説明

モノテルペン及び/又はセスキテルペンを蓄積する形質転換植物

本発明は、導入遺伝子を発現する植物及び遺伝子の付加的なコピーを含んでなるように形質転換された植物に関するものであり、前記の遺伝子は、少なくともHMGR−CoA還元酵素及びテルペンシンターゼをコードする。本発明はさらに植物を製造する方法、及びテルペンを生産する方法の保護を請求する。故に本発明は、興味のあるいずれかのテルペン、特にいずれかのモノテルペン及び/又はセスキテルペンを生産するための信頼できかつ費用対効果が大きい基盤を提供する。例えば、当業者は、本発明の植物中でそれぞれのセスキテルペンを蓄積するためにセスキテルペンシンターゼをコードするいずれかの遺伝子を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、形質転換植物に関する。特に、モノテルペン及び/又はセスキテルペンを蓄積する形質転換植物。前記植物は形質転換されて、HMG−CoA還元酵素(HMGR)及びテルペンシンターゼ(TS)、及び、場合により、プレニルトランスフェラーゼ(PRT)をコードする付加的な遺伝子を、過剰発現するか又は含んでなる。本発明はさらに、前記植物を製造する方法、植物中の特定のテルペンの含量を改変する方法、テルペンを生産する方法及び形質転換植物を生産するための前記の遺伝子の使用に関する。
【0002】
発明の背景及び解決すべき課題
テルペン及びテルペノイドは、たいていの生物中に見出される。それらの常に増大している重要な商業的価値は、異なるテルペンにより包含される生理活性(bioactivities)及び官能性の多岐にわたる範囲に結び付いている。それに応じて、多くのビタミン、ホルモン、昆虫忌避剤、医薬、フレーバー及びフレグランスは、この極めて多くの部類の化合物の中で見出されており、これら全てが、イソプレン単位と呼ばれる5個の炭素の単位から出発して製造される。
【0003】
テルペンは、それらの構造中に存在しているイソプレン単位の数により分類されることができる:モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40)及びポリテルペン(Cn、n≧45)。植物界は、多数の異なる構造を表すモノテルペン及びセスキテルペンの高い多様性を有する。
【0004】
高級テルペン、例えばセスキテルペンの化学合成は極めて複雑であり、かつ環境的に受け入れることができるそれらの製造方法はまだ実現されていない。故に、本発明の第一の対象は、特定のテルペンを効率的に製造するか又は蓄積する一方で、多段階の化学合成を回避する方法を提供することである。
【0005】
テルペンの生合成の経路に関する研究は、全てのテルペンへの共通のC5−前駆物質がイソペンテニル二リン酸(IPP)であることを明らかにした。IPP生合成のための2つの別個の経路が植物中に同時に存在する。メバロン酸経路(MVA)は、サイトゾル中に小胞体に関連して見出され、かつデオキシキシルロース又はメチル−D−エリトリトールリン酸経路(DOXP/MEP)とも呼ばれる非メバロン酸経路は、高等植物の色素体中に見出される。出発産物、介在される酵素及び触媒反応は双方の経路で異なり、かつ、高等植物の細胞中でこれらは並行して働き、かつ互いに補完する。それに応じて、細胞質中のMVA経路は、ステロール、セスキテルペン及びポリテルペンの生合成の要因であるのに対し、色素体(MEP経路)は、モノテルペン、ジテルペン、例えばカウレン(C20)、及びポリテルペン、例えばカロテノイド(C40)及びプラストキノン−9(C45)の合成のためのC5−単位を提供する。
【0006】
IPPの合成に続いて、これはプレニルトランスフェラーゼ(PRT)により繰り返して縮合されて、各部類のテルペンのためのテルペン前駆物質である非環状プレニル二リン酸、すなわち、モノテルペンのためのゲラニル二リン酸(GPP)及びセスキテルペンのためのファルネシル二リン酸(FPP)が形成される。これらの前駆物質はそしてまた、テルペンシンターゼ又はシクラーゼのための基質として利用され、これらは、テルペン、例えばモノテルペン、及びセスキテルペンシンターゼの各部類に特異的である。テルペンシンターゼは、複雑な多段階環化を触媒して、テルペン化合物の炭素骨格の大きな多様性を形成することができる。
【0007】
特定のテルペンシンターゼを単離することが試みられており、かつ国際公開(WO)第2004/031376号パンフレットには、クベボール、バレンセン及びゲルマクレンシンターゼをコードする遺伝子の単離が報告されている。エシェリキア コリ(E. coli)細胞が、これらの遺伝子を有するプラスミドで形質転換された場合に、相応するフレグランス化合物は、培養基中に見出されることができた。一般的に、テルペンシンターゼの異種発現と関係がある先行技術を鑑みて、一対象は、なおより高い量で特定のテルペンを蓄積する手段及び方法を提供することである。
【0008】
米国特許(US)第5,589,619号明細書、米国特許(US)第5,365,017号明細書、米国特許(US)第5,349,126号明細書及び米国特許(US)第5,349,126号明細書には、トランスジェニック植物中でのスクアレン及びステロール蓄積を増加させる方法が開示されている。しかしながら、これらの参照文献は、どのようにしてその他の部類のテルペン、例えばモノテルペン及びセスキテルペンの蓄積が増加されることができたかについて言及しない。
【0009】
トランスジェニック植物の製造は、米国特許(US)第6,841,717号明細書の対象でもあり、前記明細書はMEP経路に関連した遺伝子に関する。この参照文献は、葉緑体輸送ペプチドに結合され、故にトランスジェニック植物を生産するのに使用されたHMBPPシンターゼ(GCPEタンパク質)をコードするDNA分子を教示する。この参照文献はトコフェロール基質の蓄積を扱う一方で、どのようにしてその他のテルペン化合物が有効に蓄積されることができるかを言及しない。
【0010】
本発明者らは、選択された特定のテルペンを生産するか又は蓄積するという問題に取り組む。好ましくは、予め決定されただけでなく、興味のあるいずれかのテルペンも生産するのに適している方法が提供される。故に、前記対象は、例えば、上記で示されたいずれかのセスキテルペン、例えばクベボール、バレンセン、ゲルマクレン、パチュロールの蓄積を可能にするが、しかし、その他のテルペン、特にモノテルペンを蓄積するのにも適している系を提供することである。この問題はこれまで先行技術により解決されておらず、後者は基本的に、MVA又はMEP経路において変性された性質を有する組換え生物を示唆しており、かつ特定のテルペン最終産物が蓄積されることを観察している。
【0011】
本発明のさらなる対象は、選択されたいずれかのテルペン、好ましくはセスキテルペンを、立体化学的に純粋な形で及び信頼できかつ費用対効果が大きい生産基盤を伴って、生産する手段を提供することである。
【0012】
発明の要約
注目に値することに、本発明者らは、テルペンシンターゼ(TS)及びレギュレーションされていない形のHMG−CoA還元酵素(HMGR)を発現するように生物を形質転換するのに成功し、かつTSにより合成される高収率のテルペンを得た。意外なことに、TSをコードする異種の遺伝子単独で形質転換された植物中で、テルペン蓄積は、検出可能であったが、しかし僅かであり、かつTSタンパク質発現レベルと相互に関係していなかった。本発明の重要な利点は、所望のいずれかのテルペンが、選択されたテルペンのシンターゼをコードするヌクレオチド配列が知られているか又は定型的に単離されることができる場合に、いずれかの植物中で蓄積されることができることである。これは、好ましくは植物のサイトゾルへ、HMGR及びテルペンを合成することのできる酵素、すなわちTSである少なくとも2つの遺伝子産物をターゲティングすることにより可能である。
【0013】
それに応じて、本発明は、第一の態様において、HMG−CoA還元酵素(HMGR)をコードする導入遺伝子及びテルペンシンターゼ(TS)をコードする導入遺伝子を発現する植物を提供する。
【0014】
第二の態様において、本発明は、付加的な遺伝子を含んでなるように形質転換された植物を提供し、前記遺伝子は少なくともHMGR及びTSをコードする。
【0015】
第三の態様において、本発明は、少なくとも1つのPRT及び/又は少なくとも1つのTSをコードするヌクレオチド配列を含んでなるベクターを提供する。
【0016】
第四の態様において、本発明は、形質転換植物を製造する方法を提供し、前記方法は、付加的な遺伝子を含んでなるように植物材料を形質転換する段階、前記の付加的な遺伝子はHMGR及びTSをコードし、及び前記植物材料から形質転換植物を再生産する段階を含んでなる。
【0017】
第五の態様において、本発明は、本請求の範囲及び明細書に詳細に説明される通り、形質転換植物を製造するさらなる方法を提供する。
【0018】
さらなる一態様において、本発明は、植物中のテルペンの含量を改変する方法を提供し、前記方法は植物を形質転換する方法の段階を含んでなる。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、テルペンを生産する方法を提供し、前記方法は、本発明の植物又は形質転換植物を製造する方法により得ることができる植物からテルペンを単離する段階を含んでなる。
【0020】
別の態様において、本発明は、改変されたテルペン含量を有する植物を生産するための、HMGR及びTSをコードする少なくとも1つの遺伝子の使用を提供する。
【0021】
図面の簡単な説明
図中で、
図1A、1B、1C及び1Dは、部分A及びB中で、対照タバコ系統(部分B)、及びHMG−CoA還元酵素(HMGR)及びセスキテルペン(パチュロール)シンターゼ(PTS)をコードする導入遺伝子の双方で形質転換されたもの、部分A、のGC−MS分析を示す。クロマトグラムA中のピーク10は、部分C中でMSにより分析され、かつ基準パチュロール(D)との比較によりパチュロールと同定されることができた。ピーク3を内標準(3−α−セドレン)として使用した。
【0022】
図2は、ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPS)、セスキテルペン(パチュロール)シンターゼ(PTS)、又は双方を過剰発現する再生産されたトランスジェニック植物系統中のmRNA発現レベルを定量的に示す。
【0023】
図3は、再生産されたトランスジェニック植物中での免疫学的検出により測定された通りの、トランスジェニック植物中のパチュロールシンターゼ(PTS)、ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPS)及び融合タンパク質FPS−PTSタンパク質のタンパク質発現レベル(ウェスタンブロッティング)を示す。
【0024】
図4は、異なる構成体で形質転換された植物の葉中のパチュロール含量を示す。比較は、高収率のパチュロール(新鮮な葉FW >500ng/g)が、トランスジェニックHMGR及びPTSの双方を発現する植物(8PTS)中で蓄積されたことを明らかにする。トランスジェニックPTSのみを発現する植物(2PTS)は典型的に、パチュロール500ng/g未満を蓄積する。
【0025】
図5は、植物のアグロバクテリウム ツメファシエンス(A. tumefaciens)媒介形質転換に適しているベクター("pBDON")の体制を示しており、この中で、attp2配列とattp1配列(cm ccdB)との間の領域は、HMGR、TS及び場合によりPRTを保有する(harbour)ために試験管内で及び部位−特異的に再結合されることができる。前記ベクターは、実施例においてさらに詳細に論じられる通り、植物の形質転換のための境界配列領域、プロモーター、ターミネーター及びattp1/2組換え配列を含んでなる。
【0026】
