない場合は,図8(c)に示すように,垂直伸縮機構112が伸びきった位置において,第2水平伸縮機構115を伸ばして軸体110に連結し,代わりに,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずした状態(連結解除状態)で,垂直伸縮機構112を下方向に縮むように駆動し,垂直伸縮機構112が縮められた位置で,再度,第1水平伸縮機構114を伸ばして軸体110に連結させ,第2水平伸縮機構115を軸体110からはずす(連結解除)。
【0028】
図8(c)の状態において,再度,図8(b)の動作を繰り返し,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,垂直伸縮機構112を下向きに伸びるように動作させて,ケーシング10に下向き荷重を加えることで,ケーシング10をさらに地面内に埋め込んでいく。これにより,図8(d)に示すように,ケーシング10ほぼ全体を地面内に埋め込まれる。
【0029】
続いて,図8(e)に示すように,第2水平伸縮機構115を伸ばして軸体110に固定し,代わりに,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずした状態で,垂直伸縮機構112を下方向に縮むように駆動する。その後,垂直伸縮機構112が縮められた位置で,再度,第1水平伸縮機構114を伸ばして軸体110に連結させ,第2水平伸縮機構115を軸体110からはずす(連結解除)。
【0030】
図8(e)の状態において,さらに,垂直伸縮機構112によりケーシング10に対して下向き荷重を加える。そうすると,ケーシング10の最上端が地面に埋まり,台座113が地面に当接する。台座113はその幅広端面による圧力分散より,垂直伸縮機構112の下向き荷重によっても地面内に埋め込まれない。従って,垂直伸縮機構112の下向き荷重は,垂直伸縮機構112自体を上向きに伸ばす力として作用し,垂直伸縮機構112は,上方向に伸びていく。このとき,図8(f)に示されるように,垂直伸縮機構112は,第1水平伸縮機構114と軸体110との係合により,軸体110を引き上げ,さらに,軸体110のアンカー部110bによって斜壁部分(ケーシング10によってくり抜かれた地下部分)も,軸体110とともに持ち上げられていく。
【0031】
垂直伸縮機構112が一旦上方向に伸びきると,図8(g)に示すように,第2水平伸縮機構115を伸ばして軸体110に連結し,代わりに,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずした状態(連結解除状態)で,垂直伸縮機構112を下方向に縮むように駆動する。このとき,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずされているので,軸体110は動かない。
【0032】
そうして,垂直伸縮機構112が縮められた位置で,再度,第1水平伸縮機構114を伸ばして軸体110に固定させ,第2水平伸縮機構115を軸体110からはずし,垂直伸縮機構112に下向き荷重を加える。これにより,再度,垂直伸縮機構112は,図8(h)に示すように,上方向に伸びていき,それとともに,軸体110も引き上げられ,さらに,そのアンカー部110bに引っかけられるようにして斜壁部分も持ち上げられ,
斜壁部分全体を地上に引き上げる。最後に,地上に引き上げられた斜壁部分は,図8(i)に示すように,クレーンでつり上げられて移動される。
【0033】
このように,本実施の形態の掘削工法は,円筒状のケーシング10をマンホール周囲に埋め込み,当該ケーシングに加えられる下向き荷重の反作用を利用して,地面内のマンホールを垂直に引き上げるようにする工法である。
【0034】
図9は,本実施の形態の掘削工法により掘削される地中部分を表す図である。円筒状のケーシング10を地中に打ち込んでから,ケーシング10に囲まれる地中部分を引き上げるので,ケーシング10によって,引き上げ抵抗を低減され,ケーシング10に囲まれる円柱状の地中部分をくり抜いて,油圧駆動機構を用いて,垂直に引き上げることが可能となる。
【0035】
図10は,従来工法による掘削範囲と本実施形態の掘削工法による掘削範囲を比較する図である。従来工法によれば,およそ直径3140mmの範囲を掘削するのに対して,本実施形態の掘削工法では,直径1400mm程度の範囲で足り,地上面の掘削面積及び掘削される地中部分の体積ともに大幅に低減される。
【0036】
本実施形態の掘削工法の効果をまとめると以下の通りである。
【0037】
(1)掘削範囲が狭く,施工範囲が小さい。従来のように,斜め45度に掘削する場合と比較して,掘削範囲が狭いため,施工範囲を小さくすることができる。例えば,従来の工法では,マンホールを中心として,約3m四方を掘削する必要があるが,本工法では,約1.4mの径の掘削(ケーシング10の埋め込み)で足りる。掘削範囲が減るため,掘削される土の量は大幅に低減する。
