説明

マンホール用可撓継手およびそこに用いられる止水ゴム構体

【課題】マンホールの壁厚が小さい場合やマンホール径に対して横孔の内径が比較的大きい場合でもマンホールと剛性管との間の止水を充分なものとすることにある。
【解決手段】マンホール1の横孔1a内に配置される剛性管4と、剛性管4の前記他端部と管路2の外周面に水密に接続される可撓性遮水円筒部材5と、マンホール1の横孔1aの内周面と剛性管4との間に介装される環状の止水ゴム構体8とを具え、止水ゴム構体8が、環状ゴム9と、複数の貫通穴9aと、複数本の雄ネジ部材10とで構成され、複数の雌ネジ部材11と、環状ゴム9の軸線方向にその環状ゴム9を間に挟んで複数の対をなすとともにその環状ゴム9の周方向に複数並べられ、各対が一本の雄ネジ部材10とそれに螺合する雌ネジ部材11とによって互いの接近方向に締め付けられる複数の圧縮部材12と、を有することを特徴とするマンホール用可撓継手である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マンホールの横孔と管路との接続に用いられるマンホール用可撓継手および、そのマンホール用可撓継手に用いられる止水ゴム構体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホールの横孔と下水管等の管路との接続部に対しては、コンクリートを打設して巻き立てる工法が行われていたが、この従来の工法では、地盤沈下や地震等の地盤の歪で管路とマンホールとの相対的位置が変位すると、コンクリート巻き立て部がひび割れしたり破壊したりして、不明水の浸入や下水の漏水等が発生するという欠点があった。
【0003】
このため最近では、マンホールと本管との相対的位置が変位してもその変位を吸収し、止水性も維持できる可撓継手が多用されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のマンホール用可撓継手は、マンホールの横孔としての接続管取付開口と管路との接続に用いられるものであって、マンホールの接続管取付開口に一端部寄りの部分を配置されるとともに他端部寄りの部分をその接続管取付開口からマンホール外に突出させる剛性管としての鞘管と、一端部をその鞘管の前記他端部寄りの部分に水密に接続されるとともに他端部を前記管路の外周面に水密に接続される可撓性遮水円筒部材としての可撓性継手部材と、マンホールの接続管取付開口の内周面と鞘管の前記一端部との間に介装される環状の止水ゴム構体とを具えており、その止水ゴム構体は、環状ゴムからなる可撓性リングと、その可撓性リングにその周方向に等間隔に形成されてその軸線方向に延在する複数の貫通穴と、それらの貫通穴にそれぞれ挿通される複数本の雄ネジ部材としてのボルトと、それらの雄ネジ部材にそれぞれ螺合する複数の雌ネジ部材としてのナットと、可撓性リングの軸線方向にその可撓性リングを間に挟んで対をなし、それらの一方が鞘管の外周面に固定されるとともに他方が独立している圧縮部材としての二枚の環状のフランジ板とを有している。
【0005】
ここで、上記二枚のフランジ板は、上記複数本のボルトとそれらに螺合するナットとによって互いの接近方向に締め付けられて、上記可撓性リングの全体を軸線方向に圧縮し、その可撓性リングの半径方向寸法(半径方向厚さ)を拡大させ、これにより可撓性リングが、マンホールの接続管取付開口の内周面と鞘管の外周面とに密接してマンホールと鞘管との間を止水する。
【特許文献1】特開平10−025756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1記載のマンホール用可撓継手では、止水ゴム構体は、管路の軸線方向に対し各々直角に延在する二枚の環状のフランジ板で可撓性リングを全体的に軸線方向に圧縮するものであるのに対し、マンホールの接続管取付開口は、上方から見るとマンホールの外径に応じた半径の円弧状をなしているので、接続管取付開口の内周面も、上下端部と左右側部とでは管路の軸線方向に位置がずれている。
【0007】
このため、マンホール径に対して接続管取付開口の内径が比較的大きい場合には、可撓性リングを接続管取付開口の内周面に沿わせることができず、可撓性リングの上下端部がマンホールの内側にはみ出すか、可撓性リングの左右端部がマンホールの外側にはみ出すかしてしまって、マンホールと鞘管との間を充分に止水できないという問題があった。そしてこの問題は、マンホールの壁が薄い場合に特に顕著であった。
【0008】
それゆえこの発明の課題は、マンホール用可撓継手において、マンホールの横孔と剛性管との間を止水する止水ゴム構体を、マンホールの外径が小さい場合でもその横孔の内周面に沿わせて、マンホールと剛性管との間の止水を充分なものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を有利に解決するこの発明のマンホール用可撓継手は、マンホールの横孔と管路との接続に用いられるマンホール用可撓継手において、前記マンホールの横孔内に一端部寄りの部分を配置されるとともに他端部寄りの部分をその横孔から前記マンホール外に突出させる剛性管と、一端部を前記剛性管の前記他端部寄りの部分に水密に接続されるとともに他端部を前記管路の外周面に水密に接続される可撓性遮水円筒部材と、前記マンホールの横孔の内周面と前記剛性管の前記一端部寄りの部分との間に介装される環状の止水ゴム構体と、を具え、前記止水ゴム構体が、環状ゴムと、その環状ゴムにその周方向に等間隔に形成されてその軸線方向に延在する複数の貫通穴と、それらの貫通穴にそれぞれ挿通される複数本の雄ネジ部材と、それらの雄ネジ部材にそれぞれ螺合する複数の雌ネジ部材と、前記環状ゴムの軸線方向にその環状ゴムを間に挟んで複数の対をなすとともにその環状ゴムの周方向に複数並べられ、前記各対が一本の前記雄ネジ部材とそれに螺合する前記雌ネジ部材とによって互いの接近方向に締め付けられて前記環状ゴムの前記貫通穴の周囲部分を前記軸線方向に圧縮し、その貫通穴の周囲部分の径方向寸法を拡大させる複数の圧縮部材と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
また、上記マンホール用可撓継手に用いられるこの発明の止水ゴム構体は、環状ゴムと、その環状ゴムにその周方向に等間隔に形成されてその軸線方向に延在する複数の貫通穴と、それらの貫通穴にそれぞれ挿通される複数本の雄ネジ部材と、それらの雄ネジ部材にそれぞれ螺合する複数の雌ネジ部材と、前記環状ゴムの軸線方向にその環状ゴムを間に挟んで対をなすとともにその環状ゴムの周方向に複数並べられ、前記各対が一本の前記雄ネジ部材とそれに螺合する前記雌ネジ部材とによって互いの接近方向に締め付けられて前記環状ゴムの前記貫通穴の周囲部分を前記軸線方向に圧縮し、その貫通穴の周囲部分の径方向寸法を拡大させる複数の圧縮部材と、を具えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
かかるこの発明のマンホール用可撓継手およびそこに用いられるこの発明の止水ゴム構体にあっては、上記圧縮部材の複数の対が各々、上記複数本の雄ネジ部材のうちの対応する一本とそれに螺合する雌ネジ部材とによって互いの接近方向に締め付けられて、上記環状ゴムの上記貫通穴の周囲部分を軸線方向に圧縮し、その貫通穴の周囲部分の半径方向寸法を拡大させ、これにより環状ゴムが、マンホールの横孔の内周面と剛性管の外周面とに密接してマンホールと剛性管との間を止水する。
【0012】
しかもこの発明のマンホール用可撓継手およびそこに用いられるこの発明の止水ゴム構体にあっては、複数の圧縮部材の複数対が環状ゴムの周方向に複数並べられて、環状ゴムの複数の貫通穴の周囲部分をそれぞれ軸線方向に圧縮するので、マンホールの横孔が上方から見てマンホールの外径に応じた半径の円弧状をなしていてその横孔の内周面が上下端部と左右側部とで管路の軸線方向に位置ずれし、マンホール径に対して横孔の内径が比較的大きくてその位置ずれ量が比較的大きくても、複数の貫通穴に雄ネジ部材および雌ネジ部材によってそれぞれ装備される複数の圧縮部材が相互に連続せずに独立しているため、環状ゴムの各部を横孔の内周面に沿わせて管路の軸線方向に移動させて圧縮部材で締め付けるることができる。また、独立した圧縮部材は、締め付け時に両隣の圧縮部材の影響をほとんど受けないので、複数の圧縮部材の全体の締め付けトルクを容易に所定の値に揃えることができる。
【0013】
従ってこの発明のマンホール用可撓継手およびそこに用いられるこの発明の止水ゴム構体によれば、マンホール径に対して横孔の内径が比較的大きくてその位置ずれ量が比較的大きくても、またマンホールの壁が薄い場合でも、環状ゴムの上下端部がマンホールの内側にはみ出したり、環状ゴムの左右端部がマンホールの外側にはみ出したりすることがないので、マンホールと剛性管との間の止水を充分なものとすることができる。
【0014】
なお、この発明のマンホール用可撓継手においては、前記各雄ネジ部材は、前記対をなす圧縮部材の一方に一対一で固着されていると好ましい。このようにすれば圧縮部材とともに雄ネジ部材を搬送および環状ゴムに対して配置することができるので止水ゴム構体の組立時の手間を少なくすることができる。
【0015】
また、この発明のマンホール用可撓継手においては、前記剛性管の外径は、前記管路の外径よりも大径であり、前記可撓性遮水円筒部材の前記一端部の内径は、その可撓性遮水円筒部材の前記他端部の内径よりも大径であると好ましい。このようにすれば、管路を剛性管内に挿入することができるので、マンホールに対する管路の位置の制約を少なくし得て、マンホール用可撓継手の設置を容易に行うことができる。
【0016】
さらに、この発明のマンホール用可撓継手においては、前記可撓性遮水円筒部材は、軸線方向断面形状がZ字状をなす中間部を有すると好ましい。このようにすれば、施工後に地盤沈下や地震等で管路とマンホールとの間の相対位置に変位が生じた場合、特に、管路の抜け出しや押し込み方向の変位が生じた場合に有用である。
【0017】
一方、この発明の止水ゴム構体においては、前記環状ゴムは、軸線方向断面形状がその軸線方向に延在する長方形状をなすものであると好ましい。このようにすれば、軸線方向への圧縮によって半径方向に移動する材料が増えるので、マンホールの横孔の内径誤差が大きい場合でも確実に止水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のマンホール用可撓継手の一実施例および、そこに用いられるこの発明の止水ゴム構体の一実施例をマンホールに設置した状態で半断面で示す斜視図、図2は、図1の要部を拡大して判断面で示す斜視図、図3は、上記実施例のマンホール用可撓継手をマンホールの外側から見た状態で示す斜視図、図4は、上記実施例のマンホール用可撓継手をマンホールの内側から見た状態で示す斜視図、図5は、上記実施例のマンホール用可撓継手を上記実施例の止水ゴム構体が組み立てられた状態で半断面で示す分解斜視図、そして図6は、上記実施例のマンホール用可撓継手を上記実施例の止水ゴム構体も分解された状態で半断面で示す分解斜視図である。
【0019】
図中符号1はマンホールを示し、マンホール1は、図示例では円筒状をなしているが、特にこれに限定されず、種々の形状、材質等のものが包含される。マンホール1は、代表的には、筒状のものである。筒状とは、外周の壁部とその壁部に囲まれた内部空間とを有する形状をいう。筒状のマンホール1には、外形又は内形の少なくとも1方において、横断面が、楕円形、矩形、多角形等のものや、これらの組合せのものも包含される。筒状には、図示例の如き円筒状が含まれる。
【0020】
マンホール1には、マンホール径に対して比較的大きい内径の削孔部1aを有するマンホールや、薄壁構造型マンホールが包含される。マンホール1は、代表的には、コンクリート製やレジンコンクリート製である。
【0021】
横孔としての削孔部1aは、マンホール1の種々の位置に設けることができる。削孔部1aの、孔の大きさ、形状、形成手段等は、特に制限されない。削孔部1aは、代表的には略円形の孔として形成される。略円形には、上述のように、円形、楕円形等、円に近似する形状も包含される。削孔部1aは種々の方法によって作製することができる。
【0022】
削孔部1aは、主として、マンホール1を管路2と連通させるものである。連通させる管路2が下水道等の管の場合、削孔部1aはマンホール1の側壁に開けられることが多い。横断面が略円形のマンホール1の側壁に削孔部1aが設けられる場合、削孔部1aの内周面は、マンホール1の側壁の湾曲に沿って3次元的に湾曲する。
【0023】
この実施例のマンホール用可撓継手がマンホール1に接続する管路2は、特に制限されず、種々の種類、口径や形状、材質等からなるものが包含される。管路2は、主として、横断面が略円形のものである。略円形には、上述の楕円形等、円に近似する形状のものが包含される。通常、マンホール1の削孔部1aは、かかる管路2の外形に応じて設計される。管路2は、代表的に、下水道管である。
【0024】
