説明

モノアルケニルベンゼン類の製造法

【目的】側鎖のα位に水素原子が結合している芳香族炭化水素化合物の側鎖を炭素数4又は5のジエン類を用いてアルケニル化してモノアルケニルベンゼン類を高収率で得る触媒を開発する。
【構成】塩基性カリウム化合物とアルミナの混合物を500℃〜700℃で焼成して得られる担体に金属ナトリウムを加えて熱処理したものを触媒とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、側鎖のα位に1個以上の水素原子が結合している芳香族炭化水素化合物を炭素数4または5の共役ジエン類を用いて側鎖アルケニル化してモノアルケニルベンゼン類を製造する方法に関する。モノアルケニルベンゼン類は高分子モノマー、医薬品を始めとする種々の有機化合物の中間原料として有用であり、例えば、o-キシレンと1,3-ブタジエンから製造される 5-(o-トリル)-2-ペンテンは閉環後、脱水素、異性化、酸化して工業的に有用な2,6-ナフタレンジカルボン酸に変換することができる。
【0002】
【従来技術】芳香族炭化水素化合物を炭素数4または5の共役ジエン類を用いて側鎖アルケニル化してモノアルケニルベンゼン類を製造するため触媒としてナトリウム、カリウム等のアルカリ金属及びそれらの合金を用いる方法が知られている。例えば、独国特許557514号には金属ナトリウムを触媒に用いる方法が記載されており、Eberhardt らの J.Org.Chem.,vol.30(1965),p82-84には金属ナトリウムをアルカリ土類金属酸化物に担持して用いる方法が記載されている。また、特公昭50−17973号には金属カリウムを用いる方法が記載されており、特公昭50−17975号、特公昭51−8930号等にはカリウム−ナトリウム合金または金属カリウムと金属ナトリウムの混合物を用いる方法が記載されている。また、米国特許3244758号および上記 J.Org.Chem.,vol.30(1965),p82-84 には金属カリウムをアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物に担持して用いる方法が記載されている。また、特開昭47−27929号、特開昭47−31935号にはカリウム化合物と金属ナトリウムとを300℃または350℃以上の温度で熱処理して得られる混合物を触媒に用いる方法が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このうち金属ナトリウムをそのまま、またはアルカリ土類金属酸化物に担持して触媒として用いる場合には活性、選択性とも充分ではなく実用的ではない。また、金属カリウム触媒、カリウム−ナトリウム合金または金属カリウムと金属ナトリウムの混合物を触媒に用いる方法は、触媒としての活性は高いが酸素、水分等とそれら触媒とが非常に激しく反応し、工業的に実施しようとする場合には発火や爆発等の危険が大きく安全上多くの問題を有している。また、金属カリウムをアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物に担持して用いる方法は、発火性の非常に高い金属カリウムを用いて触媒を調製するため、工業的に実施しようとする場合には安全上多くの問題を有している。一方、金属ナトリウムとカリウム化合物を高温下で熱処理して得られる混合物を触媒とする方法は、金属カリウムまたはカリウム合金を直接使用しないと云う特徴はあるが、触媒活性が充分でないこと、発火性の物質を高温下で処理しなければならないこと等、必ずしも実用的な方法であるとは云えない。本発明の目的は、このような事実に鑑み、側鎖のα位に水素を有する芳香族炭化水素化合物を炭素数4または5の共役ジエン類を用いて側鎖アルケニル化する方法に関して、高収率かつ安価で、さらに安全な方法でモノアルケニルベンゼン類を製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、芳香族炭化水素化合物のα位を炭素数4または5の共役ジエン類を用いて側鎖アルケニル化してモノアルケニルベンゼン類を製造する優れた方法を開発する目的で鋭意検討を重ねた結果、塩基性カリウム化合物とアルミナとの混合物を焼成して得られる担体に、不活性気体下で金属ナトリウムをその融点以上の温度で熱処理して得られる固体塩基触媒を用いることによって、高収率かつ安価で、さらに安全性の高い方法でモノアルケニルベンゼン類を製造することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明の方法で調製された触媒は、芳香族炭化水素化合物の共役ジエン類による側鎖アルケニル化反応に対して著しく高活性であり、金属ナトリウムの融点97. 