モデリング装置、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに対応付け方法
【課題】 複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現する。
【解決手段】 本発明のモデリング装置1は、心臓に対して所定の電圧を印加した際の、心臓内の任意の位置における電位を求める仮想通電部12と、入力部10から入力された形状情報に基づいて形成された心臓モデルに対して、繊維方向を射影する射影部13とを備えている。ここで、射影部13は、射影先となる位置を、仮想通電部12によって求められた電位に基づいて特定する。このように位置特定に電位を用いることにより、形状が複雑で、かつ、形状が様々な心臓に対して、繊維方向を容易に射影することができる。
【解決手段】 本発明のモデリング装置1は、心臓に対して所定の電圧を印加した際の、心臓内の任意の位置における電位を求める仮想通電部12と、入力部10から入力された形状情報に基づいて形成された心臓モデルに対して、繊維方向を射影する射影部13とを備えている。ここで、射影部13は、射影先となる位置を、仮想通電部12によって求められた電位に基づいて特定する。このように位置特定に電位を用いることにより、形状が複雑で、かつ、形状が様々な心臓に対して、繊維方向を容易に射影することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデリング装置、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものであり、より詳細には、物体モデルを仮想的に形成するモデリング装置、これに用いられるプログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。また、本発明は、或る物体と他の物体とを対応付ける、対応付け方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
心臓は一定の調子で収縮及び弛緩、すなわち拍動を行っている。不整脈とは、この拍動の周期が乱れる疾患であり、時として心停止を引き起こす深刻な疾患である。この不整脈の治療や診断のために、心臓の拍動メカニズムに関して様々な詳細な研究が行われている。
【0003】
心臓の収縮は次のようにして起こる。まず、右心房にある洞房結節と呼ばれる部分から、電気的な刺激が一定の周期で発せられる。この電気的な刺激は、右心房及び左心房の各心筋細胞に伝わり、心筋細胞内の筋原繊維が収縮する。この筋原繊維の収縮が右心房及び左心房全体で生じると、左右両心房の収縮が引き起こされる。また、電気的な刺激の一部は、右心房の下部で心室中隔部付近にある房室結節にも達する。房室結節に達した刺激は、ヒス束、左右の脚、プルキンエ繊維を伝わって左心室及び右心室に達し、左右両心室の収縮を引き起こす。以上のように、心臓の拍動は心臓を伝わる電気的な刺激によって引き起こされている。
【0004】
心筋細胞は、直径が約5〜20μm、長さが約100μmの円柱状の細胞であり、一定の方向に整列した状態で束を形成している。この心筋細胞の長さ方向は、細胞内の筋原繊維の方向でもあるため、一般に繊維方向と呼ばれている。筋肉の収縮は筋原繊維の滑り運動によって引き起こされ、繊維方向は心臓の収縮運動と密接な関係がある。従って、心臓の収縮を力学的に解析する上で、繊維方向は重要な要素となっている。また、繊維方向は、細胞内において電流が流れやすい方向でもあり、心臓における電気的な刺激の伝達方向にも関与している。従って、繊維方向は、心臓における電気的な刺激の伝達経路を解析する上でも重要な要素となっている。
【0005】
心臓の効率的収縮ひいては血液拍出に適切な繊維配置が重要であることは、経験的にも知られている。この繊維方向は部位によって様々であり、心臓全体としては複雑な配向となっている。従来、繊維方向は、解剖学的・組織学的な手法によって計測されているが、倫理上の観点から、ヒトの心臓ではなく、ヒトに比較的近いイヌやブタ等の心臓が用いられている。
【0006】
例えば、非特許文献1,2では、ブタの心臓の繊維方向及びシート方向を計測し、長円座標系等の3つの座標系とエルミート有限要素とを導入して、計測した繊維方向のデータを整理している。なお、シート方向とは、心筋細胞が並ぶ平面(シート)に関係する方向であり、数学的には、この平面に対して垂直な方向を指す。
【0007】
また、非特許文献3,4では、拡散テンソル磁気共鳴法(diffusion tensor MRI)を用いた繊維方向の計測手法及び計算手法が開示されており、実際にイヌの心臓の繊維方向について空間分布を求め、組織学的なデータと対比させて検証を行っている。
【0008】
これらの計測結果から、心臓内の繊維配置について凡その傾向が明らかになっている。そして、動物で得られた知見を生かして、計算機内で仮想的にヒトの心臓モデルを作成し、シミュレーション等を通じて医療や創薬に貢献する試みが行われている。
【非特許文献1】Stevens C, Hunter PJ. Sarcomere length changes in a 3D mathematical model of the pig ventricles. Prog Biophys Mol Biol. 2003 May-Jul;82(1-3):229-241.
【非特許文献2】Stevens C, Remme E, LeGrice I, Hunter P. Ventricular mechanics in diastole: material parameter sensitivity. J Biomech. 2003 May;36(5):737-748.
【非特許文献3】Scollan DF, Holmes A, Winslow R, Forder J. Histological validation of myocardial microstructure obtained from diffusion tensor magnetic resonance imaging. Am J Physiol. 1998 Dec;275(6 Pt 2):H2308-H2318.
【非特許文献4】Scollan DF, Holmes A, Zhang J, Winslow RL. Reconstruction of cardiac ventricular geometry and fiber orientation using magnetic resonance imaging. Ann Biomed Eng. 2000 Aug;28(8):934-944.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、動物から得られた心筋細胞の繊維方向に関する情報をヒトの心臓に埋め込んで適切にモデリングできるモデリング装置は未だ実現されていない。この原因は次の通りである。
【0010】
まず、心臓内の各位置を特定するのに好適な座標系が見つかっていない。例えば、動物で得られた繊維方向をヒトの心臓モデルに適用する場合、動物の心臓における任意の位置と、ヒトの心臓における任意の位置とを一対一に対応させる必要がある。しかしながら、心臓の形状は種間さらには個体間でも異なっており、その上、心臓は非常に複雑な形状をしているために、通常のXYZ軸直交座標系等を用いて、2つの異なる心臓間で位置の対応関係を設定するのは困難を極める。このような背景から、複雑な形状を有する心臓のような物体であっても、或る物体から得られた繊維方向等の特性情報を、形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置が求められている。
【0011】
また、心臓内の任意の位置における繊維方向等を定義するための局所座標系を好適に設定する方法も見つかっていない。例として繊維方向について説明すると、繊維方向は心臓の外形形状と密接な関係がある。例えば、心臓の外膜表面上の或る点における繊維方向は、その点と接する平面内に含まれることになる。しかしながら、繊維方向の情報を、例えば通常のグローバル座標系を用いて表現すると、このグローバル座標系は心臓の外形形状とは何ら関連性がない座標系であるため、繊維方向を心臓の外形形状と関連付けて表現することができない。これにより、例えば動物で得られた繊維方向のデータをヒトの心臓にそのまま適用する場合、例えば繊維方向が心臓の外膜部分から飛び出す等、繊維方向に矛盾が生じるおそれがある。あるいは、動物の心臓から得られた知見を元に、繊維配向に関する仮説を立て、この仮説をヒトの心臓モデルに適用する場合にも、自然な形で適用することができない。このような理由から、心臓の各位置における局所座標系を設定することが必要であるが、心臓は非常に複雑な形状をしているため、心臓の形状に基づいて、逐一幾何学的な計算を行って局所座標系を設定することは、膨大な計算量を必要とし現実的ではない。このような背景から、心臓の外形形状と関連性がある繊維方向等の方向特性情報を、或る物体から他の物体に容易に射影できるモデリング装置が求められている。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することにある。
【0013】
また、本発明の別の目的は、物体の形状と関連性がある方向特性情報を、或る物体から他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るモデリング装置は、上記課題を解決するために、物体の形状情報が入力される第1入力部と、物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、上記物体に対して所定の電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる特性を、上記特性情報に含まれる位置に射影する射影手段とを備え、上記射影手段が、射影先となる位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定することを特徴とする。
【0015】
第2入力部から入力される特性情報には、物体内の位置と特性との関係が含まれている。射影手段は、この特性情報を第1入力部から入力された物体モデルに射影するので、物体モデルに対して、位置に応じた特性を射影することができる。なお、ここでいう「位置」とは、点又は領域の何れであってもよい。
【0016】
ここで、物体内の任意の位置の特定は、通電手段により求められた電位に基づいて行われる。通電手段は所定の電圧を印加するので、物体内の任意の位置における電位は、0V以上所定の電圧以下となる。従って、物体内の任意の位置を、0V以上所定の電圧以下で特定することができる。これにより、形状が異なる様々な物体に対して、共通の尺度(0V以上所定の電圧以下)で位置を特定することが可能になる。よって、例えば、電位に基づく座標を変数とする関数を、特性情報として第2入力部に入力すれば、目的の物体の形状を問わず、特性を容易に射影することができる。換言すれば、本発明のモデリング装置は、形状が異なる様々な物体に対して、特性を射影することができる。また、位置の特定の際に幾何学的な計算を行う必要がないので、複雑な形状の物体であっても、容易に特性を射影することができる。
【0017】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、上記通電手段が、上記物体に対して電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電流方向をさらに求めるものであり、上記射影手段が、上記方向に関する特性を、上記通電手段により求められた電流方向に基づいて射影することが好ましい。
【0018】
電流が流れる方向は、物体の外形形状に依存する。よって、電流方向は、局所座標系として用いることができる。射影手段は、方向に関する特性を、電流方向に基づいた局所座標系を利用して射影するので、方向に関する特性を目的の物体の外形形状に適合させて射影することが可能となる。従って、本発明に係るモデリング装置は、物体の外形形状と関連性がある方向に関する特性を、形状が異なる様々な物体に容易に射影することができる。
【0019】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記通電手段が、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、例えばヒトの心臓等のように、実際には電圧を印加することができない物体についても、物体の任意の位置における電位及び/又は電流方向を求めることができる。
【0021】
本発明に係るモデリング装置は、上記課題を解決するために、第1の物体の形状情報が入力される第1入力部と、第2の物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、上記第1及び第2の物体に対して所定の電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる第2の物体内の位置に相当する、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた第1の物体モデル内の位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定すると共に、その位置に上記特性を射影する射影手段とを備えていることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、第1の物体について、通電手段が電圧を印加し、物体内の任意の位置における電位を求める。また、第2の物体についても同様に、通電手段が物体内の任意の位置における電位を求める。そして、射影手段は、第2の物体における位置を、そこにおける電位に基づいて、第1の物体モデル内の位置と対応付ける。例えば、射影手段は、第2の物体内の位置を、そこにおける電位と同じ電位を有する第1の物体モデル内の位置と対応付ける等する。そして、射影手段は、第2入力部から入力された第2の物体内の位置における特性情報を、第1の物体モデルの対応する位置に射影する。これにより、第2の物体の或る位置における特性情報を、第1の物体内の対応する位置に射影することができる。