【0038】
(2)施工期間も大幅に短縮される。本工法では,ケーシングに下向き荷重を加えて埋め込んで,さらに,ケーシングに下向き荷重を加えることで,マンホールを引き上げるという,同一動作を繰り返すことで,掘削工程から引き上げ工程までが進む。従来のように,実際に,地面下のマンホールを実際掘り出す作業と比べて,圧倒的に作業工程が簡素化し,作業時間も短縮する。
【0039】
(3)掘削時に振動や騒音が出ない。従来の掘削機を用いた掘削を行わないので,振動や騒音がほとんど出ない。ケーシング10の埋め込み処理も,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,比較的ゆっくりとのこぎりを引くように動作させるので,振動や騒音は極めて小さい。
【0040】
本実施形態における掘削方法では,軸体110のアンカー部110bを地中マンホールの斜壁の内周面に当接させ,当該斜壁部分を引き上げる例について説明したが,直壁部分にも適用可能である。直壁を引き上げる場合は,例えば,あらかじめ直壁の内周面に所定の突起体を打ち込んでおき,アンカー部110が当該突起体に引っ掛かることで,軸体110の引き上げとともに,直壁を垂直に持ち上げることができる。
【符号の説明】
【0041】
10:ケーシング,100:掘削装置,110:軸体,110a:凹部,110b:アンカー部,111:水平支持部,112:垂直伸縮機構,113:台座,114:第1水平伸縮機構,115:第2水平伸縮機構,120:ケーシング回転機
【技術分野】
【0001】
本発明は,マンホール工事用掘削方法及び掘削装置に関し,特に,マンホールの補修工事の際にマンホールを掘り出すのに好適な掘削方法及び掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されたマンホールの老朽化に伴い,その補修のために,従来より,マンホールの内側に更生材を内張する工法が知られている(特許文献1,2)。特許文献1及び2の工法によれば,地中のマンホールの内径よりも小さい地面上のマンホール蓋から地中のマンホール内に挿入可能な程度に更生材を変形加工し,マンホール内に挿入した後,加熱・加圧などにより更生材を復元させ,マンホールの内周面に張り付ける。
【0003】
さらに,近年では,強度及び耐劣化性能の高いFRP(Fiber Reinforced Plastic)管をマンホール内に挿入し,充填剤により内周面に密着させて張り付ける工法も施工されている。ただし,FRP管は,その大きさを変形できないため,FRP管を地中のマンホール内に挿入する際は,FRP管の径よりも小さい地上開口部及び斜壁部分をあらかじめ掘削工事により取り除く工事が必要となる。
【0004】
図11は,マンホール工事における従来の掘削工事を説明する図である。図11に示すように,マンホールの上部開口(地上開口部)は,直壁に張り付けられるFRP管の径よりも小さいため(例えば,直壁の内径900mmに対して,地上開口部の内径は600mm),組立マンホールの斜壁より上部を掘削により掘り出し,FRP管を挿入する地中のマンホールの直壁部分の開口を露出させる必要がある。従来,図示されるように,作業床を必要とするため,斜壁の径よりも大幅に広い掘削範囲(例えば,斜壁の内径900mmに対して,掘削範囲の径は約3000mm程度)について,路面のアスファルトを剥がし,掘削機及び作業員による人力により掘削作業を行い,斜壁を露出させ,直壁からはずした後,FRP管を直壁に挿入する作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−2735号公報
【特許文献2】特開2005−105711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,このようなマンホール工事のための従来の掘削工法は,掘削範囲が広く,また,既存の掘削機を用いた作業による騒音・振動が大きく,さらに,施工期間も長い。そのため,多くの時間と人手を要し,結果的に施工費用の増大を招く。
【0007】
そこで,本発明の目的は,上記問題点に鑑み,より作業効率の高いマンホール工事を実施するための掘削工法及び掘削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の掘削方法は,地中に埋設されているマンホールの径よりも大きい円管を当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置する工程と,地上から地下のマンホールに延びる軸体をマンホールの地上開口部からマンホール内に挿入し,前記軸体のマンホール内の下端から半径方向に延びる当接部材をマンホールの内周面に当接させる工程と,地上で前記軸体と連結している駆動機構により前記円管に下向き荷重を加えて,前記円管を地中に埋め込む工程と,前記軸体とともに,内周面が前記当接部材と当接したマンホール部分を含む前記円管によってくり抜かれた地中部分を引き上げる工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