8℃以上の温度であれば比較的低温で調製しても充分な活性が得られる。また少ない触媒使用量でも高収率で選択性よくモノアルケニルベンゼン類が得られ、さらに触媒の取り扱いも容易である。即ち本発明は、側鎖のα位に1個以上の水素原子が結合している芳香族炭化水素化合物の側鎖を炭素数4または5の共役ジエン類を用いてアルケニル化してモノアルケニルベンゼン類を製造するに際し、塩基性カリウム化合物とアルミナとの混合物を500〜700℃で焼成して得られる担体に、不活性気体下で金属ナトリウムを加え、100〜300℃にて熱処理して得られる混合物を触媒として用いることを特徴とするものである。本発明による触媒は非常に高活性である為に、アルケニル化反応は、常圧下、100〜200℃と非常に穏やかな条件下でも充分に進行する。以下に本発明についてさらに説明する。
【0005】本発明に用いる側鎖のα位に1個以上の水素原子が結合している芳香族炭化水素化合物としては、次のような化合物が用いられる。単環芳香族炭化水素としては、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン等のモノアルキルベンゼン類、o-、m-およびp-キシレン、o-、m-およびp-エチルトルエン、o-、m-およびp-ジエチルベンゼン等のジアルキルベンゼン類、メシチレン、プソイドキュメン等のトリアルキルベンゼン類、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン等のポリアルキルベンゼン類が用いられ、また多環芳香族炭化水素としては 1- および2-メチルナフタレン、ジメチルナフタレン類、テトラヒドロナフタレン、インダン等が用いられる。一方の原料となる炭素数4または5の共役ジエン類としては、1,3-ブタジエンや1,3-ペンタジエン、またはイソプレン等が用いられる。
【0006】本発明の触媒に用いられる塩基性カリウム化合物としては、水酸化カリウム、炭酸カリウム、燐酸カリウム、炭酸水素カリウム、燐酸水素カリウム等が用いられる。 硫酸カリウム、硝酸カリウム等の中性のカリウム化合物を用いた場合には、本発明の触媒にみられるような優れた性能は得られない。塩基性カリウム化合物とアルミナとを混合すると両者は反応し、この混合物を100〜150℃で乾燥したときには、X線回折によればアルミナのピークの他にAlOOHに帰属されるピークが認められる。 この混合物をさらに高温で焼成すると2θ=32.4°と58.5°に新しいピークが出現し、焼成温度を上げて行くにしたがって2つの新しいピークは大きくなり、一方AlOOHに帰属されるピークは小さくなって行き500℃以上で焼成することにより完全に消滅することを見いだした。 このX線回折で見られる各ピークの消長と触媒活性とには密接な関係があり、高活性な触媒を調製する為には、2θ=32.4°と58.5°のピークが充分大きく、かつAlOOHのピークがほとんどないことが重要であることを見いだした。
【0007】2θ=32.4°と58.5°のピークは、アルミナあるいは塩基性カリウム化合物には認められないピークであり、アルミナと塩基性カリウム化合物との相互作用により生成する物質に由来する。 そのような物質としてはカリウムのアルミン酸塩が考えられるが、X線回折結果からは、単一のアルミン酸塩で2θ=32.4°と58.5°に回折ピークを有する物は見当たらず、各種アルミン酸塩の混合物となっていると推定される。上記の結果からわかるように、塩基性カリウム化合物とアルミナとを混合した後の焼成温度は触媒性能に大きく影響するものであり、500〜700℃、好ましくは550〜650℃で焼成を行うこと必須の要件となる。焼成温度がこの範囲より低い場合は、2θ=32.4°と58.5°のピークの成長は不充分であり、かつAlOOHがかなり存在している。 AlOOHはアルミナの水和物の一種であり、金属ナトリウムと混合する際に金属ナトリウムを失活させることとなる。焼成温度がこの範囲より高い場合は、2θ=32.4°と58.5°のピークの成長は充分であるが、金属ナトリウムと混合して触媒を調製する際に金属ナトリウムが充分に分散されず、触媒は充分な活性を示さない。
