説明

メタルハライドランプ

【課題】発光管が確実に気密封止され、そして電極棒を支持している給電部材が高精度にて位置決めされたメタルハライドランプを提供すること。
【解決手段】内部に水銀とメタルハライドとを収容している透光性の発光部11aと、発光部の両側部の各々に形成された側管部11bとからなるセラミック材料製の発光管11、各側管部に挿入されている、発光部側の端部に電極棒12が接続され、他方の側の端部がリード線13に接続された給電部材14、リード線の周囲に固定された筒状給電部材位置決め具15、そして給電部材の外周面と側管部との間の間隙部を気密封止する封止材16を含み、上記位置決め具15がニオブもしくはニオブ合金から形成され、位置決め具の底面15bが側管部の端面11cと対向し、封止材16が上記間隙部から、位置決め具の内周面とリード線外周面との間隙部、そして位置決め具の底面と側管部端面との対向面全面にまで延びているメタルハライドランプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舞台や撮影スタジオの照明装置の光源として特に有利に用いることができるメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
メタルハライドランプ(メタルハライド放電灯と呼ばれることもある)は、太陽光に近い発光色を有し、またハロゲンランプと比較して高輝度であるという利点を有することから、舞台や撮影スタジオの照明装置の光源として、あるいはホテルやレストランなどの建物の照明装置の光源として広く用いられている。
【0003】
メタルハライドランプは、中央領域にて膨出し、内部に水銀とメタルハライドとを収容している透光性の発光部と、発光部の両側部のそれぞれに形成されている側管部とからなる発光管、側管部の各々に挿入されている、発光部側の端部に電極棒が接続され、他方の側の端部がリード線に接続された給電部材、そして各々の給電部材の外周面と側管部の間に形成されている間隙部を気密状態に封止する封止材から構成されている。
【0004】
メタルハライドランプが備える一対の電極棒に、それぞれ給電部材とリード線とを介して電気エネルギーを供給することにより、これらの電極棒の間にアーク放電が発生し、この放電の発光が照明に利用される。
【0005】
発光管を、セラミック材料から形成することは知られている。セラミック材料は、発光管の内部に収容されるメタルハライドに対して化学的に安定な性質を有しているからである。
【0006】
セラミック製の発光管の側管部と、その内部に収容された給電部材の外周面との間に形成される間隙部は、発光管の外部に水銀やメタルハライドが漏れ出さないよう、封止材を用いて気密状態にて封止される。封止に際しては、メタルハライドランプの品質を安定させる(例えば、発光色の変動を抑制する)ため、各給電部材を位置決めして、給電部材に支持された電極棒を予め定められた位置に正確に配置することが好ましい。
【0007】
特許文献1(第2図)には、給電用リード(リード線)8の周囲に段付きキャップ10が固定されたメタルハライドランプが開示されている。段付きキャップ10は、例えば、ニオブから形成され、キャピラリ(側管部)3の内部に挿入される電極アセンブリ4(電極5、中間材6、サーメット7、およびリード8からなる構造物)の位置を規制する。段付きキャップ10は、キャピラリの端部を囲む太筒部11を備えている。
【0008】
特許文献2(第1図)には、キャピラリ(側管部)2に収容されたサーメット(給電部材)6の頂部に、キャピラリ2の端面に接触可能なサイズのヘッド部9が一体に形成されたメタルハライドランプが開示されている。ヘッド部9により、電極アセンブリ3(電極4、中間材5、サーメット6、およびリード7からなる構造物)の位置決めが行なわれる。
【0009】
また、上記ヘッド部9には、リード7の挿入穴11と、すり割り溝13とが形成されている。ヘッド部9がキャピラリ2の端面に接触配置された状態にて、封着用ガラスの溶融物を上記すり割り溝13に流し込むことにより、サーメット6の外周面とキャピラリ2との間に形成されている間隙部と、ヘッド部9の挿入穴11とリード7の外周面との間隙部が、それぞれ封着用ガラスによって気密状態にて封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−129875号公報(第2図)
【特許文献2】特開2009−231220号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、発光管が確実に気密封止され、そして電極棒を支持している給電部材が高精度にて位置決めされたメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、中央領域にて膨出し、内部に水銀とメタルハライドとを収容している透光性の発光部と、発光部の両側部のそれぞれに形成されている側管部とからなるセラミック材料製の発光管、側管部の各々に挿入されている、発光部側の端部に電極棒が接続され、他方の側の端部がリード線に接続された給電部材、リード線の給電部材に近接する位置の周囲に固定された筒状給電部材位置決め具、そして給電部材の外周面と側管部の間に形成されている間隙部を気密状態に封止する封止材を含むメタルハライドランプであって、上記筒状給電部材位置決め具がニオブもしくはニオブ合金から形成されていること、筒状給電部材位置決め具の底面が側管部の端面と対向していること、そして封止材が、給電部材の外周面と側管部の間に形成されている間隙部から、筒状給電部材位置決め具の内周面とリード線外周面との間隙部、そして筒状給電部材位置決め具の底面と側管部端面との対向面全面にまで延びていることを特徴とするメタルハライドランプにある。
