説明

メタルハライドランプ

【課題】外管におけるホルダとの当接部分に割れが生じないメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】メタルハライドランプは、発光物質としてハロゲン化金属が封入された発光管と当該発光管を気密封止する内管とからなる二重管構造体と、前記二重管構造体を保持するホルダと、前記発光管を点灯させる点灯回路と、前記点灯回路を内部に収納するケースと、前記ケースに取着され且つ硬質ガラス材料で作られており、前記二重管構造体を収納する外管とを有し、ホルダの外周面の一部又は全部が前記外管の内周面に直接的又は間接的に当接し、当該ホルダの材料は、当該材料の熱膨張係数[/℃]をy、熱伝導率[W/(m・K)]をxとそれぞれした場合に、y×10≦250×e−0.007xを満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドランプに関し、特に、水銀灯代替光源として好適なメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、広場、競技場などの屋外照明、体育館や工場などの高天井の屋内照明には、従来、主として水銀灯が用いられている。この水銀灯はランプ効率が比較的低いため、近年の省エネルギーの要請を背景として、当該水銀灯をランプ効率の高いメタルハライドランプへ置き換えることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、水銀灯が装着されていた既存の照明施設には水銀灯用の安定器が設けられているため、当該水銀灯用の照明器具にメタルハライドランプをそのまま装着して水銀灯と同等の明るさを得るためには、前記安定器をメタルハライドランプ用の安定器に取り替える必要があり、このことが、メタルハライドランプへの置き換えの阻害要因の一つとなっている。
【0004】
そこで、水銀灯用の安定器をそのまま残存させた状態で、ランプだけを交換できるようにしたものとして、安定器を含む点灯回路を内蔵したメタルハライドランプの要望が高まっている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0005】
回路内蔵型ランプは、従来から電球形蛍光灯や水槽用ランプ等では検討されていたが、水銀灯置き換えランプのような高Wタイプのメタルハライドランプは、耐熱性などの観点から課題が多く、あまり検討されていなかったが、上記要望に応えるべく発明者らにより検討されている。
【0006】
検討しているメタルハライドランプは、例えば、発光管と当該発光管を気密封止する内管とからなる二重管構造体と、当該二重管構造体を中央部で保持する板状のホルダと、当該二重管構造体を収納する硬質ガラス材料からなる外管と、発光管点灯用の点灯回路と、内部に点灯回路を収納するケースとを備え、板状のホルダの外周面が外管の内周面に当接し、また外管がケースに接合される構造のメタルハライドランプが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4129279号公報
【特許文献2】特開2004−158361号公報
【特許文献3】特開2005−116218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らの検討により以下の課題が発生することが分かった。
一般的に、メタルハライドランプの定常点灯中、前記発光管で発生する熱により前記内管は400[℃]を超える高温状態になる。
【0009】
上記構成のメタルハライドランプでは、発光管の熱は、内管、ホルダ、外管へと順次伝わる。このとき、ホルダの外周面と外管との内周面とが当接しているため、当該当接部分の両材料の熱膨張の違いによって、外管に割れが発生してしまうという課題がある。
【0010】
本発明は、上記した課題に鑑み、外管におけるホルダとの当接部分に割れが生じないメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るメタルハライドランプは、発光物質としてハロゲン化金属が封入された発光管及び当該発光管を気密封止する内管を有する二重管構造体と、前記二重管構造体を保持するホルダと、前記発光管を点灯させる点灯回路と、前記点灯回路を内部に収納するケースと、前記ケースに取着され且つ硬質ガラス材料で作られており、前記二重管構造体を収納する外管と、を有し、ホルダの外周面の一部又は全部が前記外管の内周面に直接的又は間接的に当接し、当該ホルダの材料は、当該材料の熱膨張係数[/℃]をy、熱伝導率[W/(m・K)]をxとそれぞれした場合に、 y×10 ≦ 250×e−0.007x