【0008】塩基性カリウム化合物の代わりに硝酸カリウム、硫酸カリウム等の中性のカリウム化合物を用いた場合は、触媒活性は充分ではなく、良好な反応成績を得るためには触媒量を多くする必要がある。これら中性のカリウム塩を用いた場合には、乾燥段階でAlOOHのピークは認められず、焼成後にも2θ=32.4°と58.5°のピークも認められなかった。 従って、中性のカリウム塩はアルミナとの相互作用が弱く、焼成後はこれらカリウム化合物あるいはその分解生成物が単にアルミナに担持された物となり、本発明で得られるようなアルミン酸塩が生成しないためと考えられる。例えば、硝酸カリウムを用いた場合、上記焼成条件では本発明で得られるようなアルミン酸塩の生成は認められなかった。焼成により硝酸カリウムはカリウムの酸化物になると考えられる。そして、硝酸カリウムとアルミナから得られた担体を用いて調製した触媒は、本発明による触媒に比べ非常に低活性であり、本発明の触媒と同等の反応成績を得るためには触媒量を非常に多くする必要があった。
【0009】塩基性カリウム化合物とアルミナとの混合物の調製方法としては、両者を良く混合分散できる方法であれば良く、湿式、乾式いずれの方法も採用できるが、均一に混合分散させるためには湿式による調製法が好ましい。その際、塩基性カリウム化合物を水に溶解させ、この水溶液にアルミナを混合分散させ、その後乾燥させるのが一般的であるが、水酸化カリウムのように比較的低い融点を持つカリウム化合物を使用する場合は、その融点以上に加熱混合する方法も採用できる。塩基性カリウム化合物とアルミナの混合比は、アルミナ1重量部に対してカリウム金属として0. 01〜1重量部、好ましくは0. 1〜0. 5重量部である。この範囲よりもカリウム化合物の混合比が小さい場合には、生成するアルケニルベンゼン類の異性化などの副反応が起こり易いこと、触媒活性が低下し易いこと、また高活性を維持するには大量の触媒を必要とし反応後の処理が繁雑になること、等の不都合が生ずる。一方、カリウム化合物の混合比が大きい場合には、金属ナトリウムとの加熱処理の際に、高活性な触媒を得るためには長時間を要すること、またより高温で熱処理する必要があること等、アルミナを用いる効果が発現し難くなり好ましくない。本発明で用いる塩基性カリウム化合物は、その他の塩、例えば硝酸塩、硫酸塩等を等モル程度まで含んでいても良い。
【0010】このようにして塩基性カリウム化合物とアルミナとを混合し、焼成して得られた担体と金属ナトリウムとを不活性気体下で加熱、混合して触媒が調製される。ここで云う不活性気体とは、触媒調製条件下において調製される触媒と実質的に反応しない気体であり、具体的には窒素、ヘリウム、アルゴン等があげられる。この際の加熱温度は、金属ナトリウムの融点以上で且つ500℃以下、好ましくは100〜300℃とする。また加熱処理の時間は、通常5分から300分の範囲である。金属ナトリウム中にカリウム等が含まれている場合、当該ナトリウムは金属ナトリウムの融点よりも低い温度で液状となる。この場合は当該ナトリウムが液状となる温度以上であれば充分に触媒調製は可能である。金属ナトリウムが融解しない場合は、塩基性カリウム化合物とアルミナから調製した担体と金属ナトリウムとを混合する際に均一に分散させ有効に接触させることが難しく、調製に時間がかかるために実用的とは云えない。一方、500℃以上の温度でも触媒は調製できるが、高温下での発火性の物質の取り扱いは工業的な実施において好ましいものとは云えない。
【0011】金属ナトリウムと塩基性カリウム化合物との比は、金属ナトリウムのカリウム化合物中のカリウム原子に対する原子比で、0.01〜5、好ましくは0.1〜3の範囲である。この範囲よりも金属ナトリウムが少ない場合には金属ナトリウム、カリウム化合物の効果が充分に発揮されず、必要な触媒活性を得るためには大量の触媒を用いる必要が生じ好ましくない。金属ナトリウムが上記範囲よりも多い場合は、塩基性カリウム化合物とアルミナから調製した担体を用いる効果が充分に発揮できず、安全面、触媒の取扱面から好ましくない。用いる金属ナトリウムはカリウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含んでいても、金属ナトリウムの量が上記範囲にあればなんら問題はない。