また,上記目的を達成するための本発明の掘削装置は,垂直方向に延び,下端部がマンホール内部に挿入される軸体と,前記軸体の半径方向の周囲に配置され,垂直方向に伸縮して下向き荷重を加えることができる第1の駆動機構と,前記第1の駆動機構を前記軸体に対して昇降可能に連結する連結機構と,前記軸体の下端部に設けられ,下端部から半径方向に伸縮可能に延びてマンホールの内周面に当接する当接部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,マンホールを掘り出すための掘削工事について,その掘削範囲を従来より大幅に狭めることができ,施工時間も短縮され,施工コストが削減される。また,無騒音・無振動による工事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における掘削方法の概要を説明する図である。
【図2】ケーシング10の斜視図である。
【図3】ケーシング10を回転させる駆動機構を示す図である。
【図4】本実施の形態における掘削装置100の構成例を示す図である。
【図5】図4の掘削装置100の構成を示す写真である。
【図6】第1水平伸縮機構114の上面図である。
【図7】第2水平伸縮機構115の上面図である。
【図8】本実施の形態における掘削装置の動作を説明する図である。
【図9】本実施の形態の掘削工法により掘削される地中部分を表す図である。
【図10】従来工法による掘削範囲と本実施形態の掘削工法による掘削範囲を比較する図である。
【図11】マンホール工事における従来の掘削工事を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら,かかる実施の形態例が,本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
図1は,本発明の実施の形態における掘削方法の概要を説明する図である。本実施の形態の掘削方法では,まず,マンホールの径(直壁の外径)よりも大きい円管10(以下,ケーシングと称する場合がある)をマンホールと同心になるように地面に配置し(図1(a)参照),後述する掘削装置100を用いて,ケーシング10に上側から下向き荷重を加え,ケーシング10を地中へ押し込んでいく(図1(b)参照)。また,掘削装置100の垂直に延びる軸体の下端部を,地中のマンホール内に挿入し,当該下端部に取り付けられているアンカー部をマンホールの斜壁内周面に当接させておく。そして,ケーシング10の上端までが地中に埋め込まれると,ケーシング10はそれ以上深さ方向に下降しなくなるので,ケーシング10に加えられる下向き荷重は,軸体を持ち上げる上向きの力となり,アンカー部の斜壁内周面の当接によって,軸体とともに,地中内でケーシング10に囲われるマンホール部分を引き上げる。詳細な動作については,図8にて説明する。
【0014】
図2は,ケーシング10の斜視図である。ケーシング(円管)10は,鋼鉄製の導管構造であり,下端部の縁は,円周にわたってのこぎり刃状に加工されている。ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,ケーシング10に下向き荷重を加えると,のこぎり刃状の縁により,地面を削りながら,地中に埋め込まれていく。
【0015】
図3は,ケーシング10を回転させるケーシング回転機を示す図である。図3は,ケーシング10及びケーシング回転機120の上面を示す。ケーシング回転機120は,その本体に取り付けられる油圧シリンダ121,122を有し,ケーシング10に隣接して配置されたケーシング回転機120の本体から水平方向に延びる油圧シリンダ(水平伸縮機構)121,122が,ケーシング10の外周面の両側に取り付けられ,水平に延びる油圧シリンダ121,122を交互に水平方向に伸縮させることで,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させる。なお,ケーシング回転機120には,ケーシング10が地面内に垂直に挿入されるように,ケーシング10の偏心を防止し,ケーシングの姿勢を垂直に保つガイド機能を有していてもよい。ガイド機能は,例えば,ケーシングの傾きを抑えるようにケーシングの外周面を垂直に支える支持機構により実現される。ケーシング回転機120は,掘削装置100の一部を構成する。
