説明

ヤーンの取扱い装置および取扱い方法

【課題】 ヤーンの製造工程で用いられる簡単な構成の安価なノズルユニットを備え、かつ公知の装置よりも生産性を高めうるヤーンの引出し装置、およびこの装置に関連する方法を提供する。
【解決手段】 合成ヤーンを、延伸工程において取扱うための装置において、入口部と出口部の間で断面積が変化するようになっている、ヤーン通過用の主通路を有する少なくとも2つのノズルを設ける。この主通路に対しては、好ましい方向に流体を供給する少なくとも1つのチャネルを開放させる。これらのノズルは、直列に配置され、第2のノズルにおける主通路の断面積は、第1のノズルの主通路の対応する断面積よりも、少なくとも3%大きくするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ヤーン製造の際におけるヤーンの取扱い装置、特に不織布を得るための紡績工程におけるヤーンの取扱い装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ヤーンを製造する業界においては、フィラメント(単糸)またはヤーン(より糸)を形成するために、種々の製造工程において、加圧された液状ポリマーをノズルユニットに供給する。
【0003】
特に、紡糸−延伸工程においては、紡糸用口金から供給されるヤーンに、その長さ方向の力を加える。この際、各フィラメントはかなりの引張力を受け、ヤーンの径は縮小する。この処理は、ヤーンの強度、剛性、弾性、柔軟性および光沢を増大させ、かつ最終的な長さを長くするなど、ヤーンの特性を向上する役割を果たす。
【0004】
スパンボンド不織布は、紡糸用口金から供給される1つまたは複数のフィラメント群を延伸し、かつ加熱による接着を施すことにより得られる。延伸工程においては、フィラメント群は、通常、高速の圧縮空気が供給される1つまたは複数のノズルを通過する。この際、圧縮空気により、外部からノズル内へ空気が吸引されるベンチュリ効果が生起し、こうして発生する空気流と各フィラメントの間の相互作用により、各フィラメントにはその長さ方向に引張力が生じ、延伸が行われる。
【0005】
本発明の用途として、以下では、合成ヤーンの延伸を例に説明を進めるが、本発明の用途は、この延伸工程に限定されるものではない。
【0006】
従来、ヤーンの製造工程においては、紡糸用口金の下流側に、延伸用のノズルを並列していた。公知のノズルは、紡糸用口金から供給されるヤーンまたはフィラメント群が通る主通路と、この通路に高速で流体を供給するための1本のチャネルを備えている。この主通路に供給される流体は、通常、圧縮空気であり、ヤーンが通る方向と概ね同じ方向に、または多くの場合、ヤーンが通る方向とわずかな角度をなして流れる。
【0007】
圧縮空気は、主通路を高速で通過し、ヤーンと相互作用を引き起こす。すなわち、主通路を通過しつつ、ヤーンを伸張するのに十分な力(引張力)をヤーンに及ぼす。高速の圧縮空気は、ベンチュリ効果によって、ノズルの外から主通路内に空気を引き込む。
【0008】
ノズルに供給される圧縮空気の流速と圧力は、コンプレッサ等により、ノズルの上流側で制御される。
【0009】
主通路に供給される空気流の量と速度を制御しうるノズルは、市場で入手することができる。従来、このような空気流の容積と速度の制御は、給気チャネルの1つまたは複数の部位を適宜調整することによって行っていた。すなわち、給気チャネルは、空気流の加速機能を有する部位の径を適宜狭めることができ、また部位の径を調整するのに適した手段を設けることもできる。例えば、給気チャネルは、その表面を稼動させて径を区画しうるよう、可変的な形状をもつようにすることができる。
【0010】
このように、空気流の速度は、延伸されるヤーンの種類、番手、適用されるべき引張力等、延伸工程の要請に応じて増減することができる。
【0011】
ノズルに供給される空気流の速度が増加すると、ヤーンに適用される引張力は増大する。この結果、ヤーンの通過速度は増加するため、生産量は増大する。一方、コンプレッサとノズルを含む工程における負荷の損失も増大する。この負荷の損失は、空気流の消費量を多くすれば補償することができるが、こうすると、コンプレッサのエネルギー消費量が増大し、またコンプレッサの補修費用も嵩むため、生産工程の稼動費が増大することとなる。
【0012】
さらに、ノズルに供給される空気流の流量、またはノズルにおける空気流の速度を高めるためには、コンプレッサによる空気の供給圧力を増大させる必要がある。空気の供給圧力が増大すると、空気の温度が上昇するが、この温度の上昇により、ヤーンの品質が悪影響を被らないよう、空気流がノズルに到達する前に、例えばコンプレッサに内部クーラを搭載するなどして、空気流を冷却する装置が設けられる。しかし、このような空気流の冷却装置は、エネルギー消費量が大きいため、延伸工程全体の利益率が低下するという欠点がある。
