説明

ライザー管及びライザー管の応答分布計測システム

【課題】海水の流れに対するライザー管の応答を的確に計測する。
【解決手段】ライザー管は、ライザー管本体31と、少なくとも一本の光ファイバ22と、接着部24とを具備している。光ファイバ22は、ライザー管本体31の表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する。接着部24は、の光ファイバ22を、ライザー管本体31の一方の第1端部31aから他方の第2端部31cに亘って、ライザー管本体31に連続的に密着させる。光ファイバ22は、ライザー管本体31の両端部分の間の中央部分31bにおいて、ライザー管本体31の軸方向に沿って延在し、ライザー管本体31の円周方向に所定の間隔に並んだ少なくとも三つの光ファイバ延在部を備えている。光ファイバ22の両端23は、ライザー管本体31の両端32からはみ出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライザー管及びライザー管の応答分布計測システムに関し、特に光ファイバを有するライザー管及びライザー管の応答分布計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上プラットフォーム(石油開発用、科学調査用等)の掘削用ライザーや、洋上プラットフォームへ海底油田から採取した原油を持ち上げるために用いられる生産用ライザーが知られている。ライザーは非常に細長い構造を有している。そのため、ライザーが破損する場合、局部的な座屈が主要な破壊モードとなる。従って、これを防止する観点から、ライザーにテンションが常に作用する状態となるよう設計することが求められる。一般に、掘削用ライザーの場合には、荒天時にライザーを下端で切り離し、掘削船から吊り下げたハングオフ状態で退避する。そのため、この状態で生じるライザーの縦振動が最も厳しくなる。また、生産用ライザーの場合には、FPSO(Floating Production Storage & Offloading unit:洋上浮体式生産・貯蔵・積出設備)など動揺の大きい船への適用を目指して、浮体の上下動揺の影響を低減することに注意が向けられる。これまで、我が国ではこれらの問題に焦点を合わせた研究が推進され、技術水準は国際的にもトップレベルである。
【0003】
近年では高潮流下でのライザーの運用が増加しつつある。そのため、局部的な座屈を回避するという注意点に加えて、ライザーから放出される渦によって励起される渦励振(VIV:Vortex Induced Vibration)に着目した設計が必要とされている。ライザー構造は非常に細長いため、高次の振動モードまで発生する可能性がある。渦励振により励起される振動数1〜数Hz程度の振動に対してライザーが共振することで、疲労破壊など安全に関わる問題を引き起こす可能性がある。一方で、一般的なライザー管径では、潮流速に対して渦の発生周波数が不安定な高レイノルズ数域(Re10〜10)でのVIV応答となり、流体力学的にも非常に評価の難しい現象となる。最近ではこのVIVに注目が集まり、Shell(オランダ)、BP(イギリス)、Chevron(アメリカ)、Petrobras(ブラジル)等の国際石油メジャー、DNV(ノルウェー)等の船級協会、大学機関が連携して研究を進めている。
【0004】
また、国内でのVIVの実例として、独立行政法人海洋研究開発機構の「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画のステージ1において、紀伊半島沖の黒潮主流の中でドリルパイプが周波数数Hzかつパイプ径レベルの大振幅で振動したという報告が成されている。表層付近ではかなりの頻度で3〜4knot、最大では5.5knotの流速が観察されており、今後、日本における海洋資源の活用や地球探査の拡大を図っていくには、VIVは避けて通れない課題とも言える。ただし、上述の通り、現状の技術レベルではライザー管のVIV現象を正確に予測し、対策を講じることは困難であり、強潮流域の運用においては、各部の疲労状態を直接的に計測・把握する事が重要となる。
【0005】
従来の方法では、ライザー管の表面に加速度計を取り付けて、海水の流れに対する各部分の応答を計測している。図1は、その加速度計を用いた従来の方法を示す模式図である。この図では、船舶101からライザー管103が海S中に伸びて、海底Gに達している。海底Gまでのライザー管103の総延長は、例えば数kmのレベルになる。海水の速度は、水深200m程度まで(領域A1)が約2m/s程度、そこから水深400m程度まで(領域A2)は徐々に低下して行き、水深400m程度以上(領域A3)では0.5m/s程度で概ね一定となる。ライザー管103には、複数の箇所(図の例では5箇所)に加速度計105が取り付けられる。その加速度計105による加速度の計測結果により、海水の流れに対するライザー管103の応答108が計測される。この応答108は、ライザー管103に生じている振動(横方向の振動)の波形(振幅及び周波数)を示している。
【0006】
その応答のうち、高次の応答(モードの節:20mレベルの間隔)を計測するには、数百点以上の計測点が必要である。一方、各加速度計から計測値を取得して、同時に処理するためには、計測システムのコスト・複雑さ・海中でのケーブルの引廻し等の困難さがある。そのため、計測点の数には限界がある。また、加速度計から得られた計測値から、ライザー管の振動状態を推定する方法等も考えられるが、これにはライザー管のVIVにおける現象の正確な把握と予測技術が必要となり、現状の技術レベルでは導入が困難と考えられる。
