説明

ヨーグルト

【課題】化学的に合成された澱粉を使用することなく、保形性、保水性に優れ、曳糸性が少なく、クリーミィな食感をもち、食感に優れ、経時的に安定しているヨーグルトを提供することを主な主題とする。
【解決手段】固形分濃度6.0%でアミログラフ測定する場合の50℃から95℃までの昇温時の最高粘度と95℃達温時の粘度の差が200BU未満の湿熱処理タピオカ澱粉及び糖類を含有するヨーグルト。
ヨーグルト全体に対する固形分換算で固形分換算で、湿熱処理タピオカ澱粉の含有量が0.2〜15.0重量%であり、糖質の含有量が1.0〜45.0重量%である前記ヨーグルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿熱処理タピオカ澱粉及び糖類を含むヨーグルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルト製品、特に、ソフトヨーグルト、フルーツヨーグルト、ヨーグルトデザート、フローズンヨーグルト等の離水防止や増粘安定剤として澱粉が含有されている。
【0003】
従来、これらのヨーグルトにおいて、ワキシーコーンスターチを原料としたヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、タピオカ澱粉を原料としたヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等化学的に合成された澱粉が、ヨーグルトの離水防止や粘度の経時安定性のために用いられてきた。(特許文献1参照)
【0004】
あるいはα化化工澱粉もしくはリン酸架橋澱粉を使用する方法(特許文献2参照)
これらはいずれも化学的に合成された澱粉を用いて、離水防止や粘度の経時安定性が成されている。
【0005】
しかし、食品の安全性や身体への影響に関する関心の高まりから、化学合成品ではなく、天然の素材を使用することが求められるようになった。
【0006】
一方、化学的に処理された澱粉とは異なり、水と熱だけを使用して物理的に処理された澱粉として、湿熱処理澱粉が知られている(特許文献3参照)。
【0007】
湿熱処理澱粉は、加熱しても糊化しない程度の水分を含む澱粉粒子を、適当な水分の存在下で加熱することにより得られるものであり、解重合などの化学的変化を伴わず、安全性の高い食品として認識されている(非特許文献1及び2参照)。
【0008】
しかし、安全性だけではなく、保形性、保水性に優れ、曳糸性がなく、クリーミィな食感を持ち、経時的に安定しているヨーグルトが強く求められるようになってきた。
【0009】
【特許文献1】特許第3941056号
【特許文献2】特許第3060965号
【特許文献3】特許第2996707号
【0010】
【非特許文献1】福井俊郎、「澱粉科学の実験法」、朝倉書店、1979年、242−245頁
【非特許文献2】蔵橋嘉樹、「澱粉科学の事典」、朝倉書店、2003年、417−421頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は化学的に合成された澱粉を使用することなく、保形性、保水性に優れ、曳糸性が少なく、クリーミィな食感を持ち、食感に優れ、そして経時的に安定しているヨーグルトを提供することを主な課題とする。
【課題を解決する為の手段】
【0012】
本発明者は化学的に合成された澱粉を用いずに、保形性、保水性に優れ、曳糸性が少なく、クリーミィな食感を持ち、食感に優れ、そして経時的に安定しているヨーグルトを提供することを課題として鋭意検討を重ねた。
【0013】
その結果、湿熱処理を行ったタピオカ澱粉を配合することにより、保形性、保水性に優れ、曳糸性が少なく、食感に優れ、そして経時的に安定しているヨーグルトを得ることを見出し、更に鋭意検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0014】
タピオカ澱粉を用いた理由は他の澱粉と比較して、その糊液が耐塩性、経時安定性、冷蔵耐性及び冷凍耐性に非常に優れていることによる。
【0015】
しかし、タピオカ澱粉を未処理の状態で用いると非常に曳糸性が強く、餅様の食感になりヨーグルトの食感としては不適当なものになった。そこで種々研究を行なった結果、タピオカ澱粉を湿熱処理すれば問題となっている曳糸性がなくなり、食感もクリーミィなものになることが分かった。
【0016】
上記したような効果が得られるのは湿熱処理したタピオカ澱粉のみで、他種の澱粉及びその湿熱処理したものを用いても、そのような効果が得られなかった。
【0017】
即ち、本発明は、以下のヨーグルトに関する。
【0018】
