説明

メントール含有タブレット食品

【課題】l−メントールを含有するメントール含有食品に関し、l−メントールの含有量を高めても、舌に対する痛みを緩和できる、新たなメントール含有食品を提供する。
【解決手段】l−メントールと共に、ビタミンEを併用することにより、舌に対する痛みを緩和できることが分かった。これより、l−メントールと共に、ビタミンEを含有することを特徴とするメントール含有食品を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブレット状の清涼菓子やサプリメントなど、l−メントールを含有するメントール含有食品に関し、詳しくは、メントールによる舌への痛みを軽減することができるメントール含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
メントールは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール (2-isopropyl-5-methylcyclohexanol)と称される有機化合物であり、幾つかのジアステレオマーや鏡像異性体がある。これらのうちのl−メントールは、ハッカやセイヨウハッカなどの植物に含まれる揮発性の精油成分であり、清涼感を付与する清涼剤として、チューインガム、キャンディー、タブレット(錠菓)、アイスクリームなど様々な食品に配合されている。
【0003】
このようなメントール含有食品においては、清涼感を増強するために、単純にl−メントールの成分量を多くすると、苦味や痛みを伴う刺激が強くなり、嗜好性に必ずしも良好な影響を与えないという課題が指摘されている。そこで従来から、メントール含有食品においてメントールの清涼感を増強し、嗜好性を高める方法として、メントール共に、ジオキソラン−2−酢酸誘導体(特許文献1)や、ケトン類、アルコール類、テトラヒドロフラン誘導体等(特許文献2)や、ティーツリー精油(特許文献3)や、キナ酸誘導体(特許文献4)や、テルペン類(特許文献5)などを併用する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−228887号公報
【特許文献2】特開平8−157862号公報
【特許文献3】特開平9−263786号公報
【特許文献4】特開2006−104229号
【特許文献5】特開2008−273908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タブレット状の清涼菓子やサプリメントなど、l−メントールを含有するメントール含有食品に関し、l−メントールの含有量を高めて爽快感を増強させることができ、それでいて舌に対する痛みを緩和することができる、新たなメントール含有食品を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、l−メントールと共に、ビタミンEを含有することを特徴とするメントール含有食品を提案する。
【0007】
本発明者らは、l−メントールと併用することにより、l−メントールの刺激による舌に対する痛みを緩和できる物質について広く試験した結果、l−メントールとビタミンEを併用することにより、舌に対する痛みを効果的に緩和できることを見出すことに成功した。なお、ビタミンE以外のビタミンについては、このような効果を見出すことができなかった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明の実施形態の一例としてのメントール含有食品(「本食品」と称する)は、メントールと共に、ビタミンEを含有することを特徴とする食品である。
【0010】
(メントール)
本食品で使用するl−メントール、すなわち本食品を製造する際に配合するl−メントールは、合成l−メントールであっても、天然精油より単離されたl−メントールであってもよい。また、l−メントールを含有する精油をそのまま配合してもよいし、また、該精油から調製した香料を配合してもよい。
【0011】
l−メントールを含有する精油としては、例えばペパーミント精油、和種ハッカ精油、シソ科のハッカ属植物より得られる精油、具体的にはアップルミント、ウォーターミント、コルシカンミント、スペアミント、ハッカ、ペニーロイヤル、ホースミント、メンタ・ケルウィナなどを挙げることができる。
これらは、単独で配合してもよいし、2種類以上を組み合わせて配合してもよい。また、これら精油成分を配合してなる香料についても同様で、単独で配合してもよいし、2種類以上を組み合わせて配合してもよい。
【0012】
l−メントールの含有量は、特に限定するものではなく、食品の種類や形態、用途などによってそれぞれ調整するのが好ましい。
但し、本食品においては、l−メントールの含有率を高めて爽快感を増大させても、ビタミンEの作用によってl−メントールの刺激、特に舌に対する刺激(痛み)を軽減することができるから、l−メントールの含有率を高めることができる。よって、本食品におけるl−メントールの含有量は、0.01〜10mg/gとすることができ、特に0.1〜10mg/g、中でも特0.1〜4mg/gとすることができる。
【0013】
(ビタミンE)
ビタミンEは、穀物の胚芽に多く含くまれる栄養素で、脂溶性ビタミンの一種である。
ビタミンEには、強力な抗酸化作用があることが知られているが、l−メントールの刺激、特に舌に対する刺激を抑制する効果があることは知られていなかった。
【0014】
ビタミンEには、メチル基の位置によって8つの異なる型がある(α、β、γ、δ−トコフェロール、α、β、γ、δ−トコトリエノール)。これらの中で、本食品が含有するビタミンEとしては特に限定すするものではなく、これらの混合品でよいが、この添加による栄養強化、機能性付与などの付加価値を考慮すると、α−トコフェロールやγ−トコフェロールなどの含有量が高いものが好ましい。
【0015】
本食品に配合するビタミンEは、ビタミンE単体であっても、ビタミンEを多く含む組成物であってもよい。
【0016】
なお、ビタミンEについては、厚生労働省が策定した2005年(平成17年)版の食事摂取基準において、α-トコフェロールのみの目安量と上限量が規定されており、少なくとも上限量(成人600〜800mg/day)を超えないように摂取する必要がある。
【0017】
(l−メントール及びビタミンEの含有比率)
本食品におけるl−メントール及びビタミンEの含有比率は、l−メントール100質量部に対して10〜100000質量部のビタミンEを含有するのが好ましい。かかる範囲内であれば、l−メントールの刺激による舌の痛みを軽減することができ、しかもメントール特有の爽快感を得ることが可能になる。このような観点から、l−メントール100質量部に対して10〜10000質量部のビタミンEを含有するのがさらに好ましく、中でも100〜10000質量部、その中でも100〜5000質量部のビタミンEを含有するのがより好ましい。
【0018】
(その他の成分)
本食品は、ミント等の香り成分を含有しているのが好ましい。l−メントールを含有する精油、または、この精油成分を含有せしめた香料を配合すれば、ミント等の香りを含有することができるが、そうでない場合には、香味剤としてミントを配合するのが好ましい。
【0019】
本食品は、l−メントール及びビタミンE以外に、例えば合成バニラ、シナモン誘導体、及び種々のフルーツ香味料、酢酸シンナミル、シンナムアルデヒド、シトラールジエチルアセタール、酢酸ジヒドロカルビル、ギ酸オイゲニル、p−メチルアニソール、その他の香味料を配合することが可能である。
また、有機酸及び/またはその塩を含有してもよい。
【0020】
本食品は、上記成分のほかに、例えば糖類、甘味料、色素成分、栄養成分及び機能性成分などを適宜配合することができる。
【0021】
糖類としては、例えばブドウ糖、果糖、ショ糖、還元麦芽糖などを挙げることができる。
甘味料としては、例えばキシリトール、ステビア抽出物、パラチノース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、サッカリン、サッカリンナトリウムなどを挙げることができる。シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料、高甘味度甘味料などを含んでいてもよい。また、ソルビトールなどの糖アルコールを用いることもできる。
色素成分としては、例えばクロレラ、葉緑素などを挙げることができる。
栄養成分としては、例えばL−アスコルビン酸やそのナトリウム塩などを挙げることができる。
機能性成分としては、例えばコラーゲン、鮫軟骨、牡蛎エキス、キトサン、プロポリス、オクタコサノール、トコフェロール、カロチン、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、乳酸菌、霊芝、アガリクスなどを挙げることができる。
【0022】
また、本食品を、タブレット状に加圧成型する場合には、例えば賦形剤、滑沢剤、結合剤などを配合してもよい。
【0023】
賦刑剤としては、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、乳糖、白糖、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、カオリン等を挙げることができる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステルなどの脂肪酸類、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、ワックスなどを用いることができる。滑沢剤を添加することにより、タブレットが容易に打錠機から離れ、かつタブレット表面に光沢を与えることができる。
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどを挙げることができる。
【0024】
そのほか、食品や医薬品に使用されている通常の担体、崩壊剤、界面活性剤、pH緩衝剤、香料、造粘剤、安定化剤、希釈剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などを適宜組み合わせて添加することは適宜可能である。
【0025】
(食品の形態)
本食品の形態としては、タブレット状(錠剤状)、粉末状、その他の形状を採用可能である。最も好ましいのは、口腔内で崩壊して、或いは歯で噛み砕いて、唾液に溶解するタブレット状(錠剤状)である。このような錠剤状であれば、唾液に溶解した際に、l−メントール及びビタミンEが口腔内の舌に伝わるタイミングが好ましく、l−メントールの舌への刺激を効果的に緩和することができる。
【0026】
(本食品の製造)
タブレット(錠菓)を作製する際の造粒方法としては、例えば乾式破砕造粒法、湿式押し出し造粒法、流動層造粒法および高速撹拌造粒法等を挙げることができる。
例えば、原料を混合し、その後水を投入し、高速攪拌機にて造粒することができる。
造粒物をタブレット状に加圧成型する方法は、特に制限はないが、通常に行われる打錠成型の設備及び技術をそのまま利用することができる。
【0027】
粉末をそのまま加圧成型する場合は、加圧成型時に滑沢剤を添加することが好ましく、粉末をいったん顆粒状に造粒する場合は、造粒時に滑沢剤を添加することが好ましい。
【0028】
(メントールの痛み軽減方法)
本発明は、l−メントールにビタミンEを配合することを特徴とするメントールの痛み軽減方法としても利用することができる。
この際、メントールの痛みを軽減しつつ、メントール特有の爽快感を得る観点から、l−メントール100質量部に対して、10〜100000質量部のビタミンEを含有するのがさらに好ましく、中でも100〜10000質量部、その中でも100〜5000質量部のビタミンEを配合するのがさらに好ましい。
【0029】
(用語の説明)
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、「X以上」或いは「Y以下」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0030】
次に、試験例に基づいて本発明について更に説明するが、本発明が以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0031】
(サンプルの調製)
還元麦芽糖とソルビトールとを質量比1:1で均一に混合して糖質プレミックスを準備した。次に、表1に示した量の粉末ペパーミント香料及び各種粉末機能素材を混合し、次いで先の糖質プレミックスを加えて全体質量を20gに調製した。そして、この混合品をすり鉢で微細化してサンプルを調製した。表1に示した各素材量の単位は質量%である。
なお、サンプルCは、標準サンプルとして、各種粉末機能素材を配合しないサンプルとして調製した。
【0032】
ペパーミント香料:高砂香料工業社製ペパーミント香料(l−メントール3.4質量%以上含有)
ビタミンE:理研ビタミン社製 ドライEミックス(総ビタミンE57%)
ウコン末:甘利香辛食品社製(クルクミン2質量%含有)
緑茶カテキン精製物:伊藤園製テアフラン90S(総カテキン約70質量%含有)
【0033】
(官能評価)
7名のパネラーがそれぞれサンプル100mgを食し、舌への刺激(痛み)、ミントの香り、爽快感の厚み(ボディ感)について評価し、次の基準で5段階評価し、最も多かった評価を表1に示した。
【0034】
=舌への刺激(痛み)=
+++ :非常に強い痛みあり
++ :強い痛みあり
+ :やや痛みあり
± :刺激感はあるが、痛みはない。
− :刺激 ・痛み共感じない。
【0035】
=ミントの香り=
+++ :強い
++ :やや強い
+ :弱い
± :わずかにあり
− :ミント感なし
【0036】
=爽快感の厚み(ボディ感)= ・・・サンプルCとの比較
+++ :清涼感の厚みが極めて向上
++ :清涼感の厚みが向上
+ :わずかに清涼感に厚みがでる
± :差なし、変化なし(製品Cと同等)
− :清涼感の厚みがない
【0037】
【表1】

【0038】
(考察)
l−メントールと各種素材を併用した結果、l−メントールとビタミンEを併用することにより、l−メントールの刺激、特に舌に対する刺激(痛み)を効果的に緩和することができることが分かった。
これに対し、ビタミンE以外のビタミンについては、このような効果は認められなかった。
【0039】
上記試験とこれまでの試験結果から、メントールの刺激、特に舌に対する刺激(痛み)を効果的に緩和する観点からは、l−メントール100質量部に対して10〜100000質量部のビタミンEを含有するのがさらに好ましく、中でも100〜10000質量部、その中でも100〜5000質量部のビタミンEを配合するのがさらに好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
l−メントールと共に、ビタミンEを含有することを特徴とするメントール含有食品。
【請求項2】
l−メントール100質量部に対して、10〜100000質量部のビタミンEを含有することを特徴とする請求項1記載のメントール含有食品。
【請求項3】
l−メントールにビタミンEを配合することを特徴とするメントールの痛み軽減方法。
【請求項4】
l−メントール100質量部に対して、10〜100000質量部のビタミンEを配合することを特徴とする請求項3記載のメントールの痛み軽減方法。


【公開番号】特開2011−55777(P2011−55777A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210424(P2009−210424)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【特許番号】特許第4460019号(P4460019)
【特許公報発行日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】