説明

モジュール形測定器

【課題】コネクタに起因して動作が不安定になるおそれのないモジュール形測定器を提供すること。
【解決手段】バックプレートを介してメインモジュールと測定モジュールが接続され、メインモジュールと測定モジュールの間で電力と信号の授受を行うモジュール形測定器であって、バックプレートと測定モジュールが非接触結合手段を介して電気的に接続されたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール形測定器に関し、詳しくは、各モジュールに対する電力と信号の伝送に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定器の一種に、図9に示すように、バックプレートを介してメインモジュールと複数の入出力モジュールなどの測定モジュールが接続されたものがある。
【0003】
図9において、メインモジュール10はバックプレート20と一体化されている。メインモジュール10には、演算装置11、記録装置12、図示しないPCなどの外部装置との間で通信を行う外部通信用回路13、入出力モジュール30との間で通信を行う内部通信用回路14、各部に駆動電力を供給する電源装置15などが設けられている。
【0004】
バックプレート20には、メインモジュール10から測定モジュールである各入出力モジュール30に所定の駆動電源を供給するための電源線路21、メインモジュール10と各入出力モジュール30との間で信号の授受を行うための通信線路22などが設けられるとともに、各入出力モジュール30を着脱可能に電気的に接続するためのコネクタ23が設けられている。
【0005】
入出力モジュール30には、測定回路あるいは出力回路31、メインモジュール10との間で通信を行う内部通信用回路32、内部各部に所定電圧の駆動電力を供給するDC/DCコンバータ33、バックプレート20のコネクタ23と接続するためのコネクタ34などが設けられている。
【0006】
これらメインモジュール10とバックプレート20および入出力モジュール30は、1台の測定器として構成されている。
【0007】
このような構成において、メインモジュール10に内蔵された電源装置15は、メインモジュール10を構成する各部に駆動電力を供給するとともに、コネクタ23・34を介して接続された各入出力モジュール30にも駆動電力を供給する。
【0008】
入出力モジュール30のDC/DCコンバータ33は、メインモジュール10から供給された駆動電力を必要な電圧に変換し、入出力モジュール30を構成する内部各部に供給する。
【0009】
入出力モジュール30の入力モジュールは、メインモジュール10の制御に基づき、電圧・温度などを測定してメインモジュール10へ測定データを送信する。
【0010】
入出力モジュール30の出力モジュールは、メインモジュール10の制御に基づき、電圧・接点信号などを出力する。
【0011】
【特許文献1】特開2004−303880
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところでこれら入出力モジュール30では、バックプレート20上における各モジュールの装着位置を識別して、チャネル番号を設定することが求められる。
【0013】
そこで、従来のモジュール形測定器では、モジュール装着位置の識別方法として、図10(a)に示すように入出力モジュール30内部に設けられている複数のスイッチ35のオン・オフを各モジュールの装着位置に応じて手動操作設定し、スイッチ35のオン・オフ設定状態をモジュール位置識別回路36で識別する方法や、図10(b)に示すようにバックプレート20側のコネクタ23におけるピン相互間の接続配線を各モジュールの装着位置に応じて異ならせておき、入出力モジュール30のコネクタ34をバックプレート20側のコネクタ23に接続したときにピン相互間の接続配線をモジュール位置識別回路37で識別する方法が行われている。
【0014】
しかし、入出力モジュール30の装着位置をスイッチ35で設定する方法は、入出力モジュール30の装着位置を変更するたびにスイッチ35のオン・オフ変更操作が必要になるとともに、オン・オフ設定が重複すると誤動作が発生するという問題がある。
【0015】
また、バックプレート20側のコネクタ23におけるピン相互間の接続配線を各モジュールの装着位置に応じて異ならせる方法は、例えば作業者の誤操作によってコネクタピンが変形してしまうと、コネクタ装着位置の識別ができなくなるばかりでなく、メインモジュール10と入出力モジュール30間の駆動電源供給や信号の授受もコネクタ23、34を使用していることから、測定器として安定に動作しなくなってしまうおそれがある。
【0016】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、コネクタに起因して動作が不安定になるおそれのないモジュール形測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
バックプレートを介してメインモジュールと測定モジュールが接続され、メインモジュールと測定モジュールの間で電力と信号の授受を行うモジュール形測定器であって、
バックプレートと測定モジュールが非接触結合手段を介して電気的に接続されたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載のモジュール形測定器において、
前記非接触結合手段は、コイルによる電磁結合であることを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1記載のモジュール形測定器において、