【0007】
関連する技術として、特開2000−39309号公報(特許文献1)に変形検査方法及び装置が開示されている。この変形検査方法は、グレーティングを内蔵した一定長Lのセンサ光ファイバに一定の伸張を付与した状態でその両端を被測定物に固定し、そのグレーティングによる反射スペクトル若しくは透過吸収スペクトルの波長変化を測定し、その変化量から被測定物の両固定位置間の伸縮を前記長さLの間での平均値として計測することを特徴とする。
【0008】
また、米国特許7277162号公報(特許文献2)に光ファイバ応力センサを用いた長く細い構造物の動的性能監視が開示されている。この方法は、水又は風が発生させる負荷によって動的外乱を受けた細く長い構造物の振動特性を測定するための光ファイバ技術の使用について開示している。この方法では、海洋ライザー又は長いロープのような長く細い構造物の長さ方向に沿って選択された複数の箇所で、光時間領域反射率測定及びブラッグ回折格子を含むファイバ光学技術を用いた曲げ応力測定を行う。曲げ応力から得られる情報の工学的解釈は、周波数、振幅及び波長を含む振動特性を決定する。最大曲げ応力の測定は、未決定の構造的損傷を評価する。
【0009】
また、“Advances in Fibre Optic Condition Monitoring of Flexible Pipes”(非特許文献1)や“Optical Monitoring System”(非特許文献2)には、応力検知ファイバブラッグ回折格子を含むファイバをセンサとして、ライザー管のようなフレキシブルパイプに装着し、フレキシブルパイプの応力を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−39309号公報
【特許文献2】米国特許7277162号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】http://www.hse.gov.uk/pipelines/seminar08/07−conditionmonitoring.pdf,“Advances in Fibre Optic Condition Monitoring of Flexible Pipes”,Integrity Management of Unbonded Flexible Pipelines and Risers,Nick Weppenaar,NKT Flexibles,2008−11−27.
【非特許文献2】http://www.nktflexibles.com/en/Research+and+Development/Optical+Monitoring+System.htm,“Optical Monitoring System”,NKT Flexibles.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、海水の流れに対するライザー管の応答を精密に計測することが可能なライザー管及びライザー管の応答分布計測システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、海水によりライザー管に発生する渦励振(VIV:Vortex Induced Vibration)を含む各種振動を正確に計測することが可能なライザー管及びライザー管の応答分布計測システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、海水でライザー管に発生する各種振動によりライザー管に座屈が発生する可能性を的確に把握することが可能なライザー管及びライザー管の応答分布計測システムを提供することにある。
【0013】
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のライザー管は、ライザー管本体(31)と、少なくとも一本の光ファイバ(22)と、接着部(24)とを具備している。少なくとも一本の光ファイバ(22)は、ライザー管本体(31)の表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する。接着部(24)は、少なくとも一本の光ファイバ(22)を、ライザー管本体(31)の一方の第1端部(31a)から他方の第2端部(31c)に亘って、ライザー管本体(31)に連続的に密着させる。少なくとも一本の光ファイバ(22)は、ライザー管本体(31)の両端部分の間の中央部分(31b)において、ライザー管本体(31)の軸方向に沿って延在し、ライザー管本体(31)の円周方向に所定の間隔に並んだ少なくとも三つの光ファイバ延在部(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a、22−1b〜22−3b)を備えている。少なくとも一本の光ファイバ(22)の両端(23)は、ライザー管本体(31)の両端(32)からはみ出している。
【0016】
上記のライザー管において、少なくとも一本の光ファイバ(22)は一本であることが好ましい。一本の光ファイバ(22)は、第1光ファイバ延在部(22−1b)と、第2光ファイバ延在部(22−2b)と、第3光ファイバ延在部(22−3b)と、第1曲がり部(22−c1)と、第2曲がり部(22−c2)とを備えていることが好ましい。その場合、第1光ファイバ延在部(22−1b)は、ライザー管本体(31)の一方の外側から、ライザー管本体(31)の第1端部(31a)を介して第2端部(31c)に伸びる。第2光ファイバ延在部(22−2b)は、第2端部(31c)から第1端部(31a)に伸びる。第3光ファイバ延在部(22−3b)は、第1端部(31a)から第2端部(31c)を介してライザー管本体(31)の他方の外側に伸びる。第1曲がり部(22−c1)は、第2端部(31c)側で第1ファイバ延在部(22−1b)の端部と第2ファイバ延在部(22−2b)の端部とを接続する。第2曲がり部(22−c2)は、第1端部(31a)側で第2ファイバ延在部(22−2b)の端部と第3ファイバ延在部(22−3b)の端部とを接続する。第1光ファイバ延在部(22−1b)、第2光ファイバ延在部(22−2b)及び第3光ファイバ延在部(22−3b)は、ライザー管本体(31)の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ。
