説明

ミクロトームナイフのための安全なホルダ

【課題】操作性が改良及び単純化され、したがって安全な操作が十分に保証されたナイフホルダを提供する。
【解決手段】ブレードガード2が3つの異なる所定の位置S,V,Wに配置されることができるように構成されており、位置S,V,Wに応じて以下の効果、つまり、a)上側の保護位置Sにおいては、案内路6におけるナイフホルダ1の位置が同時固定される、b)中央の、ナイフホルダ摺動位置Vにおいて、ナイフホルダ1にアクセスできると同時に案内路6におけるナイフホルダ1の位置固定を解除する、c)下側のナイフ交換位置Wにおいて、ナイフホルダ1に自由にアクセスできると同時に案内路6におけるナイフホルダ1の位置を同時固定する、を有する手段が設けられており、ブレードガード2と手段とが、保護位置Sにおいてのみ人間工学的切片除去が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動可能な弓状部として構成されたブレードガードを有するミクロトームのためのナイフホルダであって、保護位置において、ブレードガードが、切断エッジにアクセスすることができないようにナイフの切断エッジから所定の距離だけ離れて試料に面していないナイフの側に配置されており、ナイフホルダが、切片切り出し作業の間に切断エッジの様々な異なる領域を配置するように横方向に摺動及び固定されることができるように、支持エレメントに設けられた案内路に保持されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロトームは、約0.1μm〜100μmの範囲の厚さで、医学、生物学、材料研究、及び技術物質の品質制御において、様々な試料の薄い切片を形成するために使用される。生物学的及び医学的な試料はしばしば、切片切り出しのために必要な安定性を提供するために、より固体の材料(例えば、パラフィン、合成樹脂)に包埋される。
【0003】
切片は、1つの切片として又は連続した一連の切片として製造される。薄い切片は、種々異なる形状及び特性のナイフを用いて準備される。公知のタイプは、様々な研磨方法によって製造された、選択された工具鋼から形成された鋼ナイフを含む。これらの再び研ぐことができる固体ナイフに加え、低プロフィルブレードと高プロフィルブレードとに分類されかつ、有効寿命(切片切り出しのための有効性)を過ぎると新たなブレードと交換される使い捨てブレードが使用される。ガラスナイフ及びダイヤモンドナイフも特別な用途のために使用される。
【0004】
ミクロトームのタイプに応じて、ナイフが滑走体において定置の試料に沿って移動させられるか(従来の滑走式ミクロトーム)、又は試料が試料滑走体によって定置のナイフに沿って移動させられる(回転式ミクロトーム)。定置とは、ナイフが切片切り出し作業を通じて完全に固定されていることを意味する。もちろん、ナイフは、試料の前方におけるナイフの近接した位置決め、切片切り出しの間のナイフの前進、及びナイフの切断領域全体を利用するためのナイフの横方向移動のために必要に応じて、各切断の間に試料の前のそれぞれ異なる位置に配置されることができる。
【0005】
回転式ミクロトームの場合、ナイフは通常ナイフホルダに締め付けられることによってしっかりと保持されており、ナイフは、切断エッジがベース体を超えて突出するようにナイフホルダのベース体に対して配置され、締付け板によってベース体上にしっかりと締め付けられている。これは通常、ナイフを固定又は解放する単純な締付けレバーを用いて達成される。
【0006】
ナイフホルダは通常、ナイフが試料に切り込む角度を調整するために使用されるセグメントアークとして構成された支持エレメント上に設けられている。セグメントアークの円弧状の下側は、その下方のベース支持体における対応して構成された凹所に位置決めされており、ベース支持体は、試料ホルダの前方において案内路に位置しており、試料に向かって及び試料から離れる方向への移動を可能にする。これは、ナイフが所定の位置に配置されること及び前進させられることを可能にする。
【0007】
切断エッジのその他の領域を配置するために試料に対してナイフの横方向位置を調整することができるように、セグメントアークにおける案内路が使用され、この案内路においてナイフホルダは試料に対して横方向に移動させられることができる。
【0008】
切片切り出し作業のためにナイフの選択された位置を固定するために、ナイフホルダは固定されなければならず、これは、例えば締付け機構によって達成することができる。このような機構は、通常、ナイフホルダを案内路における所定の位置に固定又は解放する単純な締付けレバーである。
【0009】
