説明

モルタル調化粧シート。

【課題】モルタル調の外観を付与するための工期の短縮化を図り、環境汚染も無く、施工時に取り扱い易い内装用及び外装用のモルタル調表面材としてのモルタル調化粧シートを提供する。
【解決手段】紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の一方面上に、固着用樹脂1aと無機粉体1bとからなるレジンモルタル樹脂を塗布形成したレジンモルタル樹脂層1が設けられ、前記レジンモルタル樹脂中の固着用樹脂が、レジンモルタル樹脂全量中に質量比20%以上〜80%未満含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、襖紙、壁紙、収納扉の表面材等の内装用化粧シートや、屋根用パネルの表面材、外壁補修用の表面材等に使用するモルタル調化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅内装及び外装において、モルタル調の外観を付与するための従来の技術としては、実際に、施工現場で壁や躯体の基材にモルタル塗装をする方法が一般的であった。
【0003】
しかし、現場での塗装には、安定したモルタル塗装面を保持させるために、専門の技術が必要であったり、塗装材の配合作業や乾燥工程及び塗装硬化工程にかなりの時間が必要であり、工期が長期化したり、現場が汚れる等の問題があった。
【0004】
そこで、モルタル調の外観を付与するための従来の技術として、予め繊維シートにより構成されたシート基材の表面に、レジンモルタル樹脂を塗布して表面化粧層を形成してなる外装用モルタル化粧シート(例えば、特開平9−4168号公報)があるが、レジンモルタル中の樹脂の配合比率が少ないと、シートの柔軟性に欠けたり、シート施工作業時に取り扱い難かったり、表面化粧層からレジンモルタル樹脂中の無機粉体が剥離して散乱するといった問題があった。
【0005】
以下に、公知の特許文献を記載する。
【特許文献1】特開平9−4168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、モルタル調の外観を付与するための工期の短縮化を図り、環境汚染も無く、施工時に取り扱い易い内装用及び外装用のモルタル調表面材としてのモルタル調化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の一方面上に、固着用樹脂と無機粉体とからなるレジンモルタル樹脂を塗布形成したレジンモルタル樹脂層1が設けられ、前記レジンモルタル樹脂中の固着用樹脂がレジンモルタル樹脂全量中に質量比20%以上80%未満含まれていることを特徴とするモルタル調化粧シートである。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の一方面上に、プライマー樹脂層2を介して固着用樹脂と無機粉体とからなるレジンモルタル樹脂を塗布形成したレジンモルタル樹脂層1が設けられ、前記レジンモルタル樹脂中の固着用樹脂が、レジンモルタル樹脂全量中に質量比20%以上80%未満含まれていることを特徴とするモルタル調化粧シートである。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係るモルタル調化粧シートにおいて、前記紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の他方面上に、粘着剤層4と易剥離シート5とをこの順に設けたことを特徴とするモルタル調化粧シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモルタル調化粧シートは、そのシート基材層3の一方面上にレジンモルタル樹脂を塗布して形成したレジンモルタル樹脂層1を備えており、そのレジンモルタル樹脂中の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂による固着用樹脂が、レジンモルタル樹脂全量中に質量比で20%以上〜80%未満まで含まれているので、そのレジンモルタル樹脂層1によってモルタル調の意匠感を保持した状態で、シートの良好な柔軟性と、シート加工性及び施工性に富んだものとなる。
【0011】
また、本発明のモルタル調化粧シートは、レジンモルタル樹脂層1によってモルタル調の意匠感を保持した状態で、シートの良好な柔軟性と、シート加工性及び施工性に富むとともに、紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の一方面上に、プライマー樹脂層2を介して固着用樹脂と無機粉体とからなるレジンモルタル樹脂を塗布形成したレジンモルタル樹脂層1が設けられているので、紙、熱可塑性樹脂のいずれからなるシート基材層3であっても、レジンモルタル樹脂層1とシート基材層3との良好な密着力が発揮されるため、施工用途に応じて、モルタル調化粧シートのシート基材層3の素材を紙又は熱可塑性樹脂のいずれかに適宜に選定し、施工に最適な素材からなるシート基材層3のモルタル調化粧シートを用いることが可能となる。
