説明

ユーカリプツス・ウロフィラ(Eucalyptusurophylla)の形質転換および選択

本発明は、植物移植片を形質転換および選択するための方法に関する。この形質転換方法は、アグロバクテリウムインデューサーの存在下で移植片を前培養する段階、および形質転換された移植片をシュートの発育を加速するシュート再生培地に曝露する段階を含む。この形質転換方法から産生された植物が提供される。特に、トランスジェニックE.グランディスxE.ウロフィラ細胞を得る、および、それから安定に形質転換されたE.グランディスxE.ウロフィラ木を再生するための方法が提供される。本発明はまた、植物を選択および再生するための培地、方法、およびプラスミドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、木の細胞に外来性遺伝子を形質転換させ、かつそこから安定に形質転換された木を再生するための遺伝子型に非依存的な方法に関する。特に、本発明は、木の移植片からトランスジェニック植物を形質転換および発生するためのアグロバクテリウム媒介遺伝子形質移入方法を教示する。本明細書に記載される形質転換プロセスは、細胞分裂を刺激する前培養培地、およびシュート発生を加速するシュート生成培地を利用する。この形質転換プロセスから生成される植物が提供される。特に、本発明は、形質転換効率、ならびに選抜されかつ扱いにくいクローンからのシュート再生を増加させるための方法を提供する。本発明はまた、植物、特に森林樹を選択および再生するための培地、方法、およびプラスミドに関する。
【0002】
関連特許出願に対する相互参照
2005年6月22日提出の米国特許出願第11/158,342号、および2004年11月5日提出の米国一部継続出願第10/981,742号。
【背景技術】
【0003】
背景
植物の遺伝子操作は、商業的に重要な植物種の改善のための大きな潜在能力を提供してきた。近年、木の遺伝子操作が勢いを増し、パルプ産業および材木産業において特定の適用を見い出している。モミジバフウ(Sullivan and Lagrinini 1993)、ヨーロッパカラマツ(Huang et al. 1991)、ユリノキ(Wilde et al. 1992)、および多くのポプラ種(Minocha et al. 1986, Fillatti et al. 1988, De Block 1990,Brasileiro et al. 1992, Tsai et al. 1994)などの種のための、いくつかの確立された木の形質転換系が存在している。ポプラ属の種は木の遺伝子操作のためのモデル系として働く(Kim et al. 1997)。昆虫耐性および除草剤耐性などの種々の形質が、これらの種に操作されてきた(Klopfenstein et al. 1993, De Block 1990)。従って、木の種を遺伝子操作するための潜在能力は、商業的に重要な木の種(ユーカリ(ユーカリ属)を含む)にとって大きい。
【0004】
ユーカリ植物は、500より多くの種およびハイブリッドを含む。ユーカリは、早い成長速度を有し、広範な環境に適合し、かつ昆虫による損傷に対してほとんど感受性を示さない。その例外的な成長特性に加えて、ユーカリ木は、紙産業のための繊維の最大の供給源を提供する。ユーカリなどの広葉樹種からの繊維は、一般的に、マツなどの針葉樹からの繊維よりもはるかに短い。ユーカリから産生されたより短い繊維は、望ましい表面特性(滑らかさおよび明るさを含む)を有するが、低い引き裂きまたは伸長強度を有する、パルプおよび紙の製造を生じる。材木としては、ユーカリは、中程度から高い密度を有する、長い、直線状の材木を提供する。ユーカリの材木は、一般的用途であり;合板およびパーティクルボード産業、家具産業において用途を見い出し;ならびに薪および建設資材の供給源を提供する。
【0005】
ユーカリの形質転換を実証する大部分の報告は、育種プログラムを通して得られた選抜した遺伝子型よりもユーカリの苗木を使用している。例えば、国際公開公報第99/48355号(特許文献1)は、E.グランディス(E. grandis)およびユーカリプツス・カマルドゥレンシス(E. camaldulensis)の苗木からの若葉の移植片を形質転換するための方法を記載する。たとえこの形質転換方法が成功したとしても、この記載された方法には2つの主要な問題が存在する。第1に、再生プロトコールは、苗木移植片について作用するが、これは選抜した遺伝子型からの移植片には作用しない。第2に、苗木移植片および特許請求された改善を用いた場合でさえ、形質転換効率は、2つの種の子葉移植片およびユーカリプツス・カマルドゥレンシスの胚軸移植片について2.2%以下に制限されている。改善された形質転換および再生のプロトコールは、ユーカリプツス・カマルドゥレンシス苗木について、Ho et al., Plant Cell Reports 17: 675-680(1998)(非特許文献1)によって記載された;しかし、このプロトコールは、ユーカリプツス・カマルドゥレンシス苗木を用いた場合でさえ、反復可能ではなかった。数千もの移植片が培養され、かつトランスジェニックカルス株が産生されたが、回収されたシュートの数は最小であった。Hartcourt et al. Molecular Breeding 6: 306-315 (2000)(非特許文献2)は、殺虫性cry3A遺伝子および除草剤耐性bar遺伝子を用いるユーカリプツス・カマルドゥレンシス苗木の形質転換を報告した。5個の除草剤耐性カルス株が50個の苗木に由来する無数の移植片から再生されたが、1個の株は培養中または温室中で繁殖することが困難であり、別の株は逸出植物であることが判明した。さらに、繁殖することが困難であった株は、分子レベルで分析された2つの株のうちの1つであり、単一の挿入を有する唯一の株であった。これらの研究は、トランスジェニックユーカリ植物の回収が可能である場合でさえ、低い形質転換効率が、多くの遺伝子型への所望の遺伝子の送達を妨害することを示す。従って、ユーカリの形質転換および再生の、遺伝子型に非依存的な方法についての必要性が継続して存在している。
【0006】
ユーカリ苗木の微細繁殖は実行されてきたが、デノボシュート再生は、商業的に重要なユーカリ種およびハイブリッドの選択されたか「選抜された」クローンの代わりに、苗木に限定されてきた。逐次的なラウンドの育種を通して生じる選抜された遺伝子型は、経済的に所望される形質のそれらの組み合わせのために価値がある。導入遺伝子によって付与される所望の形質との成長形質の同時分離を保証するための多数の遺伝子型を必要とする苗木の形質転換とは異なり、選別されたクローンの形質転換は、遺伝子操作された木の種のために効率的かつ有利な系を提供する。選別された遺伝子型は、多数の開始遺伝子型を用いる何年間ものクローンのフィールド試験に基づいて選択され得る。他の迅速に成長する広葉樹種と同様に、形質の比較的正確な予測がユーカリについてなされ得る前に、何年間ものフィールド評価が行われる。それゆえに、苗木が遺伝子操作のために使用される場合、さらにより多くの遺伝子型が、導入遺伝子発現によって付与される所望の形質とともに、成長形質の首尾よい選択のために必要とされる。
【0007】
英国特許第2298205号(特許文献2)(国際公開公報第96/25504号(特許文献3))および 欧州特許第1050209号(特許文献4)の両方が、トランスジェニックシュートの再生のために主要なサイトカイニンとして1-(2-クロロ-4-ピリジル)-3-フェノキシウレアまたはN-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニルウレア(4-PUまたは4CPPU)の使用を主張している。両方の場合において、抗生物質が選択剤として使用された。国際公開公報第96/25504号は、成熟遺伝子型からの移植片の形質転換を実証するが、この発明者らは、形質転換を実証するために、ユーカリプツス・グロブルスおよび ユーカリプツス・ニテンスについての苗木の移植片を使用した。欧州特許第1050209号は、トランスジェニック原基の形成を誘導するために、垂直回転培養系を使用する。形質転換は、成熟木からの活性化された移植片を用いて実証されたが、形質転換効率は、トランスジェニックカルス産生に基づいて計算され、そしてトランスジェニック植物産生についての頻度の表示は存在しなかった。効率的なデノボシュート再生は遺伝子操作のために決定的であるが、商業的に重要なユーカリ種およびハイブリッドからのクローンの選択のための高度に効率的な再生系を開発するための必要性が存在している。
【0008】
したがって、ユーカリ属の細胞の数を増やし、そして、困難な種およびハイブリッドのクローンからの安定した形質転換植物を再生する必要がある。
【0009】
したがって、形質転換に困難なE.グランディス x E.ウロフィラの形質転換および再生効率を増加させる必要がある。
【0010】
【特許文献1】国際公開公報第99/48355号
【特許文献2】英国特許第2298205号
【特許文献3】国際公開公報第96/25504号
【特許文献4】欧州特許第1050209号
【非特許文献1】Ho et al., Plant Cell Reports 17: 675-680(1998)
【非特許文献2】Hartcourt et al. Molecular Breeding 6: 306-315 (2000)
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明において、E.グランディスxE.ウロフィラ(E. urophylla)の移植片の少なくとも1つの細胞を外来性DNAで形質転換するための方法が意図され、この方法は、(i)アグロバクテリウムのインデューサーを含む培地上で木の移植片を前培養する段階;(ii)この外来性DNAを有する形質転換ベクターを含むアグロバクテリウム株にこの移植片を曝露する段階;(iii)形質転換された移植片を選択し、ここで、この外来性DNAがこの形質転換された移植片の少なくとも1つの細胞に移される段階;および(iv)この形質転換された移植片を再生して完全な植物を産生する段階を含む。好ましくは、アグロバクテリウムのインデューサーはアセトシリンゴンであり、このアセトシリンゴンの濃度は約10から約400mg/lまでである。また好ましくは、アセトシリンゴンの濃度は約5から約200mg/lまでであり、培地はさらにオーキシンおよび/またはサイトカイニンを含む。
【0012】
本発明は、前培養する段階が、アグロバクテリウム形質転換の前に栄養培地上で植物移植片を培養することを含むことを意図する。この前培養培地は、アセトシリンゴンなどのアグロバクテリウムのインデューサーを含む。1つの態様において、この移植片は暗所で約1日間から約6日間まで前培養される。好ましくは、この移植片は約4日間前培養される。1つの態様において、この前培養培地は、任意に、オーキシンおよびサイトカイニンを含む植物生長レギュレーターを含んでもよい。
【0013】
別の態様において、オーキシンはNAA、2,4-D、IBA、およびIAAからなる群より選択される。1つの態様において、NAA、2,4-D、IBA、およびIAAのいずれか1つの濃度範囲は約0.1mg/lから約10mg/lまでである。好ましくは、この濃度範囲は約0.2mg/lから約5mg/lまでである。より好ましくは、この濃度範囲は約0.2mg/lから約3mg/lまでである。
【0014】
