ユニット式建物
【課題】建物ユニットの柱と、外壁パネルおよび閉塞用パネルとの間の防水を簡単に行えるユニット式建物の提供。
【解決手段】それぞれ柱10、天井梁11および床梁を含んで形成された略直方体状の骨組みを有する複数の建物ユニット3A,3Bを組み合わせて建てられるとともに、建物ユニット3A,3Bのうちの少なくとも2つを離し置きし、これら離し置きされた建物ユニット3A,3Bの隙間に閉塞用パネル21Aを取り付けて構成されるユニット式建物であって、閉塞用パネル21Aは、離し置きされた建物ユニット3A,3Bの互いに近接した柱10の外面を覆う。
【解決手段】それぞれ柱10、天井梁11および床梁を含んで形成された略直方体状の骨組みを有する複数の建物ユニット3A,3Bを組み合わせて建てられるとともに、建物ユニット3A,3Bのうちの少なくとも2つを離し置きし、これら離し置きされた建物ユニット3A,3Bの隙間に閉塞用パネル21Aを取り付けて構成されるユニット式建物であって、閉塞用パネル21Aは、離し置きされた建物ユニット3A,3Bの互いに近接した柱10の外面を覆う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う建物ユニット同士を離して配置した離し置き部を備えたユニット式建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱、梁から略直方体状の骨組みを備えた建物ユニットを複数並べて施工され、隣り合う少なくとも2つの建物ユニットを離して配置した離し置き部(ジョイントスペース)を備えたユニット式建物がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のユニット式建物は、複数の建物ユニットと、離し置きした建物ユニット同士の隙間を閉塞する複数の閉塞パネルとを有して構成される。建物ユニットには、必要に応じて外壁パネルが骨組みに取り付けられている。また、閉塞パネルは、縦枠および横枠で形成されるフレームと、フレームに取り付けられた外壁材とを有して構成される。これらの建物ユニットおよび閉塞パネルは、工場にて製造された後、トラック等で建設現場に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−240358号公報
【特許文献2】特開平9−96166号公報
【特許文献3】特開平7−317335号公報
【特許文献4】特開平6−73953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のユニット式建物を構成する建物ユニットおよび閉塞パネルを搬送する際、トラック等の荷台の面積は、外壁パネルが骨組みに取り付けられた建物ユニットの平面積に対応しており、建物ユニットと閉塞パネルとを別々にトラックで搬送しなければならず、搬送効率が悪かった。
一方、建物ユニットをトラックで搬送する技術として、例えば、特許文献2から特許文献4に開示された搬送方法が知られている。特許文献2には、開口部に縦枠と横枠とからなる開口枠を固定した建物ユニットの搬送方法が示されている。すなわち、工場にて開口枠の一部を本固定し、残りを仮固定した状態で、建設現場に搬送し、建設現場にて仮固定部分を解除して本固定する。このようにして開口枠を開口部に精度よく取り付けることができるというものである。
【0005】
また、特許文献3には、玄関口にドア部を固定した住宅ユニットの搬送方法が示されている。すなわち、工場にて玄関口にドア部の下端縁を住宅ユニットの下端縁に一致させた状態で仮固定し、建設現場にてドア部を下降させて土間と一致させ、ドア部を玄関口に本固定するというものである。さらに、特許文献4には、出窓を有する出窓枠を固定した建物ユニットの搬送方法が示されている。すなわち、工場にて出窓枠に出窓を建物内部側に没入させた状態で仮固定し、この状態で建設現場に搬送した後、建設現場にて出窓を所定位置に突出させて本固定するというものである。
これらの特許文献2から特許文献4には、建物ユニット自体に直接設置される開口枠、ドア部、出窓などに関する搬送技術が開示されている。これに対して前述の閉塞パネルは、一対の建物ユニットの隙間に設置されるパネルであり、このような閉塞パネルを搬送する際に、特許文献2から特許文献4に開示された技術をそのまま用いることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、隣り合う建物ユニット同士を離して配置した離し置き部を有するユニット式建物において、建物ユニットおよび閉塞パネルを効率よく建設現場に搬送し、かつ、効率よく施工できるユニット式建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のユニット式建物は、それぞれ柱、天井梁および床梁を含んで形成された略直方体状の骨組みを有する複数の建物ユニットを組み合わせて建てられるとともに、前記建物ユニットのうちの少なくとも2つを離し置きし、これら離し置きされた前記建物ユニットの隙間に閉塞用パネルを取り付けて構成されるユニット式建物であって、前記閉塞用パネルは、離し置きされた前記建物ユニットのうち互いに近接した柱の外面を覆うことを特徴とする。
本発明では、前記建物ユニットは、建物の外側に面する柱に外壁パネルが設けられ、この外壁パネルは、前記柱の外面の一部を覆い、前記閉塞用パネルは前記離し置きされた前記建物ユニットの柱の外面の残りの部分を覆うことが好ましい。
本発明に関連するユニット式建物の施工方法は、図面を参照して説明すると、それぞれ柱10、天井梁11および床梁12を含んで形成された略直方体状の骨組み13を有する複数の建物ユニット3を組み合わせて建てられるとともに、前記建物ユニット3のうちの少なくとも2つを離し置きして、これら離し置きされた前記建物ユニット3の隙間に閉塞用パネル21を取り付けて構成されるユニット式建物1の施工方法であって、複数の前記建物ユニット3および前記閉塞用パネル21をそれぞれ製造して、複数の前記建物ユニット3のうち、一部の前記建物ユニット3の前記骨組み13に外壁パネル15を固定する製造工程と、複数の前記建物ユニット3のうち、前記外壁パネル15が固定されていない前記建物ユニット3の前記骨組み13の外側に、前記閉塞用パネル21を配置して、この閉塞用パネル21を前記骨組み13に仮固定する仮固定工程と、前記閉塞用パネル21を仮固定した建物ユニット3をトラックの荷台に載せて建設現場まで搬送する搬送工程と、前記閉塞用パネル21を仮固定した前記建物ユニット3および他の前記建物ユニット3を建設現場で組み合せて、少なくとも2つの前記建物ユニット3を離し置きするとともに、前記骨組み13から前記閉塞用パネル21を取り外して、離し置きした前記建物ユニット3の隙間に前記閉塞用パネル21を設置する現場施工工程と、を備えたことを特徴とする。
この施工方法によれば、骨組みに閉塞用パネルを仮固定することで、1台のトラックに閉塞用パネルと建物ユニットとを載せて同時に搬送することができ、搬送効率を向上させることができる。
【0008】
本発明に関連するユニット式建物の施工方法では、前記仮固定工程では、前記閉塞用パネル21に埋設された埋込ナット23と前記骨組み13とをボルト24で結合することが好ましい。
この施工方法によれば、閉塞用パネルと骨組みとを仮固定するためにボルトを用いることが可能となり、仮固定の作業と、建設現場での仮固定を解除する作業とを容易に実施できる。
【0009】
本発明に関連するユニット式建物の施工方法では、前記仮固定工程では、前記天井梁11および前記床梁12にそれぞれ取付治具30をボルト33およびナット34で固定し、前記取付治具30に前記閉塞用パネル21をボルト24で取り付けることが好ましい。
この施工方法によれば、閉塞用パネルを取付治具を介して骨組みに仮固定するので、仮固定の作業を容易に実施できる。
【0010】
本発明に関連するユニット式建物の施工方法では、前記仮固定工程では、離し置きする前記建物ユニット3、または、離し置きする前記建物ユニット3の近くに配置される前記建物ユニット3に、前記閉塞用パネル21を仮固定することが好ましい。
この施工方法によれば、建設現場にて所定位置に設けられた建物ユニットから、閉塞用パネルを取り外して、離し置きされた建物ユニット同士の隙間に閉塞用パネルを取り付けることによって、建設現場での建物ユニットの設置作業の順番を変更することなく、建物ユニットおよび閉塞用パネルを順序よく効率的に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るユニット式建物を示す全体斜視図。