【0012】
また、本発明のモルタル調化粧シートは、レジンモルタル樹脂層1によってモルタル調の意匠感を保持した状態で、シートの良好な柔軟性と、シート加工性及び施工性に富み、施工に最適な素材からなるシート基材層3のモルタル調化粧シートを用いることが可能となるとともに、前記紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の他方面上に粘着剤層4と易剥離シート5とをこの順に設けたので、内装用、外装用の表面材として、施工現場で壁や躯体の基材に施工する際に、モルタル調化粧シートの裏面側から易剥離シート5を剥離して露呈した粘着剤層4によって、施工現場の壁や躯体の基材に簡易に貼着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のモルタル調化粧シートを発明の実施の形態に沿って以下に詳細に説明すれば、図1は本発明のモルタル調化粧シートの一例を説明する積層断面図であり、紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の一方面上に、プライマー樹脂層2を介して、固着用樹脂1aと無機粉体1bとからなるレジンモルタル樹脂を塗布形成したレジンモルタル樹脂層1が設けられていて、該モルタル調化粧シートのレジンモルタル樹脂層1表面はモルタル状の意匠感を呈しているものである。
【0014】
そして、図1に示すようにシート基材層3の他方面上には、粘着剤層4と易剥離シート5が、この順に積層されている。
【0015】
前記レジンモルタル樹脂層1を塗布形成するために使用する前記レジンモルタル樹脂は、そのレジンモルタル樹脂中の固着用樹脂が、レジンモルタル樹脂全量中に20〜80%程度含まれるように調整したものを使用する。
【0016】
前記レジンモルタル樹脂中の固着用樹脂1aの配合比が少な過ぎると、無機粉体1bの影響によりレジンモルタル樹脂層1がより硬化してシートに柔軟性が欠乏したり、レジンモルタル樹脂層1から無機粉体1bが剥離して散乱する。他方、多過ぎると、レジンモルタル樹脂層1の表面のモルタル調の外観と風合いが低下するため、固着用樹脂1aはレジンモルタル樹脂全量中に質量比20〜80%程度含まれるようにするものである。
【0017】
レジンモルタル樹脂の固着用樹脂1aの樹脂成分としては、熱可塑性樹脂又は/及び熱硬化性樹脂を使用することができ、例えば、一液硬化型や二液硬化型の水性アクリルウレ
タンエマルジョン、水性アクリルエマルジョン、水性エポキシ樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が使用可能であるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0018】
また、無機粉体1bとしては、普通セメント、早強セメント、アルミナセメント等があり、その他に、骨材として、珪砂、花崗岩、安山岩、玄武岩等の粉体を混合して使用することができる。
【0019】
本発明におけるシート基材層3に使用する紙としては、混抄紙、紙間強化紙、チタン紙等の天然パルプ、繊維を用いた紙類、あるいは合成繊維、合成樹脂フィルムを用いた合成紙などの紙類があり、その他に、天然繊維又は/及び合成繊維を用いた織布や不織布などが使用できる。
【0020】
また、本発明におけるシート基材層3に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が使用でき、特に、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明における粘着剤層4に使用する粘着剤(感圧接着剤)としては、アクリル系樹脂やシリコーン系樹脂、ブチルゴム系樹脂等が使用可能であるが、特に限定されるものではない。
【0022】
また、本発明における粘着剤層4の表面に仮り貼着される易剥離シート5に使用するシートとしては、例えば、紙、プラスチックシートの片面にシリコーン樹脂、パラフィン、ワックス等をコーティングして易剥離層を形成したものでよいが、上記の粘着剤層4に対して易剥離性のあるシートであれば特に限定されるものではないが、
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0024】
<実施例1>
レジンモルタル樹脂層1を塗布形成するためのレジンモルタル樹脂の固着用樹脂として変性アクリルエマルジョン(水溶媒使用)を用い、該固着用樹脂を、無機粉体として珪砂とアルミナセメントとの混合物に、レジンモルタル樹脂全量に対して20重量%混合して、レジンモルタル樹脂層形成用塗液とした。
【0025】
一方、シート基材層3として、両面にコロナ処理を施された厚さ100μmの透明なポリプロピレンフィルムを使用した。
【0026】
上記シート基材層3の一方の片面には、プライマー層2として、二液硬化型ウレタンコート剤(再塗工用下塗りコート剤)を乾燥固形分3g/m2 になるように塗工した後、上記レジンモルタル樹脂層形成用塗液を、65メッシュのシルクスクリーン印刷版を使用して、塗膜厚150μmとなるように印刷塗工した。
【0027】
続いて、上記シート基材層3の他方の片面には、粘着剤層4として、アクリル系粘着剤を乾燥固形分で20g/m2 となるように塗布して粘着剤層4を形成し、さらに、その粘着剤層4外面にセパレータとして紙、プラスチックシートの片面にシリコーン樹脂を塗布した易剥離層を有する易剥離シート5を仮り貼着して、本発明のモルタル調化粧シートを得た。
【0028】
<実施例2>
上記実施例1において レジンモルタル樹脂層1を塗布形成するためのレジンモルタル
樹脂の固着用樹脂として変性アクリルエマルジョン(水溶媒使用)を用い、該固着用樹脂を、無機粉体として珪砂とアルミナセメントとの混合物に、レジンモルタル樹脂全量に対して50重量%混合して、レジンモルタル樹脂層形成用塗液とした以外は、実施例1と同様にして、本発明のモルタル調化粧シートを得た。
【0029】
<比較例1>
上記実施例1において レジンモルタル樹脂層1を塗布形成するためのレジンモルタル樹脂の固着用樹脂として変性アクリルエマルジョン(水溶媒使用)を用い、該固着用樹脂を、無機粉体として珪砂とアルミナセメントとの混合物に、レジンモルタル樹脂全量に対して15重量%混合して、レジンモルタル樹脂層形成用塗液とした以外は、実施例1と同様にして、比較例のモルタル調化粧シートを得た。
【0030】
<比較例2>
上記実施例1において レジンモルタル樹脂層1を塗布形成するためのレジンモルタル樹脂の固着用樹脂として変性アクリルエマルジョン(水溶媒使用)を用い、該固着用樹脂を、無機粉体として珪砂とアルミナセメントとの混合物に、レジンモルタル樹脂全量に対して80重量%混合して、レジンモルタル樹脂層形成用塗液とした以外は、実施例1と同様にして、比較例のモルタル調化粧シートを得た。
【0031】
<性能比較>
以上のようにして作製し、実施例1−2により得られた本発明のモルタル調化粧シートと、比較例1−2により得られた比較例のモルタル調化粧シートのシート伸度(%)、意匠感(モルタル調達成度)、固着状態(粉体固着状態)について評価した。なお、シート伸度はモルタルレジン層1のみの塗膜について、JIS K7113に準じて測定した。また、意匠感、固着状態に関しては目視、触感にて評価した。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のモルタル調化粧シートの一例を説明する積層断面図。
【符号の説明】
【0034】
1…モルタルレジン層 2…プライマー層 3…シート基材層 4…粘着剤層
5…易剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の一方面上に、固着用樹脂と無機粉体とからなるレジンモルタル樹脂を塗布形成したレジンモルタル樹脂層1が設けられ、前記レジンモルタル樹脂中の熱硬化性樹脂が、レジンモルタル樹脂全量中に質量比20%以上80%未満含まれていることを特徴とするモルタル調化粧シート。
【請求項2】
紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の一方面上に、プライマー樹脂層2を介して固着用樹脂と無機粉体とからなるレジンモルタル樹脂を塗布形成したレジンモルタル樹脂層1が設けられ、前記レジンモルタル樹脂中の固着用樹脂がレジンモルタル樹脂全量中に質量比20%以上80%未満含まれていることを特徴とするモルタル調化粧シート。
【請求項3】
請求項1又は2記載のモルタル調化粧シートにおいて、前記紙又は熱可塑性樹脂からなるシート基材層3の他方面上に、粘着剤層4と易剥離シート5とをこの順に設けたことを特徴とするモルタル調化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2006−22479(P2006−22479A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198945(P2004−198945)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】