説明

ライザブレースを固定するための組立体及び方法

【課題】ライザブレース(42)をライザパイプ(22)に固定するための組立体を提供する。
【解決手段】本組立体は、ライザブレース(42)のヨーク(50)に係合するように構成されたブラケット(44)と、ライザパイプ(22)の周りに延びかつブラケット(44)に連結するように構成されたクランプバンド(46)とを含む。本組立体はまた、該組立体をユニットとして連結しかつライザパイプ(22)及びライザブレース(42)の周りでの該組立体の締付けを調整するように構成された継手を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は、総括的には沸騰水型原子炉に関し、より具体的には、沸騰水型原子炉においてライザブレースをライザパイプに固定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は一般的に、炉心を通して強制対流を供給する冷却材再循環システムを含む。降水管アニュラスを通って流れる水の一部分は、再循環水出口を介して原子炉容器から引出されかつ降水管アニュラス内において炉心シュラウドの周りに分散配置された複数のジェットポンプ組立体内に圧力下で供給される。ジェットポンプ組立体は、炉心を通る強制対流を発生させて、必要な原子炉心流水量を供給する。
【0003】
ジェットポンプ組立体のライザパイプは、該ライザパイプに取付けられかつ一般的には原子炉容器壁である取付け壁に取付けられたライザブレースによって原子炉容器内に支持されかつ安定化される。ライザブレースは、ライザパイプに対して横方向及び半径方向支持を与える。加えて、ライザブレースは、原子炉始動及び加熱により生じる異なる熱膨張に適応しかつ原子炉再循環ポンプによる原子炉水循環システムにおける流動励起振動インカンベントに適応するように設計される。
【0004】
一般に、ライザブレースは、ライザパイプ及び取付け壁に溶接することによって、該ライザパイプに対してかつ該取付け壁に対して取付けられる。ライザブレースは通常、溶接部を介してライザパイプに取付けられる。しかしながら、これら溶接部内には、割れが生じることが知られている。また、腐食、放射線及び/又は応力により生じる粒界応力腐食割れ(IGSCC)が、ライザブレースとライザパイプとの間の溶接部内に発生する。割れは、その寸法が徐々に増大しかつ臨界寸法に達して、ジェットポンプ組立体に損害を与える機械的疲労割れに至るようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,185,798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ジェットポンプ組立体のライザパイプとライザブレースとの間の溶接部を補強する必要性が存在し、そのような補強には、溶接部の割れを軽減し又は割れ溶接部を補修して、ジェットポンプ組立体の構造的完全性を維持しかつライザパイプ又はブレースの過度の振動を回避することが含まれる。ライザパイプとライザブレースとの間の溶接部に対する冗長構造的支持の付加的な必要性が存在する。これ迄に提案された設計は、複雑であって、入口ミキサを取外すことを必要としている。これ迄の設計はまた、正しく適合するように極度に正確でなければならずかつ各特定の用途に合わせて現場で機械加工しなければならなかった。
【0007】
様々な実施形態は、沸騰水型原子炉においてライザパイプとライザブレースとの間の溶接部を機械的に補強する装置及び方法を提供することによって、従来技術の欠点を克服する。本システムの据付けは、簡単であり、かつ部品を機械加工する必要なしに微調整及び誤差修正を可能にする。本システムはまた、入口ミキサを取外さない状態での据付けを可能にする。特殊な機械加工及び特別な訓練の必要性がない場合には、コスト削減態様が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態によると、ライザブレースをライザパイプに固定するための組立体は、該ライザブレースのヨークに係合するように構成されたブラケットと、該ライザパイプの周りに延びかつブラケットに連結するように構成されたクランプバンドとを含む。本組立体はまた、該組立体をユニットとして連結しかつライザパイプ及びライザブレースの周りでの該組立体の締付けを調整するように構成された継手を含む。
【0009】
前述の説明は、様々な実施形態の態様及び特徴の幾つかを広範に概説してきたが、それらは、様々な実施可能性がある用途を単に例示しているに過ぎないと理解されたい。その他の有利な結果は、開示した情報を異なる方法で適用することによって、或いは開示した実施形態の様々な態様を組合せることによって得ることができる。その他の態様及びより包括的解釈は、特許請求の範囲で定まる技術的範囲に加えて、添付図面に関連してなしたその例示的な実施形態の詳細な説明を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】例示的な実施形態による沸騰水型原子炉/原子炉圧力容器の部分斜視図。
【図2】ライザブレース組立体の分解組立斜視図。
【図3】図2のライザブレース組立体の斜視図。
【図4】図2のライザブレース組立体の斜視図。
【図5】図2のライザブレース組立体の側面図。
