説明

モデルマウス

【解決すべき課題】分子標的治療薬と免疫治療の併用によるより有効な効果を非臨床的に確認する手段もたらすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】チロシンキナーゼ阻害剤とIL-12産生誘導剤等の免疫療法の併用がガン治療における優位な相乗効果を達成することを、非臨床的に確認する手段として、EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植するという実験系を確立することで、EGFRに作用する抗腫瘍剤と免疫療法剤の併用の有用性を非臨床的に評価可能であることを見出し本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、抗腫瘍剤の有効性を判定するための新規なモデル動物系の提供に関するものである。すなわち、新規な癌治療法として着目されるEGFR(血管内皮細胞増殖因子レセプター)を標的にする抗腫瘍剤である例えばチロシンキナーゼ阻害剤と医学博士八木田旭邦が開発したIL-12の産生誘導能、IFNγの産生誘導能、NK細胞の活性化能、NKT細胞の活性化能、血管新生阻害能等の動態に着目した新免疫療法との併用における治療効果の有用性判定系の提供に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガン(malignant neoplasms)(cancer)の予防または治療のために有用な物質の選別には、従来、ガン細胞へのその直接的作用が重要視されていた。免疫賦活剤がガン治療に有用であることは認められていたが、免疫賦活剤として得られた化合物はいずれもその抗ガン効果が微弱であり、免疫療法単独または化学療法との併用治療によってもガンの十分な治療効果は達成されていない。
【0003】
本発明者の医学博士、八木田は、先にガン治療における画期的な手法として、インターロイキン12(IL-12)を生体内で誘発する物質の有用性に着目し、キノコ菌糸体加工物がその機能を有することを発見し、新免疫療法(Novel Immunotherapy for cancer)(NITC)ともいうべきガン治療法を確立した。従来IL-12は、抗ガン効果があるものの生体内にIL-12自体を直接投与した場合には副作用を生じるために患者が治療に耐えられないという事実があり、それ自体を抗ガン剤として使用できなかった。しかし、八木田が報告したキノコ菌糸体加工物を含む製剤は、ガンの治療において著しい治癒・延命効果を達成した。つまり八木田は、IL-12を生体内で誘発できる有効量のキノコ菌糸体加工物を投与することにより、ガンの治療目的を達成した。特許文献1。
【0004】
IL-12は、TNFα→IFNγ→IL-12→CTL活性というルートでキラーT細胞の活性化効果と増強効果をもつ。つまりIL-12の産生増強は、キラーT細胞の活性化と増強により抗ガン効果が期待される。
【0005】
八木田は、IL-12の産生増強の系とは別にNKT細胞の活性化が抗ガン効果に有用であることを報告している。谷口等は、NKT細胞が有するVα24Vβ11という特異的なT細胞抗原受容体(TCR)が認識する特異的な糖脂質抗原を発見し、この抗原が、αガラクトシルセラミドであることを報告している。更に、αガラクトシルセラミドを投与した担ガンマウスでは、NKT細胞が活性化され、ガンの消失はみられないものの転移が抑制されることを証明した。
NKT細胞には、もう一つの受容体としてNK細胞抗原受容体(NKR-P1;ナチュラルキラー受容体P1)があることは報告されている。非特許文献1。
NKR-P1もNKT細胞の活性化に関与し、この活性化が抗ガン効果がより優位であることを八木田は見出している。特許文献2。
【0006】
ガンの分子標的治療剤が新タイプの制癌剤として従来の細胞標的治療剤と対比してその意義が着目されている。そのなかでも特にシグナル伝達阻害作用を有する薬剤としてチロシンキナーゼ阻害剤は注目されている。ゲフィチニブ(ZD1839)(イレッサ:登録商標 アストラゼネカ)はEGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼのATP結合部位におけるATPとの競合作用を有し、チロシンキナーゼの自己リン酸化を抑制することでチロシンキナーゼ活性を抑制する。その結果、EGFRのもつ増殖、浸潤、分化、転移に関連するシグナル伝達〔EGFRの細胞外ドメインに上皮成長因子(EGF)等のリガンドが結合することにより、細胞内ドメインにあるEGFRチロシンキナーゼが活性化し、EGFRの自己リン酸化および種々の細胞内標的たんぱくのリン酸化を引き起こすことにより細胞表面から核への増殖シグナルが伝達され、癌細胞表面から核への増殖シグナルが伝達され、癌細胞の増殖、浸潤、転移、血管新生を起こす〕を遮断することにより抗癌作用を発現する。IMC-C225(EGFR標的モノクローナル抗体)は細胞膜表面のEGFRレセプター部分を認識し、EGFRの自己リン酸化を抑制することでチロシンキナーゼ活性を阻害する。ハーセプチンはEGFRと相同性をもつHer2/Neuに対するモノクローナル抗体であり、STI-571(グリベック)はBCR-Ablのチロシンキナーゼ活性の阻害とc−kitのチロシンキナーゼ活性の阻害能を有する。非特許文献2。
【0007】
このような分子標的治療剤は新メカニズのガン治療薬として着目されるが、その効果はいまだ革命的とはいえない。たとえば、ZD1839(イレッサ)はアストラゼネカ社が新規に開発した強力かつ選択的なEGFRのチロシンキナーゼの阻害剤であり、ヒトでもその有用性が判明している。しかし非小細胞肺癌や前立腺癌などでの臨床成績はPR(部分寛解)が10〜20数%で、CR(完全寛解)は全くないと言ってもよいが、あっても極くまれで完全寛解まで4ヶ月以上の期間がかかっていた。そこでZA1839(イレッサ)と各種抗癌剤との併用療法が試みられているものの現時点では相加あるいは相乗効果は得られていない。
【0008】
医学博士八木田は、このEGFRに作用する抗腫瘍剤と免疫療法剤の併用の有用性を見出し、この併用を臨床において積極的に試みてきた。しかし、その評価は、臨床試験では、驚異的な効果が確認されていたが、その有用性を非臨床レベルで評価する手段は一切なかった。EGFR陽性腫瘍の動物実験系として従来より、ヒトのEGFR陽性腫瘍株の移植片または腫瘍細胞ケンダク液をヌードマウス皮下に移植して生育させる動物実験系が知られていた。しかし、ヌードマウスは免疫不全(T細胞欠損)マウスであり、現実のヒト患者とはかけ離れたモデルであった。
【0009】
従来技術において、固形腫瘍から抽出してRT-PCRなどの手法でEGFR発現を調べている文献が散見されるが、固形腫瘍に食い込んでいる血管の内皮細胞は当然EGFR陽性である為、腫瘍細胞でなく内皮細胞のEGFRシグナルをひろっている可能性がある。たとえば、非特許文献3では、ヒト肺癌株LX-1をヌードマウスに移植して生育させた腫瘍局所において、免疫組織化学の手法ではEGFRが検出されず、28サイクルのRT-PCRでEGFRがわずかに検出され、32サイクルのRT-PCRでEGFRが検出される、としている。また従来技術において、癌細胞株を試験管中(in vitro)で増殖させてRT-PCRなどの手法でEGFR発現を調べ、動物に移植した後の腫瘍局所のEGFR発現を調べていない報告もあるが、in vitroで発現があったからといって生体に移植後のin vivoにおいて蛋白レベルで発現しているとは限らない。
【0010】
【先行文献】
【特許文献1】特開平10−139670号公報
【特許文献2】US2002-0010149A1
【非特許文献1】特集 NKT細胞の基礎と臨床:最新医学55巻4号2000年818〜823ページ)。
【非特許文献2】血液・免疫・腫瘍 Vol.7 No.3 2002-7
【非特許文献3】Clinical cancer research 6;4885-4892,2000.
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような分子標的治療薬と免疫治療の併用によるより有効な効果を非臨床的に確認する手段もたらすことを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤とIL-12産生誘導剤等の免疫療法の併用がガン治療における優位な相乗効果を達成することを、非臨床的に確認する手段として、EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植するという実験系を確立することで、EGFRに作用する抗腫瘍剤と免疫療法剤の併用の有用性を非臨床的に評価可能であることを見出し本発明を完成した。
【0013】
すなわち本発明は、以下からなる。
1.EGFR(血管内皮細胞増殖因子レセプター)陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウス。
2.EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウスを使用するEGFRをターゲットとする抗腫瘍剤と免疫療法剤との併用効果の判定方法。
3.EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウスを使用するEGFRをターゲットとする抗腫瘍剤の効果の判定方法。
4.EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウスを使用する免疫療法剤の効果の判定方法。
5.EGFRをターゲットとする抗腫瘍剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である前項2〜3の何れか一に記載の判定方法。
6.チロシンキナーゼ阻害剤が、以下の少なくとも1の受容体に対する選択的標的作用を有する前項5の判定方法。
HER2/neu、HER3、HER4、c-kit、PDGFR、bcr-abl、EGFR
7.チロシンキナーゼ阻害剤が、選択的にEGFR又はc-kit標的作用を有する前項5の判定方法。
8.免疫療法剤が、IL-12産生誘導剤である前項2又は4の判定方法。
9.IL-12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する物質である前項8に記載の判定方法。
10.IL-12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する茸菌糸体由来成分又は酵母由来成分である前項9の判定方法。
11.NKT細胞のNKR-P1に選択的に作用してNKT細胞を活性化をおこす物質と併用される前項8〜10の何れか一に記載の判定方法。
