説明

ミシン目状分離構造部を有する紙片

【課題】切り離し部のミシン目のカット部に変化をもたせ、切り取った手の感覚でチケットの真偽判別が可能なミシン目状分離構造部を有する紙片を提供する。
【解決手段】紙片を分離するためのミシン目状分離構造部を有する紙片であって、前記ミシン目状分離構造部は紙片の短辺に平行に形成され、前記ミシン目状分離構造部は直線状のカット部とタイ部で構成され、前記ミシン目状分離構造部はカット部とタイ部の長さが異なる複数の分離構造部で構成されたミシン目状分離構造部を有する紙片を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙片を分離するために紙片の短辺に平行に形成されたミシン目状分離構造部を有する紙片に関する。
【背景技術】
【0002】
有料の施設などを利用する際、代金と引き換えに入場券が渡される。
入場券(以下、チケットという)などには、一部を切離すためのミシン目が入っていて、入場の際ミシン目で二つに切離される。多くの場合、チケットの内容がデザインされた半券部が入場者に戻される。入場者に戻された半券は入場料を支払った領収書であり、すでに権利を行使したことを示すレシートになる。
入場の際に係員に「もぎり取られた」半券は、多くは施設側に回収される。
【0003】
前記施設の入り口には係員がいて、提示されたチケットを手に取りミシン目ですばやくもぎり券を切り離し、半券を入場者に手渡す。この時係員はチケットの真偽などを確認する余裕が無く、入場者を「さばく」ことだけに追われる。
チケットサイズには大きく二つのサイズがある。映画の前売り券や美術展などのチケットは封筒サイズ(170mm×65mm程度)のものと、財布サイズ(150mm×55mm程度)のものがある。施設側に回収される半券にはタイトル、日時、料金、座席番号などが印刷される。入場者に渡される半券には、カラフルなデザインや、詳細なチケット情報などが印刷される。
【0004】
チケットに関しては、例えば、「チケット一体型ハガキ」が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記特許文献1には切離しミシンに関しては詳細には言及されていない。
前述のように、施設の入り口の係員は入場者が提示したチケットのミシン目ですばやく切り離し、一方本券部を入場者に戻し、他方の半券を回収する。
係員は、もぎり作業に追われチケットの真偽などを確認する余裕が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−116773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、切り離し部のミシン目のカット部に変化をもたせ、切り取った手の感覚でチケットの真偽判別が可能なミシン目状分離構造部を有する紙片を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の目的を達成するために、本発明のミシン目状分離構造部を有する紙片の第一の態様は、紙片を分離するためのミシン目状分離構造部を有する紙片であって、前記ミシン目状分離構造部は紙片の短辺に平行に形成され、前記ミシン目状分離構造部は直線状のカット部とタイ部で構成され、前記ミシン目状分離構造部はカット部とタイ部の長さが異なる複数の分離構造部で構成されたことを特徴とするものである。
【0008】
また、第二の態様は、第一の態様において、ミシン目状分離構造部は、カット部が0.2〜0.9mmでカット部とタイ部の比が1/1〜3/1のマイクロミシンと、カット部が0.8〜6.0mmでカット部とタイ部の比が3/1〜4/1の通常ミシン、とを含む分離構造であることを特徴とするものである。
【0009】
また、第三の態様は、第二の態様において、ミシン目状分離構造部は、紙片の両端側にマイクロミシンが配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
1)第一の態様のように、紙片を分離するためのミシン目状分離構造部を有する紙片であって、前記ミシン目状分離構造部は紙片の短辺に平行に形成され、前記ミシン目状分離構造部は直線状のカット部とタイ部で構成され、前記ミシン目状分離構造部はカット部とタイ部の長さが異なる複数の分離構造部で構成されたことによって、紙片がチケットなどとして利用されたときに、入場の際に券面を見ることなく、切離しミシンで構成されるミシン目状分離構造部の切離す際の手の感覚でチケットの真偽を判別することができる。
また、薄暗い場所に入場ゲートが設けられていても、ミシン目状分離構造部を切離す際の手の感覚でチケットの真偽を判別することができる。
【0011】
2)第二の態様のように、第一の態様において、ミシン目状分離構造部は、カット部が0.2〜0.9mmでカット部とタイ部の比が1/1〜3/1のマイクロミシンと、カット部が0.8〜6.0mmでカット部とタイ部の比が3/1〜4/1の通常ミシン、とを含む分離構造であることによって、紙片(チケットなど)の紙の繊維方向や、紙の質に合わせて切離し強度を調整することができる。
【0012】
3)第三の態様のように、第二の態様において、ミシン目状分離構造部は、紙片の両端側にマイクロミシンが配置されたことによって、切離し易くなり、入場の際の入場者のさばき効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態のミシン目状分離構造部を有する紙片について説明するための図である。
【図2】図1のミシン目状分離構造部の一実施形態について説明するための図である。
【図3】本実施の形態のミシン目状分離構造部について説明するための図である。
【図4】シート状で印刷する際の多面付けシートについて説明するための図である。
【図5】連続紙で印刷する際の多面付けシートについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して本実施の形態のミシン目状分離構造部を有する紙片(以下、本実施の形態ではチケットの例で説明するためにチケットともいう)について説明する。
図1に示すチケット1には、チケットを左右に分離するためのミシン目状分離構造部(以下、単に切離しミシンともいう)2が形成されている。
前記切離しミシン2は、チケット1の短辺に平行に形成され、前記切離しミシン2は後述するように直線状のカット部とタイ部(カットされていない部分のことで以下、アンカット部ともいう)で構成される。
前記切離しミシン2は、カット部とアンカット部の長さが異なる複数種類の切離しミシンで構成されている。
【0015】
チケット1は、例えば、コンサートホールや劇場の入場券、博物館や美術館の入場券、動物園や植物園などの入場券に代表されるチケット類である。
前述のように、チケットには、長辺が170mm程度の封筒サイズものや、長辺が150mm程度の紙幣サイズのものがある。
前述の切離し用のミシン2は、チケットの短辺に平行に、チケットの長辺を二分の一から六分の一程度に分割する位置に形成される。
【0016】
チケット1のおもて面の本券に相当する側には、チケットのタイトル、日時情報、会場等を示す文字情報、座席を指定する場合は座席指定情報、その他、写真やイラストなどの図柄情報が印刷情報11として印刷されている。
更に、そのチケット固有の管理番号12(バーコードで表示される場合もある)が、印刷されている。
印刷情報11の一部、例えば、チケットのタイトル、日時情報、座席指定情報は、切離しミシンを境に本券と反対側にあるもぎり券側にも印刷されている。
【0017】
図示しないが、チケットの裏面には注意事項などが印刷されている。
【0018】
図2を参照して、図1のミシン目状分離構造部の一実施形態について説明する。
図2は図1の切離しミシン2を拡大したものである。
切離しミシン2の両端部は、チケットの紙端部101又は102から「もぎり」易いようにアンカット部が短いマイクロミシン21が形成されている。
これは、切離しが紙端部101から行われても、紙端部102から行われても良いようにとの配慮である。
【0019】
前述のマイクロミシン21から開始された切離し動作は、ある部分から通常ミシン22に移行する。更に、その他仕様ミシン23に移行してもよい。
マイクロミシン21と、通常ミシン22は、カット部の長さとアンカット部の長さが異なるために、切離しミシンに沿って「もぎる」際に、係員の手元に不規則な振動として伝わってくる。
【0020】
これは、後述するアンカット部の長さが短い状態から長い状態に変化するために抵抗感が変化して伝わってくるのである。アンカット部の長さが変化するとともにカット部の長さも変化するために更に抵抗感が異なった状態で伝わってくる。
したがって、チケットの表面を確認することなく手の感覚でチケットの真偽を判別することができるのである。また、入場口が薄暗い場合でも目視でチケットの券面を確認することなく手の感覚でチケットの真偽を判別することができるのである。
【0021】
図3を参照して本実施の形態のミシン目状分離構造部について説明する。
切離しミシン2を構成するマイクロミシン21は、カット部aの長さが、0.2〜0.9mmに設定され、アンカット部がカット部の1/3〜カット部と同一長に設定されている。マイクロミシン21のカット部aの長さ及びアンカット部bの長さはチケットの紙の繊維方向や、紙質によって決定される。
【0022】
切離しミシン2を構成する通常ミシン22は、カット部cの長さが、0.8〜6.0mmに設定され、アンカット部dの長さはカット部の三分の一から四分の一に設定される。
