説明

メガネのフロント部及びリム構造

【課題】 ツルの開閉操作に際してフロント部に取付けたレンズに無理を掛けることのないメガネのフロント部構造の提供。
【解決手段】 フロント部1はフロントフレーム3の裏側にハーフリム4を設けた2重構造とし、上記フロントフレーム3はその両側に設けたヨロイ部7に継手6,6を介してツル2,2を折畳み可能に取付け、上記ハーフリム4は上方を開口した概略C形を成した2本のハーフリム片14,14を一定の隙間15を残して繋ぎ片19,19・・を介して連結し、そして、このハーフリム4,4をフロントフレーム3に小さい繋ぎ片12,12を介して連結し、ハーフリム4,4にはレンズ5,5を嵌めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロント部を板材で構成したメガネのフロント部及びレンズが嵌るリム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メガネフレームには色々な種類が存在している。大別すれば金属製フレームと樹脂製フレームがあり、同じ金属製フレーム及び樹脂製フレームにしてもその形態や構造は多種多様化している。ところで、メガネの基本的な形態はフロント部とツルを有し、該ツルはフロント部の両側に蝶番などの継手を介して折畳み出来るように取付けられている。
【0003】
そして、フロント部にはレンズが保持されるが、該レンズを保持する為に環状のリムを設けて嵌められ、又は環状リムの代わりにハーフリムと水糸との組合せ構造とする場合もある。さらには、リムを備えないで両レンズを連結部材を介してネジ止めにて連結すると共に、レンズの外側にはヨロイを直接ネジ止めした縁なしメガネも多用されている。
【0004】
ところで、メガネを掛けたり、外したりする際にはメガネを掛けている状態より外方向へツルは押し開かれ、該ツルが押し開かれることで上記フロント部は湾曲変形する。その結果、フロント部のリムに嵌っているレンズには無理がかかる。すなわち、リムが湾曲することで該リムに嵌っているレンズ外周には大きな応力が発生して欠けたり、該レンズが割れるといったこともある。又、時にはレンズがリムから外れるといった事態も発生する。
【0005】
特にリムを持たないで直接ネジ止めした縁なしメガネの場合であれば、ツルを押し開くことで発生する曲げモーメントはダイレクトにレンズに作用し、連結部材及びヨロイとレンズのネジ止め部位に発生する集中応力にて亀裂が発生する。特に、近年の金属製メガネフレームは、そのデザインを重視する為に非常に細い線材で構成されることから、レンズに及ぼす力が大きくなる。太い線材にてフロント部が構成されるならばリムの変形は小さくなるが、細いリムともなれば該リムに嵌るレンズにてフロント部の剛性を保持することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のメガネフレームには上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、リムに嵌めたレンズが歪んだり、ツルの開閉操作に際して外れることのないメガネのフロント部構造及びリム構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るメガネのフロント部は2重構造とし、フロントフレームの裏側にリムを設けている。該フロントフレームはその両側にヨロイ部を形成し、該ヨロイ部には継手を介してツルが折畳み出来るように取付けられている。そして、上記リムにはレンズが嵌って取付けられ、しかも該リムは上方を開口した概略ハーフリムを成している。
【0008】
そして、ハーフリムは間に僅かな隙間を設けた2重構造とし、レンズはその外周が僅かな隙間の間に係合して取付けられる。すなわち、レンズは2本のハーフリム片にて挟まれた構造と成る。該ハーフリムとフロントフレームは繋ぎ片を介して連結され、レンズはハーフリムの上部開口から嵌めることが出来、レンズの上側外周に水糸は基本的に張設する必要がない。
【0009】