図6A及び図6Bは、図5のベクターpBDON中への部位−特異的な組換えにより挿入されるべき、attp2とattp1配列との間に、それぞれ、1つ又は2つの遺伝子を含んでなるヘルパーベクター("pTMON"及び"pTDUAL")を示す。図6Aは、pBDONベクター中へ一回で1つの遺伝子を挿入するのに適しているヘルパーベクターを示すのに対し、図6Bは、pBDON中へ一回で2つの遺伝子を挿入するのに適しているヘルパーベクターを示す。前記ベクターは、実施例においてさらに詳細に論じられる通り、プロモーター、ターミネーター、attB1/2組換え及びプレースホルダー配列"遺伝子1"及び"遺伝子2"を含んでなる。
【0027】
図7は、異なる植物形質転換ベクターのT−DNA領域の体制を示す。HPT領域は、ハイグロマイシン耐性を提供し、PTSは、セスキテルペン(パチュロール)シンターゼをコードし、LISは、モノテルペン(リモネン)シンターゼをコードし、FPS及びGPSは、プレニルトランスフェラーゼ(それぞれファルネシル二リン酸シンターゼ及びゲラニル二リン酸シンターゼ)をコードする。前記ベクターはさらに、適したプロモーター及びターミネーター配列を含んでなる。
【0028】
図8は、pBDONベクター(図5)の構成を略示的に示す。
【0029】
図9は、pTMONヘルパーベクター(図6A)の構成を略示的に示す。
【0030】
図10部分I及び図10部分IIは、pTDUALヘルパーベクター(図6B)の構成を略示的に示す。
【0031】
図11は、トランスジェニック植物における過剰発現のための(A)リモネンシンターゼ(LIS)及び(B)リモネンシンターゼ+ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPS)発現ベクターの構成を略示的に示す。
【0032】
図12A及び図12Bは、トランスジェニック植物中でのパチュロール蓄積への、PTS及びFPSの過剰発現との組合せでの、切断された(truncated)形のHMGRの過剰発現の寄与を説明する。部分Aは、PTS、PTS+FPS又はPTS−FPS遺伝子融合で最初に遺伝子操作された(engineered)植物と、切断されたHMGR(ΔHMGR)遺伝子で遺伝子操作された植物との間で実施された遺伝子交雑を説明する。部分Bは、生じた後代植物のパチュロール蓄積についての評価の結果を示す。親系統(白色で示されている)中のパチュロールレベル(μg/g新鮮な質量)は、相応する後代系統(相反交雑−黒色及び灰色)に対して示されており、グラフの上部の数は、HMGR遺伝子の添加によるパチュロール蓄積における平均した倍量の改善を示す。ΔHMGR親系統(P2)は、少しもパチュロールを蓄積しなかった。
【0033】
図13Aは、[1−13C]−グルコース上で成長した実生中でMEP又はMVA経路を経て生合成されたパチュロールにおける予測される13C標識パターンを示す。
【0034】
図13Bは、12C−グルコースが供給された植物により合成されたパチュロール(上部のパネル)、対、[1−13C]−グルコースからサイトゾル(真ん中)又は色素体(下部)の生合成に関して遺伝子操作された植物による合成について、MS親イオンを比較する。
【0035】
図14は、モノテルペン(リモネン)シンターゼ(LIS)をコードする導入遺伝子で形質転換された植物、及び更に加えてゲラニル二リン酸シンターゼをコードする導入遺伝子を有する系統1d及び3a中でのリモネン生産を示す。
【0036】
配列表は、本発明の形質転換植物の製造において使用されるヌクレオチド配列を示す。配列番号1は、パチュロールシンターゼ(PTS)をコードする配列を示す。この配列の、例えばHisタグをコードするヌクレオチド配列と融合された、変異体も使用された。配列番号2は、鳥類のファルネシル二リン酸(FPS)をコードするヌクレオチド配列である。配列番号3は、9bpリンカー配列(bp1135−1143)を含む、PTS(bp1144−2802)と融合された鳥類のFPS(bp1−1134)、(FPS−PTS)のヌクレオチド配列を示す。配列番号4は、色素体ターゲティング信号が除去されている、柑橘類由来のリモネンシンターゼ(LIS)をコードするヌクレオチド配列である。配列番号5は、色素体ターゲティング信号が除去されている、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のゲラニル二リン酸シンターゼ(GPS)をコードするヌクレオチド配列である。
【0037】
配列番号6〜48は、本発明のために使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号49〜57は、ポリクローナル抗体、すなわちそれぞれ、PTS(50〜54)及びFPS(55〜48)のための抗体を製造するのに使用されるペプチド配列である。
【0039】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、HMG−CoA還元酵素(HMGR)をコードする導入遺伝子及びテルペンシンターゼ(TS)をコードする導入遺伝子を発現する植物を提供する。
【0040】
この植物は、いずれの植物であってよく、好ましくは、本発明により形質転換されるのに適している植物である。好ましくは、前記植物は、本来、高い量のテルペンを生産する植物である。例えば、前記植物は、ナス科(Solanaceae)、イネ科(Poaceae)又はシソ科(Lamiaceae)のファミリーから選択される。例えば、前記植物は、タバコ属(Nicotiana)、ナス属(Solanum)、モロコシ属(Sorghum)、アラビドプシス(Arabidopsis)、ウマゴヤシ属(Medicago)(アルファルファ)、ワタ(Gossypium)(木綿)、アブラナ属(Brassica)(セイヨウアブラナ)の属から選択される。好ましくは、前記植物は、タバコ(Nicotiana tabacum)の種に属する。
【0041】
"発現する"、"発現"等、例えば"遺伝子を発現する"という用語は、遺伝子がmRNAに転写され、かつ発現された遺伝子によりコードされるタンパク質が植物中に見出される事実を呼ぶ。"発現する"という用語はまた、"過剰発現"を包含し、後者は、非トランスジェニック植物中で測定される以上のmRNA、タンパク質及び/又は酵素活性のレベルを呼ぶ。
【0042】
"導入遺伝子"という用語は、外来生物、一般的に導入遺伝子を含んでなる植物以外の種類又は種から単離される遺伝子を含んでなるヌクレオチド配列を呼ぶ。
【0043】
"導入遺伝子"という言葉中に存在するような、"遺伝子"という用語は、例えば、本発明の植物によって、示された活性を有するタンパク質、例えばテルペンシンターゼに翻訳されることができるヌクレオチド配列を呼ぶ。本発明のためには、"遺伝子"という用語は、植物中で発現される最終的なタンパク質構成体が、上述の活性を示す限りは、非コード領域も含みうる。
【0044】
それに応じて、酵素、例えばHMGRをコードする遺伝子は、例えば導入遺伝子を含めて、少なくとも1つのポリペプチドの製造のための情報を含んでなるヌクレオチド配列を呼ぶ。
【0045】
本発明はさらに、付加的な遺伝子を含んでなるように形質転換された植物を提供し、前記遺伝子は少なくともHMGR及びTSをコードする。
【0046】
"形質転換された"、例えば形質転換植物という用語は、植物が遺伝子操作にかけられている事実を呼ぶ。"形質転換植物"は、形質転換されている個々の植物の無性(栄養性)及び有性で誘導された後代を含む。例えば、非形質転換植物で個々に形質転換されている植物を交雑することにより得られた植物は、後代が、本発明により必要とされる通りの付加的な遺伝子及び/又は導入遺伝子を含有する場合に、本発明により包含される。
【0047】
本明細書の範囲内で"含んでなる(comprises)"という言葉は、"とりわけ、含む"ことを意味するとみなされる。"から専らなる"と解釈されることを意図するものではない。
【0048】
"付加的な遺伝子"を含んでなるように形質転換された植物という用語は、遺伝子操作前にこの位置に存在しなかった、植物の全ゲノムのいずれかの位置(核、ミトコンドリア及び色素体)中へ挿入された新しい又は外来DNA(例えば、遺伝子)を、遺伝子操作のために含んでなる植物を呼ぶ。
【0049】
本発明の植物は、HMG−CoA還元酵素(HMGR)をコードする遺伝子を含んでなる。HMGRは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aをメバロン酸に還元的脱アシル化するのを触媒することのできる酵素である。HMGRという用語は、HMGRの全ての部類、特に部類I及びIIを包含する。HMRGという用語は、EC番号EC1.1.1.34を有する酵素を包含する。HMGR類は、全ての真核生物中並びに多くの細菌中に存在する。
【0050】
本発明は、特定のHMGRをコードする特定のヌクレオチド配列に限定されるものではなく、しばしばそれとは反対に、いずれかのHMGRが、本発明のために選択されることができる。故に、当業者は、文献からか又は公的データベースからHMGRをコードするいずれかの生物から単離されるいずれかの遺伝子を選択することができる。それに加えて、当業者は、HMGR類をコードする新規遺伝子を、例えば、いずれかの生物から、定型的に単離することができる。多様な生物由来のHMGR類をコードする60を上回るヌクレオチド配列が、既に単離されており、かつ当業者に容易に入手可能であることを考慮すれば、特定のHMGR類の一覧は本明細書で提供される必要はない。
【0051】
好ましくは、HMGR遺伝子は、本発明の植物とは異種である。より好ましくは、非植物HMGRであり、例えば動物から単離されるHMGR遺伝子が使用される。
【0052】
好ましくは、前記遺伝子は、可溶性の及び膜結合されていないHMGRをコードする。これは、ヌクレオチド配列によりコードされる膜−結合領域を切断し、かつ膜結合領域を欠いているHMGRをコードするヌクレオチド配列を使用することにより達成されることができる。選択的に、膜ドメインを欠くHMGRをコードする遺伝子は、大形リーシュマニア(Leishmania major)から単離されており、かつ本発明のために使用されることもできる。
【0053】
好ましくは、HMGRをコードする遺伝子は、強い、レギュレーションされていない構成性プロモーターの指示の下にある。
【0054】
HMGRをコードする及び/又はHMGRを過剰発現する付加的な遺伝子を含んでなるタバコ植物は、例えば、米国特許(US)第5,306,862号明細書、米国特許(US)第5,349,126号明細書、米国特許(US)第5365,017号明細書、米国特許(US)第5,589,619号明細書に開示されており、これらの全てが、参照により本明細書に明示的に取り込まれる。これらの植物は、本発明のために使用されることができ、かつTSをコードする少なくとも導入遺伝子及び/又は付加的な遺伝子のコピーを含んでなるように形質転換されることができる。
【0055】
本発明の植物は、TSをコードする少なくとも1つの遺伝子を含んでなる。TS類は、与えられた前駆物質化合物からのテルペンの形成を触媒する酵素である。好ましい一実施態様によれば、TSは、モノテルペンシンターゼ及び/又はセスキテルペンシンターゼである。モノテルペンシンターゼは、前駆物質としてのゲラニル二リン酸を用いてモノテルペン(C10−化合物)の形成を触媒する酵素である。セスキテルペンシンターゼは、ファルネシル二リン酸からのセスキテルペン(C15)の形成を触媒することのできる酵素である。
【0056】
故に、常にメバロン酸を産生するHMGR類とは対照的に、本発明のTSは、異なる反応生成物を有する異なる酵素から選択されることができる。それに応じて、TSという用語は、全体で多数の異なるテルペン化合物を合成することのできる多くの異なるTS類を呼ぶ。
【0057】
