説明

ユウロピウムドープされたオルトケイ酸塩を含む発光体混合物

本発明は、3つまたは4つ以上のケイ酸塩発光体を含む新規の発光体混合物に関する。本発明はさらに、電子および電気光学デバイス、特にバックライティング用途のための発光ダイオード(LED)におけるこれらの混合物の使用に関する。本発明はさらに、該発光体を含むLEDに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのケイ酸塩発光体を含む、新規の発光体混合物に関する。本発明はさらに、電子および電気光学デバイスにおける、特に発光ダイオード(LED)における、これらの混合物の使用に関する。本発明はさらに、該発光体を含むLEDに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは、液晶ディスプレイ(LCディスプレイ)におけるバックライティングとしての使用に対する重要性が増加してきている。これらの新規の光源は、従来の冷陰極蛍光灯(CCFL)に対し、多数の利点、例えば長寿命、潜在的なエネルギー節約、有害な材料(例えばCCFLにおける水銀など)の欠如などを有する。
かつて、青色、緑色および赤色光を発するLEDの配列が、LCのTV用途に対するバックライト源として採用された。しかし、このマルチチップの方法は、いくつかの短所を有する:3つの異なるチップ物質を混合し、カラーポイントなどの光パラメーターの均一性および安定性を確保することは、極めて困難である。
【0003】
それゆえpcLED(「発光体変換LED」)が、バックライティングとしての使用のための光源として導入されてきた。これらは通常、LEDチップの青色光発光とともに、1つの緑色発光体および1つの濃赤色発光体を含み、それらはカラーフィルターの透過スペクトル(スペクトルの青色、緑色および赤色領域における透過帯域)に一致する。この種のセットアップは、理論上は、通常のsRGBよりもはるかに広い色域を容易にする。好適な品質の利用の制限のため、良好な色域を有するさらに最適化された発光体および/または発光体混合物に対する要求が、未だに存在する。
【0004】
驚くべきことに、バックライティング用途のための十分な色域が同様に、式I
BaSrCaSiO:zEu (I)
式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2になる条件(w+x+y+z=2)である
で表される3つまたはた4つ以上のケイ酸塩発光体を含む発光体混合物であって、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が緑色光を発し、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が黄色光を発し、および1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が橙色光を発し、ならびに緑色発光体対黄色発光体対橙色発光体の重量比が1.8〜4.0:0.1〜4.0:0.8〜3.0である、前記発光体混合物を含むLEDにより達成されることができることが見出された。
【0005】
それゆえ、本発明の第1の態様は、式I
BaSrCaSiO:zEu (I)
式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2になる条件(w+x+y+z=2)である
で表される3つまたはた4つ以上のケイ酸塩発光体を含む発光体混合物であって、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が緑色光を発し、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が黄色光を発し、および1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が橙色光を発し、ならびに緑色発光体対黄色発光体対橙色発光体の重量比が1.8〜4.0:0.1〜4.0:0.8〜3.0である、前記発光体混合物である。
【0006】
十分な色域は、sRGB範囲の良好な占有領域;つまり、CIE1931による3つのsRGBカラーポイントを含むトライアングルができるだけ大きい、CIE1931色度図でのカラーフィルターを含むバックライティング源の色域三角の領域を意味する。TV用途に好適である良好な占有範囲は、90%より大きい範囲、好ましくは95%より大きい範囲が占有される場合に達成される。
【0007】
オルトケイ酸塩は、濃赤色窒化物の混合物に対して、多数の利点を有する:
それらはさらにより広範に利用可能であり、より安価であり、そしてそれらは基本式(Ca,Sr,Ba)2−xSiO:Euで表される組成物におけるわずかな変化による、非常に小さなステップでのそれらの蛍光帯域のマッチングを可能にする。これは、カラーフィルターの透過曲線の最適化されたマッチングを可能にする。
驚くべきことに、特に、複数のオルトケイ酸塩、例えば黄色タイプおよび橙色タイプとともに緑色がかったタイプを混合することにより得られる混合物が、単一のオルトケイ酸塩発光体と比較して、より広い帯域を呈することが見出された。より広い発光帯域を有するLEDは、青色領域(LEDチップ発光による)および緑色利用域(発光体発光による)においてだけでなく、赤色領域(発光体発光による)において十分なスペクトルパワーを確保するために、重要である。
【0008】
WO02/054502は、2つまたは3つの発光体、好ましくは2つのケイ酸塩発光体およびさらなる発光体(アルミン酸バリウムマグネシウムまたはアルミン酸ストロンチウムマグネシウム:Eu)を含む発光体混合物を記載する。
WO2007/018569は、(Ca,Sr,Ba,Mg,Zn)SiOのものに本質的に対応する結晶構造を有する第1の相および(Ca,Sr,Ba,Mg,Zn)SiOのものに本質的に対応する結晶構造を有する第2の相を含む、少なくとも2つのケイ酸塩に基づく相を有する発光体組成物であって、該組成物の少なくとも1つの相がMgを含み、および該組成物の少なくとも1つの相がドーパントF、Cl、Br、SまたはNを含む、該発光体組成物を記載する。
KR−2005−23990は、黄色、緑色および橙色に基づく発光体混合物を、70:20:10〜95:4:1、好ましくは75:16.8:8.2または80:13.6:6.4の量比で含み、少なくとも1つのオルトケイ酸塩に基づく蛍光体が用いられる、圧縮成形樹脂層を有するLEDを記載する。該黄色蛍光体は、該混合物の主成分を形成する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、式I
BaSrCaSiO:zEu (I)
式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2になる条件(w+x+y+z=2)である
で表される3つまたはた4つ以上のケイ酸塩発光体を含む発光体混合物であって、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が緑色光を発し、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が黄色光を発し、および1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が橙色光を発し、ならびに緑色発光体対黄色発光体対橙色発光体の重量比が1.8〜4.0:0.1〜4.0:0.8〜3.0、好ましくは1.8〜2.5:0.8〜1.3:1.8〜2.5である、前記発光体混合物に関する。
【0010】
高度に好ましいのは、式I
BaSrCaSiO:zEu (I)
式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2になる条件(w+x+y+z=2)である
で表される3つまたはた4つ以上のケイ酸塩発光体を含む発光体混合物であって、
・ 緑色発光蛍光体が、Baw1Srx1SiO:z1Eu、式中、w1=0.80〜1.85;x1=0.10〜1.25およびz1=0.05〜0.20、
・ 黄色発光蛍光体が、Baw2Srx2Cay2SiO:z2Eu、式中、w2=0.10〜0.80;x2=1.0〜1.80;y2=0.0〜0.2およびz2=0.05〜0.20、
・ 橙色発光蛍光体が、Baw3Srx3Cay3SiO:z3Eu、式中、w3=0.03〜0.10;x3=0.90〜1.50;y3=0.20〜0.80およびz3=0.05〜0.20
である、前記発光体混合物に関する。
【0011】
本発明はさらに、第1のケイ酸塩蛍光体が1つまたは2つ以上のさらなる蛍光体と混合される、発光体混合物の製造方法に関する。蛍光体は周知の化合物であり、固形相拡散合成により、または同様に湿式化学合成により、製造されることができる(William M. Yen, Marvin J. Weber, Inorganic Phosphors, Compositions, Preparation and optical properties, CRC Press, New York, 2004、またはWO02/054502を参照)。
【0012】