ここで、上記フロントフレームの具体的な形状は限定せず、一般的にはレンズが嵌るハーフリムがカバーされるように構成している。一方、本発明に係るリム構造は、2本のリム片で構成して間に僅かな隙間を残した2重構造を成しており、フロントフレームと組合せることなく従来型式のメガネフレームのフロント部として用いることも出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るメガネのフロント部はフロントフレームの裏側にハーフリムを設けた2重構造とし、レンズは裏側のハーフリムに嵌って取付けられる。しかも、該ハーフリムは上方が開口している為に、上から簡単に嵌めて取付けることが出来る。勿論、周長はハーフリムの1/2より大きく成っているために、一旦嵌ったレンズは独りでに外れることはない。
【0011】
そして、ハーフリムは間に僅かな隙間を形成した2重構造と成っていることで、レンズ外周先端は隙間に係合してリム線に当接することはなく、その為に、レンズは歪まず、外周が欠けることもない。ところで、該ハーフリムはフロントフレームに小さい繋ぎ片を介して連結しており、メガネを掛ける際に、又メガネを外す際にツルを外方向へ押し開いてもフロントフレームが湾曲変形するだけであって、小さい繋ぎ片を介して連結されるハーフリムが変形することはない。
【0012】
その結果、レンズがハーフリムから外れたり、該レンズに無理な応力は作用しない。一方、リム構造を間に僅かな隙間を残した2重構造とすることで、リム外側にヨロイを設けると共に継手を介してツルを取付けた従来型式のメガネフレームのフロント部として構成してもその効果は十分得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るフロント部構造を備えたメガネ。
【図2】フロントフレームとなるブランクの具体例。
【図3】レンズが嵌るハーフリム。
【図4】2本のC形ハーフリム片で構成されるハーフリムの展開図。
【図5】図3のA部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係るフロント部を備えたメガネの外観を示す概略図である。同図の1はフロント部、2はツルを表し、上記フロント部1はフロントフレーム3とハーフリム4,4にて構成し、ハーフリム4,4は上方が開口した概略C形を成している。そして、レンズ5,5はこのハーフリム4,4に嵌っており、ハーフリム4,4に拘束されないレンズ上側はフリーな状態となって取付けられている。すなわち、レンズ上側を拘束する為の水糸は存在しない。
【0015】
ツル2,2はフロントフレーム3の外側に形成したヨロイ部に設けた継手6,6を介して折畳み出来るように取付けられている。ここで、継手6としては一般に蝶番が用いられるが、該蝶番継手に限定するものではない。ところで、本発明に係るメガネのフロント部1はフロントフレーム3の裏側(背面側)にレンズ5,5が嵌ったハーフリム4,4が設けられていて、2重構造を構成している。
【0016】
勿論、フロントフレーム3の両リム8,8は環状を成しているが、レンズは嵌っていない。そして、フロントフレーム3の中央部に形成している連結部9を挟んで脚10,10が延び、その先端には鼻当てパット11,11が取付けられている。この鼻当てパット11,11は樹脂の成型品であり、メガネを掛けた際に鼻の両脇に当ってフロント部1が支えられる。
【0017】
上記ハーフリム4,4はフロントフレーム3のリム8,8の下部に設けた繋ぎ片12,12を介して該フロントフレーム3と連結して支えられている。そこで、ハーフリム4,4にはヨロイ部はなく、ツル2,2とは繋がっておらず、その為にツル2,2を外方向へ押し開く場合にフロントフレーム3に曲げモーメントが作用して湾曲変形した場合であっても、該フロントフレームと小さい繋ぎ片12,12を介して連結しているハーフリム4,4は湾曲変形することはない。
【0018】
すなわち、ハーフリム4,4は常に安定状態に保たれる為に、嵌っているレンズ5,5に無理な力が作用せず、レンズ5,5の外周が欠けることはない。又、レンズの歪みを抑えることが出来る。しかも、上方を開口した概略C形のハーフリム4,4に嵌るだけで取付けられ、従来のナイロールフレームのごとく上側を水糸で拘束する必要もない。
【0019】
図2は薄い金属板を切り出したもので、これを曲げ成形することでフロントフレーム3となる。このフロントフレーム3の板厚Tは0.3mm〜1.0mmで、複数枚の金属板を重ね合わせた状態でワイヤーカットして、一度に複数枚のフロントフレーム3,3・・・を加工することが出来る。又は、エンドミルにて周囲を切削加工することも可能であり、さらには金型を使用してプレス打抜きする場合もある。
【0020】
プレス打抜き加工するには、ある程度の大量生産を行なわなくてはならず、近年の多種少量生産においてはプレス打抜き加工は採算性においては不向きかもしれない。そして、プレス打抜き加工を行う場合には、全周がせん断面を形成しなくてはならず、すなわち破断面にならないように精密打抜き加工(ファインブランキング加工)を採用することが出来る。
【0021】
ところで、図2に示すブランク13は円環状の両リム8,8が連結部9にて繋がれ、リム8,8の外側にはストレートに延びるヨロイ部7,7が形成されている。そして、リム8,8の下側には小さい繋ぎ片12,12が下方へ突出している。図1に示すフロントフレーム3は、該ブランク13を所定の曲面に曲げ成形したものであって、リム8,8、連結部9は滑らかな曲面を形成し、ヨロイ部7,7は概略L形に形成され、又繋ぎ片12,12も背面側へL形に曲げられる。
【0022】
図3はハーフリム4にレンズ5が嵌っている状態を示す平面図と正面図である。該ハーフリム4は上方が開口した概略C形を成し、その為に、ハーフリム4の両先端を押し広げることでレンズ5を上方から嵌めることが出来る。ここで、該ハーフリム4は同じC形をした2本のハーフリム片14,14で構成され、両ハーフリム片14,14の間には僅かな隙間15を設けている。そして、レンズ5の外周縁16は山形に尖っていて、この外周縁16は上記隙間15に係合することで外れないように取付けられる。
【0023】
そこで、2本のハーフリム片14,14は間に隙間15を形成して互いに分離しないように繋がれている。例えば、ハーフリム片14,14の両先端17,17と中央部18を繋ぎ片によって連結している。図4はハーフリム4の展開図であり、薄い金属板をカットした状態のブランク20を示している。該ブランク20の製作方法はフロントフレーム3の場合と同じようにワイヤーカット、エンドミルによる切削加工、又は金型を使用しての精密打抜き加工(ファインブランクキング加工)を採用することが出来る。
【0024】
このブランク20は2つのC形ハーフリム片14,14が繋ぐ片19によって繋がれているが、該繋ぎ片19を曲げ成形することで両ハーフリム片14,14は互いに重なり合うことが出来る。そして、一方のハーフリム片14の両先端17、17に形成した繋ぎ片19、19を他方のハーフリム片14の両先端17、17にロウ付けすることで前記図3に示すハーフリム4が出来上がり、両ハーフリム片14,14の間に連続した隙間15が形成される。
【0025】
図5は図3のA部拡大図を示しているように、両ハーフリム片14,14の隙間15にはレンズ5の外周縁16が係合している。すなわち、外周縁16の先端21はハーフリム4に接することなく該ハーフリム4に嵌っている。該ハーフリム4は1本のC形線材で構成されるならば、該ハーフリム4の内周に凹溝を形成しなくてはならないが、本発明では2本のハーフリム片14,14の間の隙間15が凹溝として機能する。
【0026】
内周に凹溝を形成する場合であっても、先端21はハーフリム4に接触してレンズ5に無理な応力が作用するが、本発明のハーフリム4の構造ではレンズ先端21への応力の作用はなく、特に近年のプラスチックレンズの歪みを抑えることが出来る。そして、ハーフリム片14は断面四角形の線材を使用することが出来、2次加工(例えば凹溝加工)の必要性がない。ここで、両ハーフリム片14,14を繋ぐ繋ぎ片19,19,19は、連結手段として用いられると共に、全長にわたって均一な隙間15を形成する為に機能する。
【0027】
すなわち、繋ぎ片19,19・・・の基部を屈曲してその先端を他方のハーフリム片14にロウ付けすることが出来る。そして、このように製作されたハーフリム4はフロントフレーム3のリム8に形成した繋ぎ片12の先端にロウ付けにて連結される。ただし、該ハーフリム4は別々に加工した2本のC形ハーフリム片14,14を、小さい繋ぎ片19,19,19を間に挟んでロウ付けして製作することも可能である。
【0028】
同じく、フロントフレーム3にも繋ぎ片12を設けることなく、独立して加工した別の繋ぎ片12を間に挟んでハーフリム4をフロントフレーム3の裏側(背面側)にロウ付けすることも出来る。さらには、フロントフレームとハーフリム片14,14を一枚の薄い金属板を用いてワイヤーカットしたり、又はエンドミルで切削加工して大きなブランクを加工し、その後で、曲げ成形することでフロント部1を製作することも可能である。
【0029】
ところで、本発明のフロント部1の材質、すなわちフロントフレーム3及びハーフリム4の材質としては一般的に金属板を使用するが、樹脂を使用した成形品として構成することも可能であり、材質の種類は限定しない。そして、実施例では説明の都合上、円形のリム8、円形のレンズ5、C形のハーフリム4としているが、実際にはデザインを考慮してその形状は多種多様化される。
【0030】
そして、上記実施例ではフロント部1をフロントフレーム3の裏側にハーフリム4,4を繋いだ2重構造としているが、本発明のリム構造は該フロントフレーム3と組み合わせることなくそれ単独でフロント部を構成することも可能である。すなわち、2本のハーフリム片14,14を僅かな隙間を残して構成される2重構造のリムは、嵌ったレンズに無理な応力を及ぼすことなく保持することが出来る。従って、この場合には両リムを連結する連結部材によって連結し、リム外側にはヨロイをロウ付けし、ヨロイには継手を介してツルが取付けられる。そして、リム構造はハーフリムに限らず円環状のフルリムとすることもある。
【符号の説明】
【0031】
1 フロント部
2 ツル
3 フロントフレーム
4 ハーフリム
5 レンズ
6 継手
7 ヨロイ部
8 リム
9 連結部
10 脚
11 鼻当てパット
12 繋ぎ片
13 ブランク
14 ハーフリム片
15 隙間
16 外周縁
17 先端
18 中央部
19 繋ぎ片
20 ブランク
21 先端



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メガネのフロント部構造において、該フロント部はフロントフレームの裏側(背面側)にハーフリムを設けた2重構造とし、上記フロントフレームはその両側に設けたヨロイ部に継手を介してツルを折畳み可能に取付け、上記ハーフリムは上方を開口した概略C形を成した2本のハーフリム片を一定の隙間を残して繋ぎ片を介して連結し、そして、このハーフリムをフロントフレームに小さい繋ぎ片を介して連結し、ハーフリムにはレンズを嵌めたことを特徴とするメガネのフロント部構造。
【請求項2】
上記フロントフレームは円環状の両リムを連結部によって連結し、リムの外側にはヨロイ部を、そして両リムの下側には繋ぎ片を形成したブランクを、薄い金属板をカット、切断、又は打抜き加工し、これを曲げ成形して製作した請求項1記載のメガネのフロント部構造。
【請求項3】
上記ハーフリムはC形のハーフリム片を繋ぎ片を介して連結し、該ハーフリム片の先端にも繋ぎ片を形成し、これら各繋ぎ片を介して折り曲げて重ね合わせた両ハーフリム片を連結した請求項1、又は請求項2記載のメガネのフロント部構造。
【請求項4】
上記フロントフレーム及び2本のC形ハーフリムを形成したブランクを一枚の板材をカット、切削、又は打抜きにて加工し、このブランクを曲げ成形してフロント部を構成した請求項1記載のメガネのフロント構造。
【請求項5】
メガネのフロント部を構成してレンズが嵌るリムにおいて、該リムは対を成す2本のリム片から成って、間に一定の隙間を残して繋ぎ片によって連結され、リムに嵌ったレンズの外周縁は両リム片によって挟み込んで保持されることを特徴とするメガネのリム構造。
【請求項6】
上記リムをC形のハーフリムとした請求項5記載のメガネのリム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−145524(P2011−145524A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6887(P2010−6887)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(506293580)有限会社 梅田 (7)
【Fターム(参考)】