説明

メス型コネクタ及び接続具

【課題】形状や寸法が異なる各種のオス型コネクタに接続でき、且つ、オス型コネクタへの接続作業を容易にする。
【解決手段】液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタに接続されるメス型コネクタであって、管状部の外周面に装着されるアダプタ30と、アダプタに外装されるハンドル50とを含む。アダプタは、その一端に開口を有する挿入部31を含み、挿入部は、第1挿入部311と第2挿入部312とをこの順で含む。挿入部の周方向の少なくとも一部において、アダプタの中心軸20aから第1挿入部の外周面までの距離が、アダプタの中心軸から前記第2挿入部の外周面までの距離よりも大きいことにより、挿入部の外周面が段差面313を含み、ハンドルは、段差面と接する段差面当接部57を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物が流出するオス型コネクタに接続されるメス型コネクタに関する。また、本発明は、オス型コネクタとメス型コネクタとからなる接続具、並びにメス型コネクタを含む輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
経口によらずに患者に栄養や薬剤を投与する方法として経腸栄養療法や静脈栄養療法が知られている。経腸栄養療法では、患者の鼻腔から胃又は十二指腸にまで通されたチューブ(一般に「経鼻チューブ」と呼ばれる)又は患者の腹に形成された胃ろう(胃ろうを形成する施術を「Percutaneous Endoscopic Gastrostomy」と呼ぶ)に挿入されたチューブ(一般に「PEGチューブ」と呼ばれる)を介して栄養剤、流動食、又は薬剤などの液状物(一般に「経腸栄養剤」と呼ばれる)が投与される。また、静脈栄養療法では、患者の静脈に挿入された輸液ラインを介してブドウ糖などの栄養成分や薬剤成分を含む液状物(一般に「輸液」と呼ばれる)が投与される。
【0003】
経腸栄養療法や静脈栄養療法においては、患者に投与される液状物は、医療用容器に収納される。医療用容器の下端には、液状物が流出するオス型コネクタが設けられている。医療用容器のオス型コネクタと、患者に接続された経鼻チューブ、PEGチューブ、又は輸液ライン等とは、輸液セットで接続される。輸液セットは柔軟性を有するチューブ等を含み、その上流側端には、医療用容器に設けられたオス型コネクタと接続されるメス型コネクタが設けられている。
【0004】
オス型コネクタとメス型コネクタとの接続に関しては、接続されたオス型コネクタとメス型コネクタとが引っ張り力を加えても分離しないという「引っ張り特性」や、液状物に圧力を加えてもオス型コネクタとメス型コネクタとの接続部分から液状物が漏れ出さないという「耐圧特性」などの基本特性を備えていることが望まれる。これらの基本特性に加えて、メス型コネクタにオス型コネクタを容易に挿入できるという「挿入容易性」を備えていることが望まれる。
【0005】
オス型コネクタのメス型コネクタに挿入される管状部に関しては標準となる規格が存在せず、管状部の外周面の形状や寸法が異なる各種のオス型コネクタが存在し現実に使用されている。このような各種のオス型コネクタに対して上述した引っ張り特性、耐圧特性、挿入容易性を有する、汎用性の高いメス型コネクタが望まれる。
【0006】
特許文献1には、図12に示すように、オス型コネクタ900の管状部902が挿入されるアダプタ920と、アダプタ920が挿入されたハンドル930とを備えたメス型コネクタ910が記載されている。アダプタ920の下端には、輸液セットを構成する柔軟性を有するチューブ927が接続されている。アダプタ920は、可撓性及び弾性を有する材料からなる。一方、ハンドル930は、アダプタ920より高剛性の材料からなる。アダプタ920のオス型コネクタ900の管状部902が挿入される側の開口端には、外方向に突出するフランジ部922が形成されている。ハンドル930の内周面にはフランジ保持部932が設けられている。
【0007】
メス型コネクタ910をオス型コネクタ900に接続するには、ハンドル930の外周面を2本の指で把持して、アダプタ920内に管状部902を挿入する。ハンドル930に加えられた矢印939の向き(オス型コネクタ900に向かう向き)の力(押込み力)は、フランジ保持部932を介してアダプタ920のフランジ部922に伝えられる。フランジ部922は、アダプタ920の開口端に形成されているので、管状部902をアダプタ920内に挿入する際に、アダプタ920は座屈変形することはない。また、ハンドル930を把持したときにハンドル930に加えられる直径方向の力は、アダプタ920には作用しないから、この把持力によってアダプタ920と管状部902との間の摩擦力が増大することはない。従って、このメス型コネクタ910はオス型コネクタ900に対して良好な挿入容易性を有している。
【0008】
アダプタ920は、管状部902の外周面の形状や寸法に応じて適宜弾性変形できる。従って、アダプタ920は、管状部902の外周面の形状や寸法にかかわらず管状部902の外周面に密着するので、各種のオス型コネクタに対して良好な引っ張り特性及び耐圧特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/152871号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のメス型コネクタ910では、実質的に剛体と見なせる環状のハンドル930に柔軟なアダプタ920が挿入されている。従って、より大きな外径を有する管状部902をアダプタ920に挿入しようとすると、管状部902の挿入によってアダプタ920が拡径するのをハンドル930が制限する。また、管状部902の挿入によってアダプタ920が管状部902の挿入方向に沿って伸長し、アダプタ920の内径が若干小さくなって、アダプタ920内への管状体902の挿入が行い難くなる。よって、より大径の管状部を有するオス型コネクタと従来のメス型コネクタとを接続することが困難であるという課題がある。
【0011】
本発明は、従来のメス型コネクタが有する上記の課題を解決し、より大径の管状部を有するオス型コネクタに対しても接続が容易であるメス型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のメス型コネクタは、液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタに接続されるメス型コネクタであって、
前記管状部の外周面に装着されるアダプタと、前記アダプタに外装されるハンドルとを含み、
前記アダプタは、
その一端に開口を有する挿入部と、
前記開口から前記挿入部よりもより遠くに配置された基端部と、
前記挿入部の外周面より外方向に突出するように前記挿入部の前記開口側の端又はその近傍に設けられたフランジ部とを含み、