【図6】図2のライザブレース組立体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、必要に応じて詳細な実施形態を開示している。開示した実施形態は様々なかつ別の形態の単なる例示的なものに過ぎないことを理解されたい。本明細書で使用する場合に、「例示的な」という用語を使用して、実例、見本、モデル又はパターンとして役立つ実施形態を広く意味させている。図は、必ずしも正しい縮尺ではなく、また特定の構成要素の詳細を示すために、幾つかの特徴部を誇張し又は矮小化させている場合がある。他の場合において、当業者に知られている周知の構成要素、システム、材料又は方法については、本開示が解り難くなるのを避けるために詳細には説明していない。従って、本明細書に開示した特定の構造及び機能は、限定としてではなく、単に特許請求の範囲の根拠としてまた当業者への教示の代表的根拠として理解されたい。
【0012】
図1に示す沸騰水型原子炉10は、原子炉圧力容器12と該原子炉圧力容器12内に配置された炉心シュラウド14とを含む。アニュラ領域16(降水管アニュラス)は、炉心シュラウド14と原子炉圧力容器12との間の空間である。沸騰水型原子炉10のジェットポンプ組立体18が、アニュラ領域16内に配置される。
【0013】
ジェットポンプ組立体18は、ライザパイプ22と入口ミキサ24a、24bとを含み、それらは各々、アニュラ領域16内でほぼ垂直方向に延びる。入口ミキサ24a、24bは、ライザパイプ22の両側に配置される。入口ミキサ24a、24bとライザパイプ22との間にそれぞれ取付けられた保持サポートによって、入口ミキサ24a、24bに対する横方向支持が行なわれる。
【0014】
移行部品32が、ライザパイプ22の上方端部と入口ミキサ24a、24bの上方端部とを連結する。ライザパイプ22の下方端部は、原子炉圧力容器12の壁36に向けて湾曲しかつ該壁36を貫通して該壁36の外側に位置する再循環入口ノズル(図示せず)に延びる。入口ミキサ24a、24bの下方端部は、ポンプデッキ28内の孔を覆って取付けられたディフューザ26a、26bを含む。ポンプデッキ28は、炉心シュラウド14の底部分を原子炉圧力容器12と連結する。
【0015】
ライザパイプ22は、ライザブレース組立体40及びライザブレース42によってアニュラ領域16内に支持されかつ安定化される。図2を参照すると、ライザブレース組立体40は、ライザブレース42をライザパイプ22に固定するように構成されたブラケット44とクランプバンド46とを含む。ライザブレース42は、ヨーク50と該ヨーク50の両端部から平行に延びる側方部材52a、52bとを含むほぼU字形の構成を有する。各側方部材52a、52bは、上方脚部54a、54b及び下方脚部56a、56bを含む。側方部材52a、52b間の距離Lは、ライザパイプ22の直径Dよりも大きくて、ライザパイプ22を該側方部材52a、52b間に受けかつヨーク50の内表面58に対して当接させることができるようになる。内表面58は、ライザパイプ22の凸面形状と相補形になった凹面形状を有する。
【0016】
ブラケット44a、44bは、ライザブレース42上で又は周りで摺動するように構成される。各ブラケット44は、ヨーク50のコーナ部を受けるように構成されかつ該ブラケット44の上方及び下方部分を分離した陥凹部60を含む。この図示したブラケット44は各々、クランプバンド46a、46bをブラケット44a、44bに固定しかつライザブレース42及びライザパイプ22の周りに該クランプバンド46及びブラケット44を締付けるのを可能にするスタッド62とナット64とを含む。別の実施形態では、ブラケットとクランプバンドとの間の結合部(継手)は、他の機械的ファスナ、溶接部、機械的継手、フック、クリップ、それらの組合せ及び同様のもので製作することができる。ブラケット及びクランプバンド或いはそれら各々の一部分は、一体形に形成した複数部品とすることができる。別の実施形態では、ブラケット及びクランプバンドの組立体は、ウオームギア及び同様のものを使用してライザパイプ及びライザブレースの周りに締付けることができる。一般的に、組立体をユニットとして連結する1つ又はそれ以上の継手は、ライザパイプ及びライザブレースの周りでの組立体の締付けを調整するように構成される。
【0017】
陥凹部60は、ブラケット44の位置をヨーク50のコーナ部に維持する。別の実施形態では、ブラケットは、ヨーク50の端部を受けるように陥凹部を構成しかつ該陥凹部をヨーク50の長さに沿って調整可能に配置することができるようになったC字形断面を有する。
【0018】
クランプバンド46a、46bは、ライザパイプ22の凸面形湾曲面と相補形になった形状を有し、かつスタッド62を受けるように構成された開孔部を備えたフランジ70を含む。クランプバンド46a、46bは、異なる直径のライザパイプで使用されるのに十分な可撓性を有する。
【0019】
ライザブレース42は、ライザパイプ22及び壁36に溶接される。ブラケット44a、44b及びクランプバンド46a、46b、又はライザブレース組立体40は、溶接部を支持するように据付けられる。別の実施形態では、ライザブレース42は、壁36に溶接され、またブラケット44a、44b及びクランプバンド46a、46bは、溶接部を必要とせずにライザブレース42をライザパイプ22に固定する。ライザブレース組立体40の1つの利点は、該ライザブレース組立体40が、入口ミキサ24a、24bを取外さずに据付けられるように構成されることである。次に、ライザブレース組立体40を据付けてライザパイプ22及びライザブレース42を支持する例示的な方法をさらに詳細に説明する。
【0020】
