説明

メタン発酵浄化システム

【課題】外部動力による攪拌を行わず、低いコストで運用可能でありながら、処理液を円滑に循環させることができ、効率的にメタンを発酵させることのできるメタン発酵浄化装置を提供する。
【解決手段】(1)メタン発酵槽と、生成したメタンガスをメタンガス分離部10に導く導出管3と、メタンガスを分離後の処理物をメタン発酵槽に戻す戻し管4とを有し、上面は導出管接続部が最も高い位置となり、導出管3は、導出管接続部より高い位置で戻し管4と接続し、戻し管上部は、メタンガス分離部10を形成し、戻し管下部は、前記メタン発酵槽と連通すると共に、処理物投入口9をメタンガス分離部10または戻し管の上部に設けたメタン発酵浄化装置1;(2)メタン発酵浄化装置で発生したメタンガスを送気する送気装置21;(3)メタン発酵槽中に設けられた、吹込み管24;および(4)メタンガス配管25b中に設けられたメタンガス取り出し部23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタン発酵浄化システムに関し、更に詳細には、低コストで稼動させることができ、しかも硫化水素等が少なく、濃度の高いメタンガスを得ることのできるメタン発酵浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産業等における糞尿等の有機性廃棄物処理が大きな問題となっている。すなわち、浄化槽設備等で処理せず、糞尿等を環境中に廃棄することにより、悪臭が発生したり、河川、地下水、海洋汚染等の畜産公害を起こすなど悪影響を与えている。また、それ以外の生ゴミ等有機性の塵芥の処理も、現在、主に焼却、埋立等しているが、二酸化炭素の発生や、埋め立て地の問題があり、有効な処理法の開発が求められている。
【0003】
そこで近年、糞尿や生ゴミ等の有機性廃棄物等を嫌気条件下で発酵させ、発生するメタンガスを燃料として利用するメタン発酵が注目されている。このメタン発酵は、水分量の高い液状または泥状の有機性廃棄物から簡単な工程で可燃ガスとして熱エネルギーを抽出できることが最大の特徴であるといえる。また、活性汚泥法のような曝気のための電力を要せず、さらに生成ガスが燃料ガスとして回収されるので省エネルギープロセスであるといえる。
【0004】
従来、このメタン発酵を利用した浄化槽が、沖縄県だけでも那覇、名護、西原等の下水処理場で利用されているが、これらには建設コストが高い、ランニングコストが高い、装置が複雑で、維持管理が難しい等の欠点があり、公的な施設であればともかく、一般の畜産農家や、小規模企業では利用できるものではなかった。
【0005】
本発明者は先に、一般の畜産農家が負担可能な安価で維持管理の簡単な糞尿処理設備として嫌気式メタン発酵浄化槽をいくつか提案した(特許文献1)。これらのメタン発酵浄化槽のうち、特許文献1のものは、メタン発酵槽中に蓄積したメタンの間欠的な噴出力を用いて生成するスカム層を破壊、除去使用とするものであり、しかも、外部動力を要さないという特徴をも有するものであった。しかしながら、このものは低コストで運用できるものの、処理液の円滑な循環などの点で未だ十分でない点もあり、更なる改善が求められていた。
【0006】
また本発明者は、別に、図1に示すような、メタン発酵により発生したメタンガスの力を利用し、動力手段を要することなくメタン発酵槽内で処理物の円滑な循環を図った発酵浄化装置も発明したが(特願2009−215125)、このものには、発生したガスの圧力が低い場合には、硫化水素の脱硫がうまく行えないとか、処理物量が少ない場合には、処理液の循環がうまく行かないなどまだ改良の余地があった。
【0007】
すなわち、図1のメタン醗酵浄化装置1は、メタン発酵槽2中で生じたメタンガスの気泡が、処理物との混合物(以下、「含メタン処理物」という)の状態で、その浮力により、上部へと浮上を開始する。そして、メタン発酵槽上部5は、導出管接続部6が最も高い位置となるよう形成されているので、含メタン処理物はすべて導出管接続部6へ集まることになる。
【0008】
そして、この導出管接続部6は、斜め上方に向かって伸びている導出管3およびこれと続く戻し管4と接続しているから、更に含メタン処理物は、導出管3を通って上方に移動し、戻し管4上部に設けられたメタンガス分離部10に至り、メタンガスと処理物に分かれる。
【0009】
このようにしてメタンガス分離部10において分離されたメタンガスは、メタンガス配管(図示せず)を通じて燃料等として供給される。一方、メタンガスが分離された処理物は、メタンガス気泡が無くなったことによる比重の増加と、また、継続的に導出管3を通って上方に移動して来る含メタン処理物の圧力によって、戻し管4を下に向かって流下し、戻し管出口8を通ってメタン発酵槽2に戻る。
【0010】
このようなメカニズムが働くため、上記メタン発酵浄化装置では外部動力を要せずに処理物を循環、撹拌することが可能となる。更に、処理物投入口9から、糞尿等を投入する場合には、それらが戻り管4を流れ落ちるため、この力によって更に循環、撹拌する力がより強くなる。特に、メタンガス分離部10に処理物投入口9を設けた場合は、処理物上にスカムが発生しても投入される処理物によって戻し管4に戻され、メタン発酵槽へと戻ることになるものである。
【0011】
しかしながら、図1の装置では、メタン発酵槽2で発生したメタンガスは、そのままの状態でメタンガス分離部10からメタンガス配管へ供給されるため、圧力が低く、発生ガス中には0.2%程含まれる硫化水素ガスを除去しにくいという問題があった。また、前記のように、含メタン処理物は、導出管3を通って上方に移動し、戻し管4上部に設けられたメタンガス分離部10まで運ばれるわけであるが、発生するメタンガスの量が少なすぎると導出管3中での上方へ向かっての流れが弱く、循環がスムーズに行かなくなるおそれがあるので、ある程度の大きさのメタン発酵槽とする必要があり、小型化がしにくいという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−197696号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、図1に示すような低いコストで運用可能なメタン発酵浄化槽を利用しながら、処理量が少なくても処理液を円滑に循環させて効率的にメタンを発酵させることができ、しかも発生したメタンを脱硫し、ある程度の高い圧力のものとして供給することのできるメタン発酵浄化システムの提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記図1に示すメタン発酵浄化槽の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、メタンガス分離部において分離されたメタンガスを再度発酵槽に戻すようにすれば、メタンガスの濃度を高めることが可能であると共に、メタン発酵槽内の処理物をより円滑に循環させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち本発明は、
(1)メタン発酵槽と、当該メタン発酵槽で生成するメタンガスを、処理物とともにメ
タンガス分離部に導く導出管と、メタンガスを分離した後の処理物を前記メタン発酵
槽に戻す戻し管とを有し、前記メタン発酵槽の上面は、前記導出管接続部が最も高い
位置となるよう形成され、当該導出管は、少なくとも前記導出管接続部より高い位置
において、前記戻し管と接続し、前記戻し管の上部は、メタンガス分離部を形成し、
前記戻し管の下部は、前記メタン発酵槽と連通すると共に、処理物投入口を前記メタ
ンガス分離部または戻し管の上部に設けたメタン発酵浄化装置;
(2)前記メタン発酵浄化装置のメタンガス分離部とメタンガス配管で連通し、メタン ガスを送気する送気装置;
(3)メタン発酵槽中に設けられ、前記送気装置と連通し、メタン発酵槽中にメタンガ
スを吹き込む吹込み管;および
(4)メタンガス配管の何れかに設けられたメタンガス取り出し部
を有することを特徴とするメタン発酵浄化システムである。
【0016】
また本発明は、メタンガス分離部と送気装置の間、もしくは送気装置の後ろに脱硫装置を設けた前記のメタン発酵浄化システムである。
【0017】
更に本発明は、メタン発酵槽上面が、導出管接続部を頂点とする円錐もしくは四角錐型の形状であるか、導出管接続部に向かって上ってゆく片流れ屋根の形状である前記のメタン発酵浄化システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のメタン発酵浄化システムは、スカムの発生をもたらすことなく、嫌気状態で処理液を円滑に発酵槽内で循環させることができ、しかも硫化水素含有量の少ない高濃度のメタンを得ることができるものである。
【0019】
また、上記システムの、送気装置の前段または後段に脱硫装置を設置すれば、より純度の高いメタンガスが得られ、種々の目的に利用可能することができる。
【0020】
従って、本発明によるメタン発酵浄化システムは、有機性廃棄物の嫌気性メタン発酵浄化処理を、より簡便に、低コスト、省エネルギーで実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明者が先に開発したメタン発酵浄化装置の一実施態様を模式的に示した図面である。
【図2】本発明のメタン発酵浄化システムで使用するメタン発酵浄化装置の一実施態様を模式的に示した図面である。