使用されるナイフホルダの主な目的は、所要の品質の、すなわち組織を損傷又は破壊することなく薄い切片を得るために、ナイフを安定して、すなわち振動ができるだけ小さくなるように締め付けることである。使用される全てのナイフの本質的な特性は、クリーンな初期切り込みの後に組織のクリーンな分離が行われるために、試料が切り出されるために及び選択された切片厚さのために十分に鋭いことである。切片切り出しの進行を監視することは使用者の仕事であり、このために、試料の領域における切断エッジの自由な視野が切り出しの間必要である。製造された切片又は一連の切片は、試料寸法に応じて、切断エッジ上、ナイフ切断エッジ上又はナイフホルダの締付け板上に堆積させられ、そこから除去されなければならない。これは、例えば微細なブラシ又はピンセットを用いて達成される。
【0010】
したがって、ミクロトームの使用者にとって、装置の全ての取扱いは、手に切り傷を生じる危険性を伴う。定置のナイフを備えた回転式ミクロトームの場合、通常、準備作業中、作業の中断時又はアイドリング時間の間に切断エッジを覆う、ブレードガード機構が設けられている。このために、これらのガード機構はナイフ上に自由に配置されるか又はナイフホルダに固定され、保護位置へ摺動又は回動させられることができる。全てのこれらの指ガード機構は、作業段階の間は保護を提供しないという欠点を有する。なぜならば、これらの指ガード機構は、使用のために、特にナイフから切片を除去するために、切断エッジ領域から取り外されなければならないからである。
【0011】
独国特許出願公開第19824024号明細書は、板として構成された回動可能なブレードガードを有するナイフホルダを開示しており、保護位置において、板は、切断エッジにアクセスすることができないように、ナイフの切断エッジから所定の距離を置いて、試料に面していないナイフの側に配置されている。この弓状部形の回動可能なブレードガードは、ナイフの全長にわたって延びていることができ、切片の除去のために取り外される必要がない。例えばナイフを交換するために又はナイフホルダを横方向に再位置決めするためにナイフホルダへのアクセスが必要な場合は、ブレードガードは作動位置から非作動位置へ回動させられることができる。これにより、ナイフホルダへの自由なアクセスと、締付け機構の作動とが可能となる。
【0012】
この装置の欠点は、ナイフホルダを作動させることに加え、ブレードガードが所定の位置へ回動させられなければならないということである。ミクロトームを用いて行われる日常業務の間、特に、それぞれの不要な作業は、使用者の作業の流れを妨げるので使用者にとっては不都合である。これによって、使用者がブレードガードを全く使用したくなくなったり、ブレードガードを保護位置に移動させることなくミクロトームを操作するおそれがあり、このことは、負傷のリスクを低減するというブレードガードの機能を無効にしてしまう。日常業務は、特に、必要な技術を訓練及び練習することなく課せられた危険性を十分に評価することができないにもかかわらず、時間に追われて作業しなければならない未熟なオペレータだけによって行われるので、このことは、研究室人員に対する特別な危険性を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第19824024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、目的は、より熟練していない人員のための安全な作業をも十分に保証しながら、操作性が改良及び単純化されるように、上述の形式のブレードガードを備えたナイフホルダをさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これは、上述の形式のナイフホルダのために達成され、この場合、3つのそれぞれ異なる位置に位置決めすることができるようにブレードガードが構成されており、位置に応じて以下の効果、つまり
a)上側の保護位置において、案内路におけるナイフホルダの位置の同時固定
b)中央のナイフホルダ摺動位置において、ナイフホルダにアクセスすることができると同時に、案内路におけるナイフホルダの位置固定の解放
c)下側のナイフ交換位置において、ナイフホルダへの自由にアクセスすることができると同時に、案内路におけるナイフホルダの位置の同時固定
を有する手段が提供されており、ブレードガードと、手段とが、切片の人間工学的除去が保護位置においてのみ可能であるように構成されている。
【0016】
ブレードガードの位置決めが横方向位置でのナイフホルダの固定を制御するので、操作者は、2つのエレメント(ブレードガードと締付けレバー)ではなく、1つのエレメント(ブレードガード)だけを操作すればよい。これと同時に、この機能組合せは、ブレードガードが保護位置に回動させられた場合だけに切片切り出しが可能であるという本質的利点を有している。なぜならば、人間工学的切片除去がこの位置だけにおいて可能だからである。ナイフ交換位置においては、ナイフホルダも案内路に固定され、切片除去の間の手によるアクセスは、ブレードガードの弓状部の前方回動位置によってより困難になり、これにより、使用者は必ずしもこの位置において切片を製造することはできない。使用者は、各切片除去のために、疲れる不快な腕の姿勢を取らなければならず、手を最適に配置することができない。ナイフ交換位置において、対照的に、トリムセクションが提供されることができ、この場合、試験される実際の試料又は試料の層が得られるまで、試料の包埋材料において粗い切断が行われる。これにより生ぜしめられた切断廃棄物は、ナイフ自体から落下するか、切片に関する大きな注意を払うことなく除去されることができ、これにより、切断エッジ領域への便利なアクセスは不要である。
