説明

メラニン産生誘導剤および被験物質の評価方法

【課題】色素細胞において、メラニン産生を簡便な操作で誘導することができるメラニン産生誘導剤及び被験物質の美白作用を迅速かつ簡便な操作で評価することができる被験物質の評価方法を提供すること。
【解決手段】IL−8、CTGF及びIL−1F9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を含有するメラニン産生誘導剤並びに色素細胞含有細胞群に前記因子を接触させてメラニン産生を誘導した細胞群に被験物質を接触させ、メラニンの量を測定し、測定されたメラニンの量に基づき、被験物質の美白作用を評価する被験物質の評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン産生誘導剤および被験物質の評価方法に関する。さらに詳しくは、皮膚外用剤などの評価や開発、生化学などの分野における基礎研究などの際に有用なメラニン産生誘導剤および被験物質の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線による皮膚傷害は、1回の紫外線曝露によって生じる急性傷害と、長期間にわたる紫外線曝露の蓄積によって生じる慢性傷害とに分類される。前記急性傷害としては、例えば、サンタン、紅斑などが挙げられる。また、前記慢性障害としては、例えば、色素沈着、しわなどの光老化などが挙げられる。
【0003】
前記皮膚傷害のなかで、色素沈着を改善または予防するためには、紫外線による急性障害を緩和させることが重要であると考えられている。かかる色素沈着は、紫外線B波(UV−B)によって誘導され、主に、色素細胞の活性化および増殖、チロシナーゼの活性化(成熟チロシナーゼの生成)、色素細胞中のメラノソーム内への成熟チロシナーゼの移行による当該メラノソーム内でのメラニン産生、色素細胞から角化細胞へのメラノソームの輸送などのプロセスを経て生じていると考えられている。
【0004】
前記色素細胞は、エンドセリン−1、α−色素細胞刺激ホルモンおよび膜結合型の幹細胞増殖因子それぞれによって活性化される(例えば、非特許文献1、非特許文献2などを参照)。そのため、前記エンドセリン−1、α−色素細胞刺激ホルモンおよび膜結合型の幹細胞増殖因子それぞれの産生やこれらの生理活性を抑制する成分を含む美白剤によって色素細胞の活性化を抑制して色素沈着を改善または予防することが提案されている(例えば、特許文献1などを参照)。かかる美白剤の評価は、前記美白剤による前記エンドセリン−1、α−色素細胞刺激ホルモンおよび膜結合型の幹細胞増殖因子それぞれの産生抑制率に基づいて評価されている。しかしながら、前記成分によっては、色素沈着の改善または予防に対する実効性が低い場合がある。
【0005】
一方、美白剤などの被験物質の美白作用を評価する方法として、色素沈着部位への被験物質の投与前後における当該色素沈着部位と色素沈着の色の濃さをグレースケールの各ピクセルからなる画像として抽出し、つぎに、色素沈着部位の面積をピクセル数によって数値化し、その後、色素沈着部位への被験物質の投与前後における色素沈着部位の面積の変化を調べることにより、美白作用を評価する方法が提案されている(例えば、特許文献2などを参照)。しかしながら、前記方法は、操作が複雑であるという欠点がある。
【0006】
これに対して、被験物質によってケモカイン(C−X−Cモチーフ)レセプター3、インターフェロンγ−誘導性10kDaタンパク質、インターフェロンγ−誘導モノカイン、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質およびE−セレクチンそれぞれの遺伝子の発現量が減少するかどうかを調べることによって被験物質の美白作用の評価を行なうことが本発明者らによって提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4などを参照)。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、現時点では、インターロイキン−8、結合組織成長因子およびインターロイキン−1ファミリー メンバー9それぞれとメラニン産生との関連性や前記関連性を利用して、前記被験物質の美白作用を迅速かつ簡便な操作で評価する方法を具体的に記載した文献を発見していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2010−13413号公報
【特許文献2】特開2008-245666号公報
【特許文献3】特開2009−35502号公報
【特許文献4】特開2009−35499号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ハチヤ・アキラ(Akira Hachiya)他5名,「紫外線Bにより誘導されたヒトのメラニン産生における2つの傍分泌性メラニン形成サイトカイニン、幹細胞因子およびエンドセリン−1の2相性発現(Biphasic Expression of Two Paracrine Melanogenic Cytokines,Stem Cell Factor and Endothelin−1,in Ultraviolet B−Induced Human Melanogenesis)」,アメリカン・ジャーナル・オブ・ペイソロジー(American Journal of Pathology),2004年12月発行,第165巻,第6号,p.2099−2109
【非特許文献2】タダ・アキヒロ(Akihiro Tada)外7名,「エンドセリン−1はヒト色素細胞のメラニン生成を調節し、紫外線照射に対する応答に役割を果たす傍分泌性成長因子である(Endothelin−1 is a paracrine growth factor that modulates melanogenesis of human melanocytes and participates in their responses to ultraviolet radiation)」,セル・グロース&ディファレンシエーション(Cell Growth & Differentiation),1998年7月発行,第9巻,p.575−584
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、色素細胞において、メラニン産生を簡便な操作で誘導することができるメラニン産生誘導剤を提供することを目的とする。また、本発明は、被験物質の美白作用を迅速かつ簡便な操作で評価することができる被験物質の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) 色素細胞におけるメラニン産生を誘導するメラニン産生誘導剤であって、インターロイキン−8、結合組織成長因子およびインターロイキン−1ファミリー メンバー9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を含有することを特徴とするメラニン産生誘導剤、
(2) 被験物質の美白作用を評価する被験物質の評価方法であって、
(A)色素細胞を含有する細胞群に、インターロイキン−8、結合組織成長因子およびインターロイキン−1ファミリー メンバー9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を接触させ、前記細胞群中の色素細胞におけるメラニン産生を誘導するステップ、
(B)前記ステップ(A)で得られた細胞群に被験物質を接触させ、前記細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量を測定するステップ、および
(C)前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量に基づき、前記因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制を調べ、前記被験物質の美白作用を評価するステップ
を含む被験物質の評価方法、
(3) 前記細胞群がヒト細胞からなる細胞群である前記(2)に記載の評価方法、ならびに
(4) 前記細胞群がヒト色素細胞からなる細胞群またはヒト色素細胞とヒト表皮角化細胞とからなる細胞群である前記(3)に記載の評価方法
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメラニン産生誘導剤は、色素細胞において、メラニン産生を簡便な操作で誘導することができるという優れた効果を奏する。本発明の被験物質の評価方法は、被験物質の美白作用を迅速かつ簡便な操作で評価することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は試験例1において、NMM長期維持培地で培養したNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真、(b)は試験例1において、DMEM/F12調整培地で培養したNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真、ならびに(c)は試験例1において、DK−SFM/254培地で培養したNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真である。
【図2】試験例2において、実験番号1〜3それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を示すグラフである。
【図3】(a)は試験例3において、UV−B非照射の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真、(b)は試験例3において、UV−B非照射の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの染色像を示す図面代用写真、(c)は試験例3において、UV−B照射後の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真、(d)は試験例4において、UV−B照射後の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの染色像を示す図面代用写真である。
【図4】(a)は試験例3において、実験番号4および5それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を示すグラフ、(b)は試験例3において、実験番号4および5それぞれの試料と細胞数の相対値との関係を示すグラフ、(c)は試験例3において、実験番号4および5それぞれの試料と1細胞あたりのメラニン量の相対値との関係を示すグラフである。
【図5】試験例5において、実験番号6〜10それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を示すグラフである。
【図6】(a)は実施例1において、実験番号11および12それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を示すグラフ、(b)は実施例1において、実験番号13および14それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を示すグラフ、(c)は実施例1において、実験番号15および16それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.メラニン産生誘導剤
本発明のメラニン産生誘導剤は、色素細胞におけるメラニン産生を誘導するメラニン産生誘導剤であって、インターロイキン−8(以下、「IL−8」という)、結合組織成長因子(以下、「CTGF」という)およびインターロイキン−1ファミリー メンバー9(以下、「IL−1F9」という)からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、紫外線をヒト角化細胞に照射した場合、前記ヒト角化細胞におけるIL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれの遺伝子の発現が誘導され、前記遺伝子の発現量が紫外線非照射のヒト角化細胞における前記遺伝子の発現量と比べて著しく増加することを見出した。また、本発明者らは、色素細胞を含有する細胞群に前記因子を接触させた場合、当該細胞群中の色素細胞におけるメラニン産生が誘導されることを見出した。さらに、本発明者らは、前記因子を介して誘導されるメラニン産生が美白剤によって抑制されることと美白剤による美白作用の発現とに相関性があることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0016】
前記色素細胞としては、例えば、ヒト色素細胞、マウス色素細胞などが挙げられる。
【0017】
本明細書において、「前記因子によるメラニン産生の誘導」とは、前記因子による色素細胞への刺激に応答して、当該色素細胞における単位時間あたりに産生されたメラニンの質量を「メラニン量A」、前記因子非存在下の色素細胞における単位時間あたりに産生されたメラニンの質量を「メラニン量B」、既知のメラニン産生因子であるαMSH存在下の色素細胞における単位時間あたりに産生されたメラニンの質量を「メラニン量C」とした場合、メラニン量Aが、メラニン量Bと比べて有意に多くなっており、かつメラニン量Aが、メラニン量Cよりも有意に多くなっていることをいう。
【0018】
なお、本明細書において、「有意」とは、t検定のp値が0.05未満、好ましくは0.01未満であることをいう。
【0019】
前記因子によるメラニン産生の誘導は、色素細胞を可溶化し、得られた可溶化物からタンパク質を除去して得られた抽出物の405nmにおける吸光度を吸光度計で測定して得られた値をメラニン量A〜Cそれぞれの指標として用い、式(1):
【0020】
(因子と接触させた色素細胞から得られた抽出物の405nmにおける吸光度)/(因子と接触させていない色素細胞から得られた抽出物の405nmにおける吸光度) (1)
【0021】
を算出することによって評価することができる。
【0022】
本発明のメラニン産生誘導剤によれば、本発明のメラニン産生誘導剤を色素細胞に接触させるだけで、色素細胞において、メラニン産生を簡便な操作で誘導することができる。また、本発明のメラニン産生誘導剤に含まれている前記因子は、角化細胞において、紫外線照射によってその遺伝子の発現量が増加する因子であり、かつ色素細胞におけるメラニン産生を誘導する因子である。したがって、本発明のメラニン産生誘導剤を色素細胞に接触させることにより、色素細胞において、紫外線照射によって前記因子を介して誘導されるメラニン産生を再現することができる。また、前記因子を介して誘導されるメラニン産生が美白剤によって抑制されることは、当該美白剤による美白作用の発現と相関性があることから、本発明のメラニン産生誘導剤は、被験物質の美白作用を評価するのに有用である。
【0023】
前記IL−8は、例えば、紫外線照射によって角化細胞を刺激すること、リポ多糖などの刺激物質を用いてマクロファージを刺激することなどによって産生された天然のIL−8であってもよく、遺伝子工学的手法により作製された組換えIL−8であってもよい。また、本発明では、前記IL−8として、市販のIL−8を用いることができる。
【0024】
前記IL−8の供給源となる動物の種類は、本発明のメラニン産生誘導剤の用途に応じて異なるので、一概には決定することができない。例えば、本発明のメラニン産生誘導剤をヒトまたはヒトの色素細胞に適用する場合、前記IL−8は、ヒトの色素細胞におけるメラニン産生を効率よく誘導する観点から、ヒトのIL−8であることが好ましい。
【0025】
前記CTGFは、TGFβなどの刺激物質を用いて正常線維芽細胞を刺激することなどによって産生された天然のCTGFであってもよく、遺伝子工学的手法により作製された組換えCTGFであってもよい。また、本発明では、前記CTGFとして、市販のCTGFを用いることができる。
【0026】
前記CTGFの供給源となる動物の種類は、本発明のメラニン産生誘導剤の用途に応じて異なるので、一概には決定することができない。例えば、本発明のメラニン産生誘導剤をヒトまたはヒトの色素細胞に適用する場合、前記CTGFは、ヒトの色素細胞におけるメラニン産生を効率よく誘導する観点から、ヒトのCTGFであることが好ましい。
【0027】
前記IL−1F9は、S100A8、S100A9などの刺激物質を用いて正常表皮角化細胞を刺激することなどによって産生された天然のIL−1F9であってもよく、遺伝子工学的手法により作製された組換えIL−1F9であってもよい。また、本発明では、前記IL−1F9として、市販のIL−1F9を用いることができる。
【0028】
前記IL−1F9の供給源となる動物の種類は、本発明のメラニン産生誘導剤の用途に応じて異なるので、一概には決定することができない。例えば、本発明のメラニン産生誘導剤をヒトまたはヒト色素細胞に適用する場合、前記IL−1F9は、ヒトの皮膚などの色素細胞におけるメラニン産生を効率よく誘導する観点から、ヒトのIL−1F9であることが好ましい。
【0029】
本発明のメラニン産生誘導剤においては、前記因子として、IL−8、CTGFおよびIL−1F9のいずれかを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明のメラニン産生誘導剤は、前記因子の凍結乾燥物などのように前記因子以外の物質などを含まない剤型であってもよく、緩衝液などの溶媒に前記因子を混合した液剤の剤型であってもよい。
【0031】
本発明のメラニン産生誘導剤が前記液剤である場合、前記メラニン産生誘導剤中における前記因子の含有量は、当該メラニン産生誘導剤の用途によって異なるので、一概には決定することができないが、通常、前記液剤に用いられる溶媒に対する前記因子の希釈安定性を確保する観点から、1ng/mL以上であることが好ましく、10ng/mL以上であることがより好ましく、使用時における取り扱いの容易性の観点から、10mg/mL以下であることが好ましく、1mg/mL以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明のメラニン産生誘導剤は、本発明の目的を妨げない範囲で、前記因子の生理活性を維持するに適した緩衝液、リン酸緩衝化生理的食塩水などをさらに含有していてもよい。前記緩衝液としては、例えば、HEPESなどが挙げられる。
【0033】
本発明のメラニン産生誘導剤によれば、例えば、色素細胞を含む培地、色素細胞を含む細胞懸濁液などに当該メラニン産生誘導剤を添加することなどにより、色素細胞におけるメラニン産生を誘導することができる。
【0034】
本発明のメラニン産生誘導剤を用いて色素細胞におけるメラニン産生を誘導するに際して、前記因子の量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対する因子の量として換算すると、当該因子の量は、通常、前記因子によるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.001ng以上であることが好ましく、0.01ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、500ng以下であることが好ましく、50ng以下であることがより好ましい。
【0035】
前記因子がIL−8である場合、IL−8の量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するIL−8の量として換算すると、当該IL−8の量は、通常、IL−8によるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.001ng以上であることが好ましく、0.01ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、10ng以下であることが好ましく、5ng以下であることがより好ましい。
【0036】
前記因子がCTGFである場合、CTGFの量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するCTGFの量として換算すると、当該CTGFの量は、通常、CTGFによるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.005ng以上であることが好ましく、0.05ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、50ng以下であることが好ましく、5ng以下であることがより好ましい。
【0037】
前記因子がIL−1F9である場合、IL−1F9の量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するIL−1F9の量として換算すると、当該IL−1F9の量は、通常、IL−1F9によるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.5ng以上であることが好ましく、5ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、500ng以下であることが好ましく、50ng以下であることがより好ましい。
【0038】
前記因子がIL−8、CTGFおよびIL−1F9からなる群より選ばれた2種以上の混合物である場合、IL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれの量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するIL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれの量として換算すると、通常、IL−8の量が5ng以下であり、CTGFの量が5ng以下であり、かつIL−1F9の量が50ng以下であることが好ましい。なお、IL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれの量の下限値は、本発明のメラニン産生誘導剤の用途によって異なるので、一概には決定することができない。
【0039】
以上説明したように、本発明のメラニン産生誘導剤によれば、当該メラニン産生誘導剤を色素細胞に接触させるだけで、色素細胞におけるメラニン産生を簡便な操作で誘導することができる。しかも、本発明のメラニン産生誘導剤によれば、色素細胞において、紫外線照射によって前記因子を介して誘導されるメラニン産生を再現することができる。したがって、本発明のメラニン産生誘導剤は、被験物質の美白作用の評価などに有用である。
【0040】
2.被験物質の評価方法
本発明の被験物質の評価方法は、被験物質の美白作用を評価する被験物質の評価方法であって、
(A)色素細胞を含有する細胞群に、IL−8、CTGFおよびIL−1F9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を接触させ、前記細胞群中の色素細胞におけるメラニン産生を誘導するステップ、
(B)前記ステップ(A)で得られた細胞群に被験物質を接触させ、前記細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量を測定するステップ、および
(C)前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量に基づき、前記因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制を調べ、前記被験物質の美白作用を評価するステップ
を含むことを特徴とする。
【0041】
本発明の評価方法によれば、色素細胞を含有する細胞群に前記因子を接触させて、メラニン産生を誘導した細胞群と、被験物質とを接触させることにより、前記被験物質が、前記因子を介して誘導されるメラニン産生を抑制するかどうかを迅速かつ簡便に調べることができる。また、かかる因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制と美白剤の美白作用とに相関性があることから、本発明の評価方法によれば、前記因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制の有無や前記抑制の程度に基づいて、被験物質の美白作用を迅速かつ簡便に評価することができる。
【0042】
ステップ(A)では、色素細胞を含有する細胞群に、IL−8、CTGFおよびIL−1F9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を接触させ、前記細胞群中の色素細胞におけるメラニン産生を誘導する。
【0043】
前記細胞群としては、例えば、ヒト細胞からなる細胞群、マウス細胞からなる細胞群、異種細胞の組み合わせからなる細胞群などが挙げられる。前記細胞は、ヒトの皮膚に適した被験物質を評価する観点から、ヒト細胞からなる細胞群であることが好ましい。
【0044】
IL−8、CTGFおよびIL−1F9は、それぞれ、前記メラニン産生誘導剤におけるIL−8、CTGFおよびIL−1F9と同様である。
【0045】
前記色素細胞としては、例えば、ヒト色素細胞、マウス色素細胞などが挙げられる。前記色素細胞は、ヒトの皮膚に適した被験物質を評価する観点から、ヒト色素細胞であることが好ましい。
【0046】
前記細胞群としては、例えば、前記色素細胞からなる細胞群、前記色素細胞と角化細胞とからなる細胞群などが挙げられる。前記細胞群は、ヒトの皮膚に適した被験物質を評価する観点から、ヒト色素細胞からなる細胞群またはヒト色素細胞とヒト角化細胞とからなる細胞群が好ましい。前記細胞群が、ヒト色素細胞からなる細胞群である場合、かかる細胞群を用いる本発明の評価方法によれば、例えば、ヒト色素細胞中の受容体が直接関与するメラニン産生の誘導に対する被験物質の作用を観察できる。したがって、かかる細胞群を用いる本発明の評価方法によれば、ヒト色素細胞のメラニン産生機構に対する被験物質の直接的な作用を評価することができる。また、前記細胞群が、ヒト色素細胞とヒト角化細胞とからなる細胞群である場合、前記細胞群中では、ヒト色素細胞とヒト角化細胞との相互作用、ヒト角化細胞からヒト色素細胞へのパラクライン的刺激から発生するメラニン産生誘導、ヒト色素細胞からヒト角化細胞へのメラニン輸送などが発生する。したがって、かかる細胞群を用いる本発明の評価方法によれば、ヒト色素細胞と当該ヒト色素細胞がメラノソームを受け渡すヒト表皮角化細胞とにより構成されるヒトのメラニン産生ユニットにおけるメラニン産生の誘導に対する被験物質の作用を評価することができる。
【0047】
前記ヒト色素細胞は、正常ヒト色素細胞および不死化ヒト色素細胞のいずれであってもよい。
【0048】
前記ヒト角化細胞は、正常ヒト角化細胞および不死化ヒト角化細胞のいずれであってもよい。前記ヒト角化細胞としては、例えば、正常ヒト表皮角化細胞などが挙げられる。
【0049】
前記細胞群と前記因子との接触は、例えば、前記細胞群を含む培地に前記因子を添加して当該細胞群を培養すること、前記細胞群を含む細胞懸濁液に前記因子を添加した混合物を当該細胞群の生育に適した温度で保温することなどにより行なうことができる。
【0050】
前記ステップ(A)においては、前記因子として、IL−8、CTGFおよびIL−1F9のいずれかを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
前記細胞群に前記因子を接触させるに際して、前記細胞群を含む培地または前記細胞群を含む細胞懸濁液中の前記因子の量は、因子の種類、細胞群の種類、細胞群を含む培地または細胞群を含む細胞懸濁液中の細胞数などにより異なるので一概に決定することができない。前記因子の量を、例えば、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対する前記因子の量として換算すると、当該因子の量は、通常、前記因子によるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.001ng以上であることが好ましく、0.01ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、500ng以下であることが好ましく、50ng以下であることがより好ましい。
【0052】
前記因子として、IL−8を単独で用いる場合、例えば、前記IL−8の量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するIL−8の量として換算すると、当該IL−8の量は、通常、IL−8によるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.001ng以上であることが好ましく、0.01ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、10ng以下であることが好ましく、5ng以下であることがより好ましい。
【0053】
前記因子として、CTGFを単独で用いる場合、前記CTGFの量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するCTGFの量として換算すると、当該CTGFの量は、通常、CTGFによるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.005ng以上であることが好ましく、0.05ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、50ng以下であることが好ましく、5ng以下であることがより好ましい。
【0054】
前記因子として、IL−1F9を単独で用いる場合、前記IL−1F9の量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するIL−1F9の量として換算すると、当該IL−1F9の量は、通常、IL−1F9によるメラニン産生の誘導を十分に行なう観点から、0.01ng以上であることが好ましく、0.1ng以上であることがより好ましく、細胞の生育や生存に対する負荷を抑制する観点から、500ng以下であることが好ましく、50ng以下であることがより好ましい。
【0055】
前記因子として、IL−8、CTGFおよびIL−1F9からなる群より選ばれた2種以上を混合して用いる場合、例えば、IL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれの量を、例えば、3mLの培地が入った6cmディッシュに細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された細胞に対するIL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれの量として換算すると、通常、IL−8の量が5ng以下であり、CTGFの量が5ng以下であり、かつIL−1F9の量が50ng以下であることが好ましい。
【0056】
前記細胞群と前記因子との接触時間は、被験物質の評価を行なう目的などにより異なるので一概に決定することができない。
【0057】
つぎに、ステップ(B)では、前記ステップ(A)で得られた細胞群に被験物質を接触させ、前記細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量を測定する。
【0058】
前記細胞群と被験物質との接触は、例えば、前記細胞群を含む培地に被験物質を添加して当該細胞群を培養することなどが挙げられる。
【0059】
前記細胞群に被験物質を接触させるに際して、用いられる被験物質の量は、被験物質の種類などにより異なるので一概に決定することができない。
【0060】
メラニンの量(質量)の測定は、例えば、細胞群の培養物に含まれる細胞から、エチルアルコール−ジエチルエーテル混合溶液〔エチルアルコール/ジエチルエーテル(体積比)=1/1〕、2N水酸化ナトリウム−10体積%ジメチルスルホキシド混合溶液〔2N水酸化ナトリウム、10体積%ジメチルスルホキシド〕などの抽出溶媒を用いてメラニンを含む抽出物を得、得られた抽出物の405nmにおける吸光度を吸光度計で測定することなどによって行なうことができる。なお、メラニンの量の測定に際して、メラニンを含む抽出物を得る抽出方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0061】
その後、ステップ(C)では、前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量に基づき、前記因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制を調べ、前記被験物質の美白作用を評価する。
【0062】
前記被験物質が、前記因子を介して誘導されるメラニン産生を抑制するかどうかは、例えば、前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量と、被験物質を接触させていない細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量とを比較することにより調べることができる。
【0063】
ステップ(C)では、前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量が、例えば、被験物質を接触させていない細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量よりも有意に少なくなっている場合、前記被験物質が、前記因子を介して誘導されるメラニン産生を抑制すると判断することができる。なお、評価結果の精度を高める観点から、前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量は、コウジ酸を接触させた細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量よりも有意に少なくなっていることが好ましい。
【0064】
前記のように、前記被験物質が、前記因子を介して誘導されるメラニン産生を抑制すると判断した場合、当該被験物質が美白作用を示す物質であると評価することができる。また、前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量と、被験物質を接触させていない細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量との差が大きくなるほど、当該被験物質がより強い美白作用を有すると評価することができる。
【0065】
以上説明したように、本発明の評価方法によれば、前記因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制の有無や抑制の程度に基づいて、被験物質の美白作用を簡便に評価することができることから、美白用外用剤などに有用な美白剤のスクリーニングや、美白用外用剤などの美白作用の評価を迅速かつ簡便な操作で行なうことができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0067】
(製造例1)
DK−SFM〔ライフテクノロジーズ社製〕と色素細胞増殖培地254〔倉敷紡績(株)製〕とを、DK−SFMと254との体積比(DK−SFM/254)が1/1となるように添加して、DK−SFM/254培地を得た。なお、前記DK−SFM/254培地中のカルシウム濃度は、0.15mM未満であった。
【0068】
(製造例2)
塩基性線維芽細胞増殖因子(b−FGF)〔シグマ・アルドリッチ・コーポレーション製〕およびα-色素細胞刺激ホルモン(αMSH)〔シグマ・アルドリッチ・コーポレーション製〕を、b−FGF濃度が5ng/mLおよびαMSH濃度が10ng/mLとなるように3次元培養皮膚維持培地〔倉敷紡績(株)製、商品名:NMM〕に添加してNMM長期維持培地を得た。なお、前記NMM長期維持培地中のカルシウム濃度は、1.2mMであった。
【0069】
(製造例3)
FBS、アデニン〔シグマ・アルドリッチ・コーポレーション製〕、EGF、ヒドロコルチゾン、インスリン、イソプロテレノール〔シグマ・アルドリッチ・コーポレーション製〕、トランスフェリンおよびトリヨードチロニン〔シグマ・アルドリッチ・コーポレーション製〕を、FBS濃度が10体積%、アデニン濃度が0.18mM、EGF濃度が10ng/mL、ヒドロコルチゾン濃度が0.4μg/mL、インスリン濃度が5μg/mL、イソプロテレノール濃度が10μM、トランスフェリン濃度が5μg/mLおよびトリヨードチロニン濃度が2nMとなるようにDMEM/F12混合培地[DMEM〔ライフテクノロジーズ社製〕とF12〔ライフテクノロジーズ社製〕との混合物(DMEM/F12の体積比=3/1)]に添加して、DMEM/F12調整培地を得た。なお、前記DMEM/F12調整培地中のカルシウム濃度は、0.15mM未満であった。
【0070】
(製造例4)
正常ヒト表皮角化細胞(以下、「NHK」という)〔倉敷紡績(株)製〕と正常ヒト色素細胞(以下、「NHM」という)〔倉敷紡績(株)製〕とを、NHK/NHM(細胞数比)が10/3となるように混合してNHK/NHM混合物を得た。
【0071】
(試験例1)培地の検討
製造例4で得られたNHK/NHM混合物を、全細胞濃度が1.0×104細胞/cm2となるように6cmディッシュ上の培地に播種し、5体積%二酸化炭素下、37℃で7日間培養した。なお、培地として、製造例1で得られたDK−SFM/254培地、製造例2で得られたNMM長期維持培地または製造例3で得られたDMEM/F12調整培地を用いた。また、培養期間中、前記6cmディッシュ上の培地を、1日おきに新鮮な培地に交換した。
【0072】
BrdU検出キット〔ベクトン・ディッキンソン社製、商品名:BrdU Flow Kit〕および蛍光顕微鏡システム〔オリンパスフォトアクチベーション蛍光顕微鏡システムIX81−PAFM〕を用いて培養後の細胞に取り込まれたBrdUの量を調べることにより、培養後の細胞の細胞増殖活性を測定した。
【0073】
また、培養後の細胞を位相差顕微鏡〔オリンパス社製、商品名:IX70〕で観察した。
【0074】
試験例1において、NMM長期維持培地で培養したNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真を図1(a)に、試験例1において、DMEM/F12調整培地で培養したNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真を図1(b)に、ならびに試験例1において、DK−SFM/254培地で培養したNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真を図1(c)にそれぞれ示す。なお、図中、スケールバーは、100μmを示す。
【0075】
図1(a)に示された結果から、カルシウム濃度が1.2mMであるNMM長期維持培地でNHKおよびNHMを培養した場合、NHKの分化が進行し、かつNHKおよびNHMが重層化されていることがわかる。しかしながら、細胞内に取り込まれたBrdUの量が細胞染色の強度により減少していることから、NHKおよびNHMの増殖活性が減弱していることがわかる。
【0076】
また、図1(b)に示された結果から、DMEM/F12調製培地でNHKおよびNHMを培養した場合、細胞の形状が扁平状になっており、特に、NHKが線維芽細胞様に伸長しているが、NHKおよびNHMが重層化されていないことがわかる。
【0077】
これに対して、図1(c)に示された結果から、カルシウム濃度が0.15mM未満であるDK−SFM/254培地でNHKおよびNHMを培養した場合、細胞が共に本来の形状を維持しながら増殖していることがわかる。
【0078】
したがって、これらの結果から、細胞が共に本来の形状を維持しながら増殖し、長期間培養することができたため、DK−SFM/254培地がNHKとNHMとの共培養に適していることが示唆される。
【0079】
(試験例2)
NHK(実験番号1)、NHM(実験番号2)、または製造例1で得られたNHKとNHMとの混合物(実験番号3)を、細胞濃度が1.0×104細胞/cm2となるように6cmディッシュ上のDK−SFM/254培地に播種し、5体積%二酸化炭素下、37℃で7日間培養した。なお、培養期間中、前記6cmディッシュ上の培地を、1日おきに新鮮な培地に交換した。
【0080】
つぎに、得られた培養物を1000×gで5分間での遠心分離に供して細胞を回収した。つぎに、リン酸緩衝生理食塩水で2回細胞を洗浄した。洗浄後の細胞を1000×gで5分間での遠心分離に供して上清を除去した。得られた細胞を蒸留水200mLに懸濁して細胞懸濁液を得た。
【0081】
得られた細胞懸濁液にエチルアルコール−ジエチルエーテル混合溶液〔エチルアルコール/ジエチルエーテル(体積比)=1/1〕1mLを添加した。得られた混合物を室温で15分間保温した後、3000×gで5分間の遠心分離に供して上清を除去して沈殿物を得た。得られた沈殿物に、2N水酸化ナトリウム−10体積%ジメチルスルホキシド混合溶液〔2N水酸化ナトリウム、10体積%ジメチルスルホキシド〕250μLを添加した。その後、得られた混合物を80℃で30分間保温した。保温後の混合物に、メチルアルコール−クロロホルム混合溶液〔メチルアルコール/クロロホルム(体積比)=1/2〕50μLを加えて懸濁した。得られた懸濁物を、3000×gで10分間での遠心分離に供し、上清を得た。
【0082】
得られた上清の405nmにおける吸光度を吸光度計〔バイオラッド(BioRad)社製、商品名:マイクロプレートリーダー〕で測定した。得られた測定値からメラニンの質量(以下、「メラニン量」という)を算出した。
【0083】
試験例2において、実験番号1〜3それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を図2に示す。図中、実験番号1はNHKの培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号2はNHMの培養物におけるメラニン量の相対値および実験番号3はNHKとNHMとの混合物の培養物におけるメラニン量の相対値をそれぞれ示す。
【0084】
図2に示された結果から、NHMの培養物におけるメラニン量を100とした場合、NHKとNHMとの混合物の培養物におけるメラニン量は、NHMの培養物におけるメラニン量の約190%に増加していることがわかる。
【0085】
したがって、これらの結果から、表皮角化細胞と色素細胞との相互作用があると考えられるため、色素細胞で産生されたメラニンが色素細胞から角化細胞に輸送されていることが示唆される。
【0086】
(試験例3)
製造例1で得られたNHKとNHMとの混合物を、細胞濃度が1.0×104細胞/cm2となるように6cmディッシュ上のDK−SFM/254培地に播種し、5体積%二酸化炭素下、37℃で培養した。なお、培養期間中、前記6cmディッシュ上の培地を、1日おきに新鮮な培地に交換した。
【0087】
培養開始から1日間経過後において、紫外線照射量が5mJ/cm2となるように紫外線B波〔UV−B(波長:280〜315nm)〕を前記NHKおよびNHMに照射した。UV−B照射後の前記混合物を、5体積%二酸化炭素下、37℃で7日間さらに培養した(実験番号5)。
【0088】
また、NHKとNHMとの混合物にUV−Bを照射する代わりに、当該混合物にUV−Bを照射しないことを除き、前記と同様にして前記混合物を培養した(実験番号4)。
【0089】
培養後の細胞を位相差顕微鏡で観察した。また、BrdU検出キットを用いて前記混合物の培養物に含まれる細胞にBrdUを取り込ませるとともに、前記細胞に取り込まれたBrdUを染色した。その後、蛍光顕微鏡システムを用いて染色後の細胞を観察した。
【0090】
試験例3において、UV−B非照射の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真を図3(a)に、試験例3において、UV−B非照射の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの染色像を示す図面代用写真を図3(b)、試験例3において、UV−B照射後の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの観察結果を示す図面代用写真を図3(c)に、試験例3において、UV−B照射後の混合物の培養物に含まれるNHKおよびNHMの染色像を示す図面代用写真を図3(d)にそれぞれ示す。図中、スケールバーは、100μmである。
【0091】
さらに、UV−B非照射の混合物の培養物およびUV−B照射後の混合物の培養物それぞれにおけるメラニン量を、前記試験例2と同様の操作を行なって測定した。つぎに、UV−B非照射の前記混合物の培養物におけるメラニン量を100として、前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値を算出した。
【0092】
また、UV−B非照射の混合物の培養物およびUV−B照射後の混合物の培養物それぞれの細胞数を、血球計算板によって算出した。つぎに、UV−B非照射の前記混合物の培養物における細胞数を100として、前記混合物の培養物における細胞数の相対値を算出した。
【0093】
試験例3において、実験番号4および5それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を図4(a)に、試験例3において、実験番号4および5それぞれの試料と細胞数の相対値との関係を図4(b)に、試験例3において、実験番号4および5それぞれの試料と1細胞あたりのメラニン量の相対値との関係を図4(c)にそれぞれ示す。図4(a)において、実験番号4はUV−B非照射の前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号5はUV−B照射後の前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値をそれぞれ示す。図4(b)において、実験番号4はUV−B非照射の前記混合物の培養物における細胞数の相対値、実験番号5はUV−B照射後の前記混合物の培養物における細胞数の相対値をそれぞれ示す。図4(c)において、実験番号4はUV−B非照射の前記混合物の培養物における1細胞あたりのメラニン量の相対値、実験番号5はUV−B照射後の前記混合物の培養物における1細胞あたりのメラニン量の相対値をそれぞれ示す。
【0094】
図3(a)〜(d)に示された結果から、UV−B非照射の場合、NHMおよびNHKのいずれも存在している〔図3(a)および(b)参照〕のに対して、UV−B照射後の前記混合物の培養物では、NHMが樹状に伸びた形状を示して生存しているが、NHKが生存していないことがわかる〔図3(c)および(d)参照〕。図4(b)に示された結果から、UV−B照射後の前記混合物の培養物の細胞数が、UV−B非照射の前記混合物の培養物の細胞数の約50%であることから、NHKは、UV−Bによって特異的にアポトーシスを起こしていることが示唆される。
【0095】
また、図4(a)に示された結果から、UV−B照射後の前記混合物の培養物の全メラニン量は、UV−B非照射の前記混合物の培養物における全メラニン量とほぼ同程度であることがわかる〔図4(a)参照〕。しかしながら、図4(c)に示された結果から、UV−B照射後の前記混合物の培養物における1細胞あたりのメラニン量は、UV−B非照射の前記混合物の培養物における1細胞あたりのメラニン量の約180%まで増加していることがわかる。
【0096】
これらの結果から、NHKとNHMとの混合物の培養物では、UV−B照射によってNHMが樹状形状となって、NHKにメラニンを輸送しようとしているが、NHKのアポトーシスによって、NHKが存在していないため、NHMからNHKへのメラニン輸送は行なわれていないと考えられる。しかしながら、図4(c)に示されるように、UV−B照射によって1細胞あたりのメラニン量が増加していることから、NHKがアポトーシスを起こす前に、NHKがUV−Bによる刺激によって、NHMにおけるメラニン産生を誘導する何らかの因子を分泌することが示唆される。
【0097】
(試験例4)
細胞濃度が1.0×104個/cm2となるように播種された6cmディッシュ上のNHK細胞に対して、UV−B照射量が7.5mJ/cm2となるようにUV−Bを照射した。つぎに、UV−B照射後のNHKを、細胞濃度が1.0×104細胞/cm2となるように6cmディッシュ上のDK−SFM/254培地に播種し、5体積%二酸化炭素下、37℃で培養した。なお、培養期間中、前記6cmディッシュ上の培地を、1日おきに新鮮な培地に交換した。
【0098】
UV−B照射時から6時間または24時間経過後の細胞を回収し、DNAを抽出した。抽出されたDNAとDNAマイクロアレイ〔アフィメトリックス社製、商品名:GeneChip〕とを用いてDNAマイクロアレイ解析を行なった。また、UV−Bを非照射としたことを除き、前記と同様にしてDNAマイクロアレイ解析を行なった。
【0099】
DNAマイクロアレイ解析によって得られた各遺伝子のシグナル強度のデータと式(2):
IF(U/N≧3,IF(N and U≧20,抽出,IF(U≧100,抽出,除外),除外) (2)
(式中、Nは、UV−B未照射の細胞における遺伝子のシグナル強度、Uは、UV−B照射後の細胞における遺伝子のシグナル強度を示す)
で表される条件式に基づいて、UV−B照射後のNHKにおける発現量がUV−B非照射のNHKにおける発現量と比べて3倍以上となっている遺伝子を選抜した。つぎに、選抜された遺伝子によりコードされる因子を、メラニン産生を誘導する候補因子として選抜した。
【0100】
選抜された候補因子を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
(試験例5)
(1)候補分子の使用濃度の検討
製造例1で得られたNHKとNHMとの混合物を、細胞濃度が1.0×104細胞/cm2となるように6cmディッシュ上のDK−SFM/254培地に播種した。その後、播種後の前記培地に、表1に示される候補因子のいずれかを、前記候補因子の濃度が各種濃度となるように添加した。その後、前記混合物を5体積%二酸化炭素下、37℃で培養した。なお、培養期間中、前記6cmディッシュ上の培地を、1日おきに新鮮な培地に交換した。
【0103】
前記混合物の培養物におけるメラニン量を、前記試験例2と同様にして測定した。また、前記混合物の培養物の細胞数を、血球計算版によって測定した。そして、各候補分子について、候補因子を含まないDK−SFM/254培地で前記と同様に培養して得られたNHKとNHMとの混合物の培養物の細胞数以上の細胞数となり、かつ産生されるメラニン量が最大となる至適濃度を決定した。
【0104】
(2)メラニン産生を誘導する因子の選抜
製造例2で得られたNHKとNHMとの混合物を、細胞濃度が1.0×104細胞/cm2となるように6cmディッシュ上のDK−SFM/254培地に播種した。つぎに、播種後の前記培地に、表1に示される候補因子のいずれかを、前記候補因子の濃度が前記至適濃度となるように添加した。その後、前記混合物を5体積%二酸化炭素下、37℃で培養した。なお、培養期間中、前記6cmディッシュ上の培地を、1日おきに新鮮な培地に交換した。
【0105】
また、NHKとNHMとの混合物にUV−Bを照射する代わりに、当該混合物にUV−Bを照射しないことを除き、前記と同様にしてUV−B非照射の前記混合物の培養物におけるメラニン量を測定した。つぎに、UV−B非照射の前記混合物の培養物におけるメラニン量を100として、前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値を算出した。
【0106】
前記因子の代わりに、陽性対照としてα-色素細胞刺激ホルモン(αMSH)〔シグマ・アルドリッチ・コーポレーション製〕を用い、前記と同様にして、メラニン量の相対値を算出した。また、前記因子を添加せずに、前記と同様にして、メラニン量の相対値を算出した。
【0107】
その後、前記表1に示される候補因子のなかから、前記メラニン量の相対値が100を超える値となる因子を選抜した。
【0108】
その結果、前記メラニン量の相対値が100を超える値となる因子として、IL−8、CTGFおよびIL−1F9が得られた。なお、前記混合物を播種したDK−SFM/254培地中のIL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれの至適濃度は、順に、5ng/mL、5ng/mLおよび50ng/mLであった。
【0109】
(3)IL−8、CTGFおよびIL−1F9それぞれによるメラニン産生誘導効果の検討
前記(2)において、前記因子を添加する代わりに、前記因子を培地に添加しないこと(実験番号6)、陽性対照であるαMSHを培地に添加したこと(実験番号7)、IL−8を培地に添加したこと(実験番号8)、CTGFを培地に添加したこと(実験番号9)またはIL−1F9を培地に添加したこと(実験番号10)を除き、前記(2)と同様にして、メラニン量の相対値を算出した。
【0110】
試験例5において、実験番号6〜10それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を図5に示す。図中、実験番号6は前記因子を添加していない培地で培養したHaCaT細胞とNHMとの混合物の培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号7は陽性対照(5ng/mLαMSH)を含む培地で培養したHaCaT細胞とNHMとの混合物の培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号8は5ng/mLIL−8を含む培地で培養したHaCaT細胞とNHMとの混合物の培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号9は5ng/mLCTGFを含む培地で培養したHaCaT細胞とNHMとの混合物の培養物におけるメラニン量の相対値および実験番号10は50ng/mLIL−1F9を含む培地で培養したHaCaT細胞とNHMとの混合物の培養物におけるメラニン量の相対値をそれぞれ示す。
【0111】
図5に示された結果から、IL−8、CTGFおよびIL−IF9は、それぞれ、メラニン産生を誘導する因子であることがわかる。
【0112】
(実施例1)
(1)IL−8を用いたコウジ酸の評価
製造例2で得られたHaCaT細胞とNHMとの混合物を、細胞濃度が1.0×104細胞/cm2となるように6cmディッシュ上のDK−SFM/254培地に播種した。その後、IL−8を、前記混合物を播種したDK−SFM/254培地に、IL−8濃度が5ng/mLとなるように添加した。さらに、得られた培地に、美白作用を有することが知られているコウジ酸を、コウジ酸濃度が1mMとなるように添加した。
【0113】
その後、前記混合物を5体積%二酸化炭素下、37℃で培養した。なお、培養期間中、前記6cmディッシュ上の培地を、1日おきに新鮮な培地に交換した(実験番号12)。また、コウジ酸を培地に添加しないことを除き、前記と同様にして、前記混合物を培養した(実験番号11)。
【0114】
得られた混合物の培養物におけるメラニン量を、前記試験例2と同様にして測定した。つぎに、コウジ酸を含まない培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量を100として、前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値を算出した。
【0115】
実施例1において、実験番号11および12それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を図6(a)に示す。図6(a)において、実験番号11はIL−8を含むがコウジ酸を含まない培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号12はIL−8とコウジ酸とを含む培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値をそれぞれ示す。
【0116】
図6(a)に示された結果から、IL−8とコウジ酸とを含む培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値は、IL−8を含むがコウジ酸を含まない培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値と比べて著しく低くなっていることがわかる。これらの結果から、コウジ酸は、IL−8を介して誘導されるメラニン産生を抑制することがわかる。また、これらの結果から、コウジ酸による美白作用は、IL−8を介して誘導されるメラニン産生の抑制と相関性があることが示唆される。
【0117】
したがって、以上の結果から、IL−8を介して誘導されるメラニン産生が被験物質によって抑制されるかどうかや、メラニン産生に対する被験物質による抑制の程度を調べることにより、被験物質の美白作用の有無やその強さの程度を評価することができることが示唆される。
【0118】
(2)CTGFを用いたコウジ酸の評価
前記(1)において、IL−8を、前記混合物を播種したDK−SFM/254培地に、IL−8濃度が5ng/mLとなるように添加する代わりに、CTGFを、前記混合物を播種したDK−SFM/254培地に、CTGF濃度が5ng/mLとなるように添加したことを除き、前記(1)と同様にして、前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値を算出した。
【0119】
実施例1において、実験番号13および14それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を図6(b)に示す。図6(b)において、実験番号13はCTGFを含むがコウジ酸を含まない培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号14はCTGFとコウジ酸とを含む培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値をそれぞれ示す。
【0120】
図6(b)に示された結果から、CTGFとコウジ酸とを含む培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値は、CTGFを含むがコウジ酸を含まない培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値と比べて著しく低くなっていることがわかる。これらの結果から、コウジ酸は、CTGFを介して誘導されるメラニン産生を抑制することがわかる。また、これらの結果から、コウジ酸による美白作用は、CTGFを介して誘導されるメラニン産生の抑制と相関性があることが示唆される。
【0121】
したがって、以上の結果から、CTGFを介して誘導されるメラニン産生が被験物質によって抑制されるかどうかや、メラニン産生に対する被験物質による抑制の程度を調べることにより、被験物質の美白作用の有無やその強さの程度を評価することができることが示唆される。
【0122】
(3)IL−1F9を用いたコウジ酸の評価
前記(1)において、IL−1F9を、前記混合物を播種したDK−SFM/254培地に、IL−1F9濃度が5ng/mLとなるように添加する代わりに、IL−1F9を、前記混合物を播種したDK−SFM/254培地に、IL−1F9濃度が5ng/mLとなるように添加したことを除き、前記(1)と同様にして、前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値を算出した。
【0123】
実施例1において、実験番号15および16それぞれの試料とメラニン量の相対値との関係を図6(c)に示す。図6(c)において、実験番号15はIL−1F9を含むがコウジ酸を含まない培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値、実験番号16はIL−1F9とコウジ酸とを含む培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値をそれぞれ示す。
【0124】
図6(c)に示された結果から、IL−1F9とコウジ酸とを含む培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値は、IL−1F9を含むがコウジ酸を含まない培地で培養した前記混合物の培養物におけるメラニン量の相対値と比べて著しく低くなっていることがわかる。これらの結果から、コウジ酸は、IL−1F9を介して誘導されるメラニン産生を抑制することがわかる。また、これらの結果から、コウジ酸による美白作用は、IL−1F9を介して誘導されるメラニン産生の抑制と相関性があることが示唆される。
【0125】
したがって、以上の結果から、IL−1F9を介して誘導されるメラニン産生が被験物質によって抑制されるかどうかや、メラニン産生に対する被験物質による抑制の程度を調べることにより、被験物質の美白作用の有無やその強さの程度を評価することができることが示唆される。
【0126】
以上の結果から、被験物質が、IL−8、CTGFおよびIL−1F9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制の有無や抑制の程度を調べることにより、被験物質の美白作用の有無やその強さの程度を迅速かつ簡便な操作で評価することができることが示唆される。
【0127】
また、IL−8、CTGFおよびIL−1F9は、それぞれ、細胞におけるメラニン産生を誘導するメラニン産生誘導剤として用いることができることが示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素細胞におけるメラニン産生を誘導するメラニン産生誘導剤であって、インターロイキン−8、結合組織成長因子およびインターロイキン−1ファミリー メンバー9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を含有することを特徴とするメラニン産生誘導剤。
【請求項2】
被験物質の美白作用を評価する被験物質の評価方法であって、
(A)色素細胞を含有する細胞群に、インターロイキン−8、結合組織成長因子およびインターロイキン−1ファミリー メンバー9からなる群より選ばれた少なくとも1種の因子を接触させ、前記細胞群中の色素細胞におけるメラニン産生を誘導するステップ、
(B)前記ステップ(A)で得られた細胞群に被験物質を接触させ、前記細胞群中の色素細胞により産生されたメラニンの量を測定するステップ、および
(C)前記ステップ(B)で測定されたメラニンの量に基づき、前記因子を介して誘導されるメラニン産生の抑制を調べ、前記被験物質の美白作用を評価するステップ
を含む被験物質の評価方法。
【請求項3】
前記細胞群がヒト細胞からなる細胞群である請求項2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記細胞群がヒト色素細胞からなる細胞群またはヒト色素細胞とヒト表皮角化細胞とからなる細胞群である請求項3に記載の評価方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−208964(P2011−208964A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74286(P2010−74286)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】