【0023】
ここで、射影手段による第1−第2物体間での位置の対応付けは、通電手段が求めた電位に基づいている。通電手段は所定の電圧を印加するので、各物体内の任意の位置における電位は、0V以上所定の電圧以下となる。よって、各物体内の任意の位置を、0V以上所定の電圧以下で特定することができる。これにより、第1及び第2の物体が複雑な形状を有する物体で、かつ異なる形状であっても、共通の尺度(0V以上所定の電圧以下)を用いて容易に対応付けを行うことができる。従って、本発明に係るモデリング装置は、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に射影することができる。また、位置の対応付けの際に幾何学的な計算を行う必要がないので、複雑な形状の物体であっても、容易に特性を射影することができる。
【0024】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、上記通電手段が、さらに、上記第1及び第2の物体に対して電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電流方向に基づいて、各物体の局所座標系を求めるものであり、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる方向に関する特性を、上記第2の物体の局所座標系における方向データに変換する変換手段をさらに備え、上記射影手段が、上記変換手段により変換された方向データを、上記第1の物体の局所座標系に基づいて射影することが好ましい。
【0025】
電流が流れる方向は、物体の外形形状に依存する。よって、電流方向は、局所座標系として用いることができる。変換手段は、入力された方向に関する特性を、この局所座標系に基づいた表現に変換する。そして、射影手段は、方向に関する特性を、局所座標系に基づいた表現となっている方向データを射影するので、方向に関する特性を目的の物体の外形形状に適合させて射影することが可能となる。これにより、方向に関する特性を第1の物体に射影するときに、第1の物体の外形形状が第2の物体と異なる場合であっても、第1の物体の外形形状に適するように射影することが可能となる。従って、本発明に係るモデリング装置は、物体の形状と関連性がある方向に関する特性を、或る物体から他の物体に容易に射影することができる。
【0026】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記第2の物体の形状情報が入力される第3入力部をさらに備え、上記通電手段が、上記第1及び第3入力部から入力された各形状情報に基づいた各物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、例えばヒトの心臓等のように、実際には電圧を印加することができない物体についても、物体の任意の位置における電位及び/又は電流方向を求めることができる。
【0028】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記物体が心臓であり、上記第2入力部から入力される特性情報に含まれる特性が、心筋細胞の繊維方向又はシート方向に関する特性であってもよい。
【0029】
上記構成によれば、或る心臓から得られた心筋細胞の繊維方向又はシート方向に関する情報を、目的の心臓モデルに射影できる。これにより、他の心臓から得られた繊維方向又はシート方向の知見を元に、目的の心臓モデルに繊維方向又はシート方向の情報を射影できるモデリング装置が実現され、治療や診断に貢献できる。
【0030】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記通電手段が、心尖部−心基部間及び内膜−外膜間のそれぞれに所定の電圧を印加した際の心臓内の任意の位置における電位をそれぞれ求め、上記射影手段が、心尖部−心基部間に所定の電圧を印加した際の電位と内膜−外膜間に電圧を印加した際の電位と心尖部−心基部方向に伸びる軸を中心とした回転方向における角度とに基づいて、上記方向に関する特性を、上記特性情報として射影することが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、心尖部−心基部方向の電位により、心臓の高さ方向に略相当する方向における位置が特定される。また、内膜−外膜方向の電位により、心臓の厚み方向に略相当する方向の位置が特定される。そして、心尖部−心基部方向に伸びる軸を中心とした回転方向における角度により、回転方向にける位置が特定される。これらの3つの座標によって表現される座標系は、円柱座標系や球座標系と類似したものであり、3次元空間内の任意の一点を定義することができる。またこの座標系における各座標は、心臓の形状に関する特徴(すなわち、上下方向と回転方向における角度とのみが容易に識別可能な中空の球様複雑形状)に適合したものであり、心臓内の任意の位置を特定する座標系として好適である。従って、種間さらには個体間で見られる形状の相違に依存しない汎用的な位置特定を行うことができる。
【0032】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記局所座標系が直交座標系であり、上記局所座標系における第1の座標軸が、心尖部−心基部間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸であり、上記局所座標系における第2の座標軸が、内膜−外膜間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸及び上記第1の座標軸の何れに対しても直交する軸であり、上記局所座標系における第3の座標軸が、上記第1の座標軸及び第2の座標軸の何れに対しても直交する軸であることが好ましい。
【0033】
心尖部−心基部間に電圧が印加された際の電流方向(すなわち第1の座標軸の伸びる方向)は、心臓の壁に沿った方向となる。また、内膜−外膜間に電圧が印加された際の電流方向は心臓の壁と略垂直な方向であり、第2の軸はこの電流方向と垂直であることから、第2の軸は、心臓の壁に略沿った方向となる。また、第3の軸は、第1及び第2の軸の何れとも直交する軸であることから、心臓の壁と略垂直な軸となる。このように、局所座標系における各座標が心臓の外形形状に関連付けられたものとなっているため、心臓の外形形状と関連性のある繊維方向やシート方向の情報を、矛盾することなく目的の心臓の形状に適合するように射影することができる。
【0034】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記射影手段によって特性が射影された物体に対して、ジオメトリ処理を行うジオメトリ手段と、上記ジオメトリ手段によってジオメトリ処理が行われた物体を表示する表示部とをさらに備えていることが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、表示部上で、特性情報を射影した目的の物体を視覚的に確認することができる。
【0036】
ところで、上記モデリング装置の各手段は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、上記何れかのモデリング装置の各手段としてコンピュータを動作させるためのプログラムであり、また、本発明に係る記録媒体は、当該プログラムが記録された記録媒体である。
【0037】
これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、上記モデリング装置の各手段として動作する。従って、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することができる。
【0038】
本発明に係る対応付け方法は、第1の物体内の位置と第2の物体内の位置とを対応付ける対応付け方法であって、上記課題を解決するために、上記第1及び第2の物体に対して、所定の電圧を印加した際の電位分布をそれぞれ求める工程と、求められた電位分布に基づいて、第1の物体内の位置と第2の物体内の位置との対応付けを行う工程とを含んでいることを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、各物体内の点又は領域の対応付けは、電位分布に基づいて行われる。この電位分布は、所定の電圧を印加した際のものであるので、各物体内の任意の位置は、0V以上所定の電圧以下となる。従って、物体内の任意の位置を、0V以上所定の電圧以下で特定することができる。これにより、第1及び第2物体の形状が異なっていても、共通の尺度(0V以上所定の電圧以下)で、点又は領域を対応付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るモデリング装置は、以上のように、物体に対して所定の電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、入力部から入力された特性情報に含まれる特性を、通電手段により求められた電位に基づいて射影する射影手段とを備えているので、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に容易に射影することができるという効果を奏する。
【0041】
また、本発明に係るプログラム及び記録媒体は、上記モデリング装置の各手段としてコンピュータを実行させるためのプログラム、及びこれを記録した記録媒体であるので、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を、形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図8に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、一例として、物体としてヒトの心臓、特性として心筋細胞の繊維方向に関する特性が用いられる場合について説明する。すなわち、本実施形態では、心筋細胞の繊維方向に関する仮説をヒトの心臓モデル(より詳細には左右両心室モデル)に好適に射影し、仮説に基づく繊維方向を再現できるモデリング装置について説明する。
【0043】
図1は、本実施形態に係るモデリング装置1の機能ブロック図である。モデリング装置1は、入力部(第1入力部、第2入力部)10、再構成部11、仮想通電部(通電手段、仮想通電手段)12、射影部(射影手段)13、ジオメトリ部(ジオメトリ手段)14、表示部15、及び記憶部16を備えている。
【0044】
入力部10には、ヒトの心臓の形状情報と、ヒトの心臓内の位置と繊維方向との関係を示す関数が入力される。入力部10としては特に限定されるものではなく、例えば、外部記憶装置からデータを読み込む各種データ入力インターフェースや、ユーザがキー操作によって情報を入力するキーボード等が用いられる。なお、モデリング装置1に複数の入力部が備えられ、上記形状情報と上記関数とが別々の入力部から入力されてもよい。
【0045】
ヒトの心臓の形状情報としては、一例として、X線CT(X線コンピュータ断層撮影法)やMRI(磁気共鳴映像法)等により取得した連続断層撮影像等が挙げられる。このような方法を用いることによって、非侵襲的に心臓の形状情報を得ることができる。また、心臓モデルを構成するポリゴンの座標データが予め得られている場合は、連続断層撮影像の代わりにこれを用いてもよい。上記関数の具体例については後述する。
【0046】
再構成部11は、上記入力部から入力されたヒトの心臓の形状情報を、心臓モデルを構成するポリゴンの座標データに変換することによって、心臓のモデルを再構成するためのものである。なお、ヒトの心臓の形状データとしてポリゴンの座標を用いる場合には、再構成部11を省略することができる。
【0047】
仮想通電部12は、上記入力部20から入力された形状情報に基づいたヒトの心臓に対して、仮想的に所定の電圧を印加し、電位及び/又は電流方向を算出によって求めるためのものであり、具体的には、上記再構成部11によって3次元的に再構成された心臓モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、心臓モデルの各位置における電位及び電流方向を算出するものである。本実施形態では、仮想通電部12が仮想的に電圧を印加し、電位及び電流方向を後述の方法によって算出しているが、仮想通電部12の代わりに、実際に心臓等の目的物に対して電圧を印加し、電位及び電流の方向を実際の測定値に基づいて求める通電部(通電手段)が備えられていてもよい。
【0048】
射影部13は、入力部から入力された形状情報に基づいたヒトの心臓モデルに対して、入力部から入力された関数に含まれる繊維方向を、特性情報に含まれる位置に射影するためのものであり、具体的には、再構成部11により再構成されたヒトの心臓モデルに、繊維方向を射影するためのものである。射影部13は、射影する際の位置特定方法として、上記仮想通電部12により求められた電位を用いている。
【0049】
ジオメトリ部14は、射影部13により繊維方向が射影されたヒトの心臓モデルに対して、ジオメトリ処理を行う。ジオメトリ処理とは、心臓モデルを定義する座標系を、モデリング座標系から、視点を原点にした視点座標系に変換する処理である。ジオメトリ処理には、遠近法等の各種効果を計算し投影変換を行う処理や、表示される画面に合わせたスクリーン座標系に変換する処理等が含まれる。
