説明

モグラ捕獲装置

【課題】家庭で手軽に使用することができ、長期間にわたって捕獲効果が持続するモグラ捕獲装置を提供する。
【解決手段】モグラ捕獲装置10は、中空部分を有する支柱12と、中空部分を上下に移動可能な作動棒14と、作動棒14の下端に連結された殺傷針16と、作動棒14を下方に付勢する作動ばね18と、支点52を中心に回動可能なリンク部材22と、一端がリンク部材22の一端と枢支された固定ピン24と、固定ピン24の他端に設けられた突起46と係合する、作動棒14に設けられた窪み48と、地表面に設置されるモグラ検知板26と、モグラ検知部板26と下端が連結され、上端にリンク部材22の先端の曲面54と係合するテーパ面42が設けられた伝達棒28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中のモグラを殺傷して捕獲する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モグラは地中に掘削した空洞(トンネル)内に棲息している。農作地でもモグラによるトンネルを多数見ることができる。モグラはトンネル内を餌となるミミズなどを求めて動き回るだけであり、農作物に直接的な被害を与えることは稀であるが、農作地に縦横に掘削したトンネルが土壌の連続性を分断した結果、保水力や透水力の低下を招き、これが農作物の生育悪化や枯死という甚大な被害を引き起こしている。またネズミなど他の動物がトンネル内に侵入し、農作物を食い荒らすという被害も起きている。
このようなモグラ被害への対策として、これまでに様々な試みがなされてきている。例えば、モグラの嫌う音や振動、薬剤などで撃退する装置(特許文献1、2参照)、トンネル内に仕掛けた罠でモグラを捕獲する装置(特許文献3、4参照)、モグラの接近を検知して針や錐などで殺傷する装置( 特許文献5、6、7参照)などが考案され、実施されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3104397号公報
【特許文献2】特開2004−159628号公報
【特許文献3】特開2004−135643号公報
【特許文献4】実用新案登録第3090493号公報
【特許文献5】特開2003−325092号公報
【特許文献6】特開2002−112689号公報
【特許文献7】実用新案登録第3121310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このうち音や振動などでモグラを撃退する装置は、設置した当初は一定の効果はあるが、直にモグラが慣れてしまうため時間の経過とともに効果が減少する。また撃退するだけではモグラの頭数は減らないので、問題の完全解決には至らない。この点、トンネル内に罠を仕掛けて捕獲する装置によればモグラの頭数を減らすことはできるが、設置に手間がかかる上、やはりモグラの慣れや学習による効果減少の問題は残る。
モグラを殺傷する装置は、地上から針などをトンネル内に突き通す構造であるため、モグラに察知される心配はなく、効果が持続する上に頭数を確実に減らすことができるという利点を有している。しかし針の作動に電気的駆動力を必要としたり、複数のバネを使用するなど構造の複雑なものが多く、条件の悪い野外に設置される点などを考慮すると、正常な機能を維持するためには管理に手間と費用を要する。
特許文献7のモグラ捕獲装置は、本発明の発明者が先に考案した装置であるが、駆動力として1本のバネのみを使用するという極めて簡素な構造であり、取り扱いが簡単でメンテナンスも容易であるという優れた装置であった。今回、発明者は、この装置に更なる改良を加え、利便性を向上させた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、中空部分を有する支柱と、前記中空部分を上下に移動可能な作動棒と、前記作動棒の下端に連結された殺傷針と、前記作動棒を下方に付勢する手段と、前記作動棒の上下移動に伴って待機位置と殺傷位置に変位する前記殺傷針を前記待機位置に固定する固定手段を備え、前記固定手段は、支点を中心に回動可能なリンク部材と、一端が前記リンク部材の一端と枢支された係合部材と、前記係合部材の他端に設けられた係合部と係合する、前記作動棒に設けられた被係合部と、地表面に設置されるモグラ検知部材と、前記モグラ検知部材と下端が連結され、上端に前記リンク部材の他端の先端面と係合するテーパ面が設けられた伝達棒、を備えたモグラ捕獲装置を提供する。
【0006】
このモグラ捕獲装置の作用は次のとおりである。前記殺傷針が前記待機位置にあるときは、前記伝達棒のテーパ面と前記リンク部材の先端面が面接触し、前記モグラ検知部材および前記伝達棒に作用する重力が前記テーパ面と前記先端面の接触面を介して前記リンク部材に伝達される。前記リンク部材は所定の方向に回動し、前記係合部材が所定の方向に変位して前記係合部が前記被係合部に係合する。これにより作動棒が所定の高さに固定され、前記殺傷針が前記待機位置に固定される。地表面に設置されたモグラ検知部材は、モグラが下を通過するときに持ち上げられた地表面とともに上方へ変位する。これにより前記伝達棒のテーパ面と前記リンク部材の先端面の位置が上下にずれて面接触が解除され、前記リンク部材は前記所定の方向に回動させる力から解放される。これに伴って前記係合部材の前記係合部と前記被係合部の係合が解かれ、前記作動棒の固定が解除され、前記殺傷針が前記殺傷位置に変位し、地表面を貫いて地中のモグラを殺傷する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のモグラ捕獲装置は取り扱いが簡単でメンテナンスも容易であるので、家庭で手軽に使用することができる。また地中のモグラから隔てられた地上に設置されることから、モグラの慣れや学習によって捕獲効果が減少することはなく、長期間にわたって捕獲効果が持続する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】モグラ捕獲装置の全体図
【図2】殺傷針が待機位置にある状態を示すモグラ捕獲装置の側面図
【図3】殺傷針が殺傷位置にある状態を示すモグラ捕獲装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。最初に図1に示す全体構造図に基づいてモグラ捕獲装置10の構造を説明する。モグラ捕獲装置10は、支柱12を構造上の中心として、作動棒14、殺傷針16、作動ばね18、固定杭20、リンク部材22、固定ピン24、モグラ検知板26、伝達棒28を主要な部材として構成されている。これらの部材は主に鉄を用い、表面に防錆塗装を施してある。殺傷針16は鉄の代わりにピアノ線を用い、先端をやすり等で尖らせてある。
【0010】
支柱12は縦に長い概略円筒形の部材であり、中空部に作動ばね18が装着されている。作動棒14は縦に長い棒状の部材であり、リング30が取り付けられた上端以外の部分が支柱12の中空部を上下に移動可能である。作動棒14は作動ばね18によって常に下方に付勢された状態にあり、上方に移動させるときにはリング30に指を引っ掛けて引き上げる。作動棒14にはブリッジ32を介して殺傷針16が装着されている。ブリッジ32は作動棒14の下端に取り付けられた横長の部材であり、両端部が支柱12に縦方向に形成された2つのスリット34を通して支柱12の外側まで広がっている。殺傷針16はブリッジ32の両端部にそれぞれ2本ずつ下向きに装着されている。
【0011】
モグラ検知板26は、支柱12の下端に取り付けられた保護枠36の内側に上下移動可能な状態で装着されている。モグラ検知板26の上面は保護枠36によって遮蔽されているが、下面は遮蔽されておらず、完全に開放されている。伝達棒28は縦に長い棒状の部材であり、下端がモグラ検知板26の上面と連結され、保護枠36の上面に空けられた孔38とガイド孔40を通って支柱12の上端近くまで延びている。伝達棒28の上端は支柱12と反対側に曲げられており、曲げられた部分の先端には、下に行くに従って支柱12側に傾斜するテーパ面42が形成されている。
【0012】
固定ピン24は、支柱12の上端に取り付けられた保護枠44の内側に横移動可能な状態で装着されている。固定ピン24の先端には半球面状の突起46が形成されている。この突起46と係合する半球面状の窪み48が作動棒14に形成されている。固定ピン24の後端はリンク部材22の一端と支点50を中心に回動可能に枢支されている。リンク部材22はL字型の部材であり、保護枠44に支点52を中心に回動可能に枢支されている。リンク部材22の他端は支柱12側を向いており、その先端には曲面54が形成されている。
【0013】
固定杭20は縦に長い棒状の部材であり、地中に挿し込み、モグラ捕獲装置10を直立状態に固定するときに用いられる。固定杭20の上端には握り手となるハンドル56が取り付けられ、下端は地中に挿し込みやすいように先鋭な形状となっている。固定杭20は、支柱12と連結された杭固定部材58に上下に貫通して設けられた孔60に挿通されており、固定つまみ62を緩めた状態で固定杭20を上下に動かして挿し込み量を調整し、固定つまみ62を閉めて位置を固定した後に地中に挿し込む。
【0014】
次に図2、図3に基づいてモグラ捕獲装置10の機能を説明する。図2は殺傷針16が待機位置にある状態を示し、図3は殺傷位置にある状態を示している。
【0015】
図2に示すように、殺傷針16が待機位置にある状態では、固定ピン24の突起46が作動棒14の窪み48と係合した状態にあり、作動ばね18が圧縮された状態を維持している。殺傷針16を待機位置に固定させるには複雑な作業は必要なく、支柱12を略鉛直に立てた状態で作動棒14を引き上げるだけでよい。支柱12を略鉛直に立てると、伝達棒28の上端のテーパ面42が下方に移動し、リンク部材22の先端の曲面54に上方から接触する。リンク部材22には、モグラ検知板26と伝達棒28に作用する重力Gの水平成分F1がテーパ面42と曲面54の接触面を介して伝達され、支点52周りのモーメントM1が作用する。これにより、リンク部材22の一端と枢支された固定ピン24には作動棒14側に向かう力F2が作用し、先端の突起46が作動棒14に押し当てられた状態となる。作動棒14が窪み48の高さと突起46の高さが同じになる位置まで引き上げられると、力F2によって突起46が窪み48に嵌入し、作動棒14が固定され、殺傷針16が待機位置に固定される。
【0016】
モグラ捕獲装置10は、モグラ検知板26がモグラ穴70の真上に位置するように設置する。このとき固定杭20はモグラ穴70から離れたところに挿し込み、モグラ穴70に露出することがないように注意する。
【0017】
モグラがモグラ穴70を通過するときに地表面が盛り上がると、図3に示すようにモグラ検知板26が上方に移動する。これに伴って伝達棒28が上方に移動すると、先端にあるテーパ面42とリンク部材22の曲面54との係合が解かれる。これにより力F1が作用しなくなるので、リンク部材22はそれまで作用していたモーメントM1から開放され、固定ピン24は同じく力F2から解放される。その結果、突起46が窪み48から抜け、作動棒14の固定が解除される。作動ばね18はそれまでの圧縮状態から一気に開放され、作動棒14を瞬時に下降させる。これに伴って殺傷針16は地表面を貫通し、モグラ穴70にいるモグラを突き刺す。
【0018】
殺傷針16をモグラ穴70の進行方向に沿ってモグラ検知板26の両側に配置しておけば、モグラが何れの方向に移動していようとも捕獲することができる。また複数の殺傷針16を適宜の間隔をおいて配置しておけば移動の速いモグラも捕獲することができるようになる。
【符号の説明】
【0019】
10 モグラ捕獲装置
12 支柱
14 作動棒
16 殺傷針
18 作動ばね
20 固定杭
22 リンク部材
24 固定ピン
26 モグラ検知板
28 伝達棒
42 テーパ面
46 突起
48 窪み
54 曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部分を有する支柱と、前記中空部分を上下に移動可能な作動棒と、前記作動棒の下端に連結された殺傷針と、前記作動棒を下方に付勢する手段と、前記作動棒の上下移動に伴って待機位置と殺傷位置に変位する前記殺傷針を前記待機位置に固定する固定手段を備え、
前記固定手段は、支点を中心に回動可能なリンク部材と、一端が前記リンク部材の一端と枢支された係合部材と、前記係合部材の他端に設けられた係合部と係合する、前記作動棒に設けられた被係合部と、地表面に設置されるモグラ検知部材と、前記モグラ検知部材と下端が連結され、上端に前記リンク部材の他端の先端面と係合するテーパ面が設けられた伝達棒、を備えたモグラ捕獲装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−5400(P2012−5400A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143096(P2010−143096)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【特許番号】特許第4625140号(P4625140)
【特許公報発行日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(305032265)
【Fターム(参考)】