本発明はさらに、窒化インジウムアルミニウムガリウム半導体およびBaSrCaSiO:zEu、式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、yおよびzが合計2(w+x+y+z=2)になる条件である、を含む3つまたは4つ以上のケイ酸塩発光体を含む光源であって、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が緑色光を発し、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が黄色光を発し、および1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が橙色光を発し、緑色蛍光体対黄色蛍光体対橙色蛍光体の重量比が1.8〜4.0:0.0〜4.0:0.8〜3.0、好ましくは1.8〜2.5:0.8〜1.3:1.8〜2.5であることを特徴とする、前記光源に関する。
【0013】
窒化インジウムアルミニウムガリウム半導体は、典型的には、式InGaAlN、式中、0≦i、0≦j、0≦kおよびi+j+k=1である、を有する。
光源は、好ましくは、対応する変換発光体との組み合わせで、好ましくは白色光または実質的に白色光を発する、青色発光のInGaN半導体ダイオードを含有する、ディスプレイ用途のための発光ダイオード(LED)またはLEDバックライトである。このInGaN半導体ダイオードは、典型的には、最大430nm〜480nmの発光を有し、および好ましくは、非常に高い効率、および効率における非常にわずかな低下のみを伴う長寿命を有する。
発光体層(発光体混合物)は、好ましくは、チップの表面上に直接配置されることができ、またはチップの上および/または周囲に特定の容量で分配されることができ、またはチップからの特定の距離で層にまたは容量で配置されることができる(「リモート発光体」)。
【0014】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の光源を有する、バックライティングシステムに関する。
本発明によるバックライティングシステムは、例えば、光導波路およびアウトカップリング構造を有する、「直接式」バックライティングシステムまたは「側面式」バックライティングシステムであることができる。バックライティングシステムは、通常ハウジング内に配置され、好ましくは内部上に反射体を有する、白色光源を有する。バックライティングシステムはさらに、少なくとも1つの拡散板を有してもよい。カラーイメージを作り出し、および表示するために、液晶ユニットはカラーフィルターを備える。カラーフィルターは、赤色、緑色または青色光のいずれかを透過するモザイク状のパターンのピクセルを含有する。カラーフィルターは好ましくは、第1の偏光板および液晶セルの間に配置される。
【0015】
本発明はさらに、少なくとも1つの、好ましくは青色発光の半導体ダイオード、および上で定義される発光体混合物を含む少なくとも1つの発光体層を含む、少なくとも1つの白色光源を有する少なくとも1つのバックライティングシステムを装着した、液晶ディスプレイに関する。
液晶ディスプレイは通常、液晶ユニットおよびバックライティングシステムを有する。液晶ユニットは典型的には、第1の偏光板および第2の偏光板ならびに、それぞれが光透明電極のマトリックスを保持する2つの透明層を有する液晶層を含む。液晶物質が、2つの基板の間に配置される。液晶物質は、例えば、TN(ねじれネマチック)液晶、STN(超ねじれネマチック)液晶、DSTN(2重超ねじれネマチック)液晶、FSNT(フォイル超ねじれネマチック)液晶、VAN(垂直配向ネマチック)液晶またはOCB(光学補償ベンド)液晶を含む。液晶セルは2つの偏光板によりサンドイッチ様の方式で包囲され、第2の偏光板は観察者により見られることができる。
【0016】
また、モニター用途に対して非常に高度に好適であるのは、IPS(平面内スイッチング)技術である。TNディスプレイと対照的に、その電界内で液晶分子が切り替えられる電極は、IPSセルにおいて液晶層の片側に設置されるのみである。得られる電界は不均一であり、第1近似に対し、基板表面に平行に配向される。分子は対応して基板表面(「平面内」)において切り替えられ、その結果、TNディスプレイと比較して透過密度の顕著に低い視野角依存性となる。
もう1つの、広視野角に対する良好な光学特性のためのあまり周知でない技術は、FFS技術およびそのさらなる発展であるAFFS(発展型フリンジ領域切り替え)技術である。これは、IPS技術に類似する機能原理を有する。
【0017】
本発明のさらなる側面は、本明細書中に記載される1つまたは2つ以上の発光体混合物を含む電子または電気光学デバイスに関する。さらなる側面は、本明細書中に記載される発光体混合物の、電子または電気光学デバイスにおける使用に関する。特に好ましいデバイスは、バックライティング用途のためのLEDである。
電子または電気光学デバイスはまた、例えば、有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜トランジスタ(TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機レーザーダイオード(O−laser)、有機集積回路(O−IC)、無線自動識別(RFID)タグ、光検出器、センサー、論理回路、記憶素子、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電膜、伝導性基板または伝導構造、光伝導体、電子写真用素子あるいは有機発光トランジスタ(OLET)であることができる。