【0050】
表示部15は、ジオメトリ部14によりジオメトリ処理が行われた心臓モデルの画像を表示するためのものであり、CRT(cathode-ray tube)や液晶ディスプレイ等が用いられる。
【0051】
記憶部16は、再構成部11によって再構成された心臓モデルの座標データや、仮想通電部によって求められた心臓モデルの各位置における電位及び電流方向のデータを格納するためのものである。具体的には、記憶部16は、後述するポリゴンの座標データ50、心尖部−心基部電位分布51、内膜−外膜電位分布52、経線方向データ53、緯線方向データ54、及び補正済厚みデータ55等を記憶する。なお、記憶部16は、RAM(Random Access Memory)等の各種メモリによって構成される。
【0052】
また、上記再構成部11、仮想通電部12、射影部13、及びジオメトリ部14は、専用IC等のハードウェアのみによって構成されていてもよいし、CPU、メモリ、及びプログラムの組み合わせのように、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0053】
本実施形態に係るモデリング装置1の動作について説明する。図2は、モデリング装置1の処理工程を示すフロー図である。
【0054】
まず、モデリング装置1の入力部10から、ヒトの心臓の形状情報が入力される(ステップS100)。なお、本実施形態では、一例として、形状情報としてMRIによる連続断層撮影像が入力される場合について説明する。この場合、心臓の上下方向(心基部−心尖部方向)に伸びる軸に沿って心臓を連続的に撮影した像を連続断層撮影像として用いることができる。
【0055】
入力された連続断層撮影像は、再構成部11に出力される。再構成部11は、連続断層撮影像に基づいて心臓の再構成を行い、心臓(より詳細には左右両心室)モデルを作成する(ステップS101)。具体的には、再構成部11は、連続断層撮影像が入力されると、画像処理によって、各断層撮影像における心臓の内膜や外膜の境界(輪郭)を抽出する。次に、断層撮影像と次の断層撮影像との間の部分について、輪郭の補間を行う。これにより、連続断層撮影像から心臓モデルが3次元モデルとして作成される。そして、再構成部11は、得られた心臓モデルのポリゴンの座標データ50を記憶部16に格納する。以下、ポリゴンの座標を定義する座標系をモデリング座標系という。なお、ステップS100で入力される形状情報がポリゴンの座標データである場合は、ステップS101を省略してもよい。
【0056】
記憶部16に格納されたポリゴンの座標データ50は、仮想通電部12により読み込まれる。仮想通電部12は、記憶部16から座標データを読み込んだ心臓モデルに対して、仮想的に通電を行い、心臓モデルの各位置における電位及び電流が流れる方向(以下、「電流方向」という)を算出する(ステップS102)。
【0057】
ステップS102の詳細について図3に示す。まず、仮想通電部12は、心臓モデルの心尖部と心基部との間に1Vの電圧を仮想的に印加する。ここでは、心尖部に負極、心基部に正極を適用する。従って、心尖部は電位が0Vとなり、そこから心基部に向かって電位が大きくなっていき、心基部では電位が1Vとなる。仮想通電部12は、心尖部−心基部間に電圧を印加した際の、心臓モデル内の各位置における電位(以下、「心尖部−心基部電位」という)を算出する(ステップS1021)。なお、心臓モデル内の任意の位置における電位を算出する方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、有限要素法を用いてポアソン方程式を解く方法等が挙げられる。また、例えば、MSC.Nastran(登録商標、エムエスシーソフトウェア株式会社製)等の市販のソフトウェアを利用することにより算出してもよい。そして、仮想通電部12は、算出した心尖部−心基部電位分布51を記憶部16に格納する。心尖部−心基部電位分布51は、具体的には、モデリング座標系で表現された座標と心尖部−心基部電位との対応情報となっている。参考として、算出した心尖部−心基部電位分布51を視覚化したものを図11に示す。図に示すように、心尖部から心基部に向かって電位の勾配ができている。なお、心尖部−心基部電位は、心臓モデル内の任意の位置を特定するための座標(電位座標)の1つとして用いられる。なお、本実施形態では、仮想通電部12が、一例として1Vの電圧を印加しているが、印加する電圧は一定の電圧であれば何Vであってもよい。
【0058】
次に、仮想通電部12は、心尖部−心基部間に電圧を印加した際に電流が流れる方向(以下、「経線方向」という)を心臓の各位置について算出する(ステップS1022)。電流は、電位の勾配の最も急な方向に流れるので、ステップS1021で求めた電位分布を用いることにより、経線方向を求めることができる。算出された経線方向は、経線方向データ53として、仮想通電部12により記憶部16に格納される。具体的には、経線方向の固有ベクトルがモデリング座標成分として記憶部16に格納される。図4は、各位置において算出された経線方向の固有ベクトルを示した図である。この経線方向は、心臓モデル内の各位置における局所座標系の第1の座標軸となる。
【0059】
続いて、ステップS1021と同様に、仮想通電部12は、心臓モデルの内膜と外膜との間に1Vの電圧を仮想的に印加する。本実施形態では、心臓モデルとして左右両心室モデルを用いているので、左心室及び右心室についてそれぞれ作業を行う。ここでは、内膜に負極、外膜に正極を適用する。従って、内膜は電位が0となり、そこから外膜に向かって電位が大きくなっていき、外膜では電位が1Vとなる。そして仮想通電部12は、内膜−外膜間に電圧を印加した際の、心臓モデル内の各位置における電位(以下、「内膜−外膜電位」という)を算出する(S1023)。例として、算出した内膜−外膜電位分布52を視覚化したものを図12に示す。図に示すように、内膜から外膜に向かって電位の勾配ができている。算出された各位置における内膜−外膜電位分布52は、仮想通電部12により記憶部16に格納される。内膜−外膜電位分布52は、具体的には、モデリング座標系で表現された座標と内膜−外膜電位との対応情報となっている。なお、内膜−外膜電位は、心臓モデル内の任意の位置を特定するための座標の1つとして用いられる。
【0060】
次に、ステップS1022と同様に、仮想通電部12は、内膜−外膜間に電圧を印加した際に電流が流れる方向(以下、「厚み方向」という)を左心室及び右心室についてそれぞれ算出する(ステップS1024)。図5は、左心室について算出された厚み方向の固有ベクトルを示した図である。
【0061】
そして、仮想通電部12は、図4に示す経線方向の固有ベクトルと、図5に示す厚み方向の固有ベクトルとの外積をとり、経線方向及び厚み方向の何れに対しても直交する固有ベクトル(以下、「緯線方向の固有ベクトル」という)を心臓の各位置について算出する(ステップS1025)。算出された緯線方向は、緯線方向データ54として、仮想通電部12により記憶部16に格納される。緯線方向データ54は、具体的には、緯線方向の固有ベクトルの成分をモデリング座標系で定義したものである。図6は、算出された緯線方向のベクトルを示す図である。なお、この緯線方向は、心臓モデル内の各位置における局所座標系の第2の座標軸となる。
【0062】
以上により、経線方向、厚み方向、緯線方向の3つの方向が得られるが、経線方向と厚み方向とは完全に直交しない場合がある。従って、厚み方向を、経線方向と完全に直交するように補正する必要がある。すなわち、仮想通電部12は、さらに、経線方向の固有ベクトルと緯線方向の固有ベクトルとの外積をとり、経線方向及び緯線方向の何れに対しても直交するベクトル(以下、「補正済厚み方向のベクトル」という)を心臓の各位置について算出する(ステップS1026)。この補正済厚み方向は、ステップS1024で求められた厚み方向と大体等しい方向であるが、経線方向及び緯線方向の何れに対しても完全に直交する方向となる。そして、算出された補正済厚み方向は、補正済厚み方向データ55として、仮想通電部12により記憶部16に格納される。補正済厚み方向データ55は、具体的には、補正済厚み方向の固有ベクトルの成分をモデリング座標系で定義したものとなっている。この補正済厚み方向が、心臓モデル内の各位置における局所座標系の第3の座標軸となる。仮想通電部12による電位及び電流方向の算出は以上の通りである。
【0063】
心臓モデルの各位置における繊維方向は、経線方向、緯線方向、及び補正済厚み方向からなる局所座標系における角度成分として定義される。モデリング装置1は、この局所座標系を用いて繊維方向を定義することによって、繊維方向を心臓の外形形状と関連付けて定義する構成となっている。従って、繊維方向を心臓モデルに射影するときに、目的の心臓モデルの外形形状に適合させて射影することが可能となる。
【0064】
また、心臓モデル内の任意の位置を特定できるようにするために、心尖部−心基部電位及び内膜−外膜電位に加えて、第3の座標として回転角度を設定する。ここで、回転角度とは、心尖部と心基部とを貫く軸を中心とした回転方向における角度を指す。この回転角度は、心臓における特徴的な位置を基点として定義される。この特徴的な位置は、個体や種に依存せずに識別できる位置であり、明確に判別できる位置であればよい。本実施形態では、一例として、左心室の心尖部−心基部方向における長軸を中心として、右心室の最も張り出した方向を0°とし、心基部側から見て反時計方向を正の角度とする。これにより、本実施形態のモデリング装置1は、物体上の任意の位置を、心尖部−心基部電位(0〜1)、内膜−外膜電位(0〜1)、及び回転角度(0〜2π)という3つの座標によって特定できるようになる。以下、これらの座標を電位座標といい、この座標系を電位座標系という。このような構成によれば、様々な形状や大きさの心臓に対して、共通の座標である電位座標を用いて位置を特定することが可能となる。
【0065】
次に、モデリング装置1は、繊維方向に関する仮説となる関数の入力を求める。この関数は、入力部10から特性情報として入力される(図2のステップS103)。なお、関数の入力は、仮想通電部による電位及び電流方向の算出後である必要はなく、例えば、ヒト心臓の形状情報を入力する際に、同時に入力してもよい。
【0066】
入力される関数の一例について説明する。図7に示すように、繊維方向を上記局座標系における角成分θ,φにより特定する場合、ヒトの心臓における繊維方向は、内膜ではθ=−90°となり、外膜側になるにつれて繊維方向の角度が大きくなり、外膜ではθ=+60°となり、かつ、φは常に0°であることが知られている。この仮説は、補正済厚み方向の座標をr(0≦r≦1)として、
θ=−π/2+5πr/6
φ=0
(但し、−π≦θ,φ≦π)
という関数で表すことができる。
【0067】
そして、入力された関数は射影部13に出力される。射影部13は、上記関数によって表された繊維方向を、心臓モデルに対して射影する(ステップS104)。具体的には、射影部13は以下の作業を行う。まず、或る電位座標についてθ及びφを算出する。そして、ステップS1021・S1023において記憶部16に格納された電位分布51・52に基づいて、その電位座標に対応するモデリング座標を求める。このモデリング座標が心臓モデル上の射影先となる。また、角成分θ及びφとして算出された局所座標系における繊維方向の成分を、ステップS1022・S1025・S1026において記憶部16に格納された各方向データ53・54・55を用いて、モデリング座標系における成分に変換する。これらの処理により、或る電位座標における繊維方向が心臓モデル上に射影される。この作業を必要な回数繰り返すことによって、心臓モデル上に繊維配置を再現することができる。繊維配置が再現された心臓モデルの情報は、ジオメトリ部14に出力される。
【0068】
ジオメトリ部14は、繊維配置が再現された心臓モデルに対して、ジオメトリ処理を行う(ステップS105)。具体的には、ジオメトリ部14は、心臓モデルを表現する座標系を、上記のモデリング座標系から視点に基づいた視点座標系に変換する。モデリング座標系は3次元空間座標系であり、これを2次元平面座標系である視点座標系に変換することにより、心臓モデルを平面上に表現することが可能になる。以上のようにして視点座標系に変換された心臓モデルの座標データは、表示部15に出力される。座標データが入力された表示部15は、繊維配置が再現された心臓モデルを画面上に表示する(ステップS106)。
【0069】
なお、本実施形態では、心筋細胞の繊維方向を射影したが、同様の方法によって、シート方向を射影することもできる。
【0070】
〔実施例1〕
第1実施形態に係るモデリング装置の一実施例として、上述した仮説を適用した心臓モデルを図8(a)〜(e)に示す。図8(a)〜(e)は、心尖部−心基部電位がそれぞれ、0V、0.25V、0.5V、0.75V、1Vの位置における繊維方向を示すものである。図に示すように、内膜から外膜に向かって、繊維方向が−90°から+60°に連続的に変化していく様子が再現されている。また、各繊維方向は心臓の形状に適合した方向となっていることが分かる。
【0071】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について図9及び図10に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、一例として、動物の心臓における繊維方向をヒトの心臓モデルに射影するモデリング装置について説明する。なお、上述した実施形態1の部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図9は、本実施形態に係るモデリング装置2の機能ブロック図である。モデリング装置2は、実施形態1におけるモデリング装置1の入力部10の代わりに入力部20(第1入力部、第2入力部、第3入力部)を備え、記憶部16の代わりに記憶部26を備え、さらに、変換部(変換手段)27を備えている。
【0073】
入力部20には、ヒトの心臓(第1の物体)の形状情報と、動物の心臓(第2の物体)の形状情報と、動物の心臓における繊維方向の情報(特性情報)とが入力される。なお、動物の心臓の形状情報としては、ヒトの心臓の形状情報と同様のものを用いることができる。また、動物の心臓における繊維方向の情報(以下、「繊維方向データ」という)には、動物の心臓上の位置を特定する位置データと、その位置における固有ベクトルの成分との組み合わせが含まれている。なお、この位置データ及び成分は、共にモデリング座標系により定義されている。
【0074】
記憶部26は、再構成部11によって再構成された心臓モデルの座標データや、仮想通電部によって求められた心臓モデルの各位置における電位及び電流方向のデータを、ヒト及び動物のそれぞれについて格納するためのものである。具体的には、記憶部26は、ヒトのポリゴンの座標データ50、心尖部−心基部電位分布51、内膜−外膜電位分布52、経線方向データ53、緯線方向データ54、及び補正済厚みデータ55と、動物のポリゴンの座標データ60、心尖部−心基部電位分布61、内膜−外膜電位分布62、経線方向データ63、緯線方向データ64、及び補正済厚みデータ65等を記憶する。なお、記憶部26は、RAM(Random Access Memory)等の各種メモリによって構成される。
【0075】
変換部27は、入力部20から入力された特性情報に含まれる方向に関する特性(繊維方向)を、第2の物体(動物の心臓)の局所座標系に基づいた方向データに変換するものであり、具体的には、入力部20から入力された、モデリング座標系で定義された繊維方向の情報を、局所座標系による定義に変換するためのものである。変換方法の詳細については後述する。なお、変換部27は、専用IC等のハードウェアのみによって構成されていてもよいし、CPU、メモリ、及びプログラムの組み合わせのように、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0076】
本実施形態に係るモデリング装置2の動作について説明する。図10は、モデリング装置2の処理工程を示すフロー図である。なお、上述した実施形態1の工程と同様の処理を行う工程については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
まず、モデリング装置2の入力部20に、ヒト及び動物の心臓の形状情報が入力される。モデリング装置2は、入力されたヒトの心臓の形状情報を用いて、上述したステップS101・S102の処理を行う(ステップS200)。これにより、記憶部16に、ヒトの心臓モデルのポリゴンの座標データ50、電位分布51・52、局所座標系の各方向データ53・54・55が記憶される。
【0078】
次に、動物の心臓についても同様に、ステップS101・102の処理を行う(ステップS201)。これにより、記憶部16に、動物の心臓モデルのポリゴンの座標データ60、電位分布61・62、局所座標系の各方向データ63・64・65が記憶される。
【0079】
次に、モデリング装置2は、動物の心臓から得られた繊維方向データの入力を求める。そして、繊維方向データが、入力部10に特性情報として入力される(ステップS202)。
【0080】
入力された繊維方向データは、変換部27に入力される。変換部27は、このモデリング座標系で定義された繊維方向のデータを、局所座標系における定義に変換する(ステップS203)。この変換について、以下に具体的に説明する。繊維方向の情報は、動物の心臓モデル上の位置を特定する位置データと、その位置における繊維方向データとからなる。これら位置データ及び方向データは、共にモデリング座標系で定義されている。変換部27は、まず、記憶部16に格納された局所座標系の各方向データ63・64・65を参照して、位置データにより特定された位置における局所座標系を求める。そして、モデリング座標系により定義された繊維方向データを、固有ベクトルの成分を用いて、局所座標系による定義に変換する。なお、局座標系による繊維方向のデータとしては、例えば、実施形態1で示したθ及びφが挙げられる。この処理により、モデリング座標系で定義された繊維方向が、局所座標系におけるθ及びφに変換される。局所座標系に変換された繊維方向データは、射影部13に入力される。
【0081】
射影部13は、局所座標系に変換された動物の繊維方向データを、ヒトの心臓モデルに射影する(ステップS204)。ここで、動物の心臓モデルにおける位置と、ヒトの心臓モデルにおける位置との対応は、電位座標によって行われる。すなわち、射影部13は、動物の心臓モデル内の或る位置における繊維方向データを、その位置と同じ電位座標を有するヒトの心臓モデル内の位置に射影する。また、局座標系に変換された繊維方向データを、ヒトの局座標の各方向データ53・54・55を用いて、モデリング座標系により定義される繊維方向データに変換し、ヒトの心臓モデルに射影する。
【0082】
射影部13により繊維配置が再現された心臓モデルの情報は、ジオメトリ部14に出力され、ジオメトリ部14がジオメトリ処理を行い(ステップS105)、続いて、表示部15が繊維配置の再現された心臓モデルを画面上に表示する(ステップS106)。
【0083】
本実施形態のモデリング装置によれば、心臓の形状が異なる場合であっても、電位座標を用いることによって、2つの心臓モデル上の各位置を容易に対応させることができる。また、入力された繊維方向データを一旦局座標系に変換し、局座標系のデータとしてヒトの心臓モデルに射影することによって、繊維方向を、様々な形状の心臓モデルに対して好適に射影することができる。
【0084】
なお、各実施形態のモデリング装置の各部や各処理ステップは、CPU等の演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAM等の記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイ等の出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態のモデリング装置の各種機能及び各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能及び各種処理を実現することができる。
【0085】
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0086】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0087】
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等がある。
【0088】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0089】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0090】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のモデリング装置は、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を、形状が異なる他の物体に容易に射影できる。従って、例えば、動物の心臓から得られた知見を元に、繊維方向をヒトの心臓に射影してヒトの心臓モデルを作成することができる。このような心臓モデルは、医療現場で患者に対する説明の際に利用することができる。また、このモデリング装置をシミュレーション装置に適用すれば、心臓の拍動をシミュレーションするシミュレーション装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、モデリング装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示すモデリング装置の処理工程を示すフロー図である。
【図3】図2に示す処理工程のうち、電位及び電流方向の算出処理工程を示すフロー図である。
【図4】各位置において算出された経線方向の固有ベクトルを示す図である。
【図5】各位置において算出された厚み方向の固有ベクトルを示す図である。
【図6】各位置において算出された緯線方向の固有ベクトルを示す図である。
【図7】繊維方向を定義する局所座標系を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るモデリング装置によって、ヒト心臓モデルに繊維配置を再現した図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示すものであり、モデリング装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図9に示すモデリング装置の処理工程を示すフロー図である。
【図11】心尖部−心基部電位分布を示す図である。
【図12】内膜−外膜電位分布を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1,2 モデリング装置
10 入力部(第1入力部、第2入力部)
20 入力部(第1入力部、第2入力部、第3入力部)
11 再構成部
12 仮想通電部(通電手段、仮想通電手段)
13 射影部(射影手段)
14 ジオメトリ部(ジオメトリ手段)
15 表示部
27 変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデリング装置、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものであり、より詳細には、物体モデルを仮想的に形成するモデリング装置、これに用いられるプログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。また、本発明は、或る物体と他の物体とを対応付ける、対応付け方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
心臓は一定の調子で収縮及び弛緩、すなわち拍動を行っている。不整脈とは、この拍動の周期が乱れる疾患であり、時として心停止を引き起こす深刻な疾患である。この不整脈の治療や診断のために、心臓の拍動メカニズムに関して様々な詳細な研究が行われている。
【0003】
心臓の収縮は次のようにして起こる。まず、右心房にある洞房結節と呼ばれる部分から、電気的な刺激が一定の周期で発せられる。この電気的な刺激は、右心房及び左心房の各心筋細胞に伝わり、心筋細胞内の筋原繊維が収縮する。この筋原繊維の収縮が右心房及び左心房全体で生じると、左右両心房の収縮が引き起こされる。また、電気的な刺激の一部は、右心房の下部で心室中隔部付近にある房室結節にも達する。房室結節に達した刺激は、ヒス束、左右の脚、プルキンエ繊維を伝わって左心室及び右心室に達し、左右両心室の収縮を引き起こす。以上のように、心臓の拍動は心臓を伝わる電気的な刺激によって引き起こされている。
【0004】
心筋細胞は、直径が約5〜20μm、長さが約100μmの円柱状の細胞であり、一定の方向に整列した状態で束を形成している。この心筋細胞の長さ方向は、細胞内の筋原繊維の方向でもあるため、一般に繊維方向と呼ばれている。筋肉の収縮は筋原繊維の滑り運動によって引き起こされ、繊維方向は心臓の収縮運動と密接な関係がある。従って、心臓の収縮を力学的に解析する上で、繊維方向は重要な要素となっている。また、繊維方向は、細胞内において電流が流れやすい方向でもあり、心臓における電気的な刺激の伝達方向にも関与している。従って、繊維方向は、心臓における電気的な刺激の伝達経路を解析する上でも重要な要素となっている。
【0005】
心臓の効率的収縮ひいては血液拍出に適切な繊維配置が重要であることは、経験的にも知られている。この繊維方向は部位によって様々であり、心臓全体としては複雑な配向となっている。従来、繊維方向は、解剖学的・組織学的な手法によって計測されているが、倫理上の観点から、ヒトの心臓ではなく、ヒトに比較的近いイヌやブタ等の心臓が用いられている。
【0006】
例えば、非特許文献1,2では、ブタの心臓の繊維方向及びシート方向を計測し、長円座標系等の3つの座標系とエルミート有限要素とを導入して、計測した繊維方向のデータを整理している。なお、シート方向とは、心筋細胞が並ぶ平面(シート)に関係する方向であり、数学的には、この平面に対して垂直な方向を指す。
【0007】
また、非特許文献3,4では、拡散テンソル磁気共鳴法(diffusion tensor MRI)を用いた繊維方向の計測手法及び計算手法が開示されており、実際にイヌの心臓の繊維方向について空間分布を求め、組織学的なデータと対比させて検証を行っている。
【0008】
これらの計測結果から、心臓内の繊維配置について凡その傾向が明らかになっている。そして、動物で得られた知見を生かして、計算機内で仮想的にヒトの心臓モデルを作成し、シミュレーション等を通じて医療や創薬に貢献する試みが行われている。
【非特許文献1】Stevens C, Hunter PJ. Sarcomere length changes in a 3D mathematical model of the pig ventricles. Prog Biophys Mol Biol. 2003 May-Jul;82(1-3):229-241.
【非特許文献2】Stevens C, Remme E, LeGrice I, Hunter P. Ventricular mechanics in diastole: material parameter sensitivity. J Biomech. 2003 May;36(5):737-748.
【非特許文献3】Scollan DF, Holmes A, Winslow R, Forder J. Histological validation of myocardial microstructure obtained from diffusion tensor magnetic resonance imaging. Am J Physiol. 1998 Dec;275(6 Pt 2):H2308-H2318.
【非特許文献4】Scollan DF, Holmes A, Zhang J, Winslow RL. Reconstruction of cardiac ventricular geometry and fiber orientation using magnetic resonance imaging. Ann Biomed Eng. 2000 Aug;28(8):934-944.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、動物から得られた心筋細胞の繊維方向に関する情報をヒトの心臓に埋め込んで適切にモデリングできるモデリング装置は未だ実現されていない。この原因は次の通りである。
【0010】
まず、心臓内の各位置を特定するのに好適な座標系が見つかっていない。例えば、動物で得られた繊維方向をヒトの心臓モデルに適用する場合、動物の心臓における任意の位置と、ヒトの心臓における任意の位置とを一対一に対応させる必要がある。しかしながら、心臓の形状は種間さらには個体間でも異なっており、その上、心臓は非常に複雑な形状をしているために、通常のXYZ軸直交座標系等を用いて、2つの異なる心臓間で位置の対応関係を設定するのは困難を極める。このような背景から、複雑な形状を有する心臓のような物体であっても、或る物体から得られた繊維方向等の特性情報を、形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置が求められている。
【0011】
また、心臓内の任意の位置における繊維方向等を定義するための局所座標系を好適に設定する方法も見つかっていない。例として繊維方向について説明すると、繊維方向は心臓の外形形状と密接な関係がある。例えば、心臓の外膜表面上の或る点における繊維方向は、その点と接する平面内に含まれることになる。しかしながら、繊維方向の情報を、例えば通常のグローバル座標系を用いて表現すると、このグローバル座標系は心臓の外形形状とは何ら関連性がない座標系であるため、繊維方向を心臓の外形形状と関連付けて表現することができない。これにより、例えば動物で得られた繊維方向のデータをヒトの心臓にそのまま適用する場合、例えば繊維方向が心臓の外膜部分から飛び出す等、繊維方向に矛盾が生じるおそれがある。あるいは、動物の心臓から得られた知見を元に、繊維配向に関する仮説を立て、この仮説をヒトの心臓モデルに適用する場合にも、自然な形で適用することができない。このような理由から、心臓の各位置における局所座標系を設定することが必要であるが、心臓は非常に複雑な形状をしているため、心臓の形状に基づいて、逐一幾何学的な計算を行って局所座標系を設定することは、膨大な計算量を必要とし現実的ではない。このような背景から、心臓の外形形状と関連性がある繊維方向等の方向特性情報を、或る物体から他の物体に容易に射影できるモデリング装置が求められている。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することにある。
【0013】
また、本発明の別の目的は、物体の形状と関連性がある方向特性情報を、或る物体から他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るモデリング装置は、上記課題を解決するために、物体の形状情報が入力される第1入力部と、物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、上記物体に対して所定の電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる特性を、上記特性情報に含まれる位置に射影する射影手段とを備え、上記射影手段が、射影先となる位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定することを特徴とする。
【0015】
第2入力部から入力される特性情報には、物体内の位置と特性との関係が含まれている。射影手段は、この特性情報を第1入力部から入力された物体モデルに射影するので、物体モデルに対して、位置に応じた特性を射影することができる。なお、ここでいう「位置」とは、点又は領域の何れであってもよい。
【0016】
ここで、物体内の任意の位置の特定は、通電手段により求められた電位に基づいて行われる。通電手段は所定の電圧を印加するので、物体内の任意の位置における電位は、0V以上所定の電圧以下となる。従って、物体内の任意の位置を、0V以上所定の電圧以下で特定することができる。これにより、形状が異なる様々な物体に対して、共通の尺度(0V以上所定の電圧以下)で位置を特定することが可能になる。よって、例えば、電位に基づく座標を変数とする関数を、特性情報として第2入力部に入力すれば、目的の物体の形状を問わず、特性を容易に射影することができる。換言すれば、本発明のモデリング装置は、形状が異なる様々な物体に対して、特性を射影することができる。また、位置の特定の際に幾何学的な計算を行う必要がないので、複雑な形状の物体であっても、容易に特性を射影することができる。
【0017】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、上記通電手段が、上記物体に対して電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電流方向をさらに求めるものであり、上記射影手段が、上記方向に関する特性を、上記通電手段により求められた電流方向に基づいて射影することが好ましい。
【0018】
電流が流れる方向は、物体の外形形状に依存する。よって、電流方向は、局所座標系として用いることができる。射影手段は、方向に関する特性を、電流方向に基づいた局所座標系を利用して射影するので、方向に関する特性を目的の物体の外形形状に適合させて射影することが可能となる。従って、本発明に係るモデリング装置は、物体の外形形状と関連性がある方向に関する特性を、形状が異なる様々な物体に容易に射影することができる。
【0019】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記通電手段が、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、例えばヒトの心臓等のように、実際には電圧を印加することができない物体についても、物体の任意の位置における電位及び/又は電流方向を求めることができる。
【0021】
本発明に係るモデリング装置は、上記課題を解決するために、第1の物体の形状情報が入力される第1入力部と、第2の物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、上記第1及び第2の物体に対して所定の電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる第2の物体内の位置に相当する、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた第1の物体モデル内の位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定すると共に、その位置に上記特性を射影する射影手段とを備えていることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、第1の物体について、通電手段が電圧を印加し、物体内の任意の位置における電位を求める。また、第2の物体についても同様に、通電手段が物体内の任意の位置における電位を求める。そして、射影手段は、第2の物体における位置を、そこにおける電位に基づいて、第1の物体モデル内の位置と対応付ける。例えば、射影手段は、第2の物体内の位置を、そこにおける電位と同じ電位を有する第1の物体モデル内の位置と対応付ける等する。そして、射影手段は、第2入力部から入力された第2の物体内の位置における特性情報を、第1の物体モデルの対応する位置に射影する。これにより、第2の物体の或る位置における特性情報を、第1の物体内の対応する位置に射影することができる。
【0023】
ここで、射影手段による第1−第2物体間での位置の対応付けは、通電手段が求めた電位に基づいている。通電手段は所定の電圧を印加するので、各物体内の任意の位置における電位は、0V以上所定の電圧以下となる。よって、各物体内の任意の位置を、0V以上所定の電圧以下で特定することができる。これにより、第1及び第2の物体が複雑な形状を有する物体で、かつ異なる形状であっても、共通の尺度(0V以上所定の電圧以下)を用いて容易に対応付けを行うことができる。従って、本発明に係るモデリング装置は、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に射影することができる。また、位置の対応付けの際に幾何学的な計算を行う必要がないので、複雑な形状の物体であっても、容易に特性を射影することができる。
【0024】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、上記通電手段が、さらに、上記第1及び第2の物体に対して電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電流方向に基づいて、各物体の局所座標系を求めるものであり、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる方向に関する特性を、上記第2の物体の局所座標系における方向データに変換する変換手段をさらに備え、上記射影手段が、上記変換手段により変換された方向データを、上記第1の物体の局所座標系に基づいて射影することが好ましい。
【0025】
電流が流れる方向は、物体の外形形状に依存する。よって、電流方向は、局所座標系として用いることができる。変換手段は、入力された方向に関する特性を、この局所座標系に基づいた表現に変換する。そして、射影手段は、方向に関する特性を、局所座標系に基づいた表現となっている方向データを射影するので、方向に関する特性を目的の物体の外形形状に適合させて射影することが可能となる。これにより、方向に関する特性を第1の物体に射影するときに、第1の物体の外形形状が第2の物体と異なる場合であっても、第1の物体の外形形状に適するように射影することが可能となる。従って、本発明に係るモデリング装置は、物体の形状と関連性がある方向に関する特性を、或る物体から他の物体に容易に射影することができる。
【0026】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記第2の物体の形状情報が入力される第3入力部をさらに備え、上記通電手段が、上記第1及び第3入力部から入力された各形状情報に基づいた各物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、例えばヒトの心臓等のように、実際には電圧を印加することができない物体についても、物体の任意の位置における電位及び/又は電流方向を求めることができる。
【0028】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記物体が心臓であり、上記第2入力部から入力される特性情報に含まれる特性が、心筋細胞の繊維方向又はシート方向に関する特性であってもよい。
【0029】
上記構成によれば、或る心臓から得られた心筋細胞の繊維方向又はシート方向に関する情報を、目的の心臓モデルに射影できる。これにより、他の心臓から得られた繊維方向又はシート方向の知見を元に、目的の心臓モデルに繊維方向又はシート方向の情報を射影できるモデリング装置が実現され、治療や診断に貢献できる。
【0030】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記通電手段が、心尖部−心基部間及び内膜−外膜間のそれぞれに所定の電圧を印加した際の心臓内の任意の位置における電位をそれぞれ求め、上記射影手段が、心尖部−心基部間に所定の電圧を印加した際の電位と内膜−外膜間に電圧を印加した際の電位と心尖部−心基部方向に伸びる軸を中心とした回転方向における角度とに基づいて、上記方向に関する特性を、上記特性情報として射影することが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、心尖部−心基部方向の電位により、心臓の高さ方向に略相当する方向における位置が特定される。また、内膜−外膜方向の電位により、心臓の厚み方向に略相当する方向の位置が特定される。そして、心尖部−心基部方向に伸びる軸を中心とした回転方向における角度により、回転方向にける位置が特定される。これらの3つの座標によって表現される座標系は、円柱座標系や球座標系と類似したものであり、3次元空間内の任意の一点を定義することができる。またこの座標系における各座標は、心臓の形状に関する特徴(すなわち、上下方向と回転方向における角度とのみが容易に識別可能な中空の球様複雑形状)に適合したものであり、心臓内の任意の位置を特定する座標系として好適である。従って、種間さらには個体間で見られる形状の相違に依存しない汎用的な位置特定を行うことができる。
【0032】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記局所座標系が直交座標系であり、上記局所座標系における第1の座標軸が、心尖部−心基部間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸であり、上記局所座標系における第2の座標軸が、内膜−外膜間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸及び上記第1の座標軸の何れに対しても直交する軸であり、上記局所座標系における第3の座標軸が、上記第1の座標軸及び第2の座標軸の何れに対しても直交する軸であることが好ましい。
