説明

モノフィラメント、その製造方法、及び釣り糸

【課題】従来のPVDF系モノフィラメントよりも遠投性が高く、かつ巻癖がつき難いモノフィラメント、その製造方法、及び当該モノフィラメントを用いた釣り糸を提供すること。
【解決手段】ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有してなるモノフィラメントであって、
コモノマー成分を2〜5質量%含有し、インヘレント粘度が1.1dl/g以上1.4dl/g未満であり、融点が160〜170℃であり、かつ再結晶化温度が135〜145℃であるモノフィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノフィラメント、その製造方法、及び釣り糸に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」ともいう。)系モノフィラメントは、種々の優れた特性を有しており、特に以下のような観点から、釣り糸、特にハリスに代表されるテグス用途に好んで用いられてきた。すなわち、PVDF系モノフィラメントは、強靱性、耐衝撃性、耐摩擦性、感度(魚信探知性)、及び耐光性等に優れると共に、高比重(1.79)であるため水中に沈み易く、しかも水の屈折率(1.33)に近い屈折率(1.42)を有しているため水中での表面反射が少なくて透明で見え難く、さらに、吸水性が殆どないためそれらの種々の特性を水中でも長時間維持することができる。また、その用途はテグスに限られず、高耐衝撃性、高比重、高感度等を生かし、ルアー用ライン、投げ釣り用道糸、船釣り用胴付き糸等にも使用されてきている。
【0003】
ところが、PVDF系モノフィラメントは、元来その結晶性や弾性率の高さから、釣り糸として一般に使用されているナイロンと比較して、遠投性が低く、また巻癖(糸癖)がつき易いという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1では、巻癖がつき難いモノフィラメントを得るために、所定の性質を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いることが提案されている。
【特許文献1】国際公開第02/064867号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いたモノフィラメントについても、遠投性、及び巻癖について改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、従来のPVDF系モノフィラメントよりも遠投性が高く、かつ巻癖がつき難いモノフィラメント、その製造方法、及び当該モノフィラメントを用いた釣り糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有してなるモノフィラメントであって、コモノマー成分を2〜5質量%含有し、インヘレント粘度が1.1dl/g以上1.4dl/gであり、融点が160〜170℃であり、かつ再結晶化温度が135〜145℃であるモノフィラメントを提供する。
【0008】
かかるモノフィラメントは、従来のPVDF系モノフィラメントよりも遠投性が高く、かつ巻癖がつき難い。
【0009】
上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は2種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂を混合してなる樹脂であることが好ましく、さらに2種以上のポリフッ化ビニリデンにおけるコモノマー成分の含有率の差が1〜10質量%であり、インヘレント粘度の差が0〜0.45dl/gであり、かつ再結晶化温度の差が10〜30℃であることが好ましい。上記所定の性質を有する2種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた場合には、従来のPVDF系モノフィラメントにおいては必ず用いられていた可塑剤を用いなくとも十分に特性の高いモノフィラメントが得られる。よって、可塑剤を用いた場合に生じ得るモノフィラメントの特性の低下、例えば引張強度の低下や、添加した可塑剤がブリードしてしまい、モノフィラメント表面が白く粉を吹いたような状態となること等を抑制することができる。
【0010】