【0018】
用語の定義
用語「発光体混合物」は、2つまたは3つ以上の発光体が互いに混合され、異なる物性を有する新規の組成物を作り出す発光体混合物を意味する。
用語「緑色放射発光体」は、508nm〜550nmの間の波長において少なくとも1つの放射最大値を有するケイ酸塩発光体を意味する。
用語「橙色放射発光体」は、586nm〜625nmの間の波長において少なくとも1つの放射最大値を有するケイ酸塩発光体を意味する。
用語「黄色放射発光体」または「発光体が黄色光を放射する」は、551nm〜585nmの間の波長において少なくとも1つの放射最大値を有する発光体を意味する。
【0019】
用語「固形拡散法」(「混合および燃焼」法)は、酸化出発物質が粉末として混合され、混合物が粉砕され、そして粉砕された粉末が最大7日間、随意に還元性雰囲気中で、最大1500℃の温度の炉において焼成されることを指す。
【0020】
本発明による用語「湿式化学法」は、好ましくは3つの方法の変化形を包含する:
・第1の方法の変化形において、有機ケイ素化合物、好ましくはSi(OEt)が、例えば、高温の対応する発光体出発物質およびEu含有ドーパントの水酸化物溶液へと添加され、結果として蛍光前駆体の形成が起こる。
・第2の方法の変化形、いわゆるシュウ酸エステル沈降において、まずハロゲン化アルカリ土類金属をユウロピウムとともに水中に溶解させ、そしてジカルボン酸および無機または有機ケイ素化合物からなるケイ素含有混合物に添加する。粘性を増加させることにより、結果として発光体前駆体の形成が起こる。
・第3の方法の変化形、いわゆる炭酸水素沈降において、まずアルカリ土類金属出発物質、好ましくはハロゲン化アルカリ土類金属をユウロピウム含有ドーパントとともに水中に溶解させ、そして次いで無機または有機ケイ酸含有化合物を添加する。炭酸水素溶液を用いて沈降が実行され、結果として発光体前駆体のゆっくりとした形成が起こる。
【0021】
完成されたケイ酸塩発光体を得るために、最後に、発光体前駆体の熱による後処理(焼成)が必要である。
文脈が他に明確に指示しない限り、本明細書中で用いられる用語の本明細書中で用いられる複数形は単数形を含むものとして解されるべきであり、そして逆もまた同様である。
本明細書の記載および特許請求の範囲にわたって、単語「comprise」および「contain」ならびにその変化形、例えば「comprising」および「comprises」は、「含むが限定されない(including but not limited to)」を意味し、そして他の成分を除外しないし、また除外することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、説明的な態様を参照して、以下においてさらに詳細に説明されるであろう。
【0023】
【図1】図1はオルトケイ酸塩混合物Aの放射スペクトルを示す図である。その蛍光帯域ピークは約568nmである。
【図2】図2はカラーフィルター透過スペクトル(3:青色透過帯域、4:緑色透過帯域、5:赤色透過帯域)、オルトケイ酸塩混合物Aを含むLEDの放射スペクトル(1:純粋なLEDスペクトル、2:カラーフィルターでのLEDスペクトル)を示す図である。
【0024】
【図3】図3はCIE1931でのオルトケイ酸塩混合物Aを含むLEDの色域占有領域を示す図である。三角はsRGB色域を表し、一方、太線で示される三角は標準カラーフィルター(図1)およびオルトケイ酸塩混合物Aの組み合わせにより達成される色域を表す(1:オルトケイ酸塩混合物Aを含むLEDの色域;sRGB:sRGBの色域)。
【0025】
言うまでもなく、本発明の上記態様は変化させることができ、それでもなお本発明の保護範囲内に存在する。本明細書において開示されるそれぞれの特徴は、他に示されない限り、同一、均等または類似の目的を果たす代替の特徴により置換されてもよい。よって、他に示されない限り、開示されるそれぞれの特徴は、均等のまたは類似の特徴の一般的な連続物の一例に過ぎない。
本発明は、説明の役割を果たすのみであり、そして本発明の保護範囲を限定しない、以下の例を参照して以下においてより詳細に記載されるであろう。
【0026】
例1:発光体混合物Aの製造
下記のオルトケイ酸塩発光体混合物Aが、以下の3つのオルトケイ酸塩を混合することにより合成される:
・SGA 524 100(約524nmで放射する緑色発光体;出所:Merck KGaA)、
・SGA 555 100(約555nmで放射する黄色発光体;出所:Merck KGaA)および