【0033】
心尖部−心基部間に電圧が印加された際の電流方向(すなわち第1の座標軸の伸びる方向)は、心臓の壁に沿った方向となる。また、内膜−外膜間に電圧が印加された際の電流方向は心臓の壁と略垂直な方向であり、第2の軸はこの電流方向と垂直であることから、第2の軸は、心臓の壁に略沿った方向となる。また、第3の軸は、第1及び第2の軸の何れとも直交する軸であることから、心臓の壁と略垂直な軸となる。このように、局所座標系における各座標が心臓の外形形状に関連付けられたものとなっているため、心臓の外形形状と関連性のある繊維方向やシート方向の情報を、矛盾することなく目的の心臓の形状に適合するように射影することができる。
【0034】
また、本発明に係るモデリング装置は、上記射影手段によって特性が射影された物体に対して、ジオメトリ処理を行うジオメトリ手段と、上記ジオメトリ手段によってジオメトリ処理が行われた物体を表示する表示部とをさらに備えていることが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、表示部上で、特性情報を射影した目的の物体を視覚的に確認することができる。
【0036】
ところで、上記モデリング装置の各手段は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、上記何れかのモデリング装置の各手段としてコンピュータを動作させるためのプログラムであり、また、本発明に係る記録媒体は、当該プログラムが記録された記録媒体である。
【0037】
これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、上記モデリング装置の各手段として動作する。従って、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することができる。
【0038】
本発明に係る対応付け方法は、第1の物体内の位置と第2の物体内の位置とを対応付ける対応付け方法であって、上記課題を解決するために、上記第1及び第2の物体に対して、所定の電圧を印加した際の電位分布をそれぞれ求める工程と、求められた電位分布に基づいて、第1の物体内の位置と第2の物体内の位置との対応付けを行う工程とを含んでいることを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、各物体内の点又は領域の対応付けは、電位分布に基づいて行われる。この電位分布は、所定の電圧を印加した際のものであるので、各物体内の任意の位置は、0V以上所定の電圧以下となる。従って、物体内の任意の位置を、0V以上所定の電圧以下で特定することができる。これにより、第1及び第2物体の形状が異なっていても、共通の尺度(0V以上所定の電圧以下)で、点又は領域を対応付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るモデリング装置は、以上のように、物体に対して所定の電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、入力部から入力された特性情報に含まれる特性を、通電手段により求められた電位に基づいて射影する射影手段とを備えているので、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を形状が異なる他の物体に容易に射影することができるという効果を奏する。
【0041】
また、本発明に係るプログラム及び記録媒体は、上記モデリング装置の各手段としてコンピュータを実行させるためのプログラム、及びこれを記録した記録媒体であるので、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を、形状が異なる他の物体に容易に射影できるモデリング装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図8に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、一例として、物体としてヒトの心臓、特性として心筋細胞の繊維方向に関する特性が用いられる場合について説明する。すなわち、本実施形態では、心筋細胞の繊維方向に関する仮説をヒトの心臓モデル(より詳細には左右両心室モデル)に好適に射影し、仮説に基づく繊維方向を再現できるモデリング装置について説明する。
【0043】
図1は、本実施形態に係るモデリング装置1の機能ブロック図である。モデリング装置1は、入力部(第1入力部、第2入力部)10、再構成部11、仮想通電部(通電手段、仮想通電手段)12、射影部(射影手段)13、ジオメトリ部(ジオメトリ手段)14、表示部15、及び記憶部16を備えている。
【0044】
入力部10には、ヒトの心臓の形状情報と、ヒトの心臓内の位置と繊維方向との関係を示す関数が入力される。入力部10としては特に限定されるものではなく、例えば、外部記憶装置からデータを読み込む各種データ入力インターフェースや、ユーザがキー操作によって情報を入力するキーボード等が用いられる。なお、モデリング装置1に複数の入力部が備えられ、上記形状情報と上記関数とが別々の入力部から入力されてもよい。
【0045】
ヒトの心臓の形状情報としては、一例として、X線CT(X線コンピュータ断層撮影法)やMRI(磁気共鳴映像法)等により取得した連続断層撮影像等が挙げられる。このような方法を用いることによって、非侵襲的に心臓の形状情報を得ることができる。また、心臓モデルを構成するポリゴンの座標データが予め得られている場合は、連続断層撮影像の代わりにこれを用いてもよい。上記関数の具体例については後述する。
【0046】
再構成部11は、上記入力部から入力されたヒトの心臓の形状情報を、心臓モデルを構成するポリゴンの座標データに変換することによって、心臓のモデルを再構成するためのものである。なお、ヒトの心臓の形状データとしてポリゴンの座標を用いる場合には、再構成部11を省略することができる。
【0047】
仮想通電部12は、上記入力部20から入力された形状情報に基づいたヒトの心臓に対して、仮想的に所定の電圧を印加し、電位及び/又は電流方向を算出によって求めるためのものであり、具体的には、上記再構成部11によって3次元的に再構成された心臓モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、心臓モデルの各位置における電位及び電流方向を算出するものである。本実施形態では、仮想通電部12が仮想的に電圧を印加し、電位及び電流方向を後述の方法によって算出しているが、仮想通電部12の代わりに、実際に心臓等の目的物に対して電圧を印加し、電位及び電流の方向を実際の測定値に基づいて求める通電部(通電手段)が備えられていてもよい。
【0048】
射影部13は、入力部から入力された形状情報に基づいたヒトの心臓モデルに対して、入力部から入力された関数に含まれる繊維方向を、特性情報に含まれる位置に射影するためのものであり、具体的には、再構成部11により再構成されたヒトの心臓モデルに、繊維方向を射影するためのものである。射影部13は、射影する際の位置特定方法として、上記仮想通電部12により求められた電位を用いている。
【0049】
ジオメトリ部14は、射影部13により繊維方向が射影されたヒトの心臓モデルに対して、ジオメトリ処理を行う。ジオメトリ処理とは、心臓モデルを定義する座標系を、モデリング座標系から、視点を原点にした視点座標系に変換する処理である。ジオメトリ処理には、遠近法等の各種効果を計算し投影変換を行う処理や、表示される画面に合わせたスクリーン座標系に変換する処理等が含まれる。
【0050】
表示部15は、ジオメトリ部14によりジオメトリ処理が行われた心臓モデルの画像を表示するためのものであり、CRT(cathode-ray tube)や液晶ディスプレイ等が用いられる。
【0051】
記憶部16は、再構成部11によって再構成された心臓モデルの座標データや、仮想通電部によって求められた心臓モデルの各位置における電位及び電流方向のデータを格納するためのものである。具体的には、記憶部16は、後述するポリゴンの座標データ50、心尖部−心基部電位分布51、内膜−外膜電位分布52、経線方向データ53、緯線方向データ54、及び補正済厚みデータ55等を記憶する。なお、記憶部16は、RAM(Random Access Memory)等の各種メモリによって構成される。
【0052】
また、上記再構成部11、仮想通電部12、射影部13、及びジオメトリ部14は、専用IC等のハードウェアのみによって構成されていてもよいし、CPU、メモリ、及びプログラムの組み合わせのように、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0053】
本実施形態に係るモデリング装置1の動作について説明する。図2は、モデリング装置1の処理工程を示すフロー図である。
【0054】
まず、モデリング装置1の入力部10から、ヒトの心臓の形状情報が入力される(ステップS100)。なお、本実施形態では、一例として、形状情報としてMRIによる連続断層撮影像が入力される場合について説明する。この場合、心臓の上下方向(心基部−心尖部方向)に伸びる軸に沿って心臓を連続的に撮影した像を連続断層撮影像として用いることができる。
【0055】
入力された連続断層撮影像は、再構成部11に出力される。再構成部11は、連続断層撮影像に基づいて心臓の再構成を行い、心臓(より詳細には左右両心室)モデルを作成する(ステップS101)。具体的には、再構成部11は、連続断層撮影像が入力されると、画像処理によって、各断層撮影像における心臓の内膜や外膜の境界(輪郭)を抽出する。次に、断層撮影像と次の断層撮影像との間の部分について、輪郭の補間を行う。これにより、連続断層撮影像から心臓モデルが3次元モデルとして作成される。そして、再構成部11は、得られた心臓モデルのポリゴンの座標データ50を記憶部16に格納する。以下、ポリゴンの座標を定義する座標系をモデリング座標系という。なお、ステップS100で入力される形状情報がポリゴンの座標データである場合は、ステップS101を省略してもよい。
【0056】
記憶部16に格納されたポリゴンの座標データ50は、仮想通電部12により読み込まれる。仮想通電部12は、記憶部16から座標データを読み込んだ心臓モデルに対して、仮想的に通電を行い、心臓モデルの各位置における電位及び電流が流れる方向(以下、「電流方向」という)を算出する(ステップS102)。
【0057】
ステップS102の詳細について図3に示す。まず、仮想通電部12は、心臓モデルの心尖部と心基部との間に1Vの電圧を仮想的に印加する。ここでは、心尖部に負極、心基部に正極を適用する。従って、心尖部は電位が0Vとなり、そこから心基部に向かって電位が大きくなっていき、心基部では電位が1Vとなる。仮想通電部12は、心尖部−心基部間に電圧を印加した際の、心臓モデル内の各位置における電位(以下、「心尖部−心基部電位」という)を算出する(ステップS1021)。なお、心臓モデル内の任意の位置における電位を算出する方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、有限要素法を用いてポアソン方程式を解く方法等が挙げられる。また、例えば、MSC.Nastran(登録商標、エムエスシーソフトウェア株式会社製)等の市販のソフトウェアを利用することにより算出してもよい。そして、仮想通電部12は、算出した心尖部−心基部電位分布51を記憶部16に格納する。心尖部−心基部電位分布51は、具体的には、モデリング座標系で表現された座標と心尖部−心基部電位との対応情報となっている。参考として、算出した心尖部−心基部電位分布51を視覚化したものを図11に示す。図に示すように、心尖部から心基部に向かって電位の勾配ができている。なお、心尖部−心基部電位は、心臓モデル内の任意の位置を特定するための座標(電位座標)の1つとして用いられる。なお、本実施形態では、仮想通電部12が、一例として1Vの電圧を印加しているが、印加する電圧は一定の電圧であれば何Vであってもよい。
【0058】
次に、仮想通電部12は、心尖部−心基部間に電圧を印加した際に電流が流れる方向(以下、「経線方向」という)を心臓の各位置について算出する(ステップS1022)。電流は、電位の勾配の最も急な方向に流れるので、ステップS1021で求めた電位分布を用いることにより、経線方向を求めることができる。算出された経線方向は、経線方向データ53として、仮想通電部12により記憶部16に格納される。具体的には、経線方向の固有ベクトルがモデリング座標成分として記憶部16に格納される。図4は、各位置において算出された経線方向の固有ベクトルを示した図である。この経線方向は、心臓モデル内の各位置における局所座標系の第1の座標軸となる。
【0059】
続いて、ステップS1021と同様に、仮想通電部12は、心臓モデルの内膜と外膜との間に1Vの電圧を仮想的に印加する。本実施形態では、心臓モデルとして左右両心室モデルを用いているので、左心室及び右心室についてそれぞれ作業を行う。ここでは、内膜に負極、外膜に正極を適用する。従って、内膜は電位が0となり、そこから外膜に向かって電位が大きくなっていき、外膜では電位が1Vとなる。そして仮想通電部12は、内膜−外膜間に電圧を印加した際の、心臓モデル内の各位置における電位(以下、「内膜−外膜電位」という)を算出する(S1023)。例として、算出した内膜−外膜電位分布52を視覚化したものを図12に示す。図に示すように、内膜から外膜に向かって電位の勾配ができている。算出された各位置における内膜−外膜電位分布52は、仮想通電部12により記憶部16に格納される。内膜−外膜電位分布52は、具体的には、モデリング座標系で表現された座標と内膜−外膜電位との対応情報となっている。なお、内膜−外膜電位は、心臓モデル内の任意の位置を特定するための座標の1つとして用いられる。
【0060】