図1〜図6に示すように、ライザブレース42は、ヨーク50の内表面58がライザパイプ22に当接しかつ側方部材が壁36に向けて延びる状態で、該ライザパイプ22に跨るように配置される。図5及び図6を参照すると、側方部材52a、52bは、壁36に固定される。側方部材52a、52bの端部は、パッド80に溶接され、パッド80が次に、壁36の内部表面に溶接される。ヨーク50は、内表面58の端縁部においてライザパイプ22に溶接される。
【0021】
ブラケット44a、44bは、ヨーク50が陥凹部60内に受けられかつスタッド62が壁36に向けて延びる状態で、該ヨークのシュラウド側に取付けられる。クランプバンド46a、46bは、ブラケット44a、44bの各々のスタッド62が開孔部72に受けられた状態でライザパイプ22の取付け壁36側に当接させて配置される。ナット64が、クランプバンド46a、46bをブラケット44a、44bに固定するようにスタッド62に取付けられる。ナット64は、ライザパイプ22に当接させてライザブレース42を摩擦固定するように締付けられる。ナット64を締付けることにより、クランプバンド46a、46b及びブラケット44a、44bが互いに引寄せられ、それにより、ブラケット44a、44bがライザパイプ22に当接させてライザブレース42を押圧することになる。
【0022】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、また当業者が、あらゆる装置又はシステムを製作しかつ使用しまたあらゆる組込み方法を実行することを含む本発明の実施を行なうことを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって定まり、また当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有するか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになることを意図している。
【符号の説明】
【0023】
10 沸騰水型原子炉
12 原子炉圧力容器
14 炉心シュラウド
16 アニュラ領域
18 ジェットポンプ組立体
22 ライザパイプ
24a、24b 入口ミキサ
26a、26b ディフューザ
28 ポンプデッキ
32 移行部品
34 エルボ
36 壁
40 ライザブレース組立体
42 ライザブレース
44、44a、44b ブラケット
46、46a、46b クランプバンド
50 ヨーク
52a、52b 側方部材
54a、54b 上方脚部
56a、56b 下方脚部
58 内表面
60 陥凹部
62 スタッド
64 ナット
70 フランジ
72 開孔部
80 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライザブレース(42)をライザパイプ(22)に固定するための組立体であって、前記ライザブレース(42)がヨーク(50)及び側方部材(52)を備え、前記ライザブレース(42)が前記ヨーク(50)の内表面(58)を前記ライザパイプ(22)に当接させた状態で該ライザパイプ(22)に跨り、かつ前記ライザパイプ(22)が前記側方部材(52)間に位置しており、前記組立体が、
その各々が、上方部分、下方部分、及び前記上方部分と前記下方部分との間に位置しかつ前記ヨーク(50)に係合するように構成された陥凹部(60)を備えた第1のブラケット(44)並びに第2のブラケット(44)と、
その各々が、前記ライザパイプ(22)の周りに延びかつ前記ブラケット(44)に連結するように構成された第1のクランプバンド(46)及び第2のクランプバンド(46)と、
該組立体をユニットとして連結する少なくとも1つの継手と、を含み、
前記第1のクランプバンド(46)が、前記第1のブラケット(44)及び第2のブラケット(44)の上方部分に連結するように構成され、
前記第2のクランプバンド(46)が、前記第1のブラケット(44)及び第2のブラケット(44)の下方部分に連結するように構成され、
前記継手が、前記ライザパイプ(22)の周りでの該組立体の締付けを調整するように調整可能である、
組立体。
【請求項2】
前記継手が、前記ブラケット(44)の少なくとも1つから延びるスタッド(62)を含む、請求項1記載の組立体。
【請求項3】
前記陥凹部(60)が、前記ヨーク(50)のコーナ部を受けるように構成される、請求項1記載の組立体。
【請求項4】
前記陥凹部(60)が、前記関連するブラケット(44)の位置が前記ヨーク(50)の長さに沿って調整可能になるように構成される、請求項1記載の組立体。
【請求項5】
各前記クランプバンド(46)が、半円形である、請求項1記載の組立体。
【請求項6】
各前記クランプバンド(46)が、様々なライザパイプ(22)直径に適合するように可撓性である、請求項1記載の組立体。
【請求項7】
前記クランプバンド(46)が、前記ライザパイプ(22)の一側面に接触するように構成され、また前記ブラケット(44)が、前記ライザブレース(42)と前記ライザパイプ(22)の反対側面との間の接触を維持するように構成される、請求項1記載の組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−128152(P2011−128152A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277743(P2010−277743)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC