モノクローナル抗体、細胞株及びN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定法
【課題】腫瘍マーカーとして期待されるN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定法を提供すること。
【解決手段】固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンと抗NN1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体の免疫反応を利用して検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンを測定する。その際、測定条件におけるN1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の阻害活性がN1−アセチルスペルミジンによる該免疫反応の阻害活性の20倍以上となる抗NN1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体を用いる測定法を見出した。
【解決手段】固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンと抗NN1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体の免疫反応を利用して検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンを測定する。その際、測定条件におけるN1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の阻害活性がN1−アセチルスペルミジンによる該免疫反応の阻害活性の20倍以上となる抗NN1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体を用いる測定法を見出した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体、抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体産生細胞株および該抗体を用いるN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミンは、プトレッシン(Put)、カダベリン(Cad)、スペルミジン(Spd)、スペルミン(Spm)及びそれら誘導体等の総称で、生体内に広く分布する生理活性物質である。癌細胞を含む増殖の盛んな細胞でかなりの量が合成され、これらの細胞に局在し、細胞の増殖を促進する因子として作用することから注目されている(Annu.Rev.Biochem.,53,p749−790(1984))。
【0003】
1971年、Russell等は、癌患者の尿中にポリアミンが増加することを見出し(Cancer Res.,31,p1555(1971))、尿中ポリアミンは、現在、腫瘍マーカーとして用いられている。しかしながら、これまでの「ポリアミン全体」を測定することの意義に対して、限界も見えてきた(Prog.Drug Res.,39,p9−33(1992))。
【0004】
ポリアミンは、そのまま遊離型として存在する他、アセチル化されたり、結合型としても存在している。Abdel−Monem等は、尿中に排泄されるポリアミンは、主としてモノアセチル体のN1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、アセチルプトレッシン(Ac−Put)、N8−アセチルスペルミジン(N8−Ac−Spd)として存在しており、これら成分の増加や成分比の変動がさらによい腫瘍マーカーとなることを報告している(J.Pharm.Sci.,67,p1671−1673(1978),Cancer Res.,42,p2097−2098(1982))が、これには異論もある(J.Biochem.,118,p1211−1215(1995))。
【0005】
最近、平松等は、尿中にポリアミンのジアセチル体のN1,N8−ジアセチルスペルミジン(N1,N8−2Ac−Spd)、N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)が存在することを見出し(J.Biochem.,117,p107−112(1995))、これらが、泌尿器系の腫瘍で著しく増加し、従来のポリアミンやポリアミンのモノアセチル体の変動を凌いでいたことから、新しい腫瘍マーカーとして期待されている(J.Cancer Res.Clin.Oncol.,121,p317−319(1995))。
【0006】
従来、これらジアセチル体のN1,N8−2Ac−Spd、N1,N12−2Ac−Spmの測定は、キャピラリー・ガスクロマトグラフィ法(Clin.Chem.,32,p1930−1937(1986))や液体クロマトグラフィ法(J.Biochem.,117,p107−112(1995))で行われてきた。
【非特許文献1】生化学 1996年第68巻第7号第1211頁 4−P−1075
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ジアセチル体のN1,N12−2Ac−Spmを測定するキャピラリー・ガスクロマトグラフィ法や液体クロマトグラフィ法では、煩雑な検体の前処理操作や、装置のメンテナンス技術を必要とするなど、かなりの熟練が要求される。また、煩雑さのため、測定には時間がかかり、臨床的な測定法としては、とても受け入れられるものではない。
そこで、臨床的に使用し得る簡便な測定法の開発を目指し、抗体を用いる免疫的な測定法が検討された。藤原等は、Spmのアルブミン複合体を免疫してN1,N12−2Ac−Spmに反応するモノクローナル抗体を作成したが、モノアセチル体のN1−Ac−SpdとN1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)とも強く反応し、結果的には、これら3成分の中で最も尿中での存在量の多い、N1−Ac−Spdを反映する測定法しかできなかった(J.Biochem.,118,p1211−1215(1995))。従って、N1,N12−2Ac−Spmを測定できる免疫測定法は、今だに完成していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記したような問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、N1−Ac−Spmのアルブミン複合体で免疫し、実質的に尿中N1,N12−2Ac−Spmの測定に使用し得るモノクローナル抗体を作成し、その抗体を用いる測定法を見いだして本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)と抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体の免疫反応を利用した検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定系を組んだ場合に、N1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の阻害活性がN1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)による該免疫反応の阻害活性の20倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40倍以上となる測定条件を選択することが可能になる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体、
(2)固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンとの免疫反応が50%阻害されるN1,N12−ジアセチルスペルミンの濃度が20μM以下、好ましくは15μM以下、より好ましくは1μM以下となる測定条件を選択することが可能になる上記(1)記載のモノクローナル抗体、
(3)検体が尿検体である上記(1)又は(2)記載のモノクローナル抗体、
(4)モノクローナル抗体0520,4914又は8624、
(5)上記(1)、(2)、(3)又は(4)記載のモノクローナル抗体を産生する細胞株、
(6)固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンと抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体の免疫反応を利用して検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンを測定する際に、その測定条件におけるN1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の阻害活性がN1−アセチルスペルミジンによる該免疫反応の阻害活性の20倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40倍以上となる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体を用いることを特徴とするN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定法、
(7)抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体が、測定条件において固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンとの免疫反応が50%阻害するN1,N12−ジアセチルスペルミンの濃度が20μM以下、好ましくは15μM以下、より好ましくは1μM以下となる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体である上記(6)記載の測定法、
(8)抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体がモノクローナル抗体0520,4914又は8624である上記(7)記載の測定法、
(9)検体が尿検体である上記(6)、(7)又は(8)記載の測定法、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のN1,N12−ジアセチルスペルミンと反応するモノクローナル抗体は、尿等の検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンを測定することができ、癌の診断に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
固相化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化N1−Ac−Spmとしては、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmを、スペーサーを介して、不溶性物質の表面上に繋ぎ止めたものが挙げられる。