12.血管新生阻害能を有する物質と併用される前項8〜11の何れか一に記載の判定方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明するが、本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、別途定義されていない限り、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者により普通に理解される意味を持つ。
【0015】
本発明者の医学博士八木田のガン新免疫療法(NITC)とは4つの異なる作用機序を組み合わせることからなる治療手段である。以下、本発明でいう免疫療法の代表的な方法としてこのNITCを説明する。
第一の作用機序は、血管新生阻害物質(ベターシャーク)を投与してガンへの血流を障害してガン縮小をはかる方法である。これは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を測定することでその効果は判定が可能である。血管新生阻害作用はVEGF値のマイナス(負)値(-VEGF)で評価できる。このVEGF値の替わりにFGF、HGFなどのその他の血管増殖因子を用いることも血管新生阻害能を評価することが可能である。またVEGFの替わりに血管新生阻害因子の正数値でもその評価が可能である(例えばエンドスタチン値)。
【0016】
第2の作用機序は、β1,3グルカン構造を担持する化合物を投与してTh1サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL-12)を誘導してCTLを活性化する方法である。CTL活性はCD8(+)パーフォリン産生能力で判定が可能であるが、このCD8(+)パーフォリン値には細胞障害性T細胞(CTL)と免疫抑制性T細胞(STC; Suppressor T cell)とがあり、前者はガン細胞を障害し、後者の活性化は結果的にガンの増殖につながる。したがってその絶体値では評価はできない。しかし前者はIFNγが10 IU/ml以上かもしくはIL-12値が7.8 pg/ml以上であればCTLであり、IFNγとIL-12が低値であればSTCと判定される。そこでCTL活性は、IFNγ産生能力(IFNγ値)もしくはIL-12産生能力(IL-12値)で評価が可能である。
【0017】
第三及び第四の作用機序であるα1,3グルカン構造を担持する化合物の投与によって活性化されるeffector細胞はNK細胞とNKT細胞である。このNKとNKT細胞とはNKR-P1(NK細胞受容体CD161(+))を共有しており、前者はCD3(−)CD161(+)の表面マーカーでNK細胞数は測定可能であり、その活性化はCD3(−)CD161(+)パーフォリン産生能力で判定が可能である。一方後者のNKT細胞はCD3(+)CD161(+)でその細胞数は測定が可能となり、そのパーフォリン産生能力(NKTPと記す)でNKT細胞の活性化は測定可能である。
【0018】
したがってガン治療における新免疫療法(NITC)であっても一般的な免疫療法であっても以下の測定項目でそれぞれのeffector細胞もしくは血管新生阻害作用を評価することが可能である。具体的には、CTL活性はIFNγあるいはIL-12の産生誘導能力で評価が可能である。NK細胞の活性化はCD3(−)CD161(+)もしくはCD3(−)CD161(+)パーフォリン値でも評価可能である。NKT細胞の活性化はCD3(+)CD161(+)もしくはCD3(+)CD161(+)パーフォリン値(NKTP値)でも評価が可能である。
【0019】
本発明は、上記のような免疫療法にチロシンキナーゼ阻害剤を併用することによる効果を非臨床的に評価する手段を提供することである。そして、免疫学的測定と抗癌効果を生体系で確実に評価するための系を確立したものである。
【0020】
本発明で使用する、IL-12産生誘導剤は特に限定せず、広く使用可能である。例えば、β1,3グルカン構造を持つ茸菌糸体組成物製剤(例えばILX商品名:東西医薬研究所、ILY商品名:セイシン企業、AHCC:アミノアップ)、或はβ1,3グルカン構造を持つ各種酵母(海洋性酵母、パン酵母、NBGTM)が利用できる。また、新規なIL-12産生誘導剤は、CD8パーフォリン産生能の測定を組み合わせることで当業者は容易にIL-12産生誘導剤(CTL活性化剤)を特定可能である。CTL活性化剤は、本発明で使用するIL-12産生誘導剤と同義である。
【0021】
本発明の系は、このIL-12産生誘導剤とチロシンキナーゼ阻害剤の併用における有用性判断に極めて有用である。チロシンキナーゼ阻害剤として具体例では、ZD1839(イレッサ商品名)又はSTI571(グリベック商品名)を使ったが、各種チロシンキナーゼ阻害剤が有効に利用できる。それらは標的分子として、HER2/neu、HER3、HER4、c-kit、PDGFR、bcr-abl、EGFR等が例示される。最も効果的な分子はEGFR又はc-kitである。
チロシンキナーゼ阻害剤の投与量は、各分子標的化合物の推奨投与量に従うが、10〜500mg/日の経口投与がおこなわれる。
【0022】
IL-12産生誘導剤とチロシンキナーゼ阻害剤の併用は、特に限定はされないが、治療初期からでもどちらを先行させていても良い。具体例では、NITC療法特にIL-12産生誘導剤を一定期間投与後に、チロシンキナーゼ阻害剤を併用し、劇的な臨床効果を確認した。
【0023】