【0017】
上記のライザー管において、少なくとも一本の光ファイバ(12)は、ライザー管本体(31)の一方の外側から、ライザー管本体(31)の第1端部(31a)及び第2端部(31c)を介してライザー管(31)の他方の外側に伸びる少なくとも三本の光ファイバ(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a)であることが好ましい。その場合、少なくとも三本の光ファイバ(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a)は、少なくとも三つの光ファイバ延在部(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a)を構成する。少なくとも三本の光ファイバ(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a)は、ライザー管本体(31)の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ。
【0018】
上記のライザー管において、ライザー管本体(31)の表面上に配置され、ライザー管本体(31)に部分的に固定された温度測定用光ファイバ(図示されず)を更に具備することが好ましい。
【0019】
本発明のライザー管の応答分布計測システムは、直列に接続された複数のライザー管の応答分布を計測する。その応答分布計測システムは、計測装置(21)と、複数のライザー管本体(31)の各々ごとに、表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する少なくとも一本の光ファイバ(22)とを具備している。少なくとも一本の光ファイバ(22)は、接着部(24)により、ライザー管本体(31)の一方の第1端部(31a)から他方の第2端部(31c)に亘って、ライザー管本体(31)に連続的に密着されている。ライザー管本体(31)の両端部分の間の中央部分(31b)において、ライザー管本体(31)の軸方向に沿って延在し、ライザー管本体(31)の円周方向に所定の間隔に並んだ少なくとも三つの光ファイバ延在部(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a、22−1b〜22−3b)を備えている。少なくとも一本の光ファイバ(22)の両端(23)は、ライザー管本体(31)の両端(32)からはみ出して、隣り合うライザー管本体(31)と接続している。計測装置(11)は、互いに接続された複数の少なくとも一本の光ファイバ(22)へ入射光を出力する。互いに接続された複数の少なくとも一本の光ファイバ(22)からの反射光を受信する。受信された反射光に基づいて、複数のライザー管本体(31)の応答分布を算出する。
【0020】
上記のライザー管の応答分布計測システムにおいて、少なくとも一本の光ファイバ(22)は一本であることが好ましい。一本の光ファイバ(22)は、第1光ファイバ延在部(22−1b)と、第2光ファイバ延在部(22−2b)と、第3光ファイバ延在部(22−3b)と、第1曲がり部(22−c1)と、第2曲がり部(22−c2)とを備えていることが好ましい。その場合、第1光ファイバ延在部(22−1b)は、ライザー管本体(31)の一方の外側から、ライザー管本体(31)の第1端部(31a)を介して第2端部(31c)に伸びる。第2光ファイバ延在部(22−2b)は、第2端部(31c)から第1端部(31a)に伸びる。第3光ファイバ延在部(22−3b)は、第1端部(31a)から第2端部(31c)を介してライザー管本体(31)の他方の外側に伸びる。第1曲がり部(22−c1)は、第2端部(31c)側で第1ファイバ延在部(22−1b)の端部と第2ファイバ延在部(22−2b)の端部とを接続する。第2曲がり部(22−c2)は、第1端部(31a)側で第2ファイバ延在部(22−2b)の端部と第3ファイバ延在部(22−3b)の端部とを接続する。第1光ファイバ延在部(22−1b)、第2光ファイバ延在部(22−2b)及び第3光ファイバ延在部(22−3b)は、ライザー管本体(31)の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ。
【0021】
上記のライザー管の応答分布計測システムにおいて、少なくとも一本の光ファイバ(12)は、ライザー管本体(31)の一方の外側から、ライザー管本体(31)の第1端部(31a)及び第2端部(31c)を介してライザー管(31)の他方の外側に伸びる少なくとも三本の光ファイバ(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a)であることが好ましい。その場合、少なくとも三本の光ファイバ(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a)は、少なくとも三つの光ファイバ延在部(22−1〜22−3)を構成する。少なくとも三本の光ファイバ(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a)は、ライザー管本体(31)の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ。