【0016】
なお,ケーシング10は,その全体が埋め込まれた時に,掘り出す対象物であるマンホールの斜壁の深さ程度まで埋まる高さを有する。また,ケーシング10の径は,マンホールの直壁の外径(斜壁の下端部の外径にほぼ一致)よりも大きい径であり,直壁の内径900mm規格のマンホールに対しては,例えば約1400mm程度である。
【0017】
図4は,本実施の形態における掘削装置100の構成例を示す断面図である。掘削装置100は,垂直方向(長手方向)に延びる軸体110を有し,軸体110には,その長手方向に径を小さくすることにより形成される凹部110aが一定間隔毎に複数設けられる。軸体110の下端部には,折りたたみ式の複数のアンカー部110bが取り付けられている。軸体110の下端部がマンホールに挿入される場合,アンカー部110bは,折りたたまれた状態で,マンホールの地上開口部を通過でき,マンホール内部で拡げられると,マンホールの内周面に接触する。特に,径が連続的に変化する斜壁内で拡げられると,アンカー部110bは,斜壁のいずれかの径部分の内周面に当接する。
【0018】
さらに,掘削装置100は,軸体110を中心として,軸体110から水平方向に90度間隔で4方向に延びる水平支持部111を備え,各水平支持部111の先端部分には,例えば油圧駆動機構(油圧シリンダ)により垂直方向に伸縮する細長状の垂直伸縮機構112の上端部が固定されている。垂直伸縮機構112は,軸体110と平行に垂直方向に延び,可動部分が固定長さ部分に対して入れ子式に出入りすることで伸縮可能であって,水平支持部111の昇降に伴って,垂直伸縮機構112の端点も垂直方向に移動可能である。
【0019】
リング状の台座113は,各垂直伸縮機構112の下端部に取り付けられ,4つの垂直伸縮機構112の下端部を円周上に連結する台座である。台座113は,ケーシング10とほぼ同一の径を有し,後述するように,ケーシング10の上端に,この台座113を載置し,垂直伸縮機構112の伸縮機構により,ケーシング10に下向き荷重を加える。台座113のリング幅は,ケーシング10の厚さよりも十分に大きい。
【0020】
また,水平支持部111には,水平方向に伸縮する第1水平伸縮機構114が少なくとも2つ設けられ,図示されるように,第1水平伸縮機構114が伸びると,その先端部が軸体110の凹部110aに嵌る構造となっている。すなわち,第1水平伸縮機構114の先端部が軸体110に嵌った状態は,水平支持部111及びそれに取り付けられた4つの垂直伸縮機構112が,軸体110に連結された状態である。
【0021】
さらに,垂直伸縮機構112にも,水平方向に伸縮する別の第2水平伸縮機構115が取り付けられ,第1水平伸縮機構114と同様に,第2水平伸縮機構115が伸びると,第1水平伸縮機構114と別の位置で,その先端部が軸体110の凹部110aに嵌る構造となっている。第1水平伸縮機構114と同様に,軸体110の凹部110aに嵌った状態では,水平支持部111及びそれに取り付けられた4つの垂直伸縮機構112が,軸体110に連結された状態となる。後述するように,第2水平伸縮機構115は軸体110と嵌合し,第1水平伸縮機構114の嵌合をはずすことで,垂直伸縮機構112を伸縮させて,水平支持部111を垂直方向に昇降させる。水平支持部111,第1水平伸縮機構114及び第2水平伸縮機構は,軸体110と垂直伸縮機構112とを連結する連結機構を構成する。また,第1水平伸縮機構114及び第2水平伸縮機構ともに,油圧駆動機構(油圧シリンダ)で構成される。ただし,掘削装置を構成する各伸縮機構は,油圧駆動に限らず,他の駆動機構を利用したものであってもよい。
【0022】
図5は,図4の掘削装置100の構成を示す写真であって,ケーシング10の上に台座113を介して垂直伸縮機構112が載置され,ケーシング10を埋設する際の配置を示し,ケーシング10には,ケーシング回転機120の水平伸縮機構121(122)も取り付けられている。
【0023】
図6は,第1水平伸縮機構114の上面図である。第1水平伸縮機構114は,対向する位置に2つ設けられ,その先端部は,図示されるように,軸体110の凹部110aの形状に合う先端形状を有する。図6(a)は,第1水平伸縮機構114が収縮した状態で,軸体110の凹部110aに嵌合したおらず,図6(b)は,第1水平伸縮機構114が伸長し,軸体110の凹部110aに嵌合した状態を表す。
【0024】
図7は,第2水平伸縮機構115の上面図である。第2水平伸縮機構115は,各垂直伸縮機構112毎に4つ設けられ,その先端部は,図示されるように,軸体110の凹部110aの形状に合う先端形状を有する。図7(a)は,第2水平伸縮機構115が収縮した状態で,軸体110の凹部110aに嵌合したおらず,図7(b)は,第2水平伸縮機構115が伸長し,軸体110の凹部110aに嵌合した状態を表す。