本発明の系では、IL-12産生誘導剤に加えて、免疫療法剤としてNK活性化剤又はNKT活性剤の併用の効果の評価が可能である。ニゲロオリゴ糖、フコイダン等のα1,3グルカン構造を持つ化合物の組成物製剤がNK活性化剤又はNKT活性剤として有用である。α1,3グルカン構造を持つ化合物は種々知られており、この既知構造とCD3(−)CD161(+)、CD3(−)CD161(+)パーフォリン産生能、CD3(+)CD161(+)、CD3(+)CD161(+)パーフォリン産生能の測定を組み合わせれば当業者は容易にNK活性化剤を特定可能である。なお、CD3(+)CD161(+)はNKT細胞の受容体NKR-P1に作用することを意味する。
【0024】
α1,3グルカン構造の糖類物質としては、例えば、ニゲロオリゴ糖(TSO)、フコイダン、硫酸オリゴ糖等が挙げられる。
ニゲロオリゴ糖は、3−O−α−D−グルコピラノシル−D−グルコースを構成単位として含有する糖類である。代表的なものとしては、ニゲロース、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトース等が挙げられる。
【0025】
また、市販されているニゲロオリゴ糖としては、ニゲロオリゴ糖液糖(販売者・武田食品工業株式会社)が挙げられるが、これが含有する主なニゲロオリゴ糖は(1) ニゲロース α-D-Glcp-(1,3)-D-Glc (2) ニゲロシルグルコース α-D-Glcp-(1,3)-α-D-Glcp-(1,4)-D-Glc (3) ニゲロシルマルトース α-D-Glcp-(1,3)-α-D-Glcp-(1,4)-α-D-Glcp-(1,4)-D-Glc(なお、Glcはグルコース、pはピラノースの略号である)である。
フコイダンは、狭義ではフコースの2乃至6分子に硫酸1分子が結合した硫酸化フコース含有多糖類であり、これにキシロースあるいはウロン酸を含有したフコイダン様多糖体を食品レベルで「フコイダン」と称している。フコイダンは、例えばコンブを破砕し、チップ化し、水溶液成分を抽出した後、抽出残渣を遠心分離により除去し、ヨードや塩化ナトリウム等の低分子物質を限外ろ過により除去して凍結乾燥化して製剤化される。
フコイダンとしては、褐藻類由来フコイダン、例えばガゴメコンブ由来のフコイダン、およびオキナワモズク由来フコイダン等が例示される。ガゴメコンブ等の褐藻類コンブ科由来のフコイダンには少なくとも3種類のフコイダン、F−フコイダン(α−L−フコースのポリマー)、U−フコイダン(β−D−グルクロン酸とα−D−マンノースを主鎖とし、側鎖にα−L−フコースをもつ)、G−フコイダン(β−D−ガラクトースを主鎖とし、側鎖にα−L−フコースをもつ)、が存在しており、いずれのフコイダンもフコースが硫酸化されている。
【0026】
硫酸オリゴ糖としては、例えば株式会社白子製のスサビノリ(Poryphyra Yezaensis)由来の抽出物があげられる。該抽出物の主成分はα1,3結合のガラクタン硫酸のオリゴ糖とα1,3結合およびβ1,4結合よりなるガラクタン硫酸のオリゴ糖である。
【0027】
本発明の系は、チロシンキナーゼ阻害剤とCTL活性化剤(IL-12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)との併用、更にはNK活性化剤、NKT活性化剤、新生血管阻害剤との併用の有用性の評価にも有用である。本発明の系を使い、その適用法を選別することで肺ガン(肺扁平上皮ガン、肺腺ガン、小細胞肺ガン)、胸腺腫、甲状腺ガン、前立腺ガン、腎ガン、膀胱ガン、結腸ガン、直腸ガン、食道ガン、盲腸ガン、尿管ガン、乳ガン、子宮頸ガン、脳ガン、舌ガン、咽頭ガン、鼻腔ガン、喉頭ガン、胃ガン、肝ガン、胆管ガン、精巣ガン、卵巣ガン、子宮体ガン、転移性骨ガン、悪性黒色腫、骨肉腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、脂肪肉腫等の治療の判断に有効である。
【0028】
本発明に係る系は、チロシンキナーゼ阻害剤と免疫療法剤特にCTL活性化剤(IL-12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)の併用、更にはNK活性化剤、NKT活性化剤、新生血管阻害剤との併用は、その活性化を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる処方にて用いられる治療法の有用性判断にも有用である。すなわち、本発明の系を使い、その活性化を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる投与量、ならびに投与期間を選択して用いられる。具体的には、その投与量は、NK活性化剤又はNKT活性化剤であるα-1,3グルカン構造を持つ化合物は1g〜40g/日程度、好ましくは5g〜20g/日程度で、CTL活性化剤(IL-12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)であるβ-1,3グルカン構造を持つ化合物は1g〜10g/日程度、好ましくは3g〜6g/日程度である。また、投与期間は一般的には10日間〜24ヶ月間、投与頻度は隔日又は1〜3回/日で、好ましくは連日投与である。当該CTL活性化剤(IL-12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)、NK活性化剤、NKT活性化剤は、好適には経口摂取される。無論、投与量を減少させ、これらを非経口に耐え得る品質に調製することで、非経口摂取(静脈内または筋肉内投与などを含む)も可能である。以上のような有効な投与量、投与方法の評価にも本発明の系は有効である。
【0029】
細胞および各サイトカインの測定方法を以下に例示する。
(NKT細胞の測定)(NK細胞の測定)(CD8の測定)
