説明

メディア処理装置及びメディア処理装置の制御方法

【課題】メディア保管部におけるメディアの積層高さがスタッカフル超えの状態では、メ
ディア搬送処理が実施されることがなく、衝突によるメディア搬送機構の故障等を確実に
防止することができるメディア処理装置を提供すること。
【解決手段】メディア処理装置200において、メディア保管部121,122における
メディアの積層状態がスタッカフル又はスタッカフル超えとなった時には(ステップS3
3:Yes,ステップS35:Yes)、その旨の警告を行うことで(ステップS34,ス
テップ36)、メディア搬送機構131の衝突事故を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等の円板状のメディアに対して、例えばデータの読み書きやメ
ディアのレーベル面への印刷といった所定の処理を実施するメディア処理装置及びメディ
ア処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVD等の円板状のメディアに対してデータの読み書きを行うとともに、メディ
アのレーベル面に印刷を行うメディア処理システムとして、メディア処理装置とホストコ
ンピュータとから構成されるものがある。
【0003】
この種のメディア処理システムでは、メディア処理装置には、円板状のメディアを保管
するメディア保管部と、メディアにデータの書き込みを行うメディアドライブと、メディ
アのレーベル面に印刷を行うレーベルプリンタと、メディアを把持して前記メディア保管
部、メディアドライブに装備されたドライブトレイのメディア受け渡し位置、及びレーベ
ルプリンタのメディア受け渡し位置に搬送可能なメディア搬送機構とが備えられ、メディ
ア処理装置に備えられたメディアドライブ、レーベルプリンタ、メディア搬送機構の動作
がホストコンピュータにより制御される。
【0004】
また、多数枚のメディアを連続して処理するために、メディア処理装置には、メディア
保管部として、複数枚のブランクメディアを上下に積層状態で収納可能な供給元スタッカ
と、データの書き込み処理又はレーベル印刷処理を済ませた複数枚の処理済みメディアを
上下に積層状態で収納可能な排出先スタッカとを備えたものが開発されている(下記特許
文献1及び2を参照)。
【0005】
このようなメディア処理装置では、例えば、供給元スタッカに収納されているブランク
メディアを内蔵のメディアドライブのメディア受け渡し位置へ搬送したり、メディアドラ
イブにおいてデータ書き込み処理後の処理済メディアをメディアドライブのメディア受け
渡し位置から排出先スタッカへ搬送したり、あるいはデータ書き込み処理後のメディアを
内蔵のレーベルプリンタのメディア受け渡し位置へ搬送したり、レーベルプリンタにより
レーベル印刷後の処理済メディアをレーベルプリンタのメディア受け渡し位置から排出先
スタッカへ搬送するなどの各種のメディア搬送処理が行われる。
【0006】
ところで、上記のようなメディア処理装置では、排出先スタッカにメディアの搬送を繰
り返していくうちに当該排出先スタッカにおける実際の積層高さが、排出先スタッカに積
層可能な最大高さを超えてしまう状態が発生することがある。
【0007】
特許文献3には、プリンタの排出スタッカに蓄積される印字済み用紙の枚数が過剰にな
ったことを検出するスタッカフル検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−260172号公報
【特許文献2】特開2002−056584号公報
【特許文献3】特開平06−247617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状態で、メディア搬送機構が更にその排出先スタッカへメディアの搬送を
実施すると、メディア搬送機構の搬送アームが排出先スタッカ内の積層済みメディアと衝
突してしまい、メディア搬送機構の故障や、積層済みメディアの破損、あるいは搬送中の
メディアの破損といった問題が発生してしまう。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、メディア保管部におけるメ
ディアの積層高さが、メディア搬送機構の搬送動作で積層可能な積載上限値を超えた状態
では、メディア搬送機構がメディア保管部へのメディア搬送処理を実施することがなく、
衝突によるメディア搬送機構の故障や、メディアの破損を確実に防止することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできる本発明のメディア処理装置は、
メディアを保管するメディア保管部と、
前記メディアにデータの書き込みを行うメディアドライブと、
前記メディアをピックアップして前記メディア保管部及び前記メディアドライブのドラ
イブトレイへ前記メディアを搬送し、搬送先で前記メディアをリリースするメディア搬送
機構と、
前記メディア保管部に積載されているメディア高さを検出するメディア検出部と、
前記メディア検出部が検出したメディア高さが、前記メディア保管部の積載上限値を超
えるか否かを判断し、前記積載上限値を超える場合に積載上限値を超える旨を知らせる警
告動作を行う制御部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、メディアを保管するメディア保管部
と、前記メディアにデータの書き込みを行うメディアドライブと、前記メディアをピック
アップして前記メディア保管部及び前記メディアドライブのドライブトレイへ前記メディ
アを搬送し、搬送先で前記メディアをリリースするメディア搬送機構と、前記メディア保
管部に積載されているメディア高さを検出するメディア検出部と、を備えたメディア処理
装置の制御方法であって、
前記メディア高さを検出する検出ステップと、
検出した前記メディア高さが前記メディア保管部の積載上限値を超えるか否かを判断す
る第1の判断ステップと、
前記積載上限値を超える場合に積載上限値を超える旨を知らせる警告動作を行う警告ス
テップと、を有することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、メディア保管部におけるメディア高さを監視していて、メディア高
さが積載上限値を超えた状態に陥っている場合は、警告動作を行う。このため、メディア
処理装置のオペレータは、警告動作に応じた処理を行うことができる。具体的には、メデ
ィア搬送機構が動作を行う前に、メディア保管部から積載上限値を超えて積層されたメデ
ィアを取り除く対応ができる。したがって、積載上限値を超えて積層されたメディアとメ
ディア搬送機構との衝突によるメディア搬送機構の故障や、メディアの破損を防止するこ
とができる。
【0014】
また、本発明のメディア処理装置において、前記制御部は、当該メディア処理装置の初
期化処理において、
前記メディア検出部が検出したメディア高さが、前記メディアのピックアップ処理を可
能とするがメディアのリリース処理を制限する高さであって積載上限値よりも低く設定さ
れたメディアフル判定値を超えるか否かを判断し、前記メディアフル判定値を超える場合
にメディアフル判定値を超える旨を知らせる警告動作を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のメディア処理装置の制御方法は、前記メディア処理装置の初期化処理に
おいて、検出した前記メディア高さが前記メディアのピックアップ処理を可能とするがメ
ディアのリリース処理を制限する高さであって積載上限値よりも低く設定されたメディア
フル判定値を超えるか否かを判断する第2の判断ステップと、
前記メディアフル判定値を超える場合にメディアフル判定値を超える旨を知らせる警告
動作を行うことをステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、初期化処理において、メディア高さがメディアフル判定値を超える
場合には、メディアフル判定値を超える旨を知らせる警告動作を行う。メディアフル判定
値は、メディアのピックアップ処理を可能とするがメディアのリリース処理を制限する高
さであって積載上限値よりも低く設定された値である。したがって、通常処理においてメ
ディアが積層され積載上限値まで積み上げられてしまう前に、初期化処理において予めオ
ペレータへ警告することができるので、オペレータは速やかにメディアを取り出すことが
できる。これにより、通常処理において、積載上限値を超えて積層されたメディアとメデ
ィア搬送機構とが衝突することによるメディア搬送機構の故障や、メディアの破損を未然
に防止することができる。
【0017】
また、本発明のメディア処理装置において、前記制御部は、
前記メディア搬送機構が前記メディアのピックアップ処理を実行するときには前記積載
上限値を超えるか否かを判断し、前記メディア搬送機構が前記メディアのリリース処理を
実行するときには前記積載上限値を超えるか否かを判断し、且つ前記メディアフル判定値
を超えるか否かを判断することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のメディア処理装置の制御方法において、前記メディア搬送機構が前記メ
ディアのピックアップ処理を実行するときには前記第1の判断ステップを行い、前記メデ
ィア搬送機構が前記メディアのリリース処理を実行するときには前記第1の判断ステップ
を行い、且つ前記第2の判断ステップを行うことを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、メディアをピックアップするときは、積載上限値を超えるか否かの
みを判断すればよいので、すみやかにピックアップ処理を行うことができる。一方、メデ
ィアをリリースするときは、積載上限値を超えるか否かの判断に加えてメディアフル判定
値を超えるか否かを判断するので、メディア高さがメディアフル判定値を超えている場合
に、メディアのリリース処理が制限される。したがって、初期化処理後、通常処理へ移行
しリリース処理を実行しようとする場合も、メディアが積層され積載上限値まで積み上げ
られてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るメディア処理装置が組み込まれたメディア処理システムの一実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したメディア処理装置の内部構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示したメディア処理装置におけるメディア搬送機構の動きを示す説明図である。
【図4】図2に示したメディア搬送機構の拡大斜視図である。
【図5】図1に示したメディア保管部におけるメディアの積層状態の説明図である。
【図6】図1に示したメディア処理装置の電源投入時及び開閉カバーが閉じられた時に実施される初期化処理の説明図である。
【図7】図1に示したメディア処理装置に対して、ホストコンピュータからメディアピックアップ処理が指示された場合に実施されるピックアップ処理の説明図である。
【図8】図1に示したメディア処理装置に対して、ホストコンピュータからメディアリリース処理が指示された場合に実施されるリリース処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るメディア処理装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳
細に説明する。
図1は本発明に係るメディア処理装置が組み込まれたメディア処理システムの一実施形
態の概略構成を示すブロック図、図2は図1に示したメディア処理装置の内部構造を示す
斜視図、図3は図2に示したメディア処理装置におけるメディア搬送機構の搬送アームの
動きを示す説明図、図4は図2に示したメディア搬送機構の拡大斜視図、図5は図1に示
したメディア保管部におけるメディアの積層状態の説明図、図6は図1に示したメディア
処理装置の電源投入時及び開閉カバーが閉じられた時に実施される初期化処理の説明図、
図7はホストコンピュータからメディアピックアップ処理が指示された場合に実施される
ピックアップ処理の説明図である。図8はホストコンピュータからメディアリリース処理
が指示された場合に実施されるリリース処理の説明図である。
図1に示したメディア処理システムは、CDやDVD等の円板状のメディアに対してデ
ータの読み書きを行うとともに、メディアのレーベル面に印刷を行うもので、メディア処
理装置200と、ホストコンピュータ100と、から構成されている。
【0022】
メディア処理装置200には、図2及び図3に示すように、CDやDVD等の円板状の
メディアを保管する第1〜第4の4つのメディア保管部121,122,171,172
と、メディアにデータの書き込みを行う2台のメディアドライブ141,141と、メデ
ィアのレーベル面に印刷を行うレーベルプリンタ111と、メディアを把持して上記のメ
ディア保管部121,122,171,172、メディアドライブ141,141に装備
されたドライブトレイ141a,141aのメディア受け渡し位置A、及びレーベルプリ
ンタ111のメディア受け渡し位置に搬送可能なメディア搬送機構131と、が備えられ
ている。
【0023】
そして、メディア処理装置200に備えられたメディアドライブ141,141、レー
ベルプリンタ111、メディア搬送機構131の動作は、ホストコンピュータ100によ
り制御可能になっている。
【0024】
図2では、メディア処理装置200の外壁である略直方体形状のケース102を省略し
て、内部におけるデバイス配置を示しているが、ケース102の前面には左右に開閉可能
な開閉カバー(不図示)が取り付けられている。また、ケース102の上側左端部には、
図3に示すように、表示ランプ、操作ボタン等が配列された操作面105が設けられてい
る。
【0025】
ケース102の前面に装備される不図示の開閉カバーを開くと、図2に示したメディア
保管部121,122,171,172や、レーベルプリンタ111などが装置前面に露
出した状態になり、オペレータが各メディア保管部121,122,171,172にメ
ディアを出し入れしたり、あるいはレーベルプリンタ111のインクカートリッジの交換
が可能になる。
【0026】
前述した第1〜第4の4つのメディア保管部121,122,171,172は、基本
的な用途が決まっている。図2で右上に位置する第1のメディア保管部121は、基本的
には、複数枚(例えば50枚)のブランクメディア(データ書き込み処理が行われていな
い未使用のメディア)を上下に積層状態で収納する供給元スタッカとして使用されるが、
データの書き込み処理又はレーベル印刷処理を済ませた処理済みメディアの収納にも利用
可能になっている。
【0027】
第1のメディア保管部121の直下に位置している第2のメディア保管部122と、こ
の第2のメディア保管部122の左側に位置している第4のメディア保管部172は、基
本的には、データの書き込み処理又はレーベル印刷処理を済ませた複数枚(例えば50枚
)の処理済みメディアを上下に積層状態で収納する排出先スタッカとして使用されるが、
ブランクメディアの収納にも利用可能になっている。
【0028】
第4のメディア保管部172は、手桶形で、着脱可能に第3のメディア保管部171に
セットされている。第3のメディア保管部171は、装置前方に出入り可能に取り付けら
れた引出トレイ170に形成された凹みで、少数のメディアの収納に利用される。
【0029】
メディア搬送機構131は、図3及び図4に示すように、ケース102内に略垂直に設
けられた垂直ガイド軸135と、この垂直ガイド軸135上を昇降および旋回可能な搬送
アーム136とから構成されており、搬送アーム136の先端部中央には、メディアの中
央開口部を把持する把持爪151が設けられている。
【0030】
搬送アーム136は、その一部が、昇降用モータ152により垂直ガイド軸135の後
方を回転走行するタイミングベルト153に連結されており、タイミングベルト153の
走行に応じて、垂直ガイド軸135上を昇降する。
また、搬送アーム136は、垂直ガイド軸135の下端に旋回可能に取り付けられてい
る水平支持板部154に一体化されており、水平支持板部154上に固定されている不図
示の扇形歯車が旋回用モータ155によって垂直ガイド軸135の周囲を回転駆動される
ことで、垂直ガイド軸135の周囲を旋回する。
【0031】
搬送アーム136の把持爪151の周辺には、メディアの存在を検出するメディア検出
器156と、下向きに照明光158aを照射する照明手段158が設けられている。
メディア検出器156は、搬送アーム136の下面から退出可能に突設されており、搬
送アーム136がメディア保管部等のメディアの上に降下し、メディアに当接して搬送ア
ーム136内に押し込まれると、それによりメディアの存在を検出する。
【0032】
このメディア検出器156の検出結果は、把持爪151によるメディア把持動作の開始
タイミングの取得や、各メディア保管部121,122,171,172におけるメディ
アの積層高さの検出に利用される。
【0033】
以上の搬送アーム136は、図3に矢印A〜Hで示す旋回動作と、矢印I,Jに示す昇
降動作とを組み合わせることによって、図中に〔1〕から〔6〕で示すポイントに把持爪
の位置を移動させて、前述した各メディア保管部121,122,171,172と、メ
ディアドライブ141,141に装備されたドライブトレイ141a,141aのメディア
受け渡し位置Aと、レーベルプリンタ111のメディア受け渡し位置との間でのメディア
の搬送を行う。
【0034】
なお、図3に示した〔1〕から〔6〕のポイントについて補足説明すると、〔1〕は搬
送アーム136のHP(ホームポジション)の位置(待機位置)、〔2〕は第1のメディ
ア保管部121の位置、〔3〕はHPから第1のメディア保管部121の間の任意の位置
、〔4〕は中間地点、〔5〕は第2のメディア保管部122の位置、〔6〕は中間地点か
ら第2のメディア保管部122の間の任意の位置、を意味する。
【0035】
メディア処理装置200は、図3に示すように、メディア搬送機構131の駆動制御を
行うメディア搬送機構制御部190を備えている。このメディア搬送機構制御部190は
、ホストコンピュータ100との通信が可能である。メディア搬送機構制御部190には
ホストコンピュータ100から送信される搬送アーム136の移動コマンドに応じて搬送
アーム136の移動制御を行うファームウエアが搭載されていて、ホストコンピュータ1
00から送信される搬送アーム136の移動コマンドに応じて前述したメディアの搬送を
行うことができる。
【0036】
以上のメディア処理装置200では、各メディア保管部121,122,171,17
2間でメディアの搬送を繰り返していくうちに、一部のメディア保管部では、メディア搬
送機構131の搬送動作でそのメディア保管部に積層可能なメディア積載上限値Hを超え
てしまう状態が発生することがありうる。ここで図5を参照して、メディア保管部に設定
されている2つの高さ基準値について説明する。
【0037】
図5は第2のメディア保管部122にメディアが繰り返し積層されていった場合を示し
ている。
本実施形態ではメディア保管部122の高さに2つの基準値を設けている。メディア積
載上限値Hとは、この値を超えてメディアが積層されたときに、積層されたメディアと搬
送アーム136とが衝突するケースを想定して設定された値である。つまり、搬送処理に
おいて搬送アーム136が積層されたメディアと接触することなく、正常に旋回動作を行
うことができる上限値として設定された値である。
また、メディアフル判定値hは、搬送アーム136によるメディアのピックアップ処理
を可能とするがメディアのリリース処理を制限する高さであってメディア積載上限値Hよ
りも低く設定された値である。
【0038】
本実施形態では、メディア保管部の底面からメディアフル判定値hまでを通常範囲Bと
し、メディア積載上限値Hとメディアフル判定値hとの間の範囲をメディアフルの範囲C
とする。また、最上位のメディアMがメディアフルの範囲C内にある状態を「スタッカフ
ル」と呼び、最上位のメディアMがメディア積載上限値Hを超えた状態を「スタッカフル
超え」と呼ぶこととする。「スタッカフル超え」の状態では、そのメディア保管部122
の上を搬送アーム136が横断しようとすると、搬送アーム136と積層されている最上
位のメディアMとが衝突してしまう。
【0039】
そこで、上記本実施形態のメディア処理装置200は、「スタッカフル超え」が発生し
た場合には、そのメディア保管部122上をメディア搬送機構131の搬送アーム136
が横断してメディアと衝突しないように制御することができる。すなわち、各メディア保
管部121,122,171,172におけるメディアの積層高さを監視し、状況に応じ
て、警告や、メディア搬送機構131の動作規制を行う。
【0040】
具体的には、メディア処理装置200への電源投入時、及び各メディア保管部121,
122,171,172へのメディアの出し入れを行う不図示の開閉カバーが閉じられた
時には、図6に示す初期化処理を実施する。
【0041】
図6に示した処理は、メディア処理装置200の電源投入時、及び電源投入後に各メデ
ィア保管部121,122,171,172へのメディアの出し入れを行う不図示の開閉
カバーが閉じられた場合等に実施する初期化処理である。ここでは、第4のメディア保管
部172が第3のメディア保管部171にセットされている場合を前提に説明する。
【0042】
これらの電源投入時、及び、開閉カバーが閉じられた時には、オペレータが各メディア
保管部121,122,171,172にメディアを出し入れして各メディア保管部にお
けるメディアの積層高さが変更されている可能性があるため、各メディア保管部121,
122,171,172におけるメディアの積層高さを、新規に検出し直すものである。
【0043】
メディア処理装置200の電源投入又は開閉カバーを閉じたことが検出されると、初期
化処理を開始し、メディア搬送機構131の搬送アーム136が各スタッカ121,12
2,172に積層されているメディアの高さを新規に検出する(ステップS11)。検出
したメディア高さを所定の記録手段(メディア搬送機構制御部190に設けられている)
に保存する(ステップS12)。
【0044】
なお、各メディア保管部におけるメディア高さの検出は、次のようにして行われる。
例えば、搬送アーム136がメディア高さを測定するメディア保管部の上方の位置まで
移動し、そこで搬送アーム136は降下する。メディア保管部121のメディア高さを検
出する場合には、搬送アーム136は図3に示すスタッカ121の位置〔2〕まで移動し
てから、降下する。メディア検出器156が最上位のメディアを検出するまでの間の昇降
用モータ152のステップ数をカウントする。カウントされたステップ数に対応する降下
量を、降下開始前の搬送アーム136の定位置の高さから差し引くことで、そのメディア
保管部上でのメディアの積層高さを算出することができる。
【0045】
そして、ステップS12で保存したメディアの積層高さが、図5に示したメディア積載
上限値Hを超えるか否か判定する(ステップS13)。メディア積載上限値Hを超えると
判定した場合には(ステップS13:Yes)、「スタッカフル超え」を示す警告表示(
LEDの点灯等)を操作面105により実施する。さらに、「スタッカフル超え」の状態
が発生しているメディア保管部をホストコンピュータ100に通知する(ステップS14
)。
【0046】
一方、ステップS13でメディア積載上限値Hを超えないと判定した場合は(ステップ
S13:No)、ステップS12で保存したメディアの積層高さが、図5に示したメディ
アフル判定値hを超えるか否か判定する(ステップS15)。メディアフル判定値hを超
えると判定した場合には(ステップS15:Yes)、「スタッカフル」を示す警告表示
(LEDの点灯等)を操作面105により実施する。さらに、「スタッカフル」の状態が
発生しているメディア保管部をホストコンピュータ100に通知する(ステップS16)

【0047】
ステップS15でメディアフル判定値hを超えないと判定した場合は(ステップS15
:No)、「スタッカフル超え」及び「スタッカフル」のいずれにも該当しない。すなわ
ち、そのメディア保管部内に積層されているメディアは通常範囲B内にあるので、搬送ア
ーム136を正常に動作できることが確認される。他のメディア保管部についても同様に
測定した後、初期化処理を終了する。
【0048】
次に、初期化処理後に通常のメディア搬送処理を行う場合の処理について図7及び図8
を参照して説明する。先に、図7を参照してメディアのピックアップ処理について説明す
る。図7に示した処理は、初期化処理後ホストコンピュータ100からメディアのピック
アップ指示を受けたときに実施される。
【0049】
ホストコンピュータ100からメディアのピックアップ指示を受けると(ステップS2
1:Yes)、図6のステップS12により記録手段に保存されている各メディア保管部
のメディア高さのうち指定されたメディア保管部のメディア高さを読み出す(ステップS
22)。読み出したメディア高さが図5に示したメディア積載上限値Hを超えるか否か判
定する(ステップS23)。メディア積載上限値Hを超えると判定した場合には(ステッ
プS23:Yes)、「スタッカフル超え」を示す警告表示(LEDの点灯等)を操作面
105により実施する。さらに、「スタッカフル超え」の状態が発生しているメディア保
管部をホストコンピュータ100に通知する(ステップS24)。
【0050】
一方、ステップS23でメディア積載上限値Hを超えないと判定した場合は(ステップ
S23:No)、搬送アーム136がピックアップ先に指定されているメディア保管部の
位置へ移動し、降下してから最上位に積載されているメディアMを1枚ピックアップする
(ステップS25)。メディアMをピックアップすると、ピックアップ後のメディア高さ
を検出する(ステップS26)。ここで行うメディア高さの検出は搬送アーム136を使用
せず、ステップS22で読み出したメディア高さからメディア1枚分に相当する高さを差
し引いて検出する。検出したメディア高さを更新して保存し(ステップS27)、メディ
アのピックアップ処理を終了する。
【0051】
次に、図8を参照してメディアのリリース処理について説明する。図8に示した処理は
、初期化処理後ホストコンピュータ100からメディアのリリース指示を受けたときに実
施される。
【0052】
ホストコンピュータ100からメディアのリリース指示を受けると(ステップS31:
Yes)、記録手段に保存されている各スタッカのメディア高さのうち指定されたメディ
ア保管部のメディア高さを読み出す(ステップS32)。読み出したメディア高さが図5
に示したメディア積載上限値Hを超えるか否か判定する(ステップS33)。メディア積
載上限値Hを超えると判定した場合には(ステップS33:Yes)、「スタッカフル超
え」を示す警告表示(LEDの点灯等)を操作面105により実施する。さらに、「スタ
ッカフル超え」の状態が発生しているメディア保管部をホストコンピュータ100に通知
する(ステップS24)。
【0053】
一方、ステップS33でメディア積載上限値Hを超えないと判定した場合は(ステップ
S33:No)、読み出したメディアの積層高さが、図5に示したメディアフル判定値h
を超えるか否か判定する(ステップS35)。メディアフル判定値hを超えると判定した
場合には(ステップS35:Yes)、「スタッカフル」を示す警告表示(LEDの点灯
等)を操作面105により実施する。さらに、「スタッカフル」の状態が発生しているメ
ディア保管部をホストコンピュータ100に通知する(ステップS36)。
【0054】
ステップS35でメディアフル判定値hを超えないと判定した場合は(ステップS35
:No)、「スタッカフル超え」及び「スタッカフル」のいずれにも該当しない。すなわ
ち、リリース先に指定されたメディア保管部に積層されているメディアは通常範囲B内に
あるので、搬送アーム136を正常に動作できることが確認される。そして、搬送アーム
136がリリース先に指定されているメディア保管部の位置へ移動し、降下してから搬送
アーム136が把持しているメディアを1枚リリースする(ステップS37)。メディア
をリリースすると、リリース後のメディア高さを検出する(ステップS38)。ここで行う
メディア高さの検出は搬送アーム136を使用し、図6のステップS11で行う初期化処
理のときの高さ検出と同様の方法で行う。検出したメディア高さを更新して保存し(ステ
ップS39)、メディアのリリース処理を終了する。
【0055】
上記実施形態によれば、メディア処理装置200の動作時には各メディア保管部におけ
るメディアの積層高さを監視していて、「スタッカフル」の積層状態あるいは「スタッカ
フル超え」の積層状態になっているメディア保管部を検出した場合には、それぞれその旨
の警告を実施する。そして、ホストコンピュータから「スタッカフル」の状態のメディア
保管部に対してメディアをリリースする指示を受けたときには、リリース指示を実行しな
いよう構成されている。
【0056】
このように、上記メディア処理装置200の動作時において、各メディア保管部のメデ
ィア高さが、メディア搬送機構131によって積層可能な最大高さを超えた「スタッカフ
ル超え」状態に陥っている場合は、ホストコンピュータ100からピックアップ指示ある
いはリリース指示を受けても実行せずに警告を行う。従って、搬送アーム136とメディ
ア保管部に積層されているメディアとの衝突によるメディア搬送機構の故障や、メディア
の破損を確実に防止することができる。
【0057】
また、「スタッカフル」又は「スタッカフル超え」の状態が発生した時には、その旨の
警告を行ってオペレータに知らせるため、オペレータが速やかに「スタッカフル」又は「
スタッカフル超え」の状態を解消することができる。
【0058】
更に、上記実施形態のメディア処理装置200では、電源投入時及び開閉カバーが閉じ
られた時には、図6に示した初期化処理が実施されて、各メディア保管部におけるメディ
ア高さが新規に測り直される。このため、もしもオペレータがメディア保管部にメディア
の出し入れを実施していて、メディア保管部におけるメディア高さが前回の使用時から変
わっていても、変更されたメディア保管部におけるメディア高さを正確に把握することが
できる。
【0059】
また、初期化処理後はメディア搬送機構による搬送処理(ピックアップ処理及びリリー
ス処理)を実施する毎に、記録手段に保存されているメディア高さを更新することができ
る。このため、各メディア保管部におけるメディア高さを常時正確に管理して、メディア
搬送機構131の衝突の発生を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0060】
100:ホストコンピュータ、111:レーベルプリンタ、121,122,171,1
72:メディア保管部、131:メディア搬送機構、141:メディアドライブ、141
a:ドライブトレイ、151:把持爪、152:昇降用ステッピングモータ、153:タ
イミングベルト、155:旋回用モータ、156:メディア検出器、156a:検出子、
158:照明手段、158a:照明光、200:メディア処理装置、A:メディア受け渡
し位置、B:通常範囲、C:メディアフルの範囲、H:メディア積載上限値、h:メディ
アフル判定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアを保管するメディア保管部と、
前記メディアにデータの書き込みを行うメディアドライブと、
前記メディアをピックアップして前記メディア保管部及び前記メディアドライブのドラ
イブトレイへ前記メディアを搬送し、搬送先で前記メディアをリリースするメディア搬送
機構と、
前記メディア保管部に積載されているメディア高さを検出するメディア検出部と、
前記メディア検出部が検出したメディア高さが、前記メディア保管部の積載上限値を超
えるか否かを判断し、前記積載上限値を超える場合に積載上限値を超える旨を知らせる警
告動作を行う制御部と、を有することを特徴とするメディア処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、当該メディア処理装置の初期化処理において、
前記メディア検出部が検出したメディア高さが、前記メディアのピックアップ処理を可
能とするがメディアのリリース処理を制限する高さであって積載上限値よりも低く設定さ
れたメディアフル判定値を超えるか否かを判断し、前記メディアフル判定値を超える場合
にメディアフル判定値を超える旨を知らせる警告動作を行うことを特徴とする請求項1に
記載のメディア処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記メディア搬送機構が前記メディアのピックアップ処理を実行するときには前記積載
上限値を超えるか否かを判断し、前記メディア搬送機構が前記メディアのリリース処理を
実行するときには前記積載上限値を超えるか否かを判断し、且つ前記メディアフル判定値
を超えるか否かを判断することを特徴とする請求項2に記載のメディア処理装置。
【請求項4】
メディアを保管するメディア保管部と、前記メディアにデータの書き込みを行うメディ
アドライブと、前記メディアをピックアップして前記メディア保管部及び前記メディアド
ライブのドライブトレイへ前記メディアを搬送し、搬送先で前記メディアをリリースする
メディア搬送機構と、前記メディア保管部に積載されているメディア高さを検出するメデ
ィア検出部と、を備えたメディア処理装置の制御方法であって、
前記メディア高さを検出する検出ステップと、
検出した前記メディア高さが前記メディア保管部の積載上限値を超えるか否かを判断す
る第1の判断ステップと、
前記積載上限値を超える場合に積載上限値を超える旨を知らせる警告動作を行う警告ス
テップと、を有することを特徴とするメディア処理装置の制御方法。
【請求項5】
前記メディア処理装置の初期化処理において、
検出した前記メディア高さが前記メディアのピックアップ処理を可能とするがメディア
のリリース処理を制限する高さであって積載上限値よりも低く設定されたメディアフル判
定値を超えるか否かを判断する第2の判断ステップと、
前記メディアフル判定値を超える場合にメディアフル判定値を超える旨を知らせる警告
動作を行うことをステップと、を有することを特徴とする請求項4に記載のメディア処理
装置の制御方法。
【請求項6】
前記メディア搬送機構が前記メディアのピックアップ処理を実行するときには前記第1
の判断ステップを行い、前記メディア搬送機構が前記メディアのリリース処理を実行する
ときには前記第1の判断ステップを行い、且つ前記第2の判断ステップを行うことを特徴
とする請求項5に記載のメディア処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−256427(P2012−256427A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220415(P2012−220415)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2007−240724(P2007−240724)の分割
【原出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)