説明

ミリ波伝送線路、これを用いた回路基板、および回路基板の測定方法

【課題】高周波プローブの先端とコプレーナ線路のコンタクト部との間で発生するミスマッチを低減して精度高いコネクタレス測定を実現すること。
【解決手段】マイクロストリップ線路2に接続されたコプレーナ線路5を高周波プローブ用の測定IF回路1として用いるミリ波伝送線路であって、コプレーナ線路5は、信号伝送線路であるSコンタクト部5Sと、Sコンタクト部5Sと同一面に所定距離d20を設けたグランド層であるGコンタクト部5Ga,5Gbとを有し、コプレーナ線路5の信号伝送線路の一端側にはマイクロストリップ線路2の信号伝送線路が接続され、コプレーナ線路5の信号伝送線路の他端には、コプレーナ線路5に高周波プローブがコンタクトされた場合に発生する誘導成分を打ち消す容量成分をもったスタブ8が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロストリップ線路に接続されたコプレーナ線路を高周波プローブ用の測定インターフェース回路として用いるミリ波伝送線路、これを用いた回路基板、および回路基板の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波半導体部品や、高周波基板の誘電率測定などは、測定コネクタを用いるのが一般的であった。しかし、UWBレーダ等で用いられるミリ波帯、準ミリ波帯における高周波半導体部品や高周波基板の評価を行う場合、測定コネクタの周波数特性や寄生容量が発生して精度の高い測定が困難であった。このため、高周波プローブを用いたコネクタレス測定を行う必要があり、このコネクタレスの測定のための測定インターフェース構造が提案されている。なお、この場合、高周波プローブは、GSG(グランド−信号線−グランド)タイプを用いるため、一般的には、プローブインターフェースである測定インターフェース構造は、コプレーナ線路となる。コプレーナ線路は、信号伝送線路と、この信号伝送線路と同一面内に、ある間隔をもって形成されるグランド層とからなる。通常、コプレーナ線路とマイクロストリップ線路のグランド層とはスルーホールを介して接続される。
【0003】
特許文献1には、ミリ波信号を小さい損失でグランド付きコプレーナ線路からマイクロストリップ線路に伝送することが可能な高周波用の変換線路が記載されている。この特許文献1では、第1グランド層と中心導体とからなるコプレーナ線路と、マイクロストリップ線路との接続部において、中心導体からマイクロストリップ線路に向かって徐々に拡がるテーパ導体部を接続するとともに、またコプレーナ線路の第1グランド層をマイクロストリップ線路に向かってテーパグランドを形成している。これによって、テーパグランドの起点をテーパ導体部より中心導体側にずらし、変換部における反射特性を改善している。
【0004】
また、特許文献2には、マイクロストリップ線路をコプレーナ線路に変換するミリ波伝送線路において、この変換部位での伝送ロスを低減可能とするミリ波伝送線路の入出力端部構造が記載されている。この特許文献2では、コプレーナ線路のグランド層と、マイクロストリップ線路のグランド層とをスルーホールで接続し、コプレーナ線路構造には、マイクロストリップ線路の信号線路と同一導体幅で延長された信号接触電極と必要最小限の接地用電極とを有し、この接地用電極は、信号線路との等価容量が小さくなるように所定分、離れて配置されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、低反射で低損失な線路変換器が記載されている。この特許文献3では、コプレーナ線路のグランド層と、マイクロストリップ線路のブランド層とはスルーホールで接続されていない。テフロン(登録商標)基板上に第1コプレーナ線路とマイクロストリップ線路とを形成し、その接地導体を、半径λ/4の長さをもつ扇形状の接地導体を有する第2コプレーナ線路を形成し、この扇形状の中心部を仮想アースとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3580667号公報
【特許文献2】特開2002−290115号公報