NKR-P1を有するNKT細胞の測定は、NKT細胞の細胞表面に特異的に存在する細胞表面抗原(CD3およびCD161)の測定により行うことができる。具体的には、末梢血中のリンパ球について、CD3が陽性でかつCD161が陽性(CD3+CD161+)の細胞を検定する。つまり、NKT細胞の細胞表面抗原であるCD3およびCD161を、モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーを使用するTwo Color検査により測定する。ここでNKT細胞が活性化されているとは、リンパ球の中でCD3+CD161+NKT細胞の割合が10%以上、より好ましくは16%以上であることをいう。NKT細胞活性化能とは、NKT細胞の割合を10%以上、より好ましくは16%以上に増加せしめる機能、またはある物質を投与する前のNKT細胞の割合より更に増強せしめる機能を意味する。
同様に(CD3−CD161+)とはCD3が陰性でかつCD161が陽性の細胞を検定することである。この方法はNK細胞の測定に有用である。
さらにCD8+とはCD8が陽性の細胞を検定することである。この方法はCTL活性の測定に有用である。
【0030】
(パーフォリン産生細胞の測定)
末梢血中のリンパ球について、細胞表面抗原であるCD3、CD161、CD8のうち2者とパーフォリンについてフローサイトメトリーを用いたThree Color検査により常法通り測定する。具体的には、採取した血液に固定液を加えて細胞を固定し、膜透過液を添加後抗パーフォリン抗体(Pharmingen社製)を添加して反応させ、さらにPRE−Cy5標識二次抗体(DAKO社性)を添加して反応させ、ついで抗CD3-PE(Coulter 6604627)抗体および抗CD161-FITC(B-D)抗体を添加して反応させ、その後フローサイトメトリーで測定する。
【0031】
(サイトカインを測定するための試料の調製)
まず、血液より単核球画分を分離調製する。ヘパリン加末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)(PBS)で2倍に希釈して混和した後、Ficoll-Conray液(比重1.077)上に重層し、400Gで20分間遠沈後、単核球画分を採取する。洗浄後、10%牛胎児血清(FBS)を加えたRPMI−1640培地を加え、細胞数を1×10個となるように調製する。得られた細胞浮遊液200μlにフィトヘマグルチニン(Phytohemagglutinin)(DIFCO社製)を20μg/mlの濃度となるように加え、96穴マイクロプレートにて5%CO2存在下、37℃で24時間培養し、該培養した細胞溶液中のサイトカインを測定する試料とする。
【0032】
(IL-12の測定)
IL-12量の測定は自体公知の臨床、生化学的検査を利用できるが、R&D SYSTEMS社やMBL社より入手することのできる酵素免疫測定法(ELISA)による測定キットが使用される。ここではR&D SYSTEMS社の測定キットを用いた。実際には96穴マイクロプレートの各穴に測定用希釈液Assay Diluent RD1Fを50μl、標準液(standard)または上記サイトカインを測定するための試料の調製でえた試料を200μlずつ分注した後、室温にて静置して2時間反応させた。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ(horse radish peroxidase)(HRP)標識抗IL-12抗体を200μlずつ分注し2時間室温で静置した。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、20分間室温静置後、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。550nmを対照として450nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IL-12量は、pg/mlとして表される。ここでIL-12産生誘発能とは、末梢血単核球画分が刺激により産生するIL-12量を、7.8pg/ml以上に増強せしめる機能、またはある物質を投与する前のIL-12産生量より増強せしめる機能を意味する。な、本発明の実験系で用いたマウスモデル動物においては、血中IL-12をELISAキットで直接測定可能である。
【0033】
(IFNγの測定)
IFNγの測定は、BioSource Europe S.社のIFNγ EASIAキットを用いて、酵素免疫測定法(EIA法)で測定した。実際には96穴マイクロプレートの各穴に標準液(standard)または上記調製した試料を2倍希釈したものを50μlずつ分注し、HRP標識抗IFN−γ抗体を50μlずつ分注し更に振盪しながら2時間室温で反応させた。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、振盪しながら15分間室温で反応させ、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。630nmを対照として450nmおよび490nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IFNγ量は、IU/mlとして表される。
【0034】
(血管新生阻害能の測定)
(血管内皮細胞増殖因子/VEGFと塩基性繊維芽細胞増殖因子/bFGF及び血管新生阻害因子エンドスタチン/endostatinの測定)