なお、3種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた場合には、「コモノマー成分の含有率の差」、「インヘレント粘度の差」及び「再結晶化温度の差」は、それぞれのポリフッ化ビニリデン系樹脂におけるコモノマー成分の含有率、インヘレント粘度及び再結晶化温度の最大値と最小値との差を意味する。
【0011】
上記モノフィラメントは、ヤング率が1.8〜2.5GPaであり、巻癖指数が0.9以上であり、かつ残留伸びが5〜15%であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、コモノマー成分の含有率の差が1〜10質量%であり、インヘレント粘度の差が0〜0.45dl/gであり、かつ再結晶化温度の差が10〜30℃である2種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂を混合して、溶融紡糸する紡糸工程と、紡糸されたポリフッ化ビニリデン系樹脂を、混合されたポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点より1〜15℃低い温度の油浴中で延伸する延伸工程と、混合されたポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点より10〜25℃低い温度の油浴中で、0.05〜0.5秒緩和熱処理を行う緩和熱処理工程とを備えるモノフィラメントの製造方法を提供する。
【0013】
かかる製造方法により製造されるモノフィラメントは、従来のPVDF系モノフィラメントよりも遠投性が高く、かつ巻癖がつき難い。
【0014】
本発明はまた、上記本発明のモノフィラメントからなる釣り糸を提供する。かかる釣り糸は本発明のモノフィラメントを用いているので、従来のPVDF系モノフィラメントよりも遠投性が高く、かつ巻癖がつき難い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のPVDF系モノフィラメントよりも遠投性が高く、かつ巻癖がつき難いモノフィラメント、その製造方法、及び当該モノフィラメントを用いた釣り糸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
本発明のモノフィラメントは、PVDF系樹脂を主成分として含有するものである。
【0018】
このPVDF系樹脂は、フッ化ビニリデン単独重合体及び/又はフッ化ビニリデンを主成分とする共重合体であり、コモノマー成分として、炭素数が2〜10であり且つ少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルケン由来のもの、より具体的には、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、フッ化ビニル等由来のものが含有されたものである。これらは単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。これらの中では、六フッ化プロピレン、つまり、樹脂中におけるコモノマー成分が六フッ化プロピレン(ヘキサフルオロプロピレン)であると特に好ましい。
【0019】
上記モノフィラメントにおけるコモノマー成分の含有率は、2〜5質量%であり、3〜4質量%であると好ましい。
【0020】
また、本実施形態のモノフィラメントは、その性質を損なわない範囲で、ポリエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、フラバントロンで代表される核剤、あるいはPVDF系樹脂との相溶性が良好な他の樹脂成分が混合されてもよい。可塑剤としては、特に、繰り返し単位組成が炭素数2〜4のジアルコールと炭素数4〜6のジカルボン酸とのエステルから成り、末端基が炭素数1〜3の一価の酸、又は一価のアルコール残基から成り、分子量が1500〜4000のポリエステルが好適に用いられる。
【0021】
さらに、本実施形態のモノフィラメントは、染料等の着色剤をさらに含有してもよい。この着色剤としては、一般にモノフィラメントの着色に用いられている発色染料等を使用可能である。また、発現される色調等の観点から、用途によっては蛍光染料を用いると、視認性を向上できるので好適である。
【0022】
上記本実施形態のモノフィラメントにおいては、インヘレント粘度(固有粘度)が1.1dl/g以上1.4dl/g未満であり、1.2dl/g以上1.4dl/g未満であると好ましい。
【0023】
上記本実施形態のモノフィラメントにおいては、融点が160〜170℃であり、163〜169℃であると好ましい。
【0024】