項1:固形分濃度6.0%でアミログラフ測定する場合の50℃から95℃までの昇温時の最高粘度と95℃達温時の粘度の差が200BU未満の湿熱処理タピオカ澱粉及び糖類を含有するヨーグルト。
【0019】
項2:ヨーグルト全体に対する固形分換算で、湿熱処理タピオカ澱粉の含有量が0.2〜15.0重量%であり、糖類の含有量が1.0〜45.0重量%である項1記載のヨーグルト。
【0020】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0021】
1.湿熱処理タピオカ澱粉
湿熱処理タピオカ澱粉は、タピオカ澱粉を湿熱処理することによって得られるものである。
【0022】
湿熱処理の方法は特に限定されず、適宜公知の方法に従って行うことができる。
例えば、特許第2996707号に記載の方法に従って、内圧、外圧共に耐圧性の密閉できる容器を用い、この容器内に天然澱粉を入れ、減圧とした後、蒸気を導入して加圧加熱し、あるいはこの操作を繰り返し、該澱粉を所定時間加熱した後、冷却する方法によって処理することができる。
【0023】
また、L.SAIRにより報告された方法(シリアルケミストリィ、44巻1月号、8〜26頁 1964年)に従って、天然澱粉を2cm程度の薄い層に広げて、相対湿度100%の加圧容器に入れ、約95〜100℃で約16時間加熱することにより処理しても良い。
【0024】
このうち、特に工業的規模で実施する場合には、特許第2996707号に記載の方法に従って、湿熱処理することが好ましい。該方法を用いることにより、湿熱処理を効率良く行うことができる。
【0025】
湿熱処理は、密閉容器中で相対湿度100%の条件下で温度95〜130℃、好ましくは100〜130℃程度で行うことが適当である。加熱温度が95℃未満の場合は曳糸性が残る。一方、加熱温度が135℃より高くなると分解がおこり、粘度が低く、不安定になる。
【0026】
湿熱処理の時間は温度条件により、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常、3分間〜5時間程度である。
【0027】
湿熱処理タピオカ澱粉を用いた場合には、保形性、保水性に優れ、曳糸性がなく、クリーミィな食感を持ち、経時的に安定しているヨーグルトが得られる。
【0028】
特に、湿熱処理したタピオカ澱粉を固形分濃度6.0%でアミログラフで測定する場合に50℃から95℃までの昇温時の最高粘度と95℃達温時の粘度の差が200BU未満、好ましくは150BU未満であるものが、保形性、保水性に優れ、曳糸性がなく、クリーミィな食感を持ち、経時的に安定しているヨーグルトが得られる点で好ましい。
【0029】
尚、50℃から95℃までの昇温時の最高粘度とは、50℃から95℃までの昇温粘度曲線において最も高い値となる粘度を意味する。従って、昇温粘度曲線がピークを有し、ピーク粘度が95℃達温時の粘度より大きい場合は、ピーク粘度が最高粘度となる。つまり、最高粘度と95℃達温時の粘度の差は、換言すると、ピーク粘度と95℃達温時の粘度の差ともいえる。一方、昇温粘度曲線がピークを有しないか、又はピークを有するがピーク粘度が95℃達温時の粘度より小さい場合は、95℃達温時の粘度が最高となる。
つまり、最高粘度と95℃達温時の粘度の差は0となる。
【0030】
湿熱処理タピオカ澱粉の含有量は、ヨーグルトの種類や用途により適宜設定し得るが、ヨーグルト全体に対し、固形分換算で、0.2〜15.0重量%程度、好ましくは0.4〜13.0重量%程度、更に好ましくは0.5〜12.0重量%程度、特に0.8〜10.0重量%程度である。この範囲であると粘度の安定性に優れ、食感にも優れ、かつ、曳糸性がない点で好ましい。
【0031】
2.糖類
本発明のヨーグルトは、糖類を含有している。
【0032】
糖類には、単糖類、二糖類、水飴など、通常ヨーグルトに使用されている糖類が含まれる。但し、澱粉質は含まれない。
【0033】
具体的には、乳糖、砂糖、ブドウ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖及び水飴などが挙げられる。これらは、1種単独でもよく、2種併用して用いても良い。
【0034】
ヨーグルトにおける糖類の含有量は、適宜設定し得るが、ヨーグルト全体に対し、固形分換算で、1.0〜45.0重量%、好ましくは2.0〜40.0重量%、更に好ましくは3.0〜35.0重量%程度である。
【0035】
この範囲であると粘度の経時安定性に優れる点で好ましい。
【0036】
3.ヨーグルト
3−1.ヨーグルトの製造方法
本発明のヨーグルトは、公知のヨーグルトの製造方法に従って、製造することができる。