【0022】
上記のライザー管の応答分布計測システムにおいて、複数のライザー管のうちの計測対象でない箇所(P1)における少なくとも一本の光ファイバ(22)は、少なくとも三つの光ファイバ延在部(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a、22−1b〜22−3b)を有さず、一本の光ファイバであることが好ましい。
【0023】
上記のライザー管の応答分布計測システムにおいて、複数のライザー管本体(31)の各々ごとに、表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する温度測定用光ファイバ(図示されず)を更に具備していることが好ましい。温度測定用光ファイバ(図示されず)は、ライザー管本体(31)に部分的に固定されていることが好ましい。その場合、計測装置(11)は、互いに接続された複数の温度測定用光ファイバ(図示されず)へ温度計測用入射光を出力する。互いに接続された複数の温度測定用光ファイバ(図示されず)からの温度計測用反射光を受信する。受信された温度計測用反射光に基づいて、複数のライザー管本体(31)近傍の温度を算出する。反射光と温度計測用反射光とに基づいて、複数のライザー管本体(31)の応答分布を算出する。
【0024】
本発明のライザー管の接続方法は以下の通りである。ここで、ライザー管(3)は、ライザー管本体(31)と、ライザー管本体(31)の表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する少なくとも一本の光ファイバ(22)と、少なくとも一本の光ファイバ(22)を、ライザー管本体(31)の一方の第1端部(31a)から他方の第2端部(31c)に亘って、ライザー管本体(31)に連続的に密着させる接着部(24)とを具備する。少なくとも一本の光ファイバ(22)は、ライザー管本体(31)の両端部分の間の中央部分(31b)において、ライザー管本体(31)の軸方向に沿って延在し、ライザー管本体(31)の円周方向に所定の間隔に並んだ少なくとも三つの光ファイバ延在部(22−1〜22−4、22−1a〜22−3a、22−1b〜22−3b)を備える。少なくとも一本の光ファイバ(22)の両端(23)は、ライザー管本体(31)の両端(32)からはみ出す。
ライザー管の接続方法は、ライザー管本体(31)同士を接続する工程と、ライザー管本体(31)の端(32)からはみ出した少なくとも一本の光ファイバ(22)の端(23)同士を接続する工程とを具備する。
【0025】
上記のライザー管の接続方法において、少なくとも一本の光ファイバ(22)の端(23)同士を接続する工程は、少なくとも一本の光ファイバ(22)の端(23)同士を融着により接続する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、海水の流れに対するライザー管の応答を精密に計測することが可能となる。また、本発明により、海水によりライザー管に発生する渦励振(VIV)を含む各種振動を正確に計測することが可能となる。また、本発明により、海水でライザー管に発生する各種振動によりライザー管に座屈が発生する可能性を的確に把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、加速度計を用いた従来の方法を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態のライザー管及びライザー管の応答分布計測システムの構成を示すブロック図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第1の実施の形態のライザー管の構成を示す斜視図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第1の実施の形態のライザー管の構成を示す断面図である。
【図4】図4は、ライザー管本体と光ファイバとの接合を示す断面図である。
【図5】図5は、二つのライザー管を接続する方法を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係るライザー管の応答分布計測システムを用いる方法を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態のライザー管の他の構成を示す斜視図である。
【図8A】図8Aは、本発明の第2の実施の形態のライザー管の構成を示す斜視図及び断面図である。
【図8B】図8Bは、本発明の第2の実施の形態のライザー管の構成を示す斜視図及び断面図である。
【図9】図9は、ライザー管本体と光ファイバとの接合を示す断面図である。
【図10】図10は、三つのライザー管を接続する方法を示す斜視図である。
【図11】図11は、第2の実施の形態の変形例の構成を示す斜視図である。