【特許文献3】特開2001−345608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、GSGタイプの高周波プローブを用いたコネクタレス測定では、高周波プローブの先端は低反射で接続可能な構造となっているが、少なからず高周波プローブの先端とコプレーナ線路のコンタクト部とではミスマッチが発生し、このミスマッチによって高周波プローブを用いたコネクタレス測定の精度が劣化するという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高周波プローブの先端とコプレーナ線路のコンタクト部との間で発生するミスマッチを低減して精度高いコネクタレス測定を実現することができるミリ波伝送線路、これを用いた回路基板、および回路基板の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかるミリ波伝送線路は、マイクロストリップ線路に接続されたコプレーナ線路を高周波プローブ用の測定インターフェース回路として用いるミリ波伝送線路であって、前記コプレーナ線路は、信号伝送線路と、該信号伝送線路と同一面に所定間隔を設けたグランド層とを有し、前記コプレーナ線路の信号伝送線路の一端側には前記マイクロストリップ線路の信号伝送線路が接続され、前記コプレーナ線路の信号伝送線路の他端には、前記コプレーナ線路に前記高周波プローブがコンタクトされた場合に発生する誘導成分を打ち消す容量成分をもったスタブが形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるミリ波伝送線路は、上記の発明において、前記コプレーナ線路のグランド層は、スルーホールを介して前記マイクロストリップ線路のグランド層に接続されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるミリ波伝送線路は、上記の発明において、前記コプレーナ線路のグランド層は、前記高周波プローブのグランド端子が接続される領域からの距離が測定波長の1/4波長であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるミリ波伝送線路は、上記の発明において、前記コプレーナ線路のグランド層は、扇形状であり、その半径方向長さが1/4波長であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかるミリ波伝送線路は、上記の発明において、前記コプレーナ線路の信号伝送線路と前記マイクロストリップ線路の信号伝送線路との間にインピーダンス整合を行うインピーダンス変換回路を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる回路基板は、回路基板の捨て部に設けられ、該回路基板を測定するためのマイクロストリップ線路である評価測定回路と、前記捨て部に設けられ、前記評価測定回路に接続された請求項1〜5のいずれか一つに記載されたミリ波伝送線路と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる回路基板は、上記の発明において、前記評価測定回路は、前記回路基板の誘電体層の誘電率を測定するマイクロストリップ線路であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる回路基板の測定方法は、前記回路基板のうちの捨て部に、該回路基板を測定するためのマイクロストリップ線路からなる評価測定回路と、一端が該評価測定回路に接続されたコプレーナ線路であって他端が該コプレーナ線路に高周波プローブが接続された場合に発生する誘導成分を打ち消す容量成分をもったスタブが形成された測定インターフェース回路とを設けておき、該測定インターフェース回路を介して前記回路基板を測定し、その後前記捨て部を回路基板本体から切り離すことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる回路基板の測定方法は、上記の発明において、前記評価測定回路は、前記回路基板の誘電体層の誘電率を測定するマイクロストリップ線路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コプレーナ線路の信号伝送線路の他端に、前記コプレーナ線路に高周波プローブがコンタクトされた場合に発生する誘導成分を打ち消す容量成分をもったスタブが形成されているので、高周波プローブの先端とコプレーナ線路のコンタクト部(信号伝送線路)との間で発生するミスマッチを低減して精度高いコネクタレス測定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1であるミリ波伝送線路の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示したミリ波伝送線路の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、λ/4変成部の構成を示す模式図である。
【図4】図4は、マイクロストリップ線路と測定IF回路との配置関係を示す図である。
【図5】図5は、スタブを設けた場合と設けない場合とに対するDC〜30GHzでの反射特性を示す図である。
【図6】図6は、スタブを設けた場合と設けない場合とに対するDC〜30GHzでの通過特性を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2であるミリ波伝送線路の構成を示す平面図である。