【0013】
延伸工程以外でヤーンの処理に用いられるノズルにも、同様の欠点がある。例えば、ヤーンを撚る工程で用いられるノズルも、関連する工程の負荷にかなりの損失を生じさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のようなヤーンの種々の製造工程において用いられている公知のノズルの欠点を克服しうる、簡単な構成の安価なノズルユニットを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、ヤーンに適用される引張力を最大にすることができ、同時に、ノズルに供給される流体の圧力と温度を最低限のものにしうるヤーンの引出し装置を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、公知の装置よりも、生産性を高めうるヤーンの引出し装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記およびその他の目的は、本発明に係る、入口部と出口部の間で断面積が変化するようになっている、ヤーン通過用の主通路を有する少なくとも2つのノズルを備え、かつ前記各主通路に対して、好ましい方向に流体を供給する少なくとも1つのチャネルが開放されているヤーンの取扱い装置であって、前記第1および第2のノズルは、直列に配置され、第1のノズルにおける主通路の出口部は、第2のノズルにおける主通路の入口部と気密に連通し、かつ第2のノズルにおける主通路の断面積は、第1のノズルにおける主通路の対応する断面積よりも、少なくとも3%大きくなっていることを特徴とするヤーンの取扱い装置によって実現される。
【0018】
ノズルの断面が円形の場合、第2のノズルにおける主通路の断面積が、上記の通り、第1のノズルにおける主通路の断面積よりも大きくなるには、第2のノズルにおける主通路の断面の径が、第1のノズルにおける主通路の対応する断面の径に比して、少なくとも約3%大きくなければならない。
【0019】
第1および第2のノズルにおける主通路の入口部と出口部は、それぞれのノズルにおける各別の構成要素から構成されるのが好ましい。チャネルを区画する面は、この主通路の入口部と出口部を構成する要素の面であるのが好ましい。例えば、チャネルは、並列して軸方向に延びるこれら要素の面の間の隙間として構成することもできる。
【0020】
チャネルを区画する構成要素は、チャネルの幾何形状の制御を通じて、流体の供給量と速度を制御しうるよう、互いに他に対して移動しうるのが好ましい。
【0021】
主通路は、種々の形状を有することができる。例えば、断面円形、矩形、六角形等の管状とされることもあれば、並列して軸方向に延びる2つの面の間の隙間として構成することもできる。
【0022】
本発明の一実施形態においては、各ノズルの主通路の入口部は、概ね管状であり、他方、出口部は、漏斗状の第1の部分、および円筒状の第2の部分を有するのが好ましい。また、入口部の少なくとも一部は、出口部の漏斗状の第1の部分に、接触することなく挿入されるのが好ましい。さらに、これら入口部と出口部の間の間隙は、チャネルの一部をなしているのが好ましい。
【0023】
本発明の他の実施形態においては、主通路は、この取扱い装置の外部の要素、例えば他のノズルユニットの表面と、第1のノズルおよび第2のノズルの各表面とを組み合わせることによって区画されている。この実施形態においては、ノズルに外部の要素を並列させることにより、上記好ましい実施形態と同様の特性を有する主通路が得られる。
【0024】
主通路の断面が円形の場合、第1のノズルにおける入口部の内径は、概ね9mmであるのが好ましく、他方、出口部の円筒状をなす第2の部分の内径は、概ね12mmであるのが好ましい。また、第2のノズルにおける入口部の最小の内径、すなわち最も狭隘な部分の径は、概ね9.3mmまたはこれ以上であるのが好ましく、他方、出口部の第2の部分の内径は、概ね12.4mmまたはこれ以上であるのが好ましい。
【0025】
本発明の一様相によれば、第1のノズルの主通路の出口部は、第2のノズルの主通路の入口部と気密に連結されている。第1および第2のノズルの各主通路を気密に接続すると、チャネルを通じて供給される流体の速度が速いときに、主通路で生ずるベンチュリ効果を最適なものにすることができる。
【0026】
本発明に係るノズルユニットは、ポリアミド、ポリエステル、またはオレフィン繊維から製造される合成ヤーンの延伸工程で用いるのが適している。この場合、上述の流体、例えば空気は、概ね、ヤーンが通過する方向、またはこの方向とわずかな角度をなす方向に向けて供給するのが好ましい。
【0027】
本発明に係る、少なくとも2つのノズルを直列に配置したヤーン取り扱い装置は、合成ヤーンの延伸に用いる場合、ただ1つのノズルを用いる公知の装置と比べて、生産性を顕著に向上させることができる。例えば、ヤーンの処理速度は、従来の倍の約5000m/minとなる。
【0028】
ヤーンに適用される引張力も、公知の装置におけるそれと比べて、約2倍になる。さらに、ヤーンに適用される引張力が同じ場合には、本発明に係るノズルユニットにおける圧縮空気の圧力は、公知の装置における通常の圧縮空気の圧力と比べて、約50%ですむため、コンプレッサのエネルギー消費、およびノズルに供給される空気の温度に関して、顕著な効果がみられる。実際、この空気の温度は、公知のノズルを用いた場合の温度と比べて、数10℃低くなる。
【0029】
本発明に係るヤーン取扱い装置を用いると、公知の装置と比べて、流体、特に圧縮空気を低圧で用いることができる。しかし、従来よりもかなり低い空気圧でヤーンの延伸を行うにもかかわらず、性能は、これに比例して低下することはなく、むしろ予想を上回るものとなる。
【0030】
空気圧を50%低下させても、空気圧を低下させない従来の装置と同じ成果にとどまらず、むしろこれを上回る成果が得られる。このような結果は、予想しえないものである。さらに、空気圧を減少させると、例えば、コンプレッサから供給される流体(圧縮空気)の冷却に係るエネルギー消費が減少するため、装置の稼動コストが低減される。
【0031】
流体は、紡糸口金から供給されるヤーンに、10〜30℃の温度の下に衝突しなければならないところ、本発明に係る装置で用いられる流体(この場合、圧力0.8barの空気流)の温度は、約80℃である。よって、紡糸と延伸の工程に問題が生じないように、空気流は、ヤーンに衝突する前に、冷却しなければならない。
【0032】
他方、公知の装置においては、1.7barの圧力で供給される空気の温度は、約120℃である。したがって、公知の装置においては、空気流の温度を、本発明に係る装置よりも、大きく低下させなければならず、エネルギー消費量も増大する。
【0033】
本発明に係る装置においては、空気圧が低くても良好な生産性が得られるため、圧縮空気や他の加圧流体を生成する際、コンプレッサの代わりに、高圧ファン等の加圧システムを用いることができ、経済的に有利である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、簡単な構成の安価なノズルユニットが提供される。また、本発明の装置は、ヤーンに適用される引張力を最大にし、同時に、ノズルに供給される流体の圧力と温度を最低限のものにすることができる。さらに、本発明の装置を用いると、公知の装置に比べて、ヤーンの生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
上記以外の本発明の目的、詳細、特徴および効果は、添付図面を参照して行う以下の例示としての説明から明らかになると思う。
【0036】
図1は、本発明に係るノズルユニットJの模式的断面図である。A−A線は、紡糸用口金から供給されるヤーン(図示せず)がノズルユニットJ内を移動するおおよその軌跡を示す。図1の断面は、A−A線を含む平面である。
【0037】
ノズルユニットJは、A−A線に沿って、すなわち、ヤーンが移動する上流方向から下流方向にわたって配置された、少なくとも1つの第1のノズル1と、少なくとも1つの第2のノズル2とを備えている。この構成は、以下で説明するように、特に延伸工程において、単一のノズルしか備えていない公知のノズルユニットにはみられない効果を発揮する。
【0038】
各ノズル1,2は、処理されるヤーンが通過する主通路を有するのが好ましい。ノズル1は主通路3を、ノズル2は主通路4を有している。
【0039】
主通路3,4は、種々の形状とすることができる。例えば、図1の主通路3,4は、概ね円筒形状である。すなわち、主通路3,4のA−A線と直交する断面は、円形である。しかし、主通路3,4の断面は、矩形や六角形にすることもできる。また、主通路は、並列して軸方向に延びる2つの面の間の隙間として構成することもできる。
【0040】
