説明

メディア搬送機構及びプリンタ装置

【課題】 各種条件に対応してテンションを付加させることができ、メディアの左右テンションバランスの補正、及びスキューの補正を行い、メディア浮きやシワ発生を低減させたメディア搬送機構を提供すること。
【解決手段】 本発明の搬送機構は、帯状に長いメディアを用いる装置において用いられ、搬送されるメディアにテンションを付加するテンションローラを備えた搬送機構であって、前記テンションローラは、搬送されるメディアの搬送経路を屈曲させることにより該メディアにテンションを付加するテンションバーと、前記テンションバーの両端部に配され、該テンションバーを支持するアーム部と、から構成され、前記アーム部が弾性体により構成され、該弾性体がそれぞれ別個に伸縮することにより、前記テンションバーがメディアの搬送方向に垂直な面内で揺動可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等のプリンタ装置において、帯状に長いメディアを搬送するための、メディア搬送機構と、該機構を備えたプリンタ装置とに関する。ここで、メディアとは、紙、塩化ビニル樹脂などの被印刷物を意味する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム等の薄いメディア(媒体)にプリントを行うプリンタ装置として、ロール状に巻き取られた媒体を用いるインクジェットプリンタが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このようなインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドを操作して印刷する場合、メディアを繰り出し、巻き取りを行うことによりメディアを搬送する。
【0003】
図4は、従来のインクジェットプリンタを模式的に示す図である。このインクジェットプリンタ100においては、プラテン120上方をプラテン120表面とほぼ平行なX−Y方向(図の左右方向と表裏面方向)に相対的に移動させるインクジェットヘッド130に並ぶノズルからインクを噴射させて、そのインクをプラテン120上に搭載されたシート等のメディア110表面にドット状に着弾させることにより、メディア110表面に複数のインクのドットの配列からなる文字、画像等をプリントできる。
【0004】
このプリンタ装置においては、インクジェットヘッド130を、一定の移動停止時間をあけて、プラテン120上方を、繰り返しY方向に往復移動させている。他方、メディア110は、繰り出しローラ141から繰り出され、プラテン120上を、正方向(前方向)のX方向に順送りしている。そして、インクジェットヘッド130を、メディア110上方をX−Y方向に相対的に移動させている。また、画像等がプリントされたメディア110は、巻き取りローラ147に巻き取られる。
【0005】
また、この種のプリンタ装置において、メディア110の搬送経路を屈曲させることにより該メディア110にテンションを付与する構成を備えたものもある(例えば、特許文献1参照)。メディア110にテンションを付与するには、メディア110の片面に、メディア110の幅方向に延びるテンションローラ143を押し当てる手段が一般に採用されている。
【0006】
ところで、このようなプリンタ装置において、搬送されてくるメディア110を巻き取りローラ141の周囲に巻き取った場合には、その周囲にメディア110が巻き取られるのに従って、ローラの重量及び直径が増し、ローラの慣性モーメント値が増大する。そして、巻き取りローラ141に巻き取り中のメディア110に加わるテンションが大きく変化してしまう。
【0007】
従来のテンションローラ143の自重あるいは巻き取りローラ147によるテンション付加方法では、スキューによりメディア110にたるみが生じると、テンションが付加される部分と付加されない部分がどうしても生じてしまう。
メディア110にかかるテンションが部分によってばらつくと、搬送量にばらつきが生じ、搬送時にメディア110がスキューしたり、しわが発生しやすくなる。また、テンションが付加されない部分で、メディア110にしわやメディア浮きがが発生すると、その部分にプリントされる画像に歪みやずれが生じたりするなど印字不良が発生してしまう。
【0008】
従来のメディア巻き取り手段では、メディア110がスキューした場合、また左右テンション差が発生した場合であっても同一方向に巻き続けるのみで、問題を改善できる機能を有していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公開2002-80152号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】インターネット(URL:http://www.mimaki.co.jp/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、各種条件に対応してテンションを付加させることができ、メディアの左右テンションバランスの補正、及びスキューの補正を行い、メディア浮きやシワ発生を低減させたメディア搬送機構を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記メディア搬送機構を備えることで、メディアを安定走行させることができ、印字不良がなく安定して印刷可能なプリンタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の搬送機構は、帯状に長いメディアを用いる装置において用いられ、搬送されるメディアにテンションを付加するテンションローラを備えた搬送機構であって、前記テンションローラは、搬送されるメディアの搬送経路を屈曲させることにより該メディアにテンションを付加するテンションバーと、前記テンションバーの両端部に配され、該テンションバーを支持するアーム部と、から構成され、前記アーム部が弾性体により構成され、該弾性体がそれぞれ別個に伸縮することにより、前記テンションバーがメディアの搬送方向に垂直な面内で揺動可能とされていることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の搬送機構は、請求項1において、前記弾性体が、コイルばねであることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載のプリンタ装置は、請求項1又は2に記載の搬送機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、搬送機構においてテンションバーの両端を支持しているアーム部を弾性体により構成することで、メディア左右でたるみが生じても、弾性体の伸縮によりたるみを吸収し、さらに左右で異なったテンションを付加することができる。これによりメディアの左右テンションバランスの補正を行うことができ、メディア搬送時のスキューやシワなどの不具合の発生を低減することができる。その結果、本発明では、メディア浮きやシワ発生を低減させ、メディアを安定走行させることが可能なメディア搬送機構を提供することができる。
また、本発明のプリンタ装置は、前記本発明のメディア搬送機構を備えているので、メディア搬送時の左右テンションバランスの補正を行うことができ、スキューやシワなどの不具合の発生を低減することができる。その結果、本発明では、メディアを安定走行させることができ、印字不良がなく安定して印刷可能なプリンタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のプリンタ装置の概略構成を示す図である
【図2】図1において、テンションローラ部分を抜き出して模式的に示す図である。
【図3】テンションローラにおいて、片方のコイルばね(アーム部材)を伸長した状態を模式的に示す図である。
【図4】従来のプリンタ装置の概略構成を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のメディア搬送機構及びプリンタ装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のプリンタ装置の概略構成図である。なお、ここではプリンタ装置としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
このインクジェットプリンタ(プリンタ装置)1は、プラテン20上方をプラテン20表面とほぼ平行なX−Y方向(図1の左右方向と表裏面方向)に相対的に移動させるインクジェットヘッド30に並ぶノズルからインクを噴射させて、そのインクをプラテン20上に搭載されたシート等のメディア10表面にドット状に着弾させることにより、そのメディア10表面に、複数のインクのドットの配列からなる文字や画像等をプリントする。
【0016】
このインクジェットプリンタ1においては、インクジェットヘッド30を、一定の移動停止時間をあけて、プラテン20上方を、繰り返しY方向に往復移動させている。他方、メディア10は、プラテン20上を、正方向(前方向)のX方向に順送りしている。そして、インクジェットヘッド30を、メディア10上方をX−Y方向に相対的に移動させている。
【0017】
このようなインクジェットプリンタ1において、帯状に長いシート等のメディア10は、後述するメディア搬送機構40により、プラテン上をX方向に所定距離づつ順送りされて、画像等をプリント済みのメディア10は、ロール状に巻き取られる。
【0018】
そして、本発明のプリンタ装置1は、具体的には後述するようなメディア搬送機構40を備えているので、メディア10の左右でたるみが生じても、アーム部材を構成する弾性体の伸縮によりたるみを吸収し、さらに左右で異なったテンションを付加することができる。これによりメディア搬送時の左右テンションバランスの補正を行うことができ、スキューやシワなどの不具合の発生を低減することができる。その結果、本発明のプリンタ装置1は、メディア10を安定走行させることができ、印字不良がなく安定して印刷可能である。
【0019】
以下、本発明の搬送機構について説明する。
搬送機構40は、メディア10を搬送するための装置であり、搬送と搬送停止とを繰り返しながら、メディア10を搬送する。本例において、搬送機構40は、繰り出しローラ41、モータ42、テンションローラ43、従動ローラ44,45,46、テーブル(プラテン20)、巻き取りローラ47、及びモータ46を有する。
【0020】
繰り出しローラ41は、メディアロール10aを保持するローラであり、メディア10を引き出す力に応じてメディアロール10aからメディア10が順次繰り出されるように、メディアロール10aを回転可能に保持する。モータ42は、メディア10を繰り出す方向と反対の方向に繰り出しローラ41を付勢する。これにより、モータ42は、逆テンションをかけて、メディア10にかかるテンションを調整する。
【0021】
テンションローラ43は、搬送されるメディア10の搬送経路を屈曲させることにより、メディア10を押さえつけて伸ばし、該メディア10にテンションを付加する。
図2及び図3は、本発明の搬送機構40において、テンションローラ43の部分を抜き出して模式的に示す図である。
このテンションローラ43は、搬送されるメディア10にテンションを付加するテンションバー50と、前記テンションバー50の両端部にそれぞれ配され、該テンションバー50を支持するアーム部51a,51bと、アーム部51a,51bを固定するアーム固定部52と、から構成される。
【0022】
そして特に、本発明では、アーム部51a,51bが弾性体により構成され、該弾性体がそれぞれ別個に伸縮することにより、テンションバー50がメディア10の搬送方向に垂直な面内で揺動可能とされていることを特徴とする。
前記弾性体としては、例えば、コイルばね等が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、本実施例では、弾性体としてコイルばねを用いた場合を例に挙げて説明する。
図3に示すように、アーム部51a,51b(コイルばね)の固定部を上下に移動させることでコイルばねの伸長を調節することができ、これにより使用メディア毎にテンションの強弱を調節することができる。人的にばね長さ(ばね張力)を変更するのではなく、メディア左右にたるみ側、張り側ができることで自然にばね長さ(ばね張力)が変わる。
【0023】
アーム部51a,51bにおいてコイルばねの伸長を調節することにより、メディア10に付加されるテンションの強弱を調節することができる。すなわち、図3においてコイルばねが引きばねの場合、アーム部51a(張り側)においては、ばねの伸びが大きくなることで張力(ばねの弾性力)が大きくなり、メディア10に付加されるテンションは大きくなる。一方、アーム部51b(たるみ側)においては、ばねの伸びが小さくなることで張力(ばねの弾性力)が小さくなり、メディア10に付加されるテンションは小さくなる。このようにメディアの左右でたるみが生じても、コイルばねの伸縮によりたるみを吸収し、さらにテンションを付加することができる。さらにメディア左右で異なったテンションを付加することでスキューの補正を行うことができる。
なお、ここではコイルばねとして引きばねを用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、押しばねを用いた場合でも同様に適用可能である。
【0024】
図1に示すように、従動ローラ44,45,46は、メディア10の搬送をガイドするためのローラである。従動ローラ44,45,46は、繰り出しローラ41に対してメディア10の搬送方向下流にそれぞれ設けられており、搬送されるメディア10の移動に従って回転する。
【0025】
テーブル(プラテン20)は、搬送されるメディア10の下面を支持する吸着固定ステージであり、メディア10を挟んでインクジェットヘッド30と対向するように、従動ローラ45と従動ローラ46との間に設けられている。また、プラテン20は、所定の真空度で、メディア10を吸引する。そして、搬送が一時停止したタイミングで、メディア10を吸着により固定する。なお、メディア10が吸着により固定された後、インクジェットヘッド30は、固定されたメディア10に印刷を行う。
【0026】
巻き取りローラ47は、インクジェットヘッド30により印刷がされたメディア10を巻き取るローラであり、従動ローラ46に対して搬送方向下流に設けられている。モータ48は、メディア10を巻き取る方向に巻き取りローラ47を回転させる。これにより、巻き取りローラ47は、繰り出しローラ41に保持されたメディアロール10aからメディア10を順次繰り出し、搬送方向へ搬送する。
【0027】
このような本発明の搬送機構40では、テンションローラ43において、テンションバー50の両端を支持しているアーム部51a,51bをコイルばね(弾性体)により構成することで、メディア10左右でたるみが生じても、コイルばねの伸縮によりたるみを吸収し、さらに左右で異なったテンションを付加することができる。また、各種条件に対応してテンションを付加させることで、メディア10の左右テンションバランスの補正を行うことができ、これによりメディア搬送時のスキューやシワなどの不具合の発生を低減することができる。その結果、本発明の搬送機構40では、メディア浮きやシワ発生を低減させ、メディア10を安定走行させることが可能である。
【0028】
以上、本発明のメディア搬送機構及びそれを用いたプリンタ装置について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のメディア搬送機構及びそれを用いたプリンタ装置は、インクジェットプリンタは、勿論、帯状に長いシートプリント用の各種プリンタ、帯状布製造機器等から順に送り出されて来る帯状に長いメディアを巻き取るメディア搬送機構及びプリンタ装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 インクジェットプリンタ(プリンタ装置)、10 メディア、10a メディアロール、20 プラテン、30 インクジェットヘッド、40 メディア搬送機構、41 繰り出しローラ、42 モータ、43 テンションローラ、44,45,46 従動ローラ、47 巻き取りローラ、48 モータ、50 テンションバー、51a,51b アーム部、52 アーム固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に長いメディアを用いる装置において用いられ、搬送されるメディアにテンションを付加するテンションローラを備えた搬送機構であって、
前記テンションローラは、
搬送されるメディアの搬送経路を屈曲させることにより該メディアにテンションを付加するテンションバーと、
前記テンションバーの両端部に配され、該テンションバーを支持するアーム部と、から構成され、
前記アーム部が弾性体により構成され、該弾性体がそれぞれ別個に伸縮することにより、前記テンションバーがメディアの搬送方向に垂直な面内で揺動可能とされていることを特徴とする搬送機構。
【請求項2】
前記弾性体が、コイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の搬送機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送機構を備えたことを特徴とするプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−280472(P2010−280472A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134448(P2009−134448)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】