この実施例のマンホール用可撓継手3は、マンホール1と接続すべき管路2との接続部、主として、マンホール1の削孔部1aの内周面と接続すべき管路2の外周面(図示例では管路2の外周面に突設された多数の環状リブの先端面)との間に設けられる。マンホール1は、削孔部1aにおいて管路2と接続されるが、削孔部1aと管路2の外周面との間には通常、可撓性や止水性等が要求されるため、ここではこの実施例のマンホール用可撓継手3が用いられている。
【0025】
この実施例のマンホール用可撓継手3は、マンホール1の削孔部1a内に一端部4a寄りの部分を配置されるとともに他端部4b寄りの部分をその削孔部1aからマンホール1の外側に突出させる剛性管としての鋼製円筒4と、一端部5aの周囲を締結バンド6で締め付けられてその一端部5aを鋼製円筒4の他端部4b寄りの部分に水密に接続されるとともに他端部5bの周囲をもう一つの締結バンド7で締め付けられてその他端部5bを管路2の外周面に水密に接続される可撓性遮水円筒部材5と、マンホール1の削孔部1aの内周面と鋼製円筒4の一端部4a寄りの部分との間に介装される合成ゴム製の環状の上記実施例の止水ゴム構体8とを具えている。
【0026】
ここで、鋼製円筒4の外径は、管路2の外径よりも大径とされ、可撓性遮水円筒部材5の上記一端部5aの内径は、その可撓性遮水円筒部材5の上記他端部5bの内径よりも大径とされている。また、鋼製円筒4の外周面には、マンホール1の外周面に沿うように鋼製円筒4の軸線方向に湾曲した鍔部4cが立設されており、可撓性遮水円筒部材5は、軸線方向断面形状がZ字状をなす中間部5cを有している。
【0027】
可撓性遮水円筒部材5は、種々の材料から形成することができ、代表的には弾性体製、特にゴム製のものである。かかる可撓性遮水円筒部材5は、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、天然ゴム、及び軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることができる。
【0028】
締結バンド6,7は、剛性材料からなることができ、剛性材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、防錆メッキ鋼、防錆被覆鋼材等の金属や、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET又はPETP)等の硬質プラスチック、繊維強化プラスチック(FRP)等の繊維補強プラスチック等からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの各材料は腐食し難いので望ましい。
【0029】
そしてこの実施例の止水ゴム構体8は、環状ゴム9と、その環状ゴム9にその周方向に等間隔に形成されてその軸線方向に延在する複数の貫通穴9aと、それらの貫通穴9aにそれぞれ挿通される複数本の雄ネジ部材としての複数本のボルト10と、それらのボルト10にそれぞれ螺合する複数の雌ネジ部材としての複数個のナット11と、環状ゴム9の軸線方向にその環状ゴム9を間に挟んで複数の対をなすとともにその環状ゴム9の周方向に複数並べられる複数の圧縮部材としての鋼板製の多数の押圧金具12とを具えている。
【0030】
ここで、環状ゴム9の軸線方向断面は、その軸線方向に延在する長方形をなしている。また、押圧金具12の各対の一方には、その押圧金具12を貫通した一本の上記ボルト10が一体的に溶接固着されている。
【0031】
環状ゴム9は、ゴム製のものであり、かかる環状ゴム9は可撓性遮水円筒部材5と同様、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、天然ゴム、及び軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることができる。
【0032】
この実施例のマンホール用可撓継手3およびそこに用いられるこの実施例の止水ゴム構体8にあっては、押圧金具12の複数の対が各々、複数本のボルト10のうちの対応する一本とそれに螺合するナット11とによって互いの接近方向に締め付けられて、環状ゴム9の貫通穴9aの周囲部分を軸線方向に圧縮し、その貫通穴9aの周囲部分の半径方向寸法(半径方向厚さ)を拡大させ、これにより環状ゴム9が、図2に示すように、マンホール1の削孔部1aの内周面と鋼製円筒4の外周面とに密接してマンホール1と鋼製円筒4との間を止水する。また鋼製円筒4と管路2との間は、それらに両端部を締結バンド6,7で締め付けられて水密に接続された可撓性遮水円筒部材5が止水する。