各主通路3,4は、入口部Iと出口部Oを有しており、入口部Iと出口部Oの間に、通常、少なくとも1つの狭隘部を有する。このような構成により、流体が高速で主通路3,4に供給されたときに、ベンチュリ効果を得ることができる。すなわち、ベンチュリ効果によって、ノズルユニットJの外部から、空気が、第1のノズル1の入口部Iに吸引される。
【0041】
主通路3,4は、単一の管状部材の内側に形成することも、図1に示すように、複数の部材の表面を組み合わせることによって区画することもできる。主通路3は、部材5と6を組み合わせることにより形成されており、他方、主通路4は、部材7と8を組み合わせることにより形成されている。部材5,6および7,8は、部材5と6の間、および部材7と8の間に、少なくとも1つの間隙を形成するよう、互いに隣り合わせに配置されている。この間隙は、主通路3と4に流体を供給するチャネルとなるのが好ましい。
【0042】
この実施形態におけるように、ノズル1と2が断面円形の場合は、流体の供給チャネル9(部材5と6の間に形成されている)および10(部材7と8の間に形成されている)は、概ね円錐形状をなす。チャネル9と10には、加圧された流体、例えば圧縮空気が供給される。チャネル9,10は、このような流体を、主通路3と4を通過するヤーンに向けて導く役割を果たす。一般に、チャネル9と10は、主通路3と4に供給される流体の速度を高めるよう、先細り形状となっている。この先細りの方向は、概ねA−A線の方向であるか、またはこのA−A線方向とわずかな角度をなす方向である。
【0043】
ノズルユニットJには、ノズル1,2に供給される加圧された流体の流れを制御する手段を設けることができる。例えば、ノズルユニットJには、加圧された流体の流量を制御するバルブを設けることができる。このような流体の流れを制御する手段は、チャネル9,10の少なくとも一方の径、または幾何形状を変化させることにより、流体の流量または速度を制御する。
【0044】
部材5と6は、可動式のものであるのが好ましい。すなわち、部材5と6は、チャネル9の最終部位の径を縮小または拡張しうるよう、動かすことができるのが好ましい。例えば、部材5は、A−A線に沿って動かすことができる。他方、部材6は、これと直交する方向に動かすことができる。逆に、部材6をA−A線に沿って動かしうるものとし、部材5をこれと直交する方向に動かしうるものとすることもできる。この外、両部材とも、A−A線の方向、およびこれと直交する方向に動かしうるようにすることもできる。
【0045】
第2のノズル2における部材7および8も、部材5および6と同様に、チャネル10における圧縮空気の流れを制御するため、互いに動かすことができる。
【0046】
図1において、圧縮空気の流れは、矢印Pで示してある。圧縮空気は、コンプレッサ等からチャネル9,10に供給される。チャネル9と10には、それぞれ独立に圧縮空気を供給することもできるが、好ましくは、チャネル9を、適当なダクト11を介して、チャネル10との間で流体を通しうるようにし、チャネル10からチャネル9へ、圧縮空気を送り込むのがよい。圧縮空気の流れは、ヤーンのタイプ(フィラメントの材料と太さ等)に応じて、チャネル9と10の幾何形状を変化させることによって制御される。
【0047】
ノズルユニットJにおいては、圧縮空気は、チャネル9から、矢印9aで示す方向に沿って主通路3に供給され、同様に、チャネル10から、矢印10aで示す方向に沿って主通路4に供給される。
【0048】
第1のノズル1の出口部6aは、第2のノズル2の部材7と気密に連結されている。このような構成のため、主通路3と4は、1本のベンチュリ管を構成することとなる。チャネル9と10を通して主通路3,4に注入された圧縮空気または流体は、ヤーンと衝突するだけでなく、第1のノズル1の入口部Iを介して、外部の空気をベンチュリ管に吸い込む。
【0049】
第2のノズル2の入口部Iは、ノズルの形状をなしており、ヤーンが通過する方向の上流側に位置する出口部の一部分6bに比して、狭隘な部位を有している。
【0050】
本発明の一様相によれば、第2のノズル2の主通路4の断面積は、第1のノズル1の主通路3のそれよりも大きい。この様相の特定の態様においては、主通路4の断面積は、主通路3のそれよりも、少なくとも3%大きくなければならない。このような断面積の関係をいう場合、主通路3と4の各断面は、A−A線と直交し、対応する各入口部Iの周縁から等距離にあるもの同士を比較している。
【0051】
ノズルの断面が円形の場合、上記の通り、主通路4の断面積が、主通路3のそれよりも大きくなるには、主通路4の断面の径が、主通路3の対応する断面の径に比して、少なくとも約3%大きくなければならない。
【0052】
以下では、純粋な例示として、2つのノズルが直列式に配列された、本発明の実施例を説明する。この実施例においては、第1のノズル1の入口部Iの内径D1は、約9mmであり、その出口Oの一部分6bの内径D2は、約12mmである。他方、第2のノズル2の入口部Iの内径D3は、約9.3mm、またはそれ以上であり、その出口Oの一部分8bの内径D4は、約12.4mm、またはそれ以上である。
【0053】
このような構成は、ヤーンの連続的な延伸に用いられる公知の単一のノズルと比較した場合に、とりわけ有利である。
【0054】
第1の利点は、ノズル1と2に供給される圧縮空気の圧力が低い場合でも、主通路3と4において生じるベンチュリ効果が、公知の単一のノズルと比較して、きわめて大きいということである。ベンチュリ効果が大きいと、ヤーンの流速が大きくなり、またこれに適用される引張力も増大する。よって、本発明に係る複数のノズルユニットJを用いた生産システムは、生産性が高い。
【0055】
下記の表1は、図1に示すノズルユニットJを用いるヤーンの延伸装置と、公知の単一のノズルを用いる延伸装置において、性能(および関連する作動パラメータ)を比較したものである。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から分かるように、本発明に係るノズルユニットJを備える装置は、公知の単一のノズルを備える装置と比較して、圧縮空気の圧力が約50%低い場合でも、ヤーンの速度は約100%速く、ヤーンに適用される引張力は約75%大きい。さらに、コンプレッサから供給される圧縮空気の温度(ノズルユニットJに供給される前に冷却されなければならない)は、公知の装置におけるものよりも約40℃低い。これは、ヤーンの品質、および冷却に係るエネルギー消費の観点から、明らかに有利である。
【0058】
したがって、本発明に係る装置は、公知の装置に比べて、ヤーンの生産性を向上することができ、また、同じ生産性の下で、チャネル9と10へ供給される圧縮空気の圧力を低下させることができるため、エネルギー消費量を顕著に削減することができる。例えば、ノズルユニットJには、コンプレッサの代わりに、高圧ファンによって圧縮空気を供給することができる。高圧ファンは、平均的なエネルギー消費量が少なく、コンプレッサに比べて、保守にかかる費用も安価である。
【0059】
本発明に係る装置は、第2のノズル2の下流側に、第3のノズル(通常、複数個)を備えることができる。重要なことは、各ノズルの主通路が、この上流側または下流側のベンチュリ管の圧力とは異なる圧力の下で作用するベンチュリ管を構成することである。
【0060】
直列に配列される各ノズルは、図1に示すノズル1の主通路3とノズル2の主通路4との関係に準じて、その上流側のノズルと比べて、断面積が少なくとも3%大きくなるようにしなければならない。
【0061】
さらに、本発明に係る装置は、ヤーン製造の種々の工程(例えば、ヤーンを撚る工程)においても用いることができる。ノズルに供給される流体の圧力が、公知の装置におけるものよりも低いときには、ノズルユニットJは、負荷の損失が最小となり、明らかに、ヤーンを撚る工程におけるコストに関して、よい効果を及ぼす。
【0062】
ノズルユニットJ、およびこれが装填される装置は、紡糸ヘッドから供給されるヤーン、とりわけ合成ヤーンの延伸工程に、特に適している。本発明に係るノズルユニットを用いて試験を行ったところ、公知の単一のノズルと比べたノズルユニットJの効果は、このノズルユニットJをオレフィン材料、ポリアミド、ポリエステル等からなるヤーンの延伸、およびスパンボンド不織布の製造に用いる場合に、特に顕著であった。
【0063】
図2は、本発明の他の実施形態を示す。ノズルユニットJは、処理されるヤーンの通路と平行なA−A線の一方の側に位置している。したがって、主通路3,4は、側方に開放されており、ノズルユニットJの外部の構成要素の表面によって区画されている。例えば、ノズルユニットJは、同種のノズルユニットまたは壁体(図示せず)と対向して設けることができ、この場合、主通路3,4は、ノズルユニットJと他の構成要素との間に位置することとなる。
【0064】
本発明に係る装置は、合成ヤーンを取扱う工程、とりわけ紡糸口金から供給される合成ヤーンの延伸工程に用いると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係るノズルユニットを含む装置の模式的断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るノズルユニットを含む装置の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 第1のノズル1
2 第2のノズル2
3,4 主通路
5,6,7,8 部材
9,10 チャネル
11 ダクト
I 入口部
J ノズルユニット
O 出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口部(I)と出口部(O)の間で断面積が変化している、ヤーン通過用の主通路(3)(4)を有する少なくとも2つのノズル(1)(2)を備え、かつ前記各主通路に対して、好ましい方向に流体を供給する少なくとも1つのチャネル(9)(10)が開放されているヤーンの取扱い装置において、
前記第1および第2のノズル(1)(2)は、直列に配置され、第1のノズル(1)における主通路(3)の出口部(O)は、第2のノズル(2)における主通路(4)の入口部(I)と気密に連通し、かつ前記主通路(4)の断面積は、前記主通路(3)の対応する断面積よりも、少なくとも3%大きくなっていることを特徴とするヤーンの取扱い装置。
【請求項2】
前記各ノズル(1)(2)の入口部(I)および出口部(O)は、互いに他に対して動きうる異なる構成要素(5)(6)(7)(8)に設けられていることを特徴とする請求項1記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項3】
前記チャネル(9)(10)の少なくとも一方を区画する面は、前記可動構成要素(5)(6)(7)(8)の面であることを特徴とする請求項1または2記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項4】
前記主通路(3)(4)は、この取扱い装置の外部の要素、または他のノズルユニットの表面と、前記第1のノズル(1)および第2のノズル(2)の各表面とを組み合わせることによって区画されていることを特徴とする請求項3記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項5】
前記主通路(3)(4)の入口部(I)は、概ね管状であり、主通路(3)(4)の出口部(O)は、漏斗状の第1の部分(6a)(8a)、および円筒状の第2の部分(6b)(8b)を有し、前記入口部(I)の少なくとも一部は、前記出口部(O)の第1の部分(6a)(8a)に、接触することなく挿入されており、これら入口部(I)と出口部(O)の間の間隙は、前記チャネル(9)(10)の少なくとも一方の一部をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項6】
前記第1のノズル(1)における入口部(I)の内径(D1)は、概ね9mmであり、このノズル(1)における出口部(O)の第2の部分(6b)の内径(D2)は、概ね12mmであり、前記第2のノズル(2)における入口部(I)の最小の内径(D3)は、概ね9.3mmまたはこれ以上であり、このノズル(2)における出口部(O)の第2の部分(8b)の内径(D4)は、概ね12.4mmまたはこれ以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項7】
前記第1のノズル(1)の主通路(3)の出口部(O)は、前記第2のノズル(2)の主通路(4)の入口部(I)と気密に連結されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項8】
前記流体を供給する好ましい方向は、概ね、前記ヤーンが通過する方向(A−A線方向)であるか、またはこの方向とわずかな角度をなす方向であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項9】
前記流体は空気であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項10】
前記ヤーンは、ポリアミド、ポリエステル、またはオレフィン繊維から製造される合成ヤーンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置の使用方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置を用いるヤーンの取扱い方法。
【請求項13】
前記ヤーンの取扱いを、主として延伸工程において行うことを特徴とする請求項12記載のヤーンの取扱い方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載のヤーンの取扱い装置を用いて処理されるヤーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate