説明

メソポーラスシリカ粒子の製造方法

【課題】2種以上の細孔周期を有するメソポーラスシリカ粒子の効率的な製造方法、及び該メソポーラスシリカ粒子を提供する。
【解決手段】第一界面活性剤を鋳型として用いて製造された複合シリカ粒子を含む分散液(A)に、シリカ源(c)及び第二界面活性剤を経時的に添加して反応を行う工程を含むメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、第一界面活性剤及び第二界面活性剤は、下記式(1)及び(2)のいずれかで表される第4級アンモニウム塩であり、かつ第一界面活性剤と第二の界面活性剤とが異なるものである、メソポーラスシリカ粒子の製造方法、及び2種以上の細孔周期を有するメソポーラスシリカ粒子である。
[R1(R33N]+- (1)
[R12(R32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xは1価陰イオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の細孔周期を有するメソポーラスシリカ粒子の製造方法、及び該メソポーラスシリカ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質構造をもつ物質は高い表面積を有するため、触媒担体、酵素や機能性有機化合物等の固定化担体として広く使用されている。特に、多孔質構造を形成する細孔の細孔径の分布がシャープである場合、分子篩としての作用が発現し、構造選択性を有する触媒担体としての利用や、物質分離剤、徐放性担体への応用が可能となる。かかる応用のために、均一で微細な細孔を有する多孔体が求められている。
均一で微細な細孔を有する多孔体として、メソ領域の細孔を有するメソポーラスシリカが開発され、前記用途の他に、ナノワイヤー、半導体材料、光エレクトロニクスへの応用等の分野での利用が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヘキサゴナル構造を有し、粉末X線回折(XRD)における(1,0,0)面の面間隔が2〜3nmの範囲にあるメソポーラスシリカが開示されている。
特許文献2には、ソルビタンモノステアレート又はアルキルトリメチルアンモニウムを含む水とトルエンのO/W型エマルション中で、トリクロロシラン等の有機金属ハロゲン化合物を加水分解して製造する、複数のメソ細孔を有する殻を備える多孔質中空シリカ粒子が開示されている。
また、特許文献3には、メソ細孔を有するシリカとして、外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有し、その内部にポリマーを包含してなる複合シリカ粒子、及び該複合シリカ粒子を焼成して得られる、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347866号公報
【特許文献2】特開2007−44610号公報
【特許文献3】特開2008−174435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メソポーラスシリカ粒子に関しては上記のように種々の提案がなされているが、従来公知のものは、巨視的には1種の細孔周期を有するメソポーラスシリカ粒子である。しかしながら、メソポーラスシリカ粒子の応用分野を拡大するためには、2種以上の細孔周期を有するものが望まれる。
本発明は、2種以上の細孔周期を有するメソポーラスシリカ粒子の効率的な製造方法、及び該メソポーラスシリカ粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、界面活性剤を鋳型として用いて製造された原料複合シリカ粒子を含む分散液に、該界面活性剤とは異なる界面活性剤とシリカ源とを経時的に添加して反応させることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕第一の界面活性剤(b-1)を鋳型として用いて製造された複合シリカ粒子を含む分散液(A)に、シリカ源(c)及び第二の界面活性剤(b-2)を経時的に添加して反応を行う工程を含むメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、第一の界面活性剤(b-1)及び第二の界面活性剤(b-2)は、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される第4級アンモニウム塩であり、かつ第一の界面活性剤(b-1)と第二の界面活性剤(b-2)とが異なるものである、メソポーラスシリカ粒子の製造方法。
[R1(R33N]+- (1)
[R12(R32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
〔2〕前記〔1〕の製造方法により得られた、2種以上の細孔周期を有するメソポーラスシリカ粒子。
〔3〕中空構造又はコアシェル構造を有し、外殻部がメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカ粒子であって、粉末X線回折パターンにおけるd=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に2本以上のピークを有し、少なくとも1つのピークの強度が、最強ピーク強度に対し20%以上の強度である、メソポーラスシリカ粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2種以上の細孔周期を有する均一なメソポーラスシリカ粒子の効率的な製造方法、及び該メソポーラスシリカ粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1で得られたメソポーラスシリカ粒子のXRD測定結果である。
【図2】実施例1で得られたメソポーラスシリカ粒子の平均細孔分布測定結果である。
【図3】実施例1で得られたメソポーラスシリカ粒子の粒子全体のTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のメソポーラスシリカ粒子の製造方法は、第一の界面活性剤(b-1)を鋳型として用いて製造された複合シリカ粒子(以下、「原料複合シリカ粒子」ともいう)を含む分散液(A)に、シリカ源(c)及び第二の界面活性剤(b-2)を経時的に添加して反応を行う工程を含むメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、第一の界面活性剤(b-1)及び第二の界面活性剤(b-2)は、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される第4級アンモニウム塩であり、かつ第一の界面活性剤(b-1)と第二の界面活性剤(b-2)とが異なるものであることを特徴とする。
