説明

メタルハライドランプ

【課題】 高効率な特性を発揮する水平点灯形、並びに、任意方向点灯形のメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】 メタルハライドランプは、セラミック発光管1と、セラミック発光管1を収容する外管バルブ2とを備える。セラミック発光管1は、金属ハロゲン化物および水銀を封入した本体部分(1−1〜1−5)および本体部分端部1−2に一対の電極1−6を有する。セラミック発光管1の本体部分の周囲にわたって、本体部分中央部1−1の肉厚を本体部分端部1−2の肉厚よりも厚く形成する。例えば、中央部1−1の肉厚と端部1−2の肉厚との差は0.1mm〜0.5mm、端部1−2の肉厚は0.9mm〜1.3mm、中央部1−1の幅は電極間の距離の1/2〜3/4とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタルハライドランプに係り、特に水平点灯形、並びに、任意方向点灯形のセラミックメタルハライドランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
メタルハライドランプは、発光管内に水銀、希ガスのほかに発光金属をハロゲン化物の形で封入し、これにより演色性等を改善したランプである。このメタルハライドランプの効率を向上させるためには、発光管の温度を高めて、発光物質であるメタルハライドの蒸気圧を高めること、並びに、放電空間の熱を逃がさないことが重要である。このため、近年、耐熱性の高いセラミックスを用いたセラミックメタルハライドランプが多く用いられてきている。一般に、高圧蒸気放電ランプを水平で点灯する場合、アークの浮力により発光管内の放電は上方に湾曲するが、セラミックメタルハライドランプでは上述の如くメタルハライドの蒸気圧が高くアークが絞られることと、水銀蒸気は密度が高いことから湾曲する割合はより一層顕著となる。これにより、発光管の上部は管壁が過度に加熱されて変形が生じたり、ランプが破損したり、あるいは封入メタルハライドとセラミックスが反応して寿命性能を損なうおそれがある。
【0003】
したがって、水平点灯用のメタルハライドランプでは封入物質にセシウムを添加することによりアークを太くし、結果的にアークの湾曲を抑制したり、あるいは、特許文献1に開示されている如く、発光管の上側肉厚を厚くして、管壁温度の過度の温度上昇を防止する方法、あるいはまた、特許文献2に開示されている如く、発光管の肉厚を全体的に厚くして上側管壁の温度が過度となることを防止する方法が採られている。
【特許文献1】特開平09−306430号公報
【特許文献2】特開2001−312998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、メタルハライドランプに発光物質としてセシウムを添加することは、セシウムの主要な発光が赤外放射であることから効率の低下をもたらすことなり、好ましくない。また、発光管の管壁を上下非対称とすることは、点灯する場合に、水平方向とした上で更に、上下方向を区別し指定する必要が生じ、一般的使い方としての利便性を損なうこととなる。また更に、発光管の肉厚を全体的に厚くすることは、放電空間の熱を管端部、ひいては封止用細管部へ逃がすこととなり、効率の低下をもたらすこととなる。
【0005】
本発明の目的は、セラミック発光管を用いたメタルハライドランプにあって、その取扱いに格別の制限を設けず、高効率な特性を発揮する水平点灯形、並びに、任意方向点灯形のメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、金属ハロゲン化物および水銀を封入した本体部分および前記本体部分端部に一対の電極を有するセラミック発光管と、前記セラミック発光管を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記セラミック発光管の本体部分の周囲にわたって前記本体部分中央部の肉厚を前記本体部分端部の肉厚よりも厚く形成したメタルハライドランプにより、達成される。
【0007】