【図3】本発明の一態様であるメタン発酵浄化システムの概要を示す図面である。
【図4】本発明の別の態様であるメタン発酵浄化システムの概要を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のメタン発酵浄化システムのいくつかの実施態様を示す図と共に本発明を説明する。
【0023】
図2は、本発明のメタン発酵浄化システムで用いるメタン発酵浄化装置の基本的構成を模式的に示した図面である。図中、1はメタン発酵浄化装置、2はメタン発酵槽、3は導出管、4は戻し管、5はメタン発酵槽上面、6は導出管接続部、7は戻し管接続部、8は戻し管出口、9処理物投入口、10はメタンガス分離部、11は汚泥排出管を示し、24は吹込み管、25aおよび25cは、それぞれメタン配管を示す。
【0024】
本発明のメタン発酵浄化装置1は、図2に示すように、メタン発酵槽2と、導出管3お、戻し管4および吹込み管24で構成されている。このうち、メタン発酵槽2は、その上面5が、導出管接続部6で最も高い位置となるよう形成されている。具体的には、メタン発酵槽上面5は、導出管接続部6を頂点とする円錐あるいは四角錐型の形状であったり、導出管接続部6に向かって片流れの屋根の形状であっても良い。
【0025】
上記した導出管接続部6から伸びる導出管3は、少なくとも導出管接続部6より高い位置において、戻し管4と接続する。すなわち、導出管3は、斜め上方に向かって伸び、この導出管3は、戻し管4と、戻し管接続部7において接続される。
【0026】
この戻し管4は、ほぼ垂直に設けられた管であり、その上部にはメタンガス分離部10を形成し、その下部は、発酵槽上部5を貫き、戻し管出口8でメタン発酵槽2と連通する。このメタンガス分離部10は、メタンガス配管25aと接続されている。
【0027】
また、前記戻し管4の上部には、処理物投入口9が設けられており、ここから糞尿、生ゴミ等が投入することができ、戻し管4から戻し管出口8を通じてメタン発酵槽2中に供給する。この処理物投入口9は、そこから処理物が流出しない位置であればどこであっても良い。例えば、図2に示すように、処理物投入口9とメタンガス分離部10とを同じ位置に設けることもできるが、その場合は、例えば、U字管12等を用いて、これらを分離し、メタンガスが漏出しないようにすることが望ましい。
【0028】
図3は、このメタン発酵浄化槽1を利用したメタン発酵浄化システムの一態様の概要を示す図面である。図中、1、3、4、9および10は、前記と同じであり、21は送気装置、22は脱硫装置、23はメタンガス取出し口、24は吹込み管、25はメタンガス配管、26は弁をそれぞれ示す。
【0029】
図3のシステムにおいて、メタンガス分離部10からメタンガス配管25aに出たメタンガスは、例えば、図3の脱硫装置22に流入し、硫化水素が取り除かれる。脱硫装置22としては、硫化水素を除去できればどのようなものであっても良く、例えば、水酸化鉄やゼオライト等を利用した脱硫装置や、水や石灰水でメタンガスを洗浄する装置等が挙げられる。なお、後記するメタンガスを処理物へ吹き込み、接触させることによっても硫化水素がある程度除去されるので、メタンガスにあまり高い精製度を求めない場合は、脱硫装置22を省略することも可能である。
【0030】
次いで、脱硫装置22で浄化されたメタンガスは、送気装置21の吸引力により、メタンガス配管25bを通じて、送気装置21に流入し、この送気装置21の力で、メタンガス配管25cから吹込み管24を通じて、メタン発酵浄化槽1に吹き込まれる。この送気装置21としては、一般の送風機(ブロワー)等を利用することができる。また、吹込み管24は、数多くの孔が形成されており、かつ処理物中に突き出しているので、送気装置21によりメタンガス配管25cを通じて送り込まれたメタンガスを気泡状態で処理物中に放出させることができ、本来のメタン発酵で生じるメタン気泡と相俟って上方への強い流れを形成させることができる。この吹込み管24としては、先端に気泡放出用穴のある棒状のものであっても良いが、先端をリング状とし、ここに気泡放出用穴を設けたものとすることが好ましい。
【0031】
また、図3のシステムにおいては、脱硫装置22と送気装置21の間の配管に、弁26を介してメタンガス取出し口23が設置されており、配管25a、脱硫装置22、配管25b、送気装置21および吹込み管24と循環するメタンガスの濃度がある程度高くなった後には、ここからメタンガスを取り出し、利用することができる。
【0032】
図4は、本発明のメタン発酵浄化システムの別の態様の概要を示す図面である。図中の各記号は、前記と同じである。本態様のメタン発酵浄化システムは、図3のものと、基本的に送気装置21と脱硫装置22の位置が異なる。すなわち、本態様のメタン発酵浄化システムでは、メタン発酵浄化槽1で発生したメタンガスは、メタンガス分離部10から、メタンガス配管25dを通り、直接送気装置21に送り込まれる。