以下、原料複合シリカ粒子、それを用いた本発明のメソポーラスシリカ粒子の製造方法について説明する。
【0010】
〔原料複合シリカ粒子〕
原料複合シリカ粒子は、第一の界面活性剤(b-1)を鋳型として用いて製造された複合シリカ粒子であればよく、その製造法に特に制限はない。原料複合シリカ粒子としては、好ましくは以下の工程(I)、及び工程(II-1)又は(II-2)(以下、工程(II-1)及び(II-2)を総称して「工程(II)」ともいう)を含む方法により得られる、水不溶性物質(a)を内包するコアシェル構造の複合シリカ粒子(以下、「コアシェルシリカ粒子」ともいう)が好ましい。
工程(I):水不溶性物質(a)及び水を含有する分散液(a-1)を調製する工程。
工程(II-1):撹拌下で、分散液(a-1)に陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の第一の界面活性剤(b-1)(以下、「第一界面活性剤(b-1)」又は「界面活性剤(b-1)」ともいう)とシリカ源(c)とを一括又は経時的に添加して反応を行い、コアシェルシリカ粒子の水分散液を調製する工程。
工程(II-2):撹拌下で、分散液(a-1)に第一界面活性剤(b-1)とシリカ源(c)とを含有する溶液(B−1)を一括又は経時的に添加して反応を行い、コアシェルシリカ粒子の水分散液を調製する工程。
【0011】
工程(I)
工程(I)は、水不溶性物質(a)及び水を含有する分散液(a-1)を調製する工程である。
(水不溶性物質(a))
水不溶性物質(a)としては、疎水性有機溶剤、カチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー等の有機高分子化合物及び無機化合物から選ばれる1種以上が好ましい。水不溶性物質(a)には水への溶解性の低い水難溶性の物質も含まれる。具体的には、有機高分子化合物や無機化合物等の固体物質については、20℃の水への溶解度が1%以下のものを意味する。
水不溶性物質(a)としての疎水性有機溶剤は、水に対する溶解性が低く、水と分相を形成するものを意味する。好ましくは、後述する第四級アンモニウム塩の存在下で分散可能な溶剤である。このような疎水性有機溶剤としては、LogPOWが1以上、好ましくは2〜25の化合物が挙げられる。ここで、LogPowとは、化学物質の1−オクタノール/水分配係数であり、logKOW法により計算で求められた値をいう。具体的には、化合物の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数を積算して求められる(Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 84: 83-92参照)。かかる疎水性有機溶剤としては、例えば、炭化水素化合物、エステル化合物、炭素数6〜22の脂肪酸、炭素数6〜22のアルコール及びシリコーンオイルなどの油剤や、香料成分、農薬用基材、医薬用基材等の機能性材料を挙げることができる。
【0012】
有機高分子化合物としては、カチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー及び両性ポリマーから選ばれる1種以上のポリマーであり、エチレン性不飽和モノマーを乳化重合してなるポリマー粒子が好ましい。また実質的に水不溶性のポリマーが用いられる。
これらのポリマーの中では、カチオン性ポリマー及びノニオン性ポリマーが好ましく、シリカ粒子の形成し易さの観点から、カチオン性ポリマーがより好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、陽イオン界面活性剤の存在下で、カチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマー(混合物を含む)を乳化重合して得られるものが好ましい。
カチオン性モノマーとしては、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。
カチオン性ポリマーは、前記カチオン性モノマー由来の構成単位を有するが、カチオン性モノマー由来の構成単位以外に、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン等の疎水性モノマーに由来する構成単位を含有することができる。
【0013】
無機化合物としては、例えば、シリカ、金属、金属化合物等が挙げられる。
シリカとしては粒子状シリカが好ましく、中空構造のメソポーラスシリカ粒子又はコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子でもよい。
金属又は金属化合物を形成する金属としては、特に制限はなく、周期律表第3族〜第15族の金属元素から選ばれる1種以上が挙げられる。
金属化合物としては、上記金属の酸化物、水酸化物、塩化物の他、アンモニウム塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩等の塩が挙げられる。これらの中では、汎用性、製造上等の観点から、金属酸化物が好ましく、特に酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅が好ましい。
上記の金属化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
工程(I)において、水不溶性物質(a)は撹拌により液滴又は固体粒子として分散された状態になり、コアシェルシリカ粒子のコア部を形成することになるので、その大きさを調整することにより、コアシェルシリカ粒子の大きさを調整することができ、最終製品としての本発明のメソポーラスシリカ粒子の大きさを調整することができる。
コア部の大きさの調整は、水不溶性物質(a)として固体物質を用いる場合は、基本的にはその大きさで調整することができるが、固体物質の凝集や疎水性有機溶剤を用いる場合は、混合時の撹拌力、溶液の温度等の物理的因子の他に、その物質の種類、場合により界面活性剤、水溶性有機溶剤の添加等によって適宜調整することができる。水不溶性物質として粒状体を用いる場合は、レーザー回折・散乱法粒子径分布測定装置によって測定した体積換算平均粒子径が、0.01〜10μmのものが好ましく、0.05〜5μmのものがより好ましく、粒度分布がシャープなものを用いることによって粒子径の揃った、コアシェルシリカ粒子を得ることができる。
【0015】
(分散液(a-1))
分散液(a-1)の分散媒は、大半が水であるが、界面活性剤(b-1)の一部や、水不溶性物質(a)の分散を妨げない水溶性有機溶剤、たとえばメタノール、エタノール、アセトン、プロパノール、イソプロパノール等を含有することできる。
分散液(a-1)中の水不溶性物質(a)の割合は、反応系の大きさ等により異なるが、例えば、水不溶性物質(a)が好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜30質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0016】
工程(II)
工程(II-1)は、撹拌下で、分散液(a-1)に第一界面活性剤(b-1)とシリカ源(c)とを一括又は経時的に添加して反応を行い、コアシェルシリカ粒子の水分散液を調製する工程であり、工程(II-2)は、撹拌下で、分散液(a-1)に第一界面活性剤(b-1)とシリカ源(c)とを含有する溶液(B−1)を一括又は経時的に添加して反応を行い、コアシェルシリカ粒子の水分散液を調製する工程である。
【0017】
(界面活性剤)
工程(II)で用いられる第一の界面活性剤(b-1)としては、公知の陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を使用することができる。中でも陽イオン界面活性剤が好ましく、下記一般式(1)及び(2)で表される第4級アンモニウム塩がより好ましい。
[R1(R33N]+- (1)
[R12(R32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
前記一般式(1)及び(2)におけるR1及びR2は、炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数8〜16の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。炭素数4〜22のアルキル基としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。またR3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
一般式(1)及び(2)におけるXは、高い結晶性のメソポーラスシリカ粒子を得るという観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン、硫酸化物イオン等の1価陰イオンから選ばれる1種以上である。Xとしては、より好ましくはハロゲンイオンであり、更に好ましくは塩素イオン又は臭素イオンであり、特に好ましくは臭素イオンである。
【0018】
一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
一般式(2)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
これらの第4級アンモニウム塩の中では、規則的なメソ細孔を形成させる観点から、特に一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリドがより好ましい。
第一の界面活性剤(b-1)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
(シリカ源(c))
工程(II)で用いられるシリカ源(c)としては、加水分解によりシラノール化合物を生成するものが好ましく、具体的には、下記一般式(3)〜(7)で示される化合物を挙げることができる。
SiY4 (3)
4SiY3 (4)
42SiY2 (5)
43SiY (6)
3Si−R5−SiY3 (7)
(式中、R4はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R5は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
より好ましくは、一般式(3)〜(7)において、R4がそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基であり、具体的には炭素数1〜22、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基であり、R5が炭素数1〜4のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等)又はフェニレン基であり、Yが炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、又はフッ素を除くハロゲン基である。
【0020】
シリカ源(c)の好適例としては、次の化合物が挙げられる。
・一般式(3)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であるシラン化合物。
・一般式(4)〜(6)において、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、又はモノアルコキシシラン。
・一般式(7)において、Yがメトキシ基であって、R4がメチレン基、エチレン基又はフェニレン基である化合物。
これらの中では、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが特に好ましい。
シリカ源(c)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
溶液(B−1)は、界面活性剤(b-1)とシリカ源(c)を含有するが、更にメタノール、エタノール、アセトン、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤を含有することが好ましく、メタノールを含有することがより好ましい。これらの水溶性有機溶剤は脱水処理しておくことが好ましい。
溶液(B−1)には、水を実質的に含有しないことが好ましい。溶液(B−1)中に水が存在すると、特にシリカ源(c)としてシラン化合物を用いる場合は、加水分解により生じるシラノールが、溶液(B−1)中で反応して、この段階でメソポーラスシリカないしシリカの固体を形成するおそれがある。
溶液(B−1)の各成分濃度は、反応系の大きさ等により異なるが、例えば、界面活性剤(b-1)は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜20質量%であり、シリカ源(c)は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜20質量%であり、水溶性有機溶剤は好ましくは0〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%である。また界面活性剤(b-1)のモル数に対するシリカ源(c)のモル数の割合、すなわち「シリカ源(c)のモル数/界面活性剤(b-1)のモル数」が好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.2〜20、更に好ましくは0.3〜10の範囲である。この比率は、(b-1)成分と(c)成分を別々に添加する場合の1分間あたりの添加の条件でもある。
溶液(B−1)の調製順序は、特に限定されない。
【0022】
(反応条件等)
工程(II)において、「経時的に添加」とは、第一の界面活性剤(b-1)とシリカ源(c)を分散液(a-1)に同時に又は別々に、連続的又は断続的に添加すること、又は溶液(B−1)を分散液(a-1)に連続的又は断続的に添加することを意味し、代表的には、経時的に滴下することを意味する。
界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を分散液(a-1)に同時に又は別々に添加する場合、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を一度に多量に入れ過ぎたり、添加速度を速め過ぎたりすると、分散液(a-1)中でのシリカの濃度が上昇し、コアシェルシリカ粒子が得られなくなるおそれがある。これは、溶液(B−1)を予め調製して添加する場合も同様である。
【0023】
界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を別々に連続的又は断続的に添加する場合における、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の添加速度や、溶液(B−1)を分散液(a-1)に連続的又は断続的に添加する場合における、溶液(B−1)の添加速度は、反応系の容量や、分散液(a-1)中に添加される界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の濃度上昇速度等を考慮して適宜調整することができる。
反応は、シリカ源(c)が分散液(a-1)中で加水分解されることによって進むことから界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の分散液(a-1)中の添加速度はある範囲で制限される。また、用いるシリカ源(c)の種類によって加水分解速度が異なるため、シリカ源(c)によって許容できる添加速度が変わってくる。例えば、テトラエトキシシランは、テトラメトキシシランよりも加水分解速度が遅いため、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを界面活性剤(b-1)として用いた場合、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の分散液(a-1)中の添加速度は、テトラエトキシシランを使用する場合の方を遅くすることが好ましい。
【0024】
本発明においては、用いるシリカ源(c)の種類から、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の添加速度の上限値を設定することが好ましい。
すなわち、効率的に複合シリカ粒子を得るためには、添加する界面活性剤(b-1)の全量を100質量部としたときに、界面活性剤(b-1)の添加速度が、好ましくは10質量部/1分間以下、より好ましくは5質量部/1分間以下、更に好ましくは3質量部/1分間以下となるように添加することが好ましい。また、添加するシリカ源(c)の全量を100質量部としたときに、シリカ源(c)の添加速度が、好ましくは10質量部/1分間以下、より好ましくは5質量部/1分間以下、更に好ましくは3質量部/1分間以下となるように添加することが好ましい。
【0025】
また、その下限値は、シリカ源(c)の加水分解が十分に行われる速度であればよく、例えば、先の添加の後、十分に反応を終了させてから、次の添加を行っても本発明の粒子を得ることができる。しかしながら、反応を短時間に終結させて製造効率を上げる観点から、添加する界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の添加速度の下限値を、それぞれの全量を100質量部としたときに、次のように設定することが好ましい。
すなわち、界面活性剤(b-1)の添加速度が、好ましくは0.0001質量部/1分間以上、より好ましくは0.001質量部/1分間以上、更に好ましくは0.01質量部/1分間以上であり、シリカ源(c)の添加速度が、好ましくは0.0001質量部/1分間以上、より好ましくは0.001質量部/1分間以上、更に好ましくは0.01質量部/1分間以上となるように添加することが好ましい。これらの添加速度は、溶液(B−1)を予め調製して添加する場合も、同様である。
【0026】
また、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を連続的又は断続的に添加する場合、分散液(a-1)100質量部に対して、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の投入開始から次の投入開始までの0.01〜120分の間における、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の最大添加量は、それぞれ好ましくは40質量部以下、より好ましくは0.001〜10質量部である。
界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を分散液(a-1)に添加する際には、分散液(a-1)の温度を、予め好ましくは10〜100℃、より好ましくは10〜80℃に調整し、溶液(B−1)を調整して添加する場合には、溶液(B−1)の温度を、好ましくは10〜100℃、より好ましくは10〜80℃に調整しておくことが望ましい。
【0027】
また、「添加して反応を行う」とは、分散液(a-1)に界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を添加しながら連続的に反応させてもよく、一度添加した反応が終了してから次の添加を行って断続的に反応させてもよいことを意味する。界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の添加時には、生成する各粒子の凝集を防ぐために、反応終了まで撹拌を続けることが好ましく、添加終了後から好ましくは0.01〜24時間、より好ましくは0.1〜10時間撹拌することが好ましい。
【0028】
工程(II)における反応溶媒中の界面活性剤(b-1)、特に陽イオン界面活性剤、中でも前記一般式(1)及び(2)で表される第4級アンモニウム塩、及びシリカ源(c)の含有量は次のとおりである。
分散液(a-1)に界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)をすべて添加した後の反応系中の実質的な濃度(即ち、工程(II)で用いたものの他に、工程(I)でコアシェルシリカ粒子の核として用いたメソポーラスシリカシリカ粒子の合成の為に添加したものも含む)は、界面活性剤(b-1)が、好ましくは0.0001〜1モル/L、より好ましくは0.0005〜0.5モル/L、更に好ましくは0.001〜0.2モル/Lであり、シリカ源(c)が、好ましくは0.001〜2モル/L、より好ましくは0.002〜1モル/L、更に好ましくは0.005〜0.5モル/Lである。
なお、分散液(a-1)に界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を添加した場合、シリカ源(c)及び界面活性剤(b-1)は複合粒子を形成する。従って前記濃度は原料の添加割合であり、実際の混合液中に含有されている濃度ではない。
これらの濃度は、溶液(B−1)を調製して添加する場合も、同様である。
【0029】
反応の進行により、反応液中の界面活性剤(b-1)の濃度が高くなると、溶液中でミセルが生成しやすくなり、そこにシリカ源(c)が加わることにより、このミセルとシリカが複合体を形成し、それらを核として集積・自己組織化し、コアシェルシリカ粒子が得られなくなるおそれがある。そこで、界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を経時的に添加することにより、反応液中に遊離している界面活性剤(b-1)の濃度を制御して、反応溶液中で界面活性剤のミセル生成を防止することができる。
また、溶液(B−1)を予め調製して添加する場合、溶液(B−1)中に、前記の水溶性有機溶剤が含有されていれば、界面活性剤(b-1)の臨界ミセル濃度を上げて、反応液中でミセルを生成しにくくすることができ、さらにシリカの加水分解速度を遅くすることができるため好ましい。
シリカ源(c)はアルカリ存在下で加水分解・脱水縮合するが、シリカ源(c)を添加するにつれ反応液のpHが下がり、シリカ源(c)の加水分解・脱水縮合が起こりにくくなる。そこで、シリカ源(c)を効率的に加水分解・脱水縮合することができるようにする観点から、反応温度にも依存するが、例えば、分散液(a-1)に界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)を添加した反応系(界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の添加開始から添加終了までの反応系)の温度が10〜40℃における反応系のpHを8.5〜11.5、特にpHを9〜11に調整することが好ましい。
これらのpHは、溶液(B−1)を予め調製して添加する場合も、同様である。
界面活性剤(b-1)及びシリカ源(c)の添加終了後、静置することで、界面活性剤(b-1)とシリカ源(c)によりメソ細孔が形成され、コアシェルシリカ粒子を析出させることができる。
【0030】
(原料複合シリカ粒子の物性)
前記の方法によれば、原料複合シリカ粒子であるコアシェルシリカ粒子として、平均細孔径が揃った細孔分布がシャープな、以下の物性を有するものを効率的に製造することができる。
原料複合シリカ粒子の平均細孔径は、好ましくは1〜10nm、より好ましくは1〜8nm、更に好ましくは1〜5nmである。また、そのメソ細孔構造は、コアシェルシリカ粒子のメソ細孔の70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上が、平均細孔径の±30%以内に入っていることが好ましい。メソ細孔の平均細孔径及び細孔径の分布の程度は、窒素吸着測定を行い、窒素吸着等温線からBJH法により求めた値である。
【0031】
原料複合シリカ粒子における外殻部の平均厚みは、好ましくは5〜700nm、より好ましくは10〜500nm、更に好ましくは20〜400nmである。また、〔外殻部の厚み/平均粒子径〕の比は、好ましくは0.01〜0.6、より好ましくは0.05〜0.5、更に好ましくは0.1〜0.4である。
原料複合シリカ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.05〜3μmである。また、好ましくは粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の粒子径を有しており、非常に揃った粒子径の粒子群から構成されていることが望ましい。
なお、原料複合シリカ粒子の平均粒子径は、陽イオン界面活性剤や疎水性有機溶剤の選択、混合時の撹拌力、原料の濃度、溶液の温度等によって調整することができ、その平均粒子径及びその分布の程度、並びに外殻部の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。
【0032】
原料複合シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、結晶格子面間隔(d)=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有するメソ領域に周期性のある物質であることが好ましい。
また、コアシェルシリカ粒子のBET比表面積は、好ましくは100m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上、より好ましくは300m2/g以上、更に好ましくは400m2/g以上である。
【0033】
〔メソポーラスシリカ粒子の製造方法〕
本発明においては、上記で得られた原料複合シリカ粒子として含む分散液(A)に、シリカ源(c)及び第二の界面活性剤(b-2)を経時的に添加して反応を行う工程を含む。
第一の界面活性剤(b-1)及び第二の界面活性剤(b-2)は、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される第4級アンモニウム塩であり、かつ第一の界面活性剤(b-1)と第二の界面活性剤(b-2)とが異なるものである。
[R1(R33N]+- (1)
[R12(R32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
【0034】
本発明の製造方法は、より具体的には下記の工程(IV)、工程(V-1)又は(V-2)(以下、工程(V-1)及び(V-2)を総称して「工程(V)」ともいう)、更に必要に応じて下記の工程(VI)及び(VII)を含むことが好ましい。
工程(IV):第一の界面活性剤(b-1)を鋳型として用いて製造された原料複合シリカ粒子を含む分散液(A)を調製する工程。
工程(V-1):撹拌下で、分散液(A)に第二の界面活性剤(b-2)とシリカ源(b)とを経時的に添加して反応を行い、複合シリカ粒子の分散体を調製する工程。
工程(V-2):第二の界面活性剤(b-2)とシリカ源(b)とを含有する溶液(B−2)を、撹拌下で、分散液(A)に経時的に添加して反応を行い、複合シリカ粒子の分散体を調製する工程。
工程(VI):第三の界面活性剤(b-3)とシリカ源(b)とを経時的に添加して反応を行い、複合シリカ粒子の分散体を調製する工程(但し、第三の界面活性剤(b-3)と第二の界面活性剤(b-2)とは異なる)。
工程(VII):複合シリカ粒子を分散体から分離し、さらに細孔内の界面活性剤を除去する工程。
【0035】
工程(IV)〜(VI)
工程(IV)については、前記工程(I)〜(III)に記載したとおりである。分散液(A)は、分散液(a-1)で説明したように水溶性有機溶剤を含有したものが好ましい。
工程(V)において、分散液(A)は、シリカ源(c)を効率的に加水分解・脱水縮合させる観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノアルカノールアミン、ジエタノールアミン等を添加することにより、そのpHを塩基性状態にしておくことが好ましい。
また、第一の界面活性剤(b-1)及び第二の界面活性剤(b-2)である、一般式(1)及び(2)のいずれかで表される第4級アンモニウム塩の具体例及び好適例は、原料複合シリカ粒子の製造工程(II)で記載したとおりであり、シリカ源(c)の具体例及び好適例も前記のとおりである。
工程(V)としては、操作簡便性の観点から、工程(V-2)を採用することが好ましい。
溶液(B−2)も基本的に溶液(B−1)と同じであり、その添加速度等の詳細は、溶液(B−1)における記載に準じる。
工程(VI)で用いられる第三の界面活性剤(b-3)は、前記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される第4級アンモニウム塩であることが好ましいが、第三の界面活性剤(b-3)は第二の界面活性剤(b-2)とは異なるものが使用される。
【0036】
このように、細孔の鋳型となる第一の界面活性剤(b-1)、第二の界面活性剤(b-2)、及び第三の界面活性剤(b-3)を順次変えていくことにより、2種又は3種の細孔周期(2種又は3種の異なる大きさの細孔径)を有するメソポーラスシリカ粒子を効率的に製造することができる。
例えば、細孔の鋳型となる第一〜第三の界面活性剤の分子サイズを、小→大、小→大→小、大→小、大→小→大等と順次変えていくことにより、それに対応して、細孔周期が小→大、小→大→小、大→小、大→小→大等となるメソポーラスシリカ粒子を得ることができる。
【0037】
工程(V)において、「経時的に添加」とは、第二の界面活性剤(b-2)とシリカ源(c)を分散液(A)に同時に又は別々に、連続的又は断続的に添加すること、又は溶液(B−2)を分散液(A)に連続的又は断続的に添加することを意味し、代表的には、経時的に滴下することを意味する。また、「添加して反応を行う」とは、分散液(A)に第二の界面活性剤(b-2)及びシリカ源(c)を添加しながら連続的に反応させてもよく、一度添加した反応が終了してから次の添加を行って断続的に反応させてもよいことを意味する。
工程(VI)において、第三の界面活性剤(b-3)とシリカ源(b)とを経時的に添加して反応を行う場合も、工程(V)の場合に準じる。
経時的に添加して反応を行う場合の詳細については、原料複合シリカ粒子の製造工程(II)で記載した場合に準じる。
その他の反応条件も原料複合シリカ粒子の製造工程(II)の記載に準じる。
【0038】
工程(V)の反応終了後、静置することで、界面活性剤(b-2)とシリカ源(c)によりメソ細孔が形成され、複合シリカ粒子を析出させることができる。また、さらに、工程(VI)の反応終了後、静置することで、界面活性剤(b-3)とシリカ源(c)によりメソ細孔が形成され、複合シリカ粒子を析出させることができる。
得られた複合シリカ粒子は、水中に懸濁した状態で得られる。用途によってはこの懸濁状態の複合シリカ粒子をそのまま使用することもできるが、下記工程(VII)に付して、複合シリカ粒子を分離して使用することが好ましい。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
【0039】
工程(VII)
工程(VII)は、複合シリカ粒子を分散体から分離し、さらに細孔内の界面活性剤を除去する工程である。
工程(IV)〜工程(VII)より得られる複合シリカ粒子は、通常細孔内に界面活性剤を有したものである。そこで、得られた複合シリカ粒子を分散体から分離し、必要に応じて、酸性水溶液と接触、水洗、乾燥又は高温で処理した後、焼成して、細孔内の界面活性剤(b-2)を除去することにより、本発明のメソポーラスシリカ粒子を得ることができる。
酸性水溶液に接触させる場合は、複合シリカ粒子を酸性水溶液と1回又は複数回接触させる。例えば、複合シリカ粒子を酸性水溶液中で混合することにより界面活性剤を除去することができる。用いることができる酸性水溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;カチオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液が挙げられるが、塩酸が特に好ましい。pHは通常1.5〜5.0に調整される。
焼成する場合は、電気炉等で好ましくは350〜800℃、より好ましくは450〜700℃で、1〜10時間焼成する。
【0040】
〔メソポーラスシリカ粒子〕
本発明の方法において、原料複合シリカ粒子として、例えばコアシェルシリカ粒子を用いると、2種以上の細孔周期を有し、平均細孔径が揃った細孔分布がシャープなコアシェル構造を有するメソポーラスシリカ粒子又は2種以上の細孔周期を有し、平均細孔径が揃った細孔分布がシャープな中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子を効率的に製造することができる。
すなわち、本発明のメソポーラスシリカ粒子は、好ましくは、中空構造又はコアシェル構造を有し、外殻部がメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカ粒子であって、粉末X線回折(XRD)パターンにおけるd=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に2本以上のピークを有し、少なくとも1つのピークの強度が、最強ピーク強度に対し20%以上の強度である、メソポーラスシリカ粒子であることが特徴である。
また、本発明のメソポーラスシリカ粒子は、BJH法による平均細孔径の導出において、平均細孔径とするピーク値を2つ以上有することが好ましく、TEM写真より外殻の内側部分と外側部分で細孔周期が異なることが好ましい。
【0041】
本発明のメソポーラスシリカ粒子のBET比表面積は、好ましくは800m2/g以上、より好ましくは850〜1500m2/gである。その平均粒子径は、0.01〜100μm、好ましくは0.03〜50μm、より好ましくは0.05〜20μm、より好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μmである。
また、メソポーラスシリカ粒子は、好ましくは粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の粒子径を有することが好ましい。
メソポーラスシリカ粒子の平均粒子径は、混合時の撹拌力、試薬の濃度、溶液の温度、焼成条件等によって調整することができる。
【0042】
なお本発明において、メソポーラスシリカ粒子の平均粒子径及びその分布の程度は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定する。具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察下で、20〜30個の粒子が含まれる視野中の全粒子の直径を写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから平均粒子径及びその分布の程度を求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万〜10万倍であるが、シリカ粒子の大きさによって適宜調節される。しかしながら、画面中の粒子のうち、メソ細孔を有するシリカ粒子の割合が、30%以下の場合は、観察のための視野を広げて、すなわち倍率を下げて、少なくとも10個の粒子からデータを得るものとする。
メソポーラスシリカ粒子の外殻部の構造は、用いるシリカ源により異なる。シリカ源として有機基を有するものを用いた場合、有機基を有するシリカ構造の外殻部が得られ、またシリカ源以外に、他の元素、例えばAl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mn、Fe等の金属やB、P、N、S等の非金属元素を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等を製造時又は製造後に添加することで、該金属または非金属元素をシリカ粒子の外殻部に存在させることができる。外殻部の構造としては、安定性の観点から、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランをシリカ源として製造され、シリカ壁が実質上酸化シリカから構成されていることが好ましい。
【実施例】
【0043】
実施例で得られたシリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。
(1)平均粒子径の測定
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径を写真上で実測して、平均粒子径を求めた。観察に用いた試料は高分解能用カーボン支持膜付きBuメッシュ(200−Aメッシュ、応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作成した。
(2)BET比表面積、平均細孔径の測定
株式会社島津製作所製、比表面積・細孔分布測定装置、商品名「ASAP2020」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータBが正になる範囲で値を導出した。平均細孔径の導出にはBJH法を採用し、そのピーク値の細孔径を平均細孔径とした。前処理は250℃で5時間行った。
(3)粉末X線回折(XRD)測定
理学電機工業株式会社製、粉末X線回折装置、商品名「RINT2500VPB」を用いて、X線源:Bu-kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲は回折角(2θ)1〜20°、走査速度は4.0°/分で連続スキャン法を用いた。なお、試料は、粉砕した後、アルミニウム板に詰めて測定した。
【0044】
製造例1(カチオン性ポリマー粒子の懸濁液の製造)
1L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、メタクリル酸メチル99.5部と塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム0.5部をいれ、内温70℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製のV−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌を行った。その後さらに75℃で3時間過熱撹拌を行うことで、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液を得た(固形分(有効分)含有量13.8%、体積換算平均粒子径0.28μm)。
【0045】
実施例1
(1)コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の製造
100mLビーカーに水58.6g、メタノール19.5g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.34g、上記カチオン性ポリマー粒子の懸濁液1.73g、1M水酸化ナトリウム水溶液0.45gを入れ撹拌した。その分散液にテトラメトキシシラン1.7gを加え、10分間撹拌した。この操作により、カチオン性ポリマー粒子を核とする外殻の薄いコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子を含む分散液を製造した。
(2)2種以上の細孔周期を有するコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の製造
2Lビーカー に水341.4g、メタノール455.5gを予め混合した溶液に、上記(1)で得られたコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子を含む分散液を加えて撹拌した。さらに、その分散液中にメタノール19.5g、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド3.4g、テトラメトキシシラン1.19gを混合した溶液を、30分かけて滴下した。滴下時には分散液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下して調整した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間熟成させ、白色沈殿物を得た。
(3)2種以上の細孔周期を有する中空シリカ粒子の製造
上記(2)で得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥後、1℃/分の速度で600℃まで昇温した後、2時間600℃で焼成し、カチオン性ポリマー粒子とトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを除去して、外殻部がメソ細孔構造を有し、1つの粒子内に2種以上の細孔周期を有する中空メソポーラスシリカ粒子を得た。
(4)2種以上の細孔周期を有する中空メソポーラスシリカ粒子の物性
得られた中空メソポーラスシリカ粒子の平均粒子径は450μm、平均粒子径の±30%以内の粒子の量は100質量%、BET比表面積は1212m2/g、粒子形状は球状であった。
また、図1に得られた中空メソポーラスシリカ粒子のXRD測定結果を示し、図2に窒素の吸着等温線からBJH法を用いて求めた平均細孔径分布測定結果を示し、図3に粒子全体のTEM像を示す。図1から、この中空メソポーラスシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に2本以上のピークを有していることが分かり、図2から、窒素の吸着等温線からBJH法を用いて求めた平均細孔径分布では、平均細孔径とするピーク値を2つ以上有していることが分かり、図3から、その外殻部は、細孔周期の小さいメソ細孔構造の外側に、細孔周期の大きいメソ細孔構造がある、外殻が2層の中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の製造方法によれば、2種以上の細孔周期を有する、粒子径が均一な中空構造又はコアシェル構造を有するメソポーラスシリカ粒子を効率よく製造することができる。
本発明方法で得られるコアシェルシリカ粒子及び中空シリカ粒子は、例えば構造選択性を有する触媒担体、吸着剤、物質分離剤、酵素や機能性有機化合物の固定化担体等としての利用が可能である。特に、中空シリカ粒子は、内部に機能性有機化合物を包含させればドラッグデリバリーシステム等に非常に効果的に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の界面活性剤(b-1)を鋳型として用いて製造された複合シリカ粒子を含む分散液(A)に、シリカ源及び第二の界面活性剤(b-2)を経時的に添加して反応を行う工程を含むメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、第一の界面活性剤(b-1)及び第二の界面活性剤(b-2)は、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される第4級アンモニウム塩であり、かつ第一の界面活性剤(b-1)と第二の界面活性剤(b-2)とが異なるものである、メソポーラスシリカ粒子の製造方法。
[R1(R33N]+- (1)
[R12(R32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
【請求項2】
シリカ源及び第二の界面活性剤の添加終了後に、更にシリカ源及び第二の界面活性剤(b-2)とは異なる第三の界面活性剤(b-3)を経時的に添加して反応を行う工程を含む、請求項1に記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
シリカ源が、加水分解によりシラノール化合物を生成するものである、請求項1又は2に記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
分散液(A)が、更に水溶性有機溶剤を含有したものである、請求項1〜3のいずれかに記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られた、2種以上の細孔周期を有する、メソポーラスシリカ粒子。
【請求項6】
中空構造又はコアシェル構造を有し、外殻部がメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカ粒子であって、粉末X線回折パターンにおけるd=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に2本以上のピークを有し、少なくとも1つのピークの強度が、最強ピーク強度に対し20%以上の強度である、メソポーラスシリカ粒子。
【請求項7】
BJH法による平均細孔径の導出において、平均細孔径とするピーク値を2つ以上有する請求項5又は6に記載のメソポーラスシリカ粒子。
【請求項8】
外殻の内側部分と外側部分で細孔周期が異なる、請求項5〜7のいずれかに記載のメソポーラスシリカ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−208907(P2010−208907A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58321(P2009−58321)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】