【0025】
図8は,本実施の形態における掘削装置の動作を説明する図である。図8では,掘削装置100,ケーシング10,マンホールの斜壁部分の断面図が示される。図8(a)において,ケーシング10を地面に配置し,その上に垂直伸縮機構112を載置する。このとき,垂直伸縮機構112は縮められた状態である。また,第1水平伸縮部114が伸びて,軸体110に連結される。軸体110の下端部は,マンホール内に挿入されており,その下端部のアンカー部110bは,マンホール挿入後,折りたたまれた状態から拡げられる。アンカー部110bの拡張作業は,作業員による手作業で行われてよいし,必要な駆動機構により機械動作により行われてもよい。
【0026】
次に,図8(b)に示されるように,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,垂直伸縮機構112を下向きに伸びるように動作させて,ケーシング10に下向き荷重を加えることで,ケーシング10を地面内に埋め込んでいく。
【0027】
垂直伸縮機構112の最大伸長長さでケーシング10全体が埋め込まれない場合は,図8(c)に示すように,垂直伸縮機構112が伸びきった位置において,第2水平伸縮機構115を伸ばして軸体110に連結し,代わりに,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずした状態(連結解除状態)で,垂直伸縮機構112を下方向に縮むように駆動し,垂直伸縮機構112が縮められた位置で,再度,第1水平伸縮機構114を伸ばして軸体110に連結させ,第2水平伸縮機構115を軸体110からはずす(連結解除)。
【0028】
図8(c)の状態において,再度,図8(b)の動作を繰り返し,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,垂直伸縮機構112を下向きに伸びるように動作させて,ケーシング10に下向き荷重を加えることで,ケーシング10をさらに地面内に埋め込んでいく。これにより,図8(d)に示すように,ケーシング10ほぼ全体を地面内に埋め込まれる。
【0029】
続いて,図8(e)に示すように,第2水平伸縮機構115を伸ばして軸体110に固定し,代わりに,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずした状態で,垂直伸縮機構112を下方向に縮むように駆動する。その後,垂直伸縮機構112が縮められた位置で,再度,第1水平伸縮機構114を伸ばして軸体110に連結させ,第2水平伸縮機構115を軸体110からはずす(連結解除)。
【0030】
図8(e)の状態において,さらに,垂直伸縮機構112によりケーシング10に対して下向き荷重を加える。そうすると,ケーシング10の最上端が地面に埋まり,台座113が地面に当接する。台座113はその幅広端面による圧力分散より,垂直伸縮機構112の下向き荷重によっても地面内に埋め込まれない。従って,垂直伸縮機構112の下向き荷重は,垂直伸縮機構112自体を上向きに伸ばす力として作用し,垂直伸縮機構112は,上方向に伸びていく。このとき,図8(f)に示されるように,垂直伸縮機構112は,第1水平伸縮機構114と軸体110との係合により,軸体110を引き上げ,さらに,軸体110のアンカー部110bによって斜壁部分(ケーシング10によってくり抜かれた地下部分)も,軸体110とともに持ち上げられていく。
【0031】
垂直伸縮機構112が一旦上方向に伸びきると,図8(g)に示すように,第2水平伸縮機構115を伸ばして軸体110に連結し,代わりに,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずした状態(連結解除状態)で,垂直伸縮機構112を下方向に縮むように駆動する。このとき,第1水平伸縮機構114の軸体110からはずされているので,軸体110は動かない。
【0032】
そうして,垂直伸縮機構112が縮められた位置で,再度,第1水平伸縮機構114を伸ばして軸体110に固定させ,第2水平伸縮機構115を軸体110からはずし,垂直伸縮機構112に下向き荷重を加える。これにより,再度,垂直伸縮機構112は,図8(h)に示すように,上方向に伸びていき,それとともに,軸体110も引き上げられ,さらに,そのアンカー部110bに引っかけられるようにして斜壁部分も持ち上げられ,
斜壁部分全体を地上に引き上げる。最後に,地上に引き上げられた斜壁部分は,図8(i)に示すように,クレーンでつり上げられて移動される。
【0033】
このように,本実施の形態の掘削工法は,円筒状のケーシング10をマンホール周囲に埋め込み,当該ケーシングに加えられる下向き荷重の反作用を利用して,地面内のマンホールを垂直に引き上げるようにする工法である。