【図12】図12は、本発明の第2の実施の形態に係る変形例のライザー管の応答分布計測システムを用いる方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のライザー管及びライザー管の応答分布計測システムの実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るライザー管の応答分布計測システムの構成について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態のライザー管及びライザー管の応答分布計測システムの構成を示すブロック図である。船舶1は、ライザー管3を海Sの中に配設し、それを用いて海底Gを掘削する。洋上プラットフォーム(石油開発用、科学調査用等)や掘削船に例示される。ライザー管3と海底Gとの境界には噴出防止装置(BOP:Blowout Preventer)が設置されている(図示されず)。ライザー管3は、複数のライザー管3a(後述)を直列的に接続した構造を有している。船舶1は、ライザー管の応答分布計測システム2を備えている。
【0030】
ライザー管の応答分布計測システム2は、海水の流れに対するライザー管3の応答、例えば、海水によりライザー管3に発生する渦励振(VIV:Vortex Induced Vibration)を含む各種振動を精密に計測し、あるいはそれら各種振動によりライザー管3に座屈が発生する可能性を的確に把握する。ライザー管の応答分布計測システム2は、光ファイバ22と、応答分布計測装置21とを具備する。
【0031】
光ファイバ22は、ライザー管3の表面に密着され、ライザー管3の軸方向に沿って延在している。光ファイバ22は、ライザー管3の表面上に複数本配置されている。複数の光ファイバ22の各々は、ライザー管3の円周方向に所定の間隔、例えば互いに等間隔になるように並んでいる。光ファイバ22は、ブラッグ格子を用いて応力測定を行う公知の技術に用いるための複数のブラッグ格子を有している。複数のブラッグ格子は、光ファイバ22上に所定の間隔で設けられている。例えば、数十cm間隔で設けることができる。それにより、高次の応答(モードの節が20m又はそれ以下の間隔、数十Hz以上)を測定することができる。
【0032】
応答分布計測装置21は、ライザー管3の表面上に配置された複数の光ファイバ22に接続されている。応答分布計測装置21は、それら複数の光ファイバ22の各々へ所定の周波数を有するパルス状の入射光を出力する。また、それら複数の光ファイバ22の各々から、入射光に対するパルス状の反射光を受信する。反射光は、各光ファイバ22において、各ブラッグ格子で少なくとも一つ生成される。そして、受信された反射光に基づいて、ライザー管3の応答分布を公知の方法で算出する。例えば、一つの光ファイバ22について、入射光が出力された時刻と複数の反射光の各々を受信した時刻との差から、各反射光の反射位置(ブラッグ格子の位置)が計算される。また、出力された入射光の周波数(分布)と受信された反射光の周波数(分布)との相違から、各反射位置で光ファイバ22に生じている引っ張り応力(又は引っ張り長さ)又は圧縮応力(圧縮長さ)が計算される。複数の光ファイバ22でのこれらの計算結果と、それら光ファイバ22に密着しているライザー管3の材料物性値とから、ライザー管3に生じている応力を計算することができる。この計算方法は、公知の方法を用いることができる。
【0033】
既述のようにライザー管3は、複数のライザー管3a(ユニット)を直列的に接続した構造を有している。以下では、個々のライザー管3aについて説明する。図3A及び図3Bは、本発明の第1の実施の形態のライザー管の構成を示す斜視図及び上面図である。図4は、ライザー管本体と光ファイバとの接合を示す断面図である。ライザー管3aは、ライザー管本体31と、複数の光ファイバ22とを備えている。ライザー管本体31は、海底Gの掘削孔と船舶1との連絡通路である。ライザー管本体31の長さは例えば数十mである。ライザー管本体31は、ドリルパイプと、泥水流路と、計測機器とを含み、浮体を含む保護部材で覆われている(以上、図示されず)。この図の例では、簡単のために円筒として記載している。なお、ライザー管本体31同士を接続するための接続構造(例示:フランジやボルト/ナットなど)など本発明に直接関係ない部分(前述のドリルパイプ、泥水流路、計測機器、浮体を含む保護部材)は従来の技術と同様であり記載を省略している。
【0034】
光ファイバ22は、ライザー管本体31の表面上に配置され、ライザー管本体31の軸方向(長手方向)に沿って延在している。光ファイバ22とライザー管本体31とは、図4に示されるように、接着剤24により、ライザー管本体31の一方の第1端部31aから他方の第2端部31cに亘って、ライザー管本体31に連続的に密着されている。ただし、第1端部31a及び第2端部31cの一部は、隣接するライザー管本体31の光ファイバ22との接続作業のため固着していない。例えば、そのような固着していない長さは20cm程度以下であり、ライザー管本体が30mの場合、1%程度以下の僅かな長さである。すなわち、ライザー管本体31と光ファイバ22とは、実質的にほぼ全域に亘って密着しているということができる。このように両者が密着していることで、ライザー管本体31に生じる変形/歪を光ファイバ22に確実に反映させることができる。
【0035】
複数の光ファイバ22の各々は、ライザー管本体31の円周方向に所定の間隔、例えば互いに等間隔になるように並んでいる。この図の例では、4本の光ファイバ22−1〜22−4が、円形の断面を有するライザー管3aにおいて、ライザー管3aの軸中心Cに対して、互いにほぼ90度の中心角を成すように配置されている。この場合、光ファイバ22−1と、対向する光ファイバ22−2とのデータを比較することで、ライザー管本体31の応答をより正確に計測することができる。その一例としては、光ファイバ22−1に引っ張り応力、光ファイバ22−2に引っ張り応力が生じている場合、ライザー管本体31の長さ方向の振動、すなわち縦方向の振動が予測される。また、他の一例としては、光ファイバ22−1に引っ張り応力、光ファイバ22−2に圧縮応力が生じている場合、ライザー管本体31の光ファイバ22−2側への曲げ、すなわち横方向の振動が予測される。加えて、光ファイバ22−3と、対向する光ファイバ22−4とのデータを比較することでも、同様に、ライザー管本体31の応答をより正確に計測することができる。更に、光ファイバ22−1〜22−4のデータを比較することで、ライザー管本体31の3次元的な応答をより正確に計測することができる。