【0012】本発明の方法で得られる触媒を反応に使用する当っては、種々の反応方式が採られる。例えば、触媒を仕込んだ反応器に原料をバッチ方式やセミバッチ方式にて供給する方法、または反応器に触媒および原料を連続的に供給する完全混合流通方式、あるいは触媒を反応器に充填し原料を流通させる固定床流通方式等が採用できる。反応方式は目的とする反応生成物の種類によって適宜選択されるべきものであるが、一般的には原料の一方である芳香族炭化水素類を共役ジエン類に対して過剰に存在させる方法が、モノアルケニルベンゼン類への選択率を向上させることができる。その目的のためにはセミバッチ方式で共役ジエン類を連続的に反応系に供給する方法が好ましく、また、完全混合方式や固定床流通方式等で反応を連続的に実施する場合には反応器を多段に分け、各段に共役ジエン類を供給する等共役ジエン類の反応器中での濃度を下げることが可能な反応方式を採用する方が高選択率を得ることができるので好ましい。
【0013】本発明の方法における反応は、原料芳香族炭化水素、および生成物が実質的に液体状態にある条件下で行われる。反応温度は、50〜300℃、好ましくは100〜200℃の範囲である。これより低い場合にも反応は起こるが充分な反応速度が得られず、また選択率が悪化する傾向にある。これより温度が高い場合にはタール分等の副生物が多くなり好ましくない。反応圧力は、原料芳香族炭化水素、生成物が実質的に液体として存在するに充分な圧力であれば良く特に制限はないが、絶対圧で0.05〜5気圧、好ましくは0.1〜2気圧の範囲である。本発明の方法における原料芳香族炭化水素に対する一方の原料である炭素数4または5の共役ジエンの比は、モル比で0.01〜1、好ましくは 0.03〜0.5の範囲である。これよりもジエンが多い場合には生成したモノアルケニルベンゼンが更にジエンと反応して芳香族炭化水素1分子にジエンが2分子以上付加した化合物の生成が多くなり、またジエンの重合も起こり易く選択率が悪化するので好ましくない。本発明の方法において用いる触媒の量は、原料の芳香族炭化水素に対して重量で0.01%以上、好ましくは0.05%以上である。
【0014】本発明の方法には、バッチ方式、セミバッチ方式、完全混合流通方式等の反応方式が適用される。 バッチ方式、セミバッチ方式での反応時間または完全混合流通方式の場合には、滞留時間として0.1〜10時間が採用される。 固定床流通方式の場合には、通常芳香族炭化水素のLSVとして0.1〜10h-1が採用される。触媒を懸濁させて反応を行う場合には、反応後における反応液と触媒の分離は沈降、遠心分離、濾過等の一般的な方法で容易に行うことができる。分離された触媒は反応系に循環してもよく、また付着した有機物の空気燃焼による除去や水による洗浄等の必要な処理を行った後に触媒調製工程に循環してもよい。
【0015】
【発明の効果】本発明の方法により、芳香族炭化水素化合物と共役ジエン化合物を用いて工業的に有用なモノアルケニルベンゼン類を高反応成績かつ安価に、さらにより安全な方法で製造することができるものであり、その工業的意義は大きい。
【0016】
【実施例】以下、実施例及び比較例にて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1KOH 20.85gを含有する水溶液にAl2O3 粉末(水沢化学製 DN-1A)58g を加え、室温で1時間攪拌、混合した。115 ℃で一晩乾燥後、更に空気中 550℃で焼成した。この混合焼成品 5g を窒素雰囲気下 150℃で撹拌し、金属 Na 0.60gを加えた後、その温度で30分撹拌した。このようにして得られた触媒粉末にモレキュラーシーブを用いて脱水したo-キシレン 1000gを窒素気流中で加え、140 ℃に加熱した。常圧下、撹拌しながら、1,3-ブタジエン 50gを1時間で導入して反応させた。冷却後イソプロピルアルコールを加えて触媒を失活させた後、反応液の一部を採りガスクロマトグラフィーにより分析した。 反応結果を表1に示した。
【0017】実施例2〜4表1に示した如く、水酸化カリウムとアルミナの量比、水酸化カリウムとアルミナから担体を調製する際の焼成温度、担体量、金属ナトリウム量、処理温度、処理時間を変えて、実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。 結果を表1に示した。尚、処理温度、処理時間とは、水酸化カリウムとアルミナとから調製された担体と金属ナトリウムとを混合する際の温度、時間である。