上記本実施形態のモノフィラメントにおいては、再結晶化温度が135〜145℃であり、137〜143℃であると好ましい。
【0025】
上記本実施形態のモノフィラメントにおけるこのモノマー成分の含有率、インヘレント粘度、融点及び再結晶化温度が上記範囲外であると、十分な遠投性や巻癖のつき難さといった特性を得ることができない。
【0026】
また、上記PVDF系樹脂は2種以上のPVDF系樹脂を混合してなる樹脂であることが好ましい。
【0027】
上記2種以上のPVDF系樹脂におけるコモノマー成分の含有率の差は1〜10質量%であると好ましく、2〜8質量%であるとより好ましい。
【0028】
上記2種以上のPVDF系樹脂におけるインヘレント粘度の差は0〜0.45dl/gであると好ましく、0.1〜0.41dl/gであるとより好ましい。
【0029】
上記2種以上のPVDF系樹脂における再結晶化温度の差は10〜30℃であると好ましく、10〜20℃であるとより好ましい。
【0030】
上記2種以上のPVDF系樹脂における融点の差は3〜25℃であると好ましく、5〜20℃であるとより好ましい。
【0031】
上記2種以上のPVDF系樹脂におけるコモノマー成分の含有率の差、インヘレント粘度の差、再結晶化温度の差、及び融点の差が上記範囲内であると、遠投性や巻癖のつき難さといった特性がさらに向上する。
【0032】
上記本実施形態のモノフィラメントは、釣り糸の用途に特に好適に用いることができる。
【0033】
以下、本実施形態のモノフィラメントの好適な製造方法について説明する。本実施形態の製造方法によれば、紡糸工程、延伸工程及び緩和熱処理工程を経てモノフィラメントが製造される。
【0034】
(紡糸工程)
紡糸工程においては、まず、上述の所定の性質を有する2種以上のPVDF系樹脂を混合する。所定の性質を有するPVDF系樹脂としては、従来公知の方法で製造されたものを用いることができる。このPVDF系樹脂の混合方法としては、単に混合してもよく、粉体状のドライブレンド物としてもよい。さらには、ペレットブレンドやマスターバッチ化するといった方法等を適宜使用できる。その際の調製手順も公知の方法を用いることが可能である。このとき、モノフィラメントの性質を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0035】
次に、得られた組成物、例えば、粉状体又はペレットを押出機に投入し、押出設定温度を好ましくは220〜320℃で押出し、溶融紡糸する。これを、30〜80℃の水中等で急冷することによって糸状のPVDF系樹脂を得る。
【0036】
(延伸工程)
延伸工程においては、糸状のPVDF系樹脂を、グリセリン、シリコーン油、ポリエチレングリコール等の加熱油浴中で4〜7倍に延伸する。このとき、延伸温度をPVDF系樹脂の融点よりも1〜15℃低い温度のグリセリン浴中で延伸することが好ましい。また、この延伸は、一段延伸でも多段延伸でもよく、延伸を二段階以上で行うときには、一段目の延伸をPVDF系樹脂の融点よりも1〜10℃低い温度でかつ延伸倍率が4〜7倍となるようにすることが好ましい。
【0037】
(緩和熱処理工程)
緩和熱処理工程においては、延伸されたPVDF系樹脂を、PVDF系樹脂の融点よりも10〜25℃低い温度のグリセリン、シリコーン油、ポリエチレングリコール等の加熱油浴中で、0.05〜0.5秒緩和熱処理を行う。これにより、モノフィラメントの柔軟性が向上し、巻癖がさらに取れ易くなる。なお、加熱油浴としてはグリセリン浴を用いることが好ましい。
【0038】
上記工程を備える製造方法によれば、本発明のモノフィラメントを有効に製造することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
[使用原料]
使用した原料ポリマー及びその物性を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
[試験方法]
(融点、再結晶化温度)
JIS−K7121記載のDSC(示差走査熱量計)法に準じ、パーキンエルマー社製DSC7を用い、昇温速度10℃/min、N雰囲気下で融点を測定した。200℃に達した後、続けて降温温度10℃/min、N雰囲気下で再結晶化温度を測定した。
【0043】
(インヘレント粘度(ηinh))
試料を、N,N-Dimethylformamideに0.4g/dlの濃度で溶解させて、その溶液の30℃に於けるインヘレント粘度を、Ubbelohde型粘度計を用いて測定した。
【0044】
(コモノマー含有率)