【0036】
光ファイバ22は、既述のように複数のブラッグ格子(図示されず)を有している。例えば、数十cm間隔で設けることができる。ライザー管本体が30m、水深3000mの海底の場合、数千箇所程度の計測箇所を設けることができる。このように多数の計測箇所を設けることで、ライザー管本体31の応力の分布を光ファイバ22を用いて高い分解能で計測することができる。
【0037】
複数の光ファイバ22の各々は、その両端がライザー管本体31の両端からはみ出している。そのはみ出した部分と、隣接するライザー管3aの光ファイバ22のはみ出した部分とを融着やメカニカルスプライスやコネクタ等により接続する。このように、はみ出した部分を融着やメカニカルスプライスやコネクタ等により接続することで、容易に長大なライザー管3の全長に亘って、ライザー管3に沿って設けられた複数の光ファイバ22を設けることができる。
【0038】
複数の光ファイバ22−1〜22−4の各々は、ライザー管本体31の両端部分の間の中央部分31bに着目すると、ライザー管本体31の円周方向に所定の間隔に並んだ4本の光ファイバの延在部と見ることもできる。少なくともこれら光ファイバ延在部(中央部分31b)がライザー管本体31に密着していれば、ライザー管本体31に生じる変形/歪を光ファイバ22に反映させることができる。その場合の中央部分13bは、例えば、ライザー管本体31の全長の90%程度である。ただし、本実施の形態では、各光ファイバ延在部は、更に両端方向(第1端部31a及び第2端部31c)に伸びて、光ファイバ22−1〜22−4となっている。ライザー管本体31及び複数の光ファイバ22−1〜22−4は浮体を含むライザー管3の保護部材(図示されず)により覆われている。
【0039】
次に、ライザー管3a(図3A、図3B及び図4)同士を接続する方法について説明する。
図5は、二つのライザー管3aを接続する方法を示す斜視図である。二つのライザー管3aを接続する方法では、まず、ライザー管本体31同士を端部32において接続する。この接続の方法は、従来の技術と同様である。この図の例では、ライザー管本体31同士を接続するために端部32及びその近傍に設けられている接続構造(例示:フランジやボルト/ナットなど)は省略されている。
【0040】
次に、ライザー管本体31の端部32からはみ出した光ファイバ22の端23と、隣接するライザー管本体31の端部32からはみ出した光ファイバ22の端23とを接続する。この場合、永久的に接続させる融着接続やメカニカルスプライスを用いることができる。あるいは、繰り返し着脱が可能に接続させるコネクタ接続を用いることができる。融着接続は、例えば、電極棒間に発生させた放電の熱を用いて、ファイバを溶融一体化して接続する。
【0041】
以上のようにして、数十mのユニット(ライザー管3a)が海上で連結されることにより、海面下に数kmのシステムがライザー管3として構成される。
【0042】
ライザー管3a(ユニット)を海上で接続する期間は、できるだけ短くする必要がある。洋上プラットフォームの運用デイレートを向上して、運用コストを低減のためである。そのためには、出来るだけ少ない工数で各ライザー管3aを連結する必要がある。それには、光ファイバの敷設時間も極力短くする必要がある。本実施の形態では、予めプレファブ施工にて、ライザー管本体31の表面に光ファイバ22を固着したライザー管3aを準備しておく。そして、海上でのライザー管3aの接続の際には、各ライザー管3aに固着された光ファイバ22の端23のみを接続するだけで、ライザー管の応答分布計測システム2用の長大なライザー管3に沿った光ファイバ22を構成可能な構造とする。
【0043】
このような本実施の形態により、海上で一つ一つのライザー管3a(ユニット)に光ファイバ22を固着させる作業を行わなくて済む。それにより、ライザー管の応答分布計測システム2の構成を含むライザー管3のシステムの構成のための時間を大幅に低減することができる。それにより、洋上プラットフォームの運用コストを大幅に抑制しながら、ラライザー管の応答分布計測システム2を含むイザー管3のシステムを構成することができる。
【0044】
このライザー管の応答分布計測システム2は、光ファイバ22が変形するときに生じる反射光のブルリアン散乱の効果を用いる手法を用いている。すなわち、入射光の周波数に対して、反射光の周波数のシフト量でひずみを把握する公知の技術を長大なライザー管3へ適用している。具体的には、ライザー管本体31の表面に光ファイバ22を全体に亘って固着させる。それにより、ライザー管3(ライザー管本体31)のひずみを光ファイバ22のひずみに直接変換し、船舶1から海底Gまでのライザー管3における各部分の応答を計測することができる。
【0045】
本実施の形態では、光ファイバ22に入射される入射光(入射パルス)と反射光(反射パルス)の時間差を利用して、発生しているひずみ位置とひずみ量の関係を取得できる公知技術を、ライザー管3へ応用している。この場合、光を用いているため数kmに渡る応答分布計測が可能な点で、ライザー管3の応答計測に非常に適していると考えられる。これによって、少ない光ファイバ22の本数で、ライザー管3のひずみ分布を数十cmピッチ・数十Hzのレベルで取得可能となり、従来法では現実的に難しかったライザー管のVIVにおける高次モードの応答を直接的に取得可能となる。
