説明

ユニット建物

【課題】従来より少ない数の建物ユニットで複数階を有するユニット建物を提供することを目的とする。
【解決手段】ユニット建物は、離間して対向配置された複数の下階の建物ユニット1A、1Aと、前記複数の下階の建物ユニット1A、1A間の空間を跨いで、前記複数の下階の建物ユニット1A、1A上に配置されている上階の建物ユニット1Bと、この上階の建物ユニット1Bと前記下階の建物ユニット1A、1A上に設けられている、所定の屋根勾配を有する屋根1Cと、前記下階の建物ユニット上に所定間隔で複数設けられて、前記屋根1Cの軒先部を支持する屋根束と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット建物に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、従来のユニット建物200においては、基礎210上に複数の建物ユニット220、220、220が並べて配置され、基礎210と複数の建物ユニット220、220、220とが基礎210に埋め込まれたアンカーボルト(図示せず)によりボルト接合され、建物ユニット220の上に小屋ユニット230が配置され、下階の建物ユニット220と小屋ユニット230とがボルト接合されていた。即ち、小屋ユニット230の直下には、建物ユニット220が配置されている必要があり、建物の階数を増やすごとに、小屋ユニット230の直下には、建物の階数に応じた複数の建物ユニット230が必要となる。
そのため、図8に示す1階建ての場合は1つの小屋ユニット230に対して3つの建物ユニットが必要であり、また、2階建ての場合は1つの小屋ユニット230に対して6つの建物ユニット220が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−25878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のユニット建物200においては、物流費等の問題により、使用する建物ユニットの数の増加に応じて、建築コストも増加するという問題がある。また、小屋ユニットの代わりに、建物ユニットを使用した場合に、建物ユニットが高くなるほど、屋根勾配が小屋ユニットを使用した場合に比べて急勾配になるという問題がある。しかし、小屋ユニットの代わりに、建物ユニットを使用した場合に、小屋ユニットを使用したときの所定の屋根勾配を有する屋根を使用したいという要望がある。
【0005】
そのため、従来より少ない数の建物ユニットで建築されているユニット建物を提供することが望まれる。また、屋根勾配を所定の勾配にしたまま建物ユニットを使用しているユニット建物を提供することが望まれる。
【0006】
本発明は、従来より少ない数の建物ユニットで建築されている、所定の屋根勾配を有するユニット建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のユニット建物100a、100bに係る発明は、例えば、図1〜図6に示すように、
離間して対向配置された複数の下階の建物ユニット1A、1Aと、
前記複数の下階の建物ユニット1A、1A間の空間を跨いで、前記複数の下階の建物ユニット1A、1A上に配置されている上階の建物ユニット1Bと、
この上階の建物ユニット1Bと前記下階の建物ユニット1A、1A上に設けられている、所定の屋根勾配を有する屋根1Cと、
前記下階の建物ユニット上に所定間隔で複数設けられて、前記屋根1Cの軒先部を支持する屋根束と、
を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、離間して対向配置された複数の建物ユニット1A、1A間の空間を跨いで、前記複数の建物ユニット1A、1A上に配置されている上階の建物ユニット1Bを備えることにより、上階の建物ユニット1Bの直下に必要であった建物ユニット1Aが不要となるため、従来より少ない数の建物ユニットで建築されているユニット建物を提供できる。
