説明

マンホール用足掛装置

【課題】 運搬性、作業能率性、安全性、耐久性に優れた軽量のマンホール用足掛装置を提供する。
【解決手段】 マンホールの足掛け用として壁面に取付けられるマンホール用足掛装置において、中空の足掛け部と、この足掛け部の両端のそれぞれに溶接され足掛け部を支持する中実の脚部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マンホールの足掛け用としてコンクリート壁に取付けられるマンホール用足掛装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からマンホール用ステップとしては耐食鋼やステンレス鋼製の棒を曲げたタイプあるいは棒鋼に樹脂被覆したタイプが一般に使用されている。例えば、実公昭60−369号公報には露出部分のすべてをステンレス棒鋼で形成したマンホール用ステップが開示されている。また、実公平1−13760号公報には回り止め付きのL字ステップが開示されている。さらに、実公昭63−26556号公報には足掛け部の有効長さを長くして足を掛けやすくした樹脂被覆されたマンホール用ステップが開示されている。
【0003】図9及び図10に示すように、従来のマンホール用足掛装置は、鉄筋等の棒鋼5を略コ字形状に曲げ、足掛け部3から脚部2にかけてポリプロピレン等の合成樹脂6で被覆して錆びないようにしている。足掛け部3には凹凸状の滑り止め6aを設けてある。被覆樹脂6は脚部2の一部を覆うものであり、端部5aの側は露出している。露出部と樹脂被覆部との境界部分にはキャップ6bが被せられ、さらにパッキン7を挟み込み間隙への水の侵入を防ぐようにしている。
【0004】棒鋼の両端部5aにはネジが切られている。これら端部5aをコンクリート壁の孔(図示せず)に挿通させ、裏側からナット8,ワッシャ9,パッキン10を取付け、脚部2が抜けないようにしている。ナット締結後は、コンクリート壁の孔にモルタル等が充填される。なお、脚部2にあたる棒鋼5の露出部分をカバー11で覆うこともある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来のマンホール用足掛装置においては、足掛け部3から脚部2にかけての主要部分が棒鋼5からなるので、1個ごとの部品が無視できない重さであり、ステップ取付け数が多くなると相当な重量物となる。このため、取付け作業の際に部品の持ち運びが容易でなく、作業者は略垂直なマンホール壁に沿って設けた不安定な足場上で取付け作業を行なうため、重量物は作業者の負担になる。したがって、作業者はステップ部品を少量ずつ小わけにして運搬せざるをえず、運搬性および作業能率性に問題がある。
【0006】また、従来タイプのものでは棒鋼の曲げ部分が加工硬化して脆くなり、ここを起点として破損を生じやすい。とくに腐食環境下では曲げ部の残留応力が高い場合は応力腐食割れを生じることもあり、安全性および耐久性に問題がある。
【0007】本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、運搬性、作業能率性、安全性、耐久性に優れた軽量のマンホール用足掛装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係るマンホール用足掛装置は、マンホールの足掛け用として壁面に取付けられるマンホール用足掛装置において、中空の足掛け部と、この足掛け部の両端のそれぞれに溶接され足掛け部を支持する中実の脚部と、を有することを特徴とする。
【0009】この場合に中空の足掛け部は、板材をプレス成型して横断面がコ字状のプレス成型部材とし、プレス成型部材の両端部に切り欠きを設け、この切り欠きに丸棒からなる脚部を差し込み、これを溶接して両者を連結固定することにより形成することが好ましい。
【0010】また、脚部は一端部が略直角に曲り、足掛け部は横断面が略円形状の管部材を備え、管部材の両端開口に各脚部の曲り端部が差し込み溶接されていてもよい。さらに、足掛け部は横断面が略円形状の管部材を備え、その両端近傍に切り欠き部が形成され、この切り欠き部に脚部の端部が差し込み溶接されていてもよい。
【0011】本発明に係るマンホール用足掛装置においては、主要部分である足掛け部を中空とすることにより軽量化しているので、部品の取扱いが容易になり、運搬性および取付作業性が大幅に向上する。
【0012】また、従来タイプのものでは丸棒を曲げた部分が過度の塑性加工により加工硬化して脆くなり、ここを起点として割れなどの破損を生じやすいが、本発明タイプのものでは足掛け部を脚部と別部品とし、両者を溶接しているので、長期間にわたり破損を生じることなく安全に使用することができる。とくに、脚部に鍛造品を用いると安全で長寿命の足掛装置となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係るマンホール用足掛装置の一部を切り欠いて示す部分断面図である。マンホール用足掛装置の足掛け部3は1対の脚部2とは別部品としてつくられている。図2及び図4に示すように、脚部2は鉄筋等の丸棒4からなる部品であるが、これに対して足掛け部3は断面コ字状にプレス成型した板材部品20からなる軽量部品である。各脚部2は足掛け部3の両端部のそれぞれに溶接され、一体化されている。
【0014】足掛け部3の板材には錆にくい耐食鋼やステンレス鋼を用いる。また、脚部2の丸棒4には鍛造された耐食鋼やステンレス鋼を用いる。脚部2の横断面はかならずしも丸のみに限られず、矩形、六角、八角、楕円など他の形状にしてもよい。足掛け部3の横断面はコ字状であることが最も好ましいが、後述の第2実施形態に示すように円形状にしてもよいし、U字状やカマボコ状など他の形状にしてもよい。
【0015】足掛け部3から脚部2にかけて樹脂被覆層6で覆われている。樹脂被覆層6はポリプロピレン等の合成樹脂からなり、足掛け部3の表面には凹凸状V文字の滑り止めが形成され、一方、脚部2にはパッキン7を締め付けるキャップ6bが形成されている。このような樹脂被覆層6によって脚部2および足掛け部3が水滴や硫化水素によって腐食されるおそれがなくなる。
【0016】棒鋼の両端部4aにはネジが切られている。これら端部4aをコンクリート壁の孔(図示せず)に挿通させ、裏側からナット8及びワッシャ9を取付け、脚部2がコンクリート壁から抜けないようにしている。ナット締結後は、コンクリート壁の孔にモルタル等が充填される。なお、脚部2にあたる棒鋼4の露出部分を別部品のカバーで覆ってもよい。
【0017】次に、図3〜図5を参照しながら足掛け部3及び脚部2の組み立てについて説明する。図3に示すようにプレス機で板材16を破線18に沿って折り曲げ、図4に示すような横断面20aがコ字状の板材部品20を得る。なお、板材16の板厚は数ミリ程度である。
【0018】図5に示す丸棒4の端部4bを板材部品20の切り欠き部17に差し込み、差し込み部分をTIG溶接し、丸棒4と板材部品20とを一体化する。両部品を一体化した後に、樹脂被覆加工する。
【0019】上記実施例によれば、従来品に比べて約30%の軽量化を実現することができた。次に、図6及び図7を参照しながら本発明の第2の実施形態について説明する。この第2実施形態の足掛け部3には断面円形状の管部材30を設けている。図6に示すように、管部材30には樹脂6が被覆され、さらにその外周には1対の滑り止め33が取り付けられている。管部材30は圧延された耐熱性鋼又はステンレス鋼でつくられている。脚部2の主要部をなす丸棒4は鍛造された耐熱性鋼又はステンレス鋼でつくられている。図7に示すように、丸棒4の一端部は略直角に曲り、この曲り端部4bが管部材30の両端開口にそれぞれ差し込まれている。この端部4bの差し込み部分をTIG溶接することにより管部材30は丸棒4に一体化されている。なお、溶接部31は差し込み部分の全周を溶接してもよいし、一部を溶接してもよい。
【0020】図8を参照しながら本発明の第3の実施形態について説明する。この第3実施形態の管部材30には円形状の切り欠き部37が形成され、この切り欠き部37に脚部2の主要部をなす丸棒4の端部4cが差し込まれている。丸棒4は鍛造された耐熱性鋼又はステンレス鋼でつくられている。この端部4cの差し込み部分をTIG溶接することにより管部材30は丸棒4に一体化されている。なお、溶接部32は差し込み部分の全周を溶接してもよいし、一部を溶接してもよい。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、主要部分である足掛け部を軽量化しているので、取扱いが容易になり、運搬性および取付作業性が大幅に向上する。また、従来品のように過度な曲げ加工を要しないので、長期間にわたり損傷することなく安全に使用することができ、安全性および耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマンホール用足掛装置の一部を切り欠いて示す部分断面図。
【図2】第1実施形態のマンホール用足掛装置を側方から見て示す側断面図。
【図3】足掛け部製作用の部品を示す展開図。
【図4】プレス成形された足掛け部を示す斜視図。
【図5】脚部用の部品を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るマンホール用足掛装置を側方から見て示す側断面図。
【図7】第2実施形態のマンホール用足掛装置を正面から見て示す部分断面図。
【図8】第3実施形態の足掛け部を示す斜視図。
【図9】従来のマンホール用足掛装置を示す全体図。
【図10】従来のマンホール用足掛装置を側方から見て示す断面図である。
【符号の説明】
2…脚部、3…足掛け部、4…棒鋼、4b…曲り端部、6…被覆樹脂、6b…キャップ、7…パッキン、17,37…切り欠き部、20…板材部品、30…管部材、31,32…溶接部、33…滑り止め。