次に、ステップS1022と同様に、仮想通電部12は、内膜−外膜間に電圧を印加した際に電流が流れる方向(以下、「厚み方向」という)を左心室及び右心室についてそれぞれ算出する(ステップS1024)。図5は、左心室について算出された厚み方向の固有ベクトルを示した図である。
【0061】
そして、仮想通電部12は、図4に示す経線方向の固有ベクトルと、図5に示す厚み方向の固有ベクトルとの外積をとり、経線方向及び厚み方向の何れに対しても直交する固有ベクトル(以下、「緯線方向の固有ベクトル」という)を心臓の各位置について算出する(ステップS1025)。算出された緯線方向は、緯線方向データ54として、仮想通電部12により記憶部16に格納される。緯線方向データ54は、具体的には、緯線方向の固有ベクトルの成分をモデリング座標系で定義したものである。図6は、算出された緯線方向のベクトルを示す図である。なお、この緯線方向は、心臓モデル内の各位置における局所座標系の第2の座標軸となる。
【0062】
以上により、経線方向、厚み方向、緯線方向の3つの方向が得られるが、経線方向と厚み方向とは完全に直交しない場合がある。従って、厚み方向を、経線方向と完全に直交するように補正する必要がある。すなわち、仮想通電部12は、さらに、経線方向の固有ベクトルと緯線方向の固有ベクトルとの外積をとり、経線方向及び緯線方向の何れに対しても直交するベクトル(以下、「補正済厚み方向のベクトル」という)を心臓の各位置について算出する(ステップS1026)。この補正済厚み方向は、ステップS1024で求められた厚み方向と大体等しい方向であるが、経線方向及び緯線方向の何れに対しても完全に直交する方向となる。そして、算出された補正済厚み方向は、補正済厚み方向データ55として、仮想通電部12により記憶部16に格納される。補正済厚み方向データ55は、具体的には、補正済厚み方向の固有ベクトルの成分をモデリング座標系で定義したものとなっている。この補正済厚み方向が、心臓モデル内の各位置における局所座標系の第3の座標軸となる。仮想通電部12による電位及び電流方向の算出は以上の通りである。
【0063】
心臓モデルの各位置における繊維方向は、経線方向、緯線方向、及び補正済厚み方向からなる局所座標系における角度成分として定義される。モデリング装置1は、この局所座標系を用いて繊維方向を定義することによって、繊維方向を心臓の外形形状と関連付けて定義する構成となっている。従って、繊維方向を心臓モデルに射影するときに、目的の心臓モデルの外形形状に適合させて射影することが可能となる。
【0064】
また、心臓モデル内の任意の位置を特定できるようにするために、心尖部−心基部電位及び内膜−外膜電位に加えて、第3の座標として回転角度を設定する。ここで、回転角度とは、心尖部と心基部とを貫く軸を中心とした回転方向における角度を指す。この回転角度は、心臓における特徴的な位置を基点として定義される。この特徴的な位置は、個体や種に依存せずに識別できる位置であり、明確に判別できる位置であればよい。本実施形態では、一例として、左心室の心尖部−心基部方向における長軸を中心として、右心室の最も張り出した方向を0°とし、心基部側から見て反時計方向を正の角度とする。これにより、本実施形態のモデリング装置1は、物体上の任意の位置を、心尖部−心基部電位(0〜1)、内膜−外膜電位(0〜1)、及び回転角度(0〜2π)という3つの座標によって特定できるようになる。以下、これらの座標を電位座標といい、この座標系を電位座標系という。このような構成によれば、様々な形状や大きさの心臓に対して、共通の座標である電位座標を用いて位置を特定することが可能となる。
【0065】
次に、モデリング装置1は、繊維方向に関する仮説となる関数の入力を求める。この関数は、入力部10から特性情報として入力される(図2のステップS103)。なお、関数の入力は、仮想通電部による電位及び電流方向の算出後である必要はなく、例えば、ヒト心臓の形状情報を入力する際に、同時に入力してもよい。
【0066】
入力される関数の一例について説明する。図7に示すように、繊維方向を上記局座標系における角成分θ,φにより特定する場合、ヒトの心臓における繊維方向は、内膜ではθ=−90°となり、外膜側になるにつれて繊維方向の角度が大きくなり、外膜ではθ=+60°となり、かつ、φは常に0°であることが知られている。この仮説は、補正済厚み方向の座標をr(0≦r≦1)として、
θ=−π/2+5πr/6
φ=0
(但し、−π≦θ,φ≦π)
という関数で表すことができる。
【0067】
そして、入力された関数は射影部13に出力される。射影部13は、上記関数によって表された繊維方向を、心臓モデルに対して射影する(ステップS104)。具体的には、射影部13は以下の作業を行う。まず、或る電位座標についてθ及びφを算出する。そして、ステップS1021・S1023において記憶部16に格納された電位分布51・52に基づいて、その電位座標に対応するモデリング座標を求める。このモデリング座標が心臓モデル上の射影先となる。また、角成分θ及びφとして算出された局所座標系における繊維方向の成分を、ステップS1022・S1025・S1026において記憶部16に格納された各方向データ53・54・55を用いて、モデリング座標系における成分に変換する。これらの処理により、或る電位座標における繊維方向が心臓モデル上に射影される。この作業を必要な回数繰り返すことによって、心臓モデル上に繊維配置を再現することができる。繊維配置が再現された心臓モデルの情報は、ジオメトリ部14に出力される。
【0068】
ジオメトリ部14は、繊維配置が再現された心臓モデルに対して、ジオメトリ処理を行う(ステップS105)。具体的には、ジオメトリ部14は、心臓モデルを表現する座標系を、上記のモデリング座標系から視点に基づいた視点座標系に変換する。モデリング座標系は3次元空間座標系であり、これを2次元平面座標系である視点座標系に変換することにより、心臓モデルを平面上に表現することが可能になる。以上のようにして視点座標系に変換された心臓モデルの座標データは、表示部15に出力される。座標データが入力された表示部15は、繊維配置が再現された心臓モデルを画面上に表示する(ステップS106)。
【0069】
なお、本実施形態では、心筋細胞の繊維方向を射影したが、同様の方法によって、シート方向を射影することもできる。
【0070】
〔実施例1〕
第1実施形態に係るモデリング装置の一実施例として、上述した仮説を適用した心臓モデルを図8(a)〜(e)に示す。図8(a)〜(e)は、心尖部−心基部電位がそれぞれ、0V、0.25V、0.5V、0.75V、1Vの位置における繊維方向を示すものである。図に示すように、内膜から外膜に向かって、繊維方向が−90°から+60°に連続的に変化していく様子が再現されている。また、各繊維方向は心臓の形状に適合した方向となっていることが分かる。
【0071】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について図9及び図10に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、一例として、動物の心臓における繊維方向をヒトの心臓モデルに射影するモデリング装置について説明する。なお、上述した実施形態1の部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図9は、本実施形態に係るモデリング装置2の機能ブロック図である。モデリング装置2は、実施形態1におけるモデリング装置1の入力部10の代わりに入力部20(第1入力部、第2入力部、第3入力部)を備え、記憶部16の代わりに記憶部26を備え、さらに、変換部(変換手段)27を備えている。
【0073】
入力部20には、ヒトの心臓(第1の物体)の形状情報と、動物の心臓(第2の物体)の形状情報と、動物の心臓における繊維方向の情報(特性情報)とが入力される。なお、動物の心臓の形状情報としては、ヒトの心臓の形状情報と同様のものを用いることができる。また、動物の心臓における繊維方向の情報(以下、「繊維方向データ」という)には、動物の心臓上の位置を特定する位置データと、その位置における固有ベクトルの成分との組み合わせが含まれている。なお、この位置データ及び成分は、共にモデリング座標系により定義されている。
【0074】
記憶部26は、再構成部11によって再構成された心臓モデルの座標データや、仮想通電部によって求められた心臓モデルの各位置における電位及び電流方向のデータを、ヒト及び動物のそれぞれについて格納するためのものである。具体的には、記憶部26は、ヒトのポリゴンの座標データ50、心尖部−心基部電位分布51、内膜−外膜電位分布52、経線方向データ53、緯線方向データ54、及び補正済厚みデータ55と、動物のポリゴンの座標データ60、心尖部−心基部電位分布61、内膜−外膜電位分布62、経線方向データ63、緯線方向データ64、及び補正済厚みデータ65等を記憶する。なお、記憶部26は、RAM(Random Access Memory)等の各種メモリによって構成される。
【0075】
変換部27は、入力部20から入力された特性情報に含まれる方向に関する特性(繊維方向)を、第2の物体(動物の心臓)の局所座標系に基づいた方向データに変換するものであり、具体的には、入力部20から入力された、モデリング座標系で定義された繊維方向の情報を、局所座標系による定義に変換するためのものである。変換方法の詳細については後述する。なお、変換部27は、専用IC等のハードウェアのみによって構成されていてもよいし、CPU、メモリ、及びプログラムの組み合わせのように、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0076】
本実施形態に係るモデリング装置2の動作について説明する。図10は、モデリング装置2の処理工程を示すフロー図である。なお、上述した実施形態1の工程と同様の処理を行う工程については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
まず、モデリング装置2の入力部20に、ヒト及び動物の心臓の形状情報が入力される。モデリング装置2は、入力されたヒトの心臓の形状情報を用いて、上述したステップS101・S102の処理を行う(ステップS200)。これにより、記憶部16に、ヒトの心臓モデルのポリゴンの座標データ50、電位分布51・52、局所座標系の各方向データ53・54・55が記憶される。
【0078】
次に、動物の心臓についても同様に、ステップS101・102の処理を行う(ステップS201)。これにより、記憶部16に、動物の心臓モデルのポリゴンの座標データ60、電位分布61・62、局所座標系の各方向データ63・64・65が記憶される。
【0079】
次に、モデリング装置2は、動物の心臓から得られた繊維方向データの入力を求める。そして、繊維方向データが、入力部10に特性情報として入力される(ステップS202)。
【0080】
入力された繊維方向データは、変換部27に入力される。変換部27は、このモデリング座標系で定義された繊維方向のデータを、局所座標系における定義に変換する(ステップS203)。この変換について、以下に具体的に説明する。繊維方向の情報は、動物の心臓モデル上の位置を特定する位置データと、その位置における繊維方向データとからなる。これら位置データ及び方向データは、共にモデリング座標系で定義されている。変換部27は、まず、記憶部16に格納された局所座標系の各方向データ63・64・65を参照して、位置データにより特定された位置における局所座標系を求める。そして、モデリング座標系により定義された繊維方向データを、固有ベクトルの成分を用いて、局所座標系による定義に変換する。なお、局座標系による繊維方向のデータとしては、例えば、実施形態1で示したθ及びφが挙げられる。この処理により、モデリング座標系で定義された繊維方向が、局所座標系におけるθ及びφに変換される。局所座標系に変換された繊維方向データは、射影部13に入力される。
【0081】
射影部13は、局所座標系に変換された動物の繊維方向データを、ヒトの心臓モデルに射影する(ステップS204)。ここで、動物の心臓モデルにおける位置と、ヒトの心臓モデルにおける位置との対応は、電位座標によって行われる。すなわち、射影部13は、動物の心臓モデル内の或る位置における繊維方向データを、その位置と同じ電位座標を有するヒトの心臓モデル内の位置に射影する。また、局座標系に変換された繊維方向データを、ヒトの局座標の各方向データ53・54・55を用いて、モデリング座標系により定義される繊維方向データに変換し、ヒトの心臓モデルに射影する。
【0082】
射影部13により繊維配置が再現された心臓モデルの情報は、ジオメトリ部14に出力され、ジオメトリ部14がジオメトリ処理を行い(ステップS105)、続いて、表示部15が繊維配置の再現された心臓モデルを画面上に表示する(ステップS106)。
【0083】
本実施形態のモデリング装置によれば、心臓の形状が異なる場合であっても、電位座標を用いることによって、2つの心臓モデル上の各位置を容易に対応させることができる。また、入力された繊維方向データを一旦局座標系に変換し、局座標系のデータとしてヒトの心臓モデルに射影することによって、繊維方向を、様々な形状の心臓モデルに対して好適に射影することができる。
【0084】
なお、各実施形態のモデリング装置の各部や各処理ステップは、CPU等の演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAM等の記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイ等の出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態のモデリング装置の各種機能及び各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能及び各種処理を実現することができる。
【0085】
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0086】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0087】
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等がある。
【0088】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0089】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0090】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のモデリング装置は、複雑な形状を有する物体であっても、或る物体から得られた特性情報を、形状が異なる他の物体に容易に射影できる。従って、例えば、動物の心臓から得られた知見を元に、繊維方向をヒトの心臓に射影してヒトの心臓モデルを作成することができる。このような心臓モデルは、医療現場で患者に対する説明の際に利用することができる。また、このモデリング装置をシミュレーション装置に適用すれば、心臓の拍動をシミュレーションするシミュレーション装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、モデリング装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示すモデリング装置の処理工程を示すフロー図である。
【図3】図2に示す処理工程のうち、電位及び電流方向の算出処理工程を示すフロー図である。
【図4】各位置において算出された経線方向の固有ベクトルを示す図である。
【図5】各位置において算出された厚み方向の固有ベクトルを示す図である。
【図6】各位置において算出された緯線方向の固有ベクトルを示す図である。
【図7】繊維方向を定義する局所座標系を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るモデリング装置によって、ヒト心臓モデルに繊維配置を再現した図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示すものであり、モデリング装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図9に示すモデリング装置の処理工程を示すフロー図である。
【図11】心尖部−心基部電位分布を示す図である。
【図12】内膜−外膜電位分布を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1,2 モデリング装置
10 入力部(第1入力部、第2入力部)
20 入力部(第1入力部、第2入力部、第3入力部)
11 再構成部
12 仮想通電部(通電手段、仮想通電手段)
13 射影部(射影手段)
14 ジオメトリ部(ジオメトリ手段)
15 表示部
27 変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の形状情報が入力される第1入力部と、
物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、
上記物体に対して所定の電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、
上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる特性を、上記特性情報に含まれる位置に射影する射影手段とを備え、
上記射影手段が、射影先となる位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定することを特徴とする、モデリング装置。
【請求項2】
上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、
上記通電手段が、上記物体に対して電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電流方向をさらに求めるものであり、
上記射影手段が、上記方向に関する特性を、上記通電手段により求められた電流方向に基づいて射影することを特徴とする、請求項1に記載のモデリング装置。
【請求項3】
上記通電手段が、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のモデリング装置。
【請求項4】
第1の物体の形状情報が入力される第1入力部と、
第2の物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、
上記第1及び第2の物体に対して所定の電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、
上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる第2の物体内の位置に相当する、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた第1の物体モデル内の位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定すると共に、その位置に上記特性を射影する射影手段とを備えていることを特徴とする、モデリング装置。
【請求項5】
上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、
上記通電手段が、さらに、上記第1及び第2の物体に対して電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電流方向に基づいて、各物体の局所座標系を求めるものであり、
上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる方向に関する特性を、上記第2の物体の局所座標系に基づいた方向データに変換する変換手段をさらに備え、
上記射影手段が、上記変換手段により変換された方向データを、上記第1の物体の局所座標系に基づいて射影することを特徴とする、請求項4に記載のモデリング装置。
【請求項6】
上記第2の物体の形状情報が入力される第3入力部をさらに備え、
上記通電手段が、上記第1及び第3入力部から入力された各形状情報に基づいた各物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のモデリング装置。
【請求項7】
上記物体が心臓であり、
上記第2入力部から入力される特性情報に含まれる特性が、心筋細胞の繊維方向及び/又はシート方向に関する特性であることを特徴とする、請求項1から6の何れか1項に記載のモデリング装置。
【請求項8】
上記通電手段が、心尖部−心基部間及び内膜−外膜間のそれぞれに所定の電圧を印加した際の心臓内の任意の位置における電位をそれぞれ求め、
上記射影手段が、心尖部−心基部間に所定の電圧を印加した際の電位と内膜−外膜間に電圧を印加した際の電位と心尖部−心基部方向に伸びる軸を中心とした回転方向における角度とに基づいて、上記方向に関する特性を、上記特性情報として射影することを特徴とする、請求項7に記載のモデリング装置。
【請求項9】
上記局所座標系が直交座標系であり、
上記局所座標系における第1の座標軸が、心尖部−心基部間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸であり、
上記局所座標系における第2の座標軸が、内膜−外膜間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸及び上記第1の座標軸の何れに対しても直交する軸であり、
上記局所座標系における第3の座標軸が、上記第1の座標軸及び第2の座標軸の何れに対しても直交する軸であることを特徴とする、請求項8に記載のモデリング装置。
【請求項10】
上記射影手段によって特性が射影された物体モデルに対して、ジオメトリ処理を行うジオメトリ手段と、
上記ジオメトリ手段によってジオメトリ処理が行われた物体モデルを表示する表示部とをさらに備えていることを特徴とする、請求項1から9の何れか1項に記載のモデリング装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の各手段として、コンピュータを動作させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項13】
第1の物体内の位置と第2の物体内の位置とを対応付ける対応付け方法であって、
上記第1及び第2の物体に対して、所定の電圧を印加した際の電位分布をそれぞれ求める工程と、
求められた電位分布に基づいて、第1の物体内の位置と第2の物体内の位置との対応付けを行う工程とを含んでいることを特徴とする、対応付け方法。
【請求項1】
物体の形状情報が入力される第1入力部と、
物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、
上記物体に対して所定の電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、
上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる特性を、上記特性情報に含まれる位置に射影する射影手段とを備え、
上記射影手段が、射影先となる位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定することを特徴とする、モデリング装置。
【請求項2】
上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、
上記通電手段が、上記物体に対して電圧を印加した際の、物体内の任意の位置における電流方向をさらに求めるものであり、
上記射影手段が、上記方向に関する特性を、上記通電手段により求められた電流方向に基づいて射影することを特徴とする、請求項1に記載のモデリング装置。
【請求項3】
上記通電手段が、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のモデリング装置。
【請求項4】
第1の物体の形状情報が入力される第1入力部と、
第2の物体内の位置と特性との関係が含まれる特性情報が入力される第2入力部と、
上記第1及び第2の物体に対して所定の電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電位を求める通電手段と、
上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる第2の物体内の位置に相当する、上記第1入力部から入力された形状情報に基づいた第1の物体モデル内の位置を、上記通電手段によって求められた電位に基づいて特定すると共に、その位置に上記特性を射影する射影手段とを備えていることを特徴とする、モデリング装置。
【請求項5】
上記特性情報に含まれる特性が、方向に関する特性であり、
上記通電手段が、さらに、上記第1及び第2の物体に対して電圧を印加した際の、各物体内の任意の位置における電流方向に基づいて、各物体の局所座標系を求めるものであり、
上記第2入力部から入力された特性情報に含まれる方向に関する特性を、上記第2の物体の局所座標系に基づいた方向データに変換する変換手段をさらに備え、
上記射影手段が、上記変換手段により変換された方向データを、上記第1の物体の局所座標系に基づいて射影することを特徴とする、請求項4に記載のモデリング装置。
【請求項6】
上記第2の物体の形状情報が入力される第3入力部をさらに備え、
上記通電手段が、上記第1及び第3入力部から入力された各形状情報に基づいた各物体モデルに対して、仮想的に電圧を印加し、上記電位及び/又は電流方向を算出によって求める仮想通電手段であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のモデリング装置。
【請求項7】
上記物体が心臓であり、
上記第2入力部から入力される特性情報に含まれる特性が、心筋細胞の繊維方向及び/又はシート方向に関する特性であることを特徴とする、請求項1から6の何れか1項に記載のモデリング装置。
【請求項8】
上記通電手段が、心尖部−心基部間及び内膜−外膜間のそれぞれに所定の電圧を印加した際の心臓内の任意の位置における電位をそれぞれ求め、
上記射影手段が、心尖部−心基部間に所定の電圧を印加した際の電位と内膜−外膜間に電圧を印加した際の電位と心尖部−心基部方向に伸びる軸を中心とした回転方向における角度とに基づいて、上記方向に関する特性を、上記特性情報として射影することを特徴とする、請求項7に記載のモデリング装置。
【請求項9】
上記局所座標系が直交座標系であり、
上記局所座標系における第1の座標軸が、心尖部−心基部間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸であり、
上記局所座標系における第2の座標軸が、内膜−外膜間に電圧が印加された際の電流方向に伸びる軸及び上記第1の座標軸の何れに対しても直交する軸であり、
上記局所座標系における第3の座標軸が、上記第1の座標軸及び第2の座標軸の何れに対しても直交する軸であることを特徴とする、請求項8に記載のモデリング装置。
【請求項10】
上記射影手段によって特性が射影された物体モデルに対して、ジオメトリ処理を行うジオメトリ手段と、
上記ジオメトリ手段によってジオメトリ処理が行われた物体モデルを表示する表示部とをさらに備えていることを特徴とする、請求項1から9の何れか1項に記載のモデリング装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の各手段として、コンピュータを動作させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項13】
第1の物体内の位置と第2の物体内の位置とを対応付ける対応付け方法であって、
上記第1及び第2の物体に対して、所定の電圧を印加した際の電位分布をそれぞれ求める工程と、
求められた電位分布に基づいて、第1の物体内の位置と第2の物体内の位置との対応付けを行う工程とを含んでいることを特徴とする、対応付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−204463(P2006−204463A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18949(P2005−18949)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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