前記挿入部は、前記開口側から前記基端部側に向かって第1挿入部と第2挿入部とをこの順で含み、
前記挿入部の周方向の少なくとも一部において、前記アダプタの中心軸から前記第1挿入部の外周面までの距離が、前記アダプタの中心軸から前記第2挿入部の外周面までの距離よりも大きいことにより、前記挿入部の外周面が段差面を含み、
前記ハンドルは、
前記フランジ部の前記開口とは反対側の面と接して前記フランジ部を保持するフランジ保持部と、
前記ハンドルの中心軸に対向する内周面に形成され、前記段差面の前記開口とは反対側の面と接する段差面当接部とを含む。
【0013】
本発明の接続具は、液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと、前記オス型コネクタに接続されるメス型コネクタとからなる接続具であって、前記メス型コネクタが本発明のメス型コネクタである。
【0014】
本発明の輸液セットは、本発明のメス型コネクタと、前記メス型コネクタに接続されたチューブとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明のメス型コネクタは、アダプタの挿入部の外周面が上記段差面を含み、ハンドルが前記段差面と接する段差面当接部を含んでいる。そのため、オス型コネクタの管状部の挿入に伴うアダプタ(第1挿入部)の伸長を抑制でき、且つ、ハンドルに加えられたオス型コネクタに向かう向きの力(押込み力)を第1挿入部へ効果的に伝えることができる。故に、本発明によれば、管状部の挿入部内への挿入性が向上し、例えば、図12に示した従来のメス型コネクタでは接続できなかった、より大径の管状部を有するオス型コネクタにも接続できる、汎用性の高いメス型コネクタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aは本発明の一実施形態にかかるメス型コネクタの斜視図、図1Bは図1Aの1B−1B線に沿ったその断面図であり、図1Cは図1Bの部分拡大図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるメス型コネクタを構成するアダプタの斜視図である。
【図3】図3Aは図2に示したアダプタの平面図、図3Bはその側面図、図3Cは図3Aの3C−3C線に沿ったアダプタの断面図である。
【図4】図4Aは本発明の一実施形態にかかるメス型コネクタを構成するハンドルを上側から見た斜視図、図4Bは下側から見た斜視図である。
【図5】図5Aは図4に示したハンドルの平面図、図5Bはその側面図である。
【図6】図6Aは図4に示したハンドルの下面図、図6Bは図5Aの5D−5D線に沿ったハンドルの断面図である。
【図7】図7は、オス型コネクタの一例の斜視図である。
【図8】図8Aは接続される直前の、本発明の一実施形態にかかるメス型コネクタ及び図7に示したオス型コネクタの側面図であり、図8Bはその断面図である。
【図9】図9Aは本発明の一実施形態にかかるメス型コネクタと図7に示したオス型コネクタとが接続された状態を示した側面図であり、図9Bはその断面図である。
【図10】図10は、オス型コネクタの別の例の斜視図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態にかかるメス型コネクタと図10に示したオス型コネクタとが接続された状態を示した断面図である。
【図12】図12は、オス型コネクタと、当該オス型コネクタと接続される従来のメス型コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のメス型コネクタの好ましい一例では、第1挿入部が、その外周面に、外方向に突出しアダプタの長手方向に沿って延びたリブを含み、リブの第2挿入部側の端面が段差面である。この場合、オス型コネクタの管状部の挿入に伴う、第1挿入部の長手方向への伸長の抑制と半径方向への弾性圧縮変形の容易化とを両立でき、結果として、管状部のアダプタの挿入部への挿入容易性が向上するので、好ましい。
【0018】
本発明のメス型コネクタの好ましい一例では、段差面当接部が、ハンドルの中心軸に対向する内周面より内方向に突出した環状リブである。段差面当接部が、環状リブであると、段差面の形状の選択の自由度が高くなり好ましい。また、段差面と段差面当接部との当接面積を大きく設定することができるので、ハンドルに加えられた押込み力のアダプタへの伝達がより効果的に行え、好ましい。
【0019】
本発明のメス型コネクタの一例では、ハンドルの、少なくともアダプタの前記開口に近い端部側が、大小の筒部が同心円状に配置された二重筒構造をしている。内側の筒部を第1筒部とし、外側の筒部を第2筒部とすると、第1筒部が、フランジ保持部と段差面当接部とを備え、前記第1筒部の前記段差面当接部よりも上側部分には、前記第1筒部を周方向に複数に分割する複数のスリットが形成されている。第2筒部のハンドルの中心軸に対向する内周面には、オス型コネクタと係合可能な係合部が形成されている。そのため、第1筒部内に管状部を挿入することにより中心軸から第1筒部の径方向に押力が印加されると、第1筒部の開口径が拡径可能である。一方、第2筒部の開口径は、第1筒部の開口径が拡径しても拡径しない。オス型コネクタと係合可能な係合部はこの第2筒部に設けられている。従って、例えば、スリットが形成された第1筒部に係合部を設ける場合と比較して、ハンドルとオス型コネクタとを確実に係合させることができ、且つ、係合が外れにくいので、好ましい。
【0020】
本発明のメス型コネクタの好ましい一例では、ハンドルは、その外周面上の互いに対向する位置に一対の把持部を備える。ハンドルを、その中心軸と平行な方向に沿って見たとき、前記係合部が各々形成された1対の鍔部が、前記中心軸と直交する前記ハンドルの外周面の長軸上に配置され、1対の前記把持部は、前記中心軸及び前記長軸と直交する前記ハンドルの外周面の短軸上に配置されている。この場合、メス型コネクタの係合部の位置をハンドルの外周面の形状から容易に認識できるので、オス型コネクタに対する係合作業を効率よく行える。
【0021】
本発明のメス型コネクタの好ましい一例において、ハンドルの外周面のうちの1対の把持部に対応する部分は、ハンドルの二重筒構造の部分に隣接しており、二重筒構造の部分よりもハンドルの中心軸と長軸とを含む平面方向に窪んでいる。そのため、一対の把持部でのハンドルの外寸法は、長軸上に設けられた一対の鍔部でのハンドルの外寸法より小さい。よって、作業者は、ハンドルを把持する場合、極めて自然に一対の把持部を親指と人差し指とで挟んで把持できる。
【0022】
本発明のメス型コネクタの好ましい一例において、アダプタの内周面は、開口側から基端部側に向って、第1領域、第2領域、及び第3領域をこの順に含む。第1領域、第2領域、及び第3領域の内径はこの順に小さい。アダプタの内径をこのように徐々に小さくすることにより、オス型コネクタの管状部の外周面の形状や寸法が種々に異なっても、いずれかの領域でアダプタの内周面と管状部の外周面とを密着させることができる。故に、オス型コネクタの管状部の仕様にかかわらず、オス型コネクタと接続したときの引っ張り特性及び耐圧特性が向上する。