【0033】
そして、この送気装置21中のメタンガスは、その力によりメタンガス配管25eを通じて脱硫装置22に送り込まれ、脱硫される。この脱硫されたメタンガスは、メタンガス配管25fを通じ吹込み管24から気泡状態で処理物中に放出される。
【0034】
このようにして、図4の態様のシステムでも、図3の態様のシステムと同様、メタン発酵槽2で生じたメタンガスを循環させることができるのであるが、送気装置21と脱硫装置22の位置が逆になるため、吹込み管24から吹き込まれるメタンガスの吐出圧が低くなるため、これをなるべく上部に設けることが好ましい。例えば、低い圧力でも気泡として放出できるように、メタン発酵槽2の上部5付近に吹込み管24を設けることが好ましい。
【0035】
なお、吹込み管24の位置も、吹き込んだメタンガスがなるべく長い距離を移動することで、全体の循環を良くするよう、導出管接続部6から離すことが望ましい。例えば、メタン発酵槽2の上面5が導出管接続部6を頂点とし、これに向かって片流れの屋根の形状である場合は、導出管接続部6と戻し管4は、メタン発酵槽2中での処理物が大きく循環するよう正反対の位置に設けられる(すなわち、導出管接続部6は上面5の最も高いところに設けられるのに対し、戻り管4は、上面5の最も低いところあるいはその近傍に設けられる)ことが好ましいが、上記吹込み管24もこの戻し管4に近い位置に設けてメタンガスが広く処理物中に放出され、最終的に導出管接続部6に集められるようにすることが好ましい。また、図4では、送気装置21の手前の配管に、弁26を介してメタンガス取出し口23が設置されているが、これに限らず、送気装置21の後にメタンガス取り出し口を設けても良い。
【0036】
本発明のシステムにおいて、低動力でありながら十分なメタン発酵が行われ、かつ安定に脱硫された、ある程度の濃度のメタンガスを供給し得る理由は、図3にシステムにより説明すれば次の通りである。すなわち、メタン発酵槽2中で生じたメタンガスの気泡は、処理物との混合物(以下、「含メタン処理物」という)の状態で、その浮力により、上部へと浮上を開始するが、前記のように既に生成していたメタンガスも、吹込み管24を介して処理物中に吹き込まれるため、この力も加わって、含メタン処理物はより強い力で上方へ移動する。
【0037】
そして、本発明システムで用いるメタン発酵槽2の上部5は、前記のように導出管接続部6が最も高い位置となるよう形成されているから、含メタン処理物はすべて導出管接続部6へ集まることになる。
【0038】
この導出管接続部6は、図2にも示すように、斜め上方に向かって伸びている導出管3およびこれと続く戻し管4と接続しているから、含メタン処理物は、導出管3を通って強い力で上方に移動し、戻し管4上部に設けられたメタンガス分離部10に至り、メタンガスと処理物に分かれる。
【0039】
このようにしてメタンガス分離部10において分離されたメタンガスは、配管25aおよび25bを介した送気装置21の吸引力により、配管25aから吹きこみ管24へと循環を開始する。
【0040】
一方、メタンガスが分離された処理物は、メタンガス気泡が無くなったことによる比重の増加と、また、継続的に導出管3を通って上方に移動して来る含メタン処理物の圧力によって、戻し管4を下に向かって流下し、戻し管出口8を通ってメタン発酵槽2に戻る。
【0041】
このようなメカニズムが働くため、本発明メタン発酵浄化装置では少ない外部動力により処理物を循環、撹拌させることが可能となる。更に、処理物投入口9から、糞尿等を投入する場合には、それらが戻り管4を流れ落ちるため、この力によっても循環、撹拌が図れる。特に、図2に示すように、メタンガス分離部10に処理物投入口9を設けた場合は、処理物上にスカムが発生しても投入される処理物によって戻し管4に戻され、メタン発酵槽へと戻ることになる。
【0042】
図4のシステムでも、メタンガス分離部10において分離されたメタンガスが、配管25dを介した送気装置21の吸引力により、脱硫装置22を通った後、吹きこみ管24へ吹き込まれ循環を開始する以外は、図3のシステムとほぼ同一である。
【0043】
なお、本発明のシステムは、全体として密閉された構造であることが必要である。すなわち、空気が何れかから流入すると、これがメタンガス中に混入し、メタン発酵槽中に吹き込まれた場合に、嫌気条件が維持できなくなるためである。従って、本システムで用いるメタン発酵槽2は、空気等の流入しない密閉した構造のもの、例えば鉄製のタンクや、コンクリートで構成されたものが好ましい。
【0044】
また、メタン発酵槽2の下部には、発酵での残留固形物を取り出すための汚泥排出管11を設けることが好ましい。更に、本発明のメタン発生装置を寒冷地で利用する場合には、加熱をすることが好ましい。この場合、加熱機器を導出管3や、メタン発酵槽2中に設置しても良いが、導出管3に加熱機器を設置する方が構造的に簡単であり、好ましい。
【0045】
以上のように構成された本発明によれば、発生するメタンガス気泡の浮力と、送気装置21により送り込まれるメタンガス気泡の浮力を利用して常に処理物がメタン発酵槽2、導出管3および戻り管4の間を循環するため、少ない動力で撹拌することが可能である。しかも、吹き込むメタンガスは、空気と異なり酸素を含まないものであるため、メタン発酵の嫌気条件を妨げることはない。
【0046】
また、発生したメタンガスは、メタンガス分離部10から送気装置21の吸引力に基づき、配管25から吹きこみ管24へと循環することで、濃度を高く、また圧力を高めることができるので、より安定に利用しやすいものとなる。特に、脱硫装置22を設けた本発明システムにより得られる、硫化水素を除去した純度の高いメタンガスは広く一般向けに利用しやすいものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
現在、畜産農家等では、家畜の糞と尿を分離し、糞は堆肥化し、尿は活性汚泥処理を行うことが主流であるが、本発明のメタン発酵浄化槽では糞尿の混合処理が可能なので、維持コストが大幅に低下させることができる。また、本発明のメタン発酵装置では、特段撹拌装置等を用いることはなく、送気装置を用いるだけであるので、その建設費も安価となるので、経済性が高く、畜産農家にとって極めて経済的なものである。
【0048】
また、それに限らず、小規模酒造所の廃液、レストラン等の残飯あるいはゴミ処理場の生ゴミなどを処理し、メタンガスを得ることができるので、種々の事業所において広く利用しうるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 … … メタン発酵浄化装置
2 … … メタン発酵槽
3 … … 導出管
4 … … 戻し管
5 … … メタン発酵槽上面
6 … … 導出管接続部
7 … … 戻し管接続部
8 … … 戻し管出口
9 … … 処理物投入口
10 … … メタンガス分離部
11 … … 汚泥排出管
12 … … U字管
21 … … 送気装置
22 … … 脱硫装置
23 … … メタンガス取出し口
24 … … 吹込み管
25 … … メタンガス配管
26 … … 弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)メタン発酵槽と、当該メタン発酵槽で生成するメタンガスを、処理物とともにメ
タンガス分離部に導く導出管と、メタンガスを分離した後の処理物を前記メタン発酵
槽に戻す戻し管とを有し、前記メタン発酵槽の上面は、前記導出管接続部が最も高い
位置となるよう形成され、当該導出管は、少なくとも前記導出管接続部より高い位置
において、前記戻し管と接続し、前記戻し管の上部は、メタンガス分離部を形成し、
前記戻し管の下部は、前記メタン発酵槽と連通すると共に、処理物投入口を前記メタ
ンガス分離部または戻し管の上部に設けたメタン発酵浄化装置;
(2)前記メタン発酵浄化装置のメタンガス分離部とメタンガス配管で連通し、メタン ガスを送気する送気装置;
(3)メタン発酵槽中に設けられ、前記送気装置と連通し、メタン発酵槽中にメタンガ
スを吹き込む吹込み管;および
(4)メタンガス配管の何れかに設けられたメタンガス取り出し部
を有することを特徴とするメタン発酵浄化システム。
【請求項2】
メタンガス分離部と送気装置の間に脱硫装置を設けた請求項1記載のメタン発酵浄化システム。
【請求項3】
送気装置の後に脱硫装置を設けた請求項1記載のメタン発酵浄化システム。
【請求項4】
メタン発酵槽上面が、導出管接続部6を頂点とする円錐もしくは四角錐型の形状である請求項1ないし3の何れかの項記載のメタン発酵浄化システム。
【請求項5】
メタン発酵槽上面が、導出管接続部6に向かって上ってゆく片流れ屋根の形状である請求項1ないし3の何れかの項記載のメタン発酵浄化システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−71277(P2012−71277A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219427(P2010−219427)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(598005845)
【Fターム(参考)】