【図2】図1において、ユニット式建物の離し置き部を説明するための斜視図。
【図3】前記離し置き部の一方の端部を拡大して示す平面図。
【図4】本発明の閉塞用パネルが仮固定された建物ユニットを示す斜視図。
【図5】前記建物ユニットの一部を切断した縦断面図。
【図6】前記建物ユニットの天井梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【図7】前記建物ユニットの床梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【図8】本発明の別の閉塞用パネルが仮固定された建物ユニットを示す斜視図。
【図9】前記建物ユニットの一部を切断した縦断面図。
【図10】前記建物ユニットの天井梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【図11】前記建物ユニットの床梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<ユニット式建物の全体構成>
図1は、本実施形態のユニット式建物1を示す全体斜視図である。
ユニット式建物1は、図1に示すように、基礎2の上に設けられた例えば6個の下階建物ユニット3からなる下階部4と、下階部4の下階建物ユニット3の上に載置された同じく6個の上階建物ユニット5からなる上階部6と、上階部6の上方に設けられる屋根部7とを備えて構成されている。
下階建物ユニット3および上階建物ユニット5は、それぞれ建物ユニット3,5の短辺方向に3個並べられ、短辺方向に直交する方向である建物ユニット3,5の長辺方向に2個並べられ、かつ、各建物ユニット3,5の短辺側の側面同士、および、長辺側の側面同士が対向するように配置されている。
【0013】
短辺方向に並んだ3つの各建物ユニット3,5のうちの2つは、短辺方向に所定の間隔寸法Lで互いに離し置きされ、本発明の建物ユニットの隙間に相当する離し置き部(スリットジョイント)Aが構築されている。
なお、図1では、各階に6個の各建物ユニット3,5を配置した場合を示したが、本発明のユニット式建物1としては、6個に限らず複数の建物ユニット3,5を組み合わして建てられ、各建物ユニット3,5のうちの少なくとも2つを離し置きして形成されたものであればよい。例えば、図1のユニット式建物1において、長辺方向に並べられた3つの各建物ユニット3,5について各建物ユニット3,5間に離し置き部Aをそれぞれ形成したものでもよい。
【0014】
図2は、下階部4の下階建物ユニット3の配置を各下階建物ユニット3の骨組み13によって示し、離し置き部Aを説明するための斜視図である。
下階建物ユニット3は、図2に示すように、四隅に立設される4本の柱10と、これらの柱10の上端間同士を結合する4本の天井梁11と、各柱10の下端間同士を結合する4本の床梁12とを含む略直方体状に形成された骨組み13を有している。
そして、天井梁11は各2本の長辺天井梁111(図4参照)および短辺天井梁112で構成され、床梁12は各2本の長辺床梁121(図4参照)および短辺床梁122で構成されている。2本の長辺天井梁111間、および2本の長辺床梁121間には、図示しないが、複数本の天井小梁、複数本の根太がそれぞれ架け渡されている。また、柱10と天井梁11および床梁12とは、仕口14を介して接続されている。
【0015】
このような下階建物ユニット3のうちの4個は、建設現場で組み合わされた際に、長辺側の側面のいずれか一方が外壁面となるように配置される外周ユニット3Aである。外周ユニット3Aには、予め製造工場にて、外壁面となる側面に外壁パネルが固定された状態で建設現場に搬送される。
一方、外周ユニット3Aを除く2個の下階建物ユニット3は、建設現場で組み合わされた際に、長辺側の側面のいずれも外壁面にはならないように配置される内周ユニット3Bである。すなわち、内周ユニット3Bは、ユニット式建物1の内周に設置されるユニットであり、内周に設置されるとは、短辺方向において他の2個の下階建物ユニット3(本実施形態では外周ユニット3A)に挟まれて配置されることを示す。
【0016】
4個の外周ユニット3Aのうちの隣り合う2個と、2個の内周ユニット3Bとは、所定の間隔寸法Lをあけて配置されている。間隔寸法Lは任意の寸法であり、製作基準寸法であるモジュールが、例えば、1モジュール910mmである場合、本実施形態では、1/2モジュール(450mm)から1モジュール(910mm)程度に設定されている。
離し置き部Aには、間隔寸法Lに応じた長さの連結梁(不図示)が配置され、この連結梁によって離し置きされた外周ユニット3Aおよび内周ユニット3Bが連結されている。
【0017】
<離し置き部の壁構造>
離し置き部Aには、図2に示すように、閉塞用パネルである2種類のALCパネル21(21A,21B)を利用して壁構造20が構築されている。
例えば、第1のALCパネル21Aは、一面の矩形板状の軽量気泡コンクリート製の板材(以下、ALC板と示す。)を外壁材として備え、窓などの開口部を有しないパネルである。このALCパネル21Aは、離し置き部Aの長辺方向に沿った一方の端部に配置される。第2のALCパネル21Bは、開口部を有する一面の矩形板状のALC板を外壁材として備え、離し置き部Aの長辺方向に沿った他方の端部に配置されるパネルである。これらのALCパネル21A,21Bは、離し置き部Aの隙間を閉塞して、内部に居室空間等を形成するために設けられる外壁パネルである。
【0018】
図3は、図2に示す離し置き部Aの一方の端部を拡大して示す平面図である。図3では、内周ユニット3Bに仮固定された状態の第1のALCパネル21Aを実線で示し、施工が完了した際の第1のALCパネル21Aの位置を2点鎖線で示す。
第1のALCパネル21Aは、製造工場にて内周ユニット3Bに仮固定された状態で建設現場に搬入される。建設現場にて基礎2上の所定位置に載置された後、ALCパネル21Aは、内周ユニット3Bから取り外され、離し置き部Aの一端にて一対の柱10を跨ぐようにして配置され、柱10等にボルト接合される。
【0019】
<第1のALCパネルの仮固定構造>
以降、内周ユニット3BにALCパネル21を仮固定する構造について、第1のALCパネル21Aおよび第2のALCパネル21Bの順に説明する。
図4は、第1のALCパネル21Aが仮固定された内周ユニット3Bの搬送時の状態を示す斜視図である。図5は、内周ユニット3Bの一部を切断した縦断面図であり、ALCパネル21Aの仮固定構造を示す。図6および図7は、天井梁側および床梁側の仮固定構造をそれぞれ示す分解斜視図である。
【0020】
図4に示すように、内周ユニット3Bの短辺側の側面には、外壁パネル15が固定されるとともに、長辺側の側面における外壁パネル15寄りの位置には、第1のALCパネル21Aが仮固定される。
第1のALCパネル21Aは、図5に示すように、仮固定用の取付治具30(31,32)を介して骨組み13に仮固定される。すなわち、天井側の取付治具31および床側の取付治具32は、それぞれ長辺天井梁111および長辺床梁121にボルト接合されている。そして、これらの取付治具31,32に、第1のALCパネル21Aが直接固定されている。
なお、長辺天井梁111および長辺床梁121は、本実施形態では、それぞれ鉛直方向に沿ったウェブ113,123と、水平方向に沿った上フランジ114,124、下フランジ115,125とを有する断面コ字状の溝型鋼を構成部材としている。
【0021】
図6にも示すように、天井側の取付治具31は、長辺天井梁111の下フランジ115に沿う水平板部311と、水平板部311の外壁側に連続して下方向に延びる鉛直板部312と、水平板部311および鉛直板部312に直交するリブ部313とを有する。
水平板部311における下フランジ115と重なる部分には、ボルト孔315が形成されている。このボルト孔315に連通するボルト孔116が、長辺天井梁111の下フランジ115に形成されている。
【0022】
また、水平板部311は、長辺天井梁111よりも外壁側に突出し、かつ、下フランジ115と重なる部分よりも低い段差部314を有する。この段差部314の上方には、長辺天井梁111のウェブ113に断面矩形のスペーサ25が、その下端を下フランジ115よりも下方に突出した状態で固定されている。スペーサ25は、長辺天井梁111とALCパネル21Aとの間隔を確保し、骨組み13に着脱する際に両者に傷等が付かないようにするために設けられている。
【0023】