実施例5水酸化カリウム20.85gの代わりに、炭酸カリウム30g を使用した以外は実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示した。
実施例6水酸化カリウム20.85gの代わりに、炭酸水素カリウム22g を使用した以外は実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示した。
実施例7水酸化カリウムを 10.4gとし、水酸化ナトリウム 7.0g を加えたこと以外は実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
実施例81,3-ブタジエンの供給量を70g とした以外は実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。 結果を表1に示す。
【0018】比較例1水酸化カリウム20.85gの代わりに、水酸化ナトリウム14.9g を用いたこと以外は実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表2に示す。
比較例2水酸化カリウム20.85gの代わりに、硝酸カリウム37.6g を用いたこと以外は実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表2に示す。
比較例3〜4水酸化カリウムとアルミナとの混合物の焼成温度を変えた以外は実施例1と同様な方法で触媒を調製し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表2に示す。比較例5500 ℃で焼成した炭酸カリウム粉末 10gを窒素下 200℃に加熱し、撹拌しながらナトリウム金属 1.0g を加え、さらに 120分その温度で加熱した。放冷後実施例1と同様に反応を行なった。 結果を表2に示す。
比較例6 ; 金属ナトリウム5.0gを触媒に用いて、実施例1と同様に反応を行なった。 結果を表2に示す。
比較例7 ; 金属カリウム1.0gを触媒に用いて、実施例1と同様に反応を行なった。 結果を表2に示す。
【0019】
【表1】
──────────────────────────────────── K化合物 焼成温 混合物*2 金属ナト 処理 処理 OTP*3 種類 度 使用量 リウム量 温度 時間 収率 量(wt 比) *1 (C) (g) (g) (℃) (分) ( %) 実施例1 KOH 550 5.0 0.60 150 30 89.7 (0.25) (1.06) 実施例2 KOH 600 5.0 0.50 130 60 90.9 (0.45) (0.58) 実施例3 KOH 650 10.0 0.30 150 60 88.1 (0.25) (0.26) 実施例4 KOH 510 5.0 1.00 180 30 91.5 (0.35) (1.38) 実施例5 K2CO3 550 5.0 0.60 150 30 90.3 (0.29) (0.94) 実施例6 KHCO3 550 5.0 0.60 150 30 90.6 (0.24) (1.09) 実施例7 KOH NaOH 550 5.0 0.60 150 30 89.8 (0.12)(0.07) (2.03) 実施例8 KOH 550 5.0 0.60 150 30 82.7 (0.25) (1.06) *1)アルカリ化合物中のアルカリ金属の Al2O3に対する重量比。
*2)アルカリ化合物とアルミナとを混合焼成したもの。
*3)OTP:5-(O-トリル)-2-ペンテン。
【0020】
【表2】
──────────────────────────────────── K化合物 焼成温 混合物*2 金属ナト 処理 処理 OTP*3 種類 度 使用量 リウム量 温度 時間 収率 量(wt 比) *1 (C) (g) (g) (℃) (分) ( %) 比較例1 NaOH 550 5.0 0.60 150 30 2.0 (0.15) (0.72) 比較例2 KNO3 550 5.0 0.60 150 30 0.7 (0.25) (1.06) 比較例3 KOH 380 5.0 0.60 150 30 7.7 (0.25) (1.06) 比較例4 KOH 800 5.0 0.60 150 30 7.3 (0.25) (1.06) 比較例5 K2CO3 550 10.0 1.00 200 120 5.8 (100) (0.30) 比較例6 5.0 5.3比較例7 K 1.0 3.2───────────────────────────────────*1)アルカリ化合物中のアルカリ金属の Al2O3に対する重量比。
