説明

メカニカルデスケーリング装置

【課題】メカニカルデスケーリング装置において、スケール除去部材の磨耗度を小さくする。
【解決手段】メカニカルデスケーリング装置(100)は、回転可能なホィール(152)と、ホィール(152)の半径方向外方にホィール(152)の外周面と間隔を開けて配置されたシャフト(153)と、軸心を中心とする貫通孔(155)を有するデスケーリング用ピース(154)と、からなる。デスケーリング用ピース(154)は貫通孔(155)を介してシャフトに嵌め込まれており、デスケーリング用ピース(154)の貫通孔(155)の直径はシャフト(153)の外径よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材、特に、鋼材の表面に発生したスケールを機械的に除去するメカニカルデスケーリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の製造過程において、例えば、鋳造、加熱、熱間圧延その他の熱処理の際には、鉄鋼は高熱の酸化性雰囲気に晒されるため、その表面にスケールが発生する。このスケールは酸化物層からなるものである。このスケールを放置したまま鉄鋼を加工すると、残存したスケールによって、完成品の品質低下を招来する。このため、スケールを発生させる工程の次工程として、スケールを除去するデスケーリング工程が一般的に行われている。
【0003】
従来のデスケーリング工程は、高圧水を噴射する高圧水噴射装置を設け、高圧水を鉄鋼の表面に噴射し、高圧水の衝撃力によって、鉄鋼表面のスケールを削ぎ落とすものであった。
【0004】
しかしながら、スケールと鉄鋼との間の密着性が大きい場合には、高圧水の噴射によっても、鉄鋼表面のスケールを完全に除去することはできないことが多かった。このため、高圧水の圧力を増加し、あるいは、高圧水の流量を増加することが必要となっていたが、高圧水の圧力増加のために高圧水噴射装置の大型化を招くこと、高圧水の流量増加によって鉄鋼の温度低下が生じるため、予め加熱炉での鉄鋼の加熱温度を高くしておく必要があること、という二次的な問題が生じていた。
【0005】
さらに、高圧水によるスケール除去を実施するためには、スケールを含む排水を処理する排水処理施設が必要となるため、スケール除去のためのコストの増大やスケール除去施設の大型化は避けられなかった。
【0006】
このような高圧水によるスケール除去の問題点を回避するため、鉄鋼表面に機械的な打撃力を加え、この打撃力によってスケールを除去するメカニカルデスケーリング装置が提案されている。
【0007】
例えば、特開平9−271831号公報(特許文献1)は、回転させたチェーンで鉄鋼の表面に衝撃力を与えるメカニカルデスケーリング装置を提案している。
【0008】
また、特開2007−44728号公報(特許文献2)は、鉄鋼表面に接触するブラシロールを有しており、鉄鋼表面の凹凸に合わせてブラシロールの位置を制御するメカニカルデスケーリング装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−271831号公報
【特許文献2】特開2007−44728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1におけるメカニカルデスケーリング装置においては、チェーンによる打撃力を一定に維持することが困難である、鉄鋼表面への打撃によるチェーンの磨耗度が大きい、という問題点があった。
【0011】
同様に、特許文献2におけるメカニカルデスケーリング装置においても、ブラシロールを鉄鋼表面に押し付けて回転させるため、ブラシロールの磨耗度が大きい、という問題点があった。
【0012】
本発明は、このような従来のメカニカルデスケーリング装置における問題点に鑑みてなされたものであり、鉄鋼その他の対象物の表面のスケールを確実に除去することができるとともに、スケール除去に用いる部材の磨耗度を小さくすることを可能にするメカニカルデスケーリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、「発明の実施の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明の実施の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸心の周囲に回転可能なホィール(152)と、前記ホィール(152)を回転させる駆動手段(160、151)と、前記ホィール(152)の半径方向外方に前記ホィール(152)の外周面と間隔を開けて配置された少なくとも一つのシャフト(153)と、軸心を中心とする貫通孔(155)を有する少なくとも一つのデスケーリング用ピース(154)と、からなるメカニカルデスケーリング装置(100)であって、前記デスケーリング用ピース(154)は前記貫通孔を介して前記シャフト(153)に嵌め込まれており、前記デスケーリング用ピース(154)の前記貫通孔(155)の直径は前記シャフト(153)の外径よりも大きいものであるメカニカルデスケーリング装置(100)を提供する。
【0015】
前記デスケーリング用ピース(154)は、例えば、円筒形状をなしている。
【0016】
本発明に係るメカニカルデスケーリング装置は、2個以上の前記シャフト(153)と、前記シャフト(153)の各々について2個以上の前記デスケーリング用ピース(154)とを備えることができ、この場合、前記デスケーリング用ピース(154)は、前記ホィール(152)の前記軸心の方向において、前記シャフト(153)毎に取り付け位置がずらされている。
【0017】
前記デスケーリング用ピース(154)は、デスケーリングの対象物(170)の全表面をカバーすることができるように、前記シャフト(153)の各々において、取り付け位置がずらされていることが好ましい。
【0018】
前記ホィール(152)の上方及び下方の少なくとも何れか一方には、外周がデスケーリングの対象物(170)に接する押し付けローラ(180)が前記ホィール(152)と同心に配置されていることが好ましい。この場合、前記デスケーリング用ピース(154)は前記シャフト(153)の周囲にX±A[mm]の範囲内において回転する。
【0019】
X:押し付けローラの外周
A:予め定められた正の数
【0020】
前記ホィール(152)の回転速度は、デスケーリングの対象物(170)の材質及び表面温度に応じて、制御されるものであることが好ましい。
【0021】
本発明に係るメカニカルデスケーリング装置は、前記ホィール(152)をデスケーリングの対象物(170)に沿って移動させる移動手段(110、120)をさらに備えることができる。
【0022】
本発明に係るメカニカルデスケーリング装置は、前記デスケーリング用ピース(154)をデスケーリングの対象物(170)に押し付ける押し付け手段(140)と、前記押し付け手段(140)の押し付け力を制御する制御手段と、をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るメカニカルデスケーリング装置によれば、各デスケーリング用ピースはホィールとともに回転し、かつ、ホィールの回転により遠心力が付与される。遠心力が付与されることにより、各デスケーリング用ピースはホィールの半径方向外方に変位し、より大きな打撃力をデスケーリングの対象物に加えることができ、より確実にスケールを削ぎ落とすことができる。
【0024】
また、各デスケーリング用ピースを、例えば、硬鋼製とすることにより、従来のメカニカルデスケーリング装置に使用されていたブラシロールと比較して、耐磨耗性を大きく、交換頻度を小さくすることができ、ひいては、ランニングコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)は本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置を上方から見た平面図、図1(B)は本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置を正面から見た正面図、図1(C)は本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置を側面から見た側面図である。
【図2】図2(A)は本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニットを上方から見た平面図、図2(B)はデスケーリングユニットを正面から見た正面図である。
【図3】図3(A)及び図3(B)は本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるホィール、シャフト及びデスケーリング用ピースの相互間の位置関係を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるホィール、シャフト及びデスケーリング用ピースの位置関係を示す概略図である。
【図5】図5(A)は本発明の第二の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニットを上方から見た平面図、図5(B)はデスケーリングユニットを正面から見た正面図である。
【図6】図6は、本発明の第二の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置における6個のシャフトの各々におけるデスケーリング用ピースの配置例を示す概略図である。
【図7】図7(A)は本発明の第三の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニットを上方から見た平面図、図7(B)はデスケーリングユニットを正面から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一の実施形態)
図1(A)は本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100を上方から見た平面図、図1(B)はメカニカルデスケーリング装置100を正面から見た正面図、図1(C)はメカニカルデスケーリング装置100を側方から見た側面図である。
【0027】
図1(A)、図1(B)及び図1(C)に示すように、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100は、デスケーリング装置本体110と、スライド台120と、スイングアーム130と、エアーシリンダ140と、デスケーリングユニット150と、駆動用モータ160と、から構成されている。
【0028】
デスケーリング装置本体110は本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100のベースとして機能する台であり、直方体形状をなしている。
【0029】
デスケーリング装置本体110の後方には、転倒防止用として、縦断面が三角形の支持台111が取り付けられている。
【0030】
スライド台120はデスケーリング装置本体110の頂面上に取り付けられている。スライド台120は、デスケーリング装置本体110に対して、デスケーリング装置本体110の長さ方向Aにおいてスライド可能であるように、取り付けられている。
【0031】
スイングアーム130、エアーシリンダ140、デスケーリングユニット150及び駆動用モータ160はスライド台120上に取り付けられており、スライド台120とともにデスケーリング装置本体110の長さ方向Aにスライドする。
【0032】
スイングアーム130はスライド台120上において回転軸を中心として回転可能であるように取り付けられている。
【0033】
スイングアーム130は、回転中心軸の一方に延びる第一アーム131と、回転中心軸の他方に第一アーム131と鈍角をなして延びる第二アーム132と、からなる。第一アーム131は第二アーム132よりも長い。
【0034】
駆動用モータ160はスイングアーム130の上方に取り付けられており、スイングアーム130はスライド台120及び駆動用モータ160の双方に対して回転可能である。
【0035】
エアーシリンダ140の基端はスライド台120に取り付けられ、伸縮する側の端部である先端は第二アーム132の先端に取り付けられている。このため、エアーシリンダ140の伸縮に応じて、スイングアーム130はその回転中心軸を中心として回転運動を行う。具体的には、図1(A)において、エアーシリンダ140が伸長すれば、スイングアーム130はその回転中心軸を中心として反時計方向に回転し、逆に、エアーシリンダ140が収縮すれば、スイングアーム130はその回転中心軸を中心として時計方向に回転する。
【0036】
デスケーリングユニット150は第二アーム132の先端の下側に取り付けられている。デスケーリングユニット150は第二アーム132に対して回転可能に取り付けられており、駆動用モータ160の駆動力を受けて、第二アーム132に対して回転するように構成されている。
【0037】
図2(A)はデスケーリングユニット150を上方から見た平面図、図2(B)はデスケーリングユニット150を正面から見た正面図である。
【0038】
図2(A)及び図2(B)に示すように、デスケーリングユニット150は、第二アーム132に対して回転可能に取り付けられた回転中心軸151と、回転中心軸151に対して固定的に取り付けられているホィール152と、6本のシャフト153と、6個のデスケーリング用ピース154と、を備えている。
【0039】
ホィール152は、円筒形状の本体部分152Aと、本体部分152Aの両端(図2(B)においては上端及び下端)において本体部分152Aの外径よりも大きな外径を有して形成されている一対のフランジ部152Bと、から構成されている。
【0040】
ホィール152は回転中心軸151を介して駆動用モータ160から駆動力を受けて回転中心軸151を中心として回転する。
【0041】
6本のシャフト153の各々は一対のフランジ部152Bの間に固定的に取り付けられている。すなわち、6本のシャフト153の各々は、ホィール152の半径方向外方において、本体部分152Aの外周面と間隔を開けた状態で配置されている。具体的には、6本のシャフト153の各々は、本体部分152Aの外径よりも大きな直径を有する仮想円の円周上に等円周角に配置されている。
【0042】
デスケーリング用ピース154は円筒形状をなしており、硬鋼材からなる。デスケーリング用ピース154には、その軸心を中心として、デスケーリング用ピース154の長さ方向に延びる貫通孔155が形成されている。
【0043】
図3(A)及び図3(B)はホィール152、シャフト153及びデスケーリング用ピース154の相互間の位置関係を示す概略図である。
【0044】
図3(A)及び図3(B)に示すように、デスケーリング用ピース154は貫通孔155を介してシャフト153に嵌め込まれている。
【0045】
さらに、図3(A)及び図3(B)に示すように、デスケーリング用ピース154の貫通孔155の直径はシャフト153の外径よりも大きく設定されている。このため、デスケーリング用ピース154は、シャフト153を中心として、貫通孔155の内壁の一点がシャフト153の外周の一点と接した状態で、回転を行うことが可能である。
【0046】
以上のような構造を有する本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100は以下のような動作を行う。
【0047】
本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100はスラブ170(図3(A)及び図3(B)参照)に対向して配置されており、スラブ170の表面170Aに発生しているスケール(酸化鉄)を除去するものとする。
【0048】
まず、駆動用モータ160を作動させる。駆動用モータ160の駆動力は回転中心軸151に伝達され、ホィール152が回転中心軸151を中心として回転を開始する。
【0049】
ホィール152が回転を開始する前の段階においては、図3(B)に示すように、各デスケーリング用ピース154はシャフト153と間隔を開けた状態にある。
【0050】
ホィール152が回転を開始すると、各デスケーリング用ピース154には遠心力が作用する。すなわち、回転中心軸151の軸心を中心として半径方向外方に向かう力が各デスケーリング用ピース154に作用する。
【0051】
このため、図3(A)に示すように、各デスケーリング用ピース154は、回転中心軸151の軸心を中心とする半径方向上において、各貫通孔155の内壁の一点においてシャフト153の外周の一点と接した状態で、ホィール152とともに回転する。すなわち、各デスケーリング用ピース154は回転中心軸151から遠ざかる方向に変位した状態でホィール152とともに回転する。
【0052】
このように各デスケーリング用ピース154がホィール152とともに回転を行うことにより、各デスケーリング用ピース154が順番にスラブ170の表面170Aに衝突し、スラブ170の表面170Aに衝撃力を与える。この結果として、表面170Aのスケールが削ぎ落とされる。
【0053】
図4は、ホィール152、シャフト153及びデスケーリング用ピース154の位置関係を示す概略図である。
【0054】
図4に示すように、回転中心軸151の中心からシャフト153の中心までの距離をT、シャフト153の半径をU、デスケーリング用ピース154の直径をD、貫通孔155の直径をSとすると、各デスケーリング用ピース154がホィール152とともに回転を行っている間における各デスケーリング用ピース154の外周と回転中心軸151の中心との間の最大距離Mは次式によって表される。
【0055】
M=T+U+(S−2U)+(D−S)/2
【0056】
スラブ170の表面170Aのスケール除去対象領域(各デスケーリング用ピース154が接触する領域)におけるスケールが削ぎ落とされると、スライド台120をA方向に移動させる。
【0057】
これにより、ホィール152が隣接領域に移動し、各デスケーリング用ピース154が上記のように回転することによって、この領域におけるスケールが削ぎ落とされる。
【0058】
あるいは、スケール除去作業の間においては、スライド台120をA方向に一定速度で移動させることも可能である。
【0059】
以下、同様にして、スラブ170の表面170Aに沿ってスライド台120を移動させることにより、各デスケーリング用ピース154が表面170Aの全域に衝撃力を与え、表面170Aの全域におけるスケールを除去することができる。
【0060】
なお、スケール除去後においても、スラブ170の表面170Aから削ぎ落とされたスケールが静電気力により表面170Aに付着していることがある。このため、スケール除去後において、高圧空気をスラブ170の表面170Aに噴射することにより、表面170Aに付着しているスケールを吹き飛ばす工程を実施することも可能である。
【0061】
以上のように、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100によれば、各デスケーリング用ピース154はホィール152とともに回転し、かつ、ホィール152の回転により遠心力が付与される。遠心力が付与されることにより、各デスケーリング用ピース154はホィール152の半径方向外方に変位する。このため、各デスケーリング用ピース154は、ホィール152の半径方向外方に変位しない場合と比較して、より大きな衝撃力をスラブ170の表面170Aに加えることができ、より確実にスラブ170の表面170Aのスケールを削ぎ落とすことができる。
【0062】
また、各デスケーリング用ピース154は硬鋼製であるため、従来のメカニカルデスケーリング装置に使用されていたブラシロールと比較して、耐磨耗性が大きく、交換頻度を小さくすることができ、ひいては、ランニングコストを低減させることができる。
【0063】
本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100は以上の構成に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0064】
ホィール152を回転させる駆動用モータ160に制御装置(図示せず)を設けることにより、例えば、スラブ170の材質、スラブ170の表面170Aの温度、スケールの発生量などの種々のファクターに応じて、ホィール152の回転速度を調節することができる。
【0065】
例えば、スラブ170の硬度が大きい場合には、スラブ170の硬度に応じて、ホィール152の回転速度を大きくすることが可能である。また、スラブ170の表面170Aの温度が高い場合には、ホィール152の回転速度を大きくし、各デスケーリング用ピース154が、スラブ170の表面170Aと接触する時間を短くすることにより、デスケーリング用ピース154の磨耗度を抑えることが可能である。
【0066】
本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100においては、エアーシリンダ140は各デスケーリング用ピース154をスラブ170の表面170Aに押し付ける押し付け手段として作用する。各デスケーリング用ピース154がスラブ170の表面170Aのスケールを除去する際に、各デスケーリング用ピース154は、衝撃力の反作用として、スラブ170の表面170Aから反力を受ける。この反力によって、各デスケーリング用ピース154がスラブ170の表面170Aから浮き上がるおそれがあるが、エアーシリンダ140を用いて各デスケーリング用ピース154をスラブ170の表面170Aに押し付けることによって、各デスケーリング用ピース154の浮き上がりを防止することができる。
【0067】
また、エアーシリンダ140の伸縮の度合いを制御する制御装置(図示せず)を設け、スラブ170の硬度、スラブ170の表面170Aの温度、デスケーリング用ピース154のサイズまたは硬度、発生するスケールの硬さその他のファクターに応じて、エアーシリンダ140の伸縮の度合い、すなわち、各デスケーリング用ピース154をスラブ170の表面170Aに押し付ける押し付け力を制御することが可能である。
【0068】
また、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100は6本のシャフト153を備えるものとして構成されているが、シャフト153の本数は6には限定されない。1以上の任意の数を選択することができる。
【0069】
本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100においては、6本のシャフト153の各々には1個のデスケーリング用ピース154が取り付けられているが、各シャフト153に取り付けるデスケーリング用ピース154の個数は1には限定されない。1以上の任意の数を選択することができる(後述する第二の実施形態参照)。
【0070】
また、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100においては、各デスケーリング用ピース154は円筒形状を有するものとして構成されているが、デスケーリング用ピース154の形状は円筒形には限定されない。貫通孔155を形成することができるものである限りにおいて、多角形、楕円形、直線または曲線を組み合わせた形状その他任意の形状の横断面を有する形状を採用することができる。
【0071】
また、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100においては、各デスケーリング用ピース154の表面は平坦であるが、各デスケーリング用ピース154の表面には、縦方向、横方向、縦横両方向または斜め方向に溝を設け、ローレット状に形成することも可能である。各デスケーリング用ピース154の表面に溝を設けることにより、スケールの除去能力を高めることができる。
【0072】
(第二の実施形態)
図5(A)は本発明の第二の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニット150Aを上方から見た平面図、図5(B)はデスケーリングユニット150Aを正面から見た正面図である。
【0073】
第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置100においては、各シャフト153には1個のデスケーリング用ピース154が取り付けられているのに対して、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置においては、各シャフト153に3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cが取り付けられている。
【0074】
すなわち、図5(B)に示すように、各シャフト153には3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cが上からこの順にそれぞれ取り付けられている。
【0075】
なお、3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cに対応して、ホィール152には4個のフランジ部152Bが形成されており、3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cの各々は4個のフランジ部152Bの間にそれぞれ配置されている。
【0076】
また、3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cのうち、デスケーリング用ピース154A、154Bは相互に同一の長さを有しているが、デスケーリング用ピース154Cの長さはデスケーリング用ピース154A、154Bの長さよりも短く設定されている。
【0077】
例えば、3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cの長さの比率は4:4:1に設定されている。
【0078】
本実施形態のように、各シャフト153に複数個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cを配置する場合、各シャフト153における高さ方向の各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cの位置を揃えてしまうと、各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cの間のスペースにおいては、スラブ170の表面170Aにデスケーリング用ピース154A、154B、154Cの何れもが接しないこととなり、表面170Aの全域においてスケールの除去を行うことができない。
【0079】
このため、図6に示すように、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置においては、高さ方向におけるデスケーリング用ピース154A、154B、154Cの位置を6本のシャフト153のそれぞれについてずらし、6本のシャフト153のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cによって、スラブ170の表面170Aの全域をカバーすることができるようになっている。
【0080】
図6は、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置における6個のシャフト153−1、153−2、153−3、153−4、153−5、153−6(例えば、上方から見て時計方向にこの順番に並んでいる)の各々におけるデスケーリング用ピース154A、154B、154Cの配置例を示す概略図である。
【0081】
例えば、シャフト153−2、153−4、153−6においては、3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cが上からこの順番に配置されている。
【0082】
例えば、回転中心軸151の軸心方向におけるデスケーリング用ピース154A及び154Bの長さは40mmに設定されており、デスケーリング用ピース154Cの長さは10mmに設定されている。各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cの間のスペースは20mmに設定されている。
【0083】
シャフト153−4におけるデスケーリング用ピース154Bはシャフト153−2におけるデスケーリング用ピース154Bよりも1.2mm(デスケーリング用ピース154Bの長さの3%)高く配置されており、同様に、シャフト153−6におけるデスケーリング用ピース154Bはシャフト153−4におけるデスケーリング用ピース154Bよりも1.2mm高く配置されている。
【0084】
また、シャフト153−1、153−3、153−5においては、3個のデスケーリング用ピース154C、154A、154Bが上からこの順番に配置されている。
【0085】
シャフト153−3におけるデスケーリング用ピース154Bはシャフト153−1におけるデスケーリング用ピース154Bよりも1.2mm高く配置されており、同様に、シャフト153−5におけるデスケーリング用ピース154Bはシャフト153−3におけるデスケーリング用ピース154Bよりも1.2mm高く配置されている。
【0086】
6本のシャフト153について各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cを図6に示すように配置することにより、計18個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cによって、スラブ170の表面170Aの全域をカバーすることができる。
【0087】
本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置においては、各シャフト153に対して3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cを配置しているが、デスケーリング用ピースの個数は3には限定されない。2以上の任意の数を選択することが可能である。
【0088】
また、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置においては、3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cのうち、デスケーリング用ピース154A、154Bの長さとデスケーリング用154Cの長さが異なっているが、各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cの長さを同一に設定することも可能であり、あるいは、3個のデスケーリング用ピース154A、154B、154Cの全ての長さを相互に異なる長さに設定することも可能である。
【0089】
また、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置においては、3個のシャフト153−1、153−3、153−5または3個のシャフト153−2、153−4、153−6におけるデスケーリング用ピース154A、154B、154Cの配置をそれぞれ同一にしているが、各シャフト153−1乃至153−6における各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cの配置は任意である。全てのシャフト153において各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cの配置を異なるものにすることも可能である。
【0090】
(第三の実施形態)
図7(A)は本発明の第三の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニット150Bを上方から見た平面図、図7(B)はデスケーリングユニット150Bを正面から見た正面図である。
【0091】
本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニット150Bは、第二の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニット150A(図5(A)及び図5(B))と比較して、押し付けローラ180を追加的に備えている点において異なる。押し付けローラ180を備える点を除いて、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニット150Bは、第二の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置におけるデスケーリングユニット150Aと同一の構造を有している。
【0092】
押し付けローラ180は円筒形状をなし、硬鋼製である。押し付けローラ180には、その軸心を中心とする貫通孔181が形成されている。押し付けローラ180は、貫通孔181を介して、ホィール152の直上において、回転中心軸151に回転可能に、かつ、同心に取り付けられている。
【0093】
押し付けローラ180は、各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cがスラブ170の表面170Aに接触する際に、同様に、その外周面182においてスラブ170の表面170Aに接触する。
【0094】
押し付けローラ180の外周をX[mm]とすると、各デスケーリング用ピース154A、154B、154CはX±A[mm]の範囲内において回転する。
【0095】
例えば、押し付けローラ180の外周を168mmに設定した場合、各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cは168±5mmの範囲内において回転の軌道を描く。±5mmの数字はシャフト153の直径、デスケーリング用ピース154A、154B、154Cの外径、貫通孔155の内径その他のファクターにより一義的に決定される数字である。
【0096】
本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置によれば、押し付けローラ180をスラブ170の表面170Aに接触させることにより、各デスケーリング用ピース154A、154B、154Cとスラブ170の表面170Aとの間の距離を一定に維持することが可能となり、デスケーリング用ピース154A、154B、154Cによるスケールの除去を一様に行うことができる。
【0097】
なお、本実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置においては、押し付けローラ180はホィール152の直上に配置されているが、ホィール152の直下に配置することも可能であり、あるいは、ホィール152の直上及び直下の双方に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
100 本発明の第一の実施形態に係るメカニカルデスケーリング装置
110 デスケーリング装置本体
120 スライド台
130 スイングアーム
131 第一アーム
132 第二アーム
140 エアーシリンダ
150 デスケーリングユニット
150A 本発明の第二の実施形態におけるデスケーリングユニット
150B 本発明の第三の実施形態におけるデスケーリングユニット
151 回転中心軸
152 ホィール
152A 本体部分
152B フランジ部
153 シャフト
154 デスケーリング用ピース
155 貫通孔
160 駆動用モータ
170 スラブ
170A スラブ表面
180 押し付けローラ
181 貫通孔
182 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心の周囲に回転可能なホィールと、
前記ホィールを回転させる駆動手段と、
前記ホィールの半径方向外方に前記ホィールの外周面と間隔を開けて配置された少なくとも一つのシャフトと、
軸心を中心とする貫通孔を有する少なくとも一つのデスケーリング用ピースと、
からなるメカニカルデスケーリング装置であって、
前記デスケーリング用ピースは前記貫通孔を介して前記シャフトに嵌め込まれており、
前記デスケーリング用ピースの前記貫通孔の直径は前記シャフトの外径よりも大きいものであるメカニカルデスケーリング装置。
【請求項2】
前記デスケーリング用ピースは円筒形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のメカニカルデスケーリング装置。
【請求項3】
2個以上の前記シャフトと、前記シャフトの各々について2個以上の前記デスケーリング用ピースとを備えており、
前記デスケーリング用ピースは、前記ホィールの前記軸心の方向において、前記シャフト毎に取り付け位置がずらされていることを特徴とする請求項1または2に記載のメカニカルデスケーリング装置。
【請求項4】
前記デスケーリング用ピースは、デスケーリングの対象物の全表面をカバーすることができるように、前記シャフトの各々において、取り付け位置がずらされていることを特徴とする請求項3に記載のメカニカルデスケーリング装置。
【請求項5】
前記ホィールの上方及び下方の少なくとも何れか一方には、外周がデスケーリングの対象物に接する押し付けローラが前記ホィールと同心に配置されており、
前記デスケーリング用ピースは前記シャフトの周囲にX±A[mm]の範囲内において回転するものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のメカニカルデスケーリング装置。
X:押し付けローラの外周
A:予め定められた正の数
【請求項6】
前記ホィールの回転速度は、デスケーリングの対象物の材質及び表面温度に応じて、制御されるものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のメカニカルデスケーリング装置。
【請求項7】
前記ホィールをデスケーリングの対象物に沿って移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のメカニカルデスケーリング装置。
【請求項8】
前記デスケーリング用ピースをデスケーリングの対象物に押し付ける押し付け手段と、
前記押し付け手段の押し付け力を制御する制御手段と、
をさらに備えている請求項1乃至7の何れか一項に記載のメカニカルデスケーリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−224629(P2011−224629A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98168(P2010−98168)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000135254)株式会社ニレコ (41)