説明

マンモグラフィ装置

【課題】本発明の目的は、大胸筋等の過度な緊張を避けながら、乳房を身体とともに好適に固定できるマンモグラフィ装置を提供することにある。
【解決手段】マンモグラフィ装置は、回転可能に支持されるアーム21と、アームの一端に保持されるX線を発生するためのX線管2と、アームの他端に保持される撮影台6と、撮影台に収容される被検体の乳房を透過したX線を検出するためのX線検出器5と、アームの側面に沿うようにアームに取り付けられ、被検体の五指で包み込んで把持する状態を排除して、被検体の指先を引っ掛ける状態を生成するために凸状に湾曲した表面を有するアームレスト本体部分とアームレスト本体部分をアーム上に設置する台座部分を有するアームレスト31とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房を圧迫板で圧迫してX線管と平面検出器とで撮影をするマンモグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンモグラフィ装置は、撮影台上に設置した乳房を圧迫板で圧迫して、乳腺を押し広げ、1方向からの2次元画像収集を行う乳房専用レントゲン撮影装置である。乳房の中にある乳腺は、立体的に分岐した先に小葉がつながる構造であるため、そのまま撮影しただけでは乳腺の重なりが多く、正確な評価ができない。そのため乳房を圧迫して薄く引き延ばすことで、乳腺の重なりを少なくし、且つより低い線量によるX線撮影を可能としている。
【0003】
マンモグラフィ装置による撮影時には、他のモダリティ撮影と同様に、撮影対象としての乳房を身体とともにマンモグラフィ装置に対して動かないように固定しなければならない。そのために従来のマンモグラフィ装置の回転アームの支柱部分に、円柱形のグリップ(ハンドルともいう)を2箇所以上の台座で該アームから少し浮かせた状態で固定した構造を有している。この状態のグリップを被検体は自身の五指で包み込んでしっかり把持して該アームに身体をぐっと引きつけることで、自身の身体を乳房とともにマンモグラフィ装置に対してしっかり固定することができる。
【0004】
しかし、グリップを握り、腕に力を入れたとき、被検体の腕筋や大胸筋が強く緊張して、乳房をうまく押し広げることができないという事態が生じ、また大胸筋等が強く緊張した状態では圧迫痛を感じることもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、大胸筋等の過度な緊張を避けながら、乳房を身体とともに好適に固定できるマンモグラフィ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るマンモグラフィ装置は、回転可能に支持されるアームと、前記アームの一端に保持されるX線を発生するためのX線管と、前記アームの他端に保持される撮影台と、前記撮影台に収容される前記被検体の乳房を透過したX線を検出するためのX線検出器と、前記アームの側面に沿うように前記アームに取り付けられ、前記被検体の五指で包み込んで把持する状態を排除して、前記被検体の指先を引っ掛ける状態を生成するために凸状に湾曲した表面を有するアームレスト本体部分と、前記アームレスト本体部分を前記アーム上に設置する台座部分を有するアームレストとを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係るマンモグラフィ装置の外観を示す図。
【図2】図1のL字形アーム及びアームレストをスタンド側から見た図。
【図3】図1のアームレストの横断面図。
【図4】図1のアームレストの他の横断面図。
【図5】図1のアームレストに腕を置き、指をかけた様子を示す横断面図。
【図6】図1のアームレストに腕を置き、指をかけた様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係るマンモグラフィ装置の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るマンモグラフィ装置の外観を示している。マンモグラフィ装置は、スタンド4を有している。スタンド4は、略L字形又はI字形のアーム21を回転軸Rを中心として回転自在に水平柱12により支持する。アーム21の一方の端にはX線管2が装備される。実際にはX線管2はハウジングに覆われている。スタンド4の内部には高電圧発生器3が収容される。高電圧発生器3は、X線管2の電極間に高電圧(管電圧)を印加するとともに、フィラメントにフィラメント電流を供給する。それによりX線管2でX線が発生される。
【0009】
アーム21の他方の端には、撮影台6が取り付けられる。撮影台6には、X線検出器5が収容される。X線検出器5としては、フィルムカセッテ、CRカセッテ又は平面X線検出器(フラット・パネル・デテクタ;FPD)が採用される。X線検出器5はX線管2に対向する向きに設けられ、被検体の圧迫された乳房を透過したX線を検出する。
【0010】
アーム21には圧迫機構11が装備される。圧迫機構11は、圧迫板22とその移動機構と移動駆動部とからなる。圧迫板22は、撮影台6と平行状態を維持したまま撮影台6に近接/離反する方向に移動する。圧迫板22は、撮影台6との間で被検体の乳房を圧迫する。この圧迫板22の移動及びアーム21の回転は、アームレスト31の一部分に設けられた操作パネル35の操作ボタンを撮影技師が手元操作をすることができる。
【0011】
図2、図3に示すように、アームレスト31は、アーム21を取り囲むようにU字形を有する。アームレスト31は、凸状に湾曲した表面を有する略かまぼこ形状のアームレスト本体部分32と、アームレスト本体部分32をアーム21上に設置する台座部分33とからなる。具体的にはアームレスト本体部分32の表面は、100〜110mmから選択された半径で湾曲する。
【0012】
台座部分33は、アームレスト本体部分32とアーム21との間に間隙ないように、アームレスト本体部分32と略等価な長さを有する。これが従来のアームから間隙を隔てて配置される棒状のハンドル(グリップ)と構造上の第1の相違点である。この間隙のない構造により、被検体の五指で包み込んで把持する状態が排除され、被検体の指先を引っ掛ける状態が自然と生成される。この状態は次の多くの要素によりさらに補償され得る。