【図8】図8は、グランド層の距離Lを変化させた場合の反射特性を示す図である。
【図9】図9は、グランド層の距離Lを変化させた場合の通過特性を示す図である。
【図10】図10は、スルーホールを設けた実施の形態1と扇形状のグランド層を設けた実施の形態2との通過特性を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態3である基板と該基板の測定状態とを示す模式図である。
【図12】図12は、制御部による基板誘電率の測定処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、オープンスタブを用いた評価測定回路を示す模式図である。
【図14】図14は、図13に示した評価測定回路に対して基板の被誘電率を変化させた場合の通過特性を示す図である。
【図15】図15は、直列共振器を用いた評価測定回路を示す模式図である。
【図16】図16は、図15に示した評価測定回路に対して基板の被誘電率を変化させた場合の通過特性を示す図である。
【図17】図17は、リング共振器を用いた評価測定回路を示す模式図である。
【図18】図18は、図17に示した評価測定回路に対して基板の被誘電率を変化させた場合の通過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるミリ波伝送線路、これを用いた回路基板、および回路基板の測定方法の実施の形態について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1であるミリ波伝送線路の構成を示す平面図である。また、図2は、図1に示したミリ波伝送線路の構成を示す斜視図である。図1および図2において、このミリ波伝送線路の回路基板11には、底面にグランド層13が形成された誘電体層12上に形成されたマイクロストリップ線路2と、コプレーナ線路構造で形成され、GSG型コンタクトプローブ10が接触する測定インターフェース(IF)回路1とが接続されている。なお、回路基板11の誘電体層13は誘電率の値が2〜3のテフロン(登録商標)で実現され、厚さは0.25mmである。
【0022】
マイクロストリップ線路2は、幅d1が約0.5mmの50Ω線路であり、インピーダンス変換回路としてのλ/4変成部3を介して、幅d2が0.2mmのコンタクトエリア信号線4に接続される。さらに、コンタクトエリア信号線4の先端は、長さ0.4mmのスタブ8が形成され、このスタブ8のマイクロストリップ線路2側には、GSG型コンタクトプローブ10の信号線ヘッド10Sがコンタクトされる長さ100μm、幅0.23mmのSコンタクト部5Sを有する。
【0023】
Sコンタクト部5Sの幅方向両端には、それぞれ距離d20=85μm離れて、GSG型コンタクトプローブ10のグランドヘッド10Ga,10Gbがコンタクトされる100μm×100μmの矩形のGコンタクト部5Ga,5Gbがそれぞれ形成される。なお、距離d20=85μmとしたのは基板パターン製造限界が85μmのためである。また、GSG型コンタクトプローブ10のヘッドピッチWは、250μmである。さらに、GSGコンタクトプローブ10は、カスケードマイクロテック社のACP50−250(〜50GHz対応)を用いている。
【0024】
Sコンタクト部5SおよびGコンタクト部5Ga,5Gbは、コプレーナ線路5を形成し、Sコンタクト部5Sは、コプレーナ線路5の信号伝送線路であり、Gコンタクト部5Ga,5Gbは、コプレーナ線路5のグランド層6a,6bの一部を形成している。グランド層6a,6bは、それぞれスルーホール7a,7bを介してマイクロストリップ線路2のグランド層13に接続される。
【0025】
ここで、上述したように、回路基板11の誘電体層13の誘電率の値は2〜4のテフロン(登録商標)であり、厚さが0.25mmであるので、上述したマイクロストリップ線路2の50Ω線路の幅は、約0.5mmとなる。この場合、コプレーナ線路5の信号伝送線路(Sコンタクト部5S)の幅を0.5mmとし、これに対応するGSG型コンタクトプローブ10を選択すればよい。たとえば、ヘッドピッチWが600μmのGSG型コンタクトプローブを用いればよい。しかし、ヘッドピッチWを広げることは、高周波プローブ自体の高周波特性の劣化を引き起こすことになる。特に、ミリ波、準ミリ波帯の測定では、250μm以下のヘッドピッチとすることが好ましい。
【0026】