【0017】
実際の切片が形成された時だけが、所要の切片厚さへのナイフの進行と共に行われる切片切り出し作業であり、ナイフから又は締付け板からの切片の注意深い除去が必要とされる。なぜならば、切片は機械的応力に対して極めて敏感だからである。このことは、ナイフ領域における便利な、すなわち人間工学的に好ましい介入を必要とする。これはナイフ交換位置において使用者にブロックされるので、使用者は今やもはや不便さからブレードガードの使用を省略することはできない。したがって、使用者が安全性の利益を説得される必要なく、過酷な作業状況においてさえも純粋に機械的な手段によってミクロトームの安全な操作が保証される。
【0018】
発明のこれらの基本的機能を実施する様々な方法が存在する:例えば、ブレードガードは手動による回動によって位置決めされることができ、次いで、これをセンサを用いて検出し、例えば機械的又は電磁的な手段によってナイフホルダを案内路において固定又は解放する。
【0019】
しかしながら、手段の1つの特に有利な実施形態では、手段は:
ブレードガードが保護位置及びナイフ交換位置に位置決めされている時に、締付けエレメントが案内路においてナイフホルダの位置を固定し、ブレードガードのナイフホルダ摺動位置において、ナイフホルダの固定が解放されるように協働する
a)支持エレメントにシャフトを受容するための軸受と、
b)ブレードガードとシャフトとの間の機械的な連結部と、
c)保護位置及びナイフ交換位置においてナイフホルダを固定するための締付けエレメントと、を有している。ブレードガードと、ナイフホルダの位置を固定するための手段とのこの直接の機械的な連結部は、簡単に製造されることができ、信頼できる、極めて摩耗が小さくかつメンテナンスの必要性が低い使用を可能にする。
【0020】
別の従属請求項には、ブレードガード又は手段の有利な実施形態が記載されている。
【0021】
機械的手段の有利な実施形態において、シャフトは、支持領域と、2つの偏心締付けキーを備えた偏心領域とを有しており、これらの偏心締付けキーは、偏心領域の外周の部分的な領域において偏心領域における平坦な区分を有するシャフトによって構成されており、外周から平坦区分への移行部は偏心締付けキーを構成しており、締付けエレメントは、ナイフホルダの下側に設けられた、対応する形状のスロットに係合するためのほぼT字形のヘッド部分と、このヘッド部分の下側に孔とを有しており、この孔は孔の下側部分における係合領域を用いてシャフトを受容するためのものであり、締付けエレメントが、軸受に対して垂直に配置されておりかつ、孔が軸受及びヘッド部分とほとんど整合するように偏心領域における軸受を通過しており、支持エレメントから突出しており、偏心締付けキーのうちの一方が締付けエレメントの係合領域と係合するようにナイフホルダの下側におけるスロットに係合しており、締付けエレメントが、下方へ移動させられ、ナイフホルダのスロットにおけるヘッド部分の作用による締付けによって案内路においてナイフホルダを固定し、これは、ブレードガードの保護位置とナイフ交換位置とに対応する。対照的に、係合領域における平らな区分の位置決めは、ナイフホルダの固定が解放されるブレードガードのナイフホルダ摺動位置に対応する。これは、従来の設計と比較してできるだけ少ない努力での実行を可能にする。慣用の装置においては、ナイフホルダを固定するためにナイフホルダ締付けレバーによって使用されるシャフト及びブレードガードの弓状部だけが、これによって影響されるので、本発明は、既存の装置にも簡単に後付けされることができる。
【0022】
有利な別の実施形態において、シャフトは凹所を有しており、嵌合エレメントが、位置Wにおけるブレードガードの位置決めの間に凹所に嵌合するように構成及び配置されている。この場合、中央のナイフ摺動位置におけるブレードガードの確実な位置決めを達成することができる。使用者は、嵌合エレメントが回動の間に係合したと感じることができ、したがって、正しい位置がセットされたことを知ることができる。さらに、嵌合は、この位置が小さな力だけで保持されるにもかかわらず、さらなる回動は妨げられないという効果を有する。
【0023】
嵌合エレメントは、例えば、ばねによって構成されることができ、このばねは、このばねに取り付けられた球体を備えており、球体がシャフトの凹所に嵌合するようになっている。ばねの柔軟性は容易な取扱いを可能にする。