【0013】
図3に示すように、アームレスト本体部分32は、少なくとも90mmの幅を有する。アームレスト本体部分32は、90〜120mmの範囲から選択された幅を有する。典型的には、アームレスト本体部分32は、110mmの幅を有する。この比較的広い幅は、腕置きとしての機能性の向上とともに、成人の一般的な人差し指の第2関節と親指の第1関節との長さよりも長く、それにより人差し指と親指とを向かい合わせにしてしっかりと握る状態を排除することができる。
【0014】
さらに具体的に説明すると、アームレスト本体部分32は、図3に示すように、少なくとも15mmの厚さを有する湾曲部分35と、湾曲部分35を支える少なくとも15mmの厚さを有する平板部分36とからなる。実際的には湾曲部分35は10〜20mmの範囲から選択された厚さを有する。平板部分36は、10〜20mmの範囲から選択された厚さを有する。
【0015】
台座部分33は、典型的には24mmの厚さを有する。実際的には台座部分33は、指を挟まないように20〜30mmの範囲から選択された厚さを有する。図3に示すように、台座部分33は、一方の側(被検体から遠方側)がアームレスト本体部分21より凹み、他方の側(被検体に近い側)がすそ野様に広がって、アームレスト本体部分32より広い幅を有するすそ野部分34になっている。なお、台座部分33にはすそ野部分34は無くてもよく、図4に示すように、台座部分33は左右対称でともに両側がアームレスト本体部分21より凹んだ形状であってもよい。この場合、台座部分33はアームレスト本体部分32よりも短い幅を有する。
【0016】
上記の通り、アームレスト31はアーム21の外形に沿って取り付けられ、短軸方向に関して、扁平な形状であって、被検体がアームレスト31に手を添えた際にその親指がアームレスト31の裏側に回せない程度の幅を有し、且つ連続的な台座部分33を有する。換言すると、アームレスト31は、短軸方向に関して被検体の手の中指第二関節から親指付け根までの距離より長い幅を有する。それにより親指をアームレスト31の裏側に回さずに指先だけで被検体自身の支えを実現できる。つまり、親指をアームレスト31の裏側に回して握って自身を支えることによる腕筋や大胸筋の緊張を防止することができ、握るという動作によるのではなく、指先を引っ掛けるという動作で、腕筋や大胸筋の緊張をdきるだけ防止しながら、被検体自身の体位の安定や撮影中の不安感の解消を実現することができる。
【0017】
図5、図6には、このようなアームレスト31の使用状況を示している。被検体の乳房は撮影台6と圧迫板22との間に挟まれ、圧迫される。その状態で被検体はその腕をアームレスト31に載せるとともに、その指先を典型的には第二関節までをアームレスト31のアームレスト本体部分32の辺縁に引っ掛ける。その状態で腕を曲げて胸部を引き寄せて、アーム21に対して被検体を固定する。
【0018】
上述したように、従来のように被検体は人差し指と親指とを向かい合わせにしてしっかりと握ることはできず、指先をアームレスト本体部分32に引っ掛けた状態でアーム21に対して被検体を固定する。そのため大胸筋等の過度な緊張を回避することができ、大胸筋等の強い緊張により乳房をうまく押し広げることができないという事態を回避できる。また、圧迫痛を緩和することができる。
【0019】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0020】
2…X線管、3…高電圧発生器、4…スタンド、5…X線検出器、6…撮影台、11…11…圧迫機構、20…回転アーム、21…支柱、22…圧迫板、31…アームレスト、32…アームレスト本体、33…台座部、34…すそ野部、35…操作スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持されるアームと、
前記アームの一端に保持されるX線を発生するためのX線管と、
前記アームの他端に保持される撮影台と、
前記撮影台に収容される前記被検体の乳房を透過したX線を検出するためのX線検出器と、
前記アームの側面に沿うように前記アームに取り付けられ、前記被検体の五指で包み込んで把持する状態を排除して、前記被検体の指先を引っ掛ける状態を生成するために凸状に湾曲した表面を有するアームレスト本体部分と、
前記アームレスト本体部分を前記アーム上に設置する台座部分を有するアームレストと、
を具備することを特徴とするマンモグラフィ装置。
【請求項2】
前記台座部分は、前記アームレスト本体部分と前記アームとの間に間隙ないように前記アームレスト本体部分と略等価な長さを有することを特徴とする請求項1記載のマンモグラフィ装置。
【請求項3】
前記台座部分は前記アームレスト本体部分よりも短い幅を有することを特徴とする請求項2記載のマンモグラフィ装置。
【請求項4】
前記アームレスト本体部分は、少なくとも15mmの厚さを有する湾曲部分と、前記湾曲部分を支える少なくとも15mmの厚さを有する平板部分とからなることを特徴とする請求項1記載のマンモグラフィ装置。
【請求項5】
前記台座部分は、少なくとも24mmの厚さを有することを特徴とする請求項1記載のマンモグラフィ装置。
【請求項6】
前記アームレスト本体部分は、100〜110mmから選択された半径で湾曲することを特徴とする請求項1記載のマンモグラフィ装置。
【請求項7】
前記台座部分は、一方の側が前記アームレスト本体部分より凹み、他方の側がすそ野様に広がり前記アームレスト本体部分より広い幅を有することを特徴とする請求項1記載のマンモグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56196(P2013−56196A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255049(P2012−255049)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2007−4916(P2007−4916)の分割
【原出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】