別の態様において、このサイトカイニンはゼアチン、カイネチン、およびBAからなる群より選択される。1つの態様において、ゼアチン、カイネチン、およびBAのいずれか1つの濃度範囲は約0.25mg/lから約15mg/lまでである。好ましくは、この濃度範囲は約1mg/lから約10mg/lまでである。より好ましくは、この濃度範囲は約1mg/lから約6mg/lまでである。
【0015】
別の態様において、この移植片は葉、葉柄、節間組織、花組織、胚形成組織、または胚形成培養の少なくとも1つである。
【0016】
1つの態様において、組織は齢または発生段階から独立して選択される。
【0017】
別の態様において、この方法は遺伝子型に非依存性である。
【0018】
別の態様において、形質転換された移植片の全ての細胞が外来性DNAを含む。
【0019】
本発明は、非キメラのE.グランディスxE.ウロフィラ木を産生するための方法も意図し、この方法は、(i)アグロバクテリウムのインデューサーを含む培地上でE.グランディスxE.ウロフィラ移植片を前培養する段階;(ii)植物細胞に遺伝子を移すことが可能であるベクターを宿すアグロバクテリウム株にこの移植片を曝露する段階;(iii)形質転換した移植片を選択する段階;および(iv)この移植片を成長させて非キメラ木を産生する段階を含む。
【0020】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。この詳細な説明および特定の実施例は、好ましい態様を示すものであるが、例示のみのために与えられる。なぜなら、本発明の精神および範囲内における種々の変更および改変が、この詳細な説明から、当業者には明らかになるからである。さらに、これらの実施例は本発明の原理を実証するものであり、本発明の応用を、先行技術において当業者に対して明白に有用である全ての実施例に対して具体的に例証することは予測できないことである。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の遺伝子型に非依存性の木の形質転換方法は、選抜した遺伝子型を形質転換することで得られる、形質転換効率の低さを解消する。最も広範な局面において、本方法は、形質転換効率、ならびに扱いにくい種およびハイブリッドの木の移植片からのシュート再生を増加させることに関する。一つの局面において、本方法は、E.グランディス(E. grandis)xE. ウロフィラ(E. urophylla)のような、扱いにくい種およびハイブリッドの形質転換および再生効率の増加を提供する。形質転換効率の増加は、細胞分裂を刺激する培地上で移植片を前培養することによって果たされる。形質転換された移植片のシュートの再生頻度は、シュート再生を促進する培地上で移植片を培養することによって改善される。
【0022】
以下に続く記載において、多数の科学的用語および技術的用語が広範に使用される。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学的用語および技術的用語は、本発明が属する当技術分野における当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を共有する。以下の定義は、本発明の理解を容易にするために提供される。
【0023】
「背軸」とは、本明細書で使用される場合、葉の下側をいう。
【0024】
「アグロバクテリウムインデューサー」とは、宿主植物核へのT-DNAの切除および送達を制御する生成物をコードするアグロバクテリウムビルレンス遺伝子の発現を誘導する分子をいう。本明細書において、アグロバクテリウムインデューサーは、前培養培地およびアグロバクテリウム培養培地の両方に加えられる。本発明において、アグロバクテリウムインデューサーには、アセトシリンゴンなどのフェノール化合物が含まれるがこれに限定されない。インデューサーの付加は、アグロバクテリウム感染の頻度および一貫性を改善する。
【0025】
「アグロバクテリウム媒介形質転換」とは、アグロバクテリウム・ツメフェイシェンスからのTi(腫瘍誘導)プラスミドの使用を通して、DNAが植物細胞のゲノムに安定して挿入される方法である。T-DNAとして知られるTiプラスミドのほんの一部が、宿主植物細胞の核に組み込まれる。または、アグロバクテリウム・リゾゲネスからのRiプラスミドが形質転換のために使用されてもよい。アグロバクテリウム媒介形質転換において、植物導入のために意図される遺伝子またはDNAは、T-DNAのレフトボーダーとライトボーダーの間に配置される。
【0026】
「抗酸化剤」とは、本明細書で使用される場合、植物移植片からのフェノール性物質の浸出を最小化する化合物をいう。本発明において、アスコルビン酸が抗酸化剤として使用されてもよい。
【0027】
本明細書において、用語「オーキシン」は、切除した植物組織における細胞分裂を刺激するそれらの能力によって原理的には特徴付けられる植物成長調節剤の1つのクラスを含む。細胞分裂および細胞伸長におけるそれらの役割に加えて、オーキシンは、根の開始を含む、他の発生プロセスに影響を与える。本発明において、オーキシンおよびオーキシン型成長調節剤には、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、インドール-3-酪酸(IBA)、およびインドール-3-酢酸(IAA)が含まれるがこれらに限定されない。
【0028】
「カゼイン加水分解物様化合物」とは、カゼイン加水分解物と構造的および機能的に関連している組成物をいう。語句「カゼイン加水分解物様化合物」において、この用語は、カゼイン加水分解物と同様のアミノ酸の組成を有し、かつカゼイン加水分解物と同じ機能を達成するが、一つまたは複数の成分が異なる化合物を示す。例えば、カゼイン加水分解物様化合物は、グルタミンおよびアルギニンなどのアミノ酸の上昇した濃度を有し得、これらは、植物組織培養において特定の植物の再生可能な細胞を増殖および維持するために重要なアミノ酸である。
【0029】
「クローニングベクター」とは、宿主細胞中で自律的に複製する能力を有する、プラスミド、コスミド、またはバクテリオファージなどの遺伝子エレメントである。クローニングベクターは、外来性DNA配列が決定可能な方向で挿入され得る1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位、ならびにクローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択のために適切な生成物をコードするマーカー遺伝子を含む。マーカー遺伝子には、その生成物が抗生物質耐性または除草剤耐性を付与する遺伝子が含まれる。クローニングベクターへの外来性DNA配列の挿入は、クローニングベクターまたはマーカー遺伝子の本質的な生物学的機能を妨害しない。
【0030】
「サイトカイニン」とは、組織培養中の細胞分裂およびシュート器官形成を刺激するそれらの能力によって特徴付けられる植物成長調節剤の1つのクラスをいう。本発明において、サイトカイニンには、N6-ベンジルアミノプリン(BAP)、N6-ベンジルアデニン(BA)、ゼアチン、カイネチン、チアジアズロン(TDZ)、2-イソペンテニルアデニン(2ip)、および4-CPPU(N-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニルウレア)が含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
「誘導体」とは、別の物質に構造的および機能的に関連する物質をいう。語句「カゼイン加水分解物の誘導体」において、この用語は、カゼイン加水分解物と同様のアミノ酸の組成を有し、かつカゼイン加水分解物と同じ機能を達成するが、一つまたは複数の成分が異なる化合物を示す。例えば、カゼイン加水分解物の誘導体は、典型的なカゼイン加水分解物よりもより多くのアルギニンおよび/またはより少ないバリンを有する可能性がある。
【0032】
本明細書で使用される場合、「選別された遺伝子型」とは、逐次的な育種プログラムを通して得られかつ選択された商業的に重要な遺伝子型をいう。
【0033】
用語「移植片」とは、形質転換のための標的である植物組織をいう。好ましい移植片は、インビボおよび/またはインビトロで生育された植物からの葉、葉柄、花組織、節間組織、および胚形成組織を含む。
【0034】
用語「発現」とは、遺伝子産物の生合成をいう。例えば、1つの遺伝子の発現は、mRNAでのDNA配列の転写、および一つまたは複数のポリペプチドへのmRNAの翻訳を含む。生成されるRNAは、タンパク質もしくはポリペプチドをコードしてもよいし、またはRNA干渉もしくはアンチセンス分子をコードしてもよい。
【0035】
「発現ベクター」とは、宿主細胞中で発現される遺伝子配列を含む遺伝子エレメントである。典型的には、遺伝子配列の発現は、構成的および誘導性プロモーター、組織優先的調節エレメント、およびエンハンサーを含む、いくつかの調節エレメントによって制御される。このような遺伝子は、調節エレメントに対して「作動可能に連結される」といわれる。
【0036】
「外来性DNA」とは、別の種または関心対象の種から単離され、かつ同じ種に再導入されるDNAである。このDNAは、構造遺伝子、アンチセンス遺伝子、DNAフラグメントなどであり得る。
【0037】
「遺伝子」とは、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、次いでポリペプチドに特徴的なアミノ酸の配列に翻訳される遺伝可能なDNA配列である。
【0038】
「非キメラトランスジェニック植物」とは、本質的に全ての細胞が形質転換され、かつ外来性DNAが子孫に移される形質転換事象の生成物である。
【0039】
「作動可能に連結される」とは、植物細胞中でそれらが組み合わせて適切に機能するような様式で、2つ以上の分子を組み合わせることを説明する。例えば、プロモーターは、そのプロモーターが構造遺伝子の転写を制御する場合に、その構造遺伝子と作動可能に連結されている。
【0040】
本明細書で使用される場合、「植物」とは、特徴的に、胚を産生し、葉緑体を含み、およびセルロース細胞壁を有する、植物界の種々の光合成性の、真核生物の、多細胞生物のいずれかである。植物の一部として、植物組織が、トランスジェニック植物を産生するために、本発明の方法に従って処理され得る。多くの適切な植物組織が、本発明の方法に従って形質転換され得、その組織には、不定胚、花粉、葉、茎、カルス、匍匐枝、微小塊茎、およびシュートが含まれるがこれらに限定されない。従って、本発明は、被子植物および裸子植物、例えば、芝草、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、カラスムギ、テンサイ、ジャガイモ、トマト、タバコ、アルファルファ、レタス、ニンジン、イチゴ、キャッサバ、サツマイモ、ゼラニウム、ダイズ、オーク、マツ、モミ、アカシア、ユーカリ、ウォルナット、およびヤシの形質転換を想定する。本発明に従って、植物組織はまた植物細胞を含む。植物細胞は、懸濁培養、カルス、胚、成長点領域、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉、種子、および小胞子を含む。植物組織は、成熟の様々な段階にあってもよく、そして液体もしくは固体培養において、またはポット、温室、もしくはフィールド中の土もしくは適切な媒体中で生育させてもよい。植物組織はまた、有性的に生成されたかまたは無性的に生成されたかに関わらず、このような植物、種子、子孫、珠芽の任意のクローン、およびこれらのいずれかの子孫、例えば、切り枝または種子をいう。特に関心対象のものは、マツ、モミ、およびトウヒなどの針葉樹、ケンタッキーブルーグラス、コヌカグサ、トウモロコシ、およびコムギなどの単子葉植物、ユーカリ、アカシア、アスペン、モミジバフウ、ポプラ、ワタ、トマト、レタス、シロイヌナズナ、タバコ、およびゼラニウムなどの双子葉植物である。
【0041】
「植物プロモーター」とは、その起源が植物細胞であるか否かに関わらず、植物細胞中で転写を開始することが可能であるプロモーターである。例示的な植物プロモーターには、植物、植物ウイルス、および植物細胞中で発現される遺伝子を含むアグロバクテリウムまたは根粒菌などの細菌から得られるものが含まれるがこれらに限定されない。発生的制御下のプロモーターの例には、葉、根、または種子などの特定の組織中での転写を優先的に開始するプロモーターが含まれる。このようなプロモーターは、組織優先的プロモーターといわれる。特定の組織においてのみ転写を開始するプロモーターは、組織特異的プロモーターといわれる。細胞型特異的プロモーターは、一つまたは複数の器官、例えば、根または葉の維管束細胞における特定の細胞型において主として発現を駆動する。誘導性プロモーターまたは抑制性プロモーターは、環境的な制御下にあるプロモーターである。誘導性プロモーターによって転写がもたらされ得る環境条件の例には、光の存在下での嫌気的条件が含まれる。組織特異的プロモーター、組織優先的プロモーター、細胞型特異的プロモーター、および誘導性プロモーターは、非構成的プロモーターのクラスを構成する。構成的プロモーターは、大部分の環境条件下で、かつ大部分の植物の部分で活性であるプロモーターである。
【0042】
「前培養培地」とは、本明細書で使用される場合、植物移植片がアグロバクテリウムを用いる形質転換の前にその上で培養され、かつ形質転換効率および植物再生を増加させるために必要とされる栄養培地である。前培養培地は、アグロバクテリウムのインデューサー、例えば、アセトシリンゴンを含む。前培養培地は、オーキシンおよびサイトカイニン、特に、細胞分裂や増殖を刺激するため高いレベルのオーキシンを含む、植物成長調節剤を含む。
【0043】
子孫:本発明の「子孫」、例えば、トランスジェニック植物の子孫は、植物またはトランスジェニック植物から生まれ、これらから生じ、またはこれらから派生するものである。従って、「子孫」植物、すなわち、「F1」世代植物は、本発明の方法によって産生されるトランスジェニック植物の子または子孫(offspring or descendant)である。トランスジェニック植物の子孫は、その細胞ゲノム、本明細書に記載される方法によって親のトランスジェニック植物の細胞に組み込まれた所望のポリヌクレオチドの少なくとも1つ、そのいくつか、またはその全てを含み得る。従って、所望のポリヌクレオチドは、子孫植物によって「伝達される」かまたは「遺伝される」。子孫植物においてこのように遺伝される所望のポリヌクレオチドは、その親からの子孫植物によってまた遺伝されるT-DNA構築物中に存在してもよい。用語「子孫」はまた、本明細書で使用される場合、植物の群の子または子孫であると見なされることが可能である。
【0044】
「シュート再生培地」とは、トランスジェニックシュートを再生するために設計された本発明の培地である。このシュート再生培地は、無機塩、アミノ酸およびビタミンの混合物、抗酸化剤、有機窒素、および植物成長調節剤を含む。
【0045】
「不定胚形成」とは、配偶子融合の産物として以外の植物性かつ体細胞性組織から胚が発生する、クローン性増殖の方法である。
【0046】
「安定に形質転換される」とは、外来性DNAを子孫に伝達することが可能であるトランスジェニック植物をいう。
【0047】
「構造遺伝子」とは、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、次いで特定のポリペプチドに特徴的なアミノ酸の配列に翻訳されるDNA配列である。
【0048】
「実質的に含まない」とは、第2の化合物からの、第1の化合物の相対的な非存在をいう。この用語は、第1の化合物の10%、5%、4%、3%、2%、1%未満、または0%の第2の化合物が検出され得ることを示す。
【0049】
「トランスジェニック植物」とは、外来性DNAを含む植物である。本発明において、トランスジェニック植物はアグロバクテリウム媒介形質転換に由来する。好ましくは、このトランスジェニック植物は、稔性でありかつ有性生殖を通して子孫植物に外来性DNAを伝達することが可能である。
【0050】
転写および翻訳のターミネーター:本発明の発現DNA構築物は、典型的には、転写開始調節領域から反対の末端にある転写終結領域を有する。この転写終結領域は、発現を増強するためのmRNAの安定性のために、および/または遺伝子転写産物に付加されるポリアデニル化テールの付加のために選択されてもよい。
【0051】
「木」とは、本明細書で使用される場合、木質部中心を蓄積する任意の多年生植物をいう。木には、被子植物種および裸子植物種およびハイブリッドが含まれる。木の例には、ポプラ、ユーカリ、ベイマツ、マツ、シュガーおよびモンテレー、ナッツの木、例えば、ウォルナットおよびアーモンド、果物の木、例えば、リンゴ、プラム、シトラス、およびアプリコット、ならびに広葉樹の木、例えば、アッシュ、カバノキ、オーク、およびチークが含まれる。特に関心対象のものは、針葉樹、例えば、マツ、モミ、スプルース、ユーカリ、アカシア、アスペン、モミジバフウ、およびポプラである。
【0052】
本発明は、木移植片を形質転換するため、およびそこからトランスジェニック子孫を生成するための遺伝子型に非依存性な方法を提供する。本発明の方法は、アグロバクテリウムインデューサーの存在下における木の移植片の前培養を意図する。本発明の方法はさらに、アミノ酸、ビタミン、植物成長調節剤、グルコース、および抗酸化剤を含むシュート再生培地上での形質転換された移植片を培養することをさらに想定する。
【0053】
本発明の方法は、ユーカリ移植片の形質転換およびシュート再生の遺伝子型に非依存性な方法を提供する。任意のユーカリ移植片が本発明の方法によって形質転換され得、これには、天然の環境中で生育されたユーカリ木およびクローン的に繁殖されたユーカリ移植片が含まれる。この移植片は、任意のユーカリ種およびハイブリッドから選択され得、これには以下が含まれる:ユーカリプツス・アルバ(Eucalyptus alba)、ユーカリプツス・バンクロフティー(Eucalyptus bancroftii)、ユーカリプツス・ボトロイデス(Eucalyptus botryoides)、ユーカリプツス・ブリジェシアーナ(Eucalyptus bridgesiana)、ユーカリプツス・カロフィラ(Eucalyptus calophylla)、ユーカリプツス・カマルドゥレンシス(Eucalyptus camaldulensis)、ユーカリプツス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)、ユーカリプツス・クラドカリクス(Eucalyptus cladocalyx)、ユーカリプツス・コキフェラ(Eucalyptus coccifera)、ユーカリプツス・カーティシー(Eucalyptus curtisii)、Eucalyptus dalrympleana、ユーカリプツス・ダルリンプレアアーナ(Eucalyptus deglupta)、ユーカリプツス・デレガテンシス(Eucalyptus delegatensis)、ユーカリプツス・ディバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)、ユーカリプツス・ドゥニー(Eucalyptus dunnii)、ユーカリプツス・フィシフォリア(Eucalyptus ficifolia)、ユーカリプツス・グロブルス(Eucalyptus globulus)、ユーカリプツス・ゴムフォケファラ (Eucalyptus gomphocephala)、ユーカリプツス・グランディス、ユーカリプツス・グニー(Eucalyptus gunnii)、ユーカリプツス・ヘンリー(Eucalyptus henryi)、ユーカリプツス・ラエボピネア(Eucalyptus laevopinea)、ユーカリプツス・マカルツリ(Eucalyptus macarthurii)、ユーカリプツス・マクロロニンチャ(Eucalyptus macrorhyncha)、ユーカリプツス・マクラタ(Eucalyptus maculata)、ユーカリプツス・マルギナータ(Eucalyptus marginata)、ユーカリプツス・メガカーパ(Eucalyptus megacarpa)、ユーカリプツス・メリオドラ (Eucalyptus melliodora)、ユーカリプツス・ニチョリー(Eucalyptus nicholii)、ユーカリプツス・ニテンス(Eucalyptus nitens)、ユーカリプツス・ノヴァ-アンジェィカ(Eucalyptus nova-angelica)、ユーカリプツス・オブリクア(Eucalyptus obliqua)、ユーカリプツス・オシデンタリス(Eucalyptus occidentalis)、ユーカリプツス・オブトゥシフロラ(Eucalyptus obtusiflora)、ユーカリプツス・オレアデス(Eucalyptus oreades)、ユーカリプツス・パウチフローラ(Eucalyptus pauciflora)、ユーカリプツス・ポリブラクティア(Eucalyptus polybractea)、ユーカリプツス・レグナンス(Eucalyptus regnans)、ユーカリプツス・レシニフェラ(Eucalyptus resinifera)、ユーカリプツス・ロブスタ(Eucalyptus robusta)、ユーカリプツス・ルディス(Eucalyptus rudis)、ユーカリプツス・サリグナ(Eucalyptus saligna)、ユーカリプツス・シデロキシロン(Eucalyptus sideroxylon)、ユーカリプツス・ステュアーティアナ(Eucalyptus stuartiana)、ユーカリプツス・テレチコルニス(Eucalyptus tereticornis)、ユーカリプツス・トレルリアナ(Eucalyptus torelliana)、ユーカリプツス・アーニゲラ(Eucalyptus urnigera)、E.ウロフィラ(Eucalyptus urophylla)、ユーカリプツス・ビミナリス(Eucalyptus viminalis)、ユーカリプツス・ビリディス(Eucalyptus viridis)、ユーカリプツス・ワンドゥー(Eucalyptus wandoo)、およびユーカリプツス・ユーマンニ(Eucalyptus youmanni)。
【0054】
特に、形質転換植物は、E.グランディスまたはそのハイブリッドであってもよい。
【0055】
本発明の方法は、選抜したユーカリ遺伝子型の保存培養から得られたユーカリ移植片の形質転換を意図する。微細繁殖シュート培養は、新規に洗い流した先端または葉腋のシュートを収集すること、および滅菌溶液中で組織を表面滅菌することによって生成され得る。1〜5%ブリーチ溶液などの滅菌溶液は当技術分野において公知であり、滅菌した蒸留水を用いて反復してすすぐことが実行され得る。ユーカリ保存培養が、無機塩、炭素源、ビタミン、およびサイトカイニンを含む維持培地中でシュートクラスターとして維持され得る。本発明において、保存培養は、加工木本植物培地(Woody Plant Medium)(WPM)塩(Loyd and McCown, 1980)およびN6-ベンジルアデニン(BA)を含むユーカリ維持(EM)培地(表1)上で維持される。または、MS培地(Murashige and Skoog 1962)またはLepoivre培地などの他の塩培地が使用されてもよい。
【0056】
(表1)ユーカリ維持培地(EM培地)

【0057】
本発明は、遺伝子型に非依存性な形質転換の方法を提供する。本発明の方法は、齢および発生段階に依存しない移植片の形質転換を教示する。保存培養から得られる木の移植片が形質転換のために使用され得る。木の移植片は、葉、葉柄、節間組織、および花組織の一つまたは複数から選択され得る。本発明において、葉移植片は、それらの豊富な供給および形質転換の容易さに起因して選択される。葉の先端の部分が、ピンセットまたは鋭いハサミで除去されるかまたは穿孔されて、損傷した細胞の数を増加させてもよい。本願において、葉移植片は、背軸面を下にして前培養培地上に配置される。
【0058】
本出願において、植物移植片は前培養培地上で培養される。前培養培地は、アグロバクテリウム形質転換前に植物移植片がその上で培養される栄養培地である。具体的には、本発明の前培養培地は、形質転換効率および植物再生を増加させる。前培養培地は、アセトシリンゴンなどの、アグロバクテリウムのインデューサーを含む。あるいは、ヒドロキシフェニルプロパノイド、フェノール化合物、およびコニフェリンなどの他のアグロバクテリウムインデューサーが用いられても良い。本発明では、植物成長調節剤および有機組成物により改変されたシュート再生培地が使用されたが、MS培地(Murashige and Skoog 1962)、木本植物培地(WPM)塩(Loyd and McCown, 1980)またはルポワヴレ(Lepoivre)培地などの、他の塩培地を用いても良い。前培養培地は、任意で、シュート再生培地と同レベルのオーキシン及びサイトカイニンまたは有機組成物を含んでも良い(表3)。本発明において、植物移植片は、表2の前培養培地上において、暗所で4日間前培養された。他の前培養培地および培養期間を用いても良い。
【0059】
(表2)植物前培養培地

【0060】
本発明の方法は、高濃度のオーキシンまたはオーキシン型成長調節剤を含む前培養培地上で移植片を前培養することを教示する。好ましくは、このオーキシンまたはオーキシン型成長調節剤は、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、インドール-3-酪酸(IBA)、およびインドール-3-酢酸(IAA)からなる群より選択される。より好ましくは、オーキシンはNAAである。このオーキシンの濃度範囲は約0.1から約10mg/lである。この好ましいオーキシン濃度は約0.2から約5mg/lである。より好ましくは、このオーキシン濃度は約0.2から約3mg/lである。
【0061】
好ましくは、本発明の方法は、十分なサイトカイニンを含む前培養培地上で木の移植片を前培養することを提供する。このサイトカイニンは、N6-ベンジルアミノプリン(BAP)、N6-ベンジルアデニン(BA)、ゼアチン、カイネチン、4-CPPU(N-(2-クロロ-4-ピリジル)-N'-フェニルウレア)、チアジアズロン(TDZ)、および2-イソペンテニルアデニン(2ip)からなる群より選択される。このサイトカイニンの濃度範囲は、約0.25から約15mg/lである。好ましくは、このサイトカイニンの濃度範囲は、約1から10mg/lである。より好ましくは、このサイトカイニンの濃度範囲は約1から6mg/lである。
【0062】
本発明の方法は、アグロバクテリウムインデューサーを含む前培養培地上で木の移植片を前培養することを提供する。このインデューサーはアセトシリンゴンであり得る。アセトシリンゴンの濃度範囲は、約10から約400mg/lである。好ましくは、この濃度範囲は、約5から約200mg/lである。
【0063】
本発明は、オーキシンおよびアグロバクテリウムインデューサーの両方を含む前培養培地上で木の移植片を任意に前培養する方法を意図する。本発明は、アグロバクテリウムインデューサーとのオーキシンの組み合わせが、いずれかの成分が独立しているときよりも、より高い感染率を生じることを実証する。移植片は、アグロバクテリウムの導入の約1日から約6日の間、この前培養培地上で前培養され得る。好ましくは、この移植片は約4日間前培養される。この前培養段階は、暗所条件下および明所条件下の両方で行われ得る;しかし、暗所において培養することが好ましい。
【0064】
ユーカリ移植片形質転換は、形質転換ベクターを有する異なる株のアグロバクテリウム・ツメフェイシェンスを用いて実行される。1つのこのようなベクターはGV2260であり、これは、アクチンプロモーターまたは構成的プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結されたGUS遺伝子を含む。このベクターはまた、プロモーターに作動可能に連結された除草剤耐性遺伝子を有する。本発明において、アセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子は除草剤耐性を付与し、かつそのシロイヌナズナネイティブプロモーターによって操作される。米国特許第6,225,105号を参照されたい。誘導培地(AIM処方)中で懸濁されたアグロバクテリウム・ツメフェイシェンス培養物は、全ての切断された端が細菌に露出するように移植片に対してピペットによって滴り落とされる。または、移植片は、真空浸透、floral dip法、および当技術分野において周知であるアグロバクテリウム媒介形質転換の他の方法によって形質転換され得る。アグロバクテリウム媒介形質転換の概説としては、Gelvin, SB.Microbiol. Mol Biol Rev 67: 1: 16-37 (2003)を参照されたい。アグロバクテリウムの導入の際に、移植片は、同じ培地上で、約3日間の間、アグロバクテリウムとともに同時培養される。同時培養後、この移植片は、トランスジェニックシュートの回収のために、シュート再生培地に移される。
【0065】
本発明は、シュート再生のための方法を教示し、ここで、形質転換された移植片は、アミノ酸およびビタミンの混合物、植物成長調節剤、グルコース、および抗酸化剤を含む培地上で培養される。1つのこのような完全培地処方が表3に列挙され、これはEuc再生培地と呼ばれる。アスコルビン酸などの抗酸化剤は、植物フェノール化合物の浸出を最小化するためにEuc再生培地に加えられてもよい。グルコースおよびグルタミンは、シュート再生を加速するために培地に加えられてもよい。カルベニシリン、セフォタキシム、およびチメンチンなどの抗生物質もまた、細菌の過成長を妨害するために培地に含められ得る。チメンチンが好ましい抗生物質である。この抗生物質の濃度は、約75から800mg/lの範囲である。好ましくは、この抗生物質の濃度は、約400mg/lである。
【0066】
Euc再生培地は、アミノ酸生合成を妨げないアミノ酸の混合物を含む。本発明において、Euc再生培地は、スルホニルウレアベースの除草剤選択を妨げない。好ましくは、Euc再生培地は、分枝鎖アミノ酸(例えば、ロイシン、イソロイシン、およびバリン)を有さない。より好ましくは、この培地は、カゼイン加水分解物を置き換えるアミノ酸混合物を有する。最も好ましくは、このアミノ酸混合物は、植物組織培養成長のために重要なアミノ酸を有する。
【0067】
(表3)ユーカリ再生培地

【0068】
本発明において、形質転換された移植片の選択の前に4日間の回収期間が存在する。形質転換された移植片を選択するために、いずれかの選択マーカーが再生培地に加えられる。選択マーカーには、除草剤および抗生物質が含まれる。さらに、形質転換された植物を選択するためにいずれかのスクリーニング用マーカーが使用されてもよい。スクリーニング用マーカーの例には、B-グルクロニダーゼ(GUS)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、およびルシフェラーゼが含まれる。本発明において、除草剤選択剤が使用される。本発明の除草剤はAlliであるが、任意の除草剤が使用されてもよい。他の除草剤には、OustおよびLibertyが含まれる。除草剤濃度は、特定の種からの移植片の感受性に依存して変化し得る。選択された移植片は、不定芽の形成まで各2〜3週間サブクローニングされる。形質転換された不定シュートはシュートの塊(clump)から分離され、GUS(B-グルクロニダーゼ)発現について染色される。Jefferson et al. EMBO : 6: 13: 901-3907(1987)。GUSなどのレポーター遺伝子アッセイは、形質転換効率を決定するため、および形質転換されたシュートが逸出植物またはキメラではないことを保証するために使用される。
【0069】
スクリーニング可能なマーカー遺伝子の発現を介する形質転換、サザンブロット分析、PCR分析、または当技術分野において公知である他の方法の完了に際して、形質転換されたシュートは、シュート伸長のための培地に好ましく移される。本発明は、MS塩、スクロース、オーキシン、およびジベレリン酸を含むシュート伸長培地を意図する。NAAは好ましいオーキシンであり、GA3は好ましいジベレリン酸である。シュートは、好ましくは暗所条件下で、約10から約14日間の間、シュート伸長培地上で培養される。E. duniiクローンの伸長については、さらなるオーキシンが伸長培地に加えられる必要があり、このシュートは伸長の期間の間暗所で培養されるべきである。
【0070】
シュート伸長後、シュートは切除され、かつ根誘導培地に移される。光条件に依存して、根誘導培地に植物成長調節剤、例えば、オーキシンを加えることが必要であるかもしれない。本発明の方法は、節における、または節のすぐ下におけるシュート切除を教示する。より好ましくは、シュートは、シュートの先端の近くの節から切除される。1つのこのような根形成培地(表4)は、BTM-1栄養成分(Chalupa 1988)、活性炭(MeadWestvaco, Nuchar)、および余分量のCaCl2から構成される。または、他の低塩培地、例えば、木本植物培地(Woody Plant Medium)および1/2強度MSが根誘導培地のために使用されてもよい。
【0071】
光条件に依存して、根形成培地は、根形成を誘導するために成長調節剤、例えば、オーキシンを含んでもよい。例えば、シュート先端成長点における黄化およびオーキシン産生を誘導する暗所条件下では、根形成培地中にオーキシンを含めることは必要でないかもしれない。さらに、シュートが暗所において切除される場合、節領域および/またはシュート先端に切除の起源を制限することは必要でないかもしれない。または、根形成段階が光条件下で行われる場合、根形成培地中にオーキシンを含めることは必要ないかもしれない。さらに、根形成段階が光条件下で行われる場合、シュート先端の成長点の近くの節においてそのシュートを切除することが好ましい。
【0072】
(表4)ユーカリのために好ましい根形成培地

*追加の400mg/l CaCl2・2H2Oが培地に加えられる
【0073】
根形成が困難である種およびハイブリッドについては、切除したシュートが、シュート形成を誘導するために低レベルのオーキシンを有する培地でパルス処理され得る。例えば、0.25mg/l IBAを含む培地がパルス処理のために使用され得る。好ましくは、シュートは、活性炭を有するBTM-1培地に移す前に、約5〜14日間の間パルス処理される。
【0074】
本発明の形質転換方法は、ユーカリ種またはハイブリッドに任意の外来性DNAを導入するために使用され得る。本発明の方法を使用して、任意の外来性DNAが、植物細胞に安定に組み込まれ、かつ子孫に伝達されることが可能である。例えば、リグニン生合成、花卉発生、セルロース合成、栄養成分の摂取および輸送、病害耐性、または環境条件に対する耐性の増強に含まれる遺伝子が、本発明の方法によって植物細胞に導入され得る。
【0075】
本発明の方法は、ユーカリ種またはハイブリッドにおける遺伝子発現を減少させるために使用され得る。遺伝子発現の減少は、アンチセンス抑制、同時抑制(センス抑制)、および二本鎖RNA干渉を含む、当技術分野において公知の方法によって得られ得る。遺伝子抑制技術の一般的概説については、Science, 288: 1370-1372 (2000)を参照されたい。例示的な遺伝子サイレンシング法は、国際公開公報第99/49029号および国際公開公報第99/53050号においてもまた提供される。
【0076】
アンチセンス抑制のために、cDNA配列が、DNA構築物中のプロモーター配列に対して逆の方向で配列される。このcDNA配列は、一次転写産物または完全にプロセシングされたmRNAのいずれかに対して、全長である必要はない。一般的に、より高い同一性が、より短い配列の使用を補償するために使用され得る。さらに、導入される配列は、同じイントロンまたはエキソンのパターンを有する必要はなく、非コードセグメントの同一性は同等に効果的であり得る。通常、約30または40ヌクレオチドの間の配列およびほぼ全長ヌクレオチドが使用されるべきであるが、少なくとも約100ヌクレオチドの配列が好ましく、少なくとも約200ヌクレオチドの配列がより好ましく、そして約500から約3500ヌクレオチドの配列が特に好ましい。導入される核酸セグメントは、一般的に、抑制される内因性遺伝子の少なくとも一部に対して実質的に同一である。しかし、この配列は、発現を阻害するために完全に同一である必要はない。本発明のベクターは、阻害効果が、標的遺伝子に対して同一性または実質的な同一性を示す遺伝子のファミリー内の他の遺伝子に適用されるように設計され得る。
【0077】
センス同時抑制における植物の遺伝子抑制の別の周知の方法。センス方向で構成される核酸配列の導入は、標的遺伝子の転写をそれによってブロックするための有効な手段を提供する。以下を参照されたい:Assaad et al. Plant Mol. Bio. 22: 1067-1085 (1993);Flavell Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 3490-3496 (1994);Stam et al.Annals Bot. 79: 3-12 (1997); Napoli et al., The Plant Cell 2 : 279-289 (1990);ならびに米国特許第5,034,323号、5,231,020号、および5,283,184号。同時抑制のために、導入される配列は、一次転写産物または完全にプロセシングされたmRNAのいずれかに対して、全長である必要はない。好ましくは、導入される配列は、同時発生的な過剰発現表現型を回避するために、全長ではない。一般的に、全長配列よりも短い配列中の高い同一性が、より長い、より低い同一性の配列を補償する。
【0078】
本発明の方法を使用して、リグニン生合成に関与する遺伝子のアンチセンス抑制が、形質転換されたユーカリ植物中でリグニンの含量および/または組成を改変するために使用され得る。ポプラ、タバコ(N. tabacum)、およびマツにおけるシンナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)をコードする配列のアンチセンス発現が、改変されたモノマー性組成を有するリグニンの産生をもたらすことが実証されてきた。それぞれ、Grand et al., Planta 163: 232-37 (1985)、Yahiaoui et al., Phytochemistry 49: 295-306 (1998)、およびBaucher et al., Plant Physiol. 112: 1479 (1996)。従って、本発明の方法は、リグニン生合成に関与する外来性DNAのアンチセンス抑制を有するユーカリ種またはハイブリッドを安定に形質転換および再生するために使用され得る。
【0079】
本発明の方法は、ユーカリ種またはハイブリッドにおける花卉発生を調節するために使用され得る。いくつかの遺伝子産物が、葯発生および花粉形成のための決定的な成分であることが同定されている。例えば、小胞子細胞壁の形成および小胞子放出のために必須である、カロースの未成熟分解は、雄性不稔を引き起こすために十分である。Worrall et al. , Plant Cell 4 : 7: 759-71 (1992)。従って、いくつかの方法が、雄性不稔植物を産生するために開発されてきた。例えば、米国特許第5,962,769号は、アビジンの発現を介して、雄性不稔にされたトランスジェニック植物を記載する。アビジンは、非組織特異的様式で、または葯特異的組織において、構成的に発現され得る。さらに、雄性不稔は、カルコンシンターゼA遺伝子のアンチセンス抑制によって誘導され得る。van der Meer et al., The Plant Cell 4 : 253 (1992)。本発明の方法によって、雄性不稔ユーカリ種またはハイブリッドが産生および再生され得る。
【0080】
本発明は、スルホニルウレアまたは関連する除草剤、およびカゼイン加水分解物の誘導体を含む植物培地を提供し、ここで、この誘導体は分枝鎖アミノ酸を実質的に含まない。カゼイン粉末またはカザミノ酸として知られるカゼイン加水分解物は、カゼインの加水分解から得られたアミノ酸および短いペプチドフラグメントの混合物である。種々のアミノ酸組成が文献中で報告されており、そして種々のアミノ酸組成が種々のカゼインの供給源および種々の加水分解の手段から入手されてもよいが、任意の手段によって任意の供給源から得られるカゼイン加水分解物は、通常、バリン、ロイシン、およびイソロイシンなどの分枝鎖アミノ酸、トリプトファンなどの芳香族アミノ酸、およびグリシンなどの他のアミノ酸を含む。さらに、組成が変化するのに対して、実施者は、この化合物が植物細胞、特に多くの型の胚形成培養および針葉樹植物細胞の成長をインビトロで開始するために決定的であることに同意する。アミノ酸および特にカゼイン加水分解物といった還元窒素成分での無機培地成分の補充は、植物に引き続き再生され得る培養の成長を誘導または維持するための必須の成分として、木本植物組織培養、特に針葉樹組織培養の当業者によって観察されている。例えば、針葉樹種の胚形成細胞培養の開始培地、誘導培地、および/または維持培地は、日常的にカゼイン加水分解物を含む。例えば、米国特許第5,034,326号、5,036,007号、5,041,382号、5,236,841号、5,310,672号、5,491,090号、5,413,930号、5,506,136号、5,534,433号、5,534,434号、5,563,061号、5,610,051号、5,821,126号、5,850,032号、6,200,809号および6,518,485号を参照されたい。
【0081】
従って、引き続く培養段階の培地がカゼイン加水分解物を含むか否かに関わらず、少量の化合物が持続して存在する。このような痕跡量は選択の間に大損害を与え得る。例えば、わずかな量のカゼイン加水分解物は、関心対象のベクターによるトランスフェクション後にトランスジェニック植物細胞を同定するために働くスルホニルウレア、イミダゾリノン、およびトリアゾロピリミジンなどの選択剤の有効性を阻害し得る。
【0082】
上記に述べたように、これらの選択剤はアセト乳酸シンターゼ(ALS)を標的とし、これは分枝鎖アミノ酸バリン、ロイシン、およびイソロイシンの植物の生合成経路において最初の共通の段階を触媒する。これらの薬剤に対して抵抗性である変異型のALSは、組換えDNA構築物中の選択マーカーとして利用され、形質転換された植物細胞を同定するために選択剤と対にされる。
【0083】
それゆえに、選択培地中の少量のカゼイン加水分解物は、スルホニルウレア、イミダゾリノン、またはトリアゾロピリミジンの存在下で形質転換されていない細胞を成長させることを可能にする。これらの偽陽性はトランスジェニック植物の産生を妨害する。なぜなら、より多くの試料が、所望の形質転換体を同定するために評価されなくてはならないからである。
【0084】
本発明は、分枝鎖アミノ酸を実質的に含まないために、カゼイン加水分解物の組成物を改変することによってこの問題を除外する。別の実施形態において、カゼイン加水分解物の誘導体は、アルギニンまたはグルタミンなどの、植物培養成長において重要であるアミノ酸の高いパーセンテージを含む。
【0085】
別の局面において、本発明は、トリプトファンアナログを含む、トランスジェニック植物を選択するための培地組成物を提供し、ここでこの培地はトリプトファンを実質的に含まない。
【0086】
フィードバック非感受性型のASは、植物形質転換のための有用な選択マーカーを作製する。これらのマーカーは、形質転換体を同定するためにトリプトファンアナログと組み合わせて機能する。ASA2は好ましい選択マーカーである。
【0087】
トリプトファンは、カゼイン加水分解物の成分として植物培地中で日常的に見られる。選択培地中でのわずかな濃度のトリプトファンの存在は、非形質転換体が選択プロセスから逃れることを可能にし得、それによって偽陽性を生じる。
【0088】
トリプトファンを実質的に含まない培地上で形質転換体を選択することは、偽陽性の数を減少することによって選択プロセスを増強することが発見された。従って、本発明の1つの局面は、関心対象の遺伝子およびフィードバック非感受性型のアントラニル酸シンターゼ(AS)をコードする遺伝子を含むベクターを用いて植物細胞を形質転換する段階、ならびにトリプトファンアナログを含む培地組成物上で形質転換した細胞を成長させる段階を含む、形質転換した植物細胞を選択する方法を提供し、ここで、この培地は、トリプトファンを実質的に含まない。
【0089】
本明細書に記載される方法、培地、およびプラスミドは、アミノ酸代謝を変化させる選択剤、例えば、スルホニルウレア系除草剤およびイミダゾリノン系除草剤ならびにメチル化トリプトファンアナログを使用して、トランスジェニック森林樹植物または系統の選択において有用である。これらはさらに、アミノ酸代謝を変化させる選択マーカーを用いる形質転換に供せられる植物材料を培養するために使用される選択培地、前選択培地、および前形質転換培地においてさらに有用である。
【0090】
上記の方法、培地、およびプラスミドは、アミノ酸代謝を変化させる選択剤を使用して選択された細胞株からの植物の再生においてさらに有用である。これらは、アミノ酸代謝を変化させ、およびまた、アミノ酸代謝を変化させる除草剤に対して抵抗性であってもよい選択マーカーを用いて形質転換された植物を入手するためであり得る。従って、本明細書に記載される本発明はまた、除草剤耐性の木の保存を得るために有用である。さらに、本発明は、森林の植林において雑草の除草剤管理のために適切である作物材料を提供する際に有用である。
【0091】
本発明の方法、培地、およびプラスミドは、トリプトファンなどの特定のアミノ酸の過剰産生を生じる遺伝子を用いて形質転換された植物の選択および再生において使用され得る。従って、これらはさらに、このような過剰産生の結果としての増加または変化した成長を示す木の保存を得るために有用であってもよい。
【0092】
本明細書に記載される本方法は、新規な選択培地および選択剤用量をを開発および試験するために一般的に有用である。これらの培地を設計するために使用される同じ原理が、通常、代謝されない糖の使用などのポジティブ選択方法のための選択培地の設計のために適用可能である。
【0093】
本発明の方法はまた、植物組織培養培地を補充するためのアミノ酸混合物の処方を開発するために有用である。
【0094】
別の態様において、本発明は、植物において異種タンパク質を発現するために有用な組換え構築物を提供する。本発明のベクターの例には以下が含まれる:pWVC20(図1)、pWVC21(図2)、pWVC23(図3)、pWVC24(図4)、pWVC25(図5a)、pWVC26(図5b)、pWVC30(図6)、pWVC33(図7)、pWVC34(図8a)、pWVC35(図8b)、pWVK192(図9)、および、pARB1001(図10)。
【0095】
本発明の別の局面は、本発明の方法によって形質転換および選択された植物から木材、木材パルプ、紙、およびオイルを得る方法を提供する。トランスジェニック植物を形質転換および選択するための方法は上記に提供され、当技術分野において公知である。形質転換された植物は、任意の適切な条件下で培養または増殖され得る。例えば、マツは、米国特許出願公開第2002/0100083号において記載されるように培養または成長され得る。ユーカリは、例えば、Rydelius, et al., Growing Eucalyptus for Pulp and Energy(Mechanization in Short Rotation, Intensive Culture Forestry Conference, Mobile, AL, 1994において提供)におけるように培養および成長され得る。木材、木材パルプ、紙、およびオイルは、当技術分野において公知の任意の手段によって植物から得られ得る。
【0096】
上記に述べられるように、本発明に従う木材および木材パルプは、以下の任意の一つまたは複数を含むがこれらに限定されない改善された特性を実証することが可能である:リグニン組成、リグニン構造、木材組成、セルロース重合、繊維寸法、繊維対他の植物成分比、植物細胞分裂、植物細胞発生、面積あたりの細胞数、細胞サイズ、細胞形状、細胞壁組成、木材形成の速度、木材の美的外見、茎欠損の形成、成長の速度、枝の植物性発生に対する根の形成の割合、葉面積指標、および葉の形状、リグニン含量の相加または減少、化学処理に対するリグニンの接近性の増加、リグニンの反応性の増加、セルロース含量の増加または減少、寸法安定性の増加、引っ張り強度の増加、剪断強度の増加、圧縮強度の増加、ショック耐性の増加、堅さ(stiffness)の増加、硬性(hardness)の増加または減少、ねじれの減少、収縮の減少、ならびに重量、密度、および比重の違い。
【0097】
表現型は、任意の適切な手段によって評価可能である。植物は、それらの一般的な形態に基づいて評価され得る。トランスジェニック植物は、裸眼で観察可能であり、秤量可能であり、およびそれらの高さが測定可能である。植物は、植物組織の個々の層、すなわち、師部および形成層を単離することによって試験され得、これらはさらに、成長点細胞、初期拡大、後期拡大、二次壁形成、および後期壁形成に区分される。例えば、Hertzberg、上記を参照されたい。植物はまた、顕微鏡分析または化学分析を使用して評価可能である。
【0098】
顕微鏡分析は、細胞型、発生の段階、ならびに組織および細胞による色素の取り込みを試験することを含む。繊維の形態、例えば、木材パルプ繊維の繊維壁の厚さおよび微小繊維角度は、例えば、顕微鏡透過偏光解析法を使用して観察され得る。Ye and Sundstrom, Tappi J., 80: 181 (1997)を参照されたい。濡れた木材における木材の強度、密度、および傾きの増加ならびに立木が、多変量解析と組み合わせて、可視光および近赤外光のスペクトルデータを測定することによって決定され得る。米国特許出願第2002/0107644号および2002/0113212号を参照されたい。内腔サイズは、走査型電子顕微鏡を使用して測定可能である。リグニン構造および化学特性は、Marita et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. I2939 (2001)において記載されるような、核磁気共鳴スペクトル分析を使用して観察され得る。
【0099】
リグニン、セルロース、炭水化物、および他の植物抽出物の生化学的特徴は、公知の任意の標準的な分析方法によって評価評価可能であり、これには、分光光度法、蛍光スペクトル測定、HPLC、質量分析スペクトル測定、および組織染色法が含まれる。
【0100】
本明細書に記載される方法および応用に対する他の適切な改変および適合が、本発明の範囲またはその任意の態様から逸脱することなくなされ得ることが、関連する分野における当業者には容易に明かである。
【0101】
以下の実施例は、本発明の特定かつ好ましい態様の代表として示される。これらの実施例は、任意の様式で本発明の範囲を限定するものと解釈されない。多くのバリエーションおよび改変が、本発明の精神および範囲内にあるままでなされ得ることが理解されるべきである。
【0102】
実施例
実施例1-植物材料
全優良クローンを、マゼンタボックス(Magenta box)中でシュートの塊として維持し、4〜6週間毎にサブクローニングした。シュートの塊を、必要に応じて分け、保存培養として維持した。他に注記されない限り、全ての培養を、遮光した、寒色の蛍光下で、30〜40μE/m2/sの光強度で、16時間の光時間で増殖させた。成長室の温度は21℃である。選択したユーカリプツス・ドゥニークローンを別として、葉移植片を、全ての選択したクローンについて使用した。
【0103】
市販のユーカリプツス・ドゥニー選抜クローンDUN00001は、MeadWestvaco Brazilの関連会社であるRijesaによって提供された。シュートの塊を、マゼンタボックスあたり4つの塊で維持した。これらのクローンのために好ましい移植片は、節間、葉柄、および主脈などの後生的な維管束組織を有する組織である。
【0104】
E.グランディスクローンは、Rubicon, New Zealandによって提供された。E.グランディスクローンは、固形培地上でシュートの塊として受領した。これらの塊を、マゼンタボックス中の、0.25〜0.5mg/lでBAを有するEuc維持培地(表1)に移した。これらのシュートの塊を、4〜6週間毎に新鮮な培地に移した。
【0105】
市販のE.ウロフィラクローンIPB1およびIPB10、E.グランディスxウロフィラハイブリッドクローンIPB3、IPB6、530および736、ならびにE.サリグナクローンIPB13は、International Paper、USAより提供された。シュートの塊は、E.グランディスについて記載されたのと同じ方法で受け取られた。保存物の樹立手順および培養条件は、全ての培養物が強度約120μE/m2/sの自然光(full light)条件下で生育される以外は、E.グランディスの場合と同じであった。
【0106】
市販のE.カマルドゥレンシスクローンは、International Paper、USAより挿木として受け取った。新たに洗い流した先端および葉腋のシュートを、10〜15%の市販のブリーチで5〜10分間表面滅菌し、70%エタノールで素早くすすぎ、滅菌水で3回すすいだ。節を分離し、Euc維持培地上で培養した。節から葉腋のシュートが惹起したとき、さらなる増殖のために新鮮なEuc維持培地に移した。3〜4の培養サイクルの後、同じ培地上に保存培養を樹立した。これまでに他のクローンについて記載されたのと同じ条件下で、保存培養を維持した。
【0107】
早咲きのE.オシデンタリスクローンを温室で維持した。新たに洗い流した先端および葉腋のシュートを、10〜15%の市販のブリーチで5〜10分間表面滅菌し、70%エタノールで素早くすすぎ、滅菌水で3回すすいだ。節を分離し、Euc維持培地上で培養した。節から葉腋のシュートが惹起したとき、さらなる増殖のために新鮮なEuc維持培地に移した。3〜4の培養サイクルの後、同じ培地上に保存培養を樹立した。これまでに他のクローンについて記載されたのと同じ条件下で、保存培養を維持した。
【0108】
実施例2-構築物
以下の6つの構築物を、形質転換実験のために使用した:pWVZ20、pWVR133、pWVR31、pARB1001、pWVK192、およびp35SGUSIN。バイナリプラスミドpWVZ20は、T-DNAボーダー間に植物プロモーターによって駆動される除草剤耐性遺伝子、および構成的プロモーターによって駆動されるβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を含む。バイナリプラスミドpWVR133は同じ除草剤耐性遺伝子構築物を含むが、GUS遺伝子はイントロンを含み、アクチンプロモーターによって駆動される。pWVR133のGUS発現は植物細胞のみで起こり、細菌細胞では起こらない。バイナリプラスミドpWVR31は、ユビキチン11プロモーターによって駆動されるイントロンを含むGUS遺伝子、およびユビキチン10プロモーター下にネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を有する。pWVK192は、pWVR31とおなじ選択可能なマーカー遺伝子からなるが、イントロンを含むGUS遺伝子は、良く発達した植物の木部および再生期において発現するプロモーターによって駆動される。p35SGUSINは、GUS遺伝子が35Sプロモーターによって駆動され、NPTII遺伝子がノパリンシンターゼプロモーター(NOSプロモーター)によって駆動される以外は、pWVR31と同じマーカー遺伝子からなる。
【0109】
バイナリプラスミドpARB1001は、非必須DNAセグメントの削除によりサイズを減少させたpBIN19、フランキングBstXIサイトとあらかじめクローニングされたbarstar遺伝子(Hartley、1988)がBstXI消化によってpWVR200Bから除去されたpARB310から得られたバイナリベクターから構築され、ゲル精製された。約470bpの断片をBstXIで消化されたpARB310に連結させ、pARB310Bを作成した。次に、ColE1複製起点およびその周辺領域を、プライマーペア

を用いて、PCRでpART27(Gleave、1992)から増幅させた。1.0kb ColE1断片をBamHIおよびBclIで消化して精製し、trfA遺伝子末端とT-DNAのレフトボーダー(LB)との間、pARB310BのBclIサイトに連結させた。これによりpAGF50が産生され、アグロバクテリウムで複製を続けながらも、大腸菌中に多コピー数のプラスミドが提供された。UBQ3プロモーターに加えてNPTIIコード領域のほとんどを除去するために、pAGF50をAscIおよびNcoIで消化し、得られた5.7kb断片をゲル精製した。NPTIIコード領域の5'末端に結合されたUBQ10プロモーターを有する1.9kb断片を、AscIおよびNcoIで消化でpWVR3から放出させ、ゲル精製し、pAGF50断片に連結させて、pARB1000を産生した。このプラスミドにSUBIN::GUSIN::NOSTERレポーターカセットを加えてさらに改変した。SUBINは、5'-UTRおよびイントロンをコードするゲノムDNAを含むP.ラディアータ(P. radiata)からのユビキチンプロモーター、米国特許第6,380,459号のSEQ ID NO: 2を指す。GUSINは、potato tuberin遺伝子(Vancanneyt et al., 1990)からのβグルクロニダーゼコード領域およびイントロンを指す。DraI消化によりレポーターカセットをpARB494から除去し、pARB1000のSmaIサイトに連結し、pARB1001を産生した。