【0024】
さらに、シャフトがリングスロットを有しており、係合エレメントが設けられており、この係合エレメントが、このスロットに係合し、これによりシャフト(8)を軸受における望ましくない変位を生じないように固定するように構成及び配置されていると有利である。これは、使用中に別のアクティブエレメントに対するシャフトの正確な位置を保証する。
【0025】
1つの可能な実施形態において、シャフトは第1の部分と第2の部分とを有しており、シャフトの両部分は、機械的な連結部を介してブレードガードに結合されておりかつ軸受に配置されており、偏心領域がシャフトの第1の部分に配置されている。これは、偏心部分の製造を容易にするが、組立ても容易にする。シャフトの両部分は、これらの両部分の個々の側から軸受に導入される。軸受は、連続的であるように又はシャフト部分の長さに対応するように構成されることができる。
【0026】
有利な実施形態において、ブレードガードは、試料とは反対に面した側に向かって、平らな区分を有しており、この平らな区分は、使用者が保護位置におけるナイフの切断エッジの自由視野を有するように寸法決め及び配置されている。これは、保護機能を保持しながら、試料の使用者による、切断エッジと、除去される切片との改良された観察を可能にする。この平らな区分は観察の角度に適応させられることができる。
【0027】
ブレードガードの別の有利な実施形態において、ブレードガードは、使用者の手のための操作レバーとして使用者の手の側に突出部を有している。これは操作を容易にする。突出部は、1本又は2本の指で便利に掴まれることができるように構成されなければならず、特に親指と人差し指で依然として良好なてこ力を加える。突出部は、例えば、外方へ延びたアーチ又は突出したタブ、例えば、弓状部のさもなければ円形の横断面の平らな区分によって、構成されることができる。
【0028】
ブレードガードが1つの構成部材として構成されていると、ブレードガードは、操作中のねじり力に対して安定させられることができる。
【0029】
ブレードガードの可能な別の実施形態において、ブレードガードは、ブレードガードの弓状部の内側に横方向に配置された制限エレメントを有しており、この制限エレメントは、保護位置において、切片切り出し作業の間に案内路におけるナイフホルダの位置決めのために横方向制限が設定されるように、ナイフホルダの左側及び/又は右側に配置される。これは、必要であれば、ナイフホルダが案内路内の所定の範囲内にだけ位置決めされることができることを保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ブレードガードを備えた本発明によるナイフホルダを示す斜視図である。
【図2】3つの位置を備えるブレードガードを単純化して示す、部分的に切り取られた側面図である。
【図3】図1に対応する断面図である。
【図4】本発明によるシャフトの詳細を示す斜視図である。
【図5】図3の一部である嵌合エレメントを示す断面図である。
【図6】本発明によるシャフト(偏心領域)の詳細を示す概略的な断面図である。
【図7a】ブレードガードの実施形態を示す平面図である。
【図7b】ブレードガードの実施形態を示す断面図である。
【図8】ブレードガードの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、支持エレメント5上に設けられたブレードガード2を備える本発明によるナイフホルダ1を示しており、支持エレメント5は、セグメントアークとして構成されておりかつベース支持体の凹所(参照符号なし)に配置されている。ナイフ3は、締付け板1bと締付けレバー1cとによってナイフホルダ1のベース体1aに締め付けられている。切断エッジ3aのみがナイフホルダ1から上方へ突出している。試料は、ナイフ3の背後において物体滑走体(図示せず)に沿って案内される、すなわち、試料に面していないナイフ3の側4が、観察者の側に位置している。
【0032】
ナイフホルダ1は、ナイフホルダ1の横方向調整、ひいてはナイフ3の切断エッジ3aの全ての領域の使用が可能であるように、セグメントアーク5の案内路6において案内されている。なぜならば、切断される試料は、切断エッジ3aの幅の小さな部分(通常はmmからcmの範囲)だけを占めるからである。機械的な連結部13を介してブレードガード2に結合されたシャフト8はセグメントアーク5を貫通して延びており、これにより、ブレードガード2の回動時にシャフト8が同様の回動を行う。図面において、ブレードガード2は保護位置Sに位置している、すなわち、ブレードガード2の弓状部は、切断エッジ3aの前方において、切断エッジ3aの上方にかつ切断エッジ3aに対して平行に延びており、これにより、使用者の手又は指との接触が防止されている。
【0033】
ブレードガード2は、操作性を高めることができる2つの突出部20を有している。これらの突出部の形状は、個々に又は組み合わせて使用することができる可能な態様のうちの2つでしかない。