を満たすことを特徴としている。
【0012】
ここで、「直接的に当接する」とは、外管とホルダとが直接密接する状態、ホルダが外管を直接押圧する状態で接触する場合等を言い、また、「間接的に当接する」とは、外管とホルダとが無機接着剤(シリコン系接着剤などを含む)を介して接合されている場合、外管とホルダとが他部材を介して接触する場合をいう。
【0013】
また、無機接着剤や他部材を介して接触する場合とは、ホルダの熱が他部材を介して殆ど外管に伝わるような場合をいい、具体的には、ホルダにおける他部材との接触部と外管における他部材との接触部との温度が約5℃以下のような場合をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るメタルハライドランプは、ホルダの材料を、当該材料の熱膨張係数[/℃]をy、熱伝導率[W/(m・K)]をxとそれぞれした場合に、 y×10 ≦ 250×e−0.007x を満たす材料としているため、外管におけるホルダとの当接部分に割れが発生するのを抑制・防止することができる。
【0015】
また、前記ホルダの材料は、さらに、 y×10 ≦ 250×e−0.04x を満たすことを特徴とし、或いは、前記ホルダは、セラミック、ガラス、樹脂のいずれか1種の材料を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係るメタルハライドランプの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】点灯回路ユニットにおける点灯回路の回路図である。
【図3】各タイプにおけるホルダの最高温度と各タイプのホルダにおける二重管構造体との接合部と外管との接合部との距離(L)を示す図である。
【図4】各タイプにおける各材料を用いたホルダに用いた場合における外管接合部の温度を示す図である。
【図5】各材料のホルダを利用したメタルハライドランプの外管接合部の温度と外管破損の有無の試験結果を示す図である。
【図6】縦軸(Y)を熱膨張係数[/℃]×10とし、横軸(X)を熱伝導率W/(m・K)]とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料についてプロットした図である。
【図7】縦軸(Y)を外管接合部温度とし、横軸(X)を熱伝導率とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料についてプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明を実施するための最良の形態について、一例を示して説明する。なお、以下の説明で用いる形態は、本発明の構成及び作用・効果を分かりやすく説明するために用いる一例であって、本発明は以下に説明する形態に限定されるものではない。
<実施の形態>
本実施の形態に係るメタルハライドランプについて、図を用いて以下説明する。
1.ランプの構成
図1は、実施の形態に係るメタルハライドランプ10の概略構成を示す縦断面図である。なお、本図において、後述する発光管44と点灯回路ユニット18とは切断していない。また、各構成部材間の縮尺は統一していない。
【0018】
メタルハライドランプ10の定格ランプ電力は、200[W]である(このタイプのランプを、「200Wタイプ」ともいう。)。本発明において、定格ランプ電力とは、回路込みのランプにおいて光源で消費される電力をいう。メタルハライドランプ10は、水銀灯代替光源として、水銀灯用の既存の照明器具にも装着して用いられる。
【0019】
メタルハライドランプは、水銀灯と比較してランプ効率[lm/W]が良いため、本例の200[W]のメタルハライドランプは、400[W]の水銀灯に代替し、当該水銀灯と略同等の明るさが得られる。なお、実施の形態に係るメタルハライドランプの定格ランプ電力は、200[W]に限らず、例えば、200[W]より大きくても良いし、200[W]より小さい100[W]、40[W]等でも構わない。発光管の温度、メタルハライドランプの大きさ等を考慮すると、特に、30[W]以上の高W[ワット]タイプに有用である。
【0020】
図1に示すように、メタルハライドランプ10は、ケース部12と、ケース部12に一体的に連設された口金部14と、ケース部12に接合された外管16とを有する。なお、ケース部12と口金部14とでケースとしても良く、このケースと外管16とで外囲器が構成される。
【0021】