鉛直板部312は、段差部314によって、ウェブ113よりも外壁側にオフセットした位置に設けられるとともに、水平方向に沿って形成された長孔316(図6)を有する。この長孔316に連通する位置に、埋込ナット23がALC板22の裏面に予め埋設されている。
以上のような天井側の取付治具31は、ボルト孔315およびボルト孔116に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺天井梁111の下フランジ115にボルト接合される。骨組み13を組み立てた後に、取付治具31を長辺天井梁111に取り付ける場合、ウェブ113または上ウランジ114に固定するよりも、下フランジ115に固定する方が、低い取付位置となるので、取付治具31の取付作業が容易となる。
そして、鉛直板部312の長孔316に挿通したボルト24を、ALCパネル21Aの埋込ナット23に螺合することで、ALCパネル21Aは、取付治具31にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
【0024】
図5および図7に示すように、床側の取付治具32は、互いに水平方向にオフセットして配置される上側鉛直板部321と、下側鉛直板部322と、上側鉛直板部321および下側鉛直板部322を連結する水平板部323とを有する。
上側鉛直板部321には、水平方向に長い長孔327が形成されている。この長孔327に連通する位置に、埋込ナット23がALC板22の裏面に予め埋設されている。
【0025】
水平板部323の上面には、室内側に突出する係止板部324が接合されている。係止板部324の突出した部分と、下側鉛直板部322とからなる断面L字形の隅部は、長辺床梁121のウェブ123および上フランジ124で形成される断面L字形の隅部に係止され、長辺床梁121に取付治具32を固定する際、取付治具32を容易に位置決めできるようになっている。
【0026】
下側鉛直板部322は、ウェブ123と重なる位置に設けられ、互いに連通するボルト孔328,126が形成されている。下側鉛直板部322の下端には、断面L字形のパネル受け部325が、このパネル受け部325を外壁側に張り出す張出部326を介して設けられている。
パネル受け部325は、ALC板22の下端を受けるための部材であり、張出部326によってL字形の縦部材が上側鉛直板部321と同一平面上となるように、下側鉛直板部322よりも外壁側に張り出した位置に設けられている。従って、ALC板22を上下の取付治具31,32に仮固定する際、まず、ALC板22を斜めの姿勢でパネル受け部325に下端を係止させ、次に、ALC板22を鉛直な姿勢に立てて裏面を上側鉛直板部321および天井側の取付治具31の鉛直板部312に当接させ、最後に、ALC板22をボルト接合するという取付手順を採用できるようになっている。
【0027】
以上のような床側の取付治具32は、ボルト孔328,126に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺床梁121にボルト接合される。そして、上側鉛直板部321の長孔327に挿通したボルト24を、ALCパネル21Aの埋込ナット23に螺合することで、ALCパネル21Aは、取付治具31にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
【0028】
<第2のALCパネルの仮固定構造>
続いて、内周ユニット3Bに開口部付きの第2のALCパネル21Bを仮固定する構造について説明する。
図8は、第2のALCパネル21Bが仮固定された内周ユニット3Bの搬送時の状態を示す斜視図である。図9は、内周ユニット3Bの一部を切断した縦断面図であり、ALCパネル21Bの仮固定構造を示す。図10および図11は、天井梁側および床梁側の仮固定構造をそれぞれ示す分解斜視図である。
【0029】
図8に示すように、内周ユニット3Bの短辺側の側面には、外壁パネル15が固定されるとともに、長辺側の側面における外壁パネル15寄りの位置には、第2のALCパネル21Bが仮固定される。
第2のALCパネル21Bは、図9に示すように、縦枠271および横枠272を組み合せたフレーム27と、フレーム27に固定されたALC板26とを有する。ALC板26には、窓用の開口部が形成されている。フレーム27は、開口部の周りを囲うように縦枠271および横枠272を接合して形成され、開口部に設けられるサッシ窓などを支持する。第2のALCパネル21Bは開口部によって採光性または通気性を備えている。
なお、閉塞用パネルとしては、以上の2種類のALCパネル21A,21Bに限られず、例えば、開口部のないALC板に補強用のフレームを組み合せて構成されたALCパネルであってもよい。
【0030】
第2のALCパネル21Bは、仮固定用の取付治具30(35,36)を介して骨組み13に仮固定される。すなわち、天井側の取付治具35および床側の取付治具36は、それぞれ長辺天井梁111および長辺床梁121にボルト接合されている。
そして、第1のALCパネル21A用の取付治具31,32と同様に、これら取付治具35,36によって、第2のALCパネル21Bが内周ユニット3Bに仮固定されるが、第2のALCパネル21Bのフレーム27と、骨組み13とが連結される点で相違する。
【0031】
図10にも示すように、天井側の取付治具35は、長辺天井梁111の下フランジ115に沿う水平板部351と、長辺天井梁111の長手方向に沿った水平板部351の両端部に連続して下方向に延びる一対の側板部352,352と、一対の側板部352,352の内面間に接合された短尺の溝型部材353とを有する。
水平板部351は、下フランジ115に重なるように配置され、かつ、その外壁側の端部がスペーサ25に当接する位置に設けられている。また、水平板部351には、ボルト孔356(図10参照)が形成され、このボルト孔356に連通するボルト孔116が、長辺天井梁111の下フランジ115にも形成されている。
【0032】
一対の側板部352は、逆L字形に形成されている。このL字形の隅部には、フレーム27の縦枠271の上端部が係止され、取付治具35にALCパネル21Aを固定する際、容易に位置決めできるようになっている。
溝型部材353は、図10に示すように、外壁面に沿って鉛直に設けられ、溝型の底部となる鉛直板354と、溝型の両側部となる一対の側板355とを有し、一対の側板355が、一対の側板部352の内面に接合されている。
鉛直板354は、水平板部351の外壁側の端部よりも内側にオフセットした位置に設けられるとともに、水平方向に沿って形成された長孔357を有する。縦枠271には、長孔357に連通する位置に、ボルト孔273が形成されている。
【0033】
以上のような天井側の取付治具35は、ボルト孔356,116に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺天井梁111の下フランジ115にボルト接合される。更に、取付治具35の長孔357と、フレーム27のボルト孔273とにボルト28を挿通してナット29と螺合することで、ALCパネル21Bは、取付治具35にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
【0034】
図9および図11に示すように、床側の取付治具36は、互いに水平方向にオフセットして配置される上側鉛直板部361と、下側鉛直板部362と、上側鉛直板部361および下側鉛直板部362を連結する水平板部363とを有する。なお、床側の取付治具36は、天井側の取付治具35に対して、上側鉛直板部361よりも下側鉛直板部362の方が外壁側にオフセットしている点が相違する。
上側鉛直板部361には、水平方向に長い長孔364が形成されている。フレーム27の横枠272には、長孔364に連通する位置に、ボルト孔274(図11参照)が形成されている。
【0035】
水平板部363と下側鉛直板部362とからなる断面L字形の隅部は、長辺床梁121のウェブ123および上フランジ124で形成される断面L字形の隅部に係止され、長辺床梁121に取付治具36を固定する際、取付治具36を容易に位置決めできるようになっている。
下側鉛直板部362は、ウェブ123と重なる位置に設けられ、互いに連通するボルト孔365,126が形成されている。
【0036】
下側鉛直板部362の下端には、天井側の取付治具35と同様に、断面L字形のパネル受け部325が、張出部326を介して設けられている。従って、ALC板26を上下の取付治具35,36に仮固定する際、まず、ALC板26を斜めの姿勢でパネル受け部325に下端を係止させ、次に、ALC板26を鉛直な姿勢に立ててフレーム27を上側鉛直板部361および天井側の取付治具35の溝型部材353に当接させ、最後に、ALC板26をボルト接合するという取付手順を採用できるようになっている。従って、工場にて閉塞用パネルを仮固定し易く、建設現場にて閉塞用パネルを取り外し易い。