【0034】
図2は、側方から見た場合のブレードガード2の3つのセット可能な位置S,V,Wを示している。セクションにおいて、図面は、セグメントアーク5と、案内路6におけるベース体を備えたナイフホルダ1と、締付け板1bと、締付けレバー1cとを示している。図面はまた、セグメントアーク5における締付けエレメント14(この図には示されていない)のための孔23と、ナイフホルダ1のベース体1aにおける、この場合はT字形の、スロット5aとを示しており、このスロット5aに、締付けエレメント14のT字形のヘッド部分15(両方とも図示せず)が係合することによって、ナイフホルダ1をセグメントアーク5に対して押し付け、これによって締付けが行われる。締付けエレメント14(図示せず)の下方におけるばねエレメント(図示せず)、例えばばねワッシャ又は波形ワッシャ、の配置により、ブレードガード位置Vにおけるナイフホルダ1のより便利な摺動が行われることができる。孔23に設けられた肩部は、締付けエレメント14の領域よりも小さな直径を有する、締付けエレメント14の下方のこのようなばねエレメントのための支持面である。
【0035】
完全に持ち上げられた位置では、ブレードガード2は保護位置Sにあり、この保護位置Sにおいてはナイフ3の切断エッジ3aへの使用者の手によるアクセスが防止され、それと同時にナイフホルダ1は制御された切片切り出しのための切断位置に案内路6において固定される。前方に回動された中央位置において、ブレードガード2はナイフ摺動位置Vにある。これは、ナイフホルダ1への横方向アクセスを可能にし、ナイフホルダ1の固定を解除し、これにより、ナイフホルダ1は案内路6において横方向に摺動させられることができる。「横方向」とは、この場合、図1に示された方向から見た場合のことをいう。さらに下方へ回動された第3の位置において、ブレードガード2はナイフ交換位置Wにあり、この位置は、案内路6におけるその位置でのナイフホルダ1の同時固定にも関連している。これは安全なナイフ交換を可能にする。また、セクションが自発的に脱落するか又は結果が単に無駄であるのでセクションへのダメージを回避するためにいかなる注意なしに除去されることができるために(人間工学的な)切片除去が重要でない場合、試料を最初に切断又は削ることも可能である。しかしながら、敏感な現実の試料切片の注意深い除去のための手を用いた便利なアクセスは回避される。なぜならば、ブレードガードの弓状部が、所要の腕及び手の動きを妨げるからである。
【0036】
図3は、既に説明されたナイフホルダ1の詳細及びその他の詳細を備えた平面図における図1の本質的な、内部が見えるように表層部を切り取った図である。ここでも、図面はナイフ3の締付けを示しており、締め付けられた部分は斜線で示されているのに対し、危険な切断エッジ3aは締付け板1b上に突出している。ブレードガード2は、ここでは1つの突出部20を有しており、1つの構成部材によって構成されており、これは、良好なねじり強度を保証する。機械的な連結部13を介して、ブレードガード2はシャフト8,8′に結合されており、シャフトは、この場合2つの部分によって構成されている。シャフト8′の第2の部分はブレードガード2のための安定化を提供している。もちろん、一方の側においてのみ機械的な連結部13を備えたブレードガード2も考えられ、この場合、シャフト8は1つの部材によって又は2つの部材によって構成されることができる。しかしながら、2つの部材から成るシャフト8はシャフト8の取付けを単純にする。
【0037】
セグメントアーク5の孔23に配置された締付けエレメント14が、露出した孔16と共に断面図で示されており、偏心領域8bにおいて締付けエレメント14を貫通して延びたシャフト8を示している。係合領域17は、例えば六角穴付きグラブねじ等の止めねじ18として構成されている。別の詳細として、嵌合エレメント19が、ばね19a及び、シャフト8の凹所11に係合する、ばね付勢されて取り付けられた球体19bとして、示されている。凹所11は、ナイフ摺動位置Vにおいて係合するようにシャフトに配置されている。このように、使用者は、いつ位置を設定したかを感じ、これは、ナイフホルダ1が次いで案内路6において横方向に移動させられることができることを意味する。この位置は、嵌合によって保持されるが、使用者によって難なく再び変更されることもできる。
【0038】
ブレードガード2の弓状部の高さ調整のための手段も示されている。これらは、機械的な連結部の領域におけるシャフト8における孔の形式で提供されており、これらの孔においてブレードガード2は自由に摺動させられ、ロッキングねじ24によって固定されることができる。これは、ブレードガード2の保護位置Sにおける試料の観察の自由度の個々の適応を可能にする。これらの手段のその他の実用的な実施形態ももちろん可能である。
【0039】