ケース部12は、中空の略円錐台形をした筒状をしている。ケース部12を構成する材料として、例えば、アルミ、鉄などを含む合金、アルミナなどのセラミック、及びPPS,PBTのような樹脂材料を使用することができる。
【0022】
ケース部12内には、点灯回路ユニット18が収納されている。点灯回路ユニット18は、ケース部12の内壁面に固定されたプリント配線板20と複数個の電子部品(例えば、図1において符号「22」で示す。)等からなる。
【0023】
図2は、点灯回路ユニット18における点灯回路の回路図である。
点灯回路ユニット18における点灯回路24について、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、点灯回路24は、AC/DC変換部24A、DC調整部24B、及びDC/AC変換部24Cを有する。
【0024】
AC/DC変換部24Aは、商用交流電源からの交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。AC/DC変換部24Aは、整流回路DBと、整流回路DBから出力される直流電圧を昇圧する昇圧回路とを備える。昇圧回路は、例えばチョッパー方式の昇圧回路であり、インダクタンスL1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1及びコンデンサC1を備える。本例において、インダクタンスL1にはチョークコイルを、スイッチング素子Q1にはトランジスタを、コンデンサC1には電解コンデンサをそれぞれ使用することができる。
【0025】
DC調整部24Bは、AC/DC変換部24Aから出力される直流電圧を所定の電圧に調整する。DC調整部24Bは、例えばチョッパー方式の降圧回路であり、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、インダクタンスL2及びコンデンサC2を備える。本例において、インダクタンスL2にはチョークコイルを、スイッチング素子Q2にはトランジスタを、コンデンサC2には電解コンデンサをそれぞれ使用することができる。
【0026】
DC/AC変換部24Cは、DC調整部24Bから出力される直流電力を交流電力に変換して、発光管44に給電する。DC/AC変換部24Cは、直流電力を交流電力に変換する変換回路と、発光管44に流れる電流を制御し放電を安定させる安定器L3とを備える。変換回路は、例えばフルブリッジインバータ回路であり、4つのスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6を備える。また、安定器L3には、例えば、チョークコイルを使用することができる。
【0027】
なお、各スイッチング素子Q1〜Q6は、図外の制御部(例えば、ICである)によりスイッチング動作が制御されている。
図1に戻り、点灯回路ユニット18は、口金部14から第1リード線26及び第2リード線28を介して供給される商用交流電力を、後述する発光管44を点灯させるための電力に変換して、発光管44に給電する。
【0028】
口金部14は、例えば略円筒状をし、例えば耐熱性の合成樹脂材料からなる第1絶縁体部30を有している。第1絶縁体部30は、ケース部12の一方の開口端部に接合されている。
【0029】
口金部14は、また、筒状胴部とも称されるシェル32と円形皿状をしたアイレット34とを有する。シェル32とアイレット34とは、ガラス材料からなる第2絶縁体部36を介して一体となっている。この一体となったものが、第1絶縁体部30に嵌め込まれている。
【0030】
第1絶縁体部30には、貫通孔30Aが開設されており、貫通孔30Aを介して第1リード線26が第1絶縁体部30内から外部に導出されている。
第1リード線26の一端部の導線部分は、シェル32の内周面と第1絶縁体部30外周面との間に挟持されている。これにより、第1リード線26とシェル32とは電気的に接続されている。
【0031】
アイレット34は、中央部に開設された貫通孔34Aを有している。第2リード線28の導線部がこの貫通孔34Aから外部へ導出され、アイレット34の外面(上面)に半田付けにより接合されている。
【0032】
ケース部12の他方の開口端部には、後述する二重管構造体42を支持するホルダ40が、例えば耐熱性の無機接着剤により接合されている。ホルダ40は、例えばアルミナからなる例えば円板状をしており、その中央部には、二重管構造体42における後述するピンチシール部78の横断面形状に合わせた長孔40Aが開設されている。
【0033】