【0013】
本発明のメタルハライドランプにおいて、筒状給電部材位置決め具の内周部は、リード線の外周径に略一致する頂面側の小径内周部と、この小径内周部より直径が大きい底面側の大径内周部とを含むことが好ましい。筒状給電部材位置決め具の小径内周部の周囲の筒部の外径は、大径内周部の周囲の筒部の外径よりも小さく形成されていることが更に好ましい。
【0014】
本発明はまた、下記の(1)〜(3)の工程を含む上記メタルハライドランプの製造方法にもある。
(1)水銀及びメタルハライド、中央領域にて膨出する透光性の発光部と、この発光部の両側部のそれぞれに形成されている側管部とからなるセラミック材料製の発光管、一方の端部に電極棒が接続され、他方の側の端部がリード線に接続された一対の給電部材、それぞれのリード線の給電部材に近接する位置に固定されたニオブもしくはニオブ合金から形成されている筒状給電部材位置決め具、そして環状に成型された一対の封止材成型体を用意する工程。
(2)筒状給電部材位置決め具が固定されたリード線と電極棒とが接続されている給電部材を、電極棒の側から、環状に成型された封止材成型体、次いで発光管の側管部に挿入し、側管部の端面と筒状給電部材位置決め具の底面とが封止材成型体を介して対向接触する位置に配置する工程。
(3)筒状給電部材位置決め具の周囲に熱エネルギーを供給することにより、封止材成型体を溶融させ、次いで、この溶融物を給電部材の外周面と側管部の間に形成されている間隙部、筒状給電部材位置決め具の内周面とリード線外周面との間隙部、そして筒状給電部材位置決め具の底面と側管部端面との対向面全面にまで移動させたのち、冷却する工程。
【0015】
なお、本明細書において「透光性」とは波長が400〜4000nmの範囲にある光の透過率が70%以上であることを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のメタルハライドランプは、簡単な構成の筒状給電部材位置決め具によって、発光管が確実に気密封止され、そして電極棒を支持している給電部材が高精度にて位置決めされている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のメタルハライドランプの構成例を示す断面図である。
【図2】図1のメタルハライドランプ10の筒状給電部材位置決め具15の近傍の部位の拡大図である。
【図3】図2に記入した切断線III−III線に沿って切断したメタルハライドランプ10の断面図である。
【図4】図1〜図3に示すメタルハライドランプ10を製造するに際して、給電部材14を、側管部11bの端面11cと筒状給電部材位置決め具15の底面15bとが封止材成型体26を介して対向接触する位置に配置した状態を示す図である。
【図5】本発明のメタルハライドランプの別の構成例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明のメタルハライドランプの更に別の構成例を示す拡大断面図である。
【図7】本発明のメタルハライドランプの更に別の構成例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のメタルハライドランプを、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明のメタルハライドランプの構成例を示す断面図である。図2は、図1のメタルハライドランプ10の筒状給電部材位置決め具15の近傍の部位の拡大図である。そして図3は、図2に記入した切断線III−III線に沿って切断したメタルハライドランプ10の断面図である。なお、図1及び図2のメタルハライドランプ10は、発光管11、筒状給電部材位置決め具15、および封止材16のみを断面として図示してある(後の図5〜図7についても同様である)。
【0019】
図1〜図3に示すメタルハライドランプ10は、中央領域にて膨出し、内部に水銀とメタルハライドとを収容している透光性の発光部11aと、発光部11aの両側部のそれぞれに形成されている側管部11bとからなるセラミック材料製の発光管11、各々の側管部11bに挿入されている、発光部11aの側の端部に電極棒12が接続され、他方の側の端部がリード線13に接続された給電部材14、リード線13の給電部材14に近接する位置の周囲に固定された筒状給電部材位置決め具15、そして給電部材14の外周面と側管部11bの間に形成されている間隙部を気密状態に封止する封止材16から構成されている。
【0020】