図4は、シャフト8を詳細に示している。シャフト8は、軸受領域8aと、偏心領域8bとを有している。軸受領域8aは、軸受7におけるできるだけ大きな遊びを備えた安定した支持のためのものであるのに対し、この場合軸受領域8aよりも小さな直径を備えた偏心領域8bは、締付けエレメント14との協働のためのものである。この目的のために、偏心領域8bは周囲の一部において平らな区分9を有しており、2つの偏心締付けキー10a及び10bが、平らな区分9とシャフトの周面との間の移行部によって形成されている。凹所11は、嵌合エレメント19に係合するために使用されるか又は位置Vにおけるブレードガードの位置決めを容易にするための球体19bを備えている。シャフトと協働するエレメント、特に締付けエレメント14及び嵌合エレメント19に対する、軸受7におけるシャフト8の、位置の一般的な固定及び安定した確実な軸方向の整合を達成するために、リングスロット12は、対応する係合エレメントによる係合のためである。
【0040】
図5は、図3の嵌合エレメント19を詳細に示している。図は明らかにばね19aを示しており、このばね19aのばね力に抗して球体19bが取り付けられており、この球体19bは、シャフト8の凹所11が球体19bの上方に配置された時に、凹所11内に嵌合する。もちろん嵌合エレメントのその他の実施形態も可能である。本質的な態様は、さらなる回動が過度に妨げられることなく使用者がブレードガード2の正しい位置決めを容易に感じることができることである。
【0041】
図6a、図6b及び図6cは、軸受7におけるシャフト8の偏心領域8bの概略的な詳細図を示している。図面は明らかに、平らな区分9と、偏心締付けキー10a及び10bとを示しており、偏心締付けキーは、シャフト8がそれに応じて回転させられると−この回転は機械的な連結部(この図には示されていない)を介してブレードガード2の弓状部の回動によって行われる−締付けエレメント14の係合領域17を用いて締付けエレメント14に力を加え、この力は締付けエレメントを下方へ押し付ける。シャフト8は、2つの偏心締付けキー10a,10bと、これらの偏心締付けキーの間に配置された平らな区分9とから構成されているので、ナイフホルダ1が同時に固定されるブレードガード2の2つの異なる位置(S及びW、図6a及び図6c参照)が提供されることができ、付加的に、ナイフホルダ1が固定されていないブレードガードの第3の位置(V、図6b参照)が提供されることができる。ここでは概略的に示されているように、係合領域が例えば止めねじによって構成されている場合、特にこの止めねじ18が工具のために自由にアクセス可能であるならば、締付け効果の強さを自由に調整することができる。これは、セグメントアーク5に設けられた孔23を介して単純に達せられることができる。
【0042】
図7a及び図7bは、ブレードガード2の特別な実施形態を示している。図7aは、ブレードガード2の弓状部が、少なくとも保護位置を占めた時に試料の前方に配置される領域において、平らな区分22を有することを示している。図7bは、平面A−Aにおける断面を示しており、この断面では平らな区分22を明らかに認識することができる。この平らな区分22の効果は、使用者の視野を拡大することであり、使用者は通常、切片切り出し操作を観察及び監視するために、ブレードガード2の弓状部の前方及び上方から切断エッジ3a及び試料を見る。なぜならば、ブレードガード2の横断部分が、切断エッジ3a、試料、及び切片のための堆積領域に向かって見る方向にあるからである。ナイフホルダ1が配置されたミクロトームに対する平らな区分22の位置及び角度は、用途に応じて選択されることができる。適切な寸法は、例えば、加工面から測定された約25°の角度における直径から約2mmの平らな区分22である。観察角度のさらなる改良は、切断エッジ3a(この図には示されていない)からのブレードガード2の距離を調整可能にすることによって達成されることもできる(図3参照)。これは、例えば、ブレードガード2とシャフト8との間の機械的な連結部13に設けられた適切な手段によって達成することができる。その他の実用的な実施形態は、もちろん、ブレードガード2における適切に配置されたプッシュ・プル式結合部によって考えられる。
【0043】
図8は、軸受領域8a及び偏心領域8bを備えた既に公知のシャフト8の詳細、及びヘッド部分15及び係合区分17を備えた単純化された形式で示された締付けエレメント14のみならず、ブレードガード2の別の変化態様をも示している。ブレードガードは、平らな突出部20及び横方向制限エレメント21a,21bを有している。もちろん、このような制限エレメント21a又は21bは、一方の側だけに設けられることもできる。いずれの場合にも、制限エレメント21a又は21bの寸法は、特定の要求に適応させられなければならない。このような要求は、ナイフホルダ1がある位置を提供すべきではないということであることができる。このような制限エレメント21a,21bを、制限エレメントが自由に摺動させられることができるか又はブレードガード2に位置決めされることができるように構成することが考えられる。このように、例えば、切断エッジ3aのある部分(既に使用されておりひいてはもはや使用可能ではない)部分がもはや使用されないことが保証されることができる。