市販キットの各酵素免疫固相法(ELISA:enzyme linked immuno sorbent assay)(ACCUCYTE Human VEGF, ACCUCYTE Human bFGF, ACCUCYTE Human Endostatin: CYTIMMUNE Sciences Inc.)で血清中濃度を測定した。
【0035】
(モデル動物)
本発明のEGFR(血管内皮細胞増殖因子レセプター)陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植するとは、例えばマウス大腸癌由来のcolon26腫瘍株を同系のBALB/cマウスに移植する系、マウス肺癌由来の3LL(別名ルイス肺癌)腫瘍株を、マウスの白血球血液型のH-2が一致するC57BL/10(別名B10)マウスに移植する系等が具体的に例示される。
【0036】
このような系の調製手技としては以下が例示される。
本発明によって、マウスに移植生育した後の固形腫瘍局所で免疫組織化学の手法で当該腫瘍細胞に蛋白レベルでEGFRの発現が見られることを確認した。その調製手技は、colon26腫瘍をBALB/cマウスに移植し、21日後に腫瘍局所を採取した。3LL腫瘍をC57BL/10マウスに移植し、21日後に腫瘍局所を採取した。採取した組織は中性緩衝ホルマリン液で固定後、定法によりパラフィン包埋切片とした。切片を脱パラフィン後、0.5mg/ml のプロテアーゼtype XXIV(SIGMA社)で室温10分間処理し、脱イオン水で洗った。内因性ペルオキシダーゼをブロックするために3%の過酸化水素水を用いて5分間処理し、脱イオン水で洗った。非特異的染色をブロックするために、10%正常豚血清(Kohjin Bio社#12180910)PBS溶液で室温10分間処理した。1次抗体としてEGFR抗体(Santa Cruz Biotechnology社Code#SC-03G)を50倍希釈して用い、4℃で一晩インキュベートした。PBSで洗い後、ビオチン化抗体(Biotinylated Rabbit Anti-Goimmunoglobulins, DAKO社Code#E0466)を500倍希釈して用い、室温で30分間インキュベートした。PBSで洗い後、ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Peroxidase-Conjugated Streptavidin, DAKO社Code#P0397)を500倍希釈して用い、室温で30分間インキュベートした。PBSで洗い後、DAB液(20mg 3,3`-Diaminobenzidine tetrahydrochloride and 20μl 30% Hydrogen Peroxide in 100ml PBS)と室温で5分間インキュベートした。水で洗い後、ヘマトキシリンで1分間染色した。水で洗い後、脱水してプレパラートにマウントした。
その結果、図1〜6の写真で示すように、定法のHE染色で血管内皮や腫瘍細胞と確認される部位に、EGFRが明瞭に茶色く染色された(EGF-R免疫染色:抗体としてEGFRを使用。検出反応にはGoatLSABを使った。一次抗体濃度の適値は1:50.)さらに、非特異的染色を否定するためにブロッキングテストを試みた。ブロッキングテストは、希釈したEGFR抗体に、蛋白量で5倍になるようにブロッキング試薬(Santa Cruz Biotechnology社Code#SC-03P)を添加し、4℃で一晩インキュベートしたものを1次抗体として用い、上記と同様に処理した。ブロッキングテストの結果、写真のようにEGFR染色で見られた茶色が見られないことが確認できたため、非特異的染色は否定され、EGFR陽性像が血管内皮細胞および腫瘍細胞に見られることが確認された。写真はHE、EGF-R及びブロッキングテストについてほぼ同一部位を対物レンズx10及びx20で撮影した。図1〜3は、3LL腫瘍株移植の場合の各ブロッキングテスト、EGF-Rテスト、HEを示す。図4〜6は、colon26腫瘍株移植の場合の各ブロッキングテスト、EGF-Rテスト、HEを示す。
【0037】
本発明にあっては、大腸癌由来のcolon26腫瘍細胞を200万個BALB/cマウスマウスの背部皮下に移植し、翌日からゲフィチニブを0.5%Tween 20水溶液にケンダクして連日経口投与した。移植後15dの腫瘍体積(mean+SD, mm3)は、vehicle (0.5%Tween 20)投与群で1922+575, 50mg/kg投与群で1879+401, 100mg/kg投与群で2050+743, 200mg/kg投与群で1099+438であり、200mg/kg投与ではじめて腫瘍増殖の有意な抑制が見られた。ただし、移植後1d→15dの体重(mean+SD, g)は、vehicle投与群で24.3+1.4→23.8+1.5, 50mg/kg投与群で23.7+0.9→23.0+1.3, 100mg/kg投与群で23.9+1.6→23.3+1.1, 200mg/kg投与群で20.9+0.7でありゲフィチニブ200mg/kg投与群の体重減少が特にいちじるしく、200mg/kgでは全個体に眼ケン浮腫が発症したため、ゲフィチニブの投与を15dでうち切った。従来技術のヒト腫瘍をヌードマウスに移植する実験系でも、腫瘍増殖の有意な抑制が見られるゲフィチニブのdoseを100mg/kgないし200mg/kgとする報告が多いため、この点は従来技術との同等性部分である。
しかし、200mg/kgや100mg/kgのゲフィチニブは、体重減少や眼ケン浮腫が発症する副作用発症用量であり、現実のヒト患者とはあまりにもかけ離れた用量をもって実験系とするモデルであった。求められているのは、現実のヒトの患者を写す実験系、すなわち「免疫不全でない、より低い用量でゲフィチニブを用いる動物実験系」であった。
ここで、本発明において提供されたColon26腫瘍-BALB/cマウスの系と3LL腫瘍-C57BL/10マウスの系は、免疫不全でない、免疫学的な解析が可能なマウスである。よって、単なる腫瘍サイズのみを主な指標として解析する従来技術と異なり、抗腫瘍免疫において重要な免疫機能例えばIL-12産生能力なども指標として同時に解析することが可能なのである。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0039】
【実施例1】
マウス肺癌由来の3LL腫瘍細胞を200万個B10マウスマウスの背部皮下に移植し、翌日からゲフィチニブを0.5%Tween 20水溶液にケンダクして連日経口投与する場合、移植後20dの腫瘍体積(mean+SD, mm3)は、vehicle (0.5%Tween 20)投与群で1947+1648, ゲフィチニブ50mg/kg単独投与群で1874+947なのであるが、ゲフィチニブ50mg/kgとILX 1000mg/kgを併用経口投与する群では1437+870と腫瘍体積が抑制される傾向を示す。さらに、移植後21dの血中IL-12をアマシャムファルマシア社のELISAキット(Code#RPN2702)で測定すると、それぞれ3947+1709, 4641+861, 5771+819 (mean+SD, pg/ml)となり、ILX併用群はMann-Whitney U検定でvehicle群に対してp=0.0192、ゲフィチニブ単独投与群に対してもp=0.0192と数学的に有意に高いIL-12値を示したのである。
ゲフィチニブ50mg/kgとILY (商品名)(IL-12産生誘発剤)1000mg/kgを併用経口投与する群も試験した。移植後7dの血中IL-12濃度は、vehicle投与群で2761+416, ゲフィチニブ50mg/kg単独投与群で2813+620, ゲフィチニブとILYの併用投与群で3709+461となり、ILY併用群はMann-Whitney U検定でvehicle群に対してp=0.0001、ゲフィチニブ単独投与群に対してもp=0.0023と数学的に有意に高いIL-12値を示したのである。
ゲフィチニブ50mg/kgとILX 1000mg/kgとILY (商品名)(IL-12産生誘発剤)1000mg/kgの3剤を併用経口投与する群も試験した。移植後14dの血中IL-12濃度は、vehicle投与群で3129+867, ゲフィチニブ50mg/kg単独投与群で3005+819, 3剤を併用投与群で4019+702となり、3剤を併用はMann-Whitney U検定でvehicle群に対してp=0.0126、ゲフィチニブ単独投与群に対してもp=0.0112と数学的に有意に高いIL-12値を示した。さらに移植後20dの腫瘍体積(mean+SD, mm3)は、vehicle (0.5%Tween 20)投与群で1947+1648, ゲフィチニブ50mg/kg単独投与群で1874+947なのであるが、3剤を併用経口投与する群では1301+735と腫瘍体積が抑制される傾向を示す。
これらのことは、八木田がすでに出願済みのゲフィチニブとIL-12産生誘導剤であるILXやILY等とのヒトでの併用による有効性や、ゲフィチニブが抗癌免疫能力を下げないタイプの抗癌剤であるという知見を裏づける実験であり、また免疫学的解析という点で有用な動物実験系であると言える。
【0040】
【実施例2】
マウス大腸癌由来のcolon26腫瘍細胞を200万個BALB/cマウスマウスの背部皮下に移植し、翌日からゲフィチニブを0.5%Tween 20水溶液にケンダクして連日経口投与する系において、ゲフィチニブ50mg/kg単独経口投与群、ゲフィチニブ50mg/kgとILY 1000mg/kgを併用経口投与する群を試験した。移植後14dの血中IL-12濃度は、vehicle投与群で2987+377, ゲフィチニブ50mg/kg単独投与群で3126+376, ゲフィチニブとILYの併用投与群で3818+528となり、ILY併用群はMann-Whitney U検定でvehicle群に対してp=0.0006、ゲフィチニブ単独投与群に対してもp=0.0039と数学的に有意に高いIL-12値を示したのである。
ゲフィチニブ50mg/kgとILX 1000mg/kgとILY 1000mg/kgの3剤を併用経口投与する群も試験した。移植後14dの血中IL-12濃度は、3剤を併用投与群で3350+562となり、3剤を併用はMann-Whitney U検定でvehicle群に対してp=0.0333と数学的に有意に高いIL-12値を示した。
また、ゲフィチニブ単独投与群においても、21dの血中IL-12濃度は2648+404であり、2101+258のvehicle群に対してMann-Whitney U検定でp=0.0164と数学的に有意に高いIL-12値を示したのである。
これらのことは、八木田がすでに出願済みのゲフィチニブとIL-12産生誘導剤であるILXやILY等とのヒトでの併用による有効性や、ゲフィチニブが抗癌免疫能力を下げないタイプの抗癌剤であるという知見を裏づける実験であり、また免疫学的解析という点で有用な動物実験系であると言える。
【0041】
【実施例3】
実施例1において、腫瘍移植21dのマウス脾臓を採取し、ベクトンディッキンソン社のフローサイトメーターFACS Caliburを用いてT細胞、NK細胞、NKT細胞の解析を行った。T細胞を持たないヌードマウスにヒト腫瘍を移植する従来技術の実験系では、実施例3の解析が絶対不可能である。
脾臓は2%FCS加0.05%アジ化ナトリウム加PBS(以後の操作は全てこの溶液中に脾細胞を懸濁して行う)中で、ホモジナイザーペッセルですりつぶした後、セルストレイナーを通過させてFree cellとした。遠心洗い後に常法の塩化アンモニウム法により溶血せしめ赤血球を除いた。遠心洗い後に、FITC結合CD3e抗体(ベクトンディッキンソン社Cat.#553062)とAPC結合NK1.1抗体(ベクトンディッキンソン社Cat.#550627)を添加して氷上で30分間インキュベートし、遠心洗いしてフローサイトメーター測定に付した。CD3e陽性細胞がT細胞、NK1.1陽性細胞がNK細胞、CD3eとNK1.1両陽性細胞がNKT細胞である。
腫瘍を移植していないノーマルマウス脾臓において、T, NK, NKT細胞それぞれの比率(mean+SD, %)は、27.93+2.04, 3.02+0.21, 1.45+0.37である。
3LL腫瘍移植21dのvehicle群脾臓において、T, NK, NKT細胞比率は、14.88+3.12, 1.67+0.13,0.78+0.17である。T, NK, NKT細胞のいずれの比率も担癌末期では下がることがわかる。
ゲフィチニブ50mg/kg単独群脾臓において、T, NK, NKT細胞比率は、15.89+4.96, 2.08+0.41, 0.91+0.08である。vehicle群に比べていずれの比率も若干上昇しており、ゲフィチニブ50mg/kg投与でT, NK, NKT細胞比率が下がらないということがわかる。
残念ながら腫瘍移植21dというデータポイントが遅すぎたためか、IL-12産生誘導剤であるILXやILYの併用が脾臓のT, NK, NKT細胞比率に与える影響はさだかでなかった。しかし、このことは、八木田がすでに出願済みの、ゲフィチニブが抗癌免疫能力を下げないタイプの抗癌剤であるという知見を裏づける実験であり、また免疫学的解析という点で有用な動物実験系であると言える。
【発明の効果】
本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤とIL-12産生誘導剤(TH1サイトカイン産生増強)の併用の有用性を確実に判定する動物モデル系を確立したものであるからガン治療における画期的な成果を可能にするものであるし。
【図面の簡単な説明】
【図1】3LL腫瘍移植ブロキングテスト染色図。
【図2】3LL腫瘍移植EGF-R染色図。
【図3】3LL腫瘍移植HE染色図。
【図4】colon26腫瘍移植ブロキングテスト染色図。
【図5】colon26腫瘍移植EGF-R染色図。
【図6】colon26腫瘍移植HE染色図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFR(血管内皮細胞増殖因子レセプター)陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウス。
【請求項2】
EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウスを使用するEGFRをターゲットとする抗腫瘍剤と免疫療法剤との併用効果の判定方法。
【請求項3】
EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウスを使用するEGFRをターゲットとする抗腫瘍剤の効果の判定方法。
【請求項4】
EGFR陽性のマウス腫瘍株を免疫不全でないマウスに移植されて調製される抗腫瘍効果確認用モデルマウスを使用する免疫療法剤の効果の判定方法。
【請求項5】
EGFRをターゲットとする抗腫瘍剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である請求項2〜3の何れか一に記載の判定方法。
【請求項6】
チロシンキナーゼ阻害剤が、以下の少なくとも1の受容体に対する選択的標的作用を有する請求項5の判定方法。
HER2/neu、HER3、HER4、c-kit、PDGFR、bcr-abl、EGFR
【請求項7】
チロシンキナーゼ阻害剤が、選択的にEGFR又はc-kit標的作用を有する請求項5の判定方法。
【請求項8】
免疫療法剤が、IL-12産生誘導剤である請求項2又は4の判定方法。
【請求項9】
IL-12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する物質である請求項8に記載の判定方法。
【請求項10】
IL-12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する茸菌糸体由来成分又は酵母由来成分である請求項9の判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−340602(P2006−340602A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−169152(P2003−169152)
【出願日】平成15年6月13日(2003.6.13)
【出願人】(300040380)株式会社オリエントキャンサーセラピー (6)
【Fターム(参考)】