スペーサーの結合位置は、N1,N12−2Ac−Spmの場合はその末端であってもその両末端の間のいずれの位置であってもよいが、N1−Ac−Spmの場合はその末端アミノ基に結合させるのが望ましい。スペーサーの種類と導入方法については多くの方法が知られているが、これらのいずれであっても良い。例えば、N1,N12−2Ac−Spmのいずれかの位置に、末端に反応基を有するスペーサーを導入し(N1,N12−2Ac−Spmのアセチル基からスペーサーを誘導する場合は、N1−Ac−SpmのN12−アミノ基に導入したアシル基がスペーサーとなる)、この反応基を介して蛋白質や合成高分子などに結合し、生成したN1,N12−2Ac−Spmと蛋白質や合成高分子の複合体を、免疫反応の場となる固相担体上に吸着させる方法、予め化学的に活性化されたスペーサーを持つ固相担体上に、N1,N12−2Ac−Spmそのもの、もしくは、N1−Ac−Spmの末端アミノ基を反応させる方法などがあるが、これらに限定されるものではない。N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmのいずれの位置に、どのようなスペーサーを導入するかは、用いる抗体の性質によって適宜選択すればよい。
【0012】
スペーサーとしては、例えばグルタルアルデヒド(GA)を用いた場合はホルミルブチリル鎖が、N−(4−マレイミドブチルオキシ)コハク酸イミド(GMBS)を用いた場合はマレイミドブチリル鎖が、無水コハク酸を用いた場合は、カルボキシプロピオニル鎖等が挙げられるが、公知のものはいずれも使用できる。
又、蛋白質や合成高分子としては、例えば、アルブミンやポリリジン等が挙げられるが、これらに限定されるものでなはい。固相担体としては、例えば、96穴等のマイクロタイタープレート、ポリスチレンビーズ、各種ラテックス粒子、ニトロセルロース膜等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、標識化N1,N12−2Ac−Spm又は標識化N1−Ac−Spmとしては、放射性同位元素を導入してN1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmそのものを標識したり、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmに、放射性元素の入った化合物、ユーロピウム等の遅延蛍光性のある元素を保持できる化合物、ルテニウム等の電気化学発光の触媒となる元素を保持できる化合物、蛍光物質等を結合させて標識したり、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmに、前記のようなスペーサーを介して酵素標識したり、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmをビオチンで標識し、免疫反応後にアビジンの酵素標識体と反応させ、ビオチン−アビジン複合体として間接的に検出できるようにしたもの等が挙げられる。
【0014】
本発明のモノクローナル抗体は、クローン化されたイムノグロブリン抗体であれば何であってもよく、抗体の由来する動物種、イムノグロブリンのタイプやサブタイプ、抗体の産生方法は問わない。また、抗体を断片化して免疫反応部位を残したもの、それら断片の修飾物、抗体そのものの修飾物、2種類の抗体を結合させたキメラ抗体等も包含する。本発明のモノクローナル抗体は、抗体産生株の組織培養法や、抗体のアミノ酸配列から予想されるDNAを用いて、遺伝子工学を用いる製造法等によって製造することができる。
【0015】
本発明のモノクローナル抗体を産生する抗体産生株は、公知の方法に準じた方法、即ち、マウス、ラット等の動物を免疫原で免疫し、次いで免疫した動物のB細胞とミエローマ細胞を融合し、得られたハイブリドーマの中から本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株を選択することにより得ることができる。
【0016】
免疫原には、ハプテン(N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spm)とキャリア物質(蛋白質又は合成高分子)の複合体が使用でき、これは、固相化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化N1−Ac−Spmの作成法で述べた方法と同様にして製造することができる。
本発明のモノクローナル抗体としては、例えばモノクローナル抗体0520,4914及び8624が挙げられ、これらはそれぞれACSPM−1(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16297)、ACSPM−2(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16298)及びACSPM−3(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16299)と名付けられた細胞株を培養することにより得ることができる。
【0017】
本発明の測定法は、ハプテンの免疫測定法として知らている方法のいずれの方法によっても行なうことができ、特に制限されない。例えば、結合阻害法の場合、例えば、実験例2のように、N1,N12−2Ac−Spmによる抗体と固相化ハプテンとの免疫反応の阻害を、固相化ハプテンに結合した抗体量の減少として、色々な手段で検出する方法、固相担体としてラテックスを用いる例としては、ハプテンを固相化したラテックス試薬の抗体による凝集反応をN1,N12−2Ac−Spmによる阻害として検出する方法、逆に、抗体を固相化したラテックス試薬を用い、多エピトープ化したポリハプテンの添加によるラテックス凝集反応を、N1,N12−2Ac−Spmによって阻害させる方法等がある。また、競合法の場合、固相化した抗体に対して、N1,N12−2Ac−Spmと標識化N1,N12−2Ac−Spm又は標識化N1−Ac−Spmとを競合反応させ、BF分離後に、固相化した抗体に結合した標識化N1,N12−2Ac−Spm又は標識化N1−Ac−Spmの標識を、それぞれの方法で適宜に検出すればよい。
【0018】
本発明の測定法を実施する測定条件は特に限定されないが、従来知られている免疫反応を利用した測定条件が使用できる。例えば、検体と試薬(固相化若しくは標識化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化若しくは標識化N1−Ac−Spm及び抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体)を混合して行なう免疫反応は通常0〜45℃、好ましくは10〜40℃で行なう。本発明の測定を実施するにあたり、抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体は必要により固相化又は標識化して使用する。
【0019】
本発明の測定法を実施するにあたり、固相化若しくは標識化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化若しくは標識化N1−Ac−Spmとしては、抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体を作成する際に用いた免疫原を作成する際に使用したスペーサーの種類、N1,N12−2Ac−Spm若しくはN1−Ac−Spmへの結合位置又は化学結合方法のひとつ以上を変えて作成したものが望ましい。
【0020】
なお、本発明において、固相化若しくは標識化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化若しくは標識化N1−Ac−Spmと抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体との免疫反応が50%阻害されるN1,N12−2Ac−Spmの濃度は、測定条件下で両者を反応させて得られるシグナルを半減させるN1,N12−2Ac−Spmの濃度を求めることにより得ることができ、これは、反応系の検出感度の尺度となり得る。
【0021】
本発明において、検体としては尿、血清、血漿等各種のものが使用できるが、特に尿が好ましい。
【実施例】
【0022】
以下に、実験例及び実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
実験例1 抗体のスクリーニング法
96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate II)の各ウェルに、抗原としてN1−アセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−HSA)15μg/mLを含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)100μLを入れ、40℃で20分間放置してコーティングした。次に、コーティング液を捨てて0.1%のツウィーン20を含む10mMリン酸で緩衝化された生食液(PBST)で洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸で緩衝化された生食液(pH7.3)200μLでブロッキング処理した。
ブロッキング液を捨ててPBSTで洗浄後、各ウェルにハイブリドーマの培養上清60μLと、BSA20mg/mLを含む10mMリン酸で緩衝化された生食液20μLを加え、4℃で一晩反応させた。ウェルを、PBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識−ヤギ抗マウスIgG溶液(カッペル社)50μLを加え、37℃、40分間反応させた。
結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各ウェルに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に9分間発色反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。
【0024】
実験例2 ELISA結合阻害法
[N1,N12−ジアセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA)の調製]
6.5mgのN1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)を含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLに、0.083Mグルタルアルデヒド溶液1mLを加えて攪拌し、30秒間放置した。さらに、10.5mgのヒト血清アルブミン(HSA)を含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLを加えて攪拌し、室温で30分間反応させた。さらに、この反応液に水素化ホウ素ナトリウム5mgを加えて室温下に10分間反応させた後、10mM酢酸ナトリウム溶液300mLで、4回液を交換しながら、3時間45分透析した。
