説明

メッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータプログラム

【課題】解析対象となる回転体の形状モデルの対称性を抽出し、形状モデルの対称性を反映したメッシュを、指定を受け付けた対象領域に対して生成することができるメッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得し、取得した形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する。取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出し、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶する。生成した所定のメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写してメッシュを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限要素法を用いて電磁界などの数値解析を行うためのメッシュを生成するメッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータを該メッシュ生成装置として具現化するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転機は、様々な機器に組み込まれて使用される重要な部品であり、高性能化のための改良が繰り返されている。新たな回転機の設計を支援するために、設計された回転機の性能を、有限要素法を用いて数値解析することは一般的に行われている。
【0003】
有限要素法では、CADシステム等を用いて作成された、解析対象を表した二次元又は三次元の形状モデルを、複数の多角形又は多面体の要素の組み合わせとして表現したメッシュを生成し、数値解析を行う。形状モデルに対して、それぞれの要素の頂点である節点の位置の指定を受け付けてメッシュを生成する、デラウニ法等を用いて自動的にメッシュを生成する等、様々な方法が用いられている。
【0004】
一般の回転機に対する有限要素法を用いた数値解析では、節点ごとの電磁力等を計算しており、分布が連続的でないことに起因する誤差が必ず存在する。したがって、メッシュを細かく生成するほど誤差は小さくなり、計算精度が向上する。しかし、メッシュを細かく生成するほど解析のための計算時間は増大するので、生成するメッシュの細かさには限界がある。
【0005】
ところで、回転機の形状モデルには、回転対称性、鏡面対称性等の対称性が存在する。形状モデルに対称性が存在する場合には、電磁力等の分布にも対称性が存在する。そこで、例えば特許文献1では、解析対象となる回転機の形状モデルに存在する対称性を反映した対称性を有するメッシュを生成することにより、有限要素法を用いた数値解析において、メッシュの非対称性に起因する誤差を小さくし、計算時間を増大させることなく計算精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3958962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示してあるメッシュ生成方法では、形状モデルに対して対称性を有する複数の対称領域を抽出し、複数の対称領域に親子関係を指定することで対称性を有するメッシュを生成している。したがって、対称領域に対して事前に親子関係が指定されていない形状モデルに対して適用することができないという問題点があった。
【0008】
また、特許文献1に開示してあるメッシュ生成方法は、対称性がない部分の存在する形状モデルに対して適用することができず、しかも三次元の形状モデルに対しても適用することができないので、有限要素法を用いた数値解析において誤差を小さくするのに限界があった。
【0009】
さらに、特許文献1に開示してあるメッシュ生成方法では、メッシュを生成する対象は物体部分に限定されており、形状モデルに存在する空間部分を考慮していないことから、空間部分においてメッシュの対称性を保証することができないという問題点もあった。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、解析対象となる回転体の形状モデルの対称性を抽出し、形状モデルの対称性を反映したメッシュを、指定を受け付けた対象領域に対して生成することができるメッシュ生成装置、メッシュ生成方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために第1発明に係るメッシュ生成装置は、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置において、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得する形状モデル取得手段と、取得した形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する交点位置情報取得手段と、取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出する対称領域抽出手段と、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段と、生成した所定のメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するメッシュ複写手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第2発明に係るメッシュ生成装置は、第1発明において、前記形状モデルに関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル入力受付手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第3発明に係るメッシュ生成装置は、第1又は第2発明において、前記対象領域の指定を受け付ける領域指定受付手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、第4発明に係るメッシュ生成装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記対象領域に空間部分が存在する場合、該空間部分に対して、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する空間メッシュ生成手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、第5発明に係るメッシュ生成装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記回転体の高さ方向に、対称性が同一である範囲を特定する対称範囲特定手段を備え、特定した範囲について、高さ方向に、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成することを特徴とする。
【0016】
また、第6発明に係るメッシュ生成装置は、第5発明において、前記対称範囲特定手段は、前記対称領域抽出手段により抽出した複数の対称領域のうち、互いに対称性を有する対称領域の境界位置が共通である高さ方向の範囲を特定することを特徴とする。
【0017】
また、第7発明に係るメッシュ生成装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記回転体の高さ方向に、対称性が同一である範囲の指定を受け付ける対称範囲指定受付手段を備え、指定を受け付けた範囲について、高さ方向に、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成することを特徴とする。
【0018】
次に、上記目的を達成するために第8発明に係るメッシュ生成方法は、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なメッシュ生成方法において、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得するステップと、取得した形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得するステップと、取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出するステップと、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するステップと、生成した所定のメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するステップとを含むことを特徴とする。
【0019】
次に、上記目的を達成するために第9発明に係るコンピュータプログラムは、形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記メッシュ生成装置を、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得する形状モデル取得手段、取得した形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する交点位置情報取得手段、取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出する対称領域抽出手段、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段、及び生成した所定のメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するメッシュ複写手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
第1発明、第8発明及び第9発明では、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得して記憶部に記憶する。記憶してある形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得して記憶部に記憶する。記憶してある交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出し、抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する。生成した所定のメッシュを、複数の対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写することで形状モデルの対象領域にメッシュを生成する。所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報に基づいて対称領域を抽出することにより、事前に対称性を有する対称領域及び対称領域間の親子関係等を指定しておく必要がなく、親メッシュ領域として他の対称領域へ複写するメッシュを生成する対称領域を容易に選択することができる。したがって、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0021】
第2発明では、形状モデルに関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた形状モデルに関する情報を記憶部に記憶することにより、様々な形状モデルについて対称領域を抽出して、精度よく対称性を有するメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0022】
第3発明では、メッシュを生成する対象領域の指定を受け付けることにより、対称領域の抽出が困難である領域が含まれないので、精度よく対称性を有するメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0023】
第4発明では、形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に空間部分が存在する場合、該空間部分に対して、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成する。これにより、形状モデルにメッシュの連続性が途切れる空間部分が存在する場合であっても、対称性を損なうことなくメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0024】
第5発明では、回転体の高さ方向に、対称性が同一である範囲を特定し、特定した範囲について、高さ方向に、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成する。これにより、二次元の形状モデルだけでなく、特定した範囲については三次元の形状モデルに対しても容易にメッシュを生成することが可能となる。
【0025】
第6発明では、抽出した複数の対称領域のうち、互いに対称性を有する対称領域の境界位置が共通である高さ方向の範囲を特定することにより、特定した範囲については三次元の形状モデルに対しても容易にメッシュを生成することが可能となる。
【0026】
第7発明では、回転体の高さ方向に、対称性が同一である範囲の指定を受け付け、指定を受け付けた範囲について、高さ方向に、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成する。これにより、指定を受け付けた範囲については三次元の形状モデルに対しても対称性を損なうことなく容易にメッシュを生成することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
上記構成によれば、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報に基づいて対称領域を抽出することにより、事前に対称性を有する対称領域及び対称領域間の親子関係等を指定しておく必要がなく、親メッシュ領域として他の対称領域へ複写するメッシュを生成する対称領域を容易に選択することができる。したがって、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置を、CPUを用いて具現化した場合の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置のメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置のCPUのメッシュ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置の交点に関する位置情報の取得方法を説明するためのメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置の交点位置情報記憶部のデータ構成の例示図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置における、取得した回転角の分布状況の解析手順を説明する例示図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置で生成した、親メッシュの例示図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置にて親メッシュを複写して生成したメッシュの例示図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置における、指定を受け付けた対象領域を示す例示図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置の機能ブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置における、空間部分が存在する形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。
【図13】空間部分にも対称性を有するメッシュを生成した場合のコギングトルクの計算結果を示すグラフである。
【図14】本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置の機能ブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置で指定を受け付ける又は特定する、高さ方向の範囲を示す形状モデルの斜視図である。
【図16】ヨークと磁石とで構成される回転機の形状モデルの例示図である。
【図17】局所的な対称性を考慮した場合のコギングトルクの計算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係るメッシュ生成装置について図面に基づいて具体的に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置を、CPUを用いて具現化した場合の構成を示すブロック図である。図1において、メッシュ生成装置1は、演算を行う演算部を構成するCPU(中央演算装置)11、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するメモリ12、ハードディスク等の記憶装置13、I/Oインタフェース14、ビデオインタフェース15、可搬型ディスクドライブ16、通信インタフェース17及び上述したハードウェアを接続する内部バス18で構成されている。
【0031】
CPU11は、内部バス18を介してメッシュ生成装置1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置13に記憶しているコンピュータプログラム100に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。メモリ12は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム100の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム100の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0032】
記憶装置13は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等で構成されている。記憶装置13に記憶しているコンピュータプログラム100は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体90から、可搬型ディスクドライブ16によりダウンロードされ、実行時には記憶装置13からメモリ12へ展開して実行される。もちろん、通信インタフェース17を介して、接続されている外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0033】