・SGA 593 100(約593nmで放射する橙色発光体;出所:Merck KGaA)
重量比は2:1:2である。
3つの発光体SGA524100、555100および593100を、1分あたり5回転でのジャイロホイールミキサーにより成分を混合することにより混合する。
【0027】
一般的なオルトケイ酸塩発光体の合成の一般的条件に関し、T.L. Barry, J. Electrochem. Soc., 1968, 11811181、およびUS 3505240を参照する。US 3505240は、例えば、炭酸バリウムおよび炭酸ストロンチウムをSiOおよびEuのソースとともに混合することにより製造される、発光体(Ba,Sr)SiO:Euを記載する。塩化アンモニウム流を混合物に混入させ、そしてバッチを燃焼させ発光体を製造する。US 3505240の表1から明らかなとおり、例えば、固溶体へと吸収されるSrSiOの量が増加するが、BaSiOおよびSrSiOの合計のモル%が100%で維持される場合、ピーク放射は緑色(505nm)から黄色(575nm)へと移る。それゆえ当業者は、T.L. Barry, J. Electrochem. Soc., 1968, 11811181およびUS 3505240の教示から、如何にして緑色、黄色または橙色を有するケイ酸塩を製造するのかを導き出す。
【0028】
本発明により、用いられる原料は、酸アルカリ土類金属、酸化ユウロピウムおよび塩化アンモニウムおよびケイ酸である。発光体は、必要な化学両論量の原料を乾燥混合することにより製造される。塩化アンモニウムは流体として添加される。混合物をアルミナのるつぼへと移動させ、そして炉へと移動させる。燃焼工程のために、試料を2〜12時間、還元雰囲気下、最大1300℃で加熱する。
【0029】
例2〜11:発光体混合物B〜Mの製造
【表1】

緑色発光体は:SGA 515 100、SGA 524 100、SGA 540 100およびSGA 545 100である。
黄色発光体は:SGA 555 100、SGA 565 100、SGA 587 100である。
橙色発光体は:SGA 593 100およびSGA 605 100である。
【0030】
SGA xyz 100における番号xyzは、放射ピーク最大値の波長を示す。
表1において言及される発光体の合成は、例1に記載の手順に従って実行される。表1に示された量で、分あたり5回転のジャイロホイールミキサーで成分を混合することにより、発光体を混合する。
【0031】
例12:LEDの製造および特徴付けならびに液晶ディスプレイ中への設置
例1からの発光体混合物を、Dow CorningからのOE65502成分(AおよびB)シリコーン樹脂系とともに、等量の発光体が成分AおよびB中に分散されるように(シリコーン中における発光体の最終濃度:8%)、タンブルミキサーを用いて混合する。それぞれの場合において、5mlの成分Aおよび5mlの成分Bを混合して均質な混合物とし、そしてディスペンサーの測定バルブに接続された貯蔵容器へと導入する。450nmの波長で放射する、それぞれ1mmの表面積を有する結合InGaNチップからなる、OSA opto electronics、ベルリンにより供給される原料LEDパッケージを、ディスペンサーに固定する。原料LEDパッケージの空洞を、ディスペンサーバルブのxyz位置決めにより、シリコーン発光体で埋める。そして、このように処置したLEDを、シリコーンを凝固させる150℃の温度にさらす。そして、LEDは操作に供することができるようになり、約6000Kの色温度を有する白色光を放射する。
【0032】
共通のLCD TVカラーフィルター特性を、ディスプレイ環境を想定し、そしてこのLEDにより達成される色域を計算するために用いた。カラーフィルターのスペクトル、カラーフィルターありおよびなしのLEDスペクトルを、図2に示す。カラーフィルターありのLEDスペクトルは、LEDおよび検出器の間のカラーフィルターシートで記録した。LEDの特徴付けを、Instruments Systems CAS 140分光計を用いて実行した。
例1の発光体混合物を含むLEDの色域カバレージが図3に示され、sRGBの約98%カバレージとして成し遂げる。そして、上記で製造される多くのLEDが、液晶ディスプレイのバックライティングシステムに設置される。
【0033】
例13〜23
例2〜11からの発光体混合物B〜Mを用いて、例12に記載されるLEDおよびLCディスプレイを製造する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
BaSrCaSiO:zEu (I)
式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2(w+x+y+z=2)になる条件である