[N1−アセチルスペルミジンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spd−GA−HSA)の調製]
3mgのN1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)を含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLに、0.021Mグルタルアルデヒド溶液1mLを加えて攪拌し、30秒間放置した。さらに、6mgのHSAを含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLを加えて攪拌し、室温で30分間反応させた。さらに、この反応液に水素化ホウ素ナトリウム2.5mgを加えて室温下に10分間反応させた後、10mM酢酸ナトリウム溶液300mLで、4回液を交換しながら、3時間透析した。
【0025】
[測定法]
96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate II)の各ウェルに、抗原としてN1−アセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−HSA)、N1−アセチルスペルミジンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spd−GA−HSA)、又は、N1,N12−ジアセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA)を15μg/mL含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)200μLを入れ、40℃で20分間放置してコーティングした。次に、コーティング液を捨ててPBSTで洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.3)200μLでブロッキング処理した。
ブロッキング液を捨ててPBSTで洗浄後、各ウェルに、ハイブリドーマ3株のそれぞれの培養上清をPBSTで100倍希釈した液50μLと、測定対象物のスペルミン(Spm)、N1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)、N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)等を、PBSTで各種濃度に希釈した液50μLを加え、37℃で1.5時間反応させた。ウェルを、PBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識−ヤギ抗マウスIgG溶液50μLを加え、37℃、40分間反応させた。
結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各ウェルに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に5分間発色反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。
【0026】
実施例1 N1,N12−ジアセチルスペルミンに対するモノクローナル抗体の作成[N1−アセチルスペルミンのBSA複合体(抗原)の調製]
50mgのS−アセチルメルカプトコハク酸無水物(AMS)を含むテトラヒドロフラン溶液1mLを、200mgのウシ血清アルブミン(BSA)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)5mLに加えて攪拌し、1N水酸化ナトリウム溶液でpHを7.0に保ちながら、室温下に1時間反応させた。この反応液を、5mMリン酸緩衝液(pH6.8)で膨潤化したセファデックスG−75のカラム(2cm×100cm)にかけ、5mMリン酸緩衝液(pH6.8)で溶出した。誘導体化されたBSA画分を集めて凍結乾燥し、AMS化されたBSA(AMS−BSA)180mgを得た。BSAへのSH基の導入数は17±0.5であった。
次に、10.4mgのN1−アセチルスペルミン・3塩酸塩を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)1mLに、1mgのN−(4−マレイミドブチルオキシ)コハク酸イミド(GMBS)を含むテトラヒドロフラン溶液0.5mLを加え、pHを7付近に保ちながら、室温で100分間反応させ、GMBS化N1−アセチルスペルミン溶液を調製した。
【0027】
一方、17.3mgのAMS−BSAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)0.2mLに、0.5Mヒドロキシルアミン溶液(pH7.0)50μLを加えて室温下に10分間放置後、さらに、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)2mLを加えた。この溶液と、先に調製したGMBS化N1−アセチルスペルミン溶液を混合してボルテックスミキサー攪拌後、10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したセファデックスG−100のカラム(2.2cm×43cm)にかけ、同緩衝液で溶出した。280nmにおける蛋白質吸収画分を集め、N1−アセチルスペルミンのBSA複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−BSA)を得た。
また、同様の方法で、ヒト血清アルブミン(HSA)に対応するN1−アセチルスペルミンのHSA複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−HSA)も調製した。
【0028】
[免疫]
雌性BALB/cマウスに、コンプリート・フロイント・アジュバントで乳化したN1−Ac−Spm−GMBS−BSA抗原100μgを腹腔内投与した。さらに、100μgのN1−Ac−Spm−GMBS−BSA抗原を10mMリン酸で緩衝化された生食液(PBS)で希釈したもので、2週間毎に、4回追加免疫を行った。
[細胞融合]
5回目の最終感作を行ってから4日後に、マウスの脾細胞を取り出し、これとミエローマ細胞P3/NS−1/1Ag4−1とを、40%ポリエチレングリコール1500(ベーリンガー社)存在下に、Shulmanらの方法に従って細胞融合した。次いで、融合細胞は、96穴培養プレート(コーニング社)を用いて、ウェル当たり105個の細胞密度で、HAT培地中で培養した。細胞融合後10〜20日目に、960ウェル中708ウェル(74%)に、細胞の増殖が認められた。
【0029】
[細胞の選択]
各ウェルの培養上清中の抗体価を、実験例1の「抗体のスクリーニング法」で検索し、免疫反応陽性の細胞3個を得た。これらを限界希釈法でクローン化し、継続的に抗体を産生する細胞、ACSPM−1、ACSPM−2、ACSPM−3の3株を樹立した。さらに、これら3株の抗原部位への反応性を確認するため、抗原作成時に副生する可能性のあるGMBA−HSA(AMS−HSAにスペーサーのGMBAを導入したもの)も調製し、実験例1の抗原N1−Ac−Spm−GMBS−HSAの代わりに、GMBA−HSA、AMS−HSA(HSAにSH基を導入したもの)やキャリア蛋白そのもののHSAをコーティングしたプレートも調製し、倍々希釈したACSPM−1株、ACSPM−2株、ACSPM−3株の培養上清との反応性を確認した。結果を、それぞれ図1〜図3に示した。いずれの培養上清も、N1−Ac−Spm−GMBS−HSAにのみ反応し、GMBA−HSA、AMS−HSAやHSAとは、全く反応しなかった。
[クローン細胞のサブタイプ]
各クローン細胞が産生する免疫グロブリンのサブタイプは、マウスモノクローナルSub−isotyping キット(Zymed社コードNo.97−6550)を用いて決定した。その結果、0520抗体(ACSPM−1株)と4914抗体(ACSPM−2株)はIgG1、8624抗体(ACSPM−3株)がIgG2bであった。
【0030】
実施例2 モノクローナル抗体の特異性
作成したモノクローナル抗体の特異性は、抗体の固相化抗原への結合を、測定対象物質がどの程度阻害するかを検出する系、「ELISA結合阻害法」で評価した。即ち、実験例2の方法に従い、3つの抗原、N1−Ac−Spm−GMBS−HSA、N1−Ac−Spd−GA−HSA、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSAを、それぞれ固相化したプレートを用いて、各濃度のポリアミン類が、抗体と固相化抗原との反応を、どの程度阻害するかを評価した。免疫原に相当するN1−Ac−Spm−GMBS−HSAを固相化した系では、検討したポリアミン類の何れによっても全く阻害されず、測定系としては不適切であった。一方、N1−Ac−Spd−GA−HSA、又は、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSAを固相化した系では、検討した各成分、Spm、N1−Ac−Spd、N1−Ac−Spm、N1,N12−2Ac−Spmによって、図4〜9に示した結合阻害曲線(検量線)が得られた。0520、4914、8624のいずれの抗体も、N1−Ac−SpmとN1,N12−2Ac−Spmに強く、N1−Ac−Spdと極めて弱く反応(阻害)し、Spmとは全く反応(阻害)しなかった。図から、これらの抗体を用いてポリアミン類を測定した場合の測定感度を50%結合阻害濃度(EC50値)として求め、結果を表1に示した。
【0031】
なお、図4はN1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性を、図5は、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性を、図6は、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性を、図7は、N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性を、図8は、N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性を、図9は、N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性を示したものである。
【0032】