この実施の形態1では、ヘッドピッチWを250μmとすることで、コプレーナ線路の信号伝送線路(Sコンタクト部5S)の幅を230μmとし、基板パターン製造限界から、Sコンタクト部5SとGコンタクト部5Ga,5Gbとの距離d20を85μmとしている。ここで、マイクロストリップ線路2の幅は、約0.5mmであり、コプレーナ線路5を形成するコンタクトエリア信号線4の幅は、約0.23mmであるため、直接接続すると、インピーダンス不連続による反射特性の劣化を引き起こすことになる。このため、この実施の形態1では、マイクロストリップ線路2とコンタクトエリア信号線4との間に、インピーダンス整合を行うためのインピーダンス変換回路として、長さがλ/4をもつλ/4変成部3を設けている。このλ/4変成部3のインピーダンスZtは、図3に示すように、マイクロストリップ線路2のインピーダンスZ2、コンタクトエリア信号線4のインピーダンスZ1とすると、Zt=√(Z1×Z2)として設定される。
【0027】
ここで、スタブ8は、GSG型コンタクトプローブ10がコプレーナ線路5にコンタクトされた場合に発生する誘導成分を打消す容量成分をもたせ、コンタクトによるミスマッチを打ち消すようにしている。このスタブ8の長さは、高周波3次元電磁界シミュレータを用いて最適化した値を算出して設定している。このスタブ8の長さは、0.4mmである。
【0028】
そこで、図4に示すように、上述したマイクロストリップ線路2の両端に、測定IF回路1に対応する測定IF回路1a,1bを設けて、図5および図6に示すように、スタブ8を設けた場合と設けない場合とに対するDC〜30GHzでの反射特性(S11)と通過特性(S21)とを求めた。
【0029】
図5に示すように、反射特性は、DC〜30GHzにおいて、スタブ8を設けた場合、スタブ8を設けない場合に比して約5dBの反射量低減を実現している。また、図6に示すように、通過特性は、DC〜30GHzにおいて、スタブ8を設けた場合、スタブ8を設けない場合に比して改善される周波数領域を有する。
【0030】
この実施の形態1では、GSG型コンタクトプローブ10がコプレーナ線路5にコンタクトされた場合に発生する誘導成分を打消す容量成分をもたせ、コンタクトによるミスマッチを打ち消すようにしているので、一層精度の高い測定を行うことができる。
【0031】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、スルーホール7a,7bを設けて、コプレーナ線路5のグランド層6a,6bとマイクロストリップ線路2のグランド層13とをDC的に接続して、比較的容易にDC〜数10GHzまで低反射かつ低損失な特性を実現していた。しかし、測定対象周波数帯が限定される場合には、DC〜数10GHzの広帯域で低反射かつ低損失の特性は不必要であり、この実施の形態2では、スルーホール7a,7bを設けずに、簡易な構成で、測定対象周波数帯での低反射かつ低損失の特性をもった測定IF回路を実現している。
【0032】
図7は、本発明の実施の形態2であるミリ波伝送線路の構成を示す平面図である。図7に示すように、このミリ波伝送線路は、図1に示したスルーホール7a,7bの構成を削除し、グランド層6a,6bに替えてグランド層16a,16bを設けている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0033】
グランド層16a,16bは、扇形状(ラジアル型)であり、Gコンタクト部5Ga,5Gbを含み、Gコンタクト部5Ga,5Gbの端部からの距離Lを測定波長λのλ/4とする高周波グランドである。なお、グランド層16a,16bの形状は、扇形状に限らず、測定対象周波数帯での高周波グランド機能が得られればよい。
【0034】
ここで、26GHz帯を測定対象周波数帯として、マイクロストリップ線路2に対する距離L(=λ/4)を変化させて、高周波3次元電磁界シミュレータを用いて最適化した値を求めると、図8に示した反射特性および図9に示した通過特性が得られ、L=1.5mmが最適値として設定される。なお、この距離Lは、誘電体層12の実効誘電率の値によって短くなる。この距離L=1.5mmのとき、図8および図9では、26GHzにおける反射特性が−20dB以下となり、図9では、26GHzにおける通過特性が最も少ない損失になっている。
【0035】
なお、図9は、スルーホールを形成した実施の形態1の場合における通過特性と26GHzを測定対象周波数帯とする実施の形態2における通過特性とを示しており、12〜32GHzまで両者は、ほぼ同じ通過特性を有し、さらに16〜32GHzでは、実施の形態2の方が良い通過特性を得ている。
【0036】
この実施の形態2では、測定対象周波数帯に対応したコプレーナ線路のグランド層をスルーホールを設けずに最適化して形成しているので、簡易な構成で、低反射かつ低損失の測定IF回路を得ることができる。
【0037】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。この実施の形態3では、上述したミリ波伝送線路を適用し、基板測定を可能にした基板を実現している。
