説明

モータ制御装置、モータ制御方法及びプログラム

【課題】デッドポイントが発生する位相角でモータが停止することを防ぐことができるモータ制御装置、モータ制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】ブラシと整流子を備えたモータを制御するモータ制御装置であって、モータの駆動時に、モータ駆動電流及び位相角を検出し、モータ駆動電流及び位相角を基に、モータが1回転するときのモータ駆動電流の波形を特定し、波形の振幅のうち予め定められた閾値を超えている箇所を、ブラシと整流子の間にモータ駆動電流が十分に通電しないデッドポイントとして検出し、デッドポイントが発生している位相角でモータが停止しないように、かつ、モータによって駆動される駆動対象が予め定められた範囲内に停止するように、モータの回転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に備えられるモータを制御するためのモータ制御装置、モータ制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、電子機器に備えられるモータにおいて、その内部のブラシと整流子の接触性能の変化によるモータ駆動電流(モータを駆動させるための電流)をモニタリングし、電気的にAD変換を行うことにより、モータ駆動電流の異常、すなわちモータの寿命を検出する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−173364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器に備えられるモータでは、ブラシと整流子の間にモータ駆動電流が十分に通電しない箇所(以下デッドポイント(Dead Point)という)が発生する。デッドポイントが発生すると、電流が流れない状態となるため、発生トルクが低下する。このとき、デッドポイントが発生している位相角でモータが停止すると、それ以降モータが回転不能となり、モータが使用不可能となってしまう。通常、モータが高速回転しているときは、回転による慣性力によりデッドポイントが発生している位相角でモータが停止することは起こりえないが、モータが低速回転するとき(モータの停止の直前を含む)は、デッドポイントが発生している位相角でモータが停止するおそれがある。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を含むこれまでの技術では、デッドポイントを検出することはできないので、デッドポイントが発生する位相角でのモータの停止を防ぐことはできなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、デッドポイントが発生する位相角でモータが停止することを防ぐことができるモータ制御装置、モータ制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のモータ制御装置は、ブラシと整流子を備えたモータを制御するモータ制御装置であって、モータの駆動時に、モータ駆動電流及び位相角を検出し、モータ駆動電流及び位相角を基に、モータが1回転するときのモータ駆動電流の波形を特定し、波形の振幅のうち予め定められた閾値を超えている箇所を、ブラシと整流子の間にモータ駆動電流が十分に通電しないデッドポイントとして検出し、デッドポイントが発生している位相角でモータが停止しないように、かつ、モータによって駆動される駆動対象が予め定められた範囲内に停止するように、モータの回転を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明のモータ制御方法は、ブラシと整流子を備えたモータを制御するためのモータ制御方法であって、モータの駆動時に、モータ駆動電流及び位相角を検出し、モータ駆動電流及び位相角を基に、モータが1回転するときのモータ駆動電流の波形を特定し、波形の振幅のうち予め定められた閾値を超えている箇所を、ブラシと整流子の間にモータ駆動電流が十分に通電しないデッドポイントとして検出し、デッドポイントが発生している位相角でモータが停止しないように、かつ、モータによって駆動される駆動対象が予め定められた範囲内に停止するように、モータの回転を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明のプログラムは、ブラシと整流子を備えたモータを制御するためのプログラムであって、モータの駆動時に、モータ駆動電流及び位相角を検出する処理と、モータ駆動電流及び位相角を基に、モータが1回転するときのモータ駆動電流の波形を特定する処理と、波形