0520、4914、8624のいずれの抗体も、N1−Ac−SpmとN1,N12−2Ac−Spmに特異的であった。平松ら(J.Biochem.,117,p107−112(1995))やG.A.van den Bergら(Clin.Chem.,32(10),p1930−1937(1986))によると、尿中のN1−Ac−Spm濃度は、N1,N12−2Ac−Spmより著しく低いことから、この測定法で、実質的に尿中のN1,N12−2Ac−Spm濃度を反映する測定値を得ることができる。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例3
96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate)の各wellに抗原としてN1,N12−2Ac−Spm−GA−HSAを16.1μg/mL含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)150μLを入れ、40℃で30分間放置してコーティングした。次にPBST300μLで洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.2)300μLでブロッキング処理した。PBSTで洗浄後、各wellにACSPM−1の培養上清をPBSTで25倍希釈した液50μLと、測定対象物のPut(プトレッシン)、Ac−Put、Orn(オルニチン)、Cad(カダベリン)、Spd、N1−Ac−Spd、N8−Ac−Spd、N1,N8−2Ac−Spd、Spm、N1−Ac−Spm、N1,N12−2Ac−SpmをPBSTで各種濃度に希釈した液50μLを加え、4℃で一晩反応させた。各ウェルをPBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG(H&L)−ビオチン(AMERICAN QUALEX社)100μLを加え、室温で1.5時間反応し、PBSTで洗浄後、PBSTで3000倍希釈したHRP−ストレプトアビジン(フナコシ社)100μLを加え、室温で30分反応させた。結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各wellに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に6分間反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。結果を図10に示した。図10から明らかなようにこの反応系によれば、N1,N12−2Ac−Spmに対する特異性が向上していることが判る。
【0035】
実施例4 最適化されたELISA結合阻害法でのモノクローナル抗体の特異性
実験例2の測定法を改良し、再度、抗体の特異性と測定感度を確認した。96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate II)の各ウェルに、抗原としてN1−アセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spm−GA−HSA)、又は、N1,N12−ジアセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA)15μg/mLを含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)150μLを入れ、40℃で30分間放置してコーティングした。次に、コーティング液を捨ててPBSTで洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸で緩衝液(pH7.4)300μL加え、37℃で1時間ブロッキング処理した。
【0036】
ブロッキング液を捨ててPBSTで洗浄後、各ウェルに、ハイブリドーマ3株のそれぞれの培養上清液を表2に示した倍率(200〜20,000倍)にPBSTで希釈した液25μLと、測定対象物のスペルミン(Spm)、N1,N8−ジアセチルスペルミジン(N1,N8−2Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)、N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)をPBSTで各濃度に希釈した液75μLを加え、室温下に3時間反応させた。ウェルをPBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈したビオチン標識ヤギ抗マウスIgG抗体溶液50μLを加え、室温下に1時間反応させた。ウェルを再びPBSTで洗浄後、PBSTで3000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液50μLを加え、室温下に30分間反応させた。
【0037】
結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各ウェルに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に5分間発色反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。
結果を表2にまとめた。測定系を改良し、抗体の希釈倍率を上げることにより、N1,N12−Ac−Spm−GA−HSAを固相化した系の測定感度と特異性は、大幅に向上した。即ち、N1,N12−Ac−Spmの測定感度は、0520抗体が8倍、4914抗体が22倍、8624抗体が70倍に向上し、50%結合阻害濃度で比較した感度は、0.06〜0.2μMになった。また、特異性をN1,N12−Ac−Spmによる50%結合阻害活性とN1−Ac−Spdによる50%結合阻害活性との比として表現した場合、0520抗体が48倍、4914抗体が117倍、8624抗体が45倍となり、何れも改良前より向上した。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例5 4914モノクローナル抗体の特異性
実施例4で最も測定感度と特異性の高かった4914モノクローナル抗体を用い、実施例3の方法でプトレッシン(Put)、アセチルプトレッシン(Ac−Put)、L−オルニチン(Orn)、カダベリン(Cad)、スペルミジン(Spd)、N8−アセチルスペルミジン(N8−Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、N1,N8−ジアセチルスペルミジン(N1,N8−2Ac−Spd)、スペルミン(Spm)、N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)やN1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)の希釈系列を測定し、4914モノクローナル抗体の特異性検討した。図11のように、この測定系は、N1,N12−2Ac−Spmに特異的で、N1−Ac−SpmとはN1,N12−2Ac−Spmの24%、N1−Ac−Spdとは0.85%、N1,N8−2Ac−Spdとは0.6%、Spmとは0.1%、その他のポリアミン類とはほとんど反応しなかった。
【0040】
実施例6 健常者の尿中N1,N12−2Ac−Spmの測定
実施例5の方法で、健常者の尿検体16例(男性8例、女性8例)の希釈系列を測定し、尿中のN1,N12−2Ac−Spm濃度を求めた。測定例の一部を図12に示した。男子及び女子8例ずつの平均値±SDは、それぞれ0.34±0.16、0.39±0.14μM/g−クレアチニンで、全体の平均値は0.36μM/g−クレアチニンであった。平松らの報告(J.Biochem.,117,p107−112(1995))によると、尿中におけるN1,N12−2Ac−Spm:N1−Ac−Spm:N1−Ac−Spd:N1,N8−2Ac−Spdの存在比は、3.2%:1.0%:86.2%:9.6%であることが報告されている。この測定系の特異性からすれば、N1,N12−2Ac−Spm以外のポリアミン成分の影響は軽微と考えられ、尿中のN1,N12−2Ac−Spmは、ほぼ正確に測定されているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ACSPM−1株培養上清液の免疫原への特異性
【図2】ACSPM−2株培養上清液の免疫原への特異性
【図3】ACSPM−3株培養上清液の免疫原への特異性
【図4】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性
【図5】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性
【図6】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性
【図7】N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性
【図8】N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性
【図9】N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性
【図10】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性
【図11】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性
【図12】N1,N12−2Ac−Spmの検量線及び尿検体中のN1,N12−2Ac−Spmの濃度
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体、抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体産生細胞株および該抗体を用いるN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミンは、プトレッシン(Put)、カダベリン(Cad)、スペルミジン(Spd)、スペルミン(Spm)及びそれら誘導体等の総称で、生体内に広く分布する生理活性物質である。癌細胞を含む増殖の盛んな細胞でかなりの量が合成され、これらの細胞に局在し、細胞の増殖を促進する因子として作用することから注目されている(Annu.Rev.Biochem.,53,p749−790(1984))。
【0003】
1971年、Russell等は、癌患者の尿中にポリアミンが増加することを見出し(Cancer Res.,31,p1555(1971))、尿中ポリアミンは、現在、腫瘍マーカーとして用いられている。しかしながら、これまでの「ポリアミン全体」を測定することの意義に対して、限界も見えてきた(Prog.Drug Res.,39,p9−33(1992))。
【0004】
ポリアミンは、そのまま遊離型として存在する他、アセチル化されたり、結合型としても存在している。Abdel−Monem等は、尿中に排泄されるポリアミンは、主としてモノアセチル体のN1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、アセチルプトレッシン(Ac−Put)、N8−アセチルスペルミジン(N8−Ac−Spd)として存在しており、これら成分の増加や成分比の変動がさらによい腫瘍マーカーとなることを報告している(J.Pharm.Sci.,67,p1671−1673(1978),Cancer Res.,42,p2097−2098(1982))が、これには異論もある(J.Biochem.,118,p1211−1215(1995))。