メタルハライドランプ10は、筒状給電部材位置決め具15がニオブから形成されていること、筒状給電部材位置決め具15の底面15bが側管部11bの端面11cと対向していること、そして封止材16が、給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部から、筒状給電部材位置決め具15の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間隙部、そして筒状給電部材位置決め具15の底面15bと側管部端面11cとの対向面全面にまで延びていることに特徴がある。
【0021】
発光管(バルブ)11は、発光部(管状棒出部)11aとその両側の側管部11bとから構成されている。発光管11は、例えば、アルミナに代表されるセラミック材料から形成される。
【0022】
発光部11aと側管部11bとは、それぞれ独立した部品として構成されていてもよい。発光部11aは、その内部で発生するアーク放電の光を外部に取り出すため透光性を示すことが必要である。
【0023】
発光部11aには、水銀及びメタルハライドが収容される。メタルハライドの例としては、Na、Tl、Th、In、Sn、Si、Sc、Dy、Ho、Tmなどの金属と沃素または臭素などのハロゲンとの化合物が挙げられる。発光部11aには、アルゴンなどの希ガスを収容することができる。
【0024】
発光管11の各側管部11bには、給電部材14が挿入されている。給電部材14の発光部11aの側の端部は電極棒12に接続され、そして他方の側の端部はリード線13に接続されている。電極棒12、給電部材14、そしてリード線13は、導電性材料から形成される。
【0025】
電極棒12は、発光部に収容されるハロゲンに対して化学的に安定な金属や合金から形成することが好ましく、その代表例としては、タングステン、およびモリブデンが挙げられる。
【0026】
給電部材14の外周面14aと側管部11bとの間に形成されている間隙部は、封止材16を用いて気密状態に封止される。封止材としては、公知のフリットガラスを用いることができる。
【0027】
側管部11bは、ランプ点灯時に生じるアーク放電の放射熱が付与され、あるいは発光部11aに付与されたアーク放電の放射熱が伝わり、給電部材14及び封止材16と共に高温になる。この際に、側管部11b、給電部材14、および封止材16の熱膨張率が互いに大きく異なると、各々にて発生する熱応力によって、封止材16あるいは側管部11bにクラックが発生することがある。
【0028】
このようなクラックの発生を防止するため、封止材16としては、発光管11の側管部11bを形成するセラミック材料の熱膨張率に近似する熱膨張率を示すフリットガラス、例えば、Al23、SiO2、およびDy23の混合物を用いることが好ましい。
【0029】
同様の理由により、給電部材14は、ニオブ、タンタル、あるいはサーメット(金属あるいは合金と、セラミック材料との複合材料)から形成することが好ましい。
【0030】
サーメットに用いるセラミック材料としては、側管部を形成するセラミック材料(代表例、アルミナ)を用いることが好ましい。サーメットは、例えば、セラミック材料の含有量を増大させることにより、給電部材14に必要とされる導電性を確保した状態で、その熱膨張率を側管部11bを形成するセラミック材料の熱膨張率に近似する値に調節することができる。従って、サーメットに用いる金属あるいは合金としては、上記のハロゲンに対して化学的に安定な金属あるいは合金を用いることが好ましい。
【0031】
図1〜図3に示すメタルハライドランプ10の発光管11(発光部11a及び側管部11b)は、アルミナ(熱膨張率:8.1×10-6/K)から形成され、封止材16は、Al23、SiO2、およびDy23の混合物からなるフリットガラス(熱膨張率:6.5×10-6/K)から形成され、そして給電部材14は、モリブデンとアルミナとのサーメット(熱膨張率:7.7×10-6/K)から形成されている。
【0032】
リード線13の給電部材14に近接する位置の周囲(リード線13の給電部材14の側の端部の周囲)には、筒状の給電部材位置決め具(筒状給電部材位置決め具)15が固定されている。
【0033】
図3に示すように、筒状給電部材位置決め具15の透孔15aの内周面は、リード線13の外周面に部分的に接触している。筒状給電部材位置決め具15とリード線13とは、両者の接触部にて互いに溶接されて固定されている。なお、筒状給電部材位置決め具の透孔の内周面とリード線の外周面とは互いに周方向に隙間なく密着していてもよい。
【0034】
前記のように、メタルハライドランプ10は、筒状給電部材位置決め具15がニオブから形成されていること、筒状給電部材位置決め具15の底面15bが側管部11bの端面11cと対向していること、そして封止材16が、給電部材14の外周面14aと側管部11bとの間に形成されている間隙部から、筒状給電部材位置決め具15の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間隙部、そして筒状給電部材位置決め具15の底面15bと側管部端面11cとの対向面全面にまで延びていることに特徴がある。
【0035】
筒状給電部材位置決め具15は、ニオブまたはニオブ合金から形成され、その底面15bの側から伝達した発光管11の側管部11bの熱を放熱あるいはリード線13に伝達させ、側管部11bの温度上昇を抑制する効果を発揮する。ニオブまたはニオブ合金は、側管部を形成するセラミック材料に近似する熱膨張率を示す。このため、側管部11bの端面11cと筒状給電部材位置決め具15の底面15bとの間にある封止材におけるクラックの発生が抑制される。
【0036】
図1〜図3に示す筒状給電部材位置決め具15は、ジルコニウムを1質量%含有するニオブ合金(熱膨張率:7.1×10-6/K)から形成されている。ジルコニウムを含有するニオブ合金を用いると、筒状給電部材位置決め具15の機械加工が容易になる。
【0037】
そして、筒状給電部材位置決め具15が、その底面15bが側管部11bの端面11cと対向する構成を有していると、後に詳しく説明するように、発光管11の側管部11bを気密状態にて封止する際に、筒状給電部材位置決め具15の底面15bと側管部11bの端面11cとの間での封止材(後述の封止材成型体)の溶融物の滞留が抑制される。このため、筒状給電部材位置決め具15と側管部11bとを、両者が封止材を介して十分に接近した状態にて固定することができる。これにより、電極棒12を支持している給電部材14が高精度にて位置決めされるため、メタルハライドランプ10の品質が安定する(例えば、発光色の変動が抑制される)。
【0038】
更に、メタルハライドランプ10では、給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部の封止が仮に不十分になった場合であっても、筒状給電部材位置決め具15の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間隙部、そして筒状給電部材位置決め具15の底面15bと側管部端面11cとの対向面全面にまで延びている封止材により、発光管11を確実に気密封止することができる。
【0039】
発光管11の気密封止を更に確実なものとするため、給電部材14に接続するリード線13を、ニオブまたはニオブ合金から形成することが更に好ましい。これにより、筒状給電部材位置決め具15の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間にある封止材におけるクラックの発生が抑制される。
【0040】
次に、図1〜図3に示すメタルハライドランプ10を代表例として、本発明のメタルハライドランプの製造方法について説明する。
【0041】
メタルハライドランプ10の製造方法は、下記の(1)〜(3)の工程を含むことに特徴がある。
(1)水銀及びメタルハライド、中央領域にて膨出する透光性の発光部11aと発光部11aの両側部のそれぞれに形成されている側管部11bとからなるセラミック材料製の発光管11、一方の端部に電極棒12が接続され、他方の側の端部がリード線13に接続された一対の給電部材14、それぞれのリード線13の給電部材14に近接する位置に固定されたニオブもしくはニオブ合金から形成されている筒状給電部材位置決め具15、そして環状に成型された一対の封止材成型体(図4:26)を用意する工程。
【0042】
(2)筒状給電部材位置決め具15が固定されたリード線13と電極棒12とが接続されている給電部材14を、電極棒12の側から、環状に成型された封止材成型体、次いで発光管11の側管部11bに挿入し、図4に示すように側管部11bの端面と筒状給電部材位置決め具15の底面15bとが封止材成型体26を介して対向接触する位置に配置する工程。
【0043】
(3)筒状給電部材位置決め具15の周囲に熱エネルギーを供給することにより、封止材成型体26を溶融させ、次いで、この溶融物を給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部、筒状給電部材位置決め具15の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間に形成されている間隙部、そして筒状給電部材位置決め具15の底面と側管部11bの端面11cとの対向面全面にまで移動させたのち、冷却する工程。
【0044】
上記(3)の工程において、封止材成型体の溶融物は、給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部と、筒状給電部材位置決め具15の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間に形成されている間隙部とのそれぞれに毛細管現象によって徐々に移動する。
【0045】
