説明

メタルハライドアーク放電ランプ

【課題】従来技術の欠点を回避すると共にメタルハライドアーク放電ランプのコストを低減すること。
【解決手段】400ワットのメタルハライドアーク放電ランプであって、ランプ外管とこのランプ外管内に取り付けられた発光管と、この発光管を包囲するシュラウドと、発光管に電気エネルギーを供給する電気引き込み線と、発光管内でアークが形成される場合に光を発する、発光管内の化学充填物とを有するメタルハライドアーク放電ランプにおいて、上記のシュラウドは、あらかじめ定めた厚さTおよびあらかじめ定めた内径IDを有しており、ここでTは2mmより小さく、かつID/Tは22より小さいという関係を有することを特徴とするメタルハライドアーク放電ランプを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドアーク放電ランプに関し、さらに具体的にはシュラウド(shroud)を利用するメタルハライドアーク放電ランプに関する。またさらに具体的には、発光管が非受動的に破損した(non-passive failure)場合に閉じ込めを向上させるシュラウドを有するメタルハライドアーク放電ランプに関し、2005年11月16日に提出した米国暫定特許第60/735,233号に優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
メタルハライドアーク放電ランプは、発光効率が高くまた長寿命であるために市販用に使用されることが多い。典型的なメタルハライドアーク放電ランプには、ホウケイ酸ガラスの外管内に気密封止されている石英または融解石英発光管が含まれている。それ自体も気密封止されているこの発光管は、反対側の端部に封止されているタングステン電極を有しており、また始動を促進する希ガス、水銀、メタルハライド添加物などの充填材料を含んでいる。また場合によっては、殊にワット数の大きいランプでは、大気圧未満では外管は窒素または別の不活性ガスによって充填される。その他のケースでは、殊にワット数の小さいランプでは外管は真空化される。
【0003】
メタルハライドアーク放電ランプにはシュラウドを設けると有利であることが判明している。ここでこのシュラウドは、一般的には円筒形であり、高い動作温度に耐えることのできる石英などの、透光性の部材を含んでいる。上記の発光管およびシュラウドは、ランプ外管内に共軸に取り付けられており、また発光管はシュラウド内に配置されている。有利にはシュラウドは、両端が開いている管である。別のケースではシュラウドは一方の端部が開いており、また別の端部がドーム状に構成されている。
【0004】
メタルハライドアーク放電ランプ用のシュラウドは、1985年2月12日にFohl等に特許が付与された米国特許明細書第4,499,396号、1986年8月8日にFohl等に特許が付与された米国特許明細書第4,580,989号、1989年12月19日にKeeffe等に特許が付与された米国特許明細書第4,888,517号に開示されている。また1981年7月28日にBechard等に特許が付与された米国特許明細書第4,281,274号を参照されたい。Parrott等に特許が付与された米国特許明細書第5,122,706号には、発光管のODがシュラウドのIDから3mmより小さい場合、閉じ込めを強化できることが教示されている。
【0005】
上記のシュラウドは、ランプ動作においていつかの有益な効果を有する。ガスが充填された外管を有するランプではシュラウドにより、発光管からの対流熱損が低減され、これによってランプの色温度および発光出力が改善される。真空化された外管を有するランプではシュラウドにより、発光管の温度の均一化が促進される。最終的には、発光管が砕けた場合にシュラウドが閉じ込め装置として機能することにより、シュラウドによってランプの安全性が改善される。しかしながら判明したのは、発光管が非受動的に破損すると、そこからの破片によってシュラウドが破損し、このシュラウドからの破片が、外管を破壊し得る犯人となり得ることである。これはこのシュラウドによって阻止することが期待されていた実際の状況である。
【特許文献1】米国特許明細書第4,499,396号
【特許文献2】米国特許明細書第4,580,989号
【特許文献3】米国特許明細書第4,888,517号
【特許文献4】米国特許明細書第4,281,274号
【特許文献5】米国特許明細書第5,122,706号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術の欠点を回避することである。本発明の別の課題は、メタルハライドアーク放電ランプのコストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の請求項1により、400ワットのメタルハライドアーク放電ランプであって、ランプ外管とこのランプ外管内に取り付けられた発光管と、この発光管を包囲するシュラウドと、発光管に電気エネルギーを供給する電気引き込み線と、発光管内でアークが形成される場合に光を発する、発光管内の化学充填物とを有するメタルハライドアーク放電ランプにおいて、上記のシュラウドは、あらかじめ定めた厚さTおよびあらかじめ定めた内径IDを有しており、ここでTは2mmより小さく、かつID/Tは22より小さいという関係を有することを特徴とするメタルハライドアーク放電ランプを提供することによって解決される。
【発明の効果】
【0008】
より一層薄いシュラウドにより、発光管が非受動的に破損した場合のシュラウドの破片の運動エネルギーが低減される。また壁の厚さがより一層薄く、またIDが低減されているのに相まってシュラウドの全体的な質量が低減され、発光管のODとシュラウドのIDとの間の間隔が、Parrot等の米国特許第4,888,517号によって有利であるとされたものよりも増大しているにもかかわらずコストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の1実施形態において上記の発光管およびシュラウドは、共通のフレームによって外管内に取り付けられている。
【0010】
本発明の1実施形態において上記シュラウドは石英である。
【0011】
本発明の1実施形態において上記のシュラウドの厚さは1.5mmである。
【0012】
本発明の1実施形態において、上記のシュラウドIDは32mmである。
【実施例】
【0013】
本発明を別の課題およびさらなる課題、利点ならびにその機能とともによりよく理解するため、図面に関連して、以下の開示内容および添付の特許請求の範囲を参照する。
【0014】
極めて具体的な図面を参照すると、図1にはメタルハライドアーク放電ランプ10の第1の例が示されており、これにはランプ外管12と、取付フレーム16によって外管内に取り付けられた発光管14とが含まれている。発光管は、シュラウド20内に配置されており、このシュラウドも取付フレーム16によって支持することができる。電気エネルギーは、ベース22、ランプステム24および電気リード線26および28を介して発光管14に結合される。発光管には、化学的な充填物または適量の材料が含まれており、公知のようにその中でアークが発せられると発光する。シュラウド20は、石英のような透光性で耐熱性の円筒形のチューブを含む。上記のようにシュラウドは多くの機能を有するが、その第1の機能は、万一発光管が非受動的に破損した場合に発光管の破片を閉じ込めることである。
【0015】
上記のようにこの具体的な例において、取付フレーム16は、ランプ外管12内で発光管14およびシュラウド20の両方を支持している。取付フレーム16には、帯31によってランプステム24に取り付けられた金属サポートロッド30が含まれている。このサポートロッドは、ランプ外管12の上側の端部において、内側を向いた突出部32に結合されている。サポートロッド30は中央部において、発光管14およびシュラウド20の中心軸に平行である。さらに取付フレーム16には上部クリップ40および下部クリップ42が含まれており、これらは発光管14およびシュラウド20の両方をサポートロッド30に固定する。クリップ40および42は、有利には溶接によってサポートロッド30に取り付けられる。
【0016】
非受動的に発光管が破損するほとんどの事例において、シュラウド20を使用すれば、発光管の破裂によって生じる破片を閉じ込められることが示されている。しかしながら、破損したシュラウドから発した破片により、外管が破損することが多いことも判明している。これはまさにこのシュラウドによって防ぐことが期待されていた状況である。
【0017】
シュラウド壁の厚さ(T)および内径(ID)を制御して、T<2かつID/Tが22未満となるようにすることにより、上記の問題を解消しかつシュラウドのコストを実質的に低減できることが判明している。
【0018】
400ワットの保護ランプ(protected lamp)に対する具体的な1実施形態において、これらの条件は、1.5mmの壁厚および32mmのIDを有し、したがってID/Tが21.33になる石英製のシュラウドによって満たすことができる。
【0019】
本発明は、例えば図3に示した別の形態のメタルハライドランプにも適用可能であり、ここでランプ10aは外管12aを有し、この外管は、シュラウド20aが取り付けられた発光管14aを有する。発光管10aは、米国特許第4,888,517号に記載されているように厚い外壁を有する。外管12aはドーム部32aを有しており、発光管とシュラウドとからなるアセンブリを取り付けるため、このドーム部にフレーム16aのスナッバ(snubber)40が挿入されている。
【0020】
本発明を利用することによって、シュラウドが縮小されてコストが低減され、材料コストが低減され、結果的に管材からシュラウドを切り取る場合の費用が安くなる。さらに判明しているのは、上で引用したParrot特許によって教示されているように、明細書に発光管ODとシュラウドIDとの間の間隔を3mm以上に増大させることによって、引き続いて閉じ込めのテストをパスすることであり、またチップオフ(tip off)に対する許容偏差が大きくなることによってシュラウド内に発光管を組み立てるのが容易になることなどである。
【0021】
上では現在のところ有利であると思われる本発明の実施形態について示して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定められる本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および修正を加えられることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を採用しているメタルハライドアーク放電ランプの透視図である。
【図2】本発明の1実施形態による発光管シュラウドの断面図である。
【図3】本発明を採用しているメタルハライドアーク放電ランプの択一的な実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 メタルハライドアーク放電ランプ、 12 ランプ外管、 14 発光管、 16 取付フレーム、 20 シュラウド、 22 ベース、 24 ランプステム、 26,28 電気リード線、 30 金属サポートロッド、 31 帯、 32 突出部、 40 上部クリップ、 42 下部クリップ、 10a ランプ、 12a 外管、 14a 発光管、 20a シュラウド、 32a ドーム部、 40 スナッバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
400ワットのメタルハライドアーク放電ランプであって、
ランプ外管と該ランプ外管内に取り付けられた発光管と、
当該の発光管を包囲するシュラウドと、
前記の発光管に電気エネルギーを供給する電気引き込み線と、
前記の発光管内でアークが形成される場合に光を発する、前記発光管内の化学充填物とを有するメタルハライドアーク放電ランプにおいて、
前記シュラウドは、あらかじめ定めた厚さTおよびあらかじめ定めた内径IDを有しており、ここでTは2mmよりも小さく、かつID/Tは22より小さいという関係を有することを特徴とする
メタルハライドアーク放電ランプ。
【請求項2】
前記の発光管およびシュラウドは、共通のフレームによって外管内に取り付けられている、
請求項1に記載のメタルハライドアーク放電ランプ。
【請求項3】
前記シュラウドは石英である、
請求項2に記載のメタルハライドアーク放電ランプ。
【請求項4】
前記のシュラウドの厚さは1.5mmである、
請求項3に記載のメタルハライドアーク放電ランプ。
【請求項5】
前記シュラウドIDは32mmである、
請求項4に記載のメタルハライドアーク放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−134330(P2007−134330A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304171(P2006−304171)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(596104131)オスラム シルヴェニア インコーポレイテッド (72)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM SYLVANIA Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Endicott Street, Danvers, Massachusetts 01923, USA
【Fターム(参考)】