【0005】
最近、平松等は、尿中にポリアミンのジアセチル体のN1,N8−ジアセチルスペルミジン(N1,N8−2Ac−Spd)、N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)が存在することを見出し(J.Biochem.,117,p107−112(1995))、これらが、泌尿器系の腫瘍で著しく増加し、従来のポリアミンやポリアミンのモノアセチル体の変動を凌いでいたことから、新しい腫瘍マーカーとして期待されている(J.Cancer Res.Clin.Oncol.,121,p317−319(1995))。
【0006】
従来、これらジアセチル体のN1,N8−2Ac−Spd、N1,N12−2Ac−Spmの測定は、キャピラリー・ガスクロマトグラフィ法(Clin.Chem.,32,p1930−1937(1986))や液体クロマトグラフィ法(J.Biochem.,117,p107−112(1995))で行われてきた。
【非特許文献1】生化学 1996年第68巻第7号第1211頁 4−P−1075
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ジアセチル体のN1,N12−2Ac−Spmを測定するキャピラリー・ガスクロマトグラフィ法や液体クロマトグラフィ法では、煩雑な検体の前処理操作や、装置のメンテナンス技術を必要とするなど、かなりの熟練が要求される。また、煩雑さのため、測定には時間がかかり、臨床的な測定法としては、とても受け入れられるものではない。
そこで、臨床的に使用し得る簡便な測定法の開発を目指し、抗体を用いる免疫的な測定法が検討された。藤原等は、Spmのアルブミン複合体を免疫してN1,N12−2Ac−Spmに反応するモノクローナル抗体を作成したが、モノアセチル体のN1−Ac−SpdとN1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)とも強く反応し、結果的には、これら3成分の中で最も尿中での存在量の多い、N1−Ac−Spdを反映する測定法しかできなかった(J.Biochem.,118,p1211−1215(1995))。従って、N1,N12−2Ac−Spmを測定できる免疫測定法は、今だに完成していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記したような問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、N1−Ac−Spmのアルブミン複合体で免疫し、実質的に尿中N1,N12−2Ac−Spmの測定に使用し得るモノクローナル抗体を作成し、その抗体を用いる測定法を見いだして本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)と抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体の免疫反応を利用した検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定系を組んだ場合に、N1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の阻害活性がN1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)による該免疫反応の阻害活性の20倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40倍以上となる測定条件を選択することが可能になる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体、
(2)固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンとの免疫反応が50%阻害されるN1,N12−ジアセチルスペルミンの濃度が20μM以下、好ましくは15μM以下、より好ましくは1μM以下となる測定条件を選択することが可能になる上記(1)記載のモノクローナル抗体、
(3)検体が尿検体である上記(1)又は(2)記載のモノクローナル抗体、
(4)モノクローナル抗体0520,4914又は8624、
(5)上記(1)、(2)、(3)又は(4)記載のモノクローナル抗体を産生する細胞株、
(6)固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンと抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体の免疫反応を利用して検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンを測定する際に、その測定条件におけるN1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の阻害活性がN1−アセチルスペルミジンによる該免疫反応の阻害活性の20倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40倍以上となる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体を用いることを特徴とするN1,N12−ジアセチルスペルミンの測定法、
(7)抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体が、測定条件において固相化若しくは標識化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化若しくは標識化N1−アセチルスペルミンとの免疫反応が50%阻害するN1,N12−ジアセチルスペルミンの濃度が20μM以下、好ましくは15μM以下、より好ましくは1μM以下となる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体である上記(6)記載の測定法、
(8)抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体がモノクローナル抗体0520,4914又は8624である上記(7)記載の測定法、
(9)検体が尿検体である上記(6)、(7)又は(8)記載の測定法、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のN1,N12−ジアセチルスペルミンと反応するモノクローナル抗体は、尿等の検体中のN1,N12−ジアセチルスペルミンを測定することができ、癌の診断に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
固相化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化N1−Ac−Spmとしては、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmを、スペーサーを介して、不溶性物質の表面上に繋ぎ止めたものが挙げられる。
スペーサーの結合位置は、N1,N12−2Ac−Spmの場合はその末端であってもその両末端の間のいずれの位置であってもよいが、N1−Ac−Spmの場合はその末端アミノ基に結合させるのが望ましい。スペーサーの種類と導入方法については多くの方法が知られているが、これらのいずれであっても良い。例えば、N1,N12−2Ac−Spmのいずれかの位置に、末端に反応基を有するスペーサーを導入し(N1,N12−2Ac−Spmのアセチル基からスペーサーを誘導する場合は、N1−Ac−SpmのN12−アミノ基に導入したアシル基がスペーサーとなる)、この反応基を介して蛋白質や合成高分子などに結合し、生成したN1,N12−2Ac−Spmと蛋白質や合成高分子の複合体を、免疫反応の場となる固相担体上に吸着させる方法、予め化学的に活性化されたスペーサーを持つ固相担体上に、N1,N12−2Ac−Spmそのもの、もしくは、N1−Ac−Spmの末端アミノ基を反応させる方法などがあるが、これらに限定されるものではない。N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmのいずれの位置に、どのようなスペーサーを導入するかは、用いる抗体の性質によって適宜選択すればよい。
【0012】
スペーサーとしては、例えばグルタルアルデヒド(GA)を用いた場合はホルミルブチリル鎖が、N−(4−マレイミドブチルオキシ)コハク酸イミド(GMBS)を用いた場合はマレイミドブチリル鎖が、無水コハク酸を用いた場合は、カルボキシプロピオニル鎖等が挙げられるが、公知のものはいずれも使用できる。
又、蛋白質や合成高分子としては、例えば、アルブミンやポリリジン等が挙げられるが、これらに限定されるものでなはい。固相担体としては、例えば、96穴等のマイクロタイタープレート、ポリスチレンビーズ、各種ラテックス粒子、ニトロセルロース膜等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、標識化N1,N12−2Ac−Spm又は標識化N1−Ac−Spmとしては、放射性同位元素を導入してN1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmそのものを標識したり、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmに、放射性元素の入った化合物、ユーロピウム等の遅延蛍光性のある元素を保持できる化合物、ルテニウム等の電気化学発光の触媒となる元素を保持できる化合物、蛍光物質等を結合させて標識したり、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmに、前記のようなスペーサーを介して酵素標識したり、N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spmをビオチンで標識し、免疫反応後にアビジンの酵素標識体と反応させ、ビオチン−アビジン複合体として間接的に検出できるようにしたもの等が挙げられる。
【0014】
本発明のモノクローナル抗体は、クローン化されたイムノグロブリン抗体であれば何であってもよく、抗体の由来する動物種、イムノグロブリンのタイプやサブタイプ、抗体の産生方法は問わない。また、抗体を断片化して免疫反応部位を残したもの、それら断片の修飾物、抗体そのものの修飾物、2種類の抗体を結合させたキメラ抗体等も包含する。本発明のモノクローナル抗体は、抗体産生株の組織培養法や、抗体のアミノ酸配列から予想されるDNAを用いて、遺伝子工学を用いる製造法等によって製造することができる。