封止材成型体26の溶融物が移動する際に、筒状給電部材位置決め具15が、仮にその底面の側に側管部11bの外周面を覆うことのできる筒状の部位(例えば、上記特許文献1の段付きキャップ10の太筒部11に相当する部位)を備えていると、この筒状の部位により、側管部11bの外周側への溶融物の移動が妨げられる。その一方で、上記各間隙に毛細管現象によって単位時間当たりに流入可能な溶融物の量には限りがある。このため、位置決め具15の底面15bと側管部11bの端面11cとの間に封止材成型体26の溶融物が滞留することがある。その結果、筒状給電部材位置決め具15と側管部11bとが、滞留している溶融物を介して互いに十分に接近していない状態で、極端な場合には、滞留している溶融物によって位置決め具15が上方に(側管部の側とは逆側に)僅かに移動された状態で、互いに固定されることがある。このため、電極棒12を支持している給電部材14の位置決めの精度が低下することがある。
【0046】
これに対して、筒状給電部材位置決め具15が、側管部11bの端面11cに対向する底面15bを有する(上記のような筒状の部位を有していない)構成にあると、封止材成型体26の溶融物は、給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部と、筒状給電部材位置決め具15の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間に形成されている間隙部とのそれぞれに毛細管現象によって徐々に移動し、そして各間隙に移動することのできない溶融物は側管部の外周側へと円滑に移動するため、筒状給電部材位置決め具15と側管部11bとが、封止材成型体26の溶融物を介して互いに十分に接近した状態にて固定される。このため、電極棒12を支持している給電部材14が高精度にて位置決めされる。
【0047】
なお、上記工程(2)及び工程(3)の工程に従い、メタルハライドランプの発光管に備えられた他方の側管部も気密状態に封止される。
【0048】
発光管11の各側管部11bを封止する順序に特に制限はないが、通常、一方の側管部11bを上記工程(2)及び工程(3)の実施により封止したのち、他方の側管部11bを上記工程(2)及び工程(3)に従って封止する。また、例えば、発光管11の一方の側管部11bに上記工程(2)の実施により給電部材14を挿入し、次いで他方の側管部11bに上記工程(2)に従って給電部材14を挿入し、そして上記の一方の側管部11bを上記工程(3)の工程の実施により封止したのち、上記の他方の側管部を上記工程(3)に従って封止することもできる。なお、発光管11の両者の側管部11bを同時に封止することもできる。また、水銀及びメタルハライドは、両者の側管部11bが封止される前の任意のタイミングにて発光部11aに収容することができる。
【0049】
図5は、本発明のメタルハライドランプの別の構成例を示す拡大断面図である。
【0050】
図5のメタルハライドランプ50の構成は、筒状給電部材位置決め具55の内周部が、リード線13の外周径に略一致する頂面55aの側の小径内周部55cと、小径内周部55cより直径(内径)が大きい底面55bの側の大径内周部55dとを有していること以外は、図2のメタルハライドランプ10と同様である。
【0051】
図5のメタルハライドランプ50では、発光管11の側管部11bを封止する際に、封止材成型体の溶融物が、筒状給電部材位置決め具55と側管部11bとが溶融物を介して互いに十分に接近した状態にて、筒状給電部材位置決め具55の大径内周部55dに収容保持され、次いで給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部と、筒状給電部材位置決め具55の内周面15cとリード線13の外周面13aとの間に形成されている間隙部とのそれぞれに毛細管現象によって徐々に移動する。従って、上記の各間隙部、特に給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部に十分な量の封止材成型体の溶融物を流入させ、側管部11bを確実に封止することができる。また、大径内周部55dの内周側の容積の設定により、上記の各間隙部に流入させる封止材成型体の溶融物の量を調節することができる。
【0052】
小径内周部55cの直径(内径)は、給電部材14の外径よりも小さくされていることが好ましい。これにより小径内周部55cとリード線13との間に形成される間隙が小さくなる。このため、封止材成型体の溶融物が、給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部に移動する前に、小径内周部55cとリード線13との間に形成される間隙から外部(図5にて上方)に流出し難くなる。従って、給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部に、十分で且つ安定した量の封止材成型体の溶融物を流入させることができる。
【0053】
図6は、本発明のメタルハライドランプの更に別の構成例を示す拡大断面図である。
【0054】
図6のメタルハライドランプ60の構成は、筒状給電部材位置決め具65の小径内周部65cの周囲の筒部65eの外径が、大径内周部65dの周囲の筒部65fの外径よりも小さく形成されていること、そして給電部材14とリード線13との接続部が大径内周部65dの内周側に配置されていること以外は、図5のメタルハライドランプ50と同様である。
【0055】
