説明

メルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩及びその用途

【課題】 本発明は、水溶性で、臭気が少なく、低毒性の連鎖移動剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の連鎖移動剤は、一般式(1)
[HS−R1−SO3-[NR2345+ (1)
[式中、R1は、C1-6アルキレン基を示す。R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R2、R3、R4及びR5は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩からなる。この連鎖移動剤は、水溶性且つ油溶性であり、該連鎖移動剤を用いてエチレン性モノマーを重合させて得られるオリゴマーに、優れた帯電防止性能を付与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴマーを製造するために使用される連鎖移動剤として、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素、トリアルキルアミンなどのアミン、メルカプタンなどが知られている。
【0003】
しかしながら、ハロゲン化炭化水素は健康上有害であり(発癌性)、環境面で問題がある。特に四塩化炭素は販売自体がほぼ中止されている。また、アミン及びメルカプタンは、特有の臭気を有しているため、取り扱いに難がある。
【0004】
臭気を抑えたメルカプタンとして、ドデカンチオールなどの長鎖アルキルメルカプタン及びメルカプトカルボン酸エステルが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。しかしながら、これらの長鎖アルキルメルカプタン及びメルカプトカルボン酸エステルは水溶性ではないために、これらが器具などに付着した際には有機溶剤での洗浄が必要であった。
【特許文献1】特開平10−158344
【特許文献2】特開2004−224840
【特許文献3】特開平05−255414
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水溶性で、臭気が少なく、低毒性の連鎖移動剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その研究過程において、本発明者らが初めて合成に成功した下記一般式(1)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩が所望の連鎖移動剤になり得ることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0007】
本発明は、下記に示すメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩、連鎖移動剤、オリゴマー、オリゴマーの製造方法及び帯電防止剤を提供する。
1.一般式(1)
[HS−R1−SO3-[NR2345+ (1)
[式中、R1は、C1-6アルキレン基を示す。R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R2、R3、R4及びR5は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩。
2.上記1に記載のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩からなる連鎖移動剤。
3.一般式(2)
−(CHR6−CR78)− (2)
[式中、R6は、水素原子又は−COOR9基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8はフェニル基、−COOR10基、−CONR1112基又は−CN基を示す。R9、R10、R11及びR12は、各々、水素原子又はC1-4アルキル基を示す。]
で表される繰り返し単位を有し、
一般式(3)
[−S−R1−SO3-[NR2345+ (3)
[式中、R1は、C1-6アルキレン基を示す。R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R2、R3、R4及びR5は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩末端基を有し、
数平均分子量が7000程度以下である、
オリゴマー。
4.数平均分子量が500〜5000程度である上記3に記載のオリゴマー。
5.数平均分子量が500〜2500程度である上記3に記載のオリゴマー。
6.一般式(2)
−(CHR6−CR78)− (2)
[式中、R6は、水素原子又は−COOR9基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8はフェニル基、−COOR10基、−CONR1112基又は−CN基を示す。R9、R10、R11及びR12は、各々、水素原子又はC1-4アルキル基を示す。]
で表される繰り返し単位を有し、一般式(3)
[−S−R1−SO3-[NR2345+ (3)
[式中、R1は、C1-6アルキレン基を示す。R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R2、R3、R4及びR5は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩末端基を有し、数平均分子量が7000程度以下のオリゴマーを製造する方法であって、
一般式(1)
[HS−R1−SO3-[NR2345+ (1)
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、前記に同じ。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩の存在下に、一般式(4)
CHR6=CR78 (4)
[式中、R6、R7及びR8は、前記に同じ。]
で表されるエチレン性モノマーを重合させる工程を備えている、
オリゴマーの製造方法。
7.上記3に記載のオリゴマーからなる帯電防止剤。
【0008】
メルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩
本発明のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、一般式(1)
[HS−R1−SO3-[NR2345+ (1)
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は前記に同じ。]
で表される。
【0009】
本発明のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、文献未記載の新規化合物である。
【0010】
上記一般式(1)において、R1で示されるC1-6アルキレン基は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルキレン基であり、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、1−メチルトリメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基などが挙げられる。
【0011】