【0034】
図9は,本実施の形態の掘削工法により掘削される地中部分を表す図である。円筒状のケーシング10を地中に打ち込んでから,ケーシング10に囲まれる地中部分を引き上げるので,ケーシング10によって,引き上げ抵抗を低減され,ケーシング10に囲まれる円柱状の地中部分をくり抜いて,油圧駆動機構を用いて,垂直に引き上げることが可能となる。
【0035】
図10は,従来工法による掘削範囲と本実施形態の掘削工法による掘削範囲を比較する図である。従来工法によれば,およそ直径3140mmの範囲を掘削するのに対して,本実施形態の掘削工法では,直径1400mm程度の範囲で足り,地上面の掘削面積及び掘削される地中部分の体積ともに大幅に低減される。
【0036】
本実施形態の掘削工法の効果をまとめると以下の通りである。
【0037】
(1)掘削範囲が狭く,施工範囲が小さい。従来のように,斜め45度に掘削する場合と比較して,掘削範囲が狭いため,施工範囲を小さくすることができる。例えば,従来の工法では,マンホールを中心として,約3m四方を掘削する必要があるが,本工法では,約1.4mの径の掘削(ケーシング10の埋め込み)で足りる。掘削範囲が減るため,掘削される土の量は大幅に低減する。
【0038】
(2)施工期間も大幅に短縮される。本工法では,ケーシングに下向き荷重を加えて埋め込んで,さらに,ケーシングに下向き荷重を加えることで,マンホールを引き上げるという,同一動作を繰り返すことで,掘削工程から引き上げ工程までが進む。従来のように,実際に,地面下のマンホールを実際掘り出す作業と比べて,圧倒的に作業工程が簡素化し,作業時間も短縮する。
【0039】
(3)掘削時に振動や騒音が出ない。従来の掘削機を用いた掘削を行わないので,振動や騒音がほとんど出ない。ケーシング10の埋め込み処理も,ケーシング10を正逆方向に交互に回転させながら,比較的ゆっくりとのこぎりを引くように動作させるので,振動や騒音は極めて小さい。
【0040】
本実施形態における掘削方法では,軸体110のアンカー部110bを地中マンホールの斜壁の内周面に当接させ,当該斜壁部分を引き上げる例について説明したが,直壁部分にも適用可能である。直壁を引き上げる場合は,例えば,あらかじめ直壁の内周面に所定の突起体を打ち込んでおき,アンカー部110が当該突起体に引っ掛かることで,軸体110の引き上げとともに,直壁を垂直に持ち上げることができる。
【符号の説明】
【0041】
10:ケーシング,100:掘削装置,110:軸体,110a:凹部,110b:アンカー部,111:水平支持部,112:垂直伸縮機構,113:台座,114:第1水平伸縮機構,115:第2水平伸縮機構,120:ケーシング回転機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されているマンホールの径よりも大きい円管を当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置する工程と,
地上から地下のマンホールに延びる軸体をマンホールの地上開口部からマンホール内に挿入し,前記軸体のマンホール内の下端から半径方向に延びる当接部材をマンホールの内周面に当接させる工程と,
地上で前記軸体と連結している駆動機構により前記円管に下向き荷重を加えて,前記円管を地中に埋め込む工程と,
前記軸体とともに,内周面が前記当接部材と当接したマンホール部分を含む前記円管によってくり抜かれた地中部分を引き上げる工程と,
を備えることを特徴とする掘削方法。
【請求項2】
前記円管を円周方向に正逆方向に回転させながら,前記円管を地中に埋め込むことを特徴とする請求項1に記載の掘削方法。
【請求項3】
前記円管に加えられる下向きの力の反作用により,前記軸体に上向きの力が加えられ,前記軸体及び前記円管によってくり抜かれた地中部分が引き上げられることを特徴とする請求項1又は2に記載の掘削方法。
【請求項4】
垂直方向に延び,下端部がマンホール内部に挿入される軸体と,
前記軸体の半径方向の周囲に配置され,垂直方向に伸縮して下向き荷重を加えることができる第1の駆動機構と,
前記第1の駆動機構を前記軸体に対して昇降可能に連結する連結機構と,
前記軸体の下端部に設けられ,下端部から半径方向に伸縮可能に延びてマンホールの内周面に当接する当接部材とを備えることを特徴とする掘削装置。
【請求項5】
前記連結機構は,水平方向に伸縮して,前記軸体と前記第1の駆動機構間の連結及び連結解除を行うように動作することを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【請求項6】
軸体の側面には,前記連結機構と嵌合する凹部が垂直方向に所定間隔毎に設けられ,前記連結機構が水平方向に伸びて,当該凹部に嵌合することで,前記軸体と前記第1の駆動機構は連結されることを特徴とする請求項5に記載の掘削装置。