【0023】
本発明のメス型コネクタの好ましい一例において、アダプタの内周面の第1領域と第2領域の境界領域に、オス型コネクタの管状部の外周面に当接し弾性圧縮変形し得る環状の突起が形成されている。そして、アダプタの外周面の段差面は、この環状の突起よりもより下方(環状の突起よりもより基端部の近く)であって上記環状の突起の近傍の外周面に形成されている。この場合、ハンドルに加えられたオス型コネクタに向かう向きの力(押込み力)を、段差面当接部を介して第1挿入部へ効果的に伝えることができる。
【0024】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。
【0025】
図1Aは、本発明の一実施形態にかかるメス型コネクタ20の斜視図である。本実施形態のメス型コネクタ20は、オス型コネクタの管状部が挿入されるアダプタ30と、アダプタ30に外装された環状のハンドル50とを備える。参照符号20aは、メス型コネクタ20の中心軸であり、これはアダプタ30の中心軸及びハンドル50の中心軸でもある。図1Bは、図1Aの1B−1B線を含み且つ中心軸20aを含む面に沿ったメス型コネクタ20の断面図である。以下の説明の便宜のため、図1A及び図1Bの紙面の上側(オス型コネクタ側)をメス型コネクタ20の「上」側、図1A及び図1Bの紙面の下側(オス型コネクタとは反対側)をメス型コネクタ20の「下」側と呼ぶ。
【0026】
(アダプタ)
図2はアダプタ30の斜視図、図3Aはその平面図、図3Bはその側面図、図3Cは図3Aの3C−3C線に沿ったその断面図である。
【0027】
図1A〜図3Cに示されるように、アダプタ30は、液状物が流れる流路がその中心軸20aに沿って形成された、全体として円筒形状を有する。オス型コネクタ100の管状部108は(図7等参照)、アダプタ30の上側の開口から挿入される。オス型コネクタの管状部が挿入されるアダプタ30の部分を挿入部31と呼ぶ。アダプタ30の、挿入部31とは反対側(下側)の部分は、栄養セットの柔軟性を有するチューブ39(図8、図9等参照)が挿入され固定される基端部37である。
【0028】
アダプタ30は、可撓性及び弾性を有する材料からなり、特に制限はないが、例えば、PBD(ポリブタジエン)、PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)、ABS(アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリアミド樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等を用いて、一体成型により作製できる。
【0029】
アダプタ30の挿入部31側の開口端縁の外周面には、外方向に突出したフランジ部33が形成されている。本実施形態では、フランジ部33は、挿入部31の外周面に周方向に連続しているが、周方向に2以上に分断されていてもよい。また、本実施形態では、フランジ部33はアダプタ30の上端(開口側の端)に設けられているが、アダプタ30の上端の近傍、即ち、上端から下方に僅かに離れた位置に設けられていてもよい。フランジ部33の基端部37側の面には、周方向に沿った環状の溝34(図1B、図3C参照)が形成されている。
【0030】
挿入部31の、フランジ部33よりも下側の領域の外周面には、外方向に突出した複数(本実施形態では4本)のリブ35が上下方向に延びている。挿入部31の、フランジ部33よりも下側部分のうち、リブ35を有する部分を第1挿入部311、残余の部分を第2挿入部312と称する(図3C参照)。第1挿入部311のリブ35が形成されている部分におけるアダプタ30の中心軸20aから第1挿入部311の外周面までの距離は、アダプタ30の中心軸20aから第2挿入部312の外周面までの距離よりも長い。そのため、アダプタ30の外周面は、第1挿入部311と第2挿入部312の境界領域に段差面313を含む。この段差面313は、後記において詳述するハンドル50の段差面当接部57(図1C等参照)に接する。複数のリブ35は中心軸20aに対して等角度間隔で配置されている。リブ35の頂部でのアダプタ30の外径は、フランジ部33でのアダプタ30の外径より小さい。リブ35の数は4本に限定されず、これより少なくても多くてもよい。
【0031】
挿入部31に管状体108(図7参照)が挿入される際に、管状体108の外周面と挿入部31の内周面との摩擦により挿入部31は上下方向(管状体108の挿入方向)に延びる。挿入部31が上下方向に延びると、挿入部31の内径が若干小さくなり、挿入部31内への管状体108の挿入が行い難くなる。本実施形態では、アダプタ30の外周面が、段差面当接部57(図1C等参照)に当接する段差面313を含んでいるので、段差面313よりも上に配置された第1挿入部311について、管状部108の挿入部31内への圧入に伴って上下方向に延びることが抑制される。段差面313は、段差面当接部57に接する平面を含んでいると、大きな当接面積を確保し易いので好ましいが、オス型コネクタのメス型コネクタ20への接続に伴い段差面313が段差面当接部57から滑り落ちることが抑制されるという理由から、アダプタ30の中心軸20aと直交する平面と平行な面が好ましく、アダプタ30の内周面からアダプタ30の中心軸20aに向って斜め上方向に傾斜した平面と平行な面であるとより好ましい。また、第1挿入部311は、複数のリブ35を含むことにより、各リブ35の周方向両側に、リブ35を有する部分よりも相対的に肉厚が薄い部分36(図3B参照)を有する。そのため、第1挿入部311の上下方向の伸長及び挿入部31の内径の小径化の抑制と相まって、例えば、第1挿入部311の肉厚が周方向に沿ってほぼ一定であり当該肉厚がリブ35を有する部分と等しい他のアダプタよりも、本実施形態における第1挿入部311の方が拡径及び/又は半径方向への弾性圧縮変形がされ易く、管状部108の挿入部31内への挿入容易性が高い。
【0032】
尚、本実施形態では、リブ35の第2挿入部312側の端面が段差面313であるので、アダプタ30を下側から中心軸20aと平行な方向に沿って見たとき、段差面313が、アダプタ30の周方向に不連続となるように設けられている。しかし、段差面313は、例えば、第1挿入部311の外径が第2挿入部312の外径よりも大きいことにより形成された環状の連続面であってもよいし、当該環状の連続面とリブ35の第2挿入部312側の端面の双方からなる面であってもよい。
【0033】
アダプタ30の内周面は、上側から下側に向かって、第1領域41、第2領域42、第3領域43をこの順に含む。アダプタ30の内径は、第1領域41、第2領域42、第3領域43の順に小さい。アダプタ30の内径をこのように徐々に小さくすることにより、オス型コネクタの管状部の外周面の形状や寸法が種々に異なっても、いずれかの領域でアダプタ30の内周面と管状部の外周面とを密着させることができるので、オス型コネクタの管状部の仕様にかかわらず、オス型コネクタと接続したときの引っ張り特性及び耐圧特性が向上する。
【0034】
第1領域41、第2領域42、第3領域43のそれぞれは、中心軸20a方向において内径が一定である円筒面、又は、基端部37に近づくに従って内径が小さくなるテーパ面である。特に、第1領域41(更にはこれに加えて第2領域42)は、基端部37に近づくにしたがって内径が小さくなるテーパ面であることが好ましい。これにより、オス型コネクタの管状部をメス型コネクタに挿入する際に、テーパ面である第1領域41(更には第2領域42)が管状部を案内するので、アダプタ30に挿入された管状部の中心軸をアダプタ30の中心軸20aに容易に一致させることができる。その結果、アダプタ30の内周面と管状部の外周面との密着性が向上するので、オス型コネクタと接続したときの耐圧特性が向上する。図9Bに示した例では、第2領域42で、アダプタ30の内周面と管状部108の外周面とが完全に密着している。
【0035】
図3Cに示されるように、第1領域41には、第1リブ46及び第2リブ47が形成されている。更に、第1領域41と第2領域42との境界領域には第3リブ48が形成されている。第1,第2,第3リブ46,47,48は、中心軸20a方向に突出し、且つ、周方向に連続した環状の突起である。オス型コネクタの管状部をアダプタ30に挿入すると、第1,第2,第3リブ46,47,48のうちの少なくとも1つが管状部の外周面に当接し適宜弾性圧縮変形して管状部の外周面に局所的に密着する。その結果、オス型コネクタと接続したときの耐圧特性が更に向上する。また、管状部の外周面に周方向に延びた溝が形成されている場合には、当該溝に第1,第2,第3リブ46,47,48のうちの少なくとも1つを嵌入させることにより、引っ張り特性が更に向上する。
【0036】
段差面313は、挿入容易性の向上の観点から、中心軸20aの上下方向において、第1領域41よりも下側に配置されると好ましく、第3リブ48よりも下方であって、第3リブ48の近傍に配置されていると好ましい。即ち、アダプタの内周面の第1領域41と第2領域42との境界領域に、オス型コネクタの管状部の外周面に当接し適宜弾性圧縮変形して管状部の外周面に局所的に密着し得るリブ(例えば、環状の突起)が形成されている場合、当該リブよりも下方(当該リブよりもより基端部の近く)であって当該リブの近傍のアダプタ30の外周面に段差面313が形成されていると、ハンドルに加えられたオス型コネクタに向かう向きの力(押込み力)を、段差面当接部57(図1B参照)を介して第1挿入部311へ効果的に伝えることができ、好ましい。アダプタ30の内面に複数のリブが形成されている場合、第1領域41と第2領域42との境界領域に形成された第3リブ48は、上記複数のリブのうちの最も基端部37の近くに配置されたリブであると好ましい。
【0037】
(ハンドル)
図4Aはハンドル50を上側から見た斜視図、図4Bは下側から見た斜視図、図5Aはその平面図、図5Bはその側面図、図6Aはその下面図、図6Bは図5Aの5D−5D線に沿ったハンドル50の断面図である。ハンドル50の中心軸20aに沿った長手方向両端のうちのアダプタ30の開口に近い端部側は、大小の筒部が同心円状に配置された二重筒構造をしている。大小の2つの筒部の中心軸は一致している。内側の筒部を第1筒部501とし、外側の筒部を第2筒部502と称する。ハンドル50は、中心軸20a回りに180°回転させると回転前の形状と一致する形状を有している。第1筒部501には上側の開口端から下方に向かう複数のスリット71が形成されている。そのため、第1筒部501のスリット71が形成されている部分における外周面は周方向に不連続である。一方、第2筒部502の外周面は周方向に連続している。
【0038】
ハンドル50は、アダプタ30よりも高い剛性を有する材料からなり、特に制限はないが、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、PVC、PBD等を用いて、一体成型により作製できる。
【0039】
図4Aに示されるように、第1筒部501の上側端面の内側部分(中心軸20aに近い部分)には、フランジ部33の開口とは反対側の面(第1筒部501と向かい合う面)に形成された環状の溝34(図3C参照)内に嵌入し得、上方に向かって突出した、凸条52が形成されている。凸条52は、周方向に沿って延びている。第1筒部501の上側端面のうちの外側部分53(中心軸20aから遠い部分)は、フランジ部33の下面38(フランジ部33の第1筒部501と向かい合う面のうちの溝34に隣接した面、図1B及び図3C参照)に対向する面53を有する。面53は、下面38に接するか、又は、オス型コネクタの管状部が挿入部31に挿入された状態では下面38に接するが未挿入の状態では下面38に接しない。本実施形態では、凸条52および面53を含む第1筒部501の上側端面55が、フランジ部33の開口とは反対側の面と接してフランジ部33を保持するフランジ保持部55として機能する。
【0040】
第1筒部501の中心軸20aに対向する内周面56(図6B参照)には、段差面当接部57が形成されている。段差面当接部57は、例えば、内周面56から内方(中心軸20a方向)に突出する環状リブである。段差面当接部57は、アダプタ30の段差面313(図3C参照)と接する面58(図1C及び図5A参照)を有する。アダプタ30の段差面313と接する段差面当接部57の面58は、段差面313に接する平面を含んでいると、大きな当接面積を確保し易いので好ましいが、オス型コネクタのメス型コネクタ20への接続に伴い段差面313が段差面当接部57から滑り落ちることが抑制されるという理由から、例えば、段差面313と同様に、中心軸20aと直交する平面と平行な面が好ましく、第1筒部501の内周面から中心軸20aに向って斜め上方向に傾斜した平面と平行な面であるとより好ましい。段差面当接部57は、フランジ保持部55よりもよりアダプタ30の基端部37の近くに形成され、基端部37よりも上側に配置されている。
【0041】
図4A、図4B及び図6B等に示されるように第1筒部501の段差面当接部57よりも上側部分58aには、上側の開口端から下方に向かって第1筒部501を周方向に複数に分割する複数のスリット71が形成されている。そのため、上記上側部分58aは片持ち支持された複数(本実施形態では4つ)の弾性片64(図6B参照)を含む。各弾性片64と段差面当接部57とを連結する接続部65は外力により弾性的に屈曲変形可能である。そのため、オス型コネクタの管状部をアダプタ30内に挿入する際、接続部65が弾性的に曲げ変形して、スリット71の間隔が拡がる。その結果、第1筒部501の上側の開口径が拡大し、アダプタ30の第1挿入部311(図3C参照)の半径方向への伸長も許容される。