故に、本発明の重要な利点は、所望のいずれかのTSを選択するという大きな選択権である。当業者が生産したいか又は本発明の植物中に蓄積させたいテルペンに応じて、それぞれのテルペンを合成することのできるヌクレオチド配列が自由に選択されることができる。このようにして、本発明は、興味のあるいずれかのテルペンの生産のための費用効率的な基盤を提供する。
【0058】
本発明の原理を説明するために、遺伝情報が入手可能である幾つかのTSは、例として提供される:モノテルペンシンターゼの例は、リモネンシンターゼ(LS)(Ohara他, 2003)及びS−リナロールシンターゼ(LIS)である。(Lucker他, 2001)。
【0059】
好ましい一実施態様によれば、前記TSは、セスキテルペンシンターゼである。多数のセスキテルペンがこれまで記載されていることを考慮すれば、相応する数のセスキテルペンシンターゼは、セスキテルペンシンターゼをコードする遺伝子が選択されることができるプールとして利用されることができる。それに応じて、セスキテルペンシンターゼをコードする遺伝子は、公的に利用できるデータベースからか、文献からか、又は当業者が定型的な実験及び十分知られた単離手順によって生物から容易に単離することができるこれまで未発見の遺伝子から、選択されることができる。例えば、TSは、β−カリオフィレン、α−フムレン、ゲルマクレンA、B、C、D、バレンセン、アリストロケン、ベチスピラジエン、パチュロール、クベボール、γ−クルクメン、(−)−ゲルマクレンD、(+)−ゲルマクレンD、ビシクロ−ゲルマクレン及び/又はδ−カジネンシンターゼを合成することができる。上記セスキテルペンを合成することのできる一部のTS類の遺伝子は、国際出願PCT/IB/2004/003836号及び国際公開(WO)第2004/031376号パンフレットに開示されている。
【0060】
例えば、TSにより合成されることができるテルペンは、フレグランス、フレーバー、医薬、殺虫剤、殺真菌剤及び/又は除草剤である。好ましくは、フレグランスである。
【0061】
"テルペン"は、環状又は非環状であってよい、イソプレン単位(C58)をベースとするか又はこれから構成された炭化水素である。本発明のためには、"テルペン"、"モノテルペン"、"ジテルペン"及び/又は"セスキテルペン"という用語は、テルペン誘導体、例えばテルペノイドも含み、これらは、例えば、ヒドロキシル化、異性化、酸化還元反応、ジメチル化又はアシル化のような官能化の1つ又はそれ以上の段階を経験した炭化水素を含む。
【0062】
HMGR及びTSをコードする遺伝子は、例えば、TS及びHMGR活性の双方を有する融合タンパク質をコードする1つの単一遺伝子の形で存在していてよい。
【0063】
好ましい一実施態様によれば、本発明の植物はさらに、プレニルトランスフェラーゼ(PRT)をコードする導入遺伝子を発現するか、又はPRTをコードする付加的な遺伝子を含んでなるように形質転換される。
【0064】
ポリプレニル二リン酸シンターゼ又はポリプレニルピロリン酸シンターゼとも呼ばれるプレニルトランスフェラーゼ(PRT)は、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)及び1つ又はそれ以上のIPP残基、例えばファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)又は他のものを含むアルキル化段階を触媒する酵素である。PRTという用語はまた、多様なテルペノイドファミリーのためのポリプレニル二リン酸前駆物質をもたらす一反応又は一連の反応を触媒することのできる1つ又は幾つかの別個の酵素を含む。故に、PRTをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列は、本発明のためには、単量体、二量体、三量体、四量体及び低重合体のタンパク質のホモ混合物及びヘテロ混合物を含んでなる四次構造を有するポリペプチドをコードする配列を包含する。特に、PRTは、単量体、ヘテロ二量体及び/又はホモ二量体であってよい。ペパーミント(Mentha piperita)の油胞由来のゲラニル二リン酸シンターゼは、本発明により包含されるある特定のPRT類の複雑な遺伝子体制のための例として利用されることができる、それというのも、この酵素は精製されており、かつヘテロ二量体であることが判明しており、その際に双方のサブユニットは、IPP及びDMAPP前駆物質からGPPを生産するのに必要とされる。
【0065】
好ましくは、PRT類は、例えば、EC番号EC2.5.1の下に分類される酵素を包含する。
【0066】
好ましい一実施態様において、PRTをコードする少なくとも1つの遺伝子は、ゲラニル二リン酸(GPP)シンターゼ及び/又はファルネシル二リン酸(FPP)である。GPP及びFPPは、それぞれ、モノテルペン及びセスキテルペンのための前駆物質である。
【0067】
ジメチル−アリル−トランストランスフェラーゼとも呼ばれるゲラニル二リン酸シンターゼ(GPS)は、PRT類の例である。
【0068】
好ましい一実施態様によれば、PRTはファルネシル二リン酸シンターゼ(FPS)である。FPS類は、例えば、ゲラニル二リン酸(GPP)とIPPとの縮合によりファルネシル二リン酸に変換するのを触媒する酵素である。好ましくは、FPSは、イソペンテニル二リン酸(IPP)を、アリル性二リン酸、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)と、ついで生じたゲラニル二リン酸(GPP)と順次縮合させて最終生成物ファルネシル二リン酸に変換するのを触媒することができる。
【0069】
好ましくは、遺伝子PRTは、本発明の植物中の選択されたTSのための前駆物質を提供するように選択される。例えば、植物が、セスキテルペンシンターゼをコードする付加的な遺伝子を含んでなる場合には、これはさらに、ファルネシル二リン酸シンターゼをコードする付加的な遺伝子を含んでなる。
【0070】
HMGR類及びTS類をコードする遺伝子に類似して、PRT類をコードする遺伝子は、公的に入手可能であり、かつ多様な起源から当業者により選択されることができる。HMGR類、PRT類及び/又はTSをコードするヌクレオチド配列を得るために適している公的に入手可能なデータベースは、例えば、European Bioinformatics Instituteのデータベース、(http://www.ebi.ac.uk/swissprot/index.html)、EXPASYデータベース(http://www.expasy.org/enzyme/)、NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)及び多数のその他のものである。本発明のために使用されることができる、当業者に入手可能なFPS類の多数の可能性を説明する単なる目的のために、イプス ピニ(Ips pini)から単離されたゲラニル二リン酸シンターゼ(NCBI受入れ番号(AN): AY 953508.1)、ビブリオ フィシェリ(Vibrio fischeri)から単離されたファルネシル二リン酸シンターゼ(NCBI AN: YP 203660)、及びTarshis他(1994)により報告された鳥類のファルネシル二リン酸シンターゼが引用されることができる。もちろん、その他のいずれかのPRTが、いずれかのデータベース又は起源から選択されることができる。
【0071】
好ましい実施態様によれば、付加的な遺伝子及び/又は遺伝子の産物は、植物の細胞のサイトゾルに向けられている。遺伝子産物は、多様な手段によって植物のサイトゾルに向けられていてよい。例えば、植物は、核染色体中の遺伝子のコピーを含んでなるように形質転換されることができ、その際に前記遺伝子は、いずれの色素体ターゲティング配列、及び/又はその他のいずれの細胞小器官ターゲティング情報を含まない。これは、例えば、しばしば色素体−ターゲティング配列を含んでなる知られたモノテルペンシンターゼの多くについては関連性があり、その際に活性のそれらの原理部位は色素体である。この場合に、色素体ターゲティング配列は、TS及び/又はPRTをコードする付加的な遺伝子及び/又は導入遺伝子から、植物をそれで形質転換する前に、除去されるべきである。それに応じて、好ましい一実施態様において、前記の遺伝子及び/又は導入遺伝子は、植物の核中で発現される。好ましくは、それらは植物染色体の一部である。
【0072】
好ましくは、本発明の植物中に存在する付加的な遺伝子及び/又は導入遺伝子によりコードされる遺伝子産物(TS、HMGR、場合によりPTR)は、活性である。好ましくは、それらは、生体内で及び/又は試験管内で活性である。標準アッセイは、形質転換植物中の酵素の活性を決定するのに使用されることができる。形質転換植物中のHMGR活性を定量的に評価するためのアッセイは、米国特許(US)第5,349,126号明細書、例2に開示されており、その際にChappell他, Plant Physiol., 85:469-473 (1987)の方法が参照される。国際公開(WO)第04/031376号パンフレット、例4には、セスキテルペンシンターゼのための酵素機能アッセイが開示されている。上記参照文献に開示された双方のアッセイは、参照により本明細書に取り込まれる。PRT活性を評価するためのアッセイは、文献にも見出されることができる。
【0073】
好ましい一実施態様において、本発明の植物は、自然のままの非形質転換植物に比較した場合に、導入遺伝子及び/又は付加的な遺伝子によりコードされるTSにより合成されることができるテルペンの少なくとも1.2倍を蓄積する。好ましくは、形質転換植物は、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、より好ましくは少なくとも4倍及び最も好ましくは少なくとも6倍だけ特定のテルペンを蓄積する。
【0074】
本発明の別の実施態様によれば、形質転換植物は、導入遺伝子及び/又は付加的な遺伝子によりコードされたTSにより合成されることができるテルペンを、新鮮な葉1gあたり少なくとも400ng蓄積する。好ましくは、形質転換植物は、形質転換植物中に存在する組換えTSにより合成されることができる特定のテルペン少なくとも500ng、より好ましくは少なくとも800ng、一層より好ましくは少なくとも1000ng、さらにより好ましくは少なくとも2000ng、一層より好ましくは少なくとも5000ng、さらにより好ましくは7000ng及びなおさらにより好ましくは少なくとも8μgを蓄積する。最も好ましくは、形質転換植物は、新鮮な葉1gあたり、特定のテルペンを少なくとも10000ng又はそれ以上ですら蓄積する。例えば、形質転換植物は、新鮮な葉1gあたりテルペン2〜16μg、好ましくは4〜12μgを蓄積する。特定のテルペンの量は、乾物の質量で表現されることもできる。この場合に、乾物の植物材料及び特に葉は、新鮮な質量についての値の約10%に相応する。それに応じて、乾燥した葉1gあたりテルペン少なくとも4、5、8、10、20、50、70又は100μgが蓄積される。
【0075】
自然のままの非形質転換植物が既に、TSにより合成されることができる特定のテルペンを生産する場合に、形質転換植物に妥当な値は、非形質転換植物中に本来存在する特定のテルペンの量に付け加えられる。
【0076】
本発明の植物中の特定のテルペンの含量の決定のために、テルペンを生産するか又は蓄積するいずれかの植物器官が参照として採取されることができる。好ましくは、同じ齢を有する緑色の葉(好ましくは成熟した葉)は、それぞれ、形質転換植物及び非形質転換植物から比較のために採取される。分析は、好ましくは、実施例に概説されたプロトコル"テルペン分析"に従って実施される。好ましくは、新鮮な葉は、植物から切り取った直後に分析される。葉は収穫後に冷凍されてよく、かつ冷凍した状態で分析されてよい。
【0077】