【0015】
本発明のモノクローナル抗体を産生する抗体産生株は、公知の方法に準じた方法、即ち、マウス、ラット等の動物を免疫原で免疫し、次いで免疫した動物のB細胞とミエローマ細胞を融合し、得られたハイブリドーマの中から本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株を選択することにより得ることができる。
【0016】
免疫原には、ハプテン(N1,N12−2Ac−Spm又はN1−Ac−Spm)とキャリア物質(蛋白質又は合成高分子)の複合体が使用でき、これは、固相化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化N1−Ac−Spmの作成法で述べた方法と同様にして製造することができる。
本発明のモノクローナル抗体としては、例えばモノクローナル抗体0520,4914及び8624が挙げられ、これらはそれぞれACSPM−1(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16297)、ACSPM−2(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16298)及びACSPM−3(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16299)と名付けられた細胞株を培養することにより得ることができる。
【0017】
本発明の測定法は、ハプテンの免疫測定法として知らている方法のいずれの方法によっても行なうことができ、特に制限されない。例えば、結合阻害法の場合、例えば、実験例2のように、N1,N12−2Ac−Spmによる抗体と固相化ハプテンとの免疫反応の阻害を、固相化ハプテンに結合した抗体量の減少として、色々な手段で検出する方法、固相担体としてラテックスを用いる例としては、ハプテンを固相化したラテックス試薬の抗体による凝集反応をN1,N12−2Ac−Spmによる阻害として検出する方法、逆に、抗体を固相化したラテックス試薬を用い、多エピトープ化したポリハプテンの添加によるラテックス凝集反応を、N1,N12−2Ac−Spmによって阻害させる方法等がある。また、競合法の場合、固相化した抗体に対して、N1,N12−2Ac−Spmと標識化N1,N12−2Ac−Spm又は標識化N1−Ac−Spmとを競合反応させ、BF分離後に、固相化した抗体に結合した標識化N1,N12−2Ac−Spm又は標識化N1−Ac−Spmの標識を、それぞれの方法で適宜に検出すればよい。
【0018】
本発明の測定法を実施する測定条件は特に限定されないが、従来知られている免疫反応を利用した測定条件が使用できる。例えば、検体と試薬(固相化若しくは標識化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化若しくは標識化N1−Ac−Spm及び抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体)を混合して行なう免疫反応は通常0〜45℃、好ましくは10〜40℃で行なう。本発明の測定を実施するにあたり、抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体は必要により固相化又は標識化して使用する。
【0019】
本発明の測定法を実施するにあたり、固相化若しくは標識化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化若しくは標識化N1−Ac−Spmとしては、抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体を作成する際に用いた免疫原を作成する際に使用したスペーサーの種類、N1,N12−2Ac−Spm若しくはN1−Ac−Spmへの結合位置又は化学結合方法のひとつ以上を変えて作成したものが望ましい。
【0020】
なお、本発明において、固相化若しくは標識化N1,N12−2Ac−Spm又は固相化若しくは標識化N1−Ac−Spmと抗N1,N12−2Ac−Spmモノクローナル抗体との免疫反応が50%阻害されるN1,N12−2Ac−Spmの濃度は、測定条件下で両者を反応させて得られるシグナルを半減させるN1,N12−2Ac−Spmの濃度を求めることにより得ることができ、これは、反応系の検出感度の尺度となり得る。
【0021】
本発明において、検体としては尿、血清、血漿等各種のものが使用できるが、特に尿が好ましい。
【実施例】
【0022】
以下に、実験例及び実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
実験例1 抗体のスクリーニング法
96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate II)の各ウェルに、抗原としてN1−アセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−HSA)15μg/mLを含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)100μLを入れ、40℃で20分間放置してコーティングした。次に、コーティング液を捨てて0.1%のツウィーン20を含む10mMリン酸で緩衝化された生食液(PBST)で洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸で緩衝化された生食液(pH7.3)200μLでブロッキング処理した。
ブロッキング液を捨ててPBSTで洗浄後、各ウェルにハイブリドーマの培養上清60μLと、BSA20mg/mLを含む10mMリン酸で緩衝化された生食液20μLを加え、4℃で一晩反応させた。ウェルを、PBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識−ヤギ抗マウスIgG溶液(カッペル社)50μLを加え、37℃、40分間反応させた。
結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各ウェルに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に9分間発色反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。
【0024】
実験例2 ELISA結合阻害法
[N1,N12−ジアセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA)の調製]
6.5mgのN1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)を含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLに、0.083Mグルタルアルデヒド溶液1mLを加えて攪拌し、30秒間放置した。さらに、10.5mgのヒト血清アルブミン(HSA)を含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLを加えて攪拌し、室温で30分間反応させた。さらに、この反応液に水素化ホウ素ナトリウム5mgを加えて室温下に10分間反応させた後、10mM酢酸ナトリウム溶液300mLで、4回液を交換しながら、3時間45分透析した。
[N1−アセチルスペルミジンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spd−GA−HSA)の調製]
3mgのN1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)を含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLに、0.021Mグルタルアルデヒド溶液1mLを加えて攪拌し、30秒間放置した。さらに、6mgのHSAを含む1M酢酸ナトリウム溶液0.5mLを加えて攪拌し、室温で30分間反応させた。さらに、この反応液に水素化ホウ素ナトリウム2.5mgを加えて室温下に10分間反応させた後、10mM酢酸ナトリウム溶液300mLで、4回液を交換しながら、3時間透析した。
【0025】
[測定法]
96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate II)の各ウェルに、抗原としてN1−アセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−HSA)、N1−アセチルスペルミジンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spd−GA−HSA)、又は、N1,N12−ジアセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA)を15μg/mL含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)200μLを入れ、40℃で20分間放置してコーティングした。次に、コーティング液を捨ててPBSTで洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.3)200μLでブロッキング処理した。
ブロッキング液を捨ててPBSTで洗浄後、各ウェルに、ハイブリドーマ3株のそれぞれの培養上清をPBSTで100倍希釈した液50μLと、測定対象物のスペルミン(Spm)、N1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)、N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)等を、PBSTで各種濃度に希釈した液50μLを加え、37℃で1.5時間反応させた。ウェルを、PBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識−ヤギ抗マウスIgG溶液50μLを加え、37℃、40分間反応させた。
結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各ウェルに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に5分間発色反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。
【0026】
実施例1 N1,N12−ジアセチルスペルミンに対するモノクローナル抗体の作成[N1−アセチルスペルミンのBSA複合体(抗原)の調製]
50mgのS−アセチルメルカプトコハク酸無水物(AMS)を含むテトラヒドロフラン溶液1mLを、200mgのウシ血清アルブミン(BSA)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)5mLに加えて攪拌し、1N水酸化ナトリウム溶液でpHを7.0に保ちながら、室温下に1時間反応させた。この反応液を、5mMリン酸緩衝液(pH6.8)で膨潤化したセファデックスG−75のカラム(2cm×100cm)にかけ、5mMリン酸緩衝液(pH6.8)で溶出した。誘導体化されたBSA画分を集めて凍結乾燥し、AMS化されたBSA(AMS−BSA)180mgを得た。BSAへのSH基の導入数は17±0.5であった。
次に、10.4mgのN1−アセチルスペルミン・3塩酸塩を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)1mLに、1mgのN−(4−マレイミドブチルオキシ)コハク酸イミド(GMBS)を含むテトラヒドロフラン溶液0.5mLを加え、pHを7付近に保ちながら、室温で100分間反応させ、GMBS化N1−アセチルスペルミン溶液を調製した。
【0027】
一方、17.3mgのAMS−BSAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)0.2mLに、0.5Mヒドロキシルアミン溶液(pH7.0)50μLを加えて室温下に10分間放置後、さらに、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)2mLを加えた。この溶液と、先に調製したGMBS化N1−アセチルスペルミン溶液を混合してボルテックスミキサー攪拌後、10mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したセファデックスG−100のカラム(2.2cm×43cm)にかけ、同緩衝液で溶出した。280nmにおける蛋白質吸収画分を集め、N1−アセチルスペルミンのBSA複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−BSA)を得た。
また、同様の方法で、ヒト血清アルブミン(HSA)に対応するN1−アセチルスペルミンのHSA複合体(N1−Ac−Spm−GMBS−HSA)も調製した。
【0028】
[免疫]
雌性BALB/cマウスに、コンプリート・フロイント・アジュバントで乳化したN1−Ac−Spm−GMBS−BSA抗原100μgを腹腔内投与した。さらに、100μgのN1−Ac−Spm−GMBS−BSA抗原を10mMリン酸で緩衝化された生食液(PBS)で希釈したもので、2週間毎に、4回追加免疫を行った。
[細胞融合]
5回目の最終感作を行ってから4日後に、マウスの脾細胞を取り出し、これとミエローマ細胞P3/NS−1/1Ag4−1とを、40%ポリエチレングリコール1500(ベーリンガー社)存在下に、Shulmanらの方法に従って細胞融合した。次いで、融合細胞は、96穴培養プレート(コーニング社)を用いて、ウェル当たり105個の細胞密度で、HAT培地中で培養した。細胞融合後10〜20日目に、960ウェル中708ウェル(74%)に、細胞の増殖が認められた。
【0029】
[細胞の選択]
各ウェルの培養上清中の抗体価を、実験例1の「抗体のスクリーニング法」で検索し、免疫反応陽性の細胞3個を得た。これらを限界希釈法でクローン化し、継続的に抗体を産生する細胞、ACSPM−1、ACSPM−2、ACSPM−3の3株を樹立した。さらに、これら3株の抗原部位への反応性を確認するため、抗原作成時に副生する可能性のあるGMBA−HSA(AMS−HSAにスペーサーのGMBAを導入したもの)も調製し、実験例1の抗原N1−Ac−Spm−GMBS−HSAの代わりに、GMBA−HSA、AMS−HSA(HSAにSH基を導入したもの)やキャリア蛋白そのもののHSAをコーティングしたプレートも調製し、倍々希釈したACSPM−1株、ACSPM−2株、ACSPM−3株の培養上清との反応性を確認した。結果を、それぞれ図1〜図3に示した。いずれの培養上清も、N1−Ac−Spm−GMBS−HSAにのみ反応し、GMBA−HSA、AMS−HSAやHSAとは、全く反応しなかった。
[クローン細胞のサブタイプ]
各クローン細胞が産生する免疫グロブリンのサブタイプは、マウスモノクローナルSub−isotyping キット(Zymed社コードNo.97−6550)を用いて決定した。その結果、0520抗体(ACSPM−1株)と4914抗体(ACSPM−2株)はIgG1、8624抗体(ACSPM−3株)がIgG2bであった。
【0030】
実施例2 モノクローナル抗体の特異性
作成したモノクローナル抗体の特異性は、抗体の固相化抗原への結合を、測定対象物質がどの程度阻害するかを検出する系、「ELISA結合阻害法」で評価した。即ち、実験例2の方法に従い、3つの抗原、N1−Ac−Spm−GMBS−HSA、N1−Ac−Spd−GA−HSA、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSAを、それぞれ固相化したプレートを用いて、各濃度のポリアミン類が、抗体と固相化抗原との反応を、どの程度阻害するかを評価した。免疫原に相当するN1−Ac−Spm−GMBS−HSAを固相化した系では、検討したポリアミン類の何れによっても全く阻害されず、測定系としては不適切であった。一方、N1−Ac−Spd−GA−HSA、又は、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSAを固相化した系では、検討した各成分、Spm、N1−Ac−Spd、N1−Ac−Spm、N1,N12−2Ac−Spmによって、図4〜9に示した結合阻害曲線(検量線)が得られた。0520、4914、8624のいずれの抗体も、N1−Ac−SpmとN1,N12−2Ac−Spmに強く、N1−Ac−Spdと極めて弱く反応(阻害)し、Spmとは全く反応(阻害)しなかった。図から、これらの抗体を用いてポリアミン類を測定した場合の測定感度を50%結合阻害濃度(EC50値)として求め、結果を表1に示した。
【0031】
なお、図4はN1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性を、図5は、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性を、図6は、N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性を、図7は、N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性を、図8は、N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性を、図9は、N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性を示したものである。
【0032】
0520、4914、8624のいずれの抗体も、N1−Ac−SpmとN1,N12−2Ac−Spmに特異的であった。平松ら(J.Biochem.,117,p107−112(1995))やG.A.van den Bergら(Clin.Chem.,32(10),p1930−1937(1986))によると、尿中のN1−Ac−Spm濃度は、N1,N12−2Ac−Spmより著しく低いことから、この測定法で、実質的に尿中のN1,N12−2Ac−Spm濃度を反映する測定値を得ることができる。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例3
96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate)の各wellに抗原としてN1,N12−2Ac−Spm−GA−HSAを16.1μg/mL含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)150μLを入れ、40℃で30分間放置してコーティングした。次にPBST300μLで洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸緩衝液(pH7.2)300μLでブロッキング処理した。PBSTで洗浄後、各wellにACSPM−1の培養上清をPBSTで25倍希釈した液50μLと、測定対象物のPut(プトレッシン)、Ac−Put、Orn(オルニチン)、Cad(カダベリン)、Spd、N1−Ac−Spd、N8−Ac−Spd、N1,N8−2Ac−Spd、Spm、N1−Ac−Spm、N1,N12−2Ac−SpmをPBSTで各種濃度に希釈した液50μLを加え、4℃で一晩反応させた。各ウェルをPBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG(H&L)−ビオチン(AMERICAN QUALEX社)100μLを加え、室温で1.5時間反応し、PBSTで洗浄後、PBSTで3000倍希釈したHRP−ストレプトアビジン(フナコシ社)100μLを加え、室温で30分反応させた。結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各wellに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に6分間反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。結果を図10に示した。図10から明らかなようにこの反応系によれば、N1,N12−2Ac−Spmに対する特異性が向上していることが判る。
【0035】
実施例4 最適化されたELISA結合阻害法でのモノクローナル抗体の特異性
実験例2の測定法を改良し、再度、抗体の特異性と測定感度を確認した。96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製 Nunc Immunoplate II)の各ウェルに、抗原としてN1−アセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1−Ac−Spm−GA−HSA)、又は、N1,N12−ジアセチルスペルミンのヒト血清アルブミン複合体(N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA)15μg/mLを含む10mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)150μLを入れ、40℃で30分間放置してコーティングした。次に、コーティング液を捨ててPBSTで洗浄後、スキムミルク1%を含む50mMトリス・塩酸で緩衝液(pH7.4)300μL加え、37℃で1時間ブロッキング処理した。
【0036】
ブロッキング液を捨ててPBSTで洗浄後、各ウェルに、ハイブリドーマ3株のそれぞれの培養上清液を表2に示した倍率(200〜20,000倍)にPBSTで希釈した液25μLと、測定対象物のスペルミン(Spm)、N1,N8−ジアセチルスペルミジン(N1,N8−2Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)、N1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)をPBSTで各濃度に希釈した液75μLを加え、室温下に3時間反応させた。ウェルをPBSTで洗浄後、PBSTで2000倍に希釈したビオチン標識ヤギ抗マウスIgG抗体溶液50μLを加え、室温下に1時間反応させた。ウェルを再びPBSTで洗浄後、PBSTで3000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液50μLを加え、室温下に30分間反応させた。
【0037】
結合した酵素の活性は、PBSTで洗浄した各ウェルに、o−フェニレンジアミン0.5mg/mLと過酸化水素0.012%を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.3)100μLを加え、室温下に5分間発色反応させ、ELISAプレートリーダー(SLT−Lab Instruments社)を用い、492nmにおける吸光度の増加として測定した。
結果を表2にまとめた。測定系を改良し、抗体の希釈倍率を上げることにより、N1,N12−Ac−Spm−GA−HSAを固相化した系の測定感度と特異性は、大幅に向上した。即ち、N1,N12−Ac−Spmの測定感度は、0520抗体が8倍、4914抗体が22倍、8624抗体が70倍に向上し、50%結合阻害濃度で比較した感度は、0.06〜0.2μMになった。また、特異性をN1,N12−Ac−Spmによる50%結合阻害活性とN1−Ac−Spdによる50%結合阻害活性との比として表現した場合、0520抗体が48倍、4914抗体が117倍、8624抗体が45倍となり、何れも改良前より向上した。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例5 4914モノクローナル抗体の特異性
実施例4で最も測定感度と特異性の高かった4914モノクローナル抗体を用い、実施例3の方法でプトレッシン(Put)、アセチルプトレッシン(Ac−Put)、L−オルニチン(Orn)、カダベリン(Cad)、スペルミジン(Spd)、N8−アセチルスペルミジン(N8−Ac−Spd)、N1−アセチルスペルミジン(N1−Ac−Spd)、N1,N8−ジアセチルスペルミジン(N1,N8−2Ac−Spd)、スペルミン(Spm)、N1−アセチルスペルミン(N1−Ac−Spm)やN1,N12−ジアセチルスペルミン(N1,N12−2Ac−Spm)の希釈系列を測定し、4914モノクローナル抗体の特異性検討した。図11のように、この測定系は、N1,N12−2Ac−Spmに特異的で、N1−Ac−SpmとはN1,N12−2Ac−Spmの24%、N1−Ac−Spdとは0.85%、N1,N8−2Ac−Spdとは0.6%、Spmとは0.1%、その他のポリアミン類とはほとんど反応しなかった。
【0040】
実施例6 健常者の尿中N1,N12−2Ac−Spmの測定
実施例5の方法で、健常者の尿検体16例(男性8例、女性8例)の希釈系列を測定し、尿中のN1,N12−2Ac−Spm濃度を求めた。測定例の一部を図12に示した。男子及び女子8例ずつの平均値±SDは、それぞれ0.34±0.16、0.39±0.14μM/g−クレアチニンで、全体の平均値は0.36μM/g−クレアチニンであった。平松らの報告(J.Biochem.,117,p107−112(1995))によると、尿中におけるN1,N12−2Ac−Spm:N1−Ac−Spm:N1−Ac−Spd:N1,N8−2Ac−Spdの存在比は、3.2%:1.0%:86.2%:9.6%であることが報告されている。この測定系の特異性からすれば、N1,N12−2Ac−Spm以外のポリアミン成分の影響は軽微と考えられ、尿中のN1,N12−2Ac−Spmは、ほぼ正確に測定されているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ACSPM−1株培養上清液の免疫原への特異性
【図2】ACSPM−2株培養上清液の免疫原への特異性
【図3】ACSPM−3株培養上清液の免疫原への特異性
【図4】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性
【図5】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性
【図6】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性
【図7】N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性
【図8】N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性
【図9】N1−Ac−Spd−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での8624抗体の特異性
【図10】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での0520抗体の特異性
【図11】N1,N12−2Ac−Spm−GA−HSA固相化ELISA結合阻害法での4914抗体の特異性
【図12】N1,N12−2Ac−Spmの検量線及び尿検体中のN1,N12−2Ac−Spmの濃度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化N1−アセチルスペルミンと抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体との免疫反応において、N1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の50%阻害活性がN1−アセチルスペルミジンによる該免疫反応の50%阻害活性の少なくとも20倍となる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクロナール抗体。
【請求項2】
固相化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化N1−アセチルスペルミンと抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体との免疫反応において、該免疫反応を50%阻害するN1,N12−ジアセチルスペルミンの濃度が20μM以下である請求項1記載の抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体が、細胞株ACSPM−1(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16297)を培養して得られるモノクローナル抗体0520、細胞株ACSPM−2(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16298)を培養して得られるモノクローナル抗体4914、又は、細胞株ACSPM−3(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16299)を培養して得られるモノクローナル抗体8624である請求項1又は2に記載の抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体を産生する細胞株。
【請求項5】
動物(但し、ヒトを除く)をN1,N12−ジアセチルスペルミン又はN1−アセチルスペルミンと、キャリア物質の複合体で免疫し、次いで免疫した動物のB細胞とミエローマ細胞を融合し、得られたハイブリドーマから選別された細胞株を培養して得ることを特徴とする抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクロナール抗体の製造法。
【請求項1】
固相化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化N1−アセチルスペルミンと抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体との免疫反応において、N1,N12−ジアセチルスペルミンによる該免疫反応の50%阻害活性がN1−アセチルスペルミジンによる該免疫反応の50%阻害活性の少なくとも20倍となる抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクロナール抗体。
【請求項2】
固相化N1,N12−ジアセチルスペルミン又は固相化N1−アセチルスペルミンと抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体との免疫反応において、該免疫反応を50%阻害するN1,N12−ジアセチルスペルミンの濃度が20μM以下である請求項1記載の抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体が、細胞株ACSPM−1(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16297)を培養して得られるモノクローナル抗体0520、細胞株ACSPM−2(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16298)を培養して得られるモノクローナル抗体4914、又は、細胞株ACSPM−3(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号、FERM P−16299)を培養して得られるモノクローナル抗体8624である請求項1又は2に記載の抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクローナル抗体を産生する細胞株。
【請求項5】
動物(但し、ヒトを除く)をN1,N12−ジアセチルスペルミン又はN1−アセチルスペルミンと、キャリア物質の複合体で免疫し、次いで免疫した動物のB細胞とミエローマ細胞を融合し、得られたハイブリドーマから選別された細胞株を培養して得ることを特徴とする抗N1,N12−ジアセチルスペルミンモノクロナール抗体の製造法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−50362(P2008−50362A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246794(P2007−246794)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【分割の表示】特願平10−174361の分割
【原出願日】平成10年6月22日(1998.6.22)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【分割の表示】特願平10−174361の分割
【原出願日】平成10年6月22日(1998.6.22)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】
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