説明

ヤシ花糖菓子及びその製造方法

【課題】ヤシ花糖特有の良好な風味を維持しつつ、軽く、サクサクとした食感となめらかな口溶けを有し、スナック菓子風に手軽に喫食でき、また、調味料としては溶解性及び流動性に優れ、且つ通常の保存状態でも固結することなく取扱い性に優れたヤシ花糖菓子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】原料ヤシ花糖塊を破砕して加水し、加水したヤシ花糖混合液がペースト状になるまで煮熟攪拌して水分を蒸発させてヤシ花糖ペーストとし、このヤシ花糖ペーストに空気を攪拌混練して微細気泡含有花糖ペーストとし、この微細気泡含有花糖ペーストを任意の成形型に投入し、除湿雰囲気中で固化させてヤシ花糖菓子を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒糖の一種であるヤシ花糖を用いた菓子の製造方法に関し、特に、板状、タブレット状、スティック状等、需要者が手軽に喫食し易い形状にされたヤシ花糖菓子とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱帯から亜熱帯に及ぶ地域では、サトウヤシに代表されるヤシ類の花序液も含蜜糖の主要な原料となっている。インドネシアにおけるサトウヤシ由来の無漂白の薄褐色の含蜜糖(以下、単にヤシ花糖という)は家内工業的な集規模工場で作られ、糖蜜を除いた分蜜糖に比べて蔗糖含有量は低いがその独特の風味が賞用され、調味料の製造原料や菓子用の甘味料として用いられている。ヤシ花糖は、サトウヤシの花茎に傷を付けて樹液を集め、これを煮詰めて竹筒やココヤシ殻の型に流し円筒形や半球型の固形状にしたものである。ヤシ花糖に含有される主なアミノ酸は酸性アミノ酸であり、甘藷糖よりもグルタミン酸が多く、乳酸とともにピログルタミン酸が主要成分であり、甘味、酸味、旨味の成分特性により、ヤシ花糖がインドネシアの伝統的調味料の製造原料として有効に機能しているという報告がされている(非特許文献1参照。)。
【0003】
近年、健康食品志向の高まりにより、独特の風味を呈し、ミネラル等の栄養成分を含有する黒糖(主としてサトウギビ由来)が好まれる傾向にある。また、黒糖は化学的な漂白や精製が施されていないこともその大きな要因であると考えられる。しかし、市場で販売されている黒糖の多くは硬い塊状であり、そのままでは喫食し難いばかりでなく、調味料として使用する場合も計量し難く、取り扱いに不便である。そこで、これを粉状にして提供されているものもあるが、黒糖の粉末同士は固結しやすいという欠点がある。そこで、粉状の黒糖に脂肪酸エステルを添加して顆粒状に造粒したもの(特許文献1参照。)。粉末状に形成した黒糖に、霧状にした水分を徐々に加え、粉末状黒糖を網目で磨り潰すようにしながら篩いにかけ、その黒糖粉体を成形型に入れて加圧すると共に所定含有水分量を残して加熱乾燥した固形黒糖(特許文献2参照。)。蔗糖の過飽和溶液に対し黒糖蜜を添加して混合し、この混合液から蔗糖結晶を成長させて粗目糖を形成し、この粗目糖の表面に黒糖蜜を散布して混合し、分蜜して被覆することによって還元糖の付着した蔗糖結晶体の表面に黒糖蜜膜を形成した黒糖風味の粗目糖(特許文献3参照。)が提案されている。一方、サトウキビの搾汁液を煮詰める際に、醤油や味噌、植物エキスを添加して、本来の黒糖の風味を損なうことなく、風味豊かな多品種の黒糖を製造する方法(特許文献4参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−191400号公報
【特許文献2】特開2004−24152号公報
【特許文献3】特開2011−45242号公報
【特許文献4】特開2006−136234号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】仲宗根洋子,琉球大学農学部学術報告,2004−12−01,「インドネシア産ヤシと甘藷糖の糖、有機酸およびアミノ酸組成」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、一般市場に出回っている黒糖は、古来から喫食されてきた形態のものが主であり、風味やテクスチャー(食感)に特段の改良はされておらず、包装や中身の大きさを変えただけの商品がほとんどである。また、調味料としても水に溶けやすく、流動性に優れ且つ固結しにくい黒糖の提供が望まれていた。すなわち、従来の黒糖は、密度が高く、硬い塊状となり、表面が凹凸で、舌触りが悪く、溶解し難く、硬くて食べ難く、甘味が強すぎる傾向のものであった。同様に、ヤシ花糖も原料ヤシ花糖塊のままでは、使用する都度削ったりする必要があるため喫食し難く、輸入糖由来の安全性と相俟って取扱い性に優れたヤシ花糖由来の甘味料の開発が求められている。
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、ヤシ花糖特有の良好な風味を維持しつつ、軽く、サクサクとした食感となめらかな口溶けを有し、通常のスナック菓子風に手軽に喫食でき、また、調味料としては溶解性及び流動性に優れ、且つ通常の保存状態でも固結することなく取扱い性に優れたヤシ花糖菓子及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明のヤシ花糖菓子は、サトウヤシ由来のヤシ花糖を主原料とし、これに微細気泡を含有させた状態で、板状又はタブレット状又はスティック状に固化成形したことを第1の特徴とする。また、ナッツ類又は予め焙煎した穀物類から選択される少なくとも一種を副原料とすることを第2の特徴とする。そして、その製造方法が、原料ヤシ花糖塊を破砕して加水し、加水したヤシ花糖混合液がペースト状になるまで煮熟攪拌して水分を蒸発させてヤシ花糖ペーストとし、このヤシ花糖ペーストに空気を攪拌混練して微細気泡含有花糖ペーストとし、この微細気泡含有花糖ペーストを任意の成形型に投入し、除湿雰囲気中で固化させることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以下の優れた効果がある。
(1)ヤシ花糖特有の良好な風味を維持しつつ、軽く、サクサクとした食感となめらかな口溶けを有し、通常のスナック菓子風に手軽に喫食できる。
(2)全体的に微細な気泡を含有するので、口当たりがサクサク滑らかになり、口の中でも解け易く、舌触りもよく、柔らかく食べ易くなることで、普通の菓子風に手軽に喫食できる。また、解け易いことで、コーヒーや紅茶、料理の甘味料としても使用し易くなる。
(3)カビの発生などの品質低下の問題を抑制する。特有の風味とサクサクしたテクスチャーに富み、ヤシ花糖に付加価値を付けることで新たな需要を喚起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るヤシ花糖菓子の製造工程(破砕工程)を示す模式図である。
【図2】本発明に係るヤシ花糖菓子の製造工程(加水工程)を示す模式図である。
【図3】本発明に係るヤシ花糖菓子の製造方法を示す工程(撹拌工程)を示す模式図である。
【図4】本発明に係るヤシ花糖菓子の製造工程(煮熟工程)を示す模式図である。
【図5】本発明に係るヤシ花糖菓子の成形型を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るヤシ花糖菓子の最終製品形態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るヤシ花糖菓子の最終製品形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0011】
本発明に係るヤシ花糖菓子のバイオマス固形燃料の製造工程について概略説明すると、原料ヤシ花糖塊1を破砕して粉砕したヤシ花糖1Aに加水し、加水したヤシ花糖混合液6がペースト状になるまで煮熟攪拌して水分を蒸発させてヤシ花糖ペースト8とし、このヤシ花糖ペースト8に空気を攪拌混練して微細気泡含有花糖ペースト10とし、この微細気泡含有花糖ペースト10を任意の成形型に投入し、除湿雰囲気中で固化させる工程からなる。
【0012】