好ましい一実施態様によれば、本発明による形質転換植物は、試料呼称"8hsPTS−10"及びATCC番号ATCC PTA−6706でATCCに寄託された形質転換されたタバコ(Nicotiana tabacum cv Xanthi)である。
【0078】
好ましくは、形質転換植物は、選択された野生型遺伝子中にノックアウト、ダウンレギュレーション、欠失又はその他の形の有害突然変異を含んでなっていてよく、これらは炭素フラックスを、従来のテルペンから本発明のTSの経路へ逸脱するのに適しているテルペン生合成の経路に関与する。好ましくは、これらの従来の、その他のテルペン経路は、ダウンレギュレーションされる。例えば、本発明の植物は、ステロール、ポリプレノイド、フィトール及びカロテノイドの合成をもたらすFPP、GPP及び/又はGGPPシンターゼをコードする遺伝子の下流に、1つ又はそれ以上の非官能性又は減少された官能性の遺伝子を有していてよい。このようにして、炭素フラックスは、特定のテルペンの合成の方へより効率的に向けられることができる。
【0079】
本発明は、少なくとも1つのPRT及び/又は少なくとも1つのTSをコードするヌクレオチド配列を含んでなるベクターを提供する。好ましくは、前記ベクターはさらに、HMGRをコードする遺伝子を含んでなるヌクレオチド配列を含んでなる。好ましくは、HMGR、TS及び/又はPRTからなる群から選択される1つ、2つ又は全てをコードするヌクレオチド配列を含んでなるベクターは、HMGR、TS及び/又はPRTに結合された色素体ターゲティング配列を含まない。
【0080】
好ましくは、前記ベクターはさらに、色素体ターゲティング配列及びそれぞれ、HMGR、TS及び/又はPRTのための遺伝子を含むヌクレオチド配列の好ましくは上流及び下流に、プロモーター及びターミネーター配列を含んでなる。好ましくは、前記ベクターは、強い構成性プロモーターを含んでなる。プロモーターの商業的に入手可能な例は、FMV、ゴマノハグサモザイクウイルス、ACT2、アクチン、MAS、マンノピンシンターゼ及びNOSプロモーターである。好ましくは、前記プロモーターは、形質転換されていない宿主植物の対照及び/又はフィードバックレギュレーション機構から独立して選択される。好ましくは、組換えHMGR及びTSは、上流のプロモーター配列を有する。より好ましくは、それらは各々異なるプロモーター配列を有する。
【0081】
場合により、前記ベクターは、抗体結合に適しているタグ、例えばHis−タグ及び/又はmycタグをさらに含んでなることができる。
【0082】
好ましくは、本発明のベクターはさらに、形質転換植物を選択するのに適しているマーカーを含んでなる。例えば、前記ベクターは、ハイグロマイシン又はカナマイシン耐性を付与する遺伝子、又は首尾良く形質転換植物を選択するのに適しているその他のいずれかの種類のマーカーを含んでなっていてよい。
【0083】
好ましくは、本発明のベクターはさらに、HMGR、TS及び場合によりPRTに隣接し、任意のプロモーター、ターミネーター及び/又はタギング配列を含む、左側及び右側のT−DNA境界配列領域、並びに構造遺伝子を植物核ゲノム中へ移転する及び組み込むのを促進するための植物耐性マーカーを含んでなる。
【0084】
それに応じて、本発明のベクターは好ましくは、HMGR、PRT及び/又はTSをコードする構造遺伝子、及び植物ゲノム中への挿入を促進する左側及び右側の境界配列領域により挟まれた、形質転換植物の選択のためのマーカーを含んでなる。
【0085】
好ましくは、前記ベクターはさらに、左側及び右側境界配列領域の外側に、ベクターを含んでなる細菌をクローニングするために使用されるか又は植物の形質転換のために使用されるポジティブ細菌形質転換体(アグロバクテリウム ツメファシエンス(A. tumefaciens))を選択するためのマーカーを含んでなる。
【0086】
好ましい実施態様において、本発明のベクターは、試料参照"pBhsPTS"及びATCC番号PTA−6707でATCCに寄託されたプラスミドである。
【0087】
一態様において、本発明は、形質転換植物を製造する方法に関するものであり、前記方法は、付加的な遺伝子を含んでなるように植物材料を形質転換する段階、前記の付加的な遺伝子はHMGR及びTSをコードし、及び前記植物材料から形質転換植物を再生産する段階を含んでなる。
【0088】
植物材料を形質転換する段階のために、植物を本発明の遺伝子で形質転換するいずれかの方法が使用されることができる。例えば、保護細胞壁をはがした植物細胞は、ある特定の膜−作用物質で又は電気穿孔法で処理された場合に、純粋なDNAを吸収する。DNAは、極めて薄いガラス針を用いてターゲット植物細胞中へマイクロインジェクションされることができる。植物形質転換の最近開発された方法である、バイオリスティック(biolistics)は、静電パルス、空気圧又は黒色火薬衝撃を用いて、DNAでコーティングされたタングステン又は金の極めて小さい粒子を細胞中へ加速することを含む。
【0089】
本発明者らは、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)媒介形質転換で良好な結果を得た。好ましくは、植物核染色体DNA中への構造遺伝子の組み込みを可能にするヌクレオチド配列により挟まれた、本発明の構造遺伝子の少なくとも1つを含んでなるプラスミド構成体(ベクター)、例えば上記で開示されたものが使用される。
【0090】
それに応じて、本発明の植物、方法又は使用の一実施態様において、HMGR、TS及び存在する場合にはPRTをコードする遺伝子は、好ましくは色素体ターゲティング配列を欠いている、核遺伝子である。これらの遺伝子は好ましくは、本発明の植物の核染色体中に存在する。
【0091】
例えばHMGR、TS及び/又はPRTをコードする遺伝子を含んでなる、DNA構成体での植物材料の形質転換は、標準法により実施されることができ、Schardl他, Gene (1987) 6: 61:1-11; Berger他, Proc Natl Acad Sci USA (1989) 86:8402-8406;及びHorsch他, Science (1985) 27:1229-1231参照、後者の方法は、タバコ(Nicotiana tabacum)を形質転換するのに特に適している"葉片法"を記載する。
【0092】
本発明の方法はさらに、形質転換植物材料から形質転換植物を再生産する段階を含んでなる。形質転換植物材料から植物全体を再生産する方法は、当業者により定型的に適用される。例えば、Horsch他(1985)により開示された方法が使用されることができる。一般的に、アグロバクテリウム ツメファシエンス(A. tumefaciens)を有する挿入DNAにより接種された葉のセグメントは、カルス及び再生産される植物シュートが明らかになるまで、選択培地中で成長されてよい。サイズが1〜3cmのシュートは、根発生を刺激するために抗生物質を含有するT−培地(Schardl, 1987)に移されてよい。一度根系が定着されれば、小さな植物は、商業的に入手可能な鉢植え用土に移されてよく、かつ温室中で繁殖させてよい。それに応じて、好ましい一実施態様において、形質転換植物を製造する方法はさらに、形質転換植物を培養する段階を含んでなる。
【0093】
一態様において、本発明は、形質転換植物を製造するさらなる方法を提供し、前記方法は、TSをコードする少なくとも1つの遺伝子を含んでなるDNA構成体で一番目の植物材料を形質転換する段階、HMGRをコードする少なくとも1つの遺伝子を含んでなる少なくとも1つのDNA構成体で二番目の植物材料を形質転換する段階、それぞれ、一番目及び二番目の形質転換植物材料から一番目及び二番目の植物を再生産する段階、一番目及び二番目の植物を交雑する段階及び、交雑により得られた後代から、TSをコードする遺伝子及びHMGRをコードする遺伝子の双方を含んでなる植物について選択する段階を含んでなる。
【0094】
好ましい一実施態様において、TSをコードする遺伝子を含んでなるDNA構成体が、又はHMGRをコードする遺伝子を含んでなる遺伝子構成体が、さらにPRTを含んでなる。
【0095】
上記の方法は、本発明の形質転換植物を得る選択的な方法であり、前記方法において、異なる植物材料が、HMGR又はTSをコードする構造遺伝子で別個に形質転換され、かつ少なくとも2つの組換え遺伝子の1つのみを含んでなる形質転換植物が再生産される。
【0096】
次の段階において、有性で誘導された後代は、組換え型の、異種の及び/又はトランスジェニックのHMGR DNAを有する植物を、組換え型の、異種の及び/又はトランスジェニックのTS DNAを含んでなる植物と交雑することから得られる。好ましくは、交雑は、メンデル交雑とも呼ばれる遺伝交雑を呼ぶ。これは典型的に、他家受粉により行われることができる。後代の中では、組換えPRT並びにTSの双方を発現する個体が選択される。例えば、既にHMGRを過剰発現する植物、例えば米国特許(US)第5306862号明細書、米国特許(US)第5349126号明細書、米国特許(US)第5365017号明細書及び米国特許(US)第5589619号明細書に開示されたものは、例えば、TSをコードする導入遺伝子を含んでなるように形質転換された植物と交雑されてよい。同じ方法で(メンデル交雑)、PRTをコードする導入遺伝子が導入されることができる。
【0097】
それに応じて、一実施態様において、前記方法はさらに、一番目及び/又は二番目の再生産された植物、又は一番目及び二番目の再生産された植物を交雑することから得られた植物を、PRTをコードする遺伝子を含んでなるように形質転換された植物と交雑する段階を提供する。
【0098】
選択的に、PRTをコードする付加的な導入遺伝子は、既にHMGRを過剰発現する及び/又は付加的な遺伝子を含んでなる及び/又はTSをコードする導入遺伝子を、PRTをコードする遺伝子を含んでなるDNA構成体と共に発現する植物を形質転換することにより、導入されることができる。
【0099】
形質転換植物を製造する本発明の方法は、形質転換植物中の所望のテルペンの蓄積を得るという目的を有する。故に、形質転換植物は、好ましくは、植物中に高い量のテルペンを蓄積する形質転換体に関してスクリーニングされる。故に、形質転換植物を製造する方法の段階は、植物中のテルペンの含量を改変する方法として同様に適しており、その後者の方法は、本発明のさらに好ましい実施態様を表す。類似して、上記で開示された方法及び植物はまた、本発明の一態様を説明し、これは、改変されたテルペン含量、及び好ましくは増加された含量の特定のテルペンを有する植物を製造するための、HMGR及び/又はTSをコードする遺伝子、及び、場合によりPRTをコードするさらに少なくとも1つの遺伝子の使用である。
【0100】
本発明はさらに、テルペンを生産する方法に関するものであり、前記方法は、本発明の植物からか、又は形質転換植物を製造する方法により得ることができる植物から、テルペンを単離する段階を含んでなる。形質転換植物は、好ましくは十分に高い収率で及び/又は十分に大きな規模で培養及び収穫されることができ、本方法を経済的に好都合にすることができる。本発明の特定のテルペンは、有機溶剤抽出又は蒸留を含めた当工業界において使用されるいずれかの方法により単離されることができ、かつガスクロマトグラフィー(GC)−質量分析法(MS)により定量化及び/又は同定されることができる。
【0101】
実施例
次の例は、本発明を説明するためのものであり、結果として範囲を限定するものではない。実施例の方法及びプロトコルは、特定の材料又はキットの製造者により供給される標準プロトコルに従って、又はSambrook他(1989)及びAusubel他(1987)により定義された次の十分確立されたプロトコルにより一般的に実施される。
【0102】