【0046】
図6は、ライザー管の応答分布計測システム2を用いる方法を示す模式図である。この図では、船舶1からライザー管3が海S中に伸びて、海底Gに達している。海底Gまでのライザー管3の総延長は、例えば数kmのレベルになる。ライザー管3には、複数の光ファイバ22が密着されている。その複数の光ファイバ22によるひずみの計測結果により、海水の流れに対するライザー管3の応答8が計測される。この応答8は、ライザー管3に生じている振動(横方向の振動)の波形(振幅及び周波数)を示している。この図の例では、一例として、図1と同じ条件で、光ファイバ22において18点で計測した結果を示している。
【0047】
この図6と従来の方法である図1とを比較すると、図6の場合の方が図1の場合よりも測定点が多い。そのため、実際にはライザー管3で生じている振動の周波数が高いこと、及び、その高い振動の周波数と振幅がより正確に測定できることが分かる。
【0048】
ここで、ライザー管3の応答では、クロスフロー方向とインラインフロー方向の曲げの計測と、引張方向及び圧縮方向の伸縮の計測とがそれぞれ必要である。本実施の形態では、図3Bに示されるように、ライザー管3の管周囲に四本の光ファイバ22−1〜22−4を配することで、これらのひずみ成分を計測することが可能となる。
【0049】
なお、上記の説明では4本の光ファイバ22によって、2軸曲げ(クロスフロー方向とインラインフロー方向)・引張/圧縮のライザー管応答分布を計測している。しかし、少なくとも3本あれば、2軸曲げ・引張/圧縮のライザー管応答分布を計測することができる。それを示したのが図7である。図7は、ライザー管の他の構成を示す上面図である。このライザー管3aでは、三本の光ファイバ22−1a、22−2a、22−3aは、ライザー管3aの軸中心Cに対して、互いにほぼ120度の中心角となるように設置されている。この場合、各水深でのライザー管3aの応力は、光ファイバ22−1a〜22−3aごと測定値される。それにより、それら三つの応力の測定値に基づいて、ライザー管3aの振動を三次元的な動きとして確定することができる。
【0050】
また、四本の光ファイバ22−1〜22−4のうち少なくとも一本を、船舶側の端部について、応答測定に支障が無いように船舶1内で分岐させて、通信装置に接続しても良い。当該光ファイバ22のうち海底側の端部も同様に分岐させて、例えば噴出防止装置(図示されず)に接続する。そして、その光ファイバ22を時分割で応答測定と通信とに用いることにより、応答測定だけでなく、船舶1と噴出防止装置との間の通信にも光ファイバ22を用いることができる。これにより、船舶1と海S内の装置(例示:噴出防止装置)との間の通信の選択肢を増やすことができる。分岐は例えば光カプラなどの従来の技術を用いることができる。
【0051】
また、応答測定の精度を更に高めるためには、温度補正も重要である。従って、ライザー管3に密着してライザー管3の応力を反映する光ファイバ22だけでなく、ライザー管3の応力からフリーな状態の光ファイバ(ブラック格子付き:図示されず)を、温度測定用として、光ファイバ22と平行に設置しても良い。例えば、ライザー管3aのライザー管本体31に、別の光ファイバを更に軸方向に沿ってライザー管本体31の応力からフリーな状態で配置する(図示されず)。例えば、ライザー管本体31の端部付近で固定し、他の部分を緩めた状態とすることで、ライザー管本体31に応力がかかっても、引っ張り応力をその緩みで吸収できる。圧縮応力に対しても、固定していない緩み部分で対応できる。この場合、温度測定用光ファイバはライザー管3の応力からフリーなので、計測装置21で計測される応力と距離との関係は、ライザー管3近傍の海水温度(ほぼライザー管3の温度)と水深との関係となる。すなわち、ライザー管3の温度と水深との関係を計測することができる。この関係を用いて、光ファイバ22の計測値を補正する(例示:温度変化による計測値の変化を取り除く)ことにより、応答測定の精度を更に高めることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態では、ライザー管3に沿って光ファイバを固着させ、ライザー管3のひずみ分布を光ファイバ22のひずみ分布に直接的に変換するライザー管の応答分布計測システム2を用いている。このように、ライザー管3の技術と光ファイバのひずみ量・位置を検出する公知の技術とを融合させること、時間・空間に高分解能なライザー管3のひずみ分布を取得することができる。それにより、加速度計のような計測器を多点に配置する従来の方法に比べて、ライザー管3のVIVにおける高次モード応答を直接的に計測することができる。そまた、4本又は3本の光ファイバ22によって、2軸曲げ(クロスフロー方向とインラインフロー方向)・引張/圧縮のライザー管応答分布を計測可能となる。
【0053】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るライザー管の応答分布計測システムの構成について説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、1本の光ファイバを引き回して複数本の光ファイバと同じ効果を持たせている点で、第1の実施の形態と異なっている。図2は、本発明の第2の実施の形態のライザー管及びライザー管の応答分布計測システムの構成を示すブロック図である。この図については、光ファイバ22の本数が異なる他は、第1の実施の形態で説明した通りであるので、その説明を省略する。