アンカット部d、アンカット部dの長さは、マイクロミシン21と同様、チケットの紙の繊維方向や、紙質によって決定される。
【0023】
図4を参照してシート状で印刷する際の多面付けシートについて説明する。
図4の例は、1シート3にチケット1を15面付けで印刷する例である。
図の矢印の方向が紙の繊維方向であり、切離しミシン2は紙の繊維方向に平行に形成される。その結果、切離しミシンで切離す際のアンカット部の抵抗は小さくなり、したがって、前述の切離しミシンのアンカット部の長さが長くなるように設定する。
逆に、紙の繊維方向が図4の矢印に対し直角方向になっている場合は、切離しミシンは、紙の繊維方向に対して直角に施される状態となりアンカット部が切れにくくなる。その結果、切離しミシンで切離す際のアンカット部の抵抗は大きくなり、したがって、前述の切離しミシンのアンカット部の長さが短くなるように設定される。
【0024】
紙の繊維方向に起因する抵抗の大きさの変化は、紙の繊維の長さにも左右される。例えば、上質紙とコート紙ではアンカット部の長さが同じでも切離し強度は全く異なり、繊維が長い上質紙のほうがアンカット部の抵抗力が大となる。
【0025】
図5を参照して連続紙で印刷する際の多面付けシートについて説明する。
図5の例は、連続フォーム形式で印刷する場合について図示したものである。この場合は印刷胴(シリンダ)一回転で10面同時印刷する一例を示したものである。
図5に示す状態(連続フォーム形式)でチケットが作製された場合は、矢印の方向に紙の繊維が流れており、短辺に平行に形成された切離しミシン2によって、図4で説明したアンカット部の抵抗が弱いチケット1が出来上がる。したがって、切離しミシン2のアンカット部の長さは長めに調整して設定する。
【0026】
ここで、チケットを製造する場合に使用される切離しミシンについて説明する。
図4,図5で説明したように多面でチケットを印刷し、かつ、一枚のチケットに仕上がったときに図2で説明したように、チケットの両端部にマイクロミシンが形成され、中央部に通常ミシンが位置するようにしなければならない。
そのため、図4に示すシート印刷の場合は平らな板にミシン刃を埋め込んだ置きミシンや、シリンダにミシン刃を貼り付けた貼りミシンを使用して作製する
【0027】
一方図5に示すように連続紙で印刷する場合は、ミシン胴にミシン刃を貼り付けて、10面単位で一回転させ、一回転で印刷物の同一位置にミシン刃の始まりが来るようにセットして作製する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
コンサートホールや劇場の入場券、博物館や美術館の入場券、動物園や植物園などの入場券に代表されるチケット類に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 紙片、チケット
2 ミシン目状分離構造部、切離しミシン
3,30 多面付けシート
11 印刷情報
12 管理番号、管理コード
21 マイクロミシン
22 通常ミシン
23 その他仕様ミシン
101,102 紙端部
a,c カット部
b,d タイ部、アンカット部






【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙片を分離するためのミシン目状分離構造部を有する紙片であって、
前記ミシン目状分離構造部は紙片の短辺に平行に形成され、
前記ミシン目状分離構造部は直線状のカット部とタイ部で構成され、
前記ミシン目状分離構造部はカット部とタイ部の長さが異なる複数の分離構造部で構成されたことを特徴とするミシン目状分離構造部を有する紙片。
【請求項2】
請求項1に記載のミシン目状分離構造部を有する紙片において、
ミシン目状分離構造部は、カット部が0.2〜0.9mmでカット部とタイ部の比が1/1〜3/1のマイクロミシンと、カット部が0.8〜6.0mmでカット部とタイ部の比が3/1〜4/1の通常ミシン、とを含む分離構造であることを特徴とするミシン目状分離構造部を有する紙片。
【請求項3】
請求項2に記載のミシン目状分離構造部を有する紙片において、
ミシン目状分離構造部は、紙片の両端側にマイクロミシンが配置されたことを特徴とするミシン目状分離構造部を有する紙片。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126106(P2011−126106A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286146(P2009−286146)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】