ホルダ40に支持されている二重管構造体42は、発光管44と内管46とを有する。
発光管44は、本管部48と本管部48の管軸方向両側に形成された細管部50,52とからなる放電容器54を有している。放電容器54は、例えば、透光性セラミックで形成されている。透光性セラミックには、例えば、アルミナセラミックを用いることができる。
【0034】
本管部48は、気密封止された放電室(図示せず)を有し、当該放電室には、一対の電極(図示せず)が対向して配置されている。また、放電室には、ハロゲン化金属、希ガス、及び水銀がそれぞれ所定量封入されている。ハロゲン化金属は発光物質として封入されており、このハロゲン化金属としては、例えば、ヨウ化ナトリウムやヨウ化ジスプロシウム等が用いられる。
【0035】
細管部52,54の各々には、先端部に前記各電極が接合された給電体56,58が挿入されている。給電体56,58は、それぞれの細管部50,52における、本管部48とは反対側の端部部分に流し込まれたフリットからなるシール材60,62によって封着されている。なお、図1に現れているシール材60,62部分は、細管部50,52の端部からはみ出た部分である。
【0036】
給電体56における電極とは反対側の端部は電力供給線64に電気的に接続されており、同じく、給電体58における電極とは反対側の端部が電力供給線66に電気的に接続されている。
【0037】
電力供給線64,66はそれぞれ、金属箔68,70を介して、外部リード線72,74に電気的に接続され、外部リード線72,74はプリント配線板20に接続されている。なお、一方の電力供給線64において、少なくとも他方の電力供給線66やこれに接続された給電体58と対向する部分は、例えば石英ガラスからなるスリーブ76で被覆されている。
【0038】
上記した発光管44等は、筒状、例えば円筒状をした内管46内に気密状に収納されている。内管46は、例えば石英ガラスからなり、金属箔68,70の存する側の一端部部分は、いわゆるピンチシール法によって圧潰されて、金属箔68,70の相当部分において気密封止されている。したがって、内管46は、片封止型の気密容器であるといえる。ここで、内管46において前記圧潰封止されてなる部分をピンチシール部78と称することとする。ピンチシール部78の横断面は、略長方形をしている。
【0039】
内管46の他端部部分の凸部80は、内管46の内部を真空引きする際に用いた排気管の残部であるチップオフ部80である。内管46内を真空にするのは、ランプ点灯時に高温にさらされる給電体56,58、電力供給線64,66等の金属部材の酸化を防止するためである。酸化防止の観点から、内管46の内部であって、発光管44の外部は、真空にするのではなく、不活性ガスを充満させることとしても構わない。
【0040】
上記構成からなる二重管構造体42は、ピンチシール部78がホルダ40の長孔40Aに挿入され、ピンチシール部78と長孔40Aの間隙に充填された例えば無機接着剤82によってホルダ40に接合されている。無機接着剤82は、シリカ及びアルミナを主成分とする、いわゆるセメントであり、1000[℃]の耐熱温度を有する。
【0041】
ケース部12のホルダ40が接合されている端部部分には、ホルダ40の外周に沿って、円形の挿入溝84が開設されている。
外管16は、その開口端部部分の内周面に板状のホルダ40の外周面(の全部)が例えば無機接着剤により接合されている(この接合されている外管の部分を「外管接合部」ともいう)と共に、外管16の開口端縁部16Aが挿入溝84に挿入され、開口端縁部16Aと挿入溝84との間隙に充填された無機接着剤(図示せず)によってケース部12に接合されている。なお、外管とケースとを接合するための接着剤としては、無機接着剤82に限定されず、耐熱性、接着性において無機接着剤と同等のものであれば良い。また、外管16には、耐熱性や加工性を考慮して硬質ガラスや軟質ガラスが用いられる。硬質ガラスの熱膨張係数は、30〜60×10−7[/℃]、熱伝導率は1.0[W/(m・K)]、軟質ガラスの熱膨張係数は、80〜100×10−7[/℃]、熱伝導率は0.74[W/(m・K)]である。
2.ホルダの材料について
上記ホルダは、ここでは、アルミナ材料により構成されていたが、所定の条件を満たせば、他の材料を使用することもできる。
【0042】
つまり、発明者らは種々検討した結果、材料の熱伝導率[W/(m・K)]をX軸と、熱膨張係数[/℃]×10をY軸とそれぞれし、材料の熱伝導率[W/(m・K)]をxと、熱膨張係数[/℃]をyとそれぞれした場合に、
y×10 ≦ 250×e−0.007x