ここで、前記本体部分中央部の肉厚と前記本体部分端部の肉厚との差は0.1mm〜0.5mmであり、前記本体部分端部の肉厚が0.9mm〜1.3mmであることが好ましい。また、前記本体部分中央部の幅が前記電極間の距離の1/2〜3/4であることが好ましい。さらに、前記本体部分中央部は前記本体部分外側に帯状の凸部を有するようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セラミック発光管を用いたメタルハライドランプにあって、その取扱いに格別の制限を設けず、高効率な特性を発揮する水平点灯形、並びに、任意方向点灯形メタルハライドランプを得ることができる。すなわち、本発明では、水平点灯時のセラミック発光管の上部管壁温度と下部管壁温度との差を少なくでき、上部管壁温度が過度に上昇することを防止し、また、管端部への熱の移動を少なくでき、管端部温度が過度に上昇することを防止できるとともに、効率向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るメタルハライドランプの一実施例を示す図である。本図は始動器内蔵式の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの構成を示すものであり、同図では、その内部構造が分かるように、その一部を切り欠いて示している。
【0010】
セラミック発光管1は、図1に示すように、一例として、硬質ガラスからなる外管バルブ2の内部にステム5を介して気密に封止されており、そして、支持棒を兼ねたリード線4a、4bによって保持されている。この外管バルブ2の球状部2aの内面には蛍光膜3が塗布されている。また、口金6は、上記外管バルブ2のネック部2bに、機械的にかしめ固定されており、これによって口金6とリード線4a、4bとの間が電気的に接続される。
【0011】
一方、グロー管7、電流制限用抵抗8、バイメタル(図示せず)からなる始動器10は、リード線4a、4bに電気的に接続され、固定されている。反射板9は、例えば白色セラミック板からなり、上記外管バルブの球状部2aとネック部2bと間の境界部分に配置されており、反射板9に設けた穴を貫通するリード線4a、4bによって固定されている。電流制限用抵抗8の一部は、反射板9に設けた穴を通じて、ランプ中心部に伸びている。これにより、外管バルブの球状部2aと反射板9とで概略球状を形成する。
近接導体11は太さ0.2mmのモリブデン線からなり、発光管1の外形に沿って接触し設けられている。
【0012】
なお、外管バルブ2の内部には、窒素ガスが約二分の一気圧に減圧されて封入されている。一方、セラミック発光管1の内部には、始動ガスとして約15kPaのアルゴンガスと、バッファガスとして水銀50mg、発光金属としてナトリウム、タリウム、並びに、ディスプロシウム等の希土類ヨウ化物が適量封入されている。
【0013】
図2は、本発明による水平点灯形、拡散形、低電圧始動形セラミックメタルハライドランプのセラミック発光管の一例を示す図である。本図は、上記図1に示したセラミック発光管1の封止前の、所謂、素管の詳細形状を示す断面図であるが、便宜上、一対の電極の配置を併せて示している。図示のように、セラミック発光管1は、本体部分中央部1−1と、本体部分端部1−2と、本体部分端部につながる細管部1−3とを備え、セラミック発光管1の本体部分の周囲にわたって、本体部分中央部1−1の肉厚を本体部分端部1−2の肉厚よりも厚く形成している。本図では、本体部分中央部1−1の肉厚部分を明確にするために、本体部分端部1−2と同じ肉厚とした場合の仮想線を点線1−4で示しており、この肉厚部分は該点線よりも外側に肉厚となっている。すなわち本例では、本体部分中央部1−1は、本体部分外側に帯状の凸部1−5を有する。
【0014】
本体部分中央部1−1の肉厚と本体部分端部1−2の肉厚との差は、0.1mm〜0.5mmが好ましい。この差が0.1mmに満たないと効率向上の効果が十分でなく、また0.5mmを超えると発光管の透過性が悪くなり、あるいは発光管にひずみが生じて歩留まりが低下するおそれがあるからである。上記のように肉厚の差を設定する場合、本体部分端部1−2の肉厚は0.9mm〜1.3mmとすることが好ましい。この本体部分端部1−2の肉厚が0.9mmに満たないと発光管が壊れやすくなり、また1.3mmを超えると管端部への熱の移動が大きく、効率の低下が生じるからである。また、本体部分端部1−2には一対の電極1−6が設けられている。ここで、例えば、電極間距離Lは22mm、発光管中央部1−1の内径Φは18mmである。以下、実施例を説明する。
【0015】
本実施例では、図2に示すように、セラミック発光管1の本体部分中央部1−1の肉厚は本体部分端部1−2の肉厚よりも厚く形成されている。すなわち、相対的に見ると、本体部分中央部1−1は肉厚に形成されており、本体部分端部1−2は肉薄に形成されている。ここで例えば、定格入力270Wの場合、端部1−2の肉厚は1.0mm±0.1mmであり、中央部1−1の肉厚は1.3mm±0.1mmである。このような形状とすることにより、アークが上方に屈曲したとしても、セラミック発光管1の本体部分中央部1−1の上部の熱は側面、ひいては下面に伝達されて、均等化されることにより、局部的に過熱されることを緩和できると共に管端部への熱の伝導を少なくできる。
【0016】
また、本実施例では管端部の曲面部分(端部1−2)を肉薄とし、直線部分(中央部1−1)を肉厚としているが、上記肉厚の帯状部分(中央部1−1)の幅Wは、アークの曲がりの程度を勘案して設計され、概略、電極間距離の1/2以上とし3/4以下(1/2〜3/4)とするのが適当である。この比率が1/2に満たないと効率向上の効果が十分でなく、また3/4を超えると効率が悪くなるからである。
【0017】
なお、上述のとおり、本図では、発光管1の本体部分中央部1−1の肉厚部分を明確にするために、本体部分端部1−2と同じ肉厚とした場合の仮想線を点線1−4で示しており、肉厚部分は、該点線よりも外側に肉厚となっているが、上記熱伝導の理由から、肉厚部分は内側であっても、あるいは、内外に肉厚としても効率向上に関して同様な効果が得られる。ただし、本図のように点線1−4よりも外側に肉厚とする方が、発光管を型で作る場合に便利であり、また本ランプを他のランプと外観で見分けることができるという利点があるので、好ましい。また、本実施例では、外管内に不活性ガスを封入し、始動器を内蔵した水平点灯形としているが、真空の場合も同様であり、始動器の有無に関係なく、任意方向点灯形にも有効であることは明白である。
図2において、電極を封止する管端部の細管部1−3は本体部分端部1−2よりも若干肉厚としているが、これは上記理由からではなく、封止の強度を保つためである。
【0018】
本発明に係るセラミック発光管1により得られる性能を、従来例の等厚なセラミック発光管で得られる性能と比較して、以下に説明する。
まず、本実施例のランプを、例えば、定格電力270W、周囲温度25°C、水平の状態で裸点灯したところ、発光管中央部1−1の上部温度は1110℃、下部温度は1010℃、ランプ効率は103ルーメン/ワットであった。
【0019】
これに対し、上記発光管中央部の肉厚を管端部と同じく1.0mm±0.1とした従来例のランプを、同様に、定格電力270Wで点灯したところ、発光管中央部1−1の上部温度は1150℃、下部温度は1000℃、ランプ効率は104ルーメン/ワットであった。また、入力を減じて、上部温度が1110℃となる入力は230Wであり、そのときのランプ効率は98ルーメン/ワットであった。すなわち、本発明の実施例によれば、従来例と比べて、発光管最高温度を約40℃低下させることができ、ランプ効率を5%程度向上することが出来る。
【0020】
また、上記発光管の中央部、並びに、管端部の肉厚をどちらも等しく1.2mm±0.1とした従来例のランプを、同様に、定格電力270Wで点灯したところ、発光管中央部1−1の上部温度は1130℃、下部温度は1000℃、ランプ効率は99ルーメン/ワットであった。また、入力を減じて、上部温度が1110℃となる入力は250Wであり、そのときのランプ効率は97ルーメン/ワットであった。すなわち、本発明の実施例によれば、従来例と比べて、発光管最高温度を約20℃低下させることができ、ランプ効率を6%程度向上することが出来る。
【0021】
ところで、上記熱伝導の理由から、肉厚に形成されたセラミック発光管1の本体部分中央部1−1は、必ずしも図3(a)に示すような同幅の帯状形状31で無ければならないものではなく、概略帯状形状とすることができるが、さらに図3(b)に示すように帯状側部をジグザグ形状32にしてもよい。また、中央部1−1は、帯状部分が連続している必要はなく、図3(c)、(d)に示すように、発光管長手方向に切り欠き33を設けてもよく、また斜め方向に切り欠き34を設けてもよい。さらに、図示はしないが、中央部1−1の帯状形状の肉厚を両端部1−2からみて中央方向へ段階的に厚くするように形成することもできる。中央部1−1の帯状形状については以上に限定されず、本発明の趣旨に照らして各種の形状を作製することができる。
【0022】
以上のように、本発明は、一対の電極をもち、金属ハロゲン化物を封入したセラミック発光管と、セラミック発光管を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、セラミック発光管がその本体部分において肉厚を異にし、前記肉厚を異にする部分は前記一対の電極がなす軸を回転軸とした帯状、及び、該帯状に類似した形状とし、本体中央部分において管端部よりも肉厚となるように構成したものである。この場合、前記肉厚を異にする部分において、肉厚が厚い部分と肉厚が薄い部分との厚さの差を0.1mm〜0.5mmとすることで、より一層の効率向上を達成することができる。これは、セラミック発光管は石英ガラス管からなる発光管に比して熱伝導率が高いことによるものと推測される。一方、肉厚が薄い部分の範囲が狭い場合、あるいは、全く無い場合には管中央部から管端部への熱の移動が大きく、管端部の温度が過度に上昇し、封入発光物質の過度の蒸発をもたらし、結果として寿命特性、光学特性を損なうこととなる。なお、肉厚が薄い部分の範囲が狭い場合、あるいは、全く無い場合で、管端部の温度を過度に上昇させない設計とした場合には、管壁中央部の温度を高くすることができず、十分な効率を達成することができなくなる。同様に、管端部の肉厚が薄い部分において、その肉厚が1.3mmを越えると管端部への熱の移動が大きく、効率の低下が生じる。これは、上記セラミックス発光管が石英ガラス発光管に比べて熱伝導が高いことに加えて、電極封止部の形状が、セラミック発光管の方が細長いことによると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、水平点灯形セラミックメタルハライドランプにおいて発光管の局部的過熱を防止すると共に、発光管中央部の熱の損失を改善するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る始動器内蔵式の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明で用いられるセラミック発光管の素管の一例を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明で用いられるセラミック発光管の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0025】
1…セラミック発光管、2…外管バルブ、2a…球状部、2b…ネック部、3…蛍光膜、4a、4b…リード線、5…ステム、6…口金、7…グロー管、8…電流制限用抵抗、9…反射板、10…始動器、11…近接導体、31…同幅の帯状形状、32…ジグザグ形状、33、34…切り欠き、1−1…本体部分中央部、1−2…本体部分端部、1−3…管端部の細管部、1−4…点線、1−5…帯状の凸部、1−6…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ハロゲン化物および水銀を封入した本体部分および前記本体部分端部に一対の電極を有するセラミック発光管と、前記セラミック発光管を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記セラミック発光管の本体部分の周囲にわたって前記本体部分中央部の肉厚を前記本体部分端部の肉厚よりも厚く形成したことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記本体部分中央部の肉厚と前記本体部分端部の肉厚との差が0.1mm〜0.5mmであり、前記本体部分端部の肉厚が0.9mm〜1.3mmであることを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記本体部分中央部の幅が前記電極間の距離の1/2〜3/4であることを特徴とする請求項1または2記載のメタルハライドランプ。
【請求項4】
前記本体部分中央部が前記本体部分外側に帯状の凸部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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