使用された全てのプライマーは、添付された配列表に一覧にされている。一部の方法又はプロトコル段階のために文献が参照され、この文献は以下により詳細にさらに一覧にされており、かつ参照により本明細書に明示的に取り込まれる。
【0103】
例1:植物材料の選択
以下14−8と呼ぶ、切断されたハムスターヒドロキシメチル−グルタリル−CoA還元酵素遺伝子を含有するタバコ(Nicotiana tobacum)‘Xanthi’系統のホモ接合系統、及び以下14−2と呼ぶ、導入遺伝子の欠いているF2分離同胞系統を、Chappell他(1995)により及び米国特許(US)第5306862号明細書、米国特許(US)第5349126号明細書、米国特許(US)第5365017号明細書に記載された通りに発生させた。簡単に言えば、最初にChin他(1984)により特性決定されたハムスター遺伝子を、ヌクレオチド28〜1023を除去することにより改変して、δ−227 HMGRと呼ばれる遺伝子の切断された形を生産した。切断されたHMGR cDNAのBamH1/Sst1フラグメントを単離し、中間体プラスミドベクターであるpKYLX 61中へ挿入し、その構成体のEcoR1/Cla1フラグメントを、その後にpKYLX71の相応する部位中へ挿入して、pKYLX71−切断されたHMGR遺伝子構成体を生産した。Ti−プラスミド系列pKYLX61及び71を、Schardl他(1987)により発生させた。
【0104】
pKYLX71−HMGRプラスミドを、無力化した(disarmed)TiプラスミドGV3850を保有するアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中へ、標準トリペアレンタルメイティング手順(Schardl他, 1987)を用いて起動した。タバコ(Nicotiana tabacum L. cv. Xanthi)の葉片を植物材料として使用し、pKYLX71−HMGR構成体を有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)で接種し、トランスジェニック植物をSchardl他(1987)及びHorsch他(1985)に記載された標準の形質転換及び再生産プロトコルを用いて再生産した。
【0105】
最初に形質転換され、かつ再生産された植物(R0世代)を、成長させ、自家受粉させ、その後の種を収集した(R1世代)。R1種子を、標準の温室条件下に個々の植物として成長させ、自家受粉させ、R2種子世代を収集した。その後に、R2種子世代を、HMGR導入遺伝子の存在に関してスクリーニングした。
【0106】
HMGR導入遺伝子構成体の存在に関するスクリーニングは初めに、pKYLX71−HMGR構成体の部分として植物中へ遺伝子操作されたカナマイシン耐性マーカーの存在に基づいていた(Chappell他, 1995)。カナマイシン100mg/Lを含有する発芽培地上にプレーティングした種を、光退色を示す発芽された実生(全て白色の実生、カナマイシン耐性マーカーの欠けているもの及び故に導入遺伝子構成体の欠けているホモ接合系統)対全ての緑色の実生(カナマイシン耐性マーカーを保有する緑色の実生、及び故に導入遺伝子構成体を有するホモ接合系統)について記録した。これらの同定された系統からの種を、その後に温室中で繁殖させ(カナマイシン選択を有しない)、ステロールに関する化学分析により遺伝子操作したHMGR構成体の存在に関してスクリーニングした(Chappell他, 1995)。系統14−8は、対照植物よりも2〜10倍高いステロールレベルを示し、かつ全ての実生がカナマイシンの存在で正常に成長したのに対し、系統14−2は、形質転換されていない対照植物に匹敵しうるステロールレベルを有し、かつカナマイシンの存在で発芽された実生は全て光退色された白色であった。
【0107】
植物系統14−8(HMGR−過剰発現)及び14−2(対照)を、その後の全ての形質転換作業において使用した。
【0108】
例2〜5.組換え及び植物形質転換ベクターの構成
ハイグロマイシン選択マーカー(Hajdukiewicz他, 1994)を、形質転換植物のための選択マーカーを作り出すために選んだ。新しいベクターを、Hartley他(2000)により記載された通り、適切な組換えクローニング部位を用いて遺伝子操作した。
【0109】
例2:pBDONベクターの発生
pBI101ベクター(Invitrogen、カールズバッド、CA)を制限酵素Sph1及びSst1で消化し、プラスミドベクターに相応するDNAフラグメント(RB境界配列及びNPTII遺伝子カセットを含まない)を、アガロースゲル精製により単離した(Sambrook他, 1989)、図8中(1)。並行して、ccdb遺伝子及びクロロアムフェニカル(chloroamphenical)耐性遺伝子を含むattp組換えカセットを、pDON221ベクター(Invitrogen、カールズバッド、CA)から、プライマーAttp1−SstI−FW及びAttp2−SphI−RVで標準PCR条件を用いて増幅させた(2)。PCR増幅したDNAフラグメントをSph1/Sst1酵素で制限し、ゲル精製し、前記の類似して消化したpBI101ベクターの相応する部位中へ連結して、中間体pBattpベクターが生じた(3)。
【0110】
ハイグロマイシン遺伝子カセットを2段階プロセスで製造した。最初に、ハイグロマイシン遺伝子(HPT)及びCaUTR(終止配列)を、pCAMBIA1301(Cambia、キャンベラ、AU)ベクターから、PCRプライマーHPT−NotI−FD及びHPT−Xba1−RVを用いてPCR増幅させ、pT7Blueベクター(Novagen、マディソン、WI)中へT/Aクローニングして(PCR反応混合物から直接的にTaq−増幅されたPCR産物)、pTHPTが生じた(4)。右側境界配列(RB)及びNOS−プロモーター(P−NOS)領域を、PCRプライマーTB−SphI−FD及びTB−NotI−RVを用いてpBI101から増幅させ(5)、ついでpT7Blueベクター中へT/Aクローニングして、ベクターpTRBPが生じた(6)。ハイグロマイシン耐性遺伝子カセットを、ベクターpTHPTから、Not1/Xba1での消化を経て放出し(7)、類似して消化されたpTRBPベクター中へクローニングして、ベクターpTRBPHPTTが生じた(8)。NOSプロモーター−ハイグロマイシン−CaUTRカセットを、ついで、このベクターから、プライマーTB−SphI−FD及びHPT−SphI−Rを用いて増幅させた(9)。増幅させた産物をSph1で消化し、pBattpの相応する部位中へ連結し、pBDONベクターが生じた(10)。
【0111】
pBDON Ti−ベクター(図5、9)は、細菌中の選択のためのT−DNA領域及び植物形質転換選択のためのハイグロマイシン遺伝子(HPT)の外側に、NPTII選択マーカーを含有する。それゆえ、埋め込まれたattpカセットは、pBDONベクター中へのattB部位で挟まれたターゲット遺伝子構成体の簡単な挿入を提供する。
【0112】
attB部位を有するヘルパーベクターの発生:
2つの異なるattBヘルパーベクターを、図9及び10に与えられたプロトコルに従って構成した。pBDONベクター中への、一方は単一遺伝子挿入(pTMON、図6A)について及び他方は2つのターゲット遺伝子挿入(pTDUAL、図6B)。
【0113】
例3:pTMONベクターの生産(図9)
pTMONベクターを、改変されたpBI101ベクターから、Nde1制限部位及びプライマーCSMV−ATTB1−SGFI−FD中へ埋め込まれたattB1配列を含有する前方のPCRプライマー、及びEcoR1部位を含有するリバースプライマーCSMV−ECORI−RVで、カッサバモザイクウイルス(Pcv)プロモーターを最初に増幅することにより構成した(11)。PCRフラグメントを、pGem−Teasyベクター(Promega、マディソン、WI)中へT/Aクローニングし(12)、ついでNde1/EcoR1消化産物として再単離した。単離された消化産物(13)を、pECVSベクター、任意のプレースホルダー遺伝子、"遺伝子1"、NCBI受入れ番号CQ813508)を保有するpET28a誘導体の相応する制限部位中へ連結して、pEPCVSを生産した(14)。
【0114】
並行して、pBI101のNOSターミネーター(TNOS)配列を、前方のプライマーTnos−XhoI−FW及びリバースプライマーTnos−attB2−RVで増幅して、attB2組換え部位をTNOS配列の下流で組み込んだ。PCRフラグメントを、pGEM−Teasyベクター中へT/Aクローニングし、pTTNOSベクターが生じた(15)。pEPCVS(16)のNde1/Xho1消化フラグメントをその後に、pTTNOSの相応する部位中へ連結して、pTMON(17)を生産した(図6A、9)。
【0115】
pTMONベクターを、カッサバモザイクウイルスプロモーター(Pcv)(Frey他, 2001)の後ろに単一ターゲット遺伝子の挿入のために構成し、Nosターミネーター配列が続いた。
【0116】
一部の場合に、Hisタグ配列を、EcoR1での消化によりpTMONベクター中へ遺伝子操作し、プライマーペアHis−EcoF及びHis−EcoRでのリンカー/ライゲーションが続いた。その後の突然変異を、His−タグオープンリーディングフレーム配列を完全に破壊するが、しかし都合のよいAsc1及びEcoR1制限部位を維持するように設計した。これは、プライマーmHisPTS−F及びmHisPTS−Rでの標準PCR反応条件を用いて達成され、PCR反応産物を細菌中へ形質転換して、突然変異したpTMONプラスミドを回収した。
【0117】
例4:pTDUALベクターの生産(図10 I及びII)
pTDUALベクターを多段階プロセスで構成した(図10、部分1及び2)。最初に、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター(Pca)(Benfy他, 1990)を、pBI121ベクター(Invitrogen)から、プライマーPCaMV−XbaI−FW及びPCaMV−SpeI−RVを用いて増幅させ、pT7Blueベクター中へT/Aクローニングした(18)。プロモーター要素をその後に、このベクターからXba1及びSpe1での消化により放出した(19)。並行して、任意のプレースホルダー遺伝子("遺伝子2")を、エリシター処理された細胞培養物(PCT/US06/02265)から得られたヒオシアムス ムチクス(Hyoscyamus muticus) cDNAライブラリーから、プライマー7120D−SpeI−FW及び7120D−KpnI−RVで増幅させ、Spe1/Kpn1での消化及びpT7Blueベクターの相応する部位中へのライゲーションが続き、pTHPOが生じる(20)。pTHPOをついでXba1/Spe1で消化し、類似してpTPCaから放出されたCaMVプロモーターフラグメントを一緒に連結して、pTPHPOを得た(21)。
【0118】
pTPHPOを形成するために並行して、NOSターミネーター配列を、pGTNOSベクターからプライマーTnos−KpnI−FW及びTnos−attB2−RV3で増幅させ、pGem−Teasyベクター(22)中へT/Aクローニングし、Kpn1及びSac1でのpGTNOSKプラスミドの消化によるその後のフラグメントの再単離が続いた(23)。このフラグメントを、ついで、pTPHPOの相応する制限部位中へクローニングし、pTPHPOTを生じさせた(図10の部分1)(24)。
【0119】
pTDUALベクターを構成する最終段階において、attB1部位から、挿入されたテルペンシンターゼ遺伝子の下流のnos−ターミネーター配列にわたるpTMONベクターのフラグメント(25)を、標準PCR条件を用いて増幅させた。増幅産物がプライマーCsMV−attB1−Sgf I−FD及びTNOS−XbaI−RVを有して得られ、これをまた、フラグメント上の末端Sph1及びXba1部位を遺伝子操作した。PCRフラグメントを、消化し、pT7Blueベクターの相応するSph1/Xba1部位中へ連結して、pTPCVSTが生じた(26)。最後に、pTPHPOTからのXba1ないしSac1消化フラグメント(27)を、pTPCVSTの相応する部位中へ連結して、pTDUALベクター(25)を生じさせ、これは、強い構成性発現プロモーターの下流の2遺伝子配列の挿入を可能にする(図10、部分2)。