筒状給電部材位置決め具65の筒部65eの外径が、筒部65fの外径よりも小さくされていると、例えば、筒部65eをかしめる(塑性変形させる)ことにより、筒状給電部材位置決め具65をリード線13の周囲に簡単に固定することができる。
【0056】
また、給電部材14とリード線13との接続部が大径内周部65dの内周側に配置されていると、上記接続部がその周囲に封止材を介して配置された筒部65fによって補強される。
【0057】
図7は、本発明のメタルハライドランプの更に別の構成例を示す拡大断面図である。
【0058】
図7のメタルハライドランプ70の構成は、給電部材14とリード線13との接続部が発光管11の側管部11bに収容されていること以外は、図6のメタルハライドランプ60と同様である。
【0059】
給電部材14とリード線13との接続部を側管部11bに収容すると、封止材成型体の溶融物が、側管部11bの端部にも収容保持される。このため、給電部材14の外周面14aと側管部11bの間に形成されている間隙部に流入させる封止材成型体の溶融物の量を更に増加させることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 メタルハライドランプ
11 発光管
11a 発光部
11b 側管部
11c 側管部の端面
12 電極棒
13 リード線
13a リード線の外周面
14 給電部材
14a 給電部材の外周面
15 筒状給電部材位置決め具
15a 透孔
15b 底面
15c 内周面
16 封止材
26 封止材成型体
50 メタルハライドランプ
55 筒状給電部材位置決め具
55a 頂面
55b 底面
55c 小径内周部
55d 大径内周部
60 メタルハライドランプ
65 筒状給電部材位置決め具
65a 頂面
65b 底面
65c 小径内周部
65d 大径内周部
65e、65f 筒部
70 メタルハライドランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央領域にて膨出し、内部に水銀とメタルハライドとを収容している透光性の発光部と、該発光部の両側部のそれぞれに形成されている側管部とからなるセラミック材料製の発光管、該側管部の各々に挿入されている、発光部側の端部に電極棒が接続され、他方の側の端部がリード線に接続された給電部材、リード線の給電部材に近接する位置の周囲に固定された筒状給電部材位置決め具、そして給電部材の外周面と側管部の間に形成されている間隙部を気密状態に封止する封止材を含むメタルハライドランプであって、
上記筒状給電部材位置決め具がニオブもしくはニオブ合金から形成されていること、筒状給電部材位置決め具の底面が側管部の端面と対向していること、そして封止材が、給電部材の外周面と側管部の間に形成されている間隙部から、筒状給電部材位置決め具の内周面とリード線外周面との間隙部、そして筒状給電部材位置決め具の底面と側管部端面との対向面全面にまで延びていることを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
筒状給電部材位置決め具の内周部が、リード線の外周径に略一致する頂面側の小径内周部と該小径内周部より直径が大きい底面側の大径内周部とを含む請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
筒状給電部材位置決め具の小径内周部の周囲の筒部の外径が、大径内周部の周囲の筒部の外径よりも小さく形成されている請求項2に記載のメタルハライドランプ。
【請求項4】
下記の工程を含む請求項1に記載のメタルハライドランプの製造方法:
(1)水銀及びメタルハライド、中央領域にて膨出する透光性の発光部と該発光部の両側部のそれぞれに形成されている側管部とからなるセラミック材料製の発光管、一方の端部に電極棒が接続され、他方の側の端部がリード線に接続された一対の給電部材、それぞれのリード線の給電部材に近接する位置に固定されたニオブもしくはニオブ合金から形成されている筒状給電部材位置決め具、そして環状に成型された一対の封止材成型体を用意する工程;
(2)筒状給電部材位置決め具が固定されたリード線と電極棒とが接続されている給電部材を、電極棒の側から、環状に成型された封止材成型体、次いで発光管の側管部に挿入し、側管部の端面と筒状給電部材位置決め具の底面とが封止材成型体を介して対向接触する位置に配置する工程;および
(3)筒状給電部材位置決め具の周囲に熱エネルギーを供給することにより、封止材成型体を溶融させ、次いで、該溶融物を給電部材の外周面と側管部の間に形成されている間隙部、筒状給電部材位置決め具の内周面とリード線外周面との間隙部、そして筒状給電部材位置決め具の底面と側管部端面との対向面全面にまで移動させたのち、冷却する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−43542(P2012−43542A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180996(P2010−180996)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000168078)江東電気株式会社 (11)
【Fターム(参考)】