の振幅のうち予め定められた閾値を超えている箇所を、ブラシと整流子の間にモータ駆動電流が十分に通電しないデッドポイントとして検出する処理と、デッドポイントが発生している位相角でモータが停止しないように、かつ、モータによって駆動される駆動対象が予め定められた範囲内に停止するように、モータの回転を制御する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デッドポイントが発生する位相角でモータが停止することを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るモータ制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係るモータ制御装置で記憶される正常時の電流波形データの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るモータ制御装置で生成される実動作時の電流波形データの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るモータ制御装置で検出されるデッドポイントの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態であるモータ制御装置について説明する。本実施形態では例として、モータ制御装置を磁気テープライブラリ装置に適用した場合について説明する。そして、モータ制御装置により制御されるモータは、磁気テープ媒体の搬送を行うアクセッサを駆動するモータを例とする。
【0014】
図1は、本実施形態のモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。モータ制御装置1は、MPU(Micro Processing Unit)10、位置センサ11、モータ12、電流検出回路13、モータ制御部14、外部表示器15、外部IF(InterFace)16、データ記憶部17、位相角検出センサ18、データ比較器19を有する。図1に示す各矢印はデータの流れである。
【0015】
MPU10は、図1に示す各部を制御する。
【0016】
位置センサ11は、図示しないアクセッサの位置を検知する。この検知結果は、MPU10に通知される。なお、ここでいう「通知」とは、データ(信号)の出力を意味する。これは以下の説明でも同じである。
【0017】
モータ12は、駆動対象であるアクセッサを移動させるための駆動源である。モータ12は、ブラシと整流子を備えたものであり、例として、整流子を3つ、マグネット1対(N極とS極を1つずつ)を備える。
【0018】
電流検出回路13は、モータ12の駆動時に、モータ12に供給される電流(モータ駆動電流)を検出(モニタリング)する。この検出結果は、モータ制御部14及びデータ比較器19に通知される。
【0019】
モータ制御部14は、電流検出回路13で検出される電流に基づいて、モータ12の回転を制御する。
【0020】
外部表示器15は、ユーザに対して所定の情報を表示する。
【0021】
外部IF16は、外部の装置等と接続するためのものであり、これを介してデータの入出力が行われる。
【0022】
データ記憶部17は、各種データを記憶する。
【0023】
位相角検出センサ18は、モータ12の駆動時に、位相角を検出する。この検出結果は、データ比較器19に通知される。
【0024】
データ比較器19は、電流検出回路15の検出結果と、位相角検出センサ18の検出結果とを基に、モータ12が1回転するときにおけるモータ駆動電流の波形を示すデータ(以下、電流波形データという)を生成する。また、データ比較器19は、予め生成しておいた電流波形データ(後述する正常時の電流波形データ)と、モータ12の実動作時に生成した電流波形データ(後述する実動作時の電流波形データ)とを比較し、両者に差があるかを判断する。また、データ比較器19は、モータ12の実動作時に生成した電流波形データを基に、デッドポイントの検出を行う。デッドポイントとは、ブラシと整流子の間にモータ駆動電流が十分に通電しない箇所である。これらの動作の詳細については後述する。
【0025】
以上のように構成された本実施形態のモータ制御装置1の動作例について、図2、図3、図4を参照して以下に説明する。
【0026】
まず、例えばモータ制御装置1の製品出荷前(工場での組立時)において、上述した電流波形データ(モータ1回転時の電流波形を示すデータ)が生成され、データ記憶部17に記憶される(S1)。この電流波形データは、モータ12が正常に1回転するときの電流波形を示すデータであるので、以下「正常時の電流波形データ」という。
【0027】
