説明

モータ

【課題】真空環境下でもガスが漏れ出ることがないモータを提供する。
【解決手段】ステータ13の周囲にはモールド層16が配されている。このモールド層16は、ステータ13に密着して外面を覆うように形成されている。モールド層16は、例えば、熱硬化性樹脂やゴムなどの樹脂材料からなり、更に、ステータ13で生じたガスなどを透過させない緻密な樹脂が好ましい。また、モールド層16自体からもガスが発生しにくい材料であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、詳しくは構成部材から発生したガスの漏洩を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マルチチャンバ型CVD装置などの真空装置には、仕込・取出室や処理室などの間で被成膜物を搬送するための搬送装置が備えられている。こうした搬送装置は、例えば基板を支持して動かすローラや、このローラを回転させるモータなどから構成されている。
【0003】
従来、搬送装置に用いられるモータは、真空環境となるチャンバの外側、即ち外気に接するところに配置され、モータシャフト(回転軸)をチャンバの中に配されたローラに接続することによって、チャンバ内のローラを回転させていた。このため、モータシャフトがチャンバの壁面を突き抜ける部分には、チャンバ内の気密を保つための気密シールが設けられている。
【0004】
しかし、搬送装置のモータをチャンバ外に設置して、気密シールを介してモータシャフトをチャンバ内のローラに接続する構造では、搬送装置全体が大型化してしまい、真空装置の小型化の障害となっていた。
【0005】
また、モータシャフトとチャンバ壁面との間に気密シールが必要になるなど構造が複雑化するといった課題もあった。更に、こうした気密シールはモータシャフトの回転数が500rpm程度までしかチャンバ内の気密を保つことができず、モータの回転数を例えば2000〜3000rpm程度まで高めて被成膜物を高速搬送する際の障害となっていた。
【0006】
このため、搬送装置のモータをチャンバの内部に配置した搬送装置を備えた真空装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。モータをチャンバの内部に配置することによって、モータシャフトとチャンバ壁面との間の気密シールが不要になり、構成を簡単にして真空装置の小型化が可能になるとともに、チャンバ内部の気密を保ちつつモータの回転数を高めて被成膜物の高速搬送が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−277617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、チャンバ内に設置されたモータは、チャンバ内の減圧に伴って必然的に真空環境下に置かれることになる。モータの内部には、コイルや磁石などの磁気部材設けられており、こうしたコイルや磁石などは真空環境下に置かれるとガスが発生するという課題があった。即ち、磁石は一般的に多孔質材料であり、多数の空孔からガスが放出される。
【0009】
また、コイルは巻回した金属線をモールドしている接着剤やその溶媒がガス化して放出される。こうしたモータを構成するコイルや磁石などから放出されたガスがチャンバ内に拡散すると、被成膜物が汚染される懸念があった。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、真空環境下でもガスが漏れ出ることがないモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は次のようなモータを提供する。
即ち、本発明のモータは、ハウジングと、該ハウジングに回転可能に支持されたシャフトおよび該シャフトの周囲に設けられた磁気部材からなるロータと、該ロータを取り巻くように配されたステータと、を有し、前記ロータと前記ステータとの間に発生させた磁界によって前記ロータを回転させるモータであって、
前記ステータおよび前記磁気部材の少なくともいずれか一方に密着して覆うモールド層を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記モールド層の表面を覆う金属薄膜を更に備えたことを特徴とする。
また、前記磁気部材と前記ステータとの間に配された隔壁部材を更に備えたことを特徴とする。
【0013】
前記隔壁部材は前記モールド層によって端部を支持されていることを特徴とする。
また、前記隔壁部材は前記モールド層に対して融着されていることを特徴とする。
【0014】
前記隔壁部材には、屈曲防止用のリブが一体に形成されていることを特徴とする。
また、前記磁気部材および前記ステータは、磁石または電磁コイルから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータによれば、真空環境下に設置したとしても、モータを構成するロータやステータから生じたガスが、ハウジングの外部に放出されることがない。即ち、ロータやステータは、モールド層によって覆われる。これにより、ロータやステータは、モールド層とハウジングやシャフトによって囲まれた空間内に気密に封止された状態となる。
【0016】
従って、ロータの磁気部材やステータが、磁石や、金属細線を巻回させて樹脂材料でモールドした電磁コイルなと、真空環境でガスが生じやすいものであっても、ロータの磁気部材やステータを隔壁部材で気密に覆うことによって、ロータやステータから発生したガスがモータの外部に漏れ出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態におけるモータ(真空モータ)を示す断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態におけるモータを示す断面図である。
【図3】本発明の第三実施形態におけるモータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るモータについて、図面に基づき説明する。なお、本実施形態は発明の趣旨をより良く理解させるために、一例を挙げて説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態におけるモータの一構成例を示す断面図である。
例えば真空装置の基板搬送機構に用いられる真空モータ(モータ)10は、ハウジング(外装体)11と、このハウジング11に収容されるロータ12、およびステータ13とを備えている。ロータ12は、シャフト21と、このシャフト21の周囲に形成された磁気部材22とを有している。
【0020】
ハウジング11は、例えば、金属や樹脂等から構成され、シャフト21の軸方向Lに沿った2箇所に軸受14a,14bが形成される。軸受14a,14bは、例えばベアリングおよびベアリングを支持する受け部材などから構成されていればよい。
【0021】
シャフト21は、ハウジング11に取り付けられた軸受14a,14bによって回転軸方向に沿った2箇所で軸支される。これによってロータ12はハウジング11の内部で回転可能に支持される。
【0022】
シャフト21の周面に形成された磁気部材22は、例えば永久磁石から構成されている。具体的には、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石などが挙げられる。こうした永久磁石は、磁性体粒子を粉砕したものを成型し焼結することによって得られるものが多く、内部に微細な空洞があり、真空環境でガスが生じやすい。
【0023】
ステータ13はハウジング11に固着され、ロータ12に対して所定の間隔を開けてロータ12の周りを取り巻くように形成されている。ステータ13は、例えば電磁コイルから構成されている。電磁コイルは、例えば、銅などの細線を磁性体の周りに巻回させ、接着剤などの樹脂材料でモールドしたものからなる。こうした接着剤などの樹脂材料は、真空環境では樹脂の構成材料そのものや溶剤などが揮発してガス化し放出されやすい。
【0024】
真空モータ(モータ)10は、ステータ13を構成する電磁コイルに外部から電力を供給することによって、ロータ12の磁気部材22と、ステータ13との間に磁界が生じ、シャフト21が磁気部材22とともに回転する。
【0025】
ステータ13の周囲にはモールド層16が配されている。このモールド層16は、ステータ13に密着して外面を覆うように形成されている。モールド層16は、例えば、熱硬化性樹脂やゴムなどの樹脂材料からなり、更に、ステータ13で生じたガスなどを透過させない緻密な樹脂が好ましい。また、モールド層16自体からもガスが発生しにくい材料であることが好ましい。このような樹脂材料からなるモールド層16によって、ステータ13の周囲は固められている。
【0026】
モールド層16の周囲は、更に金属薄膜17で覆われていることが好ましい。金属薄膜17は、例えば、Al,Cu,Fe,Agや、これらの合金からなる薄膜によって構成されている。このような金属薄膜17は、例えばモールド層16の外面に蒸着、無電解めっき、貼着などの方法によって形成すればよい。金属薄膜17は、モールド層16の露呈領域全体を覆うことが好ましいが、一部領域だけに形成してもよい。
【0027】
ロータ12を構成する磁気部材22の周囲にもモールド層18が配されている。モールド層18は、磁気部材22に密着して外面を覆うように形成されている。モールド層18も、モールド層16と同様の部材、例えば、熱硬化性樹脂やゴムなどの樹脂材料からなり、更に、磁気部材22で生じたガスなどを透過させない緻密な樹脂が好ましい。
【0028】
また、モールド層18自体からもガスが発生しにくい材料であることが好ましい。このような樹脂材料からなるモールド層18によって、磁気部材22の露呈領域は固められている。そして、シャフト21の回転によって、磁気部材22とともにモールド層18も一体に回転する。
【0029】
モールド層18の周囲も、モールド層16と同様に金属薄膜19で覆われていることが好ましい。金属薄膜19は、例えば、Al,Cu,Fe,Agや、これらの合金からなる薄膜によって構成されている。このような金属薄膜19は、例えばモールド層18の外面に蒸着、無電解めっき、貼着などの方法によって形成すればよい。金属薄膜19は、モールド層18の露呈領域全体を覆うことが好ましいが、一部領域だけに形成してもよい。
【0030】
なお、シャフト21の一方の端側には、この真空モータ(モータ)10の軸位置や回転数を検出するためのエンコーダ27がさらに形成されていることも好ましい。こうしたエンコーダ27は、例えば、指標が形成されシャフトと共に回転する回転板と、指標を検出するセンサなどから構成される。
【0031】
以上のような構成の本発明の一実施形態の真空モータ(モータ)10によれば、例えばこの真空モータ10を真空装置における被成膜物(基板)を搬送するための搬送モータとして用い、真空環境となるチャンバ内に設置したとしても、ロータ12の磁気部材22から生じたガスやステータ13から生じたガスが、ハウジング11の外部に放出されることがない。
【0032】
即ち、電磁コイルなどから構成されるステータ13は、周囲をモールド層16によって固められている。更に、このモールド層16の外面も金属薄膜17によって更に覆われている。これによって、ステータ13は、モールド層16によって気密に封止された状態となる。
【0033】
ステータ13を構成する電磁コイルは、例えば、銅などの細線を巻回させ、接着剤などの樹脂材料でモールドしたものからなり、真空環境ではモールドした樹脂そのものや溶剤などが揮発してガス化しやすいが、ステータ13全体をモールド層16によって気密に覆うことで、ステータ13からガスが発生したとしても、真空モータ10の外部にこうしたガスが漏れ出ることを防止する。しかも、モールド層16自体も金属薄膜17によって覆われているので、モールド層16自体から微量のガスが生じたとしても、モールド層16の外部にガスが流出することを防止できる。
【0034】
一方、ロータ12の磁気部材22も、周囲をモールド層18によって固められている。しかも、このモールド層18の外面も金属薄膜19によって更に覆われている。これによって、磁気部材22もモールド層16によって気密に封止された状態となる。
【0035】
磁気部材22は、例えば、永久磁石から構成されており、こうした永久磁石のうち、特に焼結体は内部に微細な空洞があり、真空環境でガスが生じやすいが、磁気材料22の露出面をモールド層18で覆うことによって、磁気部材22からガスが発生したとしても、真空モータ10の外部にこうしたガスが漏れ出ることを防止する。しかも、モールド層18自体も金属薄膜19によって覆われているので、モールド層18自体から微量のガスが生じたとしても、モールド層18の外部にガスが流出することを防止できる。
【0036】
従って、本実施形態の真空モータ10を真空装置のチャンバ内など真空環境になるところに設置しても、真空モータ10のロータ12やステータ13で生じたガスがチャンバ内に放出されることがなく、成膜不良や被成膜物の不純物汚染といった不具合を防止することが可能になる。
【0037】
上述した実施形態では、ロータ12の磁気部材22を永久磁石、ステータ13を電磁コイルから構成しているが、逆にロータの磁気部材を電磁コイル、ステータを永久磁石で構成してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、ロータ12をモールド層16で、また磁気部材22をモールド層18でそれぞれ覆っている。しかし、例えば一方の永久磁石に真空環境においてもガスの発生が少ないものを用いることによって、ロータの磁気材料、あるいはステータのいずれか一方だけを気密に封止するモールド層を配した構成としてもよい。
【0039】
[第二実施形態]
図2は、本発明の第二実施形態におけるモータの一構成例を示す断面図である。
第二実施形態における真空モータ(モータ)30は、ハウジング(外装体)31と、このハウジング31に収容されるロータ32、およびステータ33とを備え、ロータ32は、シャフト41と、このシャフト41の周囲に形成された磁気部材42とを有している。
【0040】
ハウジング31は、例えば、金属や樹脂等から構成され、シャフト41の軸方向Lに沿った2箇所に軸受44a,44bが形成される。シャフト41は、軸受44a,44bによって回転軸方向に沿った2箇所で軸支され、これによりロータ32はハウジング31の内部で回転可能に支持される。また、シャフト41の周面に形成された磁気部材42は、例えば永久磁石から構成されている。
【0041】
ステータ33はハウジング31に固着され、ロータ32に対して所定の間隔を開けてロータ32の周りを取り巻くように形成されている。ステータ33は、例えば電磁コイルから構成されている。
【0042】
ロータ32の磁気部材42と、ステータ33との間には、隔壁部材35が配されている。本実施形態においては、隔壁部材35は、第一隔壁部材36と、第二隔壁部材37とから構成される。第一隔壁部材36は、シャフト41の軸方向Lに沿って広がり、ステータ33のロータ32側露出面を覆うように配されている。
【0043】
ステータ33の両側面にはモールド層46が形成されている。モールド層46は、ステータ33の両側面に密着して覆うように形成されている。モールド層46は、例えば、熱硬化性樹脂やゴムなどの樹脂材料からなり、更に、ステータ33で生じたガスなどを透過させない緻密な樹脂が好ましい。また、モールド層46自体からもガスが発生しにくい材料であることが好ましい。このような樹脂材料からなるモールド層46によって、ステータ33の両側面は固められている。
【0044】
第一隔壁部材36は、モールド層46によって端部を支持されている。即ち、第一隔壁部材36の両端部は、モールド層46によって融着部Mで気密に接合されている。これによって、ハウジング31の内壁、第一隔壁部材36、およびモールド層46で囲まれたステータ33が気密に封止される。
【0045】
第一隔壁部材36は、例えば、Fe、Al、Cu、SUSなど発塵とガス放出の少ない金属板から形成されていれば良い。第一隔壁部材36は、例えば、厚みが0.1mm〜2mm程度の金属板であれば良い。
【0046】
第一隔壁部材36の融着部Mに隣接する部分、および中央付近には、リブ49が形成されている。リブ49は、例えばシャフト41の軸方向Lに沿って広がる第一隔壁部材36を成す金属板の一部を、背骨状に屈曲させた部位である。
【0047】
第一隔壁部材36にリブ49を形成することによって、厚みの薄い軽量な金属板を第一隔壁部材36として用いた場合であっても、第一隔壁部材36が応力によって湾曲したり、座屈してしまうことを防止し、面広がり方向の強度を高めることができる。
【0048】
第二隔壁部材37は、隔壁37aと、この隔壁37aの両端部に形成された支持体37bとからなる。隔壁37aは、シャフト41の軸方向Lに沿って広がり、磁気部材42のステータ33側露出面を覆うように配されている。支持体37bは、磁気材料42の両側面にそれぞれ沿って広がり、隔壁37aよりも厚みが厚くなるように形成されている。
【0049】
こうした支持体37bはシャフト41に取り付けられる。そして、隔壁37aの両端部は、支持体37bに対して溶接によって気密に接合されている。また、支持体37bはシャフト41に対してシール部材48によって気密に封止される。これによって、シャフト41の周面と、第二隔壁部材37によって囲まれた磁気部材42が気密に封止される。そして、シャフト41の回転によって、磁気部材42とともに第二隔壁部材37も一体に回転する。
【0050】
隔壁37aは、例えば、Fe、Al、Cu、SUSなど発塵とガス放出の少ない金属板から形成されていれば良い。また、支持体17bも、Fe、Al、Cu、SUSなどの金属から形成されていれば良い。隔壁37aは、例えば、厚みが0.1mm〜2mm程度の金属板であれば良い。これら隔壁37aと支持体37bとは、互いに異なる部材から構成されるのが好ましいが、同じ部材であっても良く限定されるものではない。
【0051】
シール部材48は、シャフト41の軸心周りに延びるOリングであればよく、真空環境においても弾性が保持される弾性部材からなる。シール部材48を構成する弾性部材の具体例としては、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ニトリル樹脂、アチレンプロピレンゴム、アクリルゴムなどが挙げられるが、真空環境中で構成材料のガスなどが発生しないものを選択することが好ましい。
【0052】
なお、シャフト41の一方の端側には、この真空モータ(モータ)30の軸位置や回転数を検出するためのエンコーダ47がさらに形成されていることも好ましい。こうしたエンコーダは、例えば、指標が形成されシャフトと共に回転する回転板と、指標を検出するセンサなどから構成される。
【0053】
以上のような構成の本発明の第二実施形態の真空モータ(モータ)30によれば、例えばこの真空モータ30を真空装置における被成膜物(基板)を搬送するための搬送モータとして用い、真空環境となるチャンバ内に設置したとしても、磁気部材42から生じたガスやステータ33から生じたガスが、ハウジング31の外部に放出されることがない。
【0054】
即ち、電磁コイルなどから構成されるステータ33は、ハウジング31の内壁面、モールド層46、およびこのモールド層46に端部が融着された第一隔壁部材36によって覆われる。ステータ33を構成する電磁コイルは、例えば、銅などの細線を巻回させ、接着剤などの樹脂材料でモールドしたものからなり、真空環境ではモールドした樹脂そのものや溶剤などが揮発してガス化しやすいが、ステータ33全体をハウジング31の内壁面、モールド層46、および第一隔壁部材36で気密に覆うことによって、ステータ33からガスが発生したとしても、真空モータ30の外部にこうしたガスが漏れ出ることを防止する。
【0055】
一方、ロータ32の磁気部材42は、シャフト41の周面と第二隔壁部材37によって覆われる。しかも第二隔壁部材37を構成する隔壁37aと支持体37bとは、気密に溶接されている。また、支持体37bはシャフト41に対してシール部材48によって気密に取り付けられている。これによって、磁気材料42は、シャフト41の周面と第二隔壁部材37によって囲まれた空間内に気密に封止された状態となる。
【0056】
磁気部材42は、例えば、永久磁石から構成されており、こうした永久磁石のうち、特に焼結体は内部に微細な空洞があり、真空環境でガスが生じやすいが、磁気材料42全体を第二隔壁部材37とシャフト41の周面の間で気密に覆うことによって、磁気部材42からガスが発生したとしても、真空モータ30の外部にこうしたガスが漏れ出ることを防止する。
【0057】
従って、本実施形態の真空モータ30を真空装置のチャンバ内など真空環境になるところに設置しても、真空モータ30のロータ32やステータ33で生じたガスがチャンバ内に放出されることがなく、成膜不良や被成膜物の不純物汚染といった不具合を防止することが可能になる。
【0058】
[第三実施形態]
図3は、本発明の第三実施形態におけるモータの一構成例を示す断面図である。
第三実施形態における真空モータ(モータ)50は、ハウジング(外装体)51、ロータ52、およびステータ53とを備え、ロータ52は、シャフト61、シャフト61の周囲に形成された磁気部材62とを有している。シャフト61は、軸受64a,64bによって回転軸方向に沿った2箇所で軸支されている。ステータ53はハウジング51に固着され、例えば電磁コイルから構成されている。
【0059】
ステータ53の周囲にはモールド層71が配されている。このモールド層71は、ステータ53に密着して外面を覆うように形成されている。モールド層71は、例えば、熱硬化性樹脂やゴムなどの樹脂材料からなり、更に、ステータ53で生じたガスなどを透過させない緻密な樹脂が好ましい。また、モールド層71自体からもガスが発生しにくい材料であることが好ましい。このような樹脂材料からなるモールド層71によって、ステータ53の周囲は固められている。
【0060】
モールド層71の表面、即ちロータ52側露出面には、第一隔壁部材56が形成されている。第一隔壁部材56は、シャフト61の軸方向Lに沿って広がり、モールド層71のロータ52側露出面を覆うように配されている。このような第一隔壁部材56は、モールド層71の表面に、例えば融着によって固定されている。一例として、モールド層71を形成する際に、固化前のモールド材に第一隔壁部材56を配して、このモールド材を固化させるとともに第一隔壁部材56も共に固定する。
【0061】
ロータ52を構成する磁気部材62の周囲にもモールド層72が配されている。モールド層72は、磁気部材62に密着して外面を覆うように形成されている。モールド層72も、モールド層71と同様の部材、例えば、熱硬化性樹脂やゴムなどの樹脂材料からなり、更に、磁気部材62で生じたガスなどを透過させない緻密な樹脂が好ましい。
【0062】
また、モールド層72自体からもガスが発生しにくい材料であることが好ましい。このような樹脂材料からなるモールド層72によって、磁気部材62の露呈領域はモールド層72によって固められている。そして、シャフト61の回転によって、磁気部材62とともにモールド層72も一体に回転する。
【0063】
モールド層72の表面、即ちステータ53側露出面には、第二隔壁部材57が形成されている。第二隔壁部材57は、シャフト61の軸方向Lに沿って広がり、モールド層72のステータ53側露出面を覆うように配されている。このような第二隔壁部材57は、モールド層71の表面に、例えば融着によって固定されている。
【0064】
第一隔壁部材56、第二隔壁部材57は、例えば、Fe、Al、Cu、SUSなど発塵とガス放出の少ない金属板から形成されていれば良い。なお、この実施形態では、第一隔壁部材56、第二隔壁部材57は、モールド層71やモールド層72の露呈部分全体を完全に覆わなくても良く、その大部分を覆うことによって、モールド層71やモールド層72から生じる虞のあるガス(例えば樹脂の揮発成分)の拡散を防止することができる。
【0065】
なお、本発明のモータは、モータの種類に限定されず、各種方式のモータに適用可能である。表1に、本発明の構成を適用可能なモータの種類、およびそのステータ、ロータの組み合わせを例示する。
【0066】
【表1】

【符号の説明】
【0067】
10 真空モータ(モータ)、11 ハウジング、12 ロータ、13 ステータ、16 モールド層、18 モールド層、21 シャフト、22 磁気部材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに回転可能に支持されたシャフトおよび該シャフトの周囲に設けられた磁気部材からなるロータと、該ロータを取り巻くように配されたステータと、を有し、前記ロータと前記ステータとの間に発生させた磁界によって前記ロータを回転させるモータであって、
前記ステータおよび前記磁気部材の少なくともいずれか一方に密着して覆うモールド層を備えたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記モールド層の表面を覆う金属薄膜を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記磁気部材と前記ステータとの間に配された隔壁部材を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項4】
前記隔壁部材は前記モールド層によって端部を支持されていることを特徴とする請求項3記載のモータ。
【請求項5】
前記隔壁部材は前記モールド層に対して融着されていることを特徴とする請求項3または4記載のモータ。
【請求項6】
前記隔壁部材には、屈曲防止用のリブが一体に形成されていることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載のモータ。
【請求項7】
前記磁気部材および前記ステータは、磁石または電磁コイルから構成されていることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載のモータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−27090(P2013−27090A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157775(P2011−157775)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】