上記一般式(1)において、R2、R3、R4及びR5で示されるC1-8アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-8アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル基などが挙げられる。
【0012】
一般式(1)で挙げられるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩の具体例としては、例えばメルカプトメタンスルホン酸モノメチルアンモニウム、メルカプトメタンスルホン酸ジメチルアンモニウム、メルカプトメタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、メルカプトメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸モノメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸ジメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、3−メルカプトプロパンスルホン酸モノメチルアンモニウム、3−メルカプトエタンスルホン酸ジメチルアンモニウム、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム、3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム及び3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムが好ましい。
【0013】
本発明のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、例えば、一般式(5)
HS−R1−SO3M (5)
[式中、R1は前記に同じ。MはNa、Kなどのアルカリ金属原子を示す。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(6)
2345NX (6)
[式中、R2、R3、R4及びR5は前記に同じ。Xは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化アルキルアンモニウムとを反応させることにより製造される。
【0014】
一般式(5)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(6)で表されるハロゲン化アルキルアンモニウムとの反応は、溶媒として水、好ましくはイオン交換水などの精製水を用いて行われる。
【0015】
一般式(5)のメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(6)のハロゲン化アルキルアンモニウムとの使用割合としては、特に限定されるものではないが、前者1モルに対して、後者を通常0.5〜2モル程度、好ましくは0.8〜1.2モル程度とするのがよい。
【0016】
一般式(5)のメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(6)のハロゲン化アルキルアンモニウムとの反応は、室温付近で速やかに進行し、一般式(1)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩が生成する。
【0017】
また、R5が水素原子を示す一般式(1)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、例えば、一般式(7)
HS−R1−SO3H (7)
[式中、R1は前記に同じ。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(8)
234N (8)
[式中、R2、R3及びR4は前記に同じ。]
で表されるアルキルアミンとを反応させることによっても製造される。
【0018】
一般式(7)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(8)で表されるアルキルアミンとの反応は、溶媒として水、好ましくはイオン交換水などの精製水を用いて行われる。
【0019】
一般式(7)のメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(8)のアルキルアミンとの使用割合としては、特に限定されるものではないが、前者1モルに対して、後者を通常0.5〜2モル程度、好ましくは0.8〜1.2モル程度とするのがよい。
【0020】
一般式(7)のメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(8)のアルキルアミンとの反応は、室温付近で速やかに進行し、目的とするメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩が生成する。
【0021】
上記各反応により生成する本発明のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、通常行われている単離、精製手段、例えば、減圧濃縮などにより、反応混合物から容易に単離し、精製される。
【0022】
一般式(1)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、水溶性かつ油溶性であり、臭気がなく、低毒性で、高い連鎖移動係数を有している。従って、一般式(1)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、連鎖移動剤として好適に使用され得る。
【0023】
モノマー
本発明で使用されるモノマーとしては、例えば、一般式(4)
CHR6=CR78 (4)
[式中、R6は、水素原子又は−COOR9基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8はフェニル基、−COOR10基、−CONR1112基又は−CN基を示す。R9、R10、R11及びR12は、各々、水素原子又はC1-4アルキル基を示す。]
で表されるエチレン性モノマーなどを挙げることができる。
【0024】
9、R10、R11及びR12で示されるC1-4アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0025】
エチレン性モノマーの具体例としては、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、α−メチルスチレン、マレイン酸ジメチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0026】
好ましいエチレン性モノマーは、例えば、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどである。
【0027】
オリゴマー
本発明のオリゴマーは、上記一般式(1)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩を連鎖移動剤として用い、上記モノマーを重合させることにより製造される。
【0028】
上記モノマーの重合は、例えば、重合開始剤及び上記連鎖移動剤の存在下、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶剤中にて行われる。
【0029】
重合開始剤としては、公知のラジカル開始剤を広く使用できる。このような重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。
【0030】
重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
重合開始剤の使用量は、モノマー1モル当たり、通常0.001〜0.2モル程度、好ましくは0.02〜0.1モル程度である。
【0032】
連鎖移動剤の使用量は、モノマー1モル当たり、通常0.001〜2モル程度、好ましくは0.01〜1モル程度である。
【0033】
上記一般式(1)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩を連鎖移動剤として用いる場合、該メルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
本発明において使用する連鎖移動剤は、連鎖移動係数が大きいために、少量の連鎖移動剤の使用により、低分子量のオリゴマーを製造することができる。
【0035】
重合開始の際のモノマー濃度は、通常0.1〜9モル/l程度、好ましくは2〜6モル/l程度であるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
モノマーは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0037】
この重合反応の温度は、反応溶剤として用いるトルエンもしくはN,N−ジメチルホルムアミドの沸点が上限であるが、通常50〜90℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。
【0038】
この重合反応は、重合温度等により異なるが、通常1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間程度で終了する。上記重合反応を加圧下に行ってもよい。
【0039】
斯くして得られる本発明のオリゴマーは、一般式(2)
−(CHR6−CR78)− (2)
[式中、R6、R7及びR8は前記に同じ。]
で表される繰り返し単位を有し、末端に一般式(3)
[−S−R1−SO3-[NR2345+ (3)
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は前記に同じ。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩基を有している。
【0040】
本発明のオリゴマーは、数平均分子量が7000以下、好ましくは500〜5000程度、より好ましくは500〜2500程度である。
【0041】
上記重合反応により生成する本発明のオリゴマーは、通常行われている単離、精製手段、例えば、沈殿、濾過、乾燥などにより、重合反応系から容易に単離し、精製される。
【0042】
本発明オリゴマーは、末端にスルホン酸アンモニウム塩残基を有しているので、これをフリーのスルホン酸に誘導し、得られるオリゴマーを水酸基、アミノ基などの反応性基を有するポリマーと重縮合して、種々のブロック共重合体を製造することができる。
【0043】
帯電防止剤
本発明のオリゴマーは、導電性に優れているので、帯電防止剤又は導電性付与剤として使用できる。
【0044】
本発明のオリゴマーを帯電防止剤として使用するに当たっては、帯電を防止すべきポリマーに対して、通常1〜10重量%、好ましくは2〜4重量%程度の割合で、本発明オリゴマーを混入すればよい。
【0045】
帯電防止効果の期待できるポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0046】
一般式(1)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、臭気がなく、高い連鎖移動係数を有している。従って、一般式(1)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、連鎖移動剤として好適に使用され得る。
【0047】
上記メルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、悪臭が殆どないため、作業面及び環境面において問題がない。
【0048】
本発明において、連鎖移動剤として使用されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、水溶性及び油溶性の性質を備えており、そのため本発明の連鎖移動剤の取り扱いに使用した器具類は、水により容易に洗浄できる。
【0049】
上記メルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、大きな連鎖移動係数を有しているため、これを連鎖移動剤として用いることにより、低分子量のオリゴマーを容易に製造できる。
【0050】
本発明のオリゴマーは、悪臭が殆どないため、作業面及び環境面において問題がない。
【0051】
本発明のオリゴマーは、導電性に優れているので、帯電防止剤又は導電性付与剤として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0053】
本発明のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩の構造は、これを重クロロホルムに溶解し、1H−NMRにより決定した。測定装置は、日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置AL300である。
【0054】
本発明のオリゴマーの数平均分子量は、これをテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより測定した。測定装置は、東ソー社製の高速GPC装置HLC−8020及びWyatt Technology社製のDAWN DSP光散乱光度計である。カラムは、昭和電工社製のLF−804(3本)を用い、カラム温度40℃、溶媒テトラヒドロフラン、流速1ml/分で測定した。また、光散乱光度計によって、分子量を計算した。
【0055】
実施例1
3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムの合成
内径25mm、高さ600mmの円柱状カラムに、イオン交換水に分散させた強酸性イオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)200)500mlを充填した。3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム40.0g(224mmol)をイオン交換水160mlに溶解させ、2リットル/時間の速度で樹脂内を通し、3−メルカプトプロパンスルホン酸水溶液を得た。3−メルカプトプロパンスルホン酸水溶液を激しく撹拌し、トリn−ブチルアミン41.9g(226mmol)を滴下し、エバポレーターにて減圧濃縮を行い、やや粘性のある無色透明液体として、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム76.1g(収率99.2%)を得た。
【0056】
得られた化合物の1H−NMRの解析データは以下の通りである。
1H−NMR(CDCl3,ppm):
0.99(t,3HH=14.4Hz,9H),1.4−1.5(m,7H),1.7−1.8(m,6H),2.1−2.2(m,2H),2.7(dt,3HH=7.5Hz,3HH=7.5Hz,2H),3.0−3.1(m,8H),10.5(brs,1H)。
【0057】
実施例2
3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムの合成