ここで、正常時の電流波形データの具体例について図3を参照して説明する。モータ制御装置1の製品出荷前において、オペレータ(製造者)は、所定の操作を行い、モータ制御装置1に対して、正常時の電流波形データを生成、記憶するように指示する。
【0028】
その指示を受けたMPU10は、モータ制御部14にモータ駆動の開始を命令する。命令を受けたモータ制御部14は、モータ12の回転を開始させる。モータ12の回転が開始すると、位相角検出センサ18により位相角の検出が開始され、また、電流検出回路13によりモータ駆動電流の検出が開始される。これらの検出結果は、モータ12の駆動中、データ比較器19に通知される。
【0029】
データ比較器19は、まず最初に、通知された各検出結果を基に、モータ12が1回転するときの原点(1回転の開始点)を特定する。このときの例を図3(a)、(b)に示す。図3(a)は電流検出回路13の検出結果を示しており、図3(b)は位相角検出センサ18の検出結果を示している。データ比較器19は、位相角の検出が開始された時点と、モータ駆動電流の検出が開始された時点とから、原点を特定する。例えば、特定された原点は、図3(a)に示す黒点のようになる。すなわち、原点と原点の間が、モータ1回転の時間となる。図3(a)の例では、モータ12は整流子が3つであるので、モータ1回転の電流波形は山が3つ、谷が3つの振幅となる。すなわち、図中の周期1、周期2、周期3に示す波形の振幅が、モータ12が1回転するときにおけるモータ駆動電流の波形となる。なお、図3(a)において、縦軸はHi(正)とLow(負)を示し、横軸は周期を示している。
【0030】
ここでオペレータは、複数の閾値を設定する。ここでは、閾値の例として、フィルタリングのために、正の方向にHaとHb(Ha>Hb)の2つが設定され、負の方向にLaとLb(Lb>La)の2つが設定されるとする。また、デッドポイントを検出するために使用される閾値として、Ld(Ld<La)が設定される。設定された各閾値のイメージは、図3(a)に示すようになる。なお、これらの閾値がデータ記憶部17に記憶された状態で、モータ制御装置1は出荷されるとする。
【0031】
次に、データ比較器19は、モータ駆動電流の波形の振幅を各閾値(Ldを除く)で検出し、2値化する。このときの例を図3(c)、(d)に示す。図3(c)は、Ha、Hbで2値化した例を示しており、図3(d)は、La、Lbで2値化した例を示している。
【0032】
次に、データ比較器19は、ノイズを除去するため、HaとHbの論理演算(AND)、及び、LaとLbの論理演算(AND)をそれぞれ行う。演算した結果はそれぞれ、図3(e)、(f)のようになる。図3(e)、(f)に示すように、演算結果は共に「101010」となっている。また、データ比較器19は、先に特定した原点(図3(a)に示す2つの黒点)に基づいて、各演算結果に対してモータ1回転の時間を設定する。図3(e)、(f)に示すように、モータ1回転の時間はそれぞれ色つきの長方形で囲まれた部分(範囲)となっている。以上で正常時の電流波形データの生成が完了する。図3(e)と(f)に示す演算結果とモータ1回転の時間はそれぞれ、H側の正常時の電流波形データ及びL側の正常時の電流波形データとして、データ記憶部17に記憶される。
【0033】
このように、正常時の電流波形データの記憶が完了した後で、モータ制御装置1は出荷される。なお、上記説明では、便宜上、製造されるモータ制御装置1にて正常時の電流波形データの生成が行われるものとしたが、予め別の装置で生成された正常時の電流波形データを、製造されるモータ制御装置1に入力して記憶させるようにしてもよい。
【0034】
製品出荷後、ユーザによりモータ制御装置1が実際に使用され、モータ12の駆動が開始されたとする(S2)。モータ12の回転が開始されると、モータ12が1回転するときにおけるモータ駆動電流の波形を示すデータ(電流波形データ)が生成される(S3)。この電流波形データは、実際に使用される場合においてモータ12が1回転するときの電流波形を示すデータであるので、以下「実動作時の電流波形データ」という。
【0035】
ここで、実動作時の電流波形データの具体例について図4を参照して説明する。モータ制御装置1の実動作時において、モータ12の回転が開始されると、上述した正常時の電流波形データの生成のときと同様の手順にて、実動作時の電流波形データの生成が行われることになる。すなわち、データ比較器19において、図4(a)に示すように原点が特定された後、図4(b)、(c)に示すように各閾値(Ldを除く)で2値化され、図4(d)、(e)に示すようにAND演算及びモータ1回転の時間の設定が行われる。なお、例として、図4(d)に示す演算結果は「101010」となっており、図4(e)に示す演算結果は「101000」となっている。以上で実動作時の電流波形データの生成が完了する。
【0036】
次に、データ比較器19は、データ記憶部17に記憶されているH側とL側の正常時の電流波形データ(図3(e)、(f)に示すデータ)と、生成が完了したH側とL側の実動作時の電流波形データ(図4(d)、図4(e)に示すデータ)とをそれぞれ比較する(S4)。すなわち、データ比較器19は、H側の正常時の電流波形データと、H側の実動作時の電流波形データとの間に差があるかを判断し、かつ、L側の正常時の電流波形データと、L側の実動作時の電流波形データとの間に差があるかを判断する。ここでいう差とは、波形の振幅のずれのことをいう。
【0037】
S4の比較の結果、H側とL側の少なくとも一方に差がある場合(S4/YES)、モータ12が寿命(替え時)に近づいていることになり、データ比較器19は、S7のデッドポイント検出処理に移行する。この詳細については後述する。ここでは、比較の結果、H側の正常時と実動作時はいずれも「101010」であり、差はない。しかしL側では、正常時は「101010」、実動作時は「101000」であり、差があるので、S7へ進むことになる。
【0038】
一方、S4の比較の結果、H側とL側のいずれにも差がない場合(S4/NO)、モータ12は寿命(替え時)に近づいていないことになり、データ比較器19は、電流波形データに差がない旨をMPU10に通知する。
【0039】
MPU10は、その通知を受けると、位置センサ11からの検知結果に基づいて、モータ12によって駆動されるアクセッサが、予め指定された停止位置に正常に移動したかどうかを判断する(S5)。S5の判断の結果、停止位置に正常に移動した場合は(S5/YES)、正常終了となる(S14)。予め指定された停止位置は、予めデータ記憶部17に記憶されている。
【0040】
一方、S5の判断の結果、停止位置に正常に移動しない場合は(S5/NO)、MPU10は、次に、予め定められたリトライ回数をオーバーしたかを判断する(S6)。リトライとは、アクセッサを停止位置に移動させる動作を再度行うことであり、リトライ回数とはそのリトライを実行できる限度の回数である。リトライ回数は、予めデータ記憶部17に記憶されている。
【0041】
S6の判断の結果、規定のリトライ回数をオーバーした場合(S6/YES)、異常終了となる(S13)。一方、S6の判断の結果、規定のリトライ回数をオーバーしていない場合(S6/NO)、MPU10は、モータ制御部14に命令し、アクセッサの再移動を実行させるとともに、再度、そのアクセッサが停止位置に正常に移動したかどうかを、位置センサ11からの検知結果に基づいて判断する(S5)。
【0042】
S4の説明に戻る。S4の比較の結果、正常時と実動作時の電流波形データに差がある場合(S4/YES)、モータの寿命(替え時)が近づいていることが検出される。ここでは、例として、図4(a)のx、yに示すように、周期2、周期3において負の方向の振幅に差が生じているものとする。
【0043】
次に、データ比較器19は、実動作時の電流波形データ(負の方向の振幅)が閾値Ldを超えているかどうかを判断する(S7)。S7の判断の結果、Ldを超えていない場合(S7/NO)、データ比較器19はその旨をMPU10に通知する。この通知を受けたMPU10は、外部表示器15にモータ12が寿命に近づいている旨の警告を表示する(S8)とともに、上述したS5の判断を行う。
【0044】
S7の判断の結果、Ldを超えている場合(S7/YES)、データ比較器19は、Ldを超えている部分をデッドポイントとして検出する(S9)。図4(a)の例では、xで示す部分がLdを超えているので、この部分がデッドポイントとして検出されることになる。このデッドポイント検出について具体的に説明する。まず、データ比較器19は、Ldで波形の振幅を検出して2値化する。このときの例を図4(f)に示す。そして、データ比較器19は、図4(e)に示すLaとLbのANDと、図4(f)に示すLdとの論理演算(AND)を行う。このときの例を図5に示す。このようにして、デッドポイントが検出される。その後、データ比較器19は、デッドポイントを検出した旨をMPU10に通知する。また、この通知のとき、データ比較器19は、デッドポイントの発生箇所(デッドポイントが発生している位相角の位置)を示す情報(例えば図5のパルス幅情報)をMPU10に出力するとともに、MPUに対して、位相角検出センサ18からの検出結果の転送を開始する。なお、データ比較器19は、先に特定した原点から周期がいくつ離れているかにより、デッドポイントが発生している位相角(以下、不良位相角という)を特定することができる。
【0045】
上記通知を受けたMPU10は、外部表示器15にモータ12が寿命に近づいている旨の警告を表示する(S8)。
【0046】
また、MPU10は、位置センサ11からの検知結果に基づいて、アクセッサが予め指定された停止位置の近傍(予め定められている地点)に達したかどうかを判断し、そこに達するまでは、通常通りにモータ12を回転するようにモータ制御部14に命令する。そして、MPU10は、アクセッサが停止位置の近傍に達した時点で、モータ12を低速回転に切り替えるようにモータ制御部14に命令する。この命令を受けたモータ制御部14は、電流検出回路13からの検出結果を基に、モータ12に対し、現在実行中の回転速度よりも遅い回転速度に制御する。
【0047】
次に、MPU10は、上述したS5と同様に、位置センサ11からの検知結果に基づいて、モータ12によって駆動されるアクセッサが、予め指定された停止位置に正常に移動したかどうかを判断する(S10)。S10の判断の結果、アクセッサが停止位置に正常に移動していない場合は(S10/NO)、MPU10は、予め定められたリトライ回数をオーバーしたかを判断する(S11)。S11の判断の結果、規定のリトライ回数をオーバーした場合(S11/YES)、異常終了となる(S13)、一方、S11の判断の結果、規定のリトライ回数をオーバーしていない場合(S11/NO)、MPU10は、モータ制御部14に命令し、アクセッサの再移動を実行させるとともに、再度S10の判断を行う。
【0048】
一方、S11の判断の結果、アクセッサが停止位置に正常に移動した場合(S10/YES)、MPU10は、モータ制御部14に命令し、モータ12の駆動を停止させる(S12)。この停止制御により正常終了となる(S14)。
【0049】
ここで、S12の停止制御の具体例について説明する。上述したように、MPU10は、データ比較器19から送られてくる、デッドポイントの発生箇所(不良位相角の位置)を示す情報(例えば図5のパルス幅情報)及び位相角検出センサ18からの検出結果デッドポイントを基に、リアルタイムに位相角をモニタリングでき、かつ、不良位相角の位置を認識できる。これを基に、MPU10は、S12において、モータ12を不良位相角の位置で停止しないように制御を行う。具体的に説明すると、MPU10は、モータ12が不良位相角の位置で停止しようとしたとき(不良位相角の位置での停止を予測したとき)に、現在回転している方向又は現在回転している方向と逆方向に、予め定められた分の電力を追加するようにモータ制御部14に命令する。モータ制御部14は、この命令に基づいてモータ12に予め定められた電力値を追加する。この電力値は、例えば、事前の実験による評価値(予めデータ記憶部17に記憶されている)とデッドポイント検出データ幅(例えば図5のパルス幅)を基に、上記停止制御の実行前にMPU10により決定される。この電力値の追加により、不良位相角以外でモータ12の回転を停止させることができる。図4(a)の例では、周期3又は周期1の位相角(不良位相角の前後)でモータ12が停止することになる。なお、電力値の追加により、アクセッサは、予め指定された停止位置よりずれて停止することになるが、このずれの範囲は、予め定められた許容範囲内であるとする。予め定められた許容範囲は、上記予め定められた停止位置を含むものとして、予めデータ記憶部17に記憶されている。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、デッドポイントを検出することにより、デッドポイントが発生している位相角(不良位相角)でモータが停止することを防ぐことができる。よって、モータが不良位相角で停止することで起こる、モータが回転不能となる異常状態を防ぐことができ、その結果、モータの寿命を延ばすことができる。また、本実施形態によれば、不良位相角以外でモータが停止するときに、モータによって駆動される駆動対象を、予め定められた許容範囲内に停止させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態における動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成によって実行することも可能である。
【0053】
ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させてもよい。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させてもよい。
【0054】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。