*2)アルカリ化合物とアルミナとを混合焼成したもの。
*3)OTP:5-(O-トリル)-2-ペンテン。
【0021】実施例9実施例1と同様に調製した触媒粉末にモレキュラーシーブを用いて脱水したo-キシレン 1000gを窒素気流中で加え、 150℃に加熱した。強く撹拌しながら1,3-ブタジエン 50gを1時間で導入して反応させた。冷却後静置して触媒粉末を沈降させ、デカンテーションで反応液をほぼ全量取り出し、反応液の一部を採りガスクロマトグラフィーにより分析した。 反応結果を表3に示した。
実施例10実施例9で使用し、反応液をほぼ全量取り出した後の触媒スラリーにo-キシレン 1000gを窒素気流中で加え、 150℃に加熱した。強く撹拌しながら、1,3-ブタジエン 50gを1時間で導入して反応させた。デカンテーションにより反応液のほぼ全量を取り出した後残った触媒スラリーを用いて同じように反応をおこなう操作を4回繰り返した後、イソプロピルアルコールを加えて触媒を失活させ、反応液の一部を採りガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表3に示した。
実施例11実施例1と同様に調製した触媒粉末にモレキュラーシーブを用いて脱水したm-キシレン 1000gを窒素気流中で加え、150℃に加熱した。強く撹拌しながら 1,3-ブタジエン 50gを1時間で導入して反応させた。冷却後、イソプロピルアルコールを加えて触媒を失活させたのち、反応液の一部を採りガスクロマトグラフで分析した。 反応結果を表3に示した。
実施例12、13m-キシレンの代わりにp-キシレン、エチルベンゼンを用いたこと以外は実施例9と同様に反応を行い反応成績を調べた。 結果を表3に示した。
【0022】
【表3】
───────────────────────────────── 原料芳香族化合物 目的生成物 収率───────────────────────────────── 実施例9 o-キシレン 5-(o- トリル)-2-ペンテン 89.1 実施例10 o-キシレン 5-(o- トリル)-2-ペンテン 88.6 実施例11 m-キシレン 5-(m- トリル)-2-ペンテン 86.0 実施例12 p-キシレン 5-(p- トリル)-2-ペンテン 84.3 実施例13 エチルベンゼン 5-フェニル-2- ヘキセン 82.8 ─────────────────────────────────

【特許請求の範囲】
【請求項1】側鎖のα位に1個以上の水素原子が結合している芳香族炭化水素化合物の側鎖を炭素数4または5の共役ジエン類を用いてアルケニル化してモノアルケニルベンゼン類を製造するに際し、塩基性カリウム化合物とアルミナとの混合物を500℃〜700℃で焼成して得られる担体に、不活性気体下、金属ナトリウムを加え、100℃〜300℃で熱処理して得られる混合物を触媒として用いることを特徴とするモノアルケニルベンゼン類の製造方法。
【請求項2】塩基性カリウム化合物とアルミナとの混合物を500℃〜700℃で焼成して得られる担体が、X線回折において、アルミナに帰属される回折ピーク以外に、2θ=32. 4°および58. 5゜に回折ピークを有する物質である請求項1記載の方法
【請求項3】アルミナ1重量部に対する塩基性カリウム化合物の混合割合がカリウム金属として0.01〜1重量部である請求項1記載の方法。
【請求項4】塩基性カリウム化合物のカリウム原子に対する金属ナトリウムの原子比が、0.01〜5である請求項1記載の方法。
【請求項5】塩基性カリウム化合物が水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムである請求項1記載の方法

【公開番号】特開平6−298677
【公開日】平成6年(1994)10月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−217437
【出願日】平成5年(1993)9月1日
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)