【0038】
図11は、本発明の実施の形態3である基板と該基板の測定状態とを示す模式図である。図11に示すように、基板20は、その製造過程において、最終的に残される回路本体部21と捨て部22とを有する。捨て部22は、回路本体部21の製造における搬送等に用いられる縁部分などであり、最終的に、カットされる部分である。
【0039】
この実施の形態3では、この捨て部22に、基板の誘電率を測定する回路のマイクロストリップ線路が形成された評価測定回路30と、この評価測定回路30の両端に上述した実施の形態1,2に示した測定IF回路である測定IF回路31a,31bとを形成しておく。この測定IF回路31a,31bにGSG型コンタクトプローブ10a,10bをそれぞれコンタクトさせて基板20の誘電率を測定することができる。なお、GSG型コンタクトプローブ10a,10bは、ベクトルネットワークアナライザ40に接続され、評価測定回路30反射特性や通過特性を得ることによって基板20の誘電率を得ることができる。また、制御部41は、ベクトルネットワークアナライザ40による測定およびGSG型コンタクトプローブ10a,10bのコンタクト動作を制御する。
【0040】
ここで、図12に示すフローチャートを参照して、制御部41による基板誘電率の測定処理手順について説明する。まず、制御部41は、GSG型コンタクトプローブ10a,10bをそれぞれ測定IF回路31a,31bにコンタクトさせる(ステップS101)。その後、ベクトルネットワークアナライザ40を介して、測定IF回路31a側から自由空間波長λ0の高周波信号を所定周波数範囲で掃引する(ステップS102)。そして、ベクトルネットワークアナライザ40を介して、通過特性(S21)が最小となる波長λgと、そのときの自由空間波長λ0とを取得する(ステップS103)。なお、通過特性が最小となる波長λgを求めるのは、評価測定回路30が後述するオープンスタブを用いた場合であり、評価測定回路30がその他のマイクロストリップ線路である場合、最大のときの波長λgを求める場合がある。その後、制御部41は、ステップS103で取得した波長λgと自由空間波長λ0とをもとに、実効誘電率εeff(=(λ0/λg))を算出し(ステップS104)、本処理を終了する。
【0041】
さらに、具体的な評価測定回路30とこれを用いたときの通過特性結果について説明する。図13は、オープンスタブを用いた評価測定回路30aを示す模式図である。この評価測定回路30aは、オープンスタブ41が形成されている。また、図14は、図13に示した評価測定回路30aに対して、厚さ0.1mmのアルミナの基板20の被誘電率を変化させた場合の通過特性を示す図である。図14に示すように、基板20の比誘電率を変化させた場合、その通過特性の最小値がシフトする。なお、各最小値のときの波長はλgである。
【0042】
すなわち、38〜43GHzで周波数を掃引することによって、自由空間波長λ0を掃引し、そのときの通過特性が最小となった周波数、すなわち波長λgを取得し、λg=λ0/√(εeff)から実効誘電率εeffを求めることができる。実効誘電率εeffは、比誘電率εrに依存し、図14では、λg=λ0/√(εeff)に従った結果となっている。
【0043】
図15は、直列共振器を用いた評価測定回路30bを示す模式図である。また、図16は、図15に示した評価測定回路30aに対して、厚さ0.1mmのアルミナの基板20の被誘電率を変化させた場合の通過特性を示す図である。図16に示すように、基板20の比誘電率を変化させた場合、その通過特性の最大値がシフトする。なお、各最大値のときの波長はλgである。
【0044】
すなわち、38〜43GHzで周波数を掃引することによって、自由空間波長λ0を掃引し、そのときの通過特性が最大となった周波数、すなわち波長λgを取得し、λg=λ0/√(εeff)から実効誘電率εeffを求めることができる。実効誘電率εeffは、比誘電率εrに依存し、図16では、λg=λ0/√(εeff)に従った結果となっている。
【0045】
図17は、リング共振器を用いた評価測定回路30cを示す模式図である。また、図18は、図17に示した評価測定回路30cに対して、厚さ0.1mmのアルミナの基板20の被誘電率を変化させた場合の通過特性を示す図である。図18に示すように、基板20の比誘電率を変化させた場合、その通過特性の最大値がシフトする。なお、各最大値のときの波長はλgである。
【0046】
すなわち、38〜43GHzで周波数を掃引することによって、自由空間波長λ0を掃引し、そのときの通過特性が最大となった周波数、すなわち波長λgを取得し、λg=λ0/√(εeff)から実効誘電率εeffを求めることができる。実効誘電率εeffは、比誘電率εrに依存し、図18では、λg=λ0/√(εeff)に従った結果となっている。
【0047】
この実施の形態3では、高周波半導体デバイスに測定IF回路を組み込む態様のみならず、基板20内の捨て部22に評価測定回路30と測定IF回路31a,31bとを設けるのみで、基板20の誘電率を簡易かつ精度高く測定することができる。また、製造される回路本体部21に無駄な回路が残存することがなく、コンパクトな回路本体部21を実現することができる。なお、評価測定回路30は、誘電率に限らず、基板の特性を示す任意の物理量を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかるミリ波伝送線路、これを用いた回路基板、および回路基板の測定方法は、マイクロストリップ線路に接続されたコプレーナ線路を高周波プローブ用の測定インターフェース回路として有用であり、特に、ミリ波レーダに使用される高周波半導体デバイス、およびテフロン(登録商標)基板などの高周波基板の評価に適する。
【符号の説明】
【0049】
1,31a,31b 測定IF回路
2 マイクロストリップ線路
3 λ/4変成部
4 コンタクトエリア信号線
5 コプレーナ線路
5S Sコンタクト部
5Ga,5Gb Gコンタクト部
6a,6b,13,16a,16b グランド層
7a,7b スルーホール
8 スタブ
10,10a,10b GSG型コンタクトプローブ
10S 信号線ヘッド
10Ga,19Gb グランドヘッド
11 回路基板
12 誘電体層
20 基板
21 回路本体部
22 捨て部
30 評価測定回路
40 ベクトルネットワークアナライザ
41 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロストリップ線路に接続されたコプレーナ線路を高周波プローブ用の測定インターフェース回路として用いるミリ波伝送線路であって、
前記コプレーナ線路は、信号伝送線路と、該信号伝送線路と同一面に所定間隔を設けたグランド層とを有し、
前記コプレーナ線路の信号伝送線路の一端側には前記マイクロストリップ線路の信号伝送線路が接続され、前記コプレーナ線路の信号伝送線路の他端には、前記コプレーナ線路に前記高周波プローブがコンタクトされた場合に発生する誘導成分を打ち消す容量成分をもったスタブが形成されたことを特徴とするミリ波伝送線路。
【請求項2】
前記コプレーナ線路のグランド層は、スルーホールを介して前記マイクロストリップ線路のグランド層に接続されることを特徴とする請求項1に記載のミリ波伝送線路。
【請求項3】
前記コプレーナ線路のグランド層は、前記高周波プローブのグランド端子が接続される領域からの距離が測定波長の1/4波長であることを特徴とする請求項1に記載のミリ波伝送線路。
【請求項4】
前記コプレーナ線路のグランド層は、扇形状であり、その半径方向長さが1/4波長であることを特徴とする請求項3に記載のミリ波伝送線路。
【請求項5】
前記コプレーナ線路の信号伝送線路と前記マイクロストリップ線路の信号伝送線路との間にインピーダンス整合を行うインピーダンス変換回路を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のミリ波伝送線路。
【請求項6】
回路基板の捨て部に設けられ、該回路基板を測定するためのマイクロストリップ線路である評価測定回路と、
前記捨て部に設けられ、前記評価測定回路に接続された請求項1〜5のいずれか一つに記載されたミリ波伝送線路と、
を備えたことを特徴とする回路基板。
【請求項7】
前記評価測定回路は、前記回路基板の誘電体層の誘電率を測定するマイクロストリップ線路であることを特徴とする請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
前記回路基板のうちの捨て部に、該回路基板を測定するためのマイクロストリップ線路からなる評価測定回路と、一端が該評価測定回路に接続されたコプレーナ線路であって他端が該コプレーナ線路に高周波プローブが接続された場合に発生する誘導成分を打ち消す容量成分をもったスタブが形成された測定インターフェース回路とを設けておき、該測定インターフェース回路を介して前記回路基板を測定し、その後前記捨て部を回路基板本体から切り離すことを特徴とする回路基板の測定方法。
【請求項9】
前記評価測定回路は、前記回路基板の誘電体層の誘電率を測定するマイクロストリップ線路であることを特徴とする請求項8に記載の回路基板の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−205588(P2011−205588A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73480(P2010−73480)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】