の関係を満たす材料であれば、当該材料をホルダに使用しても、外管におけるホルダとの接合部分で割れをなくすることができることを見出した。
【0043】
なお、上記関係を換言して表すと、
y×10 = 250×e−0.007x で表された曲線と、x=0で表された直線と、y=0で表された直線とで囲まれた領域内に存在する、熱伝導率と熱膨張係数との値を有する材料であれば良い。
【0044】
以下、上記の式の根拠について説明する。
上記関係を満たす材料としては、例えば、SUS304のようなステンレス鋼、鉄、白金、アルミナ、ジルコニア、石英ガラス、ステアタイト、硬質ガラス、軟質ガラス、PPS、PBI、PBT等がある。これらの材料は、加工性、耐熱性、及び部材としたときの軽量化という点を考慮しながら、適宜選択すれば良い。
(1)二重管構造体の外表面の温度
発光管を発光させた際の二重管構造体の内管の温度は、発光管の本管部と対向する領域が最も高くなり、例えば200Wタイプでは約400[℃]に達する。なお、ランプ電力が異なる他のタイプ、例えば、100Wタイプや40Wタイプであっても、内管の外表面の最高温度は略400[℃]になる。
【0045】
このように内管の外表面の最高温度が、ランプ電力の影響を受けずに、略一定となるのは、ランプ電力が高くなると発光管の負荷が大きくなるが、発光管や内管が寸法的に大きくなり、結果的に略同じような温度となると考えられる。
【0046】
一方、ホルダの中央部に取着される二重管構造体のピンチシール部の温度は、メタルハライドランプのタイプにより若干異なるが、例えば、40Wタイプは160〜200[℃]、100Wタイプは200〜250[℃]程度である。このピンチシール部の温度は、日本工業規格 JIS C 7802(封止部温度の測定方法)に基づき容易に測定することができる。なお、本発明において数値範囲を示す「〜」は、その両端の数を含む。
【0047】
二重管構造体は、上記構成の項目で説明した通り、円板状のホルダの中央部の長孔にピンチシールド部が挿入された状態で長孔を構成する周面とピンチシールド部の外周面とが無機接着剤により接合・保持されている。このため、発光管の発光時の二重管構造体(内管)の熱が無機接着剤を介してホルダへと伝わる。
(2)外管とホルダとの接合部温度
ホルダに5種類の材料を用い、40W、100W、200Wの3タイプの発光管点灯時の外管とホルダとの接合部の温度を測定した。
【0048】
まず、図3は、各タイプにおけるホルダの最高温度と、各タイプのホルダにおける二重管構造体との接合部と外管との接合部との距離(L)を示す図である。なお、距離(L)は、ホルダの表面に沿う方向の距離であり、二重管構造体のピンチシールド部の外表面と外管の開口端部の内周面との距離である(図1参照)。
【0049】
ホルダの最高温度となる部位は、ホルダにおける二重管構造体との接触部分であり、その最高温度は、同図に示すように、40Wタイプは204[℃]であり、100Wタイプは206[℃]であり、200Wタイプでは210[℃]である。
【0050】
一方、ホルダにおける二重管構造体と外管との接合部間の距離(L)は、40Wタイプは35[mm]であり、100Wタイプは45[mm]であり、200Wタイプでは60[mm]である。
【0051】
図4は、各タイプにおける各材料をホルダに用いた場合における外管接合部の温度を示す図である。なお、外管接合部の温度は、図中において、単に、「接合部温度」と記し、以下、「接合部温度」ともいう。
【0052】
測定に供したメタルハライドランプとして、40W、100W、200Wタイプの3種類が用いられ、ホルダの材料として、アルミ合金(ADC10)、アルミナ、SUS304のようなステンレス鋼、ステアタイト、PPS等を用いた。
【0053】
図4に示すように、各材料において、ランプ電力が小さいほど外管接合部の温度が高くなっている。具体的に説明すると、温度測定したメタルハライドランプの中でランプ電力が最も小さい40Wタイプでの温度が一番高く、100Wタイプ、200タイプの順で温度が低くなっている。
【0054】
上記傾向を示す理由は、図3に示すように、40Wタイプはホルダの最高温度が低いものの、距離Lが小さいために、結果的に、外管接合部の温度が、他のタイプよりも高くなると考えられる。
(3)負荷試験(外管割れ発生の有無調査試験)
上記(2)で説明したように、外管接合部の温度が最も高くなるのは、ランプ電力が40Wのタイプであり、外管接合部の温度が最も高いこのタイプが外管接合部で割れが最も発生しやすい。このため、主に40Wタイプのメタルハライドランプの仕様で、ホルダの材料を変えて、外管に破損が発生するか否かを試験した。
【0055】
図5は、各材料のホルダを利用したメタルハライドランプの外管接合部の温度と外管破損の有無の試験結果を示す図である。なお、図5には、ホルダに用いた材料の熱伝導率と熱膨張係数×10及び外管の材料である硬質ガラスの熱伝導率と熱膨張係数×10を合わせて記載している。
【0056】
試験の条件は、各メタルハライドランプのタイプを示すランプ電力で定格点灯させた場合と、各メタルハライドランプのタイプを示すランプ電力に対して10[%]の過負荷で点灯させた場合の2つである。なお、前者の条件下での試験を、「定常負荷試験」といい、後者の条件下での試験を、「過負荷試験」という。
【0057】
外管割れの評価は、各試験後の外管における割れの発生具合を目視により確認し、その割れの発生状況に応じて三段階で評価した。すなわち、過負荷試験でも外管に割れが発生しなかった場合を「○」で、過負荷試験で外管に割れが発生したが、定常負荷試験では割れが発生しなかった場合を「△」で、定常負荷試験で外管に割れが発生した場合を「×」でそれぞれ示している。
【0058】
図5から、40Wタイプにおいて、評価が「○」となるホルダ材料は、アルミナ、ステア、PPS、PBTであり、評価が「△」となるホルダ材料は、鉄、SUS304であり、SUS304の場合、40Wタイプ及び100Wタイプでは「△」であるものの、200Wタイプでは「○」である。
【0059】
図6は、縦軸(Y)を熱膨張係数[/℃]×10とし、横軸(X)を熱伝導率[W/(m・K)]とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料についてプロットした図である。
【0060】
図5において外管の割れについての評価が「△」であるものは、図6中の破線よりも下側の領域に位置し、当該領域を、材料の熱膨張係数[/℃]をy、熱伝導率[W/(m・K)]をxとそれぞれして式で表すと、上述した、
y×10 ≦ 250×e−0.007x
の関係式となる。なお、評価「△」は、定常負荷試験では外管に割れは発生していないため、上記関係式を満たせば、定常負荷(定常点灯)においては外管に割れが生じる可能性は低い。
【0061】
ここで、実施の形態では、上記関係を満たす材料として、アルミナ、ステアタイト、PPS、PBTを示しているが、上記関係を満たす材料であれば、外管に割れが生じる可能性が低くなると考えられる。
【0062】
その理由は、上記関係式よりも下方の領域に属する材料は、熱伝導率が小さくなり、ホルダと外管との接合部の温度が低下し、また、熱膨張係数が小さくなり、ホルダと外管との接合部の熱による応力差が小さくなるからである。
また、外管材料に軟質ガラスを用いた場合においても、同様の結果を得た。
【0063】
また、発光管に供給する電力が何らかの原因により変動した場合を考慮すると、定格電力(ランプ電力)に対して10[%]程度過負荷状態で点灯されることもあり得る。この場合を想定した過負荷試験においての評価が「○」であるものは、図6の実線よりも下側の領域に位置し、当該領域を同様に式で表すと、
y×10 ≦ 250×e−0.04x
の関係式となり、当該関係式を満たせば、10[%]の過負荷の電力が供給された場合でも外管に割れが生じる可能性は低い。
【0064】
なお、上記関係を換言して表すと、 y×10 = 250×e−0.04x で表された曲線と、x=0で表された直線と、y=0で表された直線とで囲まれた領域内に存在する、熱伝導率と熱膨張係数との値を有する材料であれば良い。
(4)その他
発明者らは、種々検討した結果、ホルダに使用できる材料を選定するに際しての基準となる関係式を見出したが、検討当初は、熱伝導率と硬質ガラスの熱伝導率との関係から上記基準を検討した。
【0065】
図7は、縦軸(Y)を外管接合部温度[℃]とし、横軸(X)を熱伝導率[W/(m・K)]とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料についてプロットした図である。なお、図7にある「○」、「△」、「×」は、上記評価と同じである。
【0066】
同図に示すように、熱伝導率が低く、接合部温度が低い場合でも、定格負荷で外管に割れが生じている。具体的には、材料がPETの場合、熱伝導率が0.15[W/(m・K)]と低く、外管接合部温度も92.7[℃]と他の材料に比べて低いが、外管に割れが生じている。
【0067】
また、熱伝導率及び外管の温度が近い値を示している2つの材料においても、一方の材料で外管に割れが生じている。具体的には、材料がSUS304とアルミナの場合、熱伝導率がSUS304では17[W/(m・K)]であり、アルミナでは25[W/(m・K)]であり、両熱伝導率は近い値を示している。また、外管接合部温度も、SUS304では102[℃]であり、アルミナでは106[℃]であり、両温度は近い値を示している。それにもかかわらず、SUS304で外管に割れが生じている。
【0068】
このように、外管の割れは、外管接合部温度やホルダの熱伝導率の値にのみに関係して生じるのではなく、他の要因も関係して生じていることが判明した。
このような状況下において、発明者らは、さらに検討を進め、材料の熱膨張係数と熱伝導率とから、外管に割れが生じ難い材料の選定基準を見出したのである。
3.ホルダ
(1)形状
実施の形態では、ホルダの形状は円板状をしていたが、他の板形状でも良く、例えば、平面視形状が6角形等の多角形状、楕円状の板状であっても良い。さらには、ホルダは、孔、凹み等を有しても良い。
【0069】
ホルダは、厚みが略一定な板状でなくても良く、例えば、中央部から周縁部に移るにしたがって厚みが段々或いは徐々に変化する、すなわち厚みが薄くなる或いは厚くなるような板状であっても良い。
【0070】
さらに、ホルダは、その縦断面形状が矩形状をしていたが、例えば、2次曲線である放物状をしていても良いし、ジグザグの鋸状や、正弦波の形状をしていても良い。
さらに、ホルダの形状は板状でなくても良く、例えば、有底筒状をし、その底壁で二重管構造体を保持しても良い。この場合、底壁の形状は、上述の板状のホルダと同様に、種々の形状とすることができる。
【0071】
また、ホルダの形状を柱状とすることもでき、その横断面形状は、円形状、楕円形状、三角形等の多角形状であっても良い。なお、柱状であっても、二重管構造体を保持するための凹部、貫通孔等を有する。
(2)厚み
実施の形態では、ホルダの厚みは2[mm]であり、本発明ではこの厚みに限定するものではないが以下の範囲が好ましい。
【0072】
金属材料の場合、厚みは0.5〜5.0[mm]の範囲内が好ましく、樹脂材料の場合、厚みは0.8〜5.0[mm]の範囲内が好ましく、セラミック材料の場合、厚みは1.0〜5.0[mm]の範囲内が好ましく、ガラス材料の場合、厚みは2.0〜5.0[mm]の範囲内が好ましい。
【0073】
材料の厚みを上記範囲としている理由は、各材料の最小値よりも小さい厚みでは二重管構造体を保持するための強度が不足し、逆に最大値より大きい厚みでは発光管の発光中心位置の設計が困難になるからである。また、厚みが5.0[mm]を超えると点灯回路ユニットを収容するスペースが不足するなどの不具合が生じる。
4.ホルダの外周面と外管の内周面との関係
上記試験では、ホルダの外周面と外管の開口端部部分の内周面とが、ホルダの外周面の全周に亘って無機接着剤で接合されていたが、例えば、ホルダの外周面の一部が外管の内周面に接合されておらず、外管の内周面に当接する状態であっても、本発明に係るホルダの材料の選定基準は利用できる。
【0074】
或いは、ホルダの外周面の全部が外管の内周面に接合されておらず、外管の内周面に当接する状態であっても、本発明に係るホルダの材料の選定基準は利用できる。
また、ホルダの外周面の全部が外管の内周面に当接する場合は、ホルダの外周面の全部が外管の内周面に密着し、ホルダと外管とが機械的に嵌合している場合であったり、ホルダの外周面の全部が外管の内周面に密着した状態でホルダと外管とがケースに接合している場合であったりする。なお、言うまでもなく、このような場合であっても本発明に係るホルダの材料の選定基準は利用できる。
5.その他
本発明のメタルハライドランプは、銅鉄式のような安定器を含む照明器具にも適用することができる。
【0075】
このようにランプの取替え対象となる既存の水銀灯用照明器具が安定器を含んでいる場合、本発明のメタルハライドランプに内蔵している点灯回路を保護するという観点からは、点灯回路の入力部にパルス保護回路を付設することが好ましい。
【0076】
なぜならば、例えば、点灯中のメタルハライドランプが立ち消えるなどして内蔵している点灯回路への入力電流が急激に遮断された場合には、インダクタンス成分を含む安定器から高電圧のパルスが発生することがあり、このパルス電圧により回路素子(電子部品)が破損するおそれがあるが、上記のようにパルス保護回路を付設すると、パルス電圧による回路素子の破損を抑えることができるためである。また、メタルハライドランプが立消えたりなどした場合であっても、点灯回路への入力電流が急激に遮断されることなく、緩やかに減少させるための保護回路を設けることによって、照明器具側の安定器からのパルス電圧を低下させることもできるからである。