容量1リットルのビーカーに50%臭化テトラn−ブチルアンモニウム水溶液200g及び強酸性イオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)200)450mlを入れ、マグネチックスターラーで撹拌した。上澄み液を0.1M水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、36.3mmolのテトラn−ブチルアンモニウムイオンが樹脂に担持されたことを確認した。この樹脂を内径25mm、高さ600mmの円柱状カラムに充填し、カラム出口のpHが7になるまでイオン交換水で洗浄した。3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム6.4g(36mmol)をイオン交換水30mlに溶解させ、2リットル/時間の速度で樹脂内を通し、pH=3〜5の留分のみを取り、エバポレーターにて減圧濃縮を行った。その結果、3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム12.5g(収率87.3%)を得た。
【0058】
得られた化合物の1H−NMRの解析データは以下の通りである。
1H−NMR(CDCl3,ppm):
0.83(t,3HH=14.7Hz,12H),1.2−1.3(m,8H),1.4−1.6(m,8H),1.8−2.0(m,2H),2.6(t,3HH=13.8Hz,2H),2.8−2.9(m,2H),3.0−3.1(m,8H)。
【0059】
実施例3
3−メルカプトプロパンスルホン酸ジイソプロピルアンモニウムの合成
内径25mm、高さ600mmの円柱状カラムに、イオン交換水に分散させた強酸性イオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)200)500mlを充填した。3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム10.0g(56mmol)をイオン交換水40mlに溶解させ、2リットル/時間の速度で樹脂内を通し、3−メルカプトプロパンスルホン酸水溶液を得た。3−メルカプトプロパンスルホン酸水溶液を激しく撹拌し、N,N−ジイソプロピルアミン6.4g(63mmol)を滴下し、エバポレーターにて減圧濃縮を行い、3−メルカプトプロパンスルホン酸ジイソプロピルアンモニウム14.4g(収率99.6%)を得た。
【0060】
得られた化合物の1H−NMRの解析データは以下の通りである。
1H−NMR(CDCl3,ppm):
1.4(d,3HH=6.5Hz,13H),2.1−2.2(m,2H),2.7(dt,3HH=7.5Hz,3HH=7.5Hz,2H),2.9−3.0(m,2H),3.3(brs,2H),8.3(brs,2H)。
【0061】
実施例4
連鎖移動係数の測定
エチレン性モノマーとしてスチレンを用い、3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数を測定した。
【0062】
(1)アゾビスイソブチロニトリル14.5mg(0.088mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム17.4mg(0.044mmol)を含むDMF溶液5mlを重合管に入れ、スチレン5ml(43.6mmol)を加えて均一に攪拌した。この重合管を高純度窒素ガスに置換した後、減圧下で封管した。80℃で4時間振とうしながら重合反応を行った。
【0063】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成ポリマー(ポリスチレン)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0064】
ポリスチレンの収量は1.18g(重合率25.9%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は31420、重量平均分子量(Mw)は48310、Mw/Mnは1.54であった。
【0065】
(2)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを34.8mg(0.088mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリスチレンを得た。
【0066】
ポリスチレンの収量は1.04g(重合率22.9%)、GPCによる平均分子量Mnは24050、Mwは40160、Mw/Mnは1.67であった。
【0067】
(3)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを52.2mg(0.131mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリスチレンを得た。
【0068】
ポリスチレンの収量は1.08g(重合率23.7%)、GPCによる平均分子量Mnは18620、Mwは35990、Mw/Mnは1.93であった。
(4)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを69.6mg(0.175mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリスチレンを得た。
【0069】
ポリスチレンの収量は1.09g(重合率23.9%)、GPCによる平均分子量Mnは15770、Mwは33820、Mw/Mnは2.14であった。
【0070】
上記(1)〜(4)で得られた各ポリスチレンの数平均分子量(Mn)より、重合度(Pn)を計算した。結果を、重合条件の3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム濃度/スチレン濃度比と共に、表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
重合度の逆数と連鎖移動剤濃度/モノマー濃度比をプロットし、その傾きから連鎖移動係数を求めた。3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数は1.11であった。
【0073】
実施例5
連鎖移動係数の測定
エチレン性モノマーとしてメタクリル酸メチルを用い、3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数を測定した。
【0074】
(1)アゾビスイソブチロニトリル15.5mg(0.095mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム18.6mg(0.047mmol)を含むDMF溶液5mlを重合管に入れ、メタクリル酸メチル5ml(46.7mmol)を加えて均一に攪拌した。この重合管を高純度窒素ガスに置換した後、減圧下で封管した。60℃で1時間振とうしながら重合反応を行った。
【0075】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成ポリマー(ポリメタクリル酸メチル)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50 ℃で減圧乾燥した。
【0076】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.617g(重合率13.2%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は151800、重量平均分子量(Mw)は220600、Mw/Mnは1.45であった。