【0110】
アグロバクテリウム株GV2260(Deblaere et al. 1985)を、形質転換研究のために使用した。当業者は、構成的植物プロモーターに作動可能に結合された除草剤耐性遺伝子を有する任意のバイナリ構築物を使用することが可能である。
【0111】
実施例3-形質転換のためのアグロバクテリウムの調製
pWVZ20、PWVR133、pWVR31、pWVK192、pARB1001、またはp35SGUSINのいずれか一つを含むアグロバクテリウムを、YEP培地(10g/l酵母抽出物、10g/lペプトン、および50mg/l NaCl、pH 7.0〜7.2)上で3日間成長させた。プレートから単一コロニーを選択し、100mg/l カナマイシンおよび50mg/l リファンピシンを有する20〜50mlの液体YEP培地中で成長させた。培養物を、28℃および150rpmにて、振盪インキュベーター中で一晩インキュベートした。約0.6〜1.1のODを有する一晩培養物を、3000gで20分間、卓上遠心分離機で遠心分離し、アグロバクテリウム誘導培地またはAIM(5g/lグルコース、250μMアセトシリンゴン、2mMリン酸緩衝液、および0.05M MES、pH 5.8を有するWPM塩)で再懸濁した。pARB1001ならびにクローン530および736による実験では、より低い光学濃度の0.4を標的とした。感染前に、培養物を28℃で25分間インキュベートした。感染前および感染後に、細菌濃度を測定した。
【0112】
実施例4-感染および前培養のための移植片の調製
Euc維持培地上で維持したユーカリプツス保存培養を、移植片の供給源として使用した。葉、葉柄、節間組織、花組織、および胚形成組織を形質転換に使用できるが、以下の実施例では葉、葉柄、および節間組織移植片を用いた。その豊富さから、最も一般的に用いられた移植片は葉移植片であった。葉柄または節間移植片は、健康に根付いた植物からであった。健康かつ新たに開いた葉は、維持培地上のシュートの塊からであった。傷ついた細胞の数を増やすために、葉の先端部分をハサミまたは鉗子で取り除いた。移植片を前培養培地(表2)上に置き、葉移植片については背軸面を下にした。前培養培地は、アグロバクテリウム形質転換前に植物移植片が培養される栄養培地である。具体的には、本発明の前培養培地は形質転換効率および植物再生を増加する。本発明の前培養培地はアセトシリンゴンを含むが、他のアグロバクテリウムインデューサーを用いても良い。表2の前培養培地が、好ましい前培養培地であるが、他の塩培地、例えばMS培地(Murashige and Skoog、1962)、改変木本植物培地(WPM)、またはルポワヴレ培地を用いても良い。本発明において植物移植片は、表2に記載の前培養培地上で、暗所にて1日間または4日間前培養される。必要ではないが、本発明の前培養培地は上昇したレベルのオーキシンを含む。加えて、植物移植片を、アグロバクテリウム形質転換の1日〜6日前から前培養培地上で培養しても良い。
【0113】
pARB1001を用いたE.グランディスxE.ウロフィラハイブリッドクローン530および736での実験について、比較のために、PCT出願公報第WO00/12715号に記載の方法に従い、同時移植を行った。後者の方法に従って回収された移植片を、前培養培地上で1日間前培養した。
【0114】
実施例5-アグロバクテリウム接種および除去
誘導アグロバクテリウム培養を、実施例3に記載のとおり調製し、培養物をピペットで各移植片上に滴下した。全ての切り口が細菌溶液で覆われていることを保証するために、十分なアグロバクテリウム培養物を滴下した。あるいは移植片を、真空浸透、floral dip法、およびその他のアグロバクテリウム媒介形質転換方法によって形質転換しても良い。形質転換に続いて、アグロバクテリウム培養物で覆われた移植片を、3日間または4日間の共培養のために暗所に置いた。あるいは、移植片をアグロバクテリウムと光条件下で共培養しても良い。加えて、移植片をアグロバクテリウムと光条件下または暗所条件下で2〜10日間、好ましくは3日間共培養しても良い。共培養に続いて、移植片を、400mg/lチメンチンを有するEuc再生培地(表3)に移した。移植片を洗浄する必要はない。移植片を選択培地に移す前に、この培地上で4日間培養した。本実施例において、選択培地はチメンチンおよび除草剤選択剤の両方を補充したEuc再生培地である。
【0115】
E.グランディスxE.ウロフィラハイブリッドクローン530および736での実験について、比較のために、PCT出願公報第WO00/12715号の方法に従って同時感染を行い、感染に続いて暗所にて3日間、移植片を同時培養した。しかし、PCT出願公報第WO00/12715号に開示されている方法を用いた感染の結果、応答性の移植片は20%未満であり、そのため本特許出願に記載の本発明の方法が好ましい。
【0116】
実施例6-トランスジェニックシュートの再生
選択によって残ったシュートの塊を、選択のために除草剤または抗生物質のいずれかを含み、アグロバクテリウム対照のためにチメンチンを含むEuc再生培地上に維持し、シュートが増殖しかつ最初に伸長するまで、3週間毎に移した。pWVR133およびpWVK192による形質転換実験のために、再生シュートからの葉および茎組織を、シュートが発生するとすぐ、GUS発現について染色した。pWVZ20による形質転換実験のために、再生シュートからの葉および茎組織を、シュートがさらに発達し、残渣のアグロバクテリウムを含まないときに、GUS発現について染色した。
【0117】
E.グランディスxE.ウロフィラクローン530の形質転換および再生のために、前培養/共培養培地ではカゼイン加水分解物およびグルタミンを割愛し、前培養/共培養培地および再生培地の両方が、追加の0.375mg/L MgSO4で補充される。下記表5は、イントロン含有GUS遺伝子で形質転換されたE.グランディスxE.ウロフィラクローン530シュートを示す。特に、E.グランディスxE.ウロフィラクローン530における安定なGUS発現は、イントロンが正しく切り取られ、遺伝子産物が機能的であることを示す。
【0118】
(表5)イントロン含有GUS遺伝子による構築物を用いたE.グランディスxE.ウロフィラクローン530トランスジェニックシュートの特定

【0119】
実施例7-GUS染色
アグロバクテリウム感染の頻度をモニターし、かつ選択されたシュートが逸出植物またはキメラではないことを保証するために、GUS染色を行った。pARB1001での形質転換実験のために、培養物を形質転換の4日後に染色した。pWVR133、pWVR31、pWVK192、およびp35SGUSINでの形質転換実験のために、再生シュートからの葉および茎組織を、シュートが発生するとすぐ、GUS発現について染色した。pWVZ20での形質転換実験のために、再生シュートからの葉および茎組織を、シュートがさらに発達し、残渣のアグロバクテリウムを含まないときに、GUS発現について染色した。GUS活性を測定するために、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)、0.05%ジメチルスルホキシド、0.05%トリトンX-100、10mMEDTA、0.5mMフェロシアン化カリウム、および1.5mg/ml 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-gluc)を含む基質中で移植片をインキュベートした。37℃で一晩インキュベートする前に、移植片を10分間真空に供した。一晩のインキュベーションに続いて、GUS焦点を数えた。以下の表6に示すとおり、本発明の方法は、WO00/12715の方法よりも高い感染率を提供する。
【0120】
(表6)オーキシン前処理による、E.グランディスxE.ウロフィラクローンに対するアグロバクテリウム感染率の増加

【0121】
結論として、後者の方法は、E.グランディスxE.ウロフィラについてより少ない割合の応答性移植片を生じたことから、本方法はPCT公報第WO00/12715号の方法より好ましい。
【0122】
実施例8-本発明のアミノ酸混合物を含む培地中でのシュート再生
本実施例は、シュート質量の増加を促進することによって、シュート再生プロセスを加速するためのアミノ酸およびビタミン混合物(表3を参照)の使用を示す。E.グランディスxE.ウロフィラクローン530および736の葉移植片を、実施例1に記載されているように調製し、アグロバクテリウム接種材料を、実施例4に従って調製した。葉移植片を、実施例5に記載されているように接種し、3日間共培養した。共培養に続き、葉移植片を収集し、マゼンタボックスあたり10片で、アミノ酸混合物を含む培地上に置いた。4週間目に、外来性のシュートを形成する移植片の頻度として、初期の器官形成を評価し、シュート原基、小さなシュート、およびカルスを有する塊の大きさを測定した。表7に示すように、本発明の再生培地はE.グランディスxE.ウロフィラのシュートの発達を促進する。
【0123】
(表7)培養33日後のE.グランディスxE.ウロフィラ移植片の再生

【0124】
本実施例は、本培地がE.グランディスxE.ウロフィラクローンからのシュート再生を支持できることを示す。
【0125】
実施例9-移植片の組織型による感染の変動
本実施例は、形質転換に好ましい移植片のスクリーニング方法を示す。葉、葉柄、および茎の移植片を、0.5mg/l BAを有するWPM上で成長する選抜されたE.グランディスxウロフィラクローンIPB3植物から単離した。葉移植片を若い先端または葉腋のシュートから取り、主脈に沿って長さおよび幅約4〜6mmの長方形片に切除した。葉柄または節間はシュートの上半分からで、4〜6mmの切片に切った。pWVR133を有するアグロバクテリウム株GV2260を、実施例3に記載されているように調製した。収集した移植片を、ユーカリプツス再生培地上で暗所にて4日間インキュベートした。アグロバクテリウム培養物を移植片に滴下し、同じ培地上で暗所にて3日間、移植片と同時培養した。次に移植片をアグロバクテリウムたまりから取り出し、400mg/lチメンチンを補充したEuc再生培地に4日間移した。再生培地に移した後、移植片をGUS発現について染色した。表8に示すとおり、葉および葉柄移植片は節間移植片よりも感染に敏感に反応した。
【0126】
(表8)選抜されたユーカリプツス・グランディスxウロフィラクローンIPB3の茎移植片よりも、葉および葉柄移植片において増加した感染率

【0127】
実施例10-選抜されたユーカリプツス・グランディスxウロフィラクローンIPB6の形質転換のためのアグロバクテリウム株、GV2260およびEHA105、ならびに培養容器
本実施例は、二つのアグロバクテリウム株GV2260およびEHA105による葉または節間移植片のいずれかの感染を比較する。前培養および共培養培地は、250μM ASおよび2mg/l IAAにおける、IAAとしての上昇したオーキシン量(対 通常の再生培地では0.1mg/l NAA)の組み合わせを有する再生培地である。前培養および共培養培地は、250μM ASおよび2mg/l IAAにおける、IAAとしての上昇したオーキシン量の組み合わせを有する再生培地である。本実施例で用いられたプラスミドはpWVR31である。幅約1〜2mmの葉移植片を、これまでの実施例に記載されているように、前培養、共培養、および回収に用いた。下記表9に示すとおり、ボックスで培養された移植片は、プレートで培養された移植片と同様の頻度で感染するが、EHA105を用いた場合、ボックス中での感染はより多数のGUS焦点を生じ得る。
【0128】
(表9)アグロバクテリウム株EHAおよびGV2260と同様の感染率を有するE.グランディスxウロフィラクローンIPB6

【0129】
実施例11-RNA単離
RNAqueous(商標)-96キットを用いて、製造業者の指示に従い、野生型および形質転換E.グランディスxE.ウロフィラの葉およびシュート組織からRNAを単離した。簡単に述べると、0.1〜1.5mgの組織を300μlの溶解/結合緩衝液に懸濁し、プラスチック乳棒で細かな粉になるまで粉砕した。試料を最高速度で3分間遠心分離し、上清を新たなプレートに移した。300μl(1x v/v)の64%エタノールを上清に加え、試料を簡単にボルテックスした。次いで試料を1850gにて2分間遠心分離した。遠心分離に続いて、任意でDNA分解酵素処理段階を行った。各試料に対して、フィルターパッドの中心に5μlのDNA分解酵素+35μlのDNA分解酵素緩衝液を加え、試料を室温にて20分間インキュベートした。20分間のインキュベーションの後、600mlの洗浄バッファーAを各試料に加え、試料を最高速度で2分間遠心分離した。遠心分離に続き、上清を捨て、600μlの洗浄バッファーBを各試料のフィルターパッドに加えた。最高速度で2分間遠心分離した後、上清を捨て、600μlの洗浄バッファーC/Dを各フィルターパッドに加えた。試料を最高速度で2分間遠心分離し、上清を捨てた。洗浄バッファーC/Dでの二度目のすすぎの後、50μlのRNA溶出溶液を加え、試料を最高速度で2〜3分間遠心分離した。RNA溶出段階を繰り返し、溶出したRNA試料を-80℃でさらなる使用まで保存した。
【0130】
実施例12-RT-PCR
ALS除草剤耐性遺伝子の存在および発現を測定するため、RT-PCRを行った。全RNAを、E.グランディスxE.ウロフィラ植物の形質転換および野生型試料から、実施例12に記載されているように単離した。RNAの単離および定量化に続き、Ready to Go RT-PCRキット(Pharmacia)で、製造業者の指示に従ってRT-PCRを行った。一般的には、5μlの全RNA(約20ng RNA)を、1μlオリゴdTn、1μl 3μM ALSフォワードプライマー、1μl 3μM ALSリバースプライマー、および42μlの水を含む、45μlのRT-PCR反応混合物に加えた。
【0131】
RNAを変性させるため、チューブを少なくとも75℃の温度まで3分間加熱した。次いで試料を42℃で30分間インキュベートした。
【0132】
インキュベーションに続き、以下のようにRT-PCRを行った。
サイクル1: 95℃で5分間
55℃で1分間
72℃で1分間
サイクル2〜30: 95℃で1分間
55℃で1分間
72℃で1分間
サイクル31: 95℃で1分間
55℃で1分間
72℃で10分間
【0133】
RT-PCRの完了後、PCR増幅産物を、エチジウムブロマイドで染色したアガロースゲル上で可視化した。
【0134】
実施例13-除草剤耐性遺伝子発現を評価するためのRT-PCR
本実施例は、遺伝子導入系の試料における除草剤耐性遺伝子の存在および発現を示す。実施例11に記載されているように、各推定上の遺伝子導入系の葉および茎組織からRNAを単離した。特に、形質転換E.グランディス、E.グランディスxウロフィラ、およびE.カマデュレンシス系からRNAを単離した。加えて、野生型E.グランディス、E.グランディスxウロフィラ、およびE.カマデュレンシス植物からRNAを単離した。各系について、除草剤耐性遺伝子の存在および発現を評価するためのRT-PCRに5μlのRNA試料を用いた。製造業者の指示に従い、Ready to Go RT-PCRキット(Pharmacia)で、RT-PCRを行った。簡単に述べると、各5μlのRNA調製物を、オリゴ(dT)nおよび除草剤耐性遺伝子プライマーを含む別々のRT-PCR反応に加えた。RT-PCRに続いて、エチジウムブロマイドで染色したアガロースゲル上で、増幅産物を可視化した。
【0135】
RT-PCR産物のアガロースゲル電気泳動により、試験した全ての形質転換ユーカリプツス系が、除草剤耐性遺伝子を発現することが明らかになった。具体的には、E.グランディスxウロフィラの全8個がALSを発現するのに対し、対照植物はALSを発現しない。対照植物のいずれにおいても、除草剤耐性遺伝子の発現は検出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】ベクターpWVC20の模式図を提供する。
【図2】ベクターpWVC21の模式図を提供する。
【図3】ベクターpWVC23の模式図を提供する。
【図4】ベクターpWVC24の模式図を提供する。
【図5a】ベクターpWVC25の模式図を提供する。
【図5b】ベクターpWVC26の模式図を提供する。
【図6】ベクターpWVC30の模式図を提供する。
【図7】ベクターpWVC33の模式図を提供する。
【図8a】ベクターpWVC34の模式図を提供する。
【図8b】ベクターpWVC35の模式図を提供する。
【図9】ベクターpWVK192の模式図を提供する。
【図10】ベクターpARB1001の模式図を提供する。
【図11】ベクターpWVR133の模式図を提供する。
【図12】ベクターpWVR31の模式図を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、E.グランディス(E. grandis)xE.ウロフィラ(E. urophylla)の移植片の少なくとも1つの細胞を外来性DNAで形質転換するための方法:
(i)アグロバクテリウムのインデューサーを含む前培養培地上で木の移植片を培養する段階;
(ii)外来性DNAを有する形質転換ベクターを含むアグロバクテリウム株に該移植片を曝露する段階;
(iii)形質転換された移植片を選択する段階であって、該外来性DNAが形質転換された移植片の少なくとも1つの細胞に移される段階;および
(iv)該形質転換された移植片を再生して完全な植物を産生する段階。
【請求項2】
アグロバクテリウムのインデューサーが、アセトシリンゴンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アセトシリンゴンの濃度が、約10〜約400mg/lである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アセトシリンゴンの濃度が、約5〜約200mg/lである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
培地が、さらにオーキシンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
培地が、さらにサイトカイニンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
移植片が、暗所で約1〜約6日間前培養される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
移植片が、約4日間前培養される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
オーキシンが、NAA、2,4-D、IBA、およびIAAからなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項10】
NAA、2,4-D、IBA、およびIAAのいずれか1つの濃度範囲が、約0.1〜約10mg/lである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
濃度範囲が、約0.2〜約5mg/lである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
濃度範囲が、約0.2〜約3mg/lである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
サイトカイニンが、ゼアチン、カイネチン、およびBAからなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項14】
ゼアチン、カイネチン、およびBAのいずれか1つの濃度範囲が、約0.25〜約15mg/lである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
濃度範囲が、約1〜約10mg/lである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
濃度範囲が、約1〜約6mg/lである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
移植片が葉、葉柄、節間組織、花組織、または胚形成組織の少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
組織が、齢または発生段階に非依存的に選択される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
遺伝子型に非依存性である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
形質転換された移植片の全ての細胞が、外来性DNAを含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
以下の段階を含む、非キメラE.グランディスxE.ウロフィラ木を産生するための方法:
(i)アグロバクテリウムのインデューサーを含む培地上でE.グランディスxE.ウロフィラ移植片を前培養する段階;
(ii)植物細胞に遺伝子を移すことが可能であるベクターを宿すアグロバクテリウム株に該移植片を曝露する段階;
(iii)形質転換した移植片を選択する段階;および
(iv)該移植片を成長させて非キメラ木を産生する段階。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2008−526183(P2008−526183A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540378(P2007−540378)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/039520
【国際公開番号】WO2006/052554
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(505450722)アーバージェン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】