【0033】
しかもこの実施例のマンホール用可撓継手3およびそこに用いられるこの実施例の止水ゴム構体8にあっては、複数の押圧金具12の複数対が環状ゴム9の周方向に複数並べられて、環状ゴム9の複数の貫通穴9aの周囲部分をそれぞれ軸線方向に圧縮するので、マンホール1の削孔部1aが上方から見てマンホール1の外径に応じた半径の円弧状をなしていてその削孔部1aの内周面が上下端部と左右側部とで管路2の軸線方向に位置ずれし、マンホール径に対して削孔部1aの内径が比較的大きくてその位置ずれ量が比較的大きくても、図1に示すように、環状ゴム9の各部を削孔部1aの内周面に沿わせて管路2の軸線方向に移動させて押圧金具12で締め付けるることができる。
【0034】
従ってこの実施例のマンホール用可撓継手3およびそこに用いられるこの実施例の止水ゴム構体8によれば、マンホール1の外径に対して削孔部1aの内径が比較的大きくてその位置ずれ量が比較的大きくても、またマンホール1の壁が薄い場合でも、環状ゴム9の上下端部がマンホール1の内側にはみ出したり、環状ゴム9の左右端部がマンホール1の外側にはみ出したりすることがないので、マンホール1と鋼製円筒4との間の止水を充分なものとすることができる。
【0035】
さらにこの実施例のマンホール用可撓継手3およびそこに用いられるこの実施例の止水ゴム構体8によれば、各ボルト10は、対をなす押圧金具12の一方に一対一で固着されていることから、押圧金具12とともにボルト10を搬送および環状ゴム9に対して配置することができるので、止水ゴム構体8の組立時の手間を少なくすることができる。
【0036】
またこの実施例のマンホール用可撓継手3によれば、鋼製円筒4の外径は管路2の外径よりも大径であり、可撓性遮水円筒部材5の一端部5aの内径はその可撓性遮水円筒部材5の他端部5bの内径よりも大径であることから、管路2を鋼製円筒4内に挿入することができるので、マンホール1に対する管路2の位置の制約を少なくし得て、マンホール用可撓継手3の設置を容易に行うことができる。
【0037】
さらにこの実施例のマンホール用可撓継手3によれば、可撓性遮水円筒部材5は軸線方向断面形状がZ字状をなす中間部5cを有していることから、施工後に地盤沈下や地震等で管路2とマンホール1との間の相対位置に変位が生じた場合、特に、管路2の抜け出しや押し込み方向の変位が生じた場合に有用である。
【0038】
一方この実施例の止水ゴム構体8によれば、環状ゴム9の軸線方向断面形状がその軸線方向に延在する長方形状をなしていることから、環状ゴム9の軸線方向への圧縮によって半径方向に移動する材料が増えるので、マンホール1の削孔部1aの内径誤差が大きい場合でも確実に止水することができる。
【0039】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限られるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、可撓性遮水円筒部材5は軸線方向断面形状が斜面状をなす中間部を有していても良く、また環状ゴム9の軸線方向断面形状が長円形や楕円形等をしていても良い。そして可撓性遮水円筒部材5の両端部の少なくとも一方と鋼製円筒4および管路2の少なくとも一方との間の接続は締結バンド6,7での締め付け以外の方法で行われても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
かくしてこの発明のマンホール用可撓継手およびそこに用いられる止水ゴム構体は、マンホールの壁厚が小さい場合やマンホール径に対して横孔の内径が比較的大きい場合等、通常の止水ゴム構体が適用できない場合でもマンホールと剛性管との間の止水を充分なものとすることができ、もちろん通常の止水ゴム構体が適用できる場合にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明のマンホール用可撓継手の一実施例および、そこに用いられるこの発明の止水ゴム構体の一実施例をマンホールに設置した状態で半断面で示す斜視図である。
【図2】図1の要部を拡大して判断面で示す斜視図である。
【図3】上記実施例のマンホール用可撓継手をマンホールの外側から見た状態で示す斜視図である。
【図4】上記実施例のマンホール用可撓継手をマンホールの内側から見た状態で示す斜視図である。
【図5】上記実施例のマンホール用可撓継手を上記実施例の止水ゴム構体が組み立てられた状態で半断面で示す分解斜視図である。
【図6】上記実施例のマンホール用可撓継手を上記実施例の止水ゴム構体も分解された状態で半断面で示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 マンホール
1a 削孔部
2 管路
3 マンホール用可撓継手
4 鋼製円筒
4a 一端部
4b 他端部
4c 鍔部
5 可撓性遮水円筒部材
5a 一端部
5b 他端部
5c 中間部
6 締結バンド
7 締結バンド
8 止水ゴム構体
9 環状ゴム
10 ボルト
11 ナット
12 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの横孔と管路との接続に用いられるマンホール用可撓継手において、
前記マンホールの横孔内に一端部寄りの部分を配置されるとともに他端部寄りの部分をその横孔から前記マンホール外に突出させる剛性管と、
一端部を前記剛性管の前記他端部寄りの部分に水密に接続されるとともに他端部を前記管路の外周面に水密に接続される可撓性遮水円筒部材と、
前記マンホールの横孔の内周面と前記剛性管の前記一端部寄りの部分との間に介装される環状の止水ゴム構体と、
を具え、
前記止水ゴム構体が、
環状ゴムと、
その環状ゴムにその周方向に等間隔に形成されてその軸線方向に延在する複数の貫通穴と、
それらの貫通穴にそれぞれ挿通される複数本の雄ネジ部材と、
それらの雄ネジ部材にそれぞれ螺合する複数の雌ネジ部材と、
前記環状ゴムの軸線方向にその環状ゴムを間に挟んで複数の対をなすとともにその環状ゴムの周方向に複数並べられ、前記各対が一本の前記雄ネジ部材とそれに螺合する前記雌ネジ部材とによって互いの接近方向に締め付けられて前記環状ゴムの前記貫通穴の周囲部分を前記軸線方向に圧縮し、その貫通穴の周囲部分の半径方向寸法を拡大させる複数の圧縮部材と、
を有することを特徴とする、マンホール用可撓継手。
【請求項2】
前記各雄ネジ部材は、前記対をなす圧縮部材の一方に一対一で固着されていることを特徴とする、請求項1記載のマンホール用可撓継手。
【請求項3】
前記剛性管の外径は、前記管路の外径よりも大径であり、
前記可撓性遮水円筒部材の前記一端部の内径は、その可撓性遮水円筒部材の前記他端部の内径よりも大径であることを特徴とする、請求項1または2記載のマンホール用可撓継手。
【請求項4】
前記可撓性遮水円筒部材は、軸線方向断面形状がZ字状をなす中間部を有することを特徴とする、請求項3記載のマンホール用可撓継手。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか記載のマンホール用可撓継手に用いられる環状の止水ゴム構体であって、
環状ゴムと、
その環状ゴムにその周方向に等間隔に形成されてその軸線方向に延在する複数の貫通穴と、
それらの貫通穴にそれぞれ挿通される複数本の雄ネジ部材と、
それらの雄ネジ部材にそれぞれ螺合する複数の雌ネジ部材と、
前記環状ゴムの軸線方向にその環状ゴムを間に挟んで複数の対をなすとともにその環状ゴムの周方向に複数並べられ、前記各対が一本の前記雄ネジ部材とそれに螺合する前記雌ネジ部材とによって互いの接近方向に締め付けられて前記環状ゴムの前記貫通穴の周囲部分を前記軸線方向に圧縮し、その貫通穴の周囲部分の半径方向寸法を拡大させる複数の圧縮部材と、
を具えることを特徴とする、止水ゴム構体。
【請求項6】
前記環状ゴムは、軸線方向断面形状がその軸線方向に延在する長方形状をなすものであることを特徴とする、請求項5記載の止水ゴム構体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−25157(P2008−25157A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197175(P2006−197175)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】