【請求項7】
前記連結機構は,異なる高さ位置に2つ設けられ,交互に前記軸体と前記第1の駆動機構間の連結及び連結解除を行うように動作することで,前記第1の駆動機構を前記軸体に対して昇降可能にすることを特徴とする請求項6に記載の掘削装置。
【請求項8】
前記駆動機構は,地中に埋設されているマンホールの径よりも大きく且つ当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置される円管の上端部に載置され,前記円管に下向き荷重を加えることを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【請求項9】
前記円管を円周方向に正逆方向に回転させる第2の駆動機構を備えることを特徴とする請求項8に記載の掘削装置。
【請求項10】
前記第1の駆動機構及び前記連結機構は,油圧シリンダを含むことを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【請求項1】
地中に埋設されているマンホールの径よりも大きい円管を当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置する工程と,
地上から地下のマンホールに延びる軸体をマンホールの地上開口部からマンホール内に挿入し,前記軸体のマンホール内の下端から半径方向に延びる当接部材をマンホールの内周面に当接させる工程と,
地上で前記軸体と連結している駆動機構により前記円管に下向き荷重を加えて,前記円管を地中に埋め込む工程と,
前記軸体とともに,内周面が前記当接部材と当接したマンホール部分を含む前記円管によってくり抜かれた地中部分を引き上げる工程と,
を備えることを特徴とする掘削方法。
【請求項2】
前記円管を円周方向に正逆方向に回転させながら,前記円管を地中に埋め込むことを特徴とする請求項1に記載の掘削方法。
【請求項3】
前記円管に加えられる下向きの力の反作用により,前記軸体に上向きの力が加えられ,前記軸体及び前記円管によってくり抜かれた地中部分が引き上げられることを特徴とする請求項1又は2に記載の掘削方法。
【請求項4】
垂直方向に延び,下端部がマンホール内部に挿入される軸体と,
前記軸体の半径方向の周囲に配置され,垂直方向に伸縮して下向き荷重を加えることができる第1の駆動機構と,
前記第1の駆動機構を前記軸体に対して昇降可能に連結する連結機構と,
前記軸体の下端部に設けられ,下端部から半径方向に伸縮可能に延びてマンホールの内周面に当接する当接部材とを備えることを特徴とする掘削装置。
【請求項5】
前記連結機構は,水平方向に伸縮して,前記軸体と前記第1の駆動機構間の連結及び連結解除を行うように動作することを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【請求項6】
軸体の側面には,前記連結機構と嵌合する凹部が垂直方向に所定間隔毎に設けられ,前記連結機構が水平方向に伸びて,当該凹部に嵌合することで,前記軸体と前記第1の駆動機構は連結されることを特徴とする請求項5に記載の掘削装置。
【請求項7】
前記連結機構は,異なる高さ位置に2つ設けられ,交互に前記軸体と前記第1の駆動機構間の連結及び連結解除を行うように動作することで,前記第1の駆動機構を前記軸体に対して昇降可能にすることを特徴とする請求項6に記載の掘削装置。
【請求項8】
前記駆動機構は,地中に埋設されているマンホールの径よりも大きく且つ当該マンホールとほぼ同心となるように地上に配置される円管の上端部に載置され,前記円管に下向き荷重を加えることを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【請求項9】
前記円管を円周方向に正逆方向に回転させる第2の駆動機構を備えることを特徴とする請求項8に記載の掘削装置。
【請求項10】
前記第1の駆動機構及び前記連結機構は,油圧シリンダを含むことを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【公開番号】特開2013−60722(P2013−60722A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198808(P2011−198808)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(394011536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(394011536)
【Fターム(参考)】
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