【0037】
以上のような床側の取付治具36は、ボルト孔365,126に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺床梁121にボルト接合される。更に、取付治具36の長孔364と、フレーム27のボルト孔274とにボルト28を挿通してナット29と螺合することで、ALCパネル21Bは、取付治具36にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
従って、このような構成において、骨組みに取付治具をボルト接合するので、取付治具を容易に着脱できる。また、骨組みに取付治具を固定した状態で、取付治具に対してALCパネル21をボルト接合するので、ALCパネル21を容易に着脱できる。
【0038】
<ユニット式建物の施工方法>
次に、以上のようなユニット式建物1の施工方法を説明する。
まず、製造工場にて、下階建物ユニット3、上階建物ユニット5、および、ALCパネル21をそれぞれ製造する。各建物ユニット3,5のうち、外周ユニット3Aの長辺側の一方の面には、外壁パネルを固定する。また、適宜、建物ユニット3,5の短辺側にも、外壁パネル15を固定する。この際、外壁パネルを骨組み13にボルト接合する(製造工程)。
次に、各建物ユニット3,5のうち、長辺側の面に外壁パネル15が固定されていない内周ユニット3Bに、図4および図8に示すように、ALCパネル21を仮固定する。この際、図5および図9に示すように、内周ユニット3Bの骨組み13の外側に、ALCパネル21A,21Bを配置して上下の取付治具31,32,35,36を用いてボルト接合する(仮固定工程)。
【0039】
続いて、各建物ユニット3,5をそれぞれトラックの荷台に載せて建設現場まで搬送する(搬送工程)。この搬送工程にて、ALCパネル21は、内周ユニット3Bと一体で建設現場に搬送される。
建設現場にて、まず、下階建物ユニット3を基礎2上に載置固定し、下階部4を構築する。この際、図2に示すように、2つの外周ユニット3Aを内周ユニット3Bに対して離し置きして、離し置き部Aを形成する。そして、図3に示すように、ALCパネル21を内周ユニット3Bの骨組み13から取り外して、離し置き部Aの隙間にALCパネル21を設置する(現場施工工程)。
この現場施工工程にて、図1のように、仮固定されたALCパネル21は離し置き部Aの近くに配置されるので、効率よくALCパネル21を本設位置に移動させ、本固定できる。
【0040】
さらに、下階部4の上方に上階建物ユニット5を載置固定し、上階部6を構築するとともに、下階部4と同様に、形成された離し置き部の隙間にALCパネルを設置する。その後、上階部6の上方に小屋枠を介して屋根パネル等を設けて屋根部7を構成し、ユニット式建物1を完成させる。
このようにして、離し置き部Aに設置される閉塞用パネルを備えたユニット式建物1の施工が完了する。
【0041】
前述の搬送工程において、建物ユニット3,5の搬送用トラックの荷台の幅寸法は、建物ユニット3,5の一方の短辺側の幅寸法と、一方の長辺側の面に取り付けられる外壁パネルの厚さ寸法とを合わせた寸法が最大となっている。すなわち、外壁パネルを固定した外周ユニット3Aを載置する際に必要な幅寸法となっている。このため、内周ユニット3Bの場合、長辺側の面には、外壁パネルが固定されないので、荷台の幅寸法に対して内周ユニット3Bの短辺側の幅寸法は小さくなり、搬送時の平面スペース上の余裕がある。
一方、離し置き部Aを形成すると、ALCパネル21の数量分だけ搬送量が増加するので、従来の施工方法のように建物ユニット3,5とALCパネル21とを別々に搬送する場合には、搬送トラックの搬送回数が増加してしまう。
【0042】
本実施形態では、本来、長辺側のいずれの面にも外壁パネルが取り付けられない内周ユニット3Bに対して、いずれか一方の長辺側の面に、閉塞用パネルとしてALCパネル21を仮固定して搬送する。このように、内周ユニット3Bにおける搬送時の平面スペースを有効利用して、内周ユニットのいずれか一方の長辺側の側面にALCパネル21を仮固定し、内周ユニット3BとALCパネル21とを一体にして搬送するので、これらの搬送回数を減らすことができる。従って、搬送効率の向上が図れるとともに、搬送費を削減できる。また、間隔寸法Lを拡大させた場合であっても、同様に、搬送回数を減らすことができ、搬送効率の向上が図れる。
【0043】
また、離し置き部Aを形成すると、建物ユニット3,5の設置数を増加させることなく、居室空間面積を大きくすることができるが、離し置き部AへのALCパネル21の設置作業が現場での作業となるため、施工の手間が増えるというデメリットもあった。これに対して、本実施形態では、建設現場にて、仮固定したALCパネル21と一体で内周ユニット3Bを所定位置に載置するまで、仮固定されたALCパネル21を一体で移動させるので、ALCパネル21を単独で移動させる作業が減り、建設現場での作業負荷を減少させることができる。
【0044】
本実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)内周ユニット3Bの骨組み13にALCパネル21を仮固定することで、1台のトラックにALCパネル21と内周ユニット3Bとを載せて同時に搬送することができ、搬送効率を向上させることができる。
【0045】
(2)ALCパネル21と骨組み13とを仮固定するためにボルト24を用いることができるため、仮固定の作業と、建設現場での仮固定を解除する作業とを容易に実施できる。また、ALCパネル21を取付治具31,32,35,36を介して骨組み13に仮固定するので、仮固定の作業を容易に実施できる。
【0046】
(3)建設現場にて所定位置に設けられた内周ユニット3Bから、ALCパネル21を取り外して、離し置き部Aの隙間にALCパネル21を取り付けることによって、建設現場での建物ユニット3,5の設置作業の順番を変更することなく、建物ユニット3,5およびALCパネル21を順序よく効率的に組み立てることができる。
【0047】
[本発明の変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、建物ユニットの長辺側の面に閉塞用パネルであるALCパネル21を仮固定したが、建物ユニットの短辺側の面に閉塞用パネルを仮固定してもよい。このようにすれば、内周ユニット3Bに限らず、長辺側に外壁パネルを固定した外周ユニット3A(長辺側の面が外壁面を構成する建物ユニットを示す。)に対しても、閉塞用パネルを仮固定して、効率よく搬送することができる。
また、離し置きされる建物ユニットの近くに配置される建物ユニットに閉塞用パネルを仮固定しても、同様の効果が得られる。
本発明の閉塞用パネルとしては、前記実施形態で説明した外壁材としてのALCパネル21に限られず、例えば、床パネルや天井パネルのように離し置き部Aに設置される各種パネルにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、戸建て住宅や集合住宅等であってユニット式建物に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…ユニット式建物、3…建物ユニットである下階建物ユニット、10…柱、11…天井梁、12…床梁、121…床梁である長辺床梁、13…骨組み、21,21A,21B…ALCパネル(閉塞用パネル)、23…埋込ナット、24…ボルト、30,31,32,35,36…取付治具、33…取付治具用のボルト、34…取付治具用のナット
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う建物ユニット同士を離して配置した離し置き部を備えたユニット式建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱、梁から略直方体状の骨組みを備えた建物ユニットを複数並べて施工され、隣り合う少なくとも2つの建物ユニットを離して配置した離し置き部(ジョイントスペース)を備えたユニット式建物がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のユニット式建物は、複数の建物ユニットと、離し置きした建物ユニット同士の隙間を閉塞する複数の閉塞パネルとを有して構成される。建物ユニットには、必要に応じて外壁パネルが骨組みに取り付けられている。また、閉塞パネルは、縦枠および横枠で形成されるフレームと、フレームに取り付けられた外壁材とを有して構成される。これらの建物ユニットおよび閉塞パネルは、工場にて製造された後、トラック等で建設現場に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−240358号公報