図1に示すように、本実施例では、まず、30kgの原料ヤシ花糖塊1を粉砕機2で粉砕して粒状とし、図2に示すように、鍋3に入れた粉砕ヤシ花糖1Aに4kg〜5kgの水5を加えた。尚、水5を加える際は、鍋3を計量器4で計りながら行うとよい。加える水5の量は原料に対して5重量%〜10重量%が好ましく、5重量%以下だと後述する微細気泡が発生し難くなり、10重量%以上だと煮熟に時間がかかりすぎるばかりでなく、テクスチャーが劣る。
【0013】
次いで、図3に示すように、加水したヤシ花糖混合液6を常温(25℃程度)雰囲気で撹拌機7で一時間程度撹拌する。次いで、図4に示すように、餡練り機9で混練しながらコンロ11を弱火にして、85℃以下で1時間〜1時間30分程度煮熟し、水分を蒸発させると共に、微細気泡をペースト8中に含有させる。尚、途中、数回に亘って布巾等で濾しながら挟雑物を除去する。
【0014】
最後に、微細気泡含有花糖ペースト10を、図5に示すような複数の成形孔12aを開けたタブレット成形型(シリコン製)12に流し込み除湿雰囲気中で固化させ、目的のヤシ花糖タブレット13を得た。得られたヤシ花糖タブレット13を包装容器(プラスチック製カプセル)14に収納して最終製品とした。尚、最終製品の形態としては、図7に示すような真空パック16された板チョコ型15等でもよい。
【0015】
尚、本製品には、ゴマやナッツ類を加えてバラエティ溢れる製品とすることもできる。ナッツの種類としては、ピーナッツ、アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオなどが挙げられる。これらはホール又はクラシュ状態で市販されているので、自家製のものでも、市販のものでも良い。また、ナッツの他に、麦や米、コーンなどの穀物を使用しても良い。これらの穀物は、予め焙煎して粒状に細かく砕いたものを用いる。焙煎することにより、香りが増すからである。玄米や米や麦、豆類の胚芽を混ぜることもできる。
【0016】
[官能試験]
試食により官能試験を行った。パネラーは12名、内2名は女性、年齢は19〜58歳と幅広くした。味や香りなどの喫食における比較テストである。その結果、従来の黒糖に比べて本発明のヤシ花糖菓子は、美味しいとの評価であった。「食べ飽きない」「繰り返し食べたくなる」「他の人たちにも勧めたい」といった感想が得られた。このようなことから、本発明ヤシ花糖菓子の商品化と需要者への普及を図ることの必要性を実感した。
【符号の説明】
【0017】
1 原料ヤシ花糖塊
1A 粉砕ヤシ花糖
2 粉砕機
3 鍋
4 計量器
5 水
6 ヤシ花糖混合液
7 攪拌機
8 ヤシ花糖ペースト
9 餡練り機
10 微細気泡含有花糖ペースト
11 コンロ
12 タブレット成形型(シリコン製)
12a 成形孔
13 ヤシ花糖タブレット
14 包装容器(プラスチック製カプセル)
15 板チョコ型ヤシ花糖
16 真空パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サトウヤシ由来のヤシ花糖を主原料とし、これに微細気泡を含有させた状態で、板状又はタブレット状又はスティック状に固化成形したことを特徴とするヤシ花糖菓子。
【請求項2】
ナッツ類又は予め焙煎した穀物類から選択される少なくとも一種を副原料とすることを特徴とする請求項1記載のヤシ花糖菓子。
【請求項3】
原料ヤシ花糖塊を破砕して加水し、加水したヤシ花糖混合液がペースト状になるまで煮熟攪拌して水分を蒸発させてヤシ花糖ペーストとし、このヤシ花糖ペーストに空気を攪拌混練して微細気泡含有花糖ペーストとし、この微細気泡含有花糖ペーストを任意の成形型に投入し、除湿雰囲気中で固化させることを特徴とする請求項1記載のヤシ花糖菓子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94132(P2013−94132A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240967(P2011−240967)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(511266472)
【Fターム(参考)】