また、前記下階の建物ユニット上に所定間隔で複数設けられて、前記所定の屋根勾配を有する屋根の軒先部を支持する屋根束を備えているので、従来の小屋ユニットに代えて上階の建物ユニット1Bを使用したことに起因して屋根の位置が高くなっても、屋根の軒先部を屋根束によって支持できる。したがって、小屋ユニットで使用していた所定の屋根勾配を有する屋根をそのまま使用することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば、図3に示すように、
請求項1に記載のユニット建物100a、100bにおいて、
平側に面する前記下階の建物ユニット1A、1Aの上端部に鉛直構面17が設けられ、この鉛直構面17は前記複数の屋根束12、12と、少なくとも1組の隣り合う前記屋根束12、12同士を連結する鉛直ブレース14を有する
ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記複数の屋根束12、12と、少なくとも1組の隣り合う前記屋根束12、12同士を連結する鉛直ブレース14を有する鉛直構面17が設けられているので、屋根1Cの軒先部を鉛直構面で確実かつ強固に支持できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば、図1〜図6に示すように、
請求項2に記載のユニット建物100a、100bにおいて、
前記鉛直ブレース14は、建物の平側の面の両側端部にそれぞれ配置されている隣り合う屋根束12同士を連結している
ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記鉛直ブレース14は、建物の平側の面の両側端部にそれぞれ配置されている隣り合う屋根束12同士を連結しているので、建物の平側の面の両側端部における強度が向上し、屋根1Cの荷重をしっかりと支えることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば、図1〜図6に示すように、
請求項3に記載のユニット建物100a、100bにおいて、
前記屋根1Cは、複数の屋根パネル1C1〜1C4を接合することによって構成され、
前記屋根束12は、前記屋根パネル1C1〜1C4の接合部を支持している
ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記屋根1Cは、複数の屋根パネルを接合することによって構成され、前記屋根束12は、前記屋根パネル1C1〜1C4の接合部を支持しているので、屋根1Cをバランスよくかつしっかりと支えることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば、図1〜図6に示すように、
請求項4に記載のユニット建物100a、100bにおいて、
請求項1〜4のいずれかに記載のユニット建物において、
前記下階の建物ユニットおよび前記上階の建物ユニットの各々は、複数本の柱と、これらの柱の上端間どうしを接合する複数本の天井梁と、前記柱の下端間どうしを接合する複数本の床梁とで骨組みが形成され、
前記空間に面する前記下階の建物ユニットの柱上に前記上階の建物ユニットの柱が配置されている
ことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記空間に面する前記建物ユニット1A、1Aの柱2上に前記上階の建物ユニット1Bの柱2が配置されていることにより、前記上階の建物ユニット1Bの荷重を斜め下に配置された建物ユニット1Aの柱2に伝えることができるため、前記上階の建物ユニット1Bを確実に支えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来より少ない数の建物ユニットで建築されている、所定の屋根勾配を有するユニット建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るユニット建物の一例を示す図であり、(a)は複数の下階の建物ユニットと上階の建物ユニットの配置例を示す図であり、(b)は図1(a)のA部の拡大図であり、(c)は図1(b)の分解図である。
【図2】同、変形例を示す図である。
【図3】同、(a)は屋根架構の例を示す平面図、(b)は図3(a)のA−A断面図、(c)は図3(a)のB−B断面図、(d)は図3(a)のC−C断面図である。