【0044】
全ての例は、請求項に記載の本発明の概念を実施形態に基づいて明示しようとするものでしかない。もちろんその他の実施形態も、ブレードガード2の位置決めをナイフホルダ1の固定と組み合わせるタイプに関して、可能である。
【0045】
機械的な手段は極めて信頼できる使用を可能にし、結局、最も単純な手段による一般的なミクロトームの変換を可能にする。新たな装置のために、例えばブレードガード2の位置を電子的に検出しかつナイフホルダ1の固定を、例えば電子的に制御するその他のカップリングも考えられる。しかしながら、機械的な制御も考えられる。しかしながら、これらは、請求項2に記載のような直接カップリングよりも下位である。ナイフホルダ1の固定自体は、締付け固定、ラッチング等の機械的な手段によって、又は実用的にはセグメントアークにおいて又はナイフホルダ1の支持エレメント5においてナイフホルダの下方に配置されておりかつ固定を行うために通電されるソレノイドによって行われることができる。ブレードガード2、特に突出部20のその他の実施形態も考えられる。可能な、請求項8に記載された平らな区分22と同じように有効な実施形態は、ナイフホルダ1の領域に配置されたブレードガード2の少なくとも一部に対して透明な材料を使用することである。この材料は、試料及び切断エッジ3aの十分にはっきりと見えるように構成されねばならない。
【符号の説明】
【0046】
1 ナイフホルダ、 1a ベース体、 1b 締付け板、 1c 締付けレバー、 2 ブレードガード、 3 ナイフ、 3a 切断エッジ、 4 試料に面していないナイフの側を示す矢印、 5 支持エレメント、 5a スロット、 6 案内路、 7 軸受、 8,8′ シャフト、 8a 軸受領域、 8b 偏心領域、 9 平らな区分、 10a,10b 偏心締付けキー、 11 凹所、 12 リングスロット、 13 機械的な連結部、 14 締付けエレメント、 15 ヘッド部分、 16 孔、 17 係合領域、 18 止めねじ、 19 ラッチングエレメント、 19a ばね、 19b 球体、 20 突出部、 21a,21b 制限エレメント、 22 平らな区分、 23 孔、 24 ロッキングねじ、 S 保護位置、 V ナイフホルダ摺動位置、 W ナイフ交換位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能な弓状部として構成されたブレードガードを有するミクロトームのためのナイフホルダ(1)であって、ブレードガード(2)が、保護位置(S)に位置している場合に、試料に面していないナイフ(3)の側(4)においてナイフ(3)の切断エッジ(3a)から所定の距離だけ離れて保持されていて、これにより切断エッジ(3a)へのアクセスが不可能になっており、ナイフホルダ(1)が、支持エレメント(5)に設けられた案内路(6)に取り付けられており、前記ナイフホルダが、切片切り出し作業の間、切断エッジ(3a)の様々な異なる領域を配置するように摺動及び固定させられることができるようになっている形式のものにおいて、
ブレードガード(2)が3つの異なる所定の位置(S,V,W)に配置されることができるように構成されており、位置(S,V,W)に応じて以下の効果、つまり、
a)上側の保護位置(S)においては、案内路(6)におけるナイフホルダ(1)の位置が同時固定される効果、
b)中央の、ナイフホルダ摺動位置(V)において、ナイフホルダ(1)にアクセスできると同時に案内路(6)におけるナイフホルダ(1)の位置固定を解除する効果、
c)下側のナイフ交換位置(W)において、ナイフホルダ(1)に自由にアクセスできると同時に案内路(6)におけるナイフホルダ(1)の位置を同時固定する効果、
を有する手段が設けられており、
前記ブレードガード(2)と前記手段とが、保護位置(S)においてのみ人間工学的な切片除去が可能であるように構成されていることを特徴とする、ミクロトームのためのナイフホルダ(1)。
【請求項2】
前記手段が、
位置S及びWにおけるブレードガード(2)の位置決めの間、締付けエレメント(14)が案内路(6)においてナイフホルダ(1)の位置を固定し、ブレードガード(2)の位置Vにおいて、ナイフホルダ(1)の固定が解放されるように協働する
a)シャフト(8)を支持エレメント(5)に受容するための軸受(7)と、
b)ブレードガード(2)とシャフト(8)との間の機械的な連結部(13)と、
c)位置S及びWにおいてナイフホルダ(1)を固定するための締付けエレメント(14)と、を含んでいる、請求項1記載のナイフホルダ(1)。
【請求項3】
シャフト(8)が、軸受領域(8a)と、シャフトの周面の部分的な領域に設けられた偏心領域(8b)における平らな区分(9)を有するシャフト(8)によって構成された2つの偏心締付けキー(10a,10b)を備えた偏心領域(8b)とを有しており、周面から平らな区分(9)への移行部が偏心締付けキー(10a,10b)を構成しており、締付けエレメント(14)が、ナイフホルダ(1)の下側に設けられた対応する形状のスロット(5a)に係合するためのほぼT字形のヘッド部分(15)と、該ヘッド部分の下方の、シャフト(8)を受容するための孔(16)とを有しており、該孔(16)の下側部分に係合領域(17)が設けられており、締付けエレメント(14)が、軸受(7)に対して垂直に配置されていて偏心領域(8b)において軸受(7)を貫通しており、孔(16)が軸受(7)とほぼ整合させられ、かつ支持エレメント(5)から突出したヘッド部分(15)がナイフホルダ(1)の下側におけるスロット(5a)に係合するようになっており、偏心締付けキー(10a,10b)のうちの一方が締付けエレメント(14)の係合領域(17)と係合した時、締付けエレメントが下方へ移動させられ、ナイフホルダ(1)のスロットにおけるヘッド部分(15)の作用により締め付けることによって案内路(6)においてナイフホルダを固定し、これがブレードガード(2)の位置S及びWに対応し、ブレードガード(2)の位置Vの係合領域(17)における平らな区分(9)の位置決めが、ナイフホルダ(1)の固定の解放に対応する、請求項2記載のナイフホルダ。
【請求項4】
シャフト(8)が凹所(11)を有しており、ブレードガード(2)が位置Vに配置された時に嵌合エレメント(19)が凹所(11)に嵌合するように該嵌合エレメント(19)が構成及び配置されている、請求項2又は3記載のナイフホルダ(1)。
【請求項5】
嵌合エレメント(19)が、ばね(19a)と、該ばね(19a)に取り付けられた球体(19b)とを有している、請求項4記載のナイフホルダ(1)。
【請求項6】
シャフト(8)が、リングスロット(12)と、該リングスロットに係合しかつ軸(8)が軸受(7)において望ましくない変位をしないように固定するように構成及び配置された係合エレメントと、を有している、請求項2から5までのいずれか1項記載のナイフホルダ(1)。
【請求項7】
シャフト(8)が、第1の部分(8)と、第2の部分(8′)とを有しており、シャフトの両部分(8,8′)が、機械的な連結部(13)を介してブレードガード(2)と結合されておりかつ軸受(7)に配置されており、偏心領域(8b)がシャフト(8)の第1の部分に配置されている、請求項2から6までのいずれか1項記載のナイフホルダ(1)。
【請求項8】
ブレードガード(2)が、試料に面していない側(4)において平らな区分(22)を有しており、該平らな区分(22)が、保護位置(S)において使用者がナイフ(3)の切断エッジ(3a)を見ることができるように寸法決め及び配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のナイフホルダ(1)。
【請求項9】
ブレードガード(2)が、使用者の手の側において、使用者の手のための操作レバーとしての突出部(20)を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載のナイフホルダ。
【請求項10】
ブレードガード(2)が、1つの構成部材によって構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のナイフホルダ(1)。
【請求項11】
ブレードガード(2)が、ブレードガードの弓状部の内側で、横方向に配置された制限エレメント(21a,21b)を有しており、該制限エレメントが、保護位置(S)において、横方向制限が、切片切り出し操作の間、案内路(6)におけるナイフホルダ(1)の位置決めのために設定されるように、ナイフホルダ(1)の左及び/又は右に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のナイフホルダ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−37309(P2012−37309A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−176076(P2010−176076)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(504178269)ミクロム インテルナチオナール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】Microm International GmbH
【住所又は居所原語表記】Robert−Bosch−Strasse 49, D−69190 Walldorf, Germany
【Fターム(参考)】