19F−NMR(核磁気共鳴)法にてコモノマー含有率(成分量)を測定した。Varian社製 UNITY INOVA500 NMR装置を用い、500MHZ 19Fスペクトル測定を行った。まず、試料をN,N-Dimethylformamideに溶解、次にこの検体溶液をNMR測定器にセットし、−69〜−75ppm付近をCFに由来するシグナル、−91〜−119ppm付近をCFに由来するシグナルとして、それぞれの領域の積分値の合計とヘキサフルオロプロピレン(HFP)/フッ化ビニリデン(VDF)の分子量から、コモノマー成分としてのHFPの含有率(単位:質量%)を求めた。
【0045】
(引張試験)
JIS−L1013に準じ、東洋精機製作所社製ストログラフRII型引張試験機を用い、試長300mm、引張速度300mm/min、測定数n=5にて引張強度を測定した。さらに、試料の中央に結節点を設けることで、結節強度を測定した。
【0046】
(ヤング率)
オリエンテック社製テンシロンUTM−III−100型引張試験機を用い、試長100mm、引張速度10mm/min、測定数n=5にてヤング率を測定した。
【0047】
(巻癖試験)
巻き胴直径44mmのスプールにモノフィラメントを巻き取り、これをスプールごと40℃に加温したオーブン内に7日間放置した。室温に戻した後、このスプールからモノフィラメントを1m引き出し、それを垂直に自然に垂らしたときの長さを測り、その測定値をフィラメント長(1m)で割った値を巻癖指数とし、巻癖のつき難さの指針とした。さらに、この糸に断面積当たり10kgf/mmの荷重を10秒負荷し、荷重を開放して1分後に再度同様に長さを測り、その測定値をフィラメント長(1m)で割った値を荷重付加後巻癖指数として、巻癖の取れ易さの指数とした。この巻癖指数が1に近いもの程、巻癖が付き難く、取れ易いものである。
【0048】
(残留伸び)
東洋精機製作所社製ストログラフRII型引張試験機を用い、測定試料を試長300mmのつかみ間隔に取り付け、引張速度300mm/minにて、一定荷重まで引き伸ばす。規定荷重に達したら、引張を停止し、荷重を付加した状態で1分間放置、1分経過後直ちに除重し1分間放置。その状態で再び同じ速度で引き伸ばす。記録した荷重−伸長線から残留伸びを図る。測定数はn=3にて測定した。規定荷重は、モノフィラメントの破断荷重の約半値とした。例として糸径毎に表2に条件をまとめた。
【表2】

【0049】
(遠投試験)
ケンクラフト社製の全長3mの釣竿と、シマノ社製リールULTEGRA3000を用い、巻き取った糸の先端に、4号(14.2g)の錘を取り付けて遠投試験を実施した。
【0050】
(実施例1)
フッ化ビニリデン樹脂ポリマーBとフッ化ビニリデン樹脂ポリマーEを重量比で0.5:0.5の割合になるようにブレンドし、φ35mmの押出機、押出温度240〜295℃、φ2mmノズル、冷却水温度45℃の冷却槽を用いて未延伸糸を紡糸した。
次いでこの未延伸糸を160℃のグリセリン浴中で6.7倍に延伸し、次いで緩和熱処理槽として、延伸で使用している熱媒体と同じグリセリンを使用し、グリセリン温度150℃、滞浴時間0.10秒、緩和倍率10%条件にて、高温短時間緩和熱処理を行い、直径0.29mmのモノフィラメントを得た。
【0051】
(実施例2)
フッ化ビニリデン樹脂ポリマーBに代えてフッ化ビニリデン樹脂ポリマーAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、モノフィラメントを製造した。
【0052】
(実施例3)
フッ化ビニリデン樹脂ポリマーBに代えてフッ化ビニリデン樹脂ポリマーDを用いたこと以外は実施例1と同様にして、モノフィラメントを製造した。
【0053】
(実施例4)
グリセリン緩和槽での滞浴時間を0.15秒としたこと以外は実施例3と同様にして、モノフィラメントを製造した。
【0054】
(実施例5)
グリセリン緩和槽での滞浴時間を0.19秒としたこと以外は実施例1と同様にして、モノフィラメントを製造した。
【0055】
(実施例6)
フッ化ビニリデン樹脂ポリマーBに代えてとフッ化ビニリデン樹脂ポリマーGを用いたこと以外は実施例1と同様にして、モノフィラメントを製造した。
【0056】
(比較例1)
フッ化ビニリデン樹脂ポリマーB(株式会社クレハ製KF#1300、インヘレント粘度=1.3g/dl)100重量部に、ポリエステル可塑剤(プロピレングリコール、ブタンジオールの脂肪族ジオール2種とアジピン酸1種からなる脂肪族ポリエステル)5重量部をブレンドした原料ペレットを用い、φ35mmの押出機、押出温度245〜275℃、φ3mmノズル、冷却水温度50℃の冷却槽を用いて未延伸糸を紡糸した。
次いでこの未延伸糸を168℃のグリセリン浴中で5.6倍に延伸し、続けて172℃のグリセリン浴中で1.05倍に延伸、これを温水温度85℃、滞浴時間7.5秒、緩和倍率5%で緩和熱処理を行い、モノフィラメントを得た。
【0057】
(比較例2)
フッ化ビニリデン樹脂ポリマーCとフッ化ビニリデン樹脂ポリマーFを重量比で0.65:0.35の割合になるようにブレンドし、φ35mmの押出機、押出温度240〜295℃、φ2mmノズル、冷却水温度45℃の冷却槽を用いて未延伸糸を紡糸した。しかし、ノズルから吐出下樹脂は、白く透明感がなく、また、太さ斑が大きく、延伸を断念した。2つの樹脂の相溶化不足と考えられる。
【0058】
[試験評価]
上述の試験方法を用い、実施例及び比較例で得られたモノフィラメントについて、結晶融点(融点)、インヘレント粘度、コモノマー含有率、引張強度、結節強度、ヤング率、巻癖指数、残留伸び及び遠投性を測定した。その結果を表3〜5に示す。
【0059】
【表3】


【表4】


【表5】

【0060】
表5から明らかであるように、実施例1〜6で得られたモノフィラメントは、強度は十分ありながら、ヤング率が低く、巻癖が取れ易いため、モノフィラメントに荷重を掛けると、ほぼ真っ直ぐになった。柔らかくて残留伸びが大きいため、塑性変形し易くなったためと考えられる。さらに、実施例1〜6で得られたモノフィラメントは、遠投性に優れる。
【0061】
一方、比較例1のモノフィラメントは、強度は高いものの、ヤング率が高く、巻癖が取れ難いため、モノフィラメントに荷重を掛けても、真っ直ぐにはならなかった。硬くて残留伸びが小さく、塑性変形し難かったためと考えられる。このモノフィラメントの遠投性は比較的低かった。
また、比較例2については、紡糸することができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有してなるモノフィラメントであって、
コモノマー成分を2〜5質量%含有し、インヘレント粘度が1.1dl/g以上1.4dl/g未満であり、融点が160〜170℃であり、かつ再結晶化温度が135〜145℃であるモノフィラメント。
【請求項2】
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は2種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂を混合してなる樹脂であり、
前記2種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂におけるコモノマー成分の含有率の差が1〜10質量%であり、インヘレント粘度の差が0〜0.45dl/gであり、かつ再結晶化温度の差が10〜30℃である、請求項1に記載のモノフィラメント。
【請求項3】
ヤング率が1.8〜2.5GPaであり、巻癖指数が0.9以上であり、かつ残留伸びが5〜15%である、請求項1又は2に記載のモノフィラメント。
【請求項4】
コモノマー成分の含有率の差が1〜10質量%であり、インヘレント粘度の差が0〜0.45dl/gであり、かつ再結晶化温度の差が10〜30℃である2種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂を混合して、溶融紡糸する紡糸工程と、
紡糸されたポリフッ化ビニリデン系樹脂を、前記混合されたポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点より1〜15℃低い温度の油浴中で延伸する延伸工程と、
前記混合されたポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点より10〜25℃低い温度の油浴中で、0.05〜0.5秒緩和熱処理を行う緩和熱処理工程と、
を備えるモノフィラメントの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のモノフィラメントからなる釣り糸。


【公開番号】特開2010−150706(P2010−150706A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330223(P2008−330223)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】