【0037】
例えば、化工澱粉を含有する公知のヨーグルトの製造方法において、化工澱粉に代えて湿熱処理タピオカ澱粉を用いることにより、製造することができる。
【0038】
特に限定されるものではないが、本発明によりヨーグルトを作製する方法として、例えば以下のような方法を挙げることができる。
【0039】
(1)予め混合した砂糖、脱脂粉乳、及び湿熱処理タピオカ澱粉を水と牛乳の混合液に添 加し、攪拌しながら65℃まで加熱する。
【0040】
(2)65℃で10分間加熱攪拌し、65℃で均質化する。
【0041】
(3)均質化後の調製液を90℃まで加熱し、攪拌しながら10分間殺菌する。
【0042】
(4)殺菌後40℃まで冷却、スターターを添加して40℃で静置培養し、pH4.5に なるまで醗酵させる。
【0043】
(5)醗酵後、25℃まで攪拌しながら冷却、ペースト化した醗酵乳をカップ充填し、4 ℃で一晩放置して、ヨーグルトを調整する。
【0044】
ヨーグルトの製造において、湿熱処理タピオカ澱粉を予め原料乳に溶解後、スターターを接種して醗酵させる方法と原料乳を醗酵させた後、これに湿熱処理タピオカ澱粉を粉体のまま、あるいは水などの溶媒に分散、溶解させた後に添加する方法のいずれおも採用することができる。
【0045】
ヨーグルトの種類は特に制限されず、公知の種類、例えばプレーンヨーグルト、ハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ヨーグルトデザート、フローズンヨーグルト等がいずれも含まれる。
【0046】
又、具体的な要件は特に限定されず、ヨーグルトの種類及至用途に応じて適宜設定し得るが、例えば、ヨーグルトの場合は、実施例に記載の方法に従って作成することができる。
【0047】
3−2.ヨーグルトにおける他の成分
本発明のヨーグルトは、前記原料以外に、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、通常のヨーグルトと同様の構成をとることができ、即ち、乳原料、乳酸菌(スターター)、水、糖質、安定剤、油脂、乳化剤、着香料、着色料、風味調整剤、酸化防止剤等より選択された添加材料を、所定の割合で混合させ溶融したものが用いられる。
【0048】
原料の乳は、通常、牛乳、山羊乳等の獣乳や、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳或いは脱脂加糖練乳或いは生クリームなどが好適に用いられる。乳の配合量は、醗酵食品の全体に対して、無脂乳固形分が8%以上になるように、混合原料に対する原料乳の配合量を決める。
【0049】
乳酸菌は、通常の醗酵乳と同様の菌類あるいはスターターが使用される。
【0050】
糖質としては、例えば、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、蜂蜜、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴等が挙げられる。
【0051】
又、甘味成分として、アスパルテーム、サッカリン、ステビア抽出物等が挙げられる。
【0052】
そして、必要に応じて、ビタミン類、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等のカルシウム類、鉄、マグネシウム、リン、カリウム等のミネラル類を添加してもよい。
【0053】
なお、本発明のヨーグルトには、その風味に合った固形食品を分散させてよい。
固形食品として、例えば、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、梨、りんご、ミカン、パイナップル、メロン、キーウィ等の果肉、ナタデココ、ナッツ類、チョコレート、ゼリーなどが使用できる。
【0054】
これら他の成分の含有割合は、本発明の効果が奏される範囲内で、適宜設定することができる。
【0055】
また、本発明のヨーグルトには、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、湿熱処理タピオカ澱粉以外の他の湿熱処理澱粉又は天然澱粉を混合することもできる。
【0056】
【発明の効果】
【0057】
本発明のヨーグルトは化学的に合成された澱粉ではなく、湿熱処理タピオカ澱粉を使用しているため、安全性に優れる。
【0058】
更に、本発明のヨーグルトは保形性、保水性に優れ、曳糸性がなく、クリーミィな食感を持ち、食感に優れ、そして経時的に安定している。
【0059】
また、長期間冷蔵保存した場合にも品質が安定している。
【0060】