前記非接1触結合手段は、光結合であることを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1記載のモジュール形測定器において、
前記非接触結合手段は、電波結合であることを特徴とする。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1記載のモジュール形測定器において、
電力伝送周波数と信号伝送周波数を異ならせることにより、電力と信号を共通の信号線を用いて多重伝送することを特徴とする。
【0022】
請求項6の発明は、請求項1記載のモジュール形測定器において、
前記メインモジュールと測定モジュールは、1:1の個別通信を行うことを特徴とする。
【0023】
請求項7の発明は、
バックプレートを介してメインモジュールと測定モジュールが接続され、メインモジュールと測定モジュールの間で電力と信号の授受を行うモジュール形測定器であって、
バックプレートと測定モジュールがコイルによる電磁結合手段を介して電気的に接続され、
測定モジュールの装着位置がコイルの2次側誘起電圧の大きさに基づき識別されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
これらにより、コネクタに起因して動作が不安定になるおそれのないモジュール形測定器が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図9と共通する部分には同一の符号を付けている。すなわち、図1においても、メインモジュール10はバックプレート20と一体化されている。メインモジュール10には、演算装置11、記録装置12、図示しないPCなどの外部装置との間で通信を行う外部通信用回路13、入出力モジュール30との間で通信を行う内部通信用回路14、各部に駆動電力を供給する電源装置15などが設けられている。
【0026】
バックプレート20には、メインモジュール10から各入出力モジュール30に所定の駆動電源を供給するための電源線路21、メインモジュール10と各入出力モジュール30との間で信号の授受を行うための通信線路22などが設けられるとともに、各入出力モジュール30と非接触に電気的接続するための電力伝送用コイル41、信号伝送用コイル42が設けられている。
【0027】
入出力モジュール30には、測定回路あるいは出力回路31、メインモジュール10との間で通信を行う内部通信用回路32、内部各部に所定電圧の駆動電力を供給するDC/DCコンバータ33、バックプレート20のコイル41、42とそれぞれ電磁結合するように配置された電力伝送用コイル51、信号伝送用コイル52などが設けられている。
【0028】
これらメインモジュール10とバックプレート20および入出力モジュール30は、1台の測定器として構成されている。
【0029】
このような構成において、メインモジュール10に内蔵された電源装置15は、メインモジュール10を構成する各部に駆動電力を供給するとともに、電磁結合されるコイル41・51を介して接続された各入出力モジュール30にも駆動電力を供給する。
【0030】
入出力モジュール30のDC/DCコンバータ33は、メインモジュール10の電源装置15から電源線路21および電力伝送用コイル41と51を介して供給された駆動電力を必要な電圧に変換し、入出力モジュール30を構成する内部各部に供給する。
【0031】
メインモジュール10は、電磁結合するように設けられた通信用コイル42と52を介して接続された入出力モジュール30に対し、設定や測定開始あるいは信号出力の指示、測定値の受信、記録などを行う。
【0032】
入出力モジュール30の入力モジュールは、メインモジュール10の制御に基づき、電圧・温度などを測定してメインモジュール10へ測定データを送信する。
【0033】
入出力モジュール30の出力モジュールは、メインモジュール10の制御に基づき、電圧・接点信号などを出力する。
【0034】
また、入出力モジュール30は、モジュール装着位置を検出してチャネル番号を設定する。図1の構成におけるモジュール装着位置の非接触かつ自動設定可能な識別は、入出力モジュール30側のコイルに発生する電圧を、モジュール位置に応じて変えることにより実現できる。
【0035】
具体的には、図2(a)に示すようにバックプレート20側の位置識別用コイル43に流れる電流を例えば抵抗44により変更したり、図2(b)に示すようにバックプレート20側の位置識別用コイル45の巻数を変更する。
【0036】
これらにより、各入出力モジュール30のモジュール位置識別回路37は、各入出力モジュール30の装着位置を、各入出力モジュール30に設けた位置識別用コイル53に電磁結合により誘起される2次側電圧の違いに基づいて非接触で自動的に識別できる。
【0037】
なお、図3に示すように、バックプレート20側の電力伝送用コイル46および信号伝送用コイル47を大きくすることにより、複数の入出力モジュール30に対しバックプレート20側の1組のコイル46、47で電力および信号を伝送できる。なお、コイルの代わりにコアを大きくしてもよい。
【0038】
また、例えば電力伝送周波数と内部通信信号周波数を変えることにより、電力と内部通信信号を共通の信号線を用いて多重伝送できる。具体的には、図4に示すように、メインモジュール10および入出力モジュール30にそれぞれ信号の混合と分離を行う混合・分離回路16、38を設ける。これにより、バックプレート20の信号線23を電力伝送と信号伝送に共用できるとともに、バックプレート20側の電力・信号伝送用コイル48と入出力モジュール30側の電力・信号伝送用コイル54を電力伝送と信号伝送に共用でき、コイル数を削減できる。
【0039】
また、図5に示すように、メインモジュール10の内部通信用回路14と各入出力モジュール30の内部通信用回路32を例えばスイッチ16を介して1:1で選択的に接続して通信を行うことにより、図2に示すようなバックプレート20側の位置識別用コイル43と各入出力モジュール30の位置識別用コイル53およびモジュール位置識別回路37は不要になる。
【0040】
また、図6に示すように、メインモジュール10側に各入出力モジュール30の内部通信用回路32と1:1で個別通信が行えるように入出力モジュール30の装着台数に応じた複数の内部通信用回路14を設けることにより、図2に示すようなバックプレート20側の位置識別用コイル43と各入出力モジュール30の位置識別用コイル53およびモジュール位置識別回路37を省略できる。
【0041】
また、図7に示すように、バックプレート20側と各入出力モジュール30側にそれぞれ送受信回路17、55と信号送受信用アンテナ18、56を設けることにより無線通信による信号伝送を行うことができ、バックプレート20側の信号伝送用コイル42と各入出力モジュール30の信号伝送用コイル52を省略できる。
【0042】
また、図8に示すように、バックプレート20の通信線路22と各入出力モジュール30の内部通信用回路32とをそれぞれ発光素子と受光素子を組み合わせた光結合素子57、58を介して接続することにより光通信による信号伝送を行うことができ、バックプレート20側の信号伝送用コイル42と各入出力モジュール30の信号伝送用コイル52を省略できる。
【0043】
なお、上記各実施例では、メインモジュールがバックプレートと一体化されている例について説明したが、メインモジュールがバックプレートに着脱可能に分離できる構造であってもよい。メインモジュールとバックプレートを分離できる構造とすることにより、メインモジュールが故障したり保守点検しなければならない場合には、代替のメインモジュールを装着すればよく、一体化構成に比べて組み合わせの自由度が高くなる。
【0044】
また、測定モジュールとして入出力モジュールの例を示したが、測定用途に応じた各種のモジュールであってもよい。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、メインモジュールと入出力モジュールの電気的接続にあたってコネクタを使用しないことから、コネクタの破損に起因する測定器の故障が発生することはない。
【0046】
また、モジュール装着位置の識別手段としてスイッチを使用しないため、モジュール装着位置を識別するための特別な操作は不要になり、誤設定の有無確認も不要になる。
【0047】
また、メインモジュールと入出力モジュールを非接触結合とすることにより、コネクタの構造に影響されることなく耐圧を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の構成におけるモジュール装着位置識別例を示すブロック図である。
【図3】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図5】本発明における信号伝送の実施例を示すブロック図である。
【図6】本発明における信号伝送の他の実施例を示すブロック図である。
【図7】本発明における信号伝送の他の実施例を示すブロック図である。
【図8】本発明における信号伝送の他の実施例を示すブロック図である。
【図9】モジュール形測定器の従来例を示すブロック図である。
【図10】従来のモジュール装着位置識別例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0049】
10 メインモジュール
16、38 混合・分離回路
20 バックプレート
30 入出力モジュール
41、51 電力伝送用コイル
42、52 信号伝送用コイル
43、45、53 位置識別用コイル
48、54 電力・信号伝送用コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックプレートを介してメインモジュールと測定モジュールが接続され、メインモジュールと測定モジュールの間で電力と信号の授受を行うモジュール形測定器であって、
バックプレートと測定モジュールが非接触結合手段を介して電気的に接続されたことを特徴とするモジュール形測定器。
【請求項2】
前記非接触結合手段は、コイルによる電磁結合であることを特徴とする請求項1記載のモジュール形測定器。
【請求項3】
前記非接触結合手段は、光結合であることを特徴とする請求項1記載のモジュール形測定器。
【請求項4】
前記非接触結合手段は、電波結合であることを特徴とする請求項1記載のモジュール形測定器。
【請求項5】
電力伝送周波数と信号伝送周波数を異ならせることにより、電力と信号を共通の信号線を用いて多重伝送することを特徴とする請求項1記載のモジュール形測定器。
【請求項6】
前記メインモジュールと測定モジュールは、1:1の個別通信を行うことを特徴とする請求項1記載のモジュール形測定器。
【請求項7】
バックプレートを介してメインモジュールと測定モジュールが接続され、メインモジュールと測定モジュールの間で電力と信号の授受を行うモジュール形測定器であって、
バックプレートと測定モジュールがコイルによる電磁結合手段を介して電気的に接続され、
測定モジュールの装着位置がコイルの2次側誘起電圧の大きさに基づき識別されることを特徴とするモジュール形測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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