【0077】
また、本発明においては、点灯回路の入力部にACフィルタ及び/またはアクティブフィルタ回路(以下、「フィルタ回路」という。)を付設させてもよい。一般的に、水銀灯用照明器具に使用される安定器はインダクタであることが多く、点灯回路への入力電流が高調波成分を多く含む場合、本来の入力電流波形を歪ませることがある。その点、これらのフィルタ回路を付設することにより、当該フィルタ回路の下流側の他の回路(例えば、実施の形態におけるAC/DC変換部である)への入力電流の高調波成分を低減することができる。
【0078】
そうすると、安定器によって電流波形を歪ませられることなく、ランプ発光管に対して適正な電流を安定して供給することができるので、結果としてランプのちらつきのような諸問題を回避することができる。
【0079】
ところで、既存の水銀灯用照明器具は、既に数十年という長期にわたって使用されている場合に銅鉄安定器を構成しているコイルの劣化などが懸念される。
その点、本発明のメタルハライドランプはセラミック発光管を使用しているため、水銀灯の2倍程度の効率を得ることができる。そのため、既存の水銀灯に対して同等の光束(光量)を得るのであれば、およそ半分の電力/電流にすることができる。このため、既存の安定器が長期間にわたって使用されていても、本発明のメタルハライドランプに交換した後は、安定器の電流負荷を低減することができるため、コイル劣化を抑制させる効果や発煙などの不具合を抑制することができる。
【0080】
さらに、水銀灯を使用している際、コイル劣化により安定器が短絡状態になった場合は水銀灯の発光管が爆発することがあるが、本発明のメタルハライドランプであれば、内蔵された点灯回路により電流が制限されているため、発光管が爆発するなどの危険性もない。そのため、本発明のメタルハライドランプを既存の水銀灯用照明器具に適用する場合には、メタルハライドランプとして既存の水銀灯よりも低電力タイプのものを選択することが好ましい。このように低電力タイプを選択すると、取替え対象となる水銀灯よりもメタルハライドランプが低電流であるため、既存の照明器具の安定器が長期間にわたって使用されていても、メタルハライドランプ内の点灯回路に対する電流負荷が低いので、照明器具側のコイルに劣化等が生じている場合でも発煙などの不具合を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、点灯時の発光管の熱により、外管におけるホルダとの接合部に割れが発生するのを防ぐのに有効である。そのため、本発明に係るメタルハライドランプは、例えば、水銀灯代替光源として、既存の水銀灯用の照明器具にそのまま装着して用いる光源として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 メタルハライドランプ
12 ケース部
14 口金部
16 外管
24 点灯回路
40 ホルダ
42 二重管構造体
44 発光管
46 内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光物質としてハロゲン化金属が封入された発光管及び当該発光管を気密封止する内管を有する二重管構造体と、
前記二重管構造体を保持するホルダと、
前記発光管を点灯させる点灯回路と、
前記点灯回路を内部に収納するケースと、
前記ケースに取着され且つ硬質ガラス材料で作られており、前記二重管構造体を収納する外管と、
を有し、
ホルダの外周面の一部又は全部が前記外管の内周面に直接的又は間接的に当接し、
当該ホルダの材料は、当該材料の熱膨張係数[/℃]をy、熱伝導率[W/(m・K)]をxとそれぞれした場合に、
y×10 ≦ 250×e−0.007x
を満たす
ことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記ホルダの材料は、さらに、
y×10 ≦ 250×e−0.04x
を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記ホルダは、セラミック、ガラス、樹脂のいずれか1種の材料を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−282955(P2010−282955A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96260(P2010−96260)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】