このように、本発明は、安全性が高く、かつ、優れた品質を有するヨーグルトを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明をより具体的に説明するために、実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
【0062】
尚、以下で特に断りのない限り、「%」は「重量%」を表す。
【0063】
実施例及び比較例において、澱粉の粘度変化は、アミログラフ(Brabender社、Viscograph)によって測定した。BUはブラベンダーユニットを表す。
【実施例1】
【0064】
湿熱処理タピオカ澱粉の性質とヨーグルトの特性
1−1)湿熱処理タピオカ澱粉の作製
湿熱処理タピオカ澱粉は、タピオカ澱粉(General Starch株式会社、タイ国)を特許第2996707号に記載の方法に従って処理することにより得た。
【0065】
具体的に直径40センチメートル、奥行き80センチメートルで内圧・外圧に耐圧の円筒型の容器(日阪製、内・外圧に耐性のレトルト殺菌機)の内部に縦25センチメートル×横32センチメートル×深さ10センチメートルのステンレス製バットを設置し、バット上に厚さ5センチメートルになるようにタピオカ澱粉を入れた。密閉後、まず真空ラインを開放し、約10分後60トールの減圧となった時、真空ラインを閉じ、加圧蒸気ラインを開放して蒸気を導入し、各種条件で加熱を行った。加熱終了後、圧力を開放し、更に減圧冷却を行った後、開釜して処理澱粉を取り出し、乾燥機にて乾燥し、そして粉砕機にて粉砕し、水分調整を行い、40メッシュの篩を通して仕上がりとした。
【0066】
湿熱処理条件を変えて湿熱処理タピオカ澱粉を各種作成した。表1に、湿熱処理の条件を示す。
【0067】
また、得られた各種湿熱処理タピオカ澱粉及び未処理のタピオカ澱粉について、固形分濃度6.0%として、ブラベンダー社の粘度測定機であるアミログラフを用いて、50℃から95℃までの30分間で昇温し、昇温粘度曲線を求め、50℃から95℃までの昇温粘度曲線における最高粘度と95℃達温時の粘度の差を求めた。
【0068】
表1に、固形分濃度6.0%において、アミログラフで測定した時の50℃から95℃までの昇温時の最高粘度(A)、95℃達温時の粘度(B)、及び、最高粘度と95℃達温時の粘度の差(A−B)を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
1−2)ヨーグルトの作製
上記湿熱処理タピオカ澱粉を用いて下記の処方に従ってヨーグルトを作製した。
【0071】
材料 重量%
牛乳 70.00
砂糖 5.00
脱脂粉乳 3.00
スターター(市販ヨーグルト) 3.00
試料澱粉 0.65
水 18.35
合計 100.00
【0072】
ヨーグルト100重量%中、無脂乳固形分:9.1重量%、乳脂肪分:2.5重量%
【0073】
具体的には、水と牛乳の混合液に、予め十分に混合しておいた脱脂粉乳、砂糖及び試料澱粉の粉体混合物を添加し、攪拌しながら65℃で10分間加熱溶解した。これを65℃に保持したまま均質化した後、90℃で10分間加熱殺菌し、40℃まで冷却した。次にこれにベース乳中に分散させたスターターを接種し、40℃で約4時間培養した。pH4.5に達した時点で培養を終了し、25℃まで冷却した。得られたヨーグルトカードを攪拌によりペースト化し、直径約6cm、深さ約4cmのプラスチック製カップにその約100gを充填し、4℃で保存し、ヨーグルトを調製した。
【0074】
1−3)ヨーグルトの評価
【0075】
上記の作製から3日後に、得られたヨーグルトの保形性、保水性、曳糸性、外観(光沢)、食感(濃厚感、口溶け感)及び経時安定性について評価した。
【0076】
具体的には、カップ中央部から約5gのヨーグルトをスプーンでとり、直径7cm、深さ約0.7cmのプラスチック製蓋の上にのせ、室温で10分間放置し、その上上記各項目について評価した。
【0077】
上記項目の評価方法は以下の通りである。
【0078】
「保形性」:カップ中央部のすくい取り跡が完全に残っている場合を5、すくい取り跡が完全に消失している場合を1として評価した。
【0079】
「保水性」:蓋の上にのせたヨーグルト片に離水が全く見られない場合を5、離水がヨーグルト片の全体を覆う場合を1として評価した。
【0080】
「曳糸性」:カップからスプーンですくい取りした時に糸を引くような状態にならない場合は5、糸を引くような状態を1として評価した。
【0081】
「光沢」:カップ中のヨーグルトを白色蛍光灯直下で光をあてた時に、表面に凸凹がなく、きらきら光って見える状態を5、表面があらく、光を反射しない場合を1として評価した。
【0082】
「食感」:濃厚感が有って、口溶けがよい物を5として、濃厚感がなく、口溶けが悪いものを1として評価した。
【0083】
「経時安定性」:仕上がったヨーグルトを7日間冷蔵保存し、離水が無く、食感が仕上がり時と変わらないものを5とし、離水し、食感が非常に悪いものを1として評価した。
【0084】
評価結果を表2に示す。
【0085】
なお、各項目とも5段階(1:悪い、 2:やや悪い、3:やや良い、4:良い、5:非常に良い)で評価した。なおパネラーは7名で行い、その評価数値の上下を除外し、平均値を取り、小数点以下を四捨五入した数値を表2に記した。
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示すように、湿熱処理タピオカ澱粉を用いて作製したヨーグルトは保形性、保水性、曳糸性、光沢、食感及び経時安定性に優れていた。
【0088】
特に、湿熱処理タピオカ澱粉II〜VI、換言すると、湿熱処理タピオカ澱粉を固形分濃度6.0%でアミログラフで測定した場合、50℃から95℃までの昇温時の最高粘度と95℃達温時の粘度の差(A−B)が、200BU未満のもの、特に150BU未満のもの保形性、保水性に優れ、曳糸性がなく、クリーミィな食感を持ち、経時的に安定していた。
【0089】
【実施例2】
【0090】
澱粉質の種類とヨーグルトの特性
本発明による湿熱処理タピオカ澱粉及び他の種類の澱粉を用いてヨーグルトを作成し、その特性の比較を行った。
【0091】
2−1)試料澱粉
原料の澱粉は以下のものを用いた。
【0092】
タピオカ澱粉(General starch株式会社製、タイ国)
コーンスターチ(三和澱粉工業株式会社製)
馬鈴薯澱粉(東部十勝農産加工農業協同組合連合会製)
小麦澱粉(三和澱粉工業株式会社製)
甘藷澱粉(そお鹿児島農業協同組合製)
【0093】
2−2)湿熱紙処理澱粉
湿熱処理タピオカ澱粉としては、実施例1の表1に示す湿熱処理タピオカ澱粉Vを用いた。
【0094】
又、上記1−1において、原料の澱粉を代える以外は、同様の方法にて、湿熱処理コーンスターチ、湿熱処理小麦澱粉、湿熱処理馬鈴薯澱粉、湿熱処理甘藷澱粉を作成した。
【0095】
湿熱処理の時間は、コーンスターチ及び小麦澱粉を用いる場合は、温度120℃、時間30分とした。馬鈴薯澱粉及び甘藷澱粉を用いる場合は、温度120℃、時間15分とした。
【0096】
2−3)ヨーグルトの作成
実施例A
湿熱処理タピオカ澱粉Vを用いて下記の処方に従ってヨーグルトを調製した。
【0097】
材料 重量%
牛乳 70
砂糖 5
脱脂粉乳 3
スターター(市販ヨーグルト) 3
湿熱処理タピオカ澱粉V 0.65
水 18.35
合計 100
ヨーグルト100重量%中、無脂乳固形分:9.1重量%、乳脂肪分:2.5重量%
【0098】
具体的には、水と牛乳の混合液に、予め十分に混合しておいた脱脂粉乳、砂糖及び湿熱処理タピオカ澱粉Vの粉体混合物を添加し、攪拌しながら65℃で10分間加熱溶解した。これを65℃に保持したまま80kg/cmで均質化した後、90℃で10分間加熱殺菌し、40℃まで冷却した。次にこれにベース乳中に分散させたスターターを接種し、40℃で約4時間培養した。pH4.5に達した時点で培養を終了し、25℃まで冷却した。得られたヨーグルトカードを攪拌によりペースト化し、直径約6cm、探さ約4cmのプラスチック製カップにその約100gを充填し、4℃で保存し、ヨーグルトを作製した。
【0099】
比較例B
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、湿熱処理コーンスターチとする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0100】
比較例C
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、湿熱処理小麦澱粉とする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0101】
比較例D
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、湿熱処理馬鈴薯澱粉とする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0102】
比較例E
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、湿熱処理甘藷澱粉とする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0103】
比較例F
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、コーンスターチ(未処理コーンスターチ)とする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0104】
比較例G
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、馬鈴薯澱粉(未処理馬鈴薯澱粉)とする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0105】
比較例H
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、甘藷澱粉(未処理甘藷澱粉)とする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0106】
比較例I
湿熱処理タピオカ澱粉Vに代えて、化工澱粉(アセチル化リン酸架橋澱粉)とする以外は、実施例Aと同様にしてヨーグルトを作製した。
【0107】
2−4)作製したヨーグルトの評価試験結果
【0108】
評価は1−3)に記載した方法で行った。
【0109】
【表3】

【0110】
【表4】


【0111】
表3、表4の結果より、湿熱処理タピオカ澱粉を用いたヨーグルトは他種の澱粉の湿熱処理品、他種の未処理の澱粉及を用いたヨーグルトと比較して明らかに保水性、保形性、食感、風味及び光沢に優れ、かつ曳糸性が少なく、経時安定性が優れているという長所が認められた。又化工澱粉と比較して物性的には同等のものが得られた。
【実施例3】
【0112】
フルーツ・ヨーグルトの作製
湿熱処理タピオカ澱粉を用い、下記の処方に従って、実施例Aと同様にヨーグルトを作製した。
【0113】
フルーツ・ヨーグルトの処方を次に示す。
【0114】
材料 重量%
牛乳(乳脂肪分3.5%) 56.0
砂糖 4.0
脱脂粉乳 2.4
スターター(市販ヨーグルト) 2.4
湿熱処理タピオカ澱粉V 0.7
水 14.5
ストロベリージャム 20.0
合計 100.0
【0115】
得られたヨーグルトカードを攪拌によりペースト化した。このペースト化したヨーグルトとストロベリージャムを80:20の割合で混合し、カップに充填、4℃で保存した。
【0116】
フルーツ・ヨーグルトの評価
【0117】
上記の作製後から3日後に、実施例1と同様にしてフルーツ・ヨーグルトの保形性、保水性及び食感について評価した。
【0118】
不溶性固形分の分散性は、ジャム中の粒状物、繊維状物がヨーグルト中に均一に分散している場合を5、完全に沈殿している場合を1として評価した。
【0119】
【表5】

【0120】
表5に示すように、湿熱処理タピオカ澱粉Vを用いたフルーツ・ヨーグルトは優れた機能性及び食感を有していた。
【実施例4】
【0121】
下記した処方を用いて、水及び牛乳の中に攪拌機で攪拌しつつ、脱脂粉乳、砂糖を加え70℃まで加熱溶解し、蒸発水を補正後、均質機(100kg/cm)で均質化し、次に湿熱処理タピオカ澱粉Vを加え、90℃で10分間加熱攪拌した後、40℃まで冷却し、スターターを添加、40℃の恒温器にてpH4.5まで醗酵させた後(約4時間)、8℃の恒温水槽にて攪拌しながら20℃まで冷却した後、容器に充填し、8℃の冷蔵庫にて一晩放置し、解凍して、本発明のヨーグルトを作製した。
【0122】
処方 重量部%
牛乳(無脂乳固形分 8.3%:乳脂肪分 3.5%) 70
脱脂粉乳 3
砂糖 5
湿熱処理タピオカ澱粉V 5
スターター 4
水 13
合計 100
【0123】
評価
仕上がったヨーグルトは離水がなく、クリーミィな食感で、長時間冷蔵しても経時安定性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分濃度6.0%でアミログラフ測定する場合の50℃から95℃までの昇温時間の最高粘度と95℃達温時の粘度の差が200BU未満の湿熱処理タピオカ澱粉及び糖質を含有するヨーグルト。
【請求項2】
ヨーグルト全体に対する固形分換算で、
湿熱処理タピオカ澱粉の含有量が0.2〜15.0%であり、
糖類の含有量が1.0〜45.0重量%である
請求項1記載のヨーグルト。

【公開番号】特開2010−259425(P2010−259425A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132529(P2009−132529)
【出願日】平成21年5月10日(2009.5.10)
【出願人】(505337456)
【Fターム(参考)】