で表される3つまたは4つ以上のケイ酸塩発光体を含む発光体混合物であって、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が緑色光を放射し、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が黄色光を放射しおよび1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が橙色光を放射し、ならびに緑色発光体対黄色発光体対橙色発光体の重量比が1.8〜4.0:0.1〜4.0:0.8〜3.0である、前記発光体混合物。
【請求項2】
式I:
BaSrCaSiO:zEu (I)
式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2になる条件(w+x+y+z=2)である
で表される3つまたは4つ以上のケイ酸塩発光体を含む発光体混合物であって、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が緑色光を放射し、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が黄色光を放射しおよび1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が橙色光を放射し、ならびに緑色発光体対黄色発光体対橙色発光体の重量比が1.8〜2.5:0.8〜1.3:1.8〜2.5である、前記発光体混合物。
【請求項3】
式I:
BaSrCaSiO:zEu (I)
式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2になる条件(w+x+y+z=2)である、
で表される3つまたは4つ以上のケイ酸塩発光体を含む発光体混合物であって、
・ 緑色放射発光体が、Baw1Srx1SiO:z1Eu、式中、w1=0.80〜1.85;x1=0.10〜1.25およびz1=0.05〜0.20である、
・ 黄色放射発光体が、Baw2Srx2Cay2SiO:z2Eu、式中、w2=0.10〜0.80;x2=1.0〜1.80;y2=0.0〜0.2およびz2=0.05〜0.20である、
・ 橙色放射発光体が、Baw3Srx3Cay3SiO:z3Eu、式中、w3=0.03〜0.10;x3=0.90〜1.50;y3=0.20〜0.80およびz3=0.05〜0.20である、
前記発光体混合物。
【請求項4】
窒化インジウムアルミニウムガリウム、およびBaSrCaSiO:zEu、式中、全てのインデックスw、x、yおよびzは、互いに独立して、1つの化合物内において、インデックスw、x、およびzが合計2になる条件(w+x+y+z=2)である、を含む3つまたは4つ以上のケイ酸塩発光体であって、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が緑色光を放射し、1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が黄色光を放射しおよび1つまたは2つ以上のケイ酸塩発光体が橙色光を放射し、緑色発光体対黄色発光体対橙色発光体の重量比が1.8〜4.0:0.0〜4.0:0.8〜3.0であることを特徴とする、前記ケイ酸塩発光体を含む光源。
【請求項5】
緑色発光体対黄色発光体対橙色発光体の重量比が1.8〜2.5:0.8〜1.3:1.8〜2.5であることを特徴とする、請求項4に記載の光源。
【請求項6】
請求項4または5に記載の少なくとも1つ光源を有する、バックライティングシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の1つまたは2つ以上のバックライティングシステムを装着する、液晶ディスプレイ(LCD)。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光体混合物を含む、電子または電気光学デバイス。
【請求項9】
第1のケイ酸塩発光体を1つまたは2つ以上のさらなる発光体と混合する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光体混合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−507493(P2013−507493A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533496(P2012−533496)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005570
【国際公開番号】WO2011/044974
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】