【特許請求の範囲】
【請求項1】マンホールの足掛け用として壁面に取付けられるマンホール用足掛装置において、中空の足掛け部と、この足掛け部の両端のそれぞれに溶接され足掛け部を支持する中実の脚部と、を有することを特徴とするマンホール用足掛装置。
【請求項2】足掛け部は板材をプレス成型してなる横断面がコ字状のプレス成型部材を有し、その両端に切り欠き部が形成され、この切り欠き部に脚部が差し込まれて溶接されていることを特徴とする請求項1記載のマンホール用足掛装置。
【請求項3】脚部は一端部が略直角に曲り、足掛け部は横断面が略円形状の管部材を備え、管部材の両端開口に各脚部の曲り端部が差し込み溶接されていることを特徴とする請求項1記載のマンホール用足掛装置。
【請求項4】足掛け部は横断面が略円形状の管部材を備え、その両端近傍に切り欠き部が形成され、この切り欠き部に脚部の端部が差し込み溶接されていることを特徴とする請求項1記載のマンホール用足掛装置。
【請求項5】脚部は鍛造された耐食性鋼又はステンレス鋼からなり、足掛け部は圧延された耐食性鋼又はステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1記載のマンホール用足掛装置。
【請求項6】脚部の一部および足掛け部が樹脂被覆されていることを特徴とする請求項1記載のマンホール用足掛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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