【0120】
pTDUALベクター(図6B)を、トランスジェニック植物中へ2つの遺伝子を挿入するために設計した。一番目の遺伝子の発現は、カッサバモザイクウイルスプロモーター(Frey他, 2001)により向けられるのに対し、二番目の遺伝子の発現は、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター(Benfey他, 1990)により向けられる。
【0121】
前記のpTMON構成体になされた改変に類似して、一部の場合にHisタグ配列を、EcoR1での消化、引き続きプライマーペアHis−EcoF及びHis−EcoRでのリンカー/ライゲーションにより、pTDUALベクター中へ遺伝子操作した。その後の突然変異を、Hisタグオープンリーディングフレーム配列を完全に破壊するが、しかし都合のよいAsc1及びEcoR1制限部位を維持するようにも設計した。これを、プライマーmHisPTS−F及びmHisPTS−Rでの標準PCR反応条件を用いて達成され、PCR反応産物を細菌中へ形質転換して、突然変異したpTDUALプラスミドを回収した。
【0122】
例5:パチュロールシンターゼ(PTS)及びパチュロールシンターゼ+ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPP)過剰発現ベクターの構成
PTS及びPTS+FPS発現ベクターの生産は、pTMON、pTDUAL及びpBDONベクターと関連している適切な組換えクローニング部位によって大いに促進された。PTS(国際公開(WO)第2004/031376号パンフレット)又はFPS遺伝子(Tarshis他, 1994)を、それぞれ、プライマーペアPTS−AscF及びPTS−XhoR、又はFPP−SpeFW及びFPP−KpnRVで増幅させ、Asc1/Xho1又はSpe1/Kpn1のいずれかで消化し、ついで、pTMON又はpTDUALベクターの相応する部位中へ連結した。FPS−PTS遺伝子融合を、FPS遺伝子をプライマーFPS−AscF及びFPS−AscRで増幅し、生じたPCRフラグメントをAsc1で消化し、このフラグメントをpTMON及びpTDUALベクター中のPTS遺伝子に対して5′に見出される相応するAsc1部位中へ連結することによって生成させた。生じたプラスミドを、ついで、相応するPTS、PTS+FPS及びFPS−PTS遺伝子カセットを標準組換えクローニング(Hartley他, 2000)によりpBDONベクター中へ起動するために使用して、Ti−プラスミドベクターのファミリーを生じさせた(図7)。図7に示された一番目のカセットに相応するHisタグを有し、PTSをコードする遺伝子を含んでなるプラスミドpBDONベクターを寄託番号ATCC PTA−6707で寄託した。
【0123】
例6:植物形質転換及び再生産
個々のpBDONベクター構成体(図5、7)を、電気穿孔法によるアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)系統GV3850(Mersereau他, 1990)及びカナマイシン耐性について選択された形質転換体中へ形質転換した。選択されたコロニーを、限定されたDNA配列決定法により導入遺伝子構成体について検証し、その後に、カナマイシン100mg/Lを含有するLB培地50mL中で成長させた。0.6〜0.8に等しいOD600を有する一晩の培養物を、遠心分離により濃縮し、新鮮なLB培地30mL(抗生物質を有しない)中に再懸濁させ、前に記載された通り葉外植片の接種のために使用した(Chappell他, 1995; Horsch他, 1985)。簡単に言えば、無菌条件下で成長した植物からの葉を、アグロバクテリウム(Agrobacterium)培養物中へ入れ、約1cmセグメントに切断し、葉セグメントを非選択的培地プレート上にプレーティングした(Murashige及びSkoog, 1962)。3日後、葉外植片を、ハイグロマイシン15μg/mL(Invitrogen、カールズバッド、CA)及びセホタキシム500μg/mL(Bioworld、ダブリン、OH)を含有する培地プレートに及びその後に一週間同じ選択培地に、カルス及び再生産された植物シュートが明らかになるまで、移した。サイズが1〜3cmのシュートを、ついで、根発生を刺激するためにT−培地(Murashige及びSkoog、1962)(同じ抗生物質を含有する)へ移した。一度根系が定着されれば、小さな植物を商業的に入手可能な鉢植え用土に移し、温室中で繁殖させた。
【0124】
例7:テルペン分析
例6において得られた形質転換植物の葉材料から抽出されたセスキテルペンを、同定し、GC−MS分析により定量した。200〜500mgの冷凍した葉試料を、液体窒素中で粉砕し、ついで、外標準としてα−セドレン200ngを含有するヘキサン:酢酸エチル混合物3mL(v/v 85:15)で抽出した。抽出物を、酢酸エチル:ヘキサンの同じ85:15混合物で溶離されるシリカカラム上に試料を流すことにより部分的に精製した。溶離液を、アリコート1μLをGC−MSにより分析する前に、窒素流下に、30μL濃縮した(Takahashi S, 2005)。試料を、Restec Rtx-5キャピラリーカラム(30m×0.32mm、相厚さ0.25μm)を備えたTrace GC-MS(ThermoFinnigan、サマセット、NJ)上へ注入し、スプリットレスモードで250℃のインジェクタ温度で及び70℃の初期オーブン温度で1min、引き続き1minあたり4℃勾配で230℃まで操作した。マススペクトルを、35から300までの原子質量単位にわたり、70eVで記録し、検証のためにライブラリー標準(NISTライブラリー)及び基準の標準と比較した。
【0125】
パチュロールの量の評価は、パチュロール及び内標準についての全イオンモニタリングにより得られたピーク面積の比に基づいていた。α−セドレン及びパチュロールの応答因子を、相応する標準の同じ量の同時注入により計算し、かつ生じた較正因子を計算に含めた。同じ方法を、リモネン及びその他のテルペン分子の定量化に使用した。
【0126】
図1は、セスキテルペン含量についての、対照タバコ系統(WT)及びHMGR及びPTS遺伝子構成体で形質転換されたもののテルペン分析の結果を示す。図1中で、HisPTS遺伝子構成体で形質転換されたHMGR過剰発現系統についての全イオンクロマトグラム(図1A)は、対照植物(HMGRのみで形質転換された)のそれと比較される(図1B)。ピークを、入手可能な標準とのそれらのマススペクトルの比較によるか、又はNISTライブラリーにおいて入手可能なスペクトルマッチにより、同定した。例えば、ピーク12についてのMS(C)は、基準パチュロールについてのMS(D)と比較される。その他のピーク同定:1−β−パチュレン;2−β−エレメン;3−α−セドレン(内標準);4−カリオフィレン;5−α−グアイエン;6−未知;7−α−パチュレン;8−セイケレン;9−未知、10−δ−グアイエン;11−グロブロール;及び12−パチュロール。
【0127】
図1は、GC−MC分析の結果であり、かつ興味のある特定のサイトゾル標的テルペン(パチュロール)シンターゼ及びHMGRをコードする遺伝子で特異的に形質転換された植物(A)が、野生型(B)と比較した場合に改変されたテルペン含量及び同じパチュロールシンターゼにより合成されたその他のテルペンに加えて蓄積されたパチュロールを有していたことを説明する。
【0128】
図4は、PTSをコードする組換え遺伝子で形質転換された植物の葉中のセスキテルペン(パチュロール)含量の定量分析であり、この際に"PTS"単独では、PTSをコードする組換え遺伝子を保有する形質転換体と呼び、"FPS−PTS"は、PTSをコードする遺伝子に融合されたFPSをコードする遺伝子を呼び、かつ"FPS+PTS"は、PTS及びFPSをコードする分離した遺伝子を呼ぶ。14−8+PTS(8PTS)は、本発明によるHMGR遺伝子を過剰発現する植物を呼ぶのに対し、14−2+PTS植物(2PTS、2FPS−PTS、2PTS+FPS)はHMGRを過剰発現しない。図4中の植物8PTS 10の種子を、ATCC PTA−6706で寄託した。
【0129】
図4において、TS(PTS)をコードする遺伝子単独での植物の形質転換により、タンパク質の検出可能な発現が観察され、かつタンパク質発現レベルと相互に関係していたが、しかしパチュロール蓄積は僅かであったことがわかる。TSをFPSと同時発現させることにより、パチュロールの蓄積は中程度に増加した。対照的に、14−8系統中のPTSの発現(HMGR過剰発現) 高いパチュロールレベルは、図4中の同じ系統と比較して、PTSタンパク質発現レベル(図3中の系統10)と直接的に相互に関係していることが観察される。このことは、テルペン蓄積へのHMGRの強い寄与を明らかに証明することになる。
【0130】
例8:本発明の植物を得るためのメンデル交雑
14−8系統を有する形質転換植物を得るのが困難であるために、古典的なメンデル交雑を、PTS単独で(PTS)、FPPシンターゼを有するPTS(PTS+FPS)を、又はHMGRと共にFPPシンターゼを有する融合タンパク質(FPS−PTS)として、過剰発現する植物系統を生産するために使用した。PTS、PTS+FPS又はFPS−PTSのいずれかを発現させるために遺伝子操作したトランスジェニック植物系統を、ハイグロマイシン(15mg/L)の存在で初めに発芽させ、抗生物質耐性植物(所望の構成体を含んでなる)のみを成長させた(親系統P1)。親系統P2は、切断されたHMGR遺伝子(14−8)についてホモ接合であり(Chappell他、1995)、選択せずに発芽させ、かつ成長させた。相反交雑(2つの親系統の間での花粉交換)によりF1後代種が生じ、これらを、カナマイシン(50mg/L)及びハイグロマイシン(15mg/L)の存在で発芽させ、生じた耐性植物を例7で前記の通りパチュロール蓄積について評価した。これらの二重耐性植物は、図12(部分A)中に説明される通り、切断されたHMGRをコードする一番目の構成体及びPTS、FPS+PTS又はFPS−PTSのいずれかをコードする二番目の構成体の二重挿入を有する。
【0131】
生じた後代植物であるF1世代植物を、ついで、GC−MSによるパチュロールのそこでの蓄積について評価した。図12の部分B中に、親系統(白色で示されている)中のパチュロールレベルは、相応する後代系統(相反交雑 − 黒色及び灰色)に対して示されている。ΔHMGR親系統(P2)は、少しもパチュロールを蓄積しなかった。以下の第1表は、同じ評価の数値を示す。結果は、サイトゾル中でのパチュロール生合成の遺伝子操作が、レギュレーションされていない形のHMGRの同時の遺伝子操作により有意に高められていることを証明する。交雑から生じた全ての後代植物について、パチュロール生産の1.5〜15倍の増加が観察された。
【0132】
第1表:異なる形質転換植物及び遺伝子交雑に続く後代中のパチュロール含量
【表1】

【0133】
例9:RNA抽出及び定量的RT−PCR分析
各系統の全RNAを、Trizol試薬を用いて製造者(Invitrogen Life Technologies、カールズバッド、CA)に従い若葉500mgから単離した。ファーストストランドcDNAを、反応緩衝液中の全RNA5μg、オリゴdT12−16プライマー200ng及び逆転写酵素(Superscript II、Invitrogen Life Technologies)を有する20μL反応及び製造者により推奨された通りの条件中で合成した。RNase H 1μLをその後に、cDNA調製物に添加し、37℃で1時間定温保持して、相補的RNAを除去した。
【0134】
定量的RT−PCR法を、異なるトランスジェニック系統中でのmRNAレベルを決定するのに使用した。リニアPCR増幅のための最適濃度を、添加したcDNA鋳型の量を変え、かつPCRサイクルの数(10、15、20、25及び30)を用いることにより決定した。プライマーPTS−8F及びPTS−160Rを、PTS遺伝子を増幅させるのに使用したのに対し、FPP−1F及びFPP−160Rを、FPS遺伝子のために使用した。他のプライマー対であるRBCS−FW及びRBCS−RVを、内標準としてのRUBisCOスモールサブユニット遺伝子を増幅させるのに使用した。典型的なPCR条件は、混合物25μLの合計で、1×Taq緩衝液(製造者により供給された通り)、MgCl2 1.5mM、dNTP混合物 0.2mM、各プライマー0.5μM、cDNA 1.25μL及びTaq DNAポリメラーゼ1単位からなっていた。PCR増幅を20温度サイクルにわたって実施し、それぞれ、94℃で30secの変性、60℃で30secのアニール、及び72℃で60secの延長からなっていた。PCR産物を、アガロースゲル電気泳動により分離し、臭化エチジウムで染色し、撮影した。
【0135】
PTS及びFPS mRNA分析の結果は、図2に示されている。前記図は、パチュロールシンターゼ(PTS)遺伝子を有する構成体、又はパチュロールシンターゼ及びFPS遺伝子(PTS+FPS)を有する構成体、又はFPS及びPTSの融合タンパク質(FPS−PTS)をコードする構成体で形質転換された植物から単離されたmRNAから誘導されたRT−PCR産物を示す。RBCSは、RubiscoスモールサブユニットmRNAから誘導されたRT−PCR産物であり、野生型(WT)及びトランスジェニック植物中に存在し、かつ内標準として利用される。
【0136】
野生型(WT)植物はPTS又はFPSを発現しなかったことがわかる。PTS、PTS+FPS及びPTS−FPS構成体を保有する系統の大部分が、に検出可能なレベルのPTS mRNAを発現したが、しかし、パチュロール蓄積は、PTS mRNA発現レベルと相対的に乏しく相互に関係していた。
【0137】
例10:ウェスタンブロッティング分析
4〜5の合成されたペプチドの混合物を、PTS及びFPSの抗体を製造するための抗原として使用した。抗原ペプチドを、フリーソフトウエア(http://bio.dfci.harvard.edu/Tools/antigenic.html)により予測し、FPSについて直接的な3D構造分析(PDB:1FPS)又はPTSについて入手可能な構造EAS(PDB:5EAS)とのホモロジーモデル比較により選択した。PTSについて5つの抗原ペプチド(PTS46:EELKVEL;PTS108:HATALSFRLLRQHGYRVSCE;PTS353:DEELIKLGAPYRA;PTS462:HVRTAVECYME;PTS475:KVGKQEVVSE)、及びFPSについて4つの抗原ペプチド(FPP41:EFVGFFPQIVR;FPP59:GHPEVGDAVARLKEVLQY;FPP218:YKAIVKYKTAF−YSFYLPVAA;FPP320:PEKVAKVKELYEA)を設計した。全てのペプチドを、Sigma-Genosys(The Woodland、TX)により免疫学的グレードで10mgスケールで合成した。それぞれのペプチド混合物を、ついで、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)キャリヤータンパク質に接合させ、Strategic Biosolutions(Windham、ME)によりウサギ中へ注入した。PTS及びFPSのためのポリクローナル抗体を、精製したPTS又はFPSタンパク質と結合されるCNBR−活性化セファロース4B樹脂を用いて製造された分取用抗原アフィニティーカラムにより製造者の指示書に従い(Amersham Biosciences、バッキンガムシア、英国)さらに精製した。
【0138】
トランスジェニック植物材料中のPTS及びFPSタンパク質レベルを測定するために、若葉材料100mgを、液体窒素中で粉砕し、ついで800μLの80mMリン酸カリウム(pH 7.0)、10%グリセリン、10mMメタ重亜硫酸ナトリウム、15mM MgCl2、10mMアスコルビン酸ナトリウム、1%ポリビニルピロリドン及び14mM β−メルカプトエタノールで抽出した。粗製タンパク質抽出物を、卓上型小型遠心機中で4℃で最高速度で20min遠心分離し、生じた上澄みをタンパク質源として使用した。上澄みタンパク質40μgを含有する試料を、15% SDS−PAGEゲル中で電気泳動させ、ニトロセルロース膜(BIO-RAD、Hercules、CA)中へブロッティングした。膜を、精製したPTS又はFPS抗体を添加する前に、5%乾燥乳を含有する標準Tween 80/トリス−緩衝液処理塩水(TTBS)遮断溶液で遮断した。膜を、ついで、振とうしながら室温で3〜7時間定温保持し、TTBSで3回洗浄し、ついで、ヤギペルオキシダーゼ標識付けした抗ウサギIgG(Kirkegaard and Perry Laboratories、ゲーサーズバーグ、MD)と共にTTBS遮断溶液中で室温でさらに3時間定温保持した。二次抗体の化学ルミネセンス検出を、ECL試薬キットを用いて製造者の指示書に従い実施した(Amersham Biosciences、バッキンガムシア、英国)。
【0139】
トランスジェニック植物中のパチュロールシンターゼ(PTS)及びファルネシル二リン酸シンターゼ(FPS)タンパク質の発現レベルは、図3に示されている。図3中のレーン上部の数は、パチュロールシンターゼ(PTS)遺伝子、又はパチュロールシンターゼ及びFPS遺伝子を含有する構成体(PTS+FPS)、又はFPS及びPTSの融合タンパク質をコードする構成体(FPS−PTS)を含有するように遺伝子操作された独立したトランスジェニック植物系統を表す。結果は、テルペンシンターゼ遺伝子(パチュロールシンターゼ)単独で(2PTS)又は融合タンパク質をコードする遺伝子(2PTS−FPS)での形質転換により得られたトランスジェニック植物について、及びテルペンシンターゼ遺伝子での形質転換により得られ、かつさらにトランスジェニックHMGR遺伝子(8PTS)を含んでなるか又はさらにトランスジェニックFPPシンターゼ(2PTS+FPS)を含んでなる植物について、示されている。使用されたポジティブコントロールは、PTS及びFPSタンパク質(それぞれレーンPTS及びFPS)であり、これらのタンパク質を過剰発現するように形質転換された細菌から精製されたものである。レーンWT1は、野生型植物の葉から抽出する。レーンWT1は、HMGR遺伝子を発現する植物のみの葉から抽出する。パネルAは、PTS抗体を用いて試験した膜を示し、かつパネルBは、FPS抗体を用いて試験した膜を示す。
【0140】
図3において、タンパク質が野生型植物中で免疫学的に検出されなかったことがわかる。分析されたトランスジェニック系統の大部分については、PTS及び/又はFPSタンパク質は、葉抽出物中で検出されることができ、かつ葉中の組換えタンパク質の発現レベルは、テルペン(パチュロール)蓄積のレベルと相互に関係していた。
【0141】
例11:本発明の植物中でのテルペン合成に使用される経路を示すための[1−13C]−グルコース標識
蓄積されたパチュロール中の炭素の生合成起源を決定するために、標識実験を実施し、かつ本発明の植物を、パチュロールの色素体生産について遺伝子操作した植物(PCT/IB2006/051198)と比較した。8PTS10(サイトゾル中でPTSを発現するトランスジェニック植物系統)及び2tpPTS+tpFPS12(色素体)の種を、ハイグロマイシン(15mg/l)を添加した固体MS培地上で発芽させた。
【0142】
GC−MS分析のためには、34週齢実生を、その後に、スクロースを有しない液体MS培地5mlを含有する25mlフラスコ中へ移し、暗所で穏やかに振とうしながら(125rpm)、定温保持した。1日後、[1−13C]−グルコース(Sigma) 100mgを培地中へ添加し、植物材料を毎日収集した。GC分析のために、試料100mgを、例7に記載された通りに抽出した。
【0143】
NMR分析のためには、上記の2つのトランスジェニック系統の1000実生を使用し、その際に100実生を、[1−13C]−グルコース1gを添加した液体MS培地50mlを含有する250mlフラスコ中で成長させた。全ての標識付けした実生を1週間後に収集し、上記の通り抽出した。濃縮した抽出物(3ml)を、ついで、シリカTLCプレート及び展開溶剤としてヘキサン:酢酸エチル(9:1)を用いる分取TLC分離により精製した。
【0144】
系統2tpPTS+tpFPS12からの精製した13C−標識付けしたパチュロール250μg及び8PTS10からの500μgを、その後に、13C−NMR(750mHz、CDCl3、University of Illinois、シャンペーン、ILのChemistry DepartmentにおけるBob Coatesによる)により分析した。炭素の位置及び豊富化を、対照植物から精製された標識付けしていないパチュロールに対して割り当てた。
【0145】
図13Aは、[1−13C]−グルコースが供給されたトランスジェニック実生中での、それぞれ、MVA及びMEP経路から出現するIPPから合成されたパチュロール中の予測された13C標識パターンを示している。MVA経路のIPPから合成されたパチュロールは、位置1、3、5、7、9、12、13、14及び15で9個の13C−炭素を有することが予測されるのに対し、MEP経路からのその対応物は、単に6個の13C−炭素、すなわち位置2、6、8、12、13及び15で有することが予想される。
【0146】
GC−MS分析の結果は、図13Bに示されており、この中で、図bは、12C−グルコースが供給された植物(対照)により合成されたパチュロール、及び図c及びdは、(サイトゾル)MVA及び(色素体)MEP経路により13C−グルコースが供給された植物が製造するパチュロールについてのMS親イオンを、それぞれ示す。13Cが供給された植物から出現するパチュロールはより重いイオンを有し、その際に、効果は、色素体パチュロールではあまり顕著ではないことがわかる:サイトゾル経路が遺伝子操作された場合に、主要な親イオンのマスが222から225にシフトし、かつM+8マス親イオンが観察されることができ;及び葉緑体経路が遺伝子操作された場合に、主要な親イオンのマスが224にシフトし、かつM+6マス親イオンが観察されることができる。これらの観察は、標識予測と一致している。NMR分析の結果は、以下の第2表に示されている。
【0147】
第2表:1−C13−グルコースからサイトゾルMVA及び色素体MEP経路により合成されるパチュロール中への13C豊富化
【表2】

【0148】
図13に示された予測された標識パターンに従って、第2表は、サイトゾル中に発現されるPTSを有する植物からのパチュロール中に、炭素原子1、3、5、7、9、12、13、14及び15が13Cで豊富化されることを示している。標識は故に、セスキテルペンが、MVA経路から生じるIPPから実際に合成され、かつ色素体経路の寄与が目下存在することを示している。
【0149】
例12:植物中でのサイトゾルのモノテルペン生合成の遺伝子操作。
【0150】