【図4】同、(a)〜(f)は図2に示す吹き抜け空間に床パネルを設けた例を示す図である。
【図5】本発明に係るユニット建物に使用されている建物ユニットの一例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るユニット建物の変形例を示す図である。
【図7】本発明に係るユニット建物の変形例を示す図である。
【図8】従来のユニット建物の一例を示す図であり、複数の建物ユニットと小屋ユニットの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
<実施の形態>
図1〜図5を参照して、本実施の形態におけるユニット建物について説明する。
【0021】
はじめに、図1に示す建物は、ユニット建物100aである。ユニット建物100aの下階では、基礎110上に複数の下階の建物ユニット1A、1Aが離間して対向配置され、基礎110と複数の下階の建物ユニット1A、1Aとが基礎110に埋め込まれたアンカーボルト(図示せず)によりボルト接合されている。ユニット建物100aの上階では、前記複数の下階の建物ユニット1A、1A間の空間を跨いで、下階の建物ユニット1A上に上階の建物ユニット1Bが配置され、下階の建物ユニット1Aと上階の建物ユニット1Bとがボルト21とナット22でボルト接合されている。そして、屋根束12は、前記下階の建物ユニット1A上に、所定間隔で複数設けられて、前記屋根1Cの軒先部を支持している。金物15を用いて、上階の建物ユニット1Bの上部と屋根1Cとが接合され、屋根束12と屋根1Cとが接合され、ユニット建物100aの屋根が施工されている。ここで、屋根1Cは、所定の屋根勾配を有している。所定の屋根勾配とは、建物ユニットより低い小屋ユニットを用いた場合の屋根勾配である。屋根束12を設けることにより、屋根勾配を小屋ユニットを使用したときと同じにするので、小屋ユニットを用いた場合に比べて、急勾配となることがなく、小屋ユニットより高い建物ユニットを用いた場合にも、小屋ユニットを用いたときと同じ屋根を用いることができる。
【0022】
このようにユニット建物100aは、箱状に形成された2つの建物ユニット1A、1Aと箱状に形成された1つの上階の建物ユニット1Bを組み合せることで施工されている。また、図5に示すように、下階の建物ユニット1Aは、4本の柱2と、これらの柱2の上端間どうしを結合する4本の天井梁3と、柱2の下端間どうしを結合する4本の床梁4とを備えている。
また、4本の天井梁3は、2本の長辺天井梁3aおよび長辺天井梁3aより短い2本の短辺天井梁3bによって構成されている。4本の床梁4は2本の長辺床梁4aおよび長辺床梁4aより短い2本の短辺床梁4bによって構成されている。なお、柱2は正方形筒状に形成されており、天井梁3と床梁4は、それぞれ断面コ字型に形成されている。
【0023】
2本の長辺天井梁3a、3aには、複数の天井小梁5が架設されており、該天井小梁5は長辺天井梁3aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら天井小梁5の下面には天井板6が固定されている。
2本の長辺床梁4a、4aには、複数の根太7が架設されており、該根太7は長辺床梁4aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら根太7の上面には床板8が固定されている。
なお、柱2の上端部の柱頭接合部材9に天井梁3の端部が接合され、柱2の下端部の柱脚接合部材10に床梁4の端部が接合されている。また、上階の建物ユニット1Bの柱の下端部が配置されている柱頭接合部材9の上端部にはピン11が設けられている。
【0024】
また、上階の建物ユニット1Bは、下階の建物ユニット1Aと同様の構成であるため、同じ部材には同じ符号を付している。ここで、上階の建物ユニット1Bと建物ユニット1Aの異なる点は、ピン11が不要な点である。そして、柱2の下端部に相当する柱脚接合部材10には、ピン11が挿入されている孔10aが設けられている。
【0025】
次に、図3を参照して、下階の建物ユニット1Aと、上階の建物ユニット1Bと、屋根1Cの関係について説明する。
【0026】
図3(a)は、切妻屋根の屋根架溝の平面図である。この切妻屋根は複数の屋根パネル1C1〜1C4を棟方向に接合することによって構成されている。複数の屋根パネルは異なる幅で、かつ、棟から軒先までの長さは等しくなっている。
このような切妻屋根の軒先部は鉛直構面17によって下方から支持されている。この鉛直構面17は下階の建物ユニット1Aの上端部に設けられたものであり、骨組と、この骨組の外側に取り付けられた図示しない外壁とから構成されている。前記骨組は、下階の建物ユニット1Aの上端部に左右に間隔を隔てて立設された複数(例えば6本)の屋根束12と、建物ユニット1Aの上端部の両側にそれぞれ位置する隣り合う屋根束12,12同士を連結する鉛直ブレース14とから構成されている。
前記屋根束12の上端部は、前記屋根パネル1C1〜1C4の接合部に金物15を用いて接合されており、これによって、屋根束12は屋根パネル1C1〜1C4の接合部を下方から支持している。
【0027】
具体的には、図3(d)に示すように、建物の両平側にはそれぞれ、屋根束12が6本設けられ、3本の屋根束が大きさの異なる2つの下階の建物ユニット1A,1Aの柱2上に設けられ、隣り合う2本の屋根束12が2本の鉛直ブレース14で連結されている。この2本の鉛直ブレース14は交差して屋根束12に連結され、屋根束12の上端部は金物15により屋根パネル母屋16に接合されている。6本の屋根束12のうち中央部に位置する2本の屋根束12には鉛直ブレースは連結されておらず、独立して立設されている。なお、この2本の屋根束12,12のうち、右側の屋根束12は下階の建物ユニットの接合部上に位置している。上記のような6本の屋根束12の高さは、所定の屋根勾配に合わせて設計されている。下階の建物ユニット1Aから上階の建物ユニットへアクセスする開口部を設けるために、開口束12aが設けられ、開口部に階段が適宜取付けられている。
前記外壁は、例えば、窯業系の外壁材で構成されており、下階の建物ユニット1Aに設けられている外壁が延設されたものである。
【0028】
次に、図1を参照して、ユニット建物100aにおける前記下階の建物ユニット1Aの柱2と前記上階の建物ユニット1Bの柱2の関係について説明する。
【0029】
前記下階の建物ユニット1Aおよび前記上階の建物ユニット1Bの各々は、複数本の柱2と、これらの柱2の上端間どうしを接合する複数本の天井梁3と、前記柱2の下端間どうしを接合する複数本の床梁4とで骨組みが形成されている。ここで、離間して配置された前記建物ユニット1A、1A間の空間に面する前記下階の建物ユニット1A、1Aの柱2上に前記上階の建物ユニット1Bの柱2が配置されている。
図1に示す例では、前記下階の建物ユニット1Aの柱2と前記上階の建物ユニット1Bの柱2が一直線になるように配置されている。しかし、これに限らず、前記上階の建物ユニット1Bの左右の柱2が前記下階の建物ユニット1Aの柱2より内側(天井梁3側)に少しずれるように上階の建物ユニット1Bを作成し、設置してもよい。これにより、上階の建物ユニット内の空間を広くすることができる。この場合は、所定の屋根勾配にするために屋根束12を高くする必要がある。
また、従来と同じ間隔で下階の建物ユニット1Aを配置した場合、従来の上階の建物ユニットに比して長い天井梁3と床梁4を有する上階の建物ユニット1Bを使用し、離間して配置された前記下階の建物ユニット1A、1A間の空間に面する前記下階の建物ユニット1A、1Aの柱2上に前記上階の建物ユニット1Bの柱2が配置されている。また、従来と同じ大きさの上階の建物ユニット1Aを配置した場合、従来の下階の建物ユニットの間隔に比して狭く前記下階の建物ユニット1A、1Aを配置し、離間して配置された前記下階の建物ユニット1A、1A間の空間に面する前記下階の建物ユニット1A、1Aの柱2上に前記上階の建物ユニット1Bの柱2が配置されている。この場合も、所定の屋根勾配にするために屋根束12の高さを調整する必要がある。
【0030】
ここで、図1、図5に示すように、離間して対向配置された複数の下階の建物ユニット1Aにおいては、複数の下階の建物ユニット1A、1A間の空間側において、位置決め用のピン11が前記柱2の上端部に設けられ、前記ピン11は、前記上階の建物ユニット1Bの前記柱2の下端部に設けられた孔10aに挿入されているように構成されている。具体的には、図5に示すように、ピン11は、前記柱2の上端部に相当する柱頭接合部材9上に設けられている。
【0031】
そして、図1に示すように、ユニット建物100aは、前記下階の建物ユニット1Aの前記柱2の上端部と前記上階の建物ユニット1Bの前記柱2の下端部との間に設けられ、前記ピン11が挿入される孔20aを有する前記柱2の幅より長いシアープレート(金属板)20を更に備えるように構成されている。シアープレート20は、長方形状の長い金属製のプレートであり、図1(b)に示すように、このシアープレート20の両端部は、それぞれ下階の建物ユニット1Aの天井梁3の端部および上階の建物ユニット1Bの床梁4の端部まで延出している。当該シアープレート20の両端部にそれぞれボルト21,21を通すための孔20a,20aが設けられている。
そして、前記複数の下階の建物ユニット1A、1Aの上端部の天井梁3,3と前記上階の建物ユニット1Bの下端部の床梁4,4とは、前記シアープレート20を介してボルト21とナット22でボルト結合されている。
なお、図1(c)に示すように、シアープレート20と下階の建物ユニット1Aの天井梁3をボルト結合した後、矩形枠状に配置された芯材と、この上面側に貼着された面材とから構成される矩形枠状の床パネル30を設置してもよい。この場合は、床パネル30の矩形枠状の芯材に切り欠け30aを設け、シアープレート20とボルト21と干渉しないように構成する。床パネル30を使用することで、上階の空間を広くすることができる。
【0032】
更に、図1に示すように、前記下階の建物ユニット1Aと前記上階の建物ユニット1Bの各々においては、前記柱2の上端部の柱頭接合部材9に天井梁3の端部が接合され、前記柱2の下端部の柱脚接合部材10に床梁4の端部が接合されている。
そして、前記シアープレート20の一方の端部が前記下階の建物ユニット1Aの前記天井梁3の端部にボルト21とナット22でボルト結合されているとともに、前記シアープレート20の他方の端部が前記上階の建物ユニット1Bの前記床梁4の端部にボルト21とナット22でボルト結合されている。すなわち、断面コ字形の天井梁3の上フランジに形成されたボルト挿通孔に下方からボルト21を挿通し、さらに当該ボルト21をシアープレート20の孔20aに通したうえで、このボルト21にナット22を螺合して締め付けることによって、シアープレート20の一方の端部が天井梁3の端部にボルト結合されている。また、シアープレート20の他方の端部の孔20aに上方からボルト21を挿通し、さらに当該ボルト21を断面コ字形の床梁4の下フランジに形成されたボルト挿通孔に通したうえで、このボルト21にナット22を螺合して締め付けることによって、シアープレート20の他方の端部が床梁4の端部にボルト結合されている。
なお、シアープレート20の端部をそれぞれ下階の建物ユニット1Aと上階の建物ユニット1Bにボルト結合する場合、シアープレート20の一方の端部を、下階の建物ユニット1Aの柱頭接合部材9にボルト21とナット22でボルト結合し、シアープレート20の他方の端部を、上階の建物ユニット1Bの柱脚接合部材10にボルト21とナット22でボルト結合してもよい。この場合、シアープレート20を短くできるという利点がある。
また、シアープレート20の端部をそれぞれ下階の建物ユニット1Aと上階の建物ユニット1Bにボルト結合する場合、シアープレート20の一方の端部を、天井梁3および柱頭接合部材9の双方にボルト結合し、シアープレート20の他方の端部を、床梁4および柱脚接合部材10の双方にボルト結合してもよい。この場合、結合強度が高まるという利点がある。
【0033】
本実施の形態によれば、離間して対向配置された複数の下階の建物ユニット1A、1A間の空間を跨いで、前記複数の下階の建物ユニット1A、1A上に配置されている上階の建物ユニット1Bを備えることにより、上階の建物ユニット1Bの直下に必要であった下階の建物ユニット1Aが不要となるため、従来より少ない数の建物ユニットで建築されている、上階の建物ユニットを有するユニット建物を提供でき、前記下階の建物ユニット上に所定間隔で複数設けられて、前記所定の屋根勾配を有する屋根の軒先部を支持する屋根束を備えることにより、屋根束の高さを所定の屋根勾配に合わせて調整することが可能になるので、小屋ユニットで使用していた所定の屋根勾配を有する屋根をそのまま使用することができる。
【0034】
また、前記複数の屋根束12、12と、少なくとも1組の隣り合う前記屋根束12、12同士を連結する鉛直ブレース14を有する鉛直構面17が設けられているので、屋根1Cの荷重を支える一方で、例えば、前記屋根1Cに強風が吹き込んだ際などに、前記複数の屋根束12にそれぞれ作用する変形力を、この鉛直ブレース14によって抑制することができ、前記鉛直構面17の強度を向上することができる。
【0035】
また、前記鉛直ブレース14は、建物の平側の面の両側端部にそれぞれ配置されている隣り合う屋根束12同士を連結しているので、建物の平側の面の両側端部における強度を向上し、屋根1Cの荷重をしっかりと支えることができる。
【0036】
また、前記屋根1Cは、複数の屋根パネルを接合することによって構成され、前記屋根束は、前記屋根パネルの接合部を支持しているので、屋根1Cをしっかりと支えることができる。
【0037】
また、前記空間に面する前記下階の建物ユニット1A、1Aの柱2上に前記上階の建物ユニット1Bの柱2が配置されていることにより、前記上階の建物ユニット1Bの荷重を斜め下に配置された下階の建物ユニット1Aの柱2に伝えることができるため、前記上階の建物ユニット1Bを確実に支えることができる。
【0038】
また、前記複数の下階の建物ユニット1Aにおいては、位置決め用のピン11が前記柱2の上端部に設けられ、前記ピン11は、前記上階の建物ユニット1Bの前記柱2の下端部に設けられた孔10aに挿入されていることにより、前記上階の建物ユニット1Bの位置決めが容易になり、前記上階の建物ユニット1Bを正確に配置できる。
【0039】
また、前記シアープレート20は前記ピン11が挿入される孔20aを有しており、この孔20aにピン11が挿入されていることにより、前記シアープレート20の位置決めが容易となるため、シアープレート20を正確に配置でき、かつ、前記複数の下階の建物ユニット1A、1Aと前記上階の建物ユニット1Bとは、前記柱2の幅より長い前記シアープレート20を介してボルト21とナット22でボルト結合されていることにより、前記複数の下階の建物ユニット1A、1Aと前記上階の建物ユニット1Bとはシアープレート20を介して柱2以外の部分でボルト結合できるため、柱2の端部どうしを突き合わせてこの突き合わせ部分をボルト結合する場合に比して結合が容易になる。つまり、柱2は筒状に形成されているので、その端部の突き合わせ部分にボルトを挿通したうえで、ナットを配置し、さらにボルトを締め付けるという結合作業は困難となるが、上記のようにシアープレート20を介してボルト結合することによって、下階の建物ユニット1Aと上階の建物ユニット1Bを容易かつ確実にボルト結合できる。
【0040】
また、前記シアープレート20は、前記下階の建物ユニット1Aの前記天井梁3または前記柱頭接合部材9とボルト21とナット22でボルト結合されているとともに、前記上階の建物ユニット1Bの前記床梁4または前記柱脚接合部材10とボルト21とナット22でボルト結合されていることにより、前記柱以外の複数個所でボルト結合が可能となるため、前記複数の下階の建物ユニット1A、1Aと前記上階の建物ユニット1Bとシアープレート20を介して強固に結合できる。
【0041】
(変形例)
図1に示す建物は、2階立てのユニット建物100aについて説明した。しかし、これに限らず、図2に示すように、3階建てのユニット建物100bの下階では、基礎110上に1階の複数の建物ユニット1A、1Aが離間して対向配置され、基礎110と複数の建物ユニット1A、1Aとが基礎110に埋め込まれたアンカーボルト(図示せず)によりボルト接合され、前記複数の建物ユニット1A、1A上に2階の複数の建物ユニット1A、1Aが離間して対向配置されている。3階建てのユニット建物100bの上階では、1階および2階の複数の建物ユニット1A、1A間の空間を跨いで、2階の建物ユニット1A上に上階の建物ユニット1Bが配置され、2階の建物ユニット1Aと上階の建物ユニット1Bとがボルト接合されているよう構成してもよい。なお、変形例においては、上記実施の形態と同じ部材には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
本構成によれば、少なくとも2つの建物ユニット1Aを使用しないため、従来より少ない数の建物ユニットで建築されている、所定の屋根勾配を有するユニット建物を提供することができる。更に、1階から2階におよぶ吹き抜け空間を作成することができる。
【0043】
また、上記実施の形態においては、2つの建物ユニットが離間して対向配置された例について説明した。しかし、これに限らず、基礎110上に3以上の建物ユニット1Aが離間して対向配置され、基礎110と複数の建物ユニット1Aとが基礎110に埋め込まれたアンカーボルト(図示せず)によりボルト接合され、前記3以上の建物ユニット1A上に3以上の建物ユニット1A間の複数の空間を跨いで、複数の建物ユニット1A上に上階の建物ユニット1Bが配置され、下階の建物ユニット1Aと上階の建物ユニット1Bとがボルト接合されているよう構成してもよい。
【0044】
本構成によれば、大きな上階の建物ユニットを設置可能にするとともに、従来より少ない数の建物ユニットで建築されている、所定の屋根勾配を有するユニット建物を提供することができる
【0045】
また、上記実施の形態においては、上階の建物ユニット1Bの直下に必要であった建物ユニットを不要とする例について説明した。しかし、上階の建物ユニット1B直下の建物ユニットを使用しない場合、図6に示すように、上階の建物ユニット1Bとシアープレート20aを介して接合される建物ユニット1Aの柱頭接合部材9,9間に断面コ字型の梁13を設けてもよい。この梁13のフランジには、ボルト21を挿通するための孔13aが設けられている。この場合は、上階の建物ユニット1Bの穴4cにボルト21を通して、シアープレート20と梁13とをナット22でボルト結合するように構成する。上階の建物ユニット1Bと梁13をボルト結合することで、建物の骨組みを更に頑丈にすることができる。
【0046】
また、上階の建物ユニット1B直下の建物ユニットを使用しない場合、図7に示すように、上階の建物ユニット1Bとシアープレート20を介して接合される下階の建物ユニット1Aの柱頭接合部材9,9間に断面コ字型の梁13を設けてもよい。この梁13の両端には、ボルト21を挿通するための孔13aを有するプレートが設けられている。そして、下階の建物ユニット1Aの柱頭接合部材9の横に接合された補助部材13bのナット22にボルト結合されている。補助部材13bは、上階の建物ユニット1Bの柱脚接合部材10下部の穴10aに挿入されるピン11を上部に有し、下階の建物ユニット1Aの部材として設けられている。補助部材13bを下階の建物ユニット1Aに設けることにより、上階の建物ユニット1B直下に下階の建物ユニット1Aを設けた場合と比べて、離間している下階の建物ユニット1A、1A間の間隔を変えることなく、離間している下階の建物ユニット1A上に上階の建物ユニット1Bを設けることができる。
【0047】
また、図4(a)〜図4(f)に示す建物は、図2を用いて説明した1階から2階までの吹き抜けを有する3階建ての建物の1階、2階部分を示す図である。次に、この吹き抜け空間に床パネルを設けて、吹き抜け空間を有効利用する例を、図4(a)〜図4(f)を参照して説明する。床パネル30a〜30gは、ブラケットを各柱に設けて、このブラケットの上に設置されている。なお、図4(a)、図4(b),図4(d),図4(e),図4(f)にそれぞれ示す建物は布基礎上に施工され、図4(c)に示す建物はべた基礎上に施工されている。
【0048】
図4(a)に示すように、2階の中間部に床パネル30aが設けられ、2階の床と同じ高さに床パネル30bが設けられている。例えば、これにより、2階において、左からアクセスが可能な下部の収納と、右からアクセスが可能な上部の収納を設けることができる。
【0049】
図4(b)に示すように、2階の床と同じ高さに床パネル30bが設けられ、1階の中間部に床パネル30cが設けられ、1階の床と同じ高さに床パネル30dが設けられている。例えば、これにより、1階において、左右からアクセスが可能であり、かつ、2階からアクセスが可能な上部の収納と、右からアクセスが可能な下部の収納を設けることができる。
【0050】
図4(c)に示すように、1階の床近くに床パネル30eが設けられ、2階の床と同じ高さに床パネル30bが設けられている。例えば、これにより、1階において、左右からアクセスが可能な段差のある部屋と、この部屋の下部に右からアクセスが可能な収納を設けることができる。
【0051】
図4(d)に示すように、2階の床と同じ高さに床パネル30bが設けられ、この床パネル30bの下方近くに床パネル30fが設けられ、1階の床と同じ高さに床パネル30dが設けられている。例えば、これにより、1階において、左右からアクセスが可能な部屋と、2階の床からアクセスが可能な収納を設けることができる。
【0052】
図4(e)に示すように、2階の中間部に床パネル30aが設けられている。例えば、これにより、2階において、左右からアクセスが可能な上部の収納を設けることができる。
【0053】
図4(f)に示すように、2階の床の近くに2階の床より高い床パネル30gが設けられ、1階の天井の近くに1階の天井より低い床パネル30fが設けられ、1階の床と同じ高さに床パネル30dが設けられている。例えば、これにより、2階からアクセスが可能な収納を設けることができる。
【符号の説明】
【0054】
1A 下階の建物ユニット
1B 上階の建物ユニット
1C 屋根
2 柱
3 天井梁
4 床梁
5 天井小梁
6 天井板
7 根太
8 床板
9 柱頭接合部材
10 柱脚接合部材
11 ピン
12 屋根束
14 鉛直ブレース
20 シアープレート
30 床パネル
100a、100b ユニット建物
110 基礎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して対向配置された複数の下階の建物ユニットと、
前記複数の下階の建物ユニット間の空間を跨いで、前記複数の下階の建物ユニット上に配置されている上階の建物ユニットと、
この上階の建物ユニットと前記下階の建物ユニット上に設けられている、所定の屋根勾配を有する屋根と、
前記下階の建物ユニット上に所定間隔で複数設けられて、前記屋根の軒先部を支持する屋根束と、
を備えていることを特徴とするユニット建物。
【請求項2】
請求項1に記載のユニット建物において、
平側に面する前記下階の建物ユニットの上端部に鉛直構面が設けられ、この鉛直構面は前記複数の屋根束と、少なくとも1組の隣り合う前記屋根束同士を連結する鉛直ブレースを有する
ことを特徴とするユニット建物。
【請求項3】
請求項2に記載のユニット建物において、
前記鉛直ブレースは、建物の平側の面の両側端部にそれぞれ配置されている隣り合う屋根束同士を連結している
ことを特徴とするユニット建物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット建物において、
前記屋根は、複数の屋根パネルを接合することによって構成され、
前記屋根束は、前記屋根パネルの接合部を支持している
ことを特徴とするユニット建物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のユニット建物において、
前記下階の建物ユニットおよび前記上階の建物ユニットの各々は、複数本の柱と、これらの柱の上端間どうしを接合する複数本の天井梁と、前記柱の下端間どうしを接合する複数本の床梁とで骨組みが形成され、
前記空間に面する前記下階の建物ユニットの柱上に前記上階の建物ユニットの柱が配置されている
ことを特徴とするユニット建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60699(P2013−60699A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197794(P2011−197794)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)