説明

メタノールの濃度測定装置

【課題】メタノールの濃度測定装置を提供する。
【解決手段】直接液体燃料電池のアノード側に液体燃料を供給するパイプに設置され,パイプの内側に垂直に設置された支持ビーム,支持ビームの上部に水平に固設され,液体燃料と接触する上部面が所定の粗度を有するプレート,及び支持ビームの一側に固設され,パイプで流れる液体燃料の粘度変化によって発生する支持ビームの変形により電気的信号を発生させるセンサを備えるメタノールの濃度測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アルコールの濃度測定センサに係り,特に直接液体燃料電池のアノード電極に供給される希釈されたアルコールの濃度を測定するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
直接液体燃料電池は,メタノール,エタノールなどの有機化合物燃料と酸化剤である酸素との電気化学反応により電気を生成する発電装置であって,エネルギー密度及び電力密度が非常に高く,メタノールなど液体燃料を直接使用するため,燃料改質器などの周辺装置が不要で,かつ燃料の保存及び供給が容易であるという長所を有する。
【0003】
直接液体燃料電池は,図1に示したように,アノード電極2とカソード電極3との間に電解質膜1が介在されている構造を有する。各アノード電極2及びカソード電極3の構造は,燃料の供給及び拡散のための燃料拡散層22,32,燃料の酸化/還元反応が起きる触媒層21,31及び電極支持体23,33を備える。電極反応のための触媒は,低温でも優秀な特性を有する白金のような貴金属触媒が使用され,反応副生成物である一酸化炭素による触媒被毒現象を防止するために,ルテニウム,ロジウム,オスミウム,ニッケルのような転移金属の合金触媒が使われる。電極支持体は,炭素紙,炭素織物などが使われ,燃料の供給及び反応生成物の排出が容易であるように発水処理して使用する。電解質膜1は,厚さが50〜200μmである高分子膜であって,水分を含有し,イオン伝導性を有する水素イオン交換膜である。
【0004】
直接液体燃料電池のうち,メタノールと水とを混合燃料として使用する直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)の電極反応は,燃料が酸化されるアノード反応及び水素イオンと酸素との還元によるカソード反応から構成され,反応式は次の通りである。
【0005】
(反応式1)
CHOH+HO→CO+6H+6e(アノード反応)
(反応式2)
3/2O+6H+6e→3HO(カソード反応)
(反応式3)
CHOH+3/2O→2HO+CO(総括反応)
【0006】
酸化反応(反応式1)が起きるアノード電極2では,メタノールと水との反応により二酸化炭素,水素イオン及び電子が生成され,生成された水素イオンは,電解質膜1を通じてカソード電極3に伝達される。還元反応(反応式2)が起きるカソード電極3では,水素イオン,外部回路を通じて伝達された電子及び酸素間の反応により水が生成される。したがって,DMFC総括反応(反応式3)は,メタノールと酸素とが反応して水と二酸化炭素とを生成する反応となる。このとき,メタノール1分子が酸素と反応して2モルの水が生成される。
【0007】
このときに使われる液体燃料は,純粋なメタノールでないシステムの内部で発生するか,あるいは既に保存されている水と混合されて使用されねばならず,高濃度燃料を使用する場合,電解質膜(水素イオン交換膜)での燃料のクロスオーバー(燃料がイオン交換膜を通過する現象)による発電性能の低下が大きいため,一般的に0.5〜2M(2〜8vol.%)の低濃度メタノールで希釈して使用する。
【0008】
直接液体燃料電池システムは,高濃度または純粋なメタノールを保存した燃料タンクを備え,前記燃料タンクからのメタノールと水(回収されるか,またはウォータータンクからの)とを混合して所定の濃度で均一にした混合燃料をアノード電極に供給する。このとき,混合燃料の濃度を測定するメタノールセンサが必要である。
【0009】
特許文献1では,循環タンク内にメタノール濃度を感知するメタノールセンサを開示しているが,具体的な測定方法は提示していない。特許文献2では,メタノール濃度に比例して電気信号を出力する電流センサでメタノール濃度を測定している。特許文献3では,燃料電池のメタノール溶液の少量を分離させて沸騰点まで加熱することによってメタノール濃度を測定する。特許文献4には,液体燃料が供給されるラインにバイパスラインを設置し,前記バイパスラインでの二つの位置での圧力差を利用してアルコール濃度を測定する方法を開示している。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,303,244号明細書
【特許文献2】米国特許第6,488,837号明細書
【特許文献3】米国公開特許第2004/0013912号公報
【特許文献4】米国特許第6,536,262号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は,メタノールの粘度を利用してメタノール濃度を信頼可能に測定する装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために,本発明の一実施形態によるメタノールの濃度測定装置は,直接液体燃料電池のアノード側に液体燃料を供給するパイプに設置され,前記パイプの内側に垂直に設置された支持ビーム,前記支持ビームの上部に固設され,上部面が所定の粗度(表面の粗さ)を有するプレート,及び前記支持ビームの一側に固設され,前記パイプで流れる前記液体燃料の粘度変化によって発生する前記支持ビームの変形により電気的信号を発生させるセンサを備える。
【0013】
本発明の一応用例によれば,前記パイプの内側に固設され,中央上部に開口部が形成されており,前記開口部に前記支持ビームが設置されたハウジングをさらに備えるようにしてもよい。
【0014】
前記センサは,圧電抵抗センサとしてもよい。
【0015】
前記圧電抵抗センサは,前記支持ビームの1/2高さ以下に設置することが可能である。
【0016】
また,前記プレートは,前記粗度が前記プレートの厚さの1/100〜1/10RMSとしてもよい。
【0017】
前記の目的を達成するために,本発明の他の実施形態によるメタノールの濃度測定装置は,直接液体燃料電池のアノード側に液体燃料を供給するパイプに設置されたメタノールの濃度測定装置において,前記パイプには第1開口部が形成されており,上部に前記第1開口部に対応する第2開口部を備え,前記第2開口部を前記第1開口部に整列させて上部が前記パイプの外側に固設されたハウジング,前記第1開口部及び前記第2開口部から離隔されるように前記第2開口部から突出され,その一端が前記ハウジングの底に固定された支持ビーム,前記パイプ内で前記支持ビームの他端に固設され,上部面が所定の粗度を有するプレート,及び前記支持ビームの一側に固設され,前記パイプで流れる前記液体燃料の粘度変化によって発生する前記支持ビームの変形により電気的信号を発生させるセンサを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるメタノールの濃度測定装置は,実際に小型装置に使われるほぼ1.0Mのメタノール濃度で感度が優秀であるので,小型の携帯が可能な直接液体燃料電池に有用に適用して使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図2は,本発明の第1実施形態にかかるメタノールの濃度測定装置が適用される直接液体燃料電池システムの概略的な構成図である。
【0021】
図2に示すように,スタック110の内部カソード側に還元反応のための空気が供給され,カソードから反応副産物としての水は回収されて燃料ミキサー140に送信される。一方,燃料タンク120には,高濃度または純粋なメタノールが保存される。
【0022】
燃料として使われる高濃度のメタノールは,別途のタンク120に保存されており,これは,第1ポンプ122により燃料ミキサー140に供給される。燃料ミキサー140に供給された燃料は,アノード側から回収されて燃料ミキサー140に戻った未反応燃料及びカソード側から出た水と共に混合される。次いで,混合された液体燃料は,第2ポンプ142によりスタック110のアノード側に送信される。
【0023】
このとき,燃料ミキサー140からアノード側に送信される希釈された燃料は,燃料ミキサー140とアノードとの間のパイプ160に設置されたメタノールの濃度測定装置150によりメタノール濃度が測定され,制御部170は,測定された濃度によって第1ポンプ122を利用して燃料ミキサー140に送信される燃料量を制御する。
【0024】
図3は,本発明の第1実施形態にかかるメタノールの濃度測定装置150の断面図である。
【0025】
図3に示すように,メタノールの濃度測定装置150は,液体燃料が一定した速度で流れるパイプ160内に設置される。液体燃料の流速は,図2に開示された第2ポンプ142で調節されうる。メタノールの濃度測定装置150は,パイプ160に固設され,その上部の中央に開口部151aが形成されたハウジング151,開口部151aの中央でハウジング151の内部に垂直に設置された支持ビーム153,支持ビーム153にその下部が固定されたプレート155,及び支持ビーム153の一側に付着された圧電抵抗センサ157を備える。圧電抵抗センサ157は,電気回路(図示せず)を通じて制御部170に電気信号を送信する。
【0026】
ハウジング151は,支持ビーム153が直接的に燃料の流れにより圧力を受けることを防止する。ハウジング151の上部は,燃料の流れによりハウジング151内で渦流が生じることを防止する。
【0027】
支持ビーム153は,一端がパイプ160に固設され,他端がプレート155の下部に固定される。図3では,支持ビーム153の一端がパイプ160に直接固定されると示されたが,必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち,ハウジング151の底(図示せず)がパイプ160に固定され,支持ビーム153の一端がハウジング151の底に固設されることもある。
【0028】
プレート155は,その上部面155aが所定の粗度を有する。粗度は,プレート155の厚さの1/100〜1/10RMS(Root Mean Square)粗度を有することが望ましい。上部面155aは,燃料の流れにより粘性力を受け,この粘性力に比例して,支持ビーム153は流体の流れと同じ方向に変形される。支持ビーム153の変形された程度は,圧電抵抗センサ157の電気信号で表れる。粘性力が大きいほど変形が大きくなり,したがって圧電抵抗センサ157の電気信号値が大きくなる。本実施形態では,電気信号値を利用してメタノール濃度を測定する。
【0029】
数式(1)は,本実施形態にかかる粘性力Fviscosityとメタノール溶液の粘度との関係を示す式である。
【0030】
【数1】

【0031】
ここで,Aは,プレート155の上部面155aの面積であり,dv/dyは,流体の流れ及び垂直方向での速度変化である。第2ポンプ142により流速が一定に維持されれば,dv/dyは一定になり,したがって粘性力Fviscosityは流体の粘性に比例する。
【0032】
図4は,メタノール濃度による粘度の変化を示すグラフである。
【0033】
図4に示すように,40℃でメタノール濃度を重量比で増加させれば,粘度が一定した割合で増加することが分かる。したがって,パイプ160内を流れる流体の粘度を測定すれば,メタノール濃度が分かる。
【0034】
図5は,1.0Mのメタノールで支持ビームが変形程度をシミュレーションした結果を示す図面である。このとき,レイノルズ数は178.1であり,支持ビームの位置によってそれぞれの剪断応力を計算した。
【0035】
図6は,1.1Mのメタノールで図5と同じ実験を行った後,1.1Mの測定ストレスから1.0Mの測定ストレスを差し引いたストレス差を示すグラフである。
【0036】
図5及び図6に示すように,メタノール濃度の0.1Mの差でもストレス差が発生した。すなわち,本実施形態にかかるメタノールの濃度測定装置の感度が0.1M以下となることを示す。一方,圧電抵抗センサ157の位置は,支持ビーム153の底を0とし,支持ビーム153の上部面を1として0.1〜0.85の位置でそれぞれ測定した。支持ビーム153の下部へ行くほど,ストレス差が大きくなった。すなわち,感度が増加した。したがって,圧電抵抗センサ157は,望ましくは,支持ビーム153の下部分に設置されることが望ましい。
【0037】
(第2実施形態)
図7は,本発明の第2実施形態によるメタノールの濃度測定装置250の断面図である。第1実施形態の構成要素と実質的に同じ構成要素には同じ名称を使用し,詳細な説明は省略する。
【0038】
図7に示すように,メタノールの濃度測定装置250は,液体燃料が一定した速度で流れるパイプ160内に設置される。液体燃料の流速は,図2に開示された第2ポンプ142で調節されうる。メタノールの濃度測定装置250は,パイプ160の第1開口部160aの外側に固設されたハウジング251を備える。ハウジング251には,第1開口部160aに対応する第2開口部251aが中央上部に形成されている。第2開口部251aの中央で,ハウジング251の内部に垂直に設置された支持ビーム253,支持ビーム253にその下部が固定されたプレート255,及び支持ビーム253の一側に付着された圧電抵抗センサ257を備える。圧電抵抗センサ257は,電気回路(図示せず)を通じて制御部170に電気信号を送信する。
【0039】
支持ビーム253は,一端がハウジング251の底に固設され,他端がプレート255の下部に固定される。
【0040】
プレート255は,その上部面255aが所定の粗度を有する。粗度は,プレート255の厚さの1/100〜1/10RMS粗度を有することが望ましい。
【0041】
第2実施形態によるメタノールの濃度測定装置の作用は,第1実施形態によるメタノールの濃度測定装置と類似しているので,詳細な説明は省略する。
【0042】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。すなわち,当業者であれば,これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって,本発明の真の技術的保護範囲は,特許請求の範囲により決まらねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は,直接液体燃料電池関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】直接液体燃料電池の基本的な構造を示す断面図である。
【図2】本発明によるメタノールの濃度測定装置が適用される直接液体燃料電池システムの概略的な構成を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるメタノールの濃度測定装置の断面図である。
【図4】メタノール濃度による粘度の変化をグラフで示す説明図である。
【図5】1.0Mのメタノールで支持ビームが変形程度をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【図6】1.1Mのメタノールで図5と同じ実験を行った後,1.1Mの測定ストレスから1.0Mの測定ストレスを差し引いたストレス差をグラフで示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態によるメタノールの濃度測定装置の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
150 メタノールの濃度測定装置
151 ハウジング
151a 開口部
153 支持ビーム
155 プレート
155a プレートの上部面
157 圧電抵抗センサ
160 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接液体燃料電池のアノード側に液体燃料を供給するパイプに設置されたメタノールの濃度測定装置において,
前記パイプの内側に垂直に設置された支持ビームと,
前記支持ビームの上部に固設され,上部面が所定の粗度を有するプレートと,
前記支持ビームの一側に固設され,前記パイプを流れる前記液体燃料の粘度変化によって発生する前記支持ビームの変形により電気的信号を発生させるセンサと,
を備えることを特徴とする,メタノールの濃度測定装置。
【請求項2】
前記パイプの内側に固設され,中央上部に開口部が形成されており,前記開口部に前記支持ビームが設置されたハウジングをさらに備えることを特徴とする,請求項1に記載のメタノールの濃度測定装置。
【請求項3】
前記センサは,圧電抵抗センサであることを特徴とする,請求項1または2に記載のメタノールの濃度測定装置。
【請求項4】
前記圧電抵抗センサは,前記支持ビームの1/2高さ以下に設置されることを特徴とする,請求項3に記載のメタノールの濃度測定装置。
【請求項5】
前記プレートは,前記粗度が前記プレートの厚さの1/100〜1/10RMSであることを特徴とする,請求項1または2に記載のメタノールの濃度測定装置。
【請求項6】
直接液体燃料電池のアノード側に液体燃料を供給するパイプに設置されたメタノールの濃度測定装置において,
前記パイプには第1開口部が形成されており,上部に前記第1開口部に対応する第2開口部を備え,前記第2開口部を前記第1開口部に整列させて上部が前記パイプの外側に固設されたハウジングと,
前記第1開口部及び前記第2開口部から離隔されるように前記第2開口部から突出され,その一端が前記ハウジングの底に固定された支持ビームと,
前記パイプ内で前記支持ビームの他端に固設され,上部面が所定の粗度を有するプレートと,
前記支持ビームの一側に固設され,前記パイプで流れる前記液体燃料の粘度変化によって発生する前記支持ビームの変形により電気的信号を発生させるセンサと,
を備えることを特徴とする,メタノールの濃度測定装置。
【請求項7】
前記センサは,圧電抵抗センサであることを特徴とする,請求項6に記載のメタノールの濃度測定装置。
【請求項8】
前記圧電抵抗センサは,前記支持ビームの1/2高さ以下に設置されることを特徴とする,請求項7に記載のメタノールの濃度測定装置。
【請求項9】
前記プレートは,前記粗度が前記プレートの厚さの1/100〜1/10RMSであることを特徴とする,請求項6に記載のメタノールの濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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