【特許文献2】特開平9−96166号公報
【特許文献3】特開平7−317335号公報
【特許文献4】特開平6−73953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のユニット式建物を構成する建物ユニットおよび閉塞パネルを搬送する際、トラック等の荷台の面積は、外壁パネルが骨組みに取り付けられた建物ユニットの平面積に対応しており、建物ユニットと閉塞パネルとを別々にトラックで搬送しなければならず、搬送効率が悪かった。
一方、建物ユニットをトラックで搬送する技術として、例えば、特許文献2から特許文献4に開示された搬送方法が知られている。特許文献2には、開口部に縦枠と横枠とからなる開口枠を固定した建物ユニットの搬送方法が示されている。すなわち、工場にて開口枠の一部を本固定し、残りを仮固定した状態で、建設現場に搬送し、建設現場にて仮固定部分を解除して本固定する。このようにして開口枠を開口部に精度よく取り付けることができるというものである。
【0005】
また、特許文献3には、玄関口にドア部を固定した住宅ユニットの搬送方法が示されている。すなわち、工場にて玄関口にドア部の下端縁を住宅ユニットの下端縁に一致させた状態で仮固定し、建設現場にてドア部を下降させて土間と一致させ、ドア部を玄関口に本固定するというものである。さらに、特許文献4には、出窓を有する出窓枠を固定した建物ユニットの搬送方法が示されている。すなわち、工場にて出窓枠に出窓を建物内部側に没入させた状態で仮固定し、この状態で建設現場に搬送した後、建設現場にて出窓を所定位置に突出させて本固定するというものである。
これらの特許文献2から特許文献4には、建物ユニット自体に直接設置される開口枠、ドア部、出窓などに関する搬送技術が開示されている。これに対して前述の閉塞パネルは、一対の建物ユニットの隙間に設置されるパネルであり、このような閉塞パネルを搬送する際に、特許文献2から特許文献4に開示された技術をそのまま用いることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、隣り合う建物ユニット同士を離して配置した離し置き部を有するユニット式建物において、建物ユニットおよび閉塞パネルを効率よく建設現場に搬送し、かつ、効率よく施工できるユニット式建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のユニット式建物は、それぞれ柱、天井梁および床梁を含んで形成された略直方体状の骨組みを有する複数の建物ユニットを組み合わせて建てられるとともに、前記建物ユニットのうちの少なくとも2つを離し置きし、これら離し置きされた前記建物ユニットの隙間に閉塞用パネルを取り付けて構成されるユニット式建物であって、前記閉塞用パネルは、離し置きされた前記建物ユニットのうち互いに近接した柱の外面を覆うことを特徴とする。
本発明では、前記建物ユニットは、建物の外側に面する柱に外壁パネルが設けられ、この外壁パネルは、前記柱の外面の一部を覆い、前記閉塞用パネルは前記離し置きされた前記建物ユニットの柱の外面の残りの部分を覆うことが好ましい。
本発明に関連するユニット式建物の施工方法は、図面を参照して説明すると、それぞれ柱10、天井梁11および床梁12を含んで形成された略直方体状の骨組み13を有する複数の建物ユニット3を組み合わせて建てられるとともに、前記建物ユニット3のうちの少なくとも2つを離し置きして、これら離し置きされた前記建物ユニット3の隙間に閉塞用パネル21を取り付けて構成されるユニット式建物1の施工方法であって、複数の前記建物ユニット3および前記閉塞用パネル21をそれぞれ製造して、複数の前記建物ユニット3のうち、一部の前記建物ユニット3の前記骨組み13に外壁パネル15を固定する製造工程と、複数の前記建物ユニット3のうち、前記外壁パネル15が固定されていない前記建物ユニット3の前記骨組み13の外側に、前記閉塞用パネル21を配置して、この閉塞用パネル21を前記骨組み13に仮固定する仮固定工程と、前記閉塞用パネル21を仮固定した建物ユニット3をトラックの荷台に載せて建設現場まで搬送する搬送工程と、前記閉塞用パネル21を仮固定した前記建物ユニット3および他の前記建物ユニット3を建設現場で組み合せて、少なくとも2つの前記建物ユニット3を離し置きするとともに、前記骨組み13から前記閉塞用パネル21を取り外して、離し置きした前記建物ユニット3の隙間に前記閉塞用パネル21を設置する現場施工工程と、を備えたことを特徴とする。
この施工方法によれば、骨組みに閉塞用パネルを仮固定することで、1台のトラックに閉塞用パネルと建物ユニットとを載せて同時に搬送することができ、搬送効率を向上させることができる。
【0008】
本発明に関連するユニット式建物の施工方法では、前記仮固定工程では、前記閉塞用パネル21に埋設された埋込ナット23と前記骨組み13とをボルト24で結合することが好ましい。
この施工方法によれば、閉塞用パネルと骨組みとを仮固定するためにボルトを用いることが可能となり、仮固定の作業と、建設現場での仮固定を解除する作業とを容易に実施できる。
【0009】
本発明に関連するユニット式建物の施工方法では、前記仮固定工程では、前記天井梁11および前記床梁12にそれぞれ取付治具30をボルト33およびナット34で固定し、前記取付治具30に前記閉塞用パネル21をボルト24で取り付けることが好ましい。
この施工方法によれば、閉塞用パネルを取付治具を介して骨組みに仮固定するので、仮固定の作業を容易に実施できる。
【0010】
本発明に関連するユニット式建物の施工方法では、前記仮固定工程では、離し置きする前記建物ユニット3、または、離し置きする前記建物ユニット3の近くに配置される前記建物ユニット3に、前記閉塞用パネル21を仮固定することが好ましい。
この施工方法によれば、建設現場にて所定位置に設けられた建物ユニットから、閉塞用パネルを取り外して、離し置きされた建物ユニット同士の隙間に閉塞用パネルを取り付けることによって、建設現場での建物ユニットの設置作業の順番を変更することなく、建物ユニットおよび閉塞用パネルを順序よく効率的に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るユニット式建物を示す全体斜視図。
【図2】図1において、ユニット式建物の離し置き部を説明するための斜視図。
【図3】前記離し置き部の一方の端部を拡大して示す平面図。
【図4】本発明の閉塞用パネルが仮固定された建物ユニットを示す斜視図。
【図5】前記建物ユニットの一部を切断した縦断面図。
【図6】前記建物ユニットの天井梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【図7】前記建物ユニットの床梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【図8】本発明の別の閉塞用パネルが仮固定された建物ユニットを示す斜視図。
【図9】前記建物ユニットの一部を切断した縦断面図。
【図10】前記建物ユニットの天井梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【図11】前記建物ユニットの床梁側の仮固定構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<ユニット式建物の全体構成>
図1は、本実施形態のユニット式建物1を示す全体斜視図である。
ユニット式建物1は、図1に示すように、基礎2の上に設けられた例えば6個の下階建物ユニット3からなる下階部4と、下階部4の下階建物ユニット3の上に載置された同じく6個の上階建物ユニット5からなる上階部6と、上階部6の上方に設けられる屋根部7とを備えて構成されている。
下階建物ユニット3および上階建物ユニット5は、それぞれ建物ユニット3,5の短辺方向に3個並べられ、短辺方向に直交する方向である建物ユニット3,5の長辺方向に2個並べられ、かつ、各建物ユニット3,5の短辺側の側面同士、および、長辺側の側面同士が対向するように配置されている。
【0013】
短辺方向に並んだ3つの各建物ユニット3,5のうちの2つは、短辺方向に所定の間隔寸法Lで互いに離し置きされ、本発明の建物ユニットの隙間に相当する離し置き部(スリットジョイント)Aが構築されている。
なお、図1では、各階に6個の各建物ユニット3,5を配置した場合を示したが、本発明のユニット式建物1としては、6個に限らず複数の建物ユニット3,5を組み合わして建てられ、各建物ユニット3,5のうちの少なくとも2つを離し置きして形成されたものであればよい。例えば、図1のユニット式建物1において、長辺方向に並べられた3つの各建物ユニット3,5について各建物ユニット3,5間に離し置き部Aをそれぞれ形成したものでもよい。
【0014】
図2は、下階部4の下階建物ユニット3の配置を各下階建物ユニット3の骨組み13によって示し、離し置き部Aを説明するための斜視図である。
下階建物ユニット3は、図2に示すように、四隅に立設される4本の柱10と、これらの柱10の上端間同士を結合する4本の天井梁11と、各柱10の下端間同士を結合する4本の床梁12とを含む略直方体状に形成された骨組み13を有している。
そして、天井梁11は各2本の長辺天井梁111(図4参照)および短辺天井梁112で構成され、床梁12は各2本の長辺床梁121(図4参照)および短辺床梁122で構成されている。2本の長辺天井梁111間、および2本の長辺床梁121間には、図示しないが、複数本の天井小梁、複数本の根太がそれぞれ架け渡されている。また、柱10と天井梁11および床梁12とは、仕口14を介して接続されている。
【0015】
このような下階建物ユニット3のうちの4個は、建設現場で組み合わされた際に、長辺側の側面のいずれか一方が外壁面となるように配置される外周ユニット3Aである。外周ユニット3Aには、予め製造工場にて、外壁面となる側面に外壁パネルが固定された状態で建設現場に搬送される。
一方、外周ユニット3Aを除く2個の下階建物ユニット3は、建設現場で組み合わされた際に、長辺側の側面のいずれも外壁面にはならないように配置される内周ユニット3Bである。すなわち、内周ユニット3Bは、ユニット式建物1の内周に設置されるユニットであり、内周に設置されるとは、短辺方向において他の2個の下階建物ユニット3(本実施形態では外周ユニット3A)に挟まれて配置されることを示す。
【0016】
4個の外周ユニット3Aのうちの隣り合う2個と、2個の内周ユニット3Bとは、所定の間隔寸法Lをあけて配置されている。間隔寸法Lは任意の寸法であり、製作基準寸法であるモジュールが、例えば、1モジュール910mmである場合、本実施形態では、1/2モジュール(450mm)から1モジュール(910mm)程度に設定されている。
離し置き部Aには、間隔寸法Lに応じた長さの連結梁(不図示)が配置され、この連結梁によって離し置きされた外周ユニット3Aおよび内周ユニット3Bが連結されている。
【0017】
<離し置き部の壁構造>
離し置き部Aには、図2に示すように、閉塞用パネルである2種類のALCパネル21(21A,21B)を利用して壁構造20が構築されている。
例えば、第1のALCパネル21Aは、一面の矩形板状の軽量気泡コンクリート製の板材(以下、ALC板と示す。)を外壁材として備え、窓などの開口部を有しないパネルである。このALCパネル21Aは、離し置き部Aの長辺方向に沿った一方の端部に配置される。第2のALCパネル21Bは、開口部を有する一面の矩形板状のALC板を外壁材として備え、離し置き部Aの長辺方向に沿った他方の端部に配置されるパネルである。これらのALCパネル21A,21Bは、離し置き部Aの隙間を閉塞して、内部に居室空間等を形成するために設けられる外壁パネルである。
【0018】
図3は、図2に示す離し置き部Aの一方の端部を拡大して示す平面図である。図3では、内周ユニット3Bに仮固定された状態の第1のALCパネル21Aを実線で示し、施工が完了した際の第1のALCパネル21Aの位置を2点鎖線で示す。
第1のALCパネル21Aは、製造工場にて内周ユニット3Bに仮固定された状態で建設現場に搬入される。建設現場にて基礎2上の所定位置に載置された後、ALCパネル21Aは、内周ユニット3Bから取り外され、離し置き部Aの一端にて一対の柱10を跨ぐようにして配置され、柱10等にボルト接合される。
【0019】
<第1のALCパネルの仮固定構造>
以降、内周ユニット3BにALCパネル21を仮固定する構造について、第1のALCパネル21Aおよび第2のALCパネル21Bの順に説明する。
図4は、第1のALCパネル21Aが仮固定された内周ユニット3Bの搬送時の状態を示す斜視図である。図5は、内周ユニット3Bの一部を切断した縦断面図であり、ALCパネル21Aの仮固定構造を示す。図6および図7は、天井梁側および床梁側の仮固定構造をそれぞれ示す分解斜視図である。
【0020】
図4に示すように、内周ユニット3Bの短辺側の側面には、外壁パネル15が固定されるとともに、長辺側の側面における外壁パネル15寄りの位置には、第1のALCパネル21Aが仮固定される。
第1のALCパネル21Aは、図5に示すように、仮固定用の取付治具30(31,32)を介して骨組み13に仮固定される。すなわち、天井側の取付治具31および床側の取付治具32は、それぞれ長辺天井梁111および長辺床梁121にボルト接合されている。そして、これらの取付治具31,32に、第1のALCパネル21Aが直接固定されている。
なお、長辺天井梁111および長辺床梁121は、本実施形態では、それぞれ鉛直方向に沿ったウェブ113,123と、水平方向に沿った上フランジ114,124、下フランジ115,125とを有する断面コ字状の溝型鋼を構成部材としている。
【0021】
図6にも示すように、天井側の取付治具31は、長辺天井梁111の下フランジ115に沿う水平板部311と、水平板部311の外壁側に連続して下方向に延びる鉛直板部312と、水平板部311および鉛直板部312に直交するリブ部313とを有する。
水平板部311における下フランジ115と重なる部分には、ボルト孔315が形成されている。このボルト孔315に連通するボルト孔116が、長辺天井梁111の下フランジ115に形成されている。
【0022】
また、水平板部311は、長辺天井梁111よりも外壁側に突出し、かつ、下フランジ115と重なる部分よりも低い段差部314を有する。この段差部314の上方には、長辺天井梁111のウェブ113に断面矩形のスペーサ25が、その下端を下フランジ115よりも下方に突出した状態で固定されている。スペーサ25は、長辺天井梁111とALCパネル21Aとの間隔を確保し、骨組み13に着脱する際に両者に傷等が付かないようにするために設けられている。
【0023】
鉛直板部312は、段差部314によって、ウェブ113よりも外壁側にオフセットした位置に設けられるとともに、水平方向に沿って形成された長孔316(図6)を有する。この長孔316に連通する位置に、埋込ナット23がALC板22の裏面に予め埋設されている。
以上のような天井側の取付治具31は、ボルト孔315およびボルト孔116に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺天井梁111の下フランジ115にボルト接合される。骨組み13を組み立てた後に、取付治具31を長辺天井梁111に取り付ける場合、ウェブ113または上ウランジ114に固定するよりも、下フランジ115に固定する方が、低い取付位置となるので、取付治具31の取付作業が容易となる。
そして、鉛直板部312の長孔316に挿通したボルト24を、ALCパネル21Aの埋込ナット23に螺合することで、ALCパネル21Aは、取付治具31にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
【0024】
図5および図7に示すように、床側の取付治具32は、互いに水平方向にオフセットして配置される上側鉛直板部321と、下側鉛直板部322と、上側鉛直板部321および下側鉛直板部322を連結する水平板部323とを有する。
上側鉛直板部321には、水平方向に長い長孔327が形成されている。この長孔327に連通する位置に、埋込ナット23がALC板22の裏面に予め埋設されている。
【0025】
水平板部323の上面には、室内側に突出する係止板部324が接合されている。係止板部324の突出した部分と、下側鉛直板部322とからなる断面L字形の隅部は、長辺床梁121のウェブ123および上フランジ124で形成される断面L字形の隅部に係止され、長辺床梁121に取付治具32を固定する際、取付治具32を容易に位置決めできるようになっている。
【0026】
下側鉛直板部322は、ウェブ123と重なる位置に設けられ、互いに連通するボルト孔328,126が形成されている。下側鉛直板部322の下端には、断面L字形のパネル受け部325が、このパネル受け部325を外壁側に張り出す張出部326を介して設けられている。
パネル受け部325は、ALC板22の下端を受けるための部材であり、張出部326によってL字形の縦部材が上側鉛直板部321と同一平面上となるように、下側鉛直板部322よりも外壁側に張り出した位置に設けられている。従って、ALC板22を上下の取付治具31,32に仮固定する際、まず、ALC板22を斜めの姿勢でパネル受け部325に下端を係止させ、次に、ALC板22を鉛直な姿勢に立てて裏面を上側鉛直板部321および天井側の取付治具31の鉛直板部312に当接させ、最後に、ALC板22をボルト接合するという取付手順を採用できるようになっている。
【0027】
以上のような床側の取付治具32は、ボルト孔328,126に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺床梁121にボルト接合される。そして、上側鉛直板部321の長孔327に挿通したボルト24を、ALCパネル21Aの埋込ナット23に螺合することで、ALCパネル21Aは、取付治具31にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
【0028】
<第2のALCパネルの仮固定構造>
続いて、内周ユニット3Bに開口部付きの第2のALCパネル21Bを仮固定する構造について説明する。
図8は、第2のALCパネル21Bが仮固定された内周ユニット3Bの搬送時の状態を示す斜視図である。図9は、内周ユニット3Bの一部を切断した縦断面図であり、ALCパネル21Bの仮固定構造を示す。図10および図11は、天井梁側および床梁側の仮固定構造をそれぞれ示す分解斜視図である。
【0029】
図8に示すように、内周ユニット3Bの短辺側の側面には、外壁パネル15が固定されるとともに、長辺側の側面における外壁パネル15寄りの位置には、第2のALCパネル21Bが仮固定される。
第2のALCパネル21Bは、図9に示すように、縦枠271および横枠272を組み合せたフレーム27と、フレーム27に固定されたALC板26とを有する。ALC板26には、窓用の開口部が形成されている。フレーム27は、開口部の周りを囲うように縦枠271および横枠272を接合して形成され、開口部に設けられるサッシ窓などを支持する。第2のALCパネル21Bは開口部によって採光性または通気性を備えている。
なお、閉塞用パネルとしては、以上の2種類のALCパネル21A,21Bに限られず、例えば、開口部のないALC板に補強用のフレームを組み合せて構成されたALCパネルであってもよい。
【0030】
第2のALCパネル21Bは、仮固定用の取付治具30(35,36)を介して骨組み13に仮固定される。すなわち、天井側の取付治具35および床側の取付治具36は、それぞれ長辺天井梁111および長辺床梁121にボルト接合されている。
そして、第1のALCパネル21A用の取付治具31,32と同様に、これら取付治具35,36によって、第2のALCパネル21Bが内周ユニット3Bに仮固定されるが、第2のALCパネル21Bのフレーム27と、骨組み13とが連結される点で相違する。
【0031】
図10にも示すように、天井側の取付治具35は、長辺天井梁111の下フランジ115に沿う水平板部351と、長辺天井梁111の長手方向に沿った水平板部351の両端部に連続して下方向に延びる一対の側板部352,352と、一対の側板部352,352の内面間に接合された短尺の溝型部材353とを有する。
水平板部351は、下フランジ115に重なるように配置され、かつ、その外壁側の端部がスペーサ25に当接する位置に設けられている。また、水平板部351には、ボルト孔356(図10参照)が形成され、このボルト孔356に連通するボルト孔116が、長辺天井梁111の下フランジ115にも形成されている。
【0032】
一対の側板部352は、逆L字形に形成されている。このL字形の隅部には、フレーム27の縦枠271の上端部が係止され、取付治具35にALCパネル21Aを固定する際、容易に位置決めできるようになっている。
溝型部材353は、図10に示すように、外壁面に沿って鉛直に設けられ、溝型の底部となる鉛直板354と、溝型の両側部となる一対の側板355とを有し、一対の側板355が、一対の側板部352の内面に接合されている。
鉛直板354は、水平板部351の外壁側の端部よりも内側にオフセットした位置に設けられるとともに、水平方向に沿って形成された長孔357を有する。縦枠271には、長孔357に連通する位置に、ボルト孔273が形成されている。
【0033】
以上のような天井側の取付治具35は、ボルト孔356,116に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺天井梁111の下フランジ115にボルト接合される。更に、取付治具35の長孔357と、フレーム27のボルト孔273とにボルト28を挿通してナット29と螺合することで、ALCパネル21Bは、取付治具35にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
【0034】
図9および図11に示すように、床側の取付治具36は、互いに水平方向にオフセットして配置される上側鉛直板部361と、下側鉛直板部362と、上側鉛直板部361および下側鉛直板部362を連結する水平板部363とを有する。なお、床側の取付治具36は、天井側の取付治具35に対して、上側鉛直板部361よりも下側鉛直板部362の方が外壁側にオフセットしている点が相違する。
上側鉛直板部361には、水平方向に長い長孔364が形成されている。フレーム27の横枠272には、長孔364に連通する位置に、ボルト孔274(図11参照)が形成されている。
【0035】
水平板部363と下側鉛直板部362とからなる断面L字形の隅部は、長辺床梁121のウェブ123および上フランジ124で形成される断面L字形の隅部に係止され、長辺床梁121に取付治具36を固定する際、取付治具36を容易に位置決めできるようになっている。
下側鉛直板部362は、ウェブ123と重なる位置に設けられ、互いに連通するボルト孔365,126が形成されている。
【0036】
下側鉛直板部362の下端には、天井側の取付治具35と同様に、断面L字形のパネル受け部325が、張出部326を介して設けられている。従って、ALC板26を上下の取付治具35,36に仮固定する際、まず、ALC板26を斜めの姿勢でパネル受け部325に下端を係止させ、次に、ALC板26を鉛直な姿勢に立ててフレーム27を上側鉛直板部361および天井側の取付治具35の溝型部材353に当接させ、最後に、ALC板26をボルト接合するという取付手順を採用できるようになっている。従って、工場にて閉塞用パネルを仮固定し易く、建設現場にて閉塞用パネルを取り外し易い。
【0037】
以上のような床側の取付治具36は、ボルト孔365,126に挿通したボルト33と、ナット34とを螺合することで、長辺床梁121にボルト接合される。更に、取付治具36の長孔364と、フレーム27のボルト孔274とにボルト28を挿通してナット29と螺合することで、ALCパネル21Bは、取付治具36にボルト接合され、骨組み13に取り付けられるようになっている。
従って、このような構成において、骨組みに取付治具をボルト接合するので、取付治具を容易に着脱できる。また、骨組みに取付治具を固定した状態で、取付治具に対してALCパネル21をボルト接合するので、ALCパネル21を容易に着脱できる。
【0038】
<ユニット式建物の施工方法>
次に、以上のようなユニット式建物1の施工方法を説明する。
まず、製造工場にて、下階建物ユニット3、上階建物ユニット5、および、ALCパネル21をそれぞれ製造する。各建物ユニット3,5のうち、外周ユニット3Aの長辺側の一方の面には、外壁パネルを固定する。また、適宜、建物ユニット3,5の短辺側にも、外壁パネル15を固定する。この際、外壁パネルを骨組み13にボルト接合する(製造工程)。
次に、各建物ユニット3,5のうち、長辺側の面に外壁パネル15が固定されていない内周ユニット3Bに、図4および図8に示すように、ALCパネル21を仮固定する。この際、図5および図9に示すように、内周ユニット3Bの骨組み13の外側に、ALCパネル21A,21Bを配置して上下の取付治具31,32,35,36を用いてボルト接合する(仮固定工程)。
【0039】
続いて、各建物ユニット3,5をそれぞれトラックの荷台に載せて建設現場まで搬送する(搬送工程)。この搬送工程にて、ALCパネル21は、内周ユニット3Bと一体で建設現場に搬送される。
建設現場にて、まず、下階建物ユニット3を基礎2上に載置固定し、下階部4を構築する。この際、図2に示すように、2つの外周ユニット3Aを内周ユニット3Bに対して離し置きして、離し置き部Aを形成する。そして、図3に示すように、ALCパネル21を内周ユニット3Bの骨組み13から取り外して、離し置き部Aの隙間にALCパネル21を設置する(現場施工工程)。
この現場施工工程にて、図1のように、仮固定されたALCパネル21は離し置き部Aの近くに配置されるので、効率よくALCパネル21を本設位置に移動させ、本固定できる。
【0040】
さらに、下階部4の上方に上階建物ユニット5を載置固定し、上階部6を構築するとともに、下階部4と同様に、形成された離し置き部の隙間にALCパネルを設置する。その後、上階部6の上方に小屋枠を介して屋根パネル等を設けて屋根部7を構成し、ユニット式建物1を完成させる。
このようにして、離し置き部Aに設置される閉塞用パネルを備えたユニット式建物1の施工が完了する。
【0041】
前述の搬送工程において、建物ユニット3,5の搬送用トラックの荷台の幅寸法は、建物ユニット3,5の一方の短辺側の幅寸法と、一方の長辺側の面に取り付けられる外壁パネルの厚さ寸法とを合わせた寸法が最大となっている。すなわち、外壁パネルを固定した外周ユニット3Aを載置する際に必要な幅寸法となっている。このため、内周ユニット3Bの場合、長辺側の面には、外壁パネルが固定されないので、荷台の幅寸法に対して内周ユニット3Bの短辺側の幅寸法は小さくなり、搬送時の平面スペース上の余裕がある。
一方、離し置き部Aを形成すると、ALCパネル21の数量分だけ搬送量が増加するので、従来の施工方法のように建物ユニット3,5とALCパネル21とを別々に搬送する場合には、搬送トラックの搬送回数が増加してしまう。
【0042】
本実施形態では、本来、長辺側のいずれの面にも外壁パネルが取り付けられない内周ユニット3Bに対して、いずれか一方の長辺側の面に、閉塞用パネルとしてALCパネル21を仮固定して搬送する。このように、内周ユニット3Bにおける搬送時の平面スペースを有効利用して、内周ユニットのいずれか一方の長辺側の側面にALCパネル21を仮固定し、内周ユニット3BとALCパネル21とを一体にして搬送するので、これらの搬送回数を減らすことができる。従って、搬送効率の向上が図れるとともに、搬送費を削減できる。また、間隔寸法Lを拡大させた場合であっても、同様に、搬送回数を減らすことができ、搬送効率の向上が図れる。
【0043】
また、離し置き部Aを形成すると、建物ユニット3,5の設置数を増加させることなく、居室空間面積を大きくすることができるが、離し置き部AへのALCパネル21の設置作業が現場での作業となるため、施工の手間が増えるというデメリットもあった。これに対して、本実施形態では、建設現場にて、仮固定したALCパネル21と一体で内周ユニット3Bを所定位置に載置するまで、仮固定されたALCパネル21を一体で移動させるので、ALCパネル21を単独で移動させる作業が減り、建設現場での作業負荷を減少させることができる。
【0044】
本実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)内周ユニット3Bの骨組み13にALCパネル21を仮固定することで、1台のトラックにALCパネル21と内周ユニット3Bとを載せて同時に搬送することができ、搬送効率を向上させることができる。
【0045】
(2)ALCパネル21と骨組み13とを仮固定するためにボルト24を用いることができるため、仮固定の作業と、建設現場での仮固定を解除する作業とを容易に実施できる。また、ALCパネル21を取付治具31,32,35,36を介して骨組み13に仮固定するので、仮固定の作業を容易に実施できる。
【0046】
(3)建設現場にて所定位置に設けられた内周ユニット3Bから、ALCパネル21を取り外して、離し置き部Aの隙間にALCパネル21を取り付けることによって、建設現場での建物ユニット3,5の設置作業の順番を変更することなく、建物ユニット3,5およびALCパネル21を順序よく効率的に組み立てることができる。
【0047】
[本発明の変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、建物ユニットの長辺側の面に閉塞用パネルであるALCパネル21を仮固定したが、建物ユニットの短辺側の面に閉塞用パネルを仮固定してもよい。このようにすれば、内周ユニット3Bに限らず、長辺側に外壁パネルを固定した外周ユニット3A(長辺側の面が外壁面を構成する建物ユニットを示す。)に対しても、閉塞用パネルを仮固定して、効率よく搬送することができる。
また、離し置きされる建物ユニットの近くに配置される建物ユニットに閉塞用パネルを仮固定しても、同様の効果が得られる。
本発明の閉塞用パネルとしては、前記実施形態で説明した外壁材としてのALCパネル21に限られず、例えば、床パネルや天井パネルのように離し置き部Aに設置される各種パネルにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、戸建て住宅や集合住宅等であってユニット式建物に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…ユニット式建物、3…建物ユニットである下階建物ユニット、10…柱、11…天井梁、12…床梁、121…床梁である長辺床梁、13…骨組み、21,21A,21B…ALCパネル(閉塞用パネル)、23…埋込ナット、24…ボルト、30,31,32,35,36…取付治具、33…取付治具用のボルト、34…取付治具用のナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ柱、天井梁および床梁を含んで形成された略直方体状の骨組みを有する複数の建物ユニットを組み合わせて建てられるとともに、前記建物ユニットのうちの少なくとも2つを離し置きし、これら離し置きされた前記建物ユニットの隙間に閉塞用パネルを取り付けて構成されるユニット式建物であって、
前記閉塞用パネルは、離し置きされた前記建物ユニットのうち互いに近接した柱の外面を覆うことを特徴とするユニット式建物。
【請求項2】
請求項1に記載のユニット式建物において、
前記建物ユニットは、建物の外側に面する柱に外壁パネルが設けられ、この外壁パネルは、前記柱の外面の一部を覆い、
前記閉塞用パネルは前記離し置きされた前記建物ユニットの柱の外面の残りの部分を覆うことを特徴とするユニット式建物。
【請求項1】
それぞれ柱、天井梁および床梁を含んで形成された略直方体状の骨組みを有する複数の建物ユニットを組み合わせて建てられるとともに、前記建物ユニットのうちの少なくとも2つを離し置きし、これら離し置きされた前記建物ユニットの隙間に閉塞用パネルを取り付けて構成されるユニット式建物であって、
前記閉塞用パネルは、離し置きされた前記建物ユニットのうち互いに近接した柱の外面を覆うことを特徴とするユニット式建物。
【請求項2】
請求項1に記載のユニット式建物において、
前記建物ユニットは、建物の外側に面する柱に外壁パネルが設けられ、この外壁パネルは、前記柱の外面の一部を覆い、
前記閉塞用パネルは前記離し置きされた前記建物ユニットの柱の外面の残りの部分を覆うことを特徴とするユニット式建物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−57242(P2013−57242A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282537(P2012−282537)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2008−275418(P2008−275418)の分割
【原出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2008−275418(P2008−275418)の分割
【原出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
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