図7に示された発現ベクターを、PTS遺伝子についてシトラスリモネンシンターゼ遺伝子(LIS)(GenBank受入れAF514287)、及びFPS遺伝子についてシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のゲラニル二リン酸シンターゼ遺伝子(GPS)(GenBank受入れATH17376)を、原PTS及びFPS発現ベクター中へ置換クローニングすることにより、図11に説明されている通り生産した。LIS及びGPS遺伝子は、それぞれ、レモンフルーツ又はアラビドプシス(Arabidopsis)植物から単離されたRNA由来のそれぞれの遺伝子の逆転写−PCR増幅により得られた。RNAを、RNA-Trizol(invitrogen)試薬を用いて製造者プロトコルに従い抽出し、逆転写酵素及びオリゴdTプライマーを用いてファーストストランドcDNAに変換した。PCR増幅を、GPSの増幅のためのAtGPS−SpeF及びAtGPS−KpnRプライマー組合せ及びLISの増幅のためのLIS−AscF及びLIS−XhoRプライマー組合せを用いて実施した(30、31)。これらのプライマーを、色素体ターゲティング信号をコードするヌクレオチド配列を除去し、開始コドンを導入し、かつ制限酵素認識部位を導入するように設計した。LIS遺伝子を含有するPCR産物(32)をXhoI及びAscI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化された原PTS発現ベクター(33)の相応する部位中へ連結した(34)。生じたベクター(35)を、植物中でのLIS発現に使用した。LIS及びGPS発現ベクターの構成のために、前記の通り得られたGPS遺伝子(36)を含有するPCR産物をKpnI及びSpeI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたPTS+FPS発現ベクター(37)中へ連結して(38)、ベクター39が得られた(図11)。LIS遺伝子を有し、かつXhoI及びAscI制限酵素で消化したPCR産物(32)を前記の通り得て、同じ酵素で最初に消化されたベクター40中へ連結した(42)。生じたベクター(41)を、植物中でLIS及びGPSを発現するのに使用した。
【0151】
植物を例6に従って形質転換し、例7に従ってリモネン蓄積について評価した。図15において、リモネンが、サイトゾル経路について遺伝子操作された植物中に蓄積され、かつ一部の植物についてはGPSとLISとの同時発現がリモネンの蓄積を増加させたことがわかる。
【0152】
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【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1A】HMG−CoA還元酵素(HMGR)及びセスキテルペン(パチュロール)シンターゼ(PTS)をコードする導入遺伝子の双方で形質転換された系統のGC−MS分析を示す図。
【図1B】対照タバコ系統のGC−MS分析を示す図。
【図1C】クロマトグラムA中のピーク10のMSによる分析を示す図。
【図1D】基準パチュロール(D)のMSによる分析を示す図。
【図2】ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPS)、セスキテルペン(パチュロール)シンターゼ(PTS)、又は双方を過剰発現する再生産されたトランスジェニック植物系統中のmRNA発現レベルを定量的に示す図。
【図3】再生産されたトランスジェニック植物中での免疫学的検出により測定された通りの、トランスジェニック植物中のパチュロールシンターゼ(PTS)、ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPS)及び融合タンパク質FPS−PTSタンパク質のタンパク質発現レベル(ウェスタンブロッティング)を示す図。
【図4】異なる構成体で形質転換された植物の葉中のパチュロール含量を示す図。
【図5】植物のアグロバクテリウム ツメファシエンス(A. tumefaciens)媒介形質転換に適しているベクター("pBDON")の体制を示す図。
【図6A】図5のベクターpBDON中への部位−特異的な組換えにより挿入されるべき、attp2とattp1配列との間に、1つの遺伝子を含んでなるヘルパーベクター("pTMON")を示す図。
【図6B】図5のベクターpBDON中への部位−特異的な組換えにより挿入されるべき、attp2とattp1配列との間に、それぞれ、2つの遺伝子を含んでなるヘルパーベクター("pTDUAL")を示す図。
【図7】異なる植物形質転換ベクターのT−DNA領域の体制を示す図。
【図8】pBDONベクター(図5)の構成を略示的に示す図。
【図9】pTMONヘルパーベクター(図6A)の構成を略示的に示す図。
【図10−I】pTDUALヘルパーベクター(図6B)の構成を略示的に示す図。
【図10−II】pTDUALヘルパーベクター(図6B)の構成を略示的に示す図。
【図11】トランスジェニック植物における過剰発現のための(A)リモネンシンターゼ(LIS)及び(B)リモネンシンターゼ+ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPS)発現ベクターの構成を略示的に示す図。
【図12A】PTS、PTS+FPS又はPTS−FPS遺伝子融合で最初に遺伝子操作された(engineered)植物と、切断されたHMGR(ΔHMGR)遺伝子で遺伝子操作された植物との間で実施された遺伝子交雑を説明する図。
【図12B】トランスジェニック植物中でのパチュロール蓄積への、PTS及びFPSの過剰発現との組合せでの、切断された(truncated)形のHMGRの過剰発現の寄与を説明する図。
【図13A】[1−13C]−グルコース上で成長した実生中でMEP又はMVA経路を経て生合成されたパチュロールにおける予測される13C標識パターンを示す図。
【図13B】12C−グルコースが供給された植物により合成されたパチュロール(上部のパネル)、対、[1−13C]−グルコースからサイトゾル(真ん中)又は色素体(下部)の生合成に関して遺伝子操作された植物による合成について、MS親イオンを比較する図。
【図14】モノテルペン(リモネン)シンターゼ(LIS)をコードする導入遺伝子で形質転換された植物、及び更に加えてゲラニル二リン酸シンターゼをコードする導入遺伝子を有する系統1d及び3a中でのリモネン生産を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HMG−CoA還元酵素(HMGR)をコードする導入遺伝子及びテルペンシンターゼ(TS)をコードする導入遺伝子を発現する、植物。
【請求項2】
さらにプレニルトランスフェラーゼ(PRT)をコードする導入遺伝子を発現する、請求項1記載の植物。
【請求項3】
導入遺伝子の産物が、植物の細胞のサイトゾルに向けられている、請求項1から2までのいずれか1項記載の植物。
【請求項4】
TSが、モノテルペンシンターゼ及び/又はセスキテルペンシンターゼである、請求項1から3までのいずれか1項記載の植物。
【請求項5】
PRTをコードする遺伝子が、ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPS)及び/又はファルネシル二リン酸シンターゼ(FPS)をコードする遺伝子である、請求項2、4、5及び/又は6のいずれか1項記載の植物。
【請求項6】
導入遺伝子及び/又は付加的な遺伝子が核遺伝子である、請求項1から5までのいずれか1項記載の植物。
【請求項7】
導入遺伝子を含んでない自然のままの植物に比較して、導入遺伝子によりコードされるTSにより合成されることができるテルペンを少なくとも1.2倍蓄積する、請求項1から6までのいずれか1項記載の植物。
【請求項8】
導入遺伝子及び/又は付加的な遺伝子によりコードされるTSにより合成されることができるテルペンを、新鮮な葉1gあたり少なくとも400ng蓄積する、請求項1から7までのいずれか1項記載の形質転換植物。
【請求項9】
少なくとも1つのPRT及び/又は少なくとも1つのTSをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、ベクター。
【請求項10】
形質転換植物を製造する方法であって、前記方法は、
・付加的な遺伝子を含んでなるように植物材料を形質転換する段階、前記の付加的な遺伝子はHMGR及びTSをコードし、及び
・前記植物材料から形質転換植物を再生産する段階を含んでなる、形質転換植物を製造する方法。
【請求項11】
形質転換植物を製造する方法であって、前記方法は、
・TSをコードする少なくとも1つの遺伝子を含んでなるDNA構成体で一番目の植物材料を形質転換する段階;
・HMGRをコードする少なくとも1つの遺伝子を含んでなる少なくとも1つのDNA構成体で二番目の植物材料を形質転換する段階;
・それぞれ、一番目及び二番目の形質転換植物材料から一番目及び二番目の植物を再生産する段階;
・一番目及び二番目の植物を交雑する段階;及び、
・交雑により得られた後代から、TSをコードする遺伝子及びHMGRをコードする遺伝子の双方を含んでなる植物について選択する段階を含んでなる、形質転換植物を製造する方法。
【請求項12】
TSをコードする遺伝子を含んでなるDNA構成体が、又はHMGRをコードする遺伝子を含んでなる遺伝子構成体が、さらにPRTをコードする遺伝子を含んでなる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
一番目及び/又は二番目の再生産された植物、又は一番目及び二番目の再生産された植物を交雑することから得られた植物を、PRTをコードする遺伝子を含んでなるように形質転換された植物と交雑する段階をさらに含んでなる、請求項11記載の方法。
【請求項14】
植物中のテルペンの含量を改変する方法であって、前記方法が、請求項10から13までのいずれか1項記載の段階を含んでなる、植物中のテルペンの含量を改変する方法。
【請求項15】
テルペンを生産する方法であって、前記方法が、請求項1から9までのいずれか1項記載の植物からか、又は請求項11から15までのいずれか1項記載の方法から得られた植物から、テルペンを単離する段階を含んでなる、テルペンを生産する方法。
【請求項16】
改変されたテルペン含量を有する植物を生産するための、HMGR及びTSをコードする少なくとも1つの遺伝子の使用。
【請求項17】
HMGR、TS及び存在する場合にはPRTをコードする遺伝子が、色素体ターゲティング配列を欠いている核遺伝子である、請求項1から8までのいずれか1項記載の植物、請求項10から15までのいずれか1項記載の方法、及び/又は請求項16記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−I】
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【図10−II】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−500012(P2009−500012A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519050(P2008−519050)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052076
【国際公開番号】WO2007/004104
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508004524)ユニバーシティー オブ ケンタッキー リサーチ ファンデーション (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF KENTUCKY RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】A144 Astecc Building, Lexington, Kentucky 40506−0286, USA
【Fターム(参考)】