【0042】
このように、第1筒部501の開口径が拡大可能であるので、図12に示した従来のメス型コネクタ910では接続できないような、より大きな外径を有する管状部を備えたオス型コネクタにも接続できる。従って、本発明のメス型コネクタは、公知の各種のオス型コネクタに対して接続可能な汎用性を有している。
【0043】
第1筒部501に形成されるスリット71の上下方向寸法(長さ)や周方向の幅は任意に設定できる。一般に、スリット71が長いほど、第1筒部501の上側の開口径の拡大量は大きくなり、より小さな力で第1筒部501を弾性変形させることができるが、第1筒部501の強度が低下する。そのため、第1筒部501の強度向上の観点から、第1筒部501について、段差面当接部57よりも上側部分58a(段差面当接部57よりもよりアダプタ30のフランジ部33に近い部分)の肉厚は、段差面当接部57よりも下側部分58b(段差面当接部57よりもよりフランジ部33に遠い部分、図4A、図4B及び図6B参照)の肉厚よりも厚いと好ましい。
【0044】
図1A、図1B、図4A、図5A、図5B及び図6Bに示されるように、第2筒部502の第1筒部501の上側端面よりも上側部分には、一対の鍔部60が形成されている。鍔部60の中心軸20aに対向する内周面61(図4A参照)は、中心軸20aを中心とする円筒面の一部をなす。内周面61には、中心軸20aに向かって突出した凸部62及びストッパー部63が形成されている。凸部62は、内周面61の上側端縁に沿って周方向に延びている。ストッパー部63は、中心軸20aから見て凸部62の右側端から下方に向かって延びている。互いに対向する凸部62間の距離及び互いに対向するストッパー部63間の距離は、アダプタ30のフランジ部33の外径及び第1筒部501の外径より大きい。
【0045】
図5A、図6Aに示されているように、ハンドル50を、その中心軸20aと平行な方向に沿って見たとき、ハンドル50の外周面は、互いに直交する長軸59aと短軸59bとを有する。長軸59aは、中心軸20aと直交し、且つ、ハンドル50の外寸法が最大となる方向と平行な軸である。一対の鍔部60及びその内周面61上に形成された一対の凸部62は、長軸59a上に配置されている。このように、ハンドル50の外周面を非円筒面とし、その長軸59a上に一対の凸部62を配置することにより、一対の凸部62の中心軸20a回りの位置をハンドル50の外周面の形状より認識できる。従って、後述するように、凸部62をオス型コネクタの係合爪105(後述する図7を参照)に係合する際に、オス型コネクタに対するハンドル50の中心軸20a回りの位置合わせが容易となり、係合作業を効率よく行うことができる。
【0046】
図4A〜図6B示されているように、第2筒部502の下方には、鍔部60の外面(鍔部60の中心軸20aとは反対側の面)と繋がっており中心軸20aとほぼ平行に且つ下方に延びた外面を有する延長壁503が存在するが、周方向に沿った1対の鍔部60間の領域において、二重構造部分よりも下側は、第1筒部501の外周面54(図6A参照)が露出している。図5A及び図4Bに示されるように、延長壁503と第1筒部501は、架橋部58cによって連結されている。架橋部58cは、各スリット71の下側端(段差面当接面部57に近い端)よりも下側の第1筒部501(下側部分58b)の外周面から外方向に延びて延長壁503に達している。架橋部58cは、露出した第1筒部501の外周面54のうちのスリット71よりも下側部分と、延長壁503の外面とを連結する凹面54a,54bを有している(図5Bも参照)。本実施形態では、スリットが4つあるので、架橋部58cおよび凹面も各々4つある。以上のようにハンドル50の外周面が造形されているために、作業者は、ハンドル50を把持する場合、露出した第1筒部501の外周面54を、一対の把持部504として把持できる。本実施形態では、一対の把持部504は、ハンドル50の外周面上の互いに対向する位置に配置されている。図6Aから理解できるように、ハンドル50を、その中心軸20aと平行な方向に沿って見たとき、一対の把持部504は短軸59b上に配置されている。一対の把持部504の外面は、中心軸20aを中心とする円筒面の一部をなす。
【0047】
図4Bから理解できるようにハンドル50の外周面のうちの1対の把持部504に対応する部分である、露出した第1筒部501の外周面54は、ハンドル50の二重筒構造の部分の下側に隣接している。よって、ハンドル50の二重筒構造の部分よりも下側部分は、ハンドル50の中心軸20a方向に窪んでいる。そのため、短軸59b上に設けられ且つ二重筒構造の部分よりも凹状に窪んだ一対の把持部504でのハンドル50の外寸法は、長軸59a上に設けられた一対の鍔部60でのハンドル50の外寸法及び短軸59b上に設けられた二重筒構造の部分でのハンドル50の外寸法より小さい(図4B及び図6A参照)。以上のようにハンドル50の外周面が造形されているために、作業者は、極めて自然に一対の把持部504を親指と人差し指とで挟んで把持できるので、メス型コネクタの操作性は良好であり、且つオス型コネクタの挿入容易性も向上する。
【0048】
各把持部504に隣接配置された凹面54a,54bのうち、把持部504に対して右側に隣接する凹面54aを第1凹面54a、左側に隣接する凹面54bを第2凹面54bと呼ぶ(図4Bを参照)。1対の第1凹面54a及び1対の第2凹面54bは、各々、中心軸20aと直交する直線上に配置されている。図6Aに示されるように、露出した第1筒部501の外周面54と第1凹面54aと第2凹面54bとを含む連続面は、二重筒構造に対して中心軸20a及び長軸59aを含む平面の方向へ凹状に窪んでいる。
【0049】
図6Aから理解できるように、第1凹面54a及び第2凹面54bは、ハンドル50の外周面上の長軸59aと短軸59bとの間の領域に形成されている。従って、ハンドル50を下方から見て時計回り方向に中心軸20a回りに回転させるときは、例えば、親指及び人差し指を一対の第1凹面54aに当接させることによりハンドル50に回転トルクを印加しやすい。また、これとは逆に、ハンドル50を下方から見て反時計回り方向に中心軸20a回りに回転させるときは、例えば、親指及び人差し指を一対の第2凹面54bに当接させることによりハンドル50に回転トルクを印加しやすい。
【0050】
図1A及び図1Bに示すように、アダプタ30はハンドル50の開口内に挿入される。アダプタ30の中心軸20a方向に沿ってアダプタ30の開口とは反対側の端から開口側の端に向かってハンドル50をアダプタ30に対して相対移動させることにより、ハンドル50がアダプタ30に外装されている。アダプタ30のフランジ部33はハンドル50のフランジ保持部55上に配置されている。ハンドル50は、アダプタ30に対して中心軸20a方向に移動可能であり、且つ、アダプタ30の回りに回転可能である。
【0051】
但し、図1Bに示されているように、アダプタ30のフランジ部33の下面は、ハンドル50のフランジ保持部55と当接する。更に、フランジ部33の下面に形成された溝34に、フランジ保持部55の凸条52が嵌入する。このようにしてフランジ部33とフランジ保持部55とが係合すると、アダプタ30はハンドル50に対してこれ以上下方に移動できない。
【0052】
アダプタ30の外周面に形成されたリブ35(図2等参照)は、第1筒部501(図の内周面の少なくとも一部と接触していることが好ましい。これにより、アダプタ30とハンドル50間に発生する静止摩擦力によって、ハンドル50に印加される回転トルクをアダプタ30に伝達しやすい。
【0053】
以上のように構成された本実施形態のメス型コネクタ20をオス型コネクタと接続する方法を以下に説明する。
【0054】
図7は、オス型コネクタ100の一例の下方から見た斜視図である。このオス型コネクタ100は、医療用容器のポートに接続されるキャップ102と、キャップ102の下面に設けられた台座104と、台座104の中央に立設された管状部108とを備えている。参照符号100aは、オス型コネクタ100の中心軸である。
【0055】
キャップ102の内周面には医療用容器のポートの雄ネジと螺合する雌ネジ103(図8B及び図9B参照)が形成されている。
【0056】
台座104は、キャップ102の下面の中央の円形の領域の一部(中央部)を下方に突出させることで形成されている。台座104の外周面には、中心軸100aに対して対称位置に一対の係合爪105が形成されている。係合爪105は、中心軸100aに対して放射方向に突出している。
【0057】
管状部108には、液状物が流れる流路(貫通穴)109が中心軸100aに沿って形成されている。管状部108の外周面には、キャップ102に近づくほど外径が大きくなるテーパ面(円錐台面)が形成されている。
【0058】
本実施形態のメス型コネクタ20と図7に示したオス型コネクタ100とを、図8A及び図8Bに示すように対向させ、オス型コネクタ100の管状部108をメス型コネクタ20のアダプタ30内に挿入する。作業者は、片方の手の親指と人差し指とでメス型コネクタ20のハンドル50の一対の把持部504を把持し、他方の手の親指と人差し指とでオス型コネクタ100のキャップ102を把持できる。
【0059】
アダプタ30のフランジ部33の下面がハンドル50のフランジ保持部53で保持され、フランジ部33の溝34とフランジ保持部55の凸部52とが係合しているので、作業者は、アダプタ30に管状部108を挿入する作業中に、アダプタ30に手を触れる必要はなく、ハンドル50のみを保持すれば足りる。
【0060】
フランジ部33の溝34にフランジ保持部53の凸条52が嵌入しているので、アダプタ30に管状部108を挿入する作業中に加えられる力によってフランジ部33が変形しても、フランジ部33とフランジ保持部55との係合は外れにくい。
【0061】
フランジ部33はアダプタ30の上端又はその近傍に形成されているので、アダプタ30に管状部108を挿入する作業中に加えられる力によってアダプタ30が座屈変形することはない。
【0062】
これらに加えて本実施形態では、挿入部31内に管状部108が挿入されることにより、中心軸20aから第1筒部501の径方向に押力が印加されると、押力の大きさに応じて第1筒部501の開口径が拡径する。そのため、本実施形態のメス型コネクタ20は、より大きな外径を有する管状部108を備えたオス型コネクタ100に対しても良好な挿入容易性を有している。
【0063】
アダプタ30のフランジ部33がオス型コネクタ100の台座104に当接又は接近するまでアダプタ30内に管状部108を挿入した後、オス型コネクタ100に対してハンドル50を、下方から見て時計回り方向に回転させる。これにより、オス型コネクタ100の台座104の外周面に形成された係合爪105と、ハンドル50の鍔部60(図4A参照)に係合部として形成された凸部62(図4A参照)とを係合させる。オス型コネクタ100の係合爪105がハンドル50のストッパー部63(図4A参照)に当接するまで回転させれば、係合爪105と凸部62とを深く係合させることができる。管状部108のアダプタ30への挿入に伴い第1筒部501の開口径が拡径しても、第2筒部502のオス型コネクタ側の開口径は拡大しない。即ち、第2筒部502に設けられた、1対の係合部間の距離は、接続前、接続中、および接続後のいずれにおいても、実質的に変化しないか、変化しない。従って、例えば、スリット71が形成された第1筒部501に係合部を設ける場合と比較して、ハンドル50とオス型コネクタ100とを確実に係合させることができ、且つ、係合が外れにくく、本実施形態のメス型コネクタ20とオス型コネクタ100との接続状態を安定して保持できる。
【0064】
さらに本実施形態では、アダプタ30の段差面313がハンドル50の段差面当接部57の面58と接しているので、オス型コネクタ100の管状部108の挿入に伴うアダプタ30の第1挿入部311の伸長が抑制される。そのため、アダプタ30の上下方向への伸長に伴ってアダプタ30の内径が若干小さくなることにより、アダプタ30内への管状体108の挿入が行い難くなることが抑制される。また、ハンドル50に加えられたオス型コネクタ100に向かう向きの力(押込み力)を、段差面当接部57を介して第1挿入部311へ効果的に伝えることができる。
【0065】
ハンドル50を回転させる際に、把持部504を把持していた親指及び人差し指を、把持部504に隣接する第1凹面54aに移動させて、例えば、1対の第1凹面54aに回転トルクを印加する。これにより、ハンドル50に回転トルクを容易に加えることができる。また、把持部504と第1凹面54aとは極めて近接しているので、把持部504を把持してアダプタ30内へ管状部108を挿入する作業から、ハンドル50を回転させて係合爪105と凸部62(係合部)とを係合させる作業へ、素早く移行できる。これにより、メス型コネクタ20とオス型コネクタ100とを接続するための一連の作業を効率よく行うことができる。
【0066】
一対の第1凹面54aにハンドル50を時計回り方向に回転させるための押力を印加しても、その押力によってハンドル50の第2筒部502は弾性変形をしない。従って、凸部62を係合爪105と確実に係合させることができる。
【0067】
かくして、図9A及び図9Bに示すように、メス型コネクタ20とオス型コネクタ100とを接続できる。アダプタ30は可撓性及び弾性を有するので、オス型コネクタ100の管状部108の外周面の寸法及び形状に応じ拡径及び変形し、その弾性回復力により管状部108の外周面に密着する。従って、本実施形態のメス型コネクタ20は、図12に示した従来のメス型コネクタと同等の引っ張り特性及び耐圧特性を有している。
【0068】
凸部62と係合爪105とを係合させることにより、引っ張り特性が更に向上する。
【0069】
アダプタ30は、その材料に応じて、管状部108が挿入されたことによって拡径するかも知れない。このアダプタ30の拡径は、アダプタ30の外周面に形成されたリブ35(図2、図3Bを参照)が半径方向に弾性変形すること、及び/又は、ハンドル50の第1筒部501が、その上側の開口径が拡大するように弾性変形することによって許容される。
【0070】
メス型コネクタ20のオス型コネクタ100からの分離は上記の動作を逆に行うことで可能である。即ち、オス型コネクタ100に対してハンドル50を、下方から見て反時計回り方向に回転させ、係合爪105と凸部62との係合を解除する。ハンドル50の回転は、一対の第2凹面54bに回転トルクを印加することにより行うことができる。これにより、ハンドル50に回転トルクを容易に加えることができる。係合爪105と凸部62との係合を解除した後、アダプタ30をオス型コネクタ100の管状部108から抜き取る。
【0071】
図10は、図7に示したオス型コネクタ100とは異なるオス型コネクタ200を下方から見た斜視図である。図10において、参照符号202はキャップ、204は台座、208は管状部であり、図7に示したオス型コネクタ100のキャップ102、台座104、管状部108にそれぞれ対応する。
【0072】
図10のオス型コネクタ200は、図7のオス型コネクタ100と以下の点で異なる。第1に、オス型コネクタ200の管状部208の外周面は、オス型コネクタ100の管状部108よりも径が大きなテーパ面である。第2に、オス型コネクタ200の台座104に係合爪が形成されていない。
【0073】
本実施形態のメス型コネクタ20をオス型コネクタ200に接続する方法は、上述したオス型コネクタ100に接続する方法と概略同じである。即ち、片方の手の親指と人差し指とでメス型コネクタ20のハンドル50の一対の把持部504を把持し、他方の手の親指と人差し指とでオス型コネクタ200のキャップ202を把持して、オス型コネクタ200の管状部208をメス型コネクタ20のアダプタ30内に挿入する。
【0074】
図11は、本実施形態のメス型コネクタ20とオス型コネクタ200とを接続した状態を示した断面図である。
【0075】
管状部208の外径は、図7に示したオス型コネクタ100の管状部108の外径より太いから、管状部108を挿入した場合に比べて、アダプタ30の第1挿入部311は、より大きく拡径されている。アダプタ30のこの拡径によって、ハンドル50の第1筒部501は、上側(オス型コネクタ200側)の開口径が拡大するように弾性変形している。
【0076】
本実施形態のハンドル50の第1筒部501は、上側の開口径が拡大するように弾性変形可能である。このハンドル50の第1筒部501の弾性変形が、図11に示したアダプタ30の拡径を可能にする。また、アダプタ30に管状部208を挿入する際に、オス型コネクタ200の管状部208の挿入に伴うアダプタ30(第1挿入部311)の伸長を抑制でき、且つ、ハンドル50に加えられたオス型コネクタ200に向かう向きの力(押込み力)を段差面当接部57を介してアダプタ30の第1挿入部311へ効果的に伝えることができる。故に、弾性変形できないハンドル930を用いた図12に示した従来のメス型コネクタに比べて、本実施形態のメス型コネクタ20は、より大きな外径を有する管状部208を備えたオス型コネクタ200にも容易に接続できる。
【0077】
従って、本実施形態のメス型コネクタ20は、より大きな外径を有する管状部208を備えたオス型コネクタ200に対しても良好な挿入容易性を有している。
【0078】
図10のオス型コネクタ200は、図7のオス型コネクタ100が備えていた係合爪105を有していない。従って、凸部62を用いてハンドル50とオス型コネクタ200とを係合させることはできない。しかしながら、このような場合であっても、アダプタ30が管状部208の外周面の寸法及び形状に応じ拡径及び変形し、その弾性回復力により管状部208の外周面に密着する。
【0079】
従って、本実施形態のメス型コネクタ20は、より大きな外径を有する管状部208を備えたオス型コネクタ200に対しても良好な引っ張り特性と耐圧特性とを有している。
【0080】
以上のように、本実施形態のメス型コネクタ20は、引っ張り特性及び耐圧特性という基本特性に加えて挿入容易性を有している。更に、ハンドル50が段差面当接部57を備えているので、アダプタ30(第1挿入部311)の伸長を抑制でき、且つ、ハンドル50に加えられたオス型コネクタ200に向かう向きの力(押込み力)を段差面当接部57を介してアダプタ30の第1挿入部311へ効果的に伝えることができる。従って、図12に示した従来のメス型コネクタ910では接続できないような、より大きな外径を有する管状部208を備えたオス型コネクタ200にも接続でき、本発明のメス型コネクタは、公知の各種のオス型コネクタに対して接続可能な汎用性を有している。
【0081】
上記の実施形態は一例に過ぎない。本発明は上記の実施形態に限定されず、適宜変更できる。
【0082】
例えば、上記の実施形態では、段差面当接部57は、段差面313と対向し周方向に連続した面58(図1C参照)を有する環状リブであるが、これに限定されない。段差面313が、段差面当接部57と対向し周方向に連続した面を有する場合は、段差面当接部57の段差面313と対向する面58は周方向に不連続であってもよい。
【0083】
例えば、上記の実施形態では、ハンドル50とオス型コネクタ100(図7参照)とを係合させる係合構造として、ハンドル50に形成された凸部62とオス型コネクタ100に形成された係合爪105とを備えているが、係合構造の構成はこれに限定されない。例えば、上述した特許文献1に記載された各種係合構造であってもよい。あるいは、一対の鍔部60を省略すること、即ち、ハンドル50とオス型コネクタ100との係合構造を省略することも可能である。
【0084】
上記のハンドル50では、第1筒部501の上側の開口端から下方に向かって形成されたスリット71の数は4つであったが、スリット71の数はこれに限定されず、1つ又は2つ以上であってもよい。第1スリット71の数が2つ以上であると、第1筒部501の弾性変形量を大きくできるので好ましい。また、本発明のメス型コネクタは、第1筒部501にスリット71が形成されていない形態であってもよい。アダプタの外表面に段差面313が設けられ、ハンドル50に段差面当接部57が設けられている限り、ハンドル50に印加されたオス型コネクタに向かう向きの力(押込み力)をアダプタ30の第1挿入部311へ効果的に伝えることができるので、本発明のメス型コネクタは、図12に示した従来のメス型コネクタ910よりも、公知の各種のオス型コネクタに対して接続可能な汎用性を有している。
【0085】
ハンドル50の外周面の形状は上記の実施形態に限定されない。例えば、把持部504及び第1及び第2凹54a,54bの形状は任意に変更可能である。
【0086】
アダプタ30の構成も上記の実施形態に限定されない。
【0087】
例えば、フランジ部33の下面に形成した溝34は省略できる。この場合、ハンドル50のフランジ保持部55に形成した凸条52も省略できる。
【0088】
アダプタ30の外周面に形成したリブ35は、アダプタ30が段差面当接部57に接する段差面を備える限り、上記の実施形態のように上下方向に延びている必要はなく、例えば周方向に連続的に若しくは断続的に延びていてもよく、または、螺旋状に連続的に若しくは断続的に延びていてもよい。あるいは、ドット状の突起であってもよい。
【0089】
アダプタ30の内周面の形状も上記の実施形態に限定されない。内周面の形状や径によって区別される領域の数は、上記の実施形態のように3つに限定されず、これより多くても、少なくてもよい。また、内周面に形成される環状のリブの数も、上記の実施形態のように3つに限定されず、これより多くても、少なくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の利用分野は特に制限はないが、例えば経腸栄養療法や静脈栄養療法を行う際に使用されるメス型コネクタとして利用できる。その他、医療用以外の食品などの液状物を取り扱う際に使用されるメス型コネクタとして利用することもできる。
【符号の説明】
【0091】
20 メス型コネクタ
20a メス型コネクタ、アダプタ、及びハンドルの中心軸
30 アダプタ
31 挿入部
311 第1挿入部
312 第2挿入部
313 段差面
33 フランジ部
35 リブ
37 基端部
39 チューブ
41 第1領域
42 第2領域
43 第3領域
48 環状の突起(第3リブ)
50 ハンドル
55 フランジ保持部
501 第1筒部
502 第2筒部
504 把持部
54a 第1凹面
54b 第2凹面
57 段差面当接部
58a 第1筒部の段差面当接部よりも上側部分
58b 第1筒部の段差面当接部よりも下側部分
58c 架橋部
59a ハンドルの外周面の長軸
59b ハンドルの外周面の短軸
60 鍔部
62 凸部(係合部)
63 ストッパー部
71 スリット
100,200 オス型コネクタ
105 係合爪
108,208 管状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタに接続されるメス型コネクタであって、
前記管状部の外周面に装着されるアダプタと、前記アダプタに外装されるハンドルとを含み、
前記アダプタは、
その一端に開口を有する挿入部と、
前記開口から前記挿入部よりもより遠くに配置された基端部と、
前記挿入部の外周面より外方向に突出するように前記挿入部の前記開口側の端又はその近傍に設けられたフランジ部とを含み、
前記挿入部は、前記開口側から前記基端部側に向かって第1挿入部と第2挿入部とをこの順で含み、
前記挿入部の周方向の少なくとも一部において、前記アダプタの中心軸から前記第1挿入部の外周面までの距離が、前記アダプタの中心軸から前記第2挿入部の外周面までの距離よりも大きいことにより、前記挿入部の外周面が段差面を含み、
前記ハンドルは、
前記フランジ部の前記開口とは反対側の面と接して前記フランジ部を保持するフランジ保持部と、
前記ハンドルの中心軸に対向する内周面に形成され、前記段差面の前記開口とは反対側の面と接する段差面当接部とを含むことを特徴とするメス型コネクタ。
【請求項2】
前記第1挿入部が、その外周面に、外方向に突出し前記アダプタの長手方向に沿って延びたリブを含み、
前記リブの前記第2挿入部側の端面が前記段差面である請求項1に記載のメス型コネクタ。
【請求項3】
前記段差面当接部は、前記ハンドルの中心軸に対向する内周面より内方向に突出した環状リブである請求項1又は2に記載のメス型コネクタ。
【請求項4】
少なくとも前記ハンドルの前記アダプタの前記開口に近い端部側は、大小の筒部が同心円状に配置された二重筒構造をしており、
内側の前記筒部を第1筒部とし、外側の前記筒部を第2筒部とすると、
前記第1筒部が、前記フランジ保持部と前記段差面当接部とを備え、
前記第1筒部の前記段差面当接部よりも上側部分には、前記第1筒部を周方向に複数に分割する複数のスリットが形成されており、
前記第2筒部の前記ハンドルの中心軸に対向する内周面には、前記オス型コネクタと係合可能な係合部が形成されている請求項1〜3のいずれかの項に記載のメス型コネクタ。
【請求項5】
前記ハンドルは、その外周面上の互いに対向する位置に一対の把持部を備え、
前記ハンドルを、その中心軸と平行な方向に沿って見たとき、
前記係合部が各々形成された1対の鍔部が、前記中心軸と直交する前記ハンドルの外周面の長軸上に配置され、
1対の前記把持部は、前記中心軸及び前記長軸と直交する前記ハンドルの外周面の短軸上に配置されている請求項4に記載のメス型コネクタ。
【請求項6】
前記ハンドルの外周面のうちの前記1対の把持部に対応する部分は、前記ハンドルの前記二重筒構造の部分に隣接し、前記二重筒構造の部分よりも前記ハンドルの中心軸と前記長軸とを含む平面方向に窪んでいる請求項5に記載のメス型コネクタ。
【請求項7】
前記アダプタの内周面は、前記開口側から前記基端部側に向って、第1領域、第2領域、及び第3領域をこの順に含み、前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域の内径はこの順に小さい請求項1〜6のいずれかの項に記載のメス型コネクタ。
【請求項8】
前記アダプタの内周面の前記第1領域と前記第2領域の境界領域に、前記オス型コネクタの前記管状部の外周面に当接し弾性圧縮変形し得る環状の突起が形成されており、
前記段差面は、前記環状の突起よりもより下方であって前記環状の突起の近傍の前記アダプタの外周面に形成されている請求項7に記載のメス型コネクタ。
【請求項9】
液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと、前記オス型コネクタに接続されるメス型コネクタとからなる接続具であって、
前記メス型コネクタが請求項1〜8のいずれかの項に記載のメス型コネクタであることを特徴とする接続具。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかの項に記載のメス型コネクタと、
前記メス型コネクタに接続されたチューブと、を含む輸液セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−232019(P2012−232019A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103657(P2011−103657)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】