【0077】
(2)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを37.3mg(0.094mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリメタクリル酸メチルを得た。
【0078】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.590g(重合率12.6%)、GPCによる平均分子量Mnは137100、Mwは188900、Mw/Mnは1.38であった。
【0079】
(3)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを55.7mg(0.140mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリメタクリル酸メチルを得た。
【0080】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.564g(重合率12.1%)、GPCによる平均分子量Mnは109700、Mwは142000、Mw/Mnは1.29であった。
【0081】
(4)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを74.4mg(0.187mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリメタクリル酸メチルを得た。
【0082】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.563g(重合率12.0%)、GPCによる平均分子量Mnは92820、Mwは112000、Mw/Mnは1.21であった。
【0083】
上記(1)〜(4)で得られた各ポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)より、重合度(Pn)を計算した。結果を、重合条件の3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム濃度/メタクリル酸メチル濃度比と共に、表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
重合度の逆数と連鎖移動剤濃度/モノマー濃度比をプロットし、その傾きから連鎖移動係数を求めた。3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数は0.14であった。
【0086】
実施例6
連鎖移動係数の測定
エチレン性モノマーとしてアクリル酸メチルを用い、3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数を測定した。
【0087】
(1)アゾビスイソブチロニトリル18.4mg(0.112mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム13.3mg(0.033mmol)を含むDMF溶液7mlを重合管に入れ、アクリル酸メチル3ml(33.3mmol)を加えて均一に攪拌した。この重合管を高純度窒素ガスに置換した後、減圧下で封管した。60 ℃で1時間振とうしながら重合反応を行った。
【0088】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成ポリマー(ポリアクリル酸メチル)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0089】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.18g(重合率41.0%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は87270、重量平均分子量(Mw)は123100、Mw/Mnは1.41であった。
【0090】
(2)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを26.6mg(0.067mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリアクリル酸メチルを得た。
【0091】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.06g(重合率36.8%)、GPCによる平均分子量Mnは59600、Mwは82090、Mw/Mnは1.38であった。
【0092】
(3)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを39.8mg(0.100mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリアクリル酸メチルを得た。
【0093】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.18g(重合率41.0%)、GPCによる平均分子量Mnは48910、Mwは66820、Mw/Mnは1.37であった。
【0094】
(4)3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを53.2mg(0.134mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリアクリル酸メチルを得た。
【0095】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.17g(重合率40.7%)、GPCによる平均分子量Mnは39450、Mwは60320、Mw/Mnは1.53であった。
【0096】
上記(1)〜(4)で得られた各ポリアクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)より、重合度(Pn)を計算した。結果を、重合条件の3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム濃度/アクリル酸メチル濃度比と共に、表3に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
重合度の逆数と連鎖移動剤濃度/モノマー濃度比をプロットし、その傾きから連鎖移動係数を求めた。連鎖移動係数は0.39であった。
【0099】
実施例7
連鎖移動係数の測定
エチレン性モノマーとしてスチレンを用い、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数を測定した。
【0100】
(1)アゾビスイソブチロニトリル14.5mg(0.088mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム16.2mg(0.044mmol)を含むトルエン溶液5mlを重合管に入れ、スチレン5ml(43.6mmol)を加えて均一に攪拌した。この重合管を高純度窒素ガスに置換した後、減圧下で封管した。60℃で4時間振とうしながら重合反応を行った。
【0101】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成ポリマー(ポリスチレン)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0102】
ポリスチレンの収量は1.19g(重合率26.2%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は30520、重量平均分子量(Mw)は44430、Mw/Mnは1.46であった。
【0103】
(2)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを32.4mg(0.087mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリスチレンを得た。
【0104】
ポリスチレンの収量は1.08g(重合率23.8%)、GPCによる平均分子量Mnは22150、Mwは38560、Mw/Mnは1.74であった。
【0105】
(3)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを48.6mg(0.131mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリスチレンを得た。
【0106】
ポリスチレンの収量は1.07g(重合率23.5%)、GPCによる平均分子量Mnは16920、Mwは30690、Mw/Mnは1.81であった。
(4)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを64.8mg(0.175mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリスチレンを得た。
【0107】
ポリスチレンの収量は1.00g(重合率22.0%)、GPCによる平均分子量Mnは14600、Mwは25770、Mw/Mnは1.77であった。
【0108】
上記(1)〜(4)で得られた各ポリスチレンの数平均分子量(Mn)より、重合度(Pn)を計算した。結果を、重合条件の3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム濃度/スチレン濃度比と共に、表4に示す。
【0109】
【表4】

【0110】
重合度の逆数と連鎖移動剤濃度/モノマー濃度比をプロットし、その傾きから連鎖移動係数を求めた。連鎖移動係数は1.26であった。
【0111】
実施例8
連鎖移動係数の測定
エチレン性モノマーとしてメタクリル酸メチルを用い、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数を測定した。
【0112】
(1)アゾビスイソブチロニトリル15.5mg(0.095mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム17.4mg(0.047mmol)を含むトルエン溶液5mlを重合管に入れ、メタクリル酸メチル5ml(46.7mmol)を加えて均一に攪拌した。この重合管を高純度窒素ガスに置換した後、減圧下で封管した。60℃で1時間振とうしながら重合反応を行った。
【0113】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成ポリマー(ポリメタクリル酸メチル)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0114】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.630g(重合率13.5%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は159600、重量平均分子量(Mw)は225400、Mw/Mnは1.41であった。
【0115】
(2)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを34.7mg(0.093mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリメタクリル酸メチルを得た。
【0116】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.575g(重合率12.3%)、GPCによる平均分子量Mnは134100、Mwは182000、Mw/Mnは1.36であった。
【0117】
(3)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを52.1mg(0.140mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリメタクリル酸メチルを得た。
【0118】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.566g(重合率12.1%)、GPCによる平均分子量Mnは107600、Mwは139100、Mw/Mnは1.29であった。
【0119】
(4)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを69.4mg(0.187mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリメタクリル酸メチルを得た。
【0120】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.580g(重合率12.4%)、GPCによる平均分子量Mnは91150、Mwは113400、Mw/Mnは1.24であった。
【0121】
上記(1)〜(4)で得られた各ポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)より、重合度(Pn)を計算した。結果を、重合条件の3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム濃度/メタクリル酸メチル濃度比と共に、表5に示す。
【0122】
【表5】

【0123】
重合度の逆数と連鎖移動剤濃度/モノマー濃度比をプロットし、その傾きから連鎖移動係数を求めた。連鎖移動係数は0.16であった。
【0124】
実施例9
連鎖移動係数の測定
エチレン性モノマーとしてアクリル酸メチルを用い、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムの連鎖移動係数を測定した。
【0125】
(1)アゾビスイソブチロニトリル18.4mg(0.112mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム12.4mg(0.033mmol)を含むトルエン溶液7mlを重合管に入れ、アクリル酸メチル3ml(33.3mmol)を加えて均一に攪拌した。この重合管を高純度窒素ガスに置換した後、減圧下で封管した。60℃で1時間振とうしながら重合反応を行った。
【0126】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成ポリマー(ポリアクリル酸メチル)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0127】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.55g(重合率54.0%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は91220、重量平均分子量(Mw)は125300、Mw/Mnは1.37であった。
【0128】
(2)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを24.7mg(0.067mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリアクリル酸メチルを得た。
【0129】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.23g(重合率42.9%)、GPCによる平均分子量Mnは60130、Mwは81770、Mw/Mnは1.36であった。
【0130】
(3)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを37.1mg(0.100mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリアクリル酸メチルを得た。
【0131】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.09g(重合率38.0%)、GPCによる平均分子量Mnは46510、Mwは69740、Mw/Mnは1.50であった。
【0132】
(4)3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウムを49.5mg(0.133mmol)用い、上記(1)と同様にして、ポリアクリル酸メチルを得た。
【0133】
ポリアクリル酸メチルの収量は1.11g(重合率38.7%)、GPCによる平均分子量Mnは39550、Mwは53930、Mw/Mnは1.36であった。
【0134】
上記(1)〜(4)で得られた各ポリアクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)より、重合度(Pn)を計算した。結果を、重合条件の3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム濃度/アクリル酸メチル濃度比と共に、表6に示す。
【0135】
【表6】

【0136】
重合度の逆数と連鎖移動剤濃度/モノマー濃度比をプロットし、その傾きから連鎖移動係数を求めた。連鎖移動係数は0.41であった。
【0137】
実施例10
オリゴマーの合成
アゾビスイソブチロニトリル29.2mg(0.117mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム160.6mg(0.436mmol)を含むトルエン溶液5mlを重合管に入れ、スチレン5ml(43.6mmol)を加えて均一に攪拌し、高純度窒素ガスを封入した。60℃で4時間重合した。
【0138】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入し、生成するオリゴマー(ポリスチレン)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0139】
ポリスチレンの収量は0.178g(重合率3.9%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は6329、重量平均分子量(Mw)は9862、Mw/Mnは1.56であった。
【0140】
実施例11
オリゴマーの合成
アゾビスイソブチロニトリル0.66g(3.9mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム5.8g(15.7mmol)を含むトルエン溶液20mlを50mlフラスコに入れ、スチレン9ml(78.6mmol)を加えて均一に攪拌した。このフラスコに高純度窒素ガスを吹き込みながら80℃で6時間重合反応を行った。
【0141】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成するオリゴマー(ポリスチレン)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0142】
ポリスチレンの収量は2.5g(重合率30.6%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は4799、重量平均分子量(Mw)は5998、Mw/Mnは1.25であった。
【0143】
実施例12
オリゴマーの合成
アゾビスイソブチロニトリル0.20g(1.18mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム3.50g(9.44mmol)を含むトルエン溶液7.5mlを重合管に入れ、スチレン2.7ml(23.6mmol)を加えて均一に攪拌し、高純度窒素ガスを封入した。80℃で6時間重合した。
【0144】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入し、生成するオリゴマー(ポリスチレン)を沈殿させ、遠心分離によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0145】
ポリスチレンの収量は0.21g(重合率8.6%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は1828、重量平均分子量(Mw)は4346、Mw/Mnは2.38であった。
【0146】
実施例13
オリゴマーの合成
アゾビスイソブチロニトリル0.20g(1.18mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム6.57g(17.7mmol)を含むトルエン溶液7mlを重合管に入れ、スチレン2.7ml(23.6mmol)を加えて均一に攪拌し、高純度窒素ガスを封入した。80℃で6時間重合した。
【0147】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入し、生成するオリゴマー(ポリスチレン)を沈殿させ、遠心分離によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0148】
ポリスチレンの収量は0.22g(重合率9.1%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は659、重量平均分子量(Mw)は767、Mw/Mnは1.16であった。ただし、平均分子量が1000以下のオリゴマーの分子量は光散乱検出器を使用して求めることができなかったため、ポリスチレン換算分子量で示した。
【0149】
実施例14
オリゴマーの合成
アゾビスイソブチロニトリル0.16g(0.95mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム0.17g(0.47mmol)を含むトルエン溶液5mlを重合管に入れ、メタクリル酸メチル5ml(46.7mmol)を加えて均一に攪拌した。この重合管を高純度窒素ガスに置換した後、減圧下で封管した。60℃で1時間振とうしながら重合反応を行った。
【0150】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入して生成するオリゴマー(ポリメタクリル酸メチル)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0151】
ポリメタクリル酸メチルの収量は0.15g(重合率3.2%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は3972、重量平均分子量(Mw)は6275、Mw/Mnは1.58であった。
【0152】
実施例15
オリゴマーの合成
アゾビスイソブチロニトリル0.03g(0.30mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム0.35g(1.49mmol)を含むトルエン溶液8mlを重合管に入れ、N,N−ジメチルアクリルアミド2ml(19.4mmol)を加えて均一に攪拌し、高純度窒素ガスを封入した。60℃で4時間重合した。
【0153】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のn−ヘキサン中に投入し、生成するオリゴマー(ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド))を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0154】
ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)の収量は0.25g(重合率20.1%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は4553、重量平均分子量(Mw)は5554、Mw/Mnは1.22であった。
【0155】
実施例16
オリゴマーの合成
アゾビスイソブチロニトリル29.2mg(0.117mmol)及び3−メルカプトプロパンスルホン酸ジイソプロピルアンモニウム126.1mg(0.436mmol)を含むトルエン溶液5mlを重合管に入れ、スチレン5ml(43.6mmol)を加えて均一に攪拌し、高純度窒素ガスを封入した。60℃で4時間重合した。
【0156】
重合反応終了後、重合反応液を大過剰のメタノール中に投入し、生成するオリゴマー(ポリスチレン)を沈殿させ、グラスフィルター濾過によりポリマーを分離した後、50℃で減圧乾燥した。
【0157】
ポリスチレンの収量は0.254g(重合率5.6%)、GPCによる数平均分子量(Mn)は6842、重量平均分子量(Mw)は10850、Mw/Mnは1.59であった。
【0158】
実施例17
帯電防止性能試験
(1)超小型射出成型機によるサンプルプレートの作成
実施例13で得た本発明のオリゴマーを市販ポリスチレンである新日鐵化学工業株式会社製のエスチレンG−20に任意の割合で混合した。
【0159】
装置は、Custom Scientific Instruments,Inc.社製の超小型射出成型機CS−183MMXを用いた。装置中にポリスチレンと実施例13のオリゴマーを任意の割合で仕込み、シリンダ温度180℃にて4分間加熱溶融ブレンドを行った後、金型に圧入し、板状成形品(長さ31.0mm、幅6.5mm、厚み3.0mm)を得た。
【0160】
(2)コロナ帯電試験
板状成形品を恒温恒湿室(24 ℃、55%湿度)に24時間保管し、コロナ帯電試験を行った。
【0161】
装置は、日本スタティック株式会社製のスタチックメータS−4104IIIを用いた。電圧印加方式は、高圧放電式のチョッパ型で、印加電圧はDC10kVであった。テーブルの回転数は、1550rpm、測定用のプローブの高さは20mmであった。
【0162】
装置中に板状成形品を設置し、1分間帯電させ、電圧を切った時点からの半減値、及び1分後の帯電圧を測定した。
【0163】
結果を表7に示す。
【0164】
【表7】

【0165】
表7の結果から、市販ポリスチレンに対して本発明のオリゴマーを3%以上練り込むことにより、十分な帯電防止性能が発揮されることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
[HS−R1−SO3-[NR2345+ (1)
[式中、R1は、C1-6アルキレン基を示す。R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R2、R3、R4及びR5は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩。
【請求項2】
請求項1に記載のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩からなる連鎖移動剤。
【請求項3】
一般式(2)
−(CHR6−CR78)− (2)
[式中、R6は、水素原子又は−COOR9基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8はフェニル基、−COOR10基、−CONR1112基又は−CN基を示す。R9、R10、R11及びR12は、各々、水素原子又はC1-4アルキル基を示す。]
で表される繰り返し単位を有し、
一般式(3)
[−S−R1−SO3-[NR2345+ (3)
[式中、R1は、C1-6アルキレン基を示す。R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R2、R3、R4及びR5は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩末端基を有し、
数平均分子量が7000程度以下である、
オリゴマー。
【請求項4】
数平均分子量が500〜5000程度である請求項3に記載のオリゴマー。
【請求項5】
数平均分子量が500〜2500程度である請求項3に記載のオリゴマー。
【請求項6】
一般式(2)
−(CHR6−CR78)− (2)
[式中、R6は、水素原子又は−COOR9基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8はフェニル基、−COOR10基、−CONR1112基又は−CN基を示す。R9、R10、R11及びR12は、各々、水素原子又はC1-4アルキル基を示す。]
で表される繰り返し単位を有し、一般式(3)
[−S−R1−SO3-[NR2345+ (3)
[式中、R1は、C1-6アルキレン基を示す。R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R2、R3、R4及びR5は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩末端基を有し、数平均分子量が7000程度以下のオリゴマーを製造する方法であって、
一般式(1)
[HS−R1−SO3-[NR2345+ (1)
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、前記に同じ。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩の存在下に、一般式(4)
CHR6=CR78 (4)
[式中、R6、R7及びR8は、前記に同じ。]
で表されるエチレン性モノマーを重合させる工程を備えている、
オリゴマーの製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載のオリゴマーからなる帯電防止剤。

【公開番号】特開2006−335743(P2006−335743A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165390(P2005−165390)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(592120003)
【出願人】(000116817)旭化学工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】