また記憶装置13は、形状モデル記憶部131、交点位置情報記憶部132、及び親メッシュ情報記憶部133を備えている。形状モデル記憶部131には、後述する形状モデル取得部で取得した形状モデルに関する情報、例えば数値情報、仕様情報等を記憶する。また、交点位置情報記憶部132には、後述する交点位置情報取得部で取得した、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報を記憶する。さらに親メッシュ情報記憶部133には、後述するメッシュ生成部で、一の対称領域に生成したメッシュ(親メッシュ)に関する情報、例えば節点の位置情報、節点間の結合情報等を親メッシュ情報として記憶する。
【0034】
通信インタフェース17は内部バス18に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワークに接続されることにより、外部のコンピュータ等とデータ送受信を行うことが可能となっている。
【0035】
I/Oインタフェース14は、キーボード21、マウス22等のデータ入力媒体と接続され、データの入力を受け付ける。また、ビデオインタフェース15は、CRTモニタ、LCD等の表示装置23と接続され、所定の画像を表示する。
【0036】
以下、回転体を含む回転機の形状モデルに対して二次元のメッシュを生成する例を用いて、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成方法を説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1の機能ブロック図である。
【0037】
形状モデル取得部201は、オペレータによって操作されたキーボード21、マウス22等から、又は通信インタフェース17を介して外部のコンピュータから、複数の対称領域の組み合わせを含む形状モデルに関する情報を取得する。取得した形状モデルに関する情報は、記憶装置13の形状モデル記憶部131に記憶される。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1のメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。図3は、紙面に向かって垂直な方向の回転軸Oを中心に回転するロータ31、ステータ32、及びロータ31とステータ32との間の空間部分33を含む回転機の、回転軸Oに対して垂直な所定の平面での部分断面(4分の1断面)を示している。
【0039】
従来とは異なり、メッシュを生成する前には、解析対象となる回転機の形状モデルの回転対称性及び/又は鏡面対称性は指定されていない。すなわち、基礎となる親メッシュ領域、及び親メッシュ領域に生成されたメッシュを複写してメッシュを生成する領域である子領域が指定されていない。そこで、本実施の形態1では、取得して形状モデル記憶部131に記憶してある形状モデルに関する情報に基づいて、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得することで、互いに対称性を有する複数の対称領域を抽出する。例えば交点位置情報取得部202は、所定の半径を有する円弧と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する。取得する位置情報は、二次元平面における座標値であっても良いし、回転対称性を有する場合には、回転軸Oを中心とした回転角であっても良い。取得した交点に関する位置情報は、記憶装置13の交点位置情報記憶部132に記憶される。
【0040】
対称領域抽出部203は、交点位置情報取得部202で取得し、交点位置情報記憶部132に記憶してある交点に関する位置情報に基づいて、互いに対称性を有する複数の対称領域を抽出する。例えば、回転対称性を有する回転機がメッシュ生成対象である場合、該回転機の形状モデルと、所定の半径を有する円との交点に関する位置情報として、回転軸Oを中心とした回転角を取得する。取得した回転角を記憶装置13の交点位置情報記憶部132に記憶しておき、回転角の分布状況を解析することにより、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出することができる。
【0041】
メッシュ生成部204は、抽出した複数の対称領域のうち、一の対称領域を選択し、選択した一の対称領域に所定のメッシュを生成する。メッシュの生成方法は、周知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、選択した一の対称領域に複数の節点を生成する。節点は、ランダムな位置に生成してもよく、所定の規則に従った位置に生成してもよい。そして、デラウニ法等を用いて、生成した節点同士を結んでメッシュを生成する。生成したメッシュに関する情報は、記憶装置13の親メッシュ情報記憶部133に記憶される。
【0042】
メッシュ複写部205は、一の対称領域に生成して親メッシュ情報記憶部133に記憶してあるメッシュに関する情報を用いて、複数の対称領域間の対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに親メッシュを複写する。これにより、メッシュを生成する対象領域全体に、対称性を有するメッシュを高い精度で生成することが可能となる。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1のCPU11のメッシュ生成処理の手順を示すフローチャートである。図4において、メッシュ生成装置1のCPU11は、オペレータによって操作されたキーボード21、マウス22等から、複数の対称領域の組み合わせを含む形状モデルに関する情報の入力を受け付ける(ステップS401)。もちろん、通信インタフェース17を介して外部のコンピュータから形状モデルに関する情報を取得しても良い。入力を受け付けた形状モデルに関する情報は、記憶装置13の形状モデル記憶部131に記憶される。
【0044】
CPU11は、記憶してある形状モデルに関する情報に基づいて、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する(ステップS402)。形状モデルが、回転体を含む回転機である場合、所定の図形として所定の半径を有する円弧を用い、円弧と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する。取得する交点に関する位置情報は、二次元平面における座標値であっても良いし、回転対称性を有するので、回転機の回転軸Oを中心とした回転角であっても良い。本実施の形態1では、回転角を交点に関する位置情報として、記憶装置13の交点位置情報記憶部132に記憶する。
【0045】
図5は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1の交点に関する位置情報の取得方法を説明するためのメッシュ生成対象となる回転機の形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。図5に示すように、回転対称性を有する回転機の形状モデルの一部を、回転軸Oを中心として互いに直交するX−Y軸上に設定する。そして、例えばステータ32の最小半径Rを超える長さの半径(R+Δr)を有する円弧51と、ステータ32を構成する各部材の境界との交点P1、P2、・・・、Pnの回転角を求める。
【0046】
求める回転角は、X軸方向を0(ゼロ)とする。すなわち、交点P1の回転角を0度とし、以後、円弧51とステータ32を構成する各部材の境界との交点P2、P3、・・・、Pn(nは自然数)の回転角をそれぞれ求める。求めた回転角は、記憶装置13の交点位置情報記憶部132に記憶する。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1の交点位置情報記憶部132のデータ構成の例示図である。図6に示すように、交点位置情報記憶部132には、交点を識別する情報、例えば交点名ごとに、交点が存在するエッジを識別する情報、及び位置情報としての回転角を記憶してある。
【0048】
図4に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、記憶してある交点の回転角(交点に関する位置情報)に基づいて、対称性を有する複数の対称領域を抽出する(ステップS403)。例えば、回転対称性を有する回転機の形状モデルがメッシュ生成対象である場合、交点の回転角の分布状況を解析することにより、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出することができる。
【0049】
図7は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1における、取得した回転角の分布状況の解析手順を説明する例示図である。まず、図7(a)に示すように交点P1、P2、・・・、P14の回転角を取得した場合、CPU11は、隣接する回転角間の差分を図7(b)のように算出する。
【0050】
次にCPU11は、図7(b)に示す差分列から、共通の差分列を抽出する。図7(c)の例では、(3、14、3)という差分列71を共通の差分列として抽出することができる。CPU11は、共通の差分列71以外の差分について、共通であるか、倍数となっているかを判断し、共通である差分、又は倍数となっている差分の中央部分を、互いに回転対称性を有する対称領域の境界位置を示す回転対称軸72が存在する位置とする。
【0051】
例えば図7(d)に示すように、共通である差分、例えば交点P1、P14、又は倍数となっている差分の中央部分、例えば交点P5、P6の中央部分、交点P9、P10の中央部分が、互いに回転対称性を有する対称領域の境界位置を示す回転対称軸72が存在する位置となる。このようにすることで、(5、3、14、3、5)という差分列73が、互いに回転対称性を有していることがわかり、互いに回転対称性を有する対称領域として抽出することができる。抽出した複数の対称領域のうち、例えば交点P1から交点P5、P6の中央部分までの差分列73、すなわち回転角が0度から30度までの対称領域を一の対称領域(親メッシュ領域)として選択することで、親メッシュ領域に生成したメッシュ(親メッシュ)を他の対称領域に複写することができる。
【0052】
また、鏡面対称性に着目した場合、差分列73は中央部分を鏡面対称軸とする鏡面対称性を有することがわかる。例えば図7(e)に示すように、(5、3、7)又は(7、3、5)という差分列74、74が中央部分を鏡面対称軸75とする鏡面対称性を有しているので、互いに鏡面対称性を有する対称領域として抽出することができる。抽出した対称領域のうち、交点P1から交点P3、P4の中央部分までの差分列74、すなわち回転角が0度から15度までの対称領域を一の対称領域(親メッシュ領域)として選択し、鏡面対称軸75にて鏡面複写することで、親メッシュ領域に生成したメッシュ(親メッシュ)を他の対称領域へ複写することができる。
【0053】
なお、メッシュ(親メッシュ)を生成する親メッシュ領域は、小さければ小さいほど、対象領域全体の対称性を維持しやすい。したがって、大きさの相違する複数種類の対称領域を親メッシュ領域として選択することができる場合には、大きさが最小である対称領域を親メッシュ領域として選択することが好ましい。図7の例では、鏡面対称性を有する差分列74で表される対称領域の一つを親メッシュ領域として選択することが好ましい。
【0054】
図4に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、抽出した複数の対称領域のうち、一の対称領域を親メッシュ領域として選択し(ステップS404)、選択した一の対称領域にメッシュ(親メッシュ)を生成する(ステップS405)。メッシュの生成方法は、周知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、選択した一の対称領域に複数の節点を生成する。節点は、ランダムな位置に生成してもよく、所定の規則に従った位置に生成してもよい。そして、デラウニ法等を用いて、生成した節点同士を結んでメッシュを生成する。選択した一の対称領域に生成したメッシュ(親メッシュ)に関する情報は、記憶装置13の親メッシュ情報記憶部133に記憶される。
【0055】
図8は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1で生成した、親メッシュの例示図である。図7と同様の方法で解析し、回転角が0度から15度までの対称領域を親メッシュ領域としてメッシュを生成している。
【0056】
図4に戻って、メッシュ生成装置1のCPU11は、親メッシュ情報記憶部133に記憶してある一の対称領域に生成したメッシュ(親メッシュ)に関する情報を用いて、他の対称領域のそれぞれにメッシュを複写する(ステップS406)。これにより、メッシュを生成する対象領域全体に、対称性を有するメッシュを高い精度で生成することが可能となる。
【0057】
図9は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1にて親メッシュを複写して生成したメッシュの例示図である。親メッシュ領域91に生成した親メッシュを、鏡面対称軸M1を対称軸として鏡面複写し、複写元のメッシュと複写したメッシュとを合わせた領域に生成してあるメッシュを新たな親メッシュとして、次の鏡面対称軸M2を対称軸として鏡面複写し、という鏡面複写作業を繰り返して生成しても良いし、親メッシュ領域91に生成した親メッシュを、鏡面対称軸M1を対称軸として鏡面複写し、複写元のメッシュと鏡面複写したメッシュとを合わせた領域に生成してあるメッシュを新たな親メッシュとして、以後は回転複写作業を繰り返すことでメッシュを生成しても良い。両者を組み合わせても良いことは言うまでもない。
【0058】
以上のように本実施の形態1によれば、所定の図形と形状モデルとの交点に関する位置情報に基づいて対称領域を抽出することにより、事前に対称性を有する対称領域及び対称領域間の親子関係等を指定しておく必要がなく、親メッシュ領域として他の対称領域へ複写するメッシュを生成する対称領域を容易に選択することができる。したがって、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転機の形状モデルにおけるメッシュを生成する対象領域に対称性を損なうことなくメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0059】
なお、形状モデル全体が対象領域であることに限定されるものではなく、対称性を有する部分を対象領域として指定を受け付けても良い。すなわち、形状モデルによっては、対称性を有する部分と有していない部分とが混在している場合がある。この場合、対称性を有する部分のみを、図2に示す領域指定受付部206にて、メッシュを生成する対象領域として指定を受け付ける。
【0060】
また、所定の図形、例えば円弧と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得することにより解析した対称性が同一である範囲を特定しても良い。すなわち、異なる半径の円弧と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得することにより対称性を解析し、対称性が同一である半径の範囲を特定する。
【0061】
図10は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ生成装置1における、指定を受け付けた対象領域を示す例示図である。図10(a)に示す回転機の形状モデルの場合、形状モデル全体をメッシュを生成する対象領域としたとき、回転対称性も鏡面対称性も有していない部分が存在する。
【0062】
そこで、図10(b)に示すように、対象領域として、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する範囲101の指定を受け付ける。これにより、指定を受け付けた対称領域である範囲101については、対称性を有するメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0063】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。本実施の形態2は、形状モデルに空間部分が存在する場合、空間部分に対しても複写によりメッシュを生成する点で実施の形態1と相違する。
【0064】
図11は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1の機能ブロック図である。形状モデル取得部201、交点位置情報取得部202、対称領域抽出部203、及びメッシュ複写部205は、実施の形態1と同様の機能であることから、詳細な説明は省略する。メッシュ生成部204は、抽出した複数の対称領域のうち、一の対称領域を選択し、選択した一の対称領域に所定のメッシュを生成する。このとき、従来はメッシュを生成しない空間部分、例えば回転機のロータとステータとの間の空間部分に対して、空間メッシュ生成部207は、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成する。
【0065】
メッシュの生成方法は、実施の形態1と同様、周知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、選択した一の対称領域に複数の節点を生成する。節点は、ランダムな位置に生成してもよく、所定の規則に従った位置に生成してもよい。そして、デラウニ法等を用いて、生成した節点同士を結んでメッシュを生成する。生成したメッシュに関する情報は、記憶装置13の親メッシュ情報記憶部133に記憶される。
【0066】
図12は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ生成装置1における空間部分が存在する形状モデルの一部を模式的に示す例示図である。図12(a)に示すように、メッシュ生成対象となる回転機の形状モデルには、図3と同様、ロータ31、ステータ32、及びロータ31とステータ32との間の空間部分33が存在する。そこで、図12(b)に示すように、空間部分33を、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成するメッシュ生成領域34とする。
【0067】
図13は、空間部分にも対称性を有するメッシュを生成した場合のコギングトルクの計算結果を示すグラフである。図13の○印に示すように、対称性を有するメッシュを生成していない場合、解析対象となる形状モデルでは回転角度が略10度ごとに周期性を有するはずのコギングトルクに対して、回転角度が略10度においてコギングトルクが0(Nm)になっていない。
【0068】
一方、図13の□印に示すように、空間部分を除いて対称性を有するメッシュを生成した場合、回転角度が略10度においてコギングトルクがほぼ0(Nm)となっており、高い精度でコギングトルクを算出していることが確認できる。しかし、コギングトルクの極大値、極小値の絶対値は相違している。
【0069】
それに対して、図13の黒△印に示すように、空間部分を含めて対称性を有するメッシュを生成した場合、回転角度が略10度においてコギングトルクが0(Nm)となっているとともに、コギングトルクの極大値、極小値の絶対値がほぼ同一となっており、一定の周期性を有しているコギングトルクを、より高い精度で算出していることが確認できる。
【0070】
以上のように本実施の形態2によれば、形状モデルにメッシュの連続性が途切れる空間部分が存在する場合であっても、対称性を損なうことなくメッシュを生成することができ、生成したメッシュに基づく有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0071】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置1の構成は、実施の形態1及び2と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。本実施の形態3では、二次元の形状モデルではなく、三次元の形状モデルであっても同様に対称性を有するメッシュを生成する点で実施の形態1及び2と相違する。
【0072】
図14は、本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置1の機能ブロック図である。形状モデル取得部201、交点位置情報取得部202、対称領域抽出部203、メッシュ生成部204、及びメッシュ複写部205は、実施の形態1と同様の機能であることから、詳細な説明は省略する。対称領域抽出部203にて複数の対称領域が抽出された時点で、対称範囲指定受付部208にて、回転機(回転体)の高さ方向に、対称性が同一である範囲の指定を受け付ける。また、対称範囲特定部209にて、回転機(回転体)の高さ方向に、対称性が同一である範囲を特定しても良い。
【0073】
対称範囲特定部209では、対称領域抽出部203にて抽出した複数の対称領域のうち、互いに対称性を有する対称領域の対称軸(境界位置)が共通である高さ方向の範囲を特定する。これにより、高さ方向のどの断面においても同一の対称性を有するメッシュを生成することが可能となる。
【0074】
メッシュ生成部204は、抽出した複数の対称領域のうち、一の対称領域を選択し、選択した一の対称領域に所定のメッシュを生成する。このとき、指定を受け付けた、又は特定した範囲について、高さ方向に、抽出した対称領域の対称性と同様の対称性を有するメッシュを生成する。
【0075】
メッシュの生成方法は、実施の形態1及び2と同様、周知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、選択した一の対称領域に複数の節点を生成する。節点は、ランダムな位置に生成してもよく、所定の規則に従った位置に生成してもよい。そして、デラウニ法等を用いて、生成した節点同士を結んでメッシュを生成する。生成したメッシュに関する情報は、記憶装置13の親メッシュ情報記憶部133に記憶される。
【0076】
図15は、本発明の実施の形態3に係るメッシュ生成装置1で指定を受け付ける又は特定する、高さ方向の範囲を示す形状モデルの斜視図である。図15は、回転軸151を中心とした回転機の形状モデルの3分の1を示しており、異なる高さにおいて所定の図形、例えば円弧と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得することにより解析した対称性が同一である範囲152の指定を、対称範囲指定受付部208にて受け付ける。又は、対称範囲特定部209にて、異なる高さにおいて所定の図形、例えば円弧と形状モデルとの交点に関する位置情報を取得することにより解析した対称性が同一である範囲152を特定する。
【0077】
以上のように本実施の形態3によれば、二次元の形状モデルだけでなく、指定を受け付けた範囲又は特定した範囲については、三次元の形状モデルに対しても対称性を損なうことなくメッシュを生成することが可能となる。
【0078】
なお、上述した実施の形態1乃至3において、形状モデル全体について対称性を抽出しているが、特にこれに限定されるものではなく、対称性を有する領域をさらに細かく解析し、局所的な対称性を抽出しても良い。図16は、ヨークと磁石とで構成される回転機の形状モデルの例示図である。図16(a)は、ヨーク41と磁石42とで構成される回転機の形状モデルの略6分の1を模式的に示す例示図である。図16(b)は、ヨーク41全体の対称性を考慮し、複数の対称領域に分割した場合の例示図であり、図16(c)は、ヨーク41について局所的な対称性も考慮し、複数の対称領域に分割した場合の例示図である。
【0079】
対称領域抽出部203は、例えば図16(b)に示すように、ヨーク41について実線で示す回転対称軸161、161、・・・及び破線で示す鏡面対称軸162、162、・・・を境界位置とする対称領域を抽出することができる。
【0080】
図16(b)の領域165をさらに細かく解析した場合、図16(c)に示すように、局所的にはさらに細かく回転対称性及び鏡面対称性を抽出することができ、回転対称軸163、163及び鏡面対称軸164、164を境界位置とする対称領域を抽出することができる。メッシュ生成部204にて、局所的な親メッシュを生成し、メッシュ複写部205にて局所的な親メッシュを複写することにより、より正確な対称性を有するメッシュを生成することができ、有限要素法を用いた所定の物理量の解析精度をより高めることが可能となる。
【0081】
図17は、図16に示す形状モデルについて、局所的な対称性を考慮した場合のコギングトルクの計算結果を示すグラフである。図17の○印に示すように、対称性を有するメッシュを生成していない場合、解析対象となる形状モデルでは回転角度が略8.6度ごとに周期性を有するはずのコギングトルクに対して、回転角度が略8.6度においてコギングトルクが0(Nm)になっていない。
【0082】
一方、図17の□印に示すように、対称性を有するメッシュを生成した場合、回転角度が略8.6度においてコギングトルクが0(Nm)となっており、高い精度でコギングトルクを算出していることが確認できる。しかし、コギングトルクの極大値、極小値の絶対値は相違している。
【0083】
それに対して、図17の黒△印に示すように、局所的な対称性を考慮してメッシュを生成した場合、回転角度が略8.6度においてコギングトルクが0(Nm)となっているとともに、コギングトルクの極大値、極小値の絶対値もほぼ同一となっており、より高い精度でコギングトルクを算出していることが確認できる。
【0084】
また、上述した実施の形態1乃至3は、それぞれ独立して実施することに限定されるものではなく、それぞれ組み合わせて実施しても良い。例えば三次元の形状モデルに対して空間部分にメッシュを生成しても良いことは言うまでもない。
【0085】
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。したがって、形状モデルについても回転体を含む回転機の形状モデルに限定されるものではなく、回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する形状モデルであれば同様の効果が期待できる。また、回転対称性のみ、鏡面対称性のみを有している形状モデルであっても同様である。
【符号の説明】
【0086】
1 メッシュ生成装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 I/Oインタフェース
15 ビデオインタフェース
16 通信インタフェース
17 可搬型ディスクドライブ
18 内部バス
90 可搬型記録媒体
100 コンピュータプログラム
131 形状モデル記憶部
132 交点位置情報記憶部
133 親メッシュ情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置において、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得する形状モデル取得手段と、
取得した形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する交点位置情報取得手段と、
取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出する対称領域抽出手段と、
抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段と、
生成した所定のメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するメッシュ複写手段と
を備えることを特徴とするメッシュ生成装置。
【請求項2】
前記形状モデルに関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた形状モデルに関する情報を記憶部に記憶する形状モデル入力受付手段を備えることを特徴とする請求項1記載のメッシュ生成装置。
【請求項3】
前記対象領域の指定を受け付ける領域指定受付手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のメッシュ生成装置。
【請求項4】
前記対象領域に空間部分が存在する場合、該空間部分に対して、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶する空間メッシュ生成手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメッシュ生成装置。
【請求項5】
前記回転体の高さ方向に、対称性が同一である範囲を特定する対称範囲特定手段を備え、
特定した範囲について、高さ方向に、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメッシュ生成装置。
【請求項6】
前記対称範囲特定手段は、
前記対称領域抽出手段により抽出した複数の対称領域のうち、互いに対称性を有する対称領域の境界位置が共通である高さ方向の範囲を特定することを特徴とする請求項5記載のメッシュ生成装置。
【請求項7】
前記回転体の高さ方向に、対称性が同一である範囲の指定を受け付ける対称範囲指定受付手段を備え、
指定を受け付けた範囲について、高さ方向に、抽出した対称領域に対応付けた対称性を有するメッシュを生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメッシュ生成装置。
【請求項8】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なメッシュ生成方法において、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得するステップと、
取得した形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得するステップと、
取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出するステップと、
抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するステップと、
生成した所定のメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するステップと
を含むことを特徴とするメッシュ生成方法。
【請求項9】
形状モデルを複数の有限要素の組み合わせとして表現し、有限要素法にて所定の物理量を算出するためのメッシュを生成して記憶するメッシュ生成装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記メッシュ生成装置を、
回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する回転体の形状モデルに関する情報を取得する形状モデル取得手段、
取得した形状モデルに関する情報に基づいて、メッシュを生成する対象領域にて、所定の図形と前記形状モデルとの交点に関する位置情報を取得する交点位置情報取得手段、
取得した交点に関する位置情報に基づいて、互いに回転対称性及び/又は鏡面対称性を有する複数の対称領域を抽出する対称領域抽出手段、
抽出した複数の対称領域のうち一の対称領域に所定のメッシュを生成し、生成したメッシュに関する情報を記憶部に記憶するメッシュ生成手段、及び
生成した所定のメッシュを、複数の前記対称領域間の回転対称性及び/又は鏡面対称性に基づいて他の対称領域のそれぞれに複写するメッシュ複写手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−170716(P2011−170716A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35278(P2010−35278)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(507228172)株式会社JSOL (23)
【Fターム(参考)】