【0055】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送してもよい。または、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送してもよい。コンピュータでは、転送されてきたプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることが可能である。
【0056】
また、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、モータを備える装置、システム全般に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
10 MPU
11 位置センサ
12 モータ
13 電流検出回路
14 モータ制御部
15 外部表示器
16 外部IF
17 データ記憶部
18 位相角検出センサ
19 データ比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシと整流子を備えたモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータの駆動時に、
モータ駆動電流及び位相角を検出し、
前記モータ駆動電流及び前記位相角を基に、前記モータが1回転するときのモータ駆動電流の波形を特定し、
前記波形の振幅のうち予め定められた閾値を超えている箇所を、前記ブラシと前記整流子の間に前記モータ駆動電流が十分に通電しないデッドポイントとして検出し、
前記デッドポイントが発生している位相角で前記モータが停止しないように、かつ、前記モータによって駆動される駆動対象が予め定められた範囲内に停止するように、前記モータの回転を制御することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記モータの回転を制御する場合、
前記デッドポイントが発生している位相角の前後の位相角のいずれかで前記モータを停止させるために、前記モータを、現在回転している方向にさらに回転させるか、又は、現在回転している方向と逆方向に回転させることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記モータの回転を制御する場合、
前記駆動対象が前記予め定められた範囲内にある停止位置の近傍に達するまで、通常通りに前記モータを回転させ、
前記駆動対象が前記停止位置の近傍に達した時点で、前記モータの回転を、通常通りの回転よりも遅い低速回転に切り替え、
前記モータを、現在回転している方向にさらに回転させるか、又は、現在回転している方向と逆方向に回転させるための電力を追加することを特徴とする請求項1又は2記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記閾値は、
前記波形の振幅の負の方向に定められた値であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
ブラシと整流子を備えたモータを制御するためのモータ制御方法であって、
前記モータの駆動時に、
モータ駆動電流及び位相角を検出し、
前記モータ駆動電流及び前記位相角を基に、前記モータが1回転するときのモータ駆動電流の波形を特定し、
前記波形の振幅のうち予め定められた閾値を超えている箇所を、前記ブラシと前記整流子の間に前記モータ駆動電流が十分に通電しないデッドポイントとして検出し、
前記デッドポイントが発生している位相角で前記モータが停止しないように、かつ、前記モータによって駆動される駆動対象が予め定められた範囲内に停止するように、前記モータの回転を制御することを特徴とするモータ制御方法。
【請求項6】
ブラシと整流子を備えたモータを制御するためのプログラムであって、
前記モータの駆動時に、
モータ駆動電流及び位相角を検出する処理と、
前記モータ駆動電流及び前記位相角を基に、前記モータが1回転するときのモータ駆動電流の波形を特定する処理と、
前記波形の振幅のうち予め定められた閾値を超えている箇所を、前記ブラシと前記整流子の間に前記モータ駆動電流が十分に通電しないデッドポイントとして検出する処理と、
前記デッドポイントが発生している位相角で前記モータが停止しないように、かつ、前記モータによって駆動される駆動対象が予め定められた範囲内に停止するように、前記モータの回転を制御する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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