【0054】
次に、個々のライザー管3aについて説明する。図8Aは、本発明の第2の実施の形態のライザー管の構成を示す斜視図である。図8Bは、本発明の第2の実施の形態のライザー管の構成を示す断面図(図8AのAA断面図)である。図9は、ライザー管本体と光ファイバとの接合を示す断面図である。ライザー管3aは、ライザー管本体31と、一本の光ファイバ22を備えている。ライザー管本体31は、海底Gの掘削孔と船舶1との連絡通路である。ライザー管本体31は、ドリルパイプと、泥水流路と、計測機器とを含み、浮体を含む保護部材で覆われている(以上、図示されず)。この図の例では、簡単のために円筒として記載している。なお、ライザー管本体31同士を接続するための接続構造(例示:フランジやボルト/ナットなど)など本発明に直接関係ない部分(前述のドリルパイプ、泥水流路、計測機器、浮体を含む保護部材)は従来の技術と同様であり記載を省略している。
【0055】
光ファイバ22は、光ファイバ延在部22−1b〜22−3bと、それらをつなぐ曲がり部22−c1〜22−c2とを備えている。
【0056】
光ファイバ延在部22−1bは、ライザー管本体31の表面上に配置され、ライザー管本体31の軸方向(長手方向)に沿って、ライザー管本体31の外側から一方の第1端部31aを介して他方の第2端部31cへ伸びるように延在する。光ファイバ延在部22−1bは、一方の端23が第1端部31aからはみ出し、他方の端が第2端部31c内にある。光ファイバ延在部22−1bとライザー管本体31とは、図9に示されるように、接着剤24により、ライザー管本体31の一方の第1端部31aから他方の第2端部31cに亘って、ライザー管本体31に連続的に密着されている。ただし、第1端部31aの一部は、第1の実施の形態の場合と同様に、隣接するライザー管本体31の光ファイバ22との接続作業のため固着していない。
【0057】
光ファイバ延在部22−2bは、ライザー管本体31の表面上に配置され、ライザー管本体31の軸方向(長手方向)に沿って、第2端部31cから第1端部31aへ伸びるように延在する。光ファイバ延在部22−2bは、一方の端が第2端部31c内にあり、他方の端が第1端部31a内にある。光ファイバ延在部22−2bとライザー管本体31とは、接着剤24により、第2端部31cから第1端部31aに亘って、ライザー管本体31に連続的に密着されている(図示されず)。
【0058】
光ファイバ延在部22−3bは、ライザー管本体31の表面上に配置され、ライザー管本体31の軸方向(長手方向)に沿って、第1端部31aから第2端部31cを介してライザー管本体31の外側へ伸びるように延在する。光ファイバ延在部22−3bは、一方の端が第1端部31a内にあり、他方の端23が第2端部31cからはみ出している。光ファイバ延在部22−3bとライザー管本体31とは、図9の場合と同様に、接着剤24により、第1端部31aから第2端部31cに亘って、ライザー管本体31に連続的に密着されている。ただし、第2端部31cの一部は、第1の実施の形態の場合と同様に、隣接するライザー管本体31の光ファイバ22との接続作業のため固着していない。
【0059】
曲がり部22−c1は、ライザー管本体31の表面上に配置されている。曲がり部22−c1は、第2端部31c側で光ファイバ延在部22−1bの端部と光ファイバ延在部22−2bの端部とを接続する。曲がり部22−c1は、一方の端も他方の端もいずれも第2端部31c内にある。曲がり部22−c1とライザー管本体31とは、接着剤24により、全体に亘って、ライザー管本体31に連続的に密着されている(図示されず)。
【0060】
曲がり部22−c2は、ライザー管本体31の表面上に配置されている。曲がり部22−c2は、第1端部31a側で光ファイバ延在部22−2bの端部と光ファイバ延在部22−3bの端部とを接続する。曲がり部22−c2は、一方の端も他方の端もいずれも第1端部31a内にある。曲がり部22−c2とライザー管本体31とは、接着剤24により、全体に亘って、ライザー管本体31に連続的に密着されている(図示されず)。
【0061】
光ファイバ延在部22−1b〜22−3bの各々は、ライザー管本体31の円周方向に所定の間隔、例えば互いに等間隔になるように並んでいる。この図の例では、3本の光ファイバ延在部22−1b〜22−3bが、円形の断面を有するライザー管3aにおいて、ライザー管3aの軸中心Cに対して、互いにほぼ120度の中心角を成すように配置されている。この場合、一本の光ファイバ22からの計測結果として得られるデータのうち、各ライザー管3aの光ファイバ延在部22−1bのデータを集めることで、図7の場合の光ファイバ22−1aからのデータとみなすことができる。同様に、一本の光ファイバ22からの計測結果として得られるデータのうち、各ライザー管3aの光ファイバ延在部22−2bのデータを集めることで、図7の場合の光ファイバ22−2aからのデータとみなすことができる。更に、一本の光ファイバ22からの計測結果として得られるデータのうち、各ライザー管3aの光ファイバ延在部22−3bのデータを集めることで、図7の場合の光ファイバ22−3aからのデータとみなすことができる。その結果、図7の例で説明したように、3本の光ファイバ延在部22−1b〜22−3bのデータに基づいて、ライザー管本体31の応答をより正確に計測することができる。
【0062】
ただし、光ファイバ延在部22−1b〜22−3bのどの光ファイバ延在部からのデータであるかは、光ファイバ22における船舶側の端部からの距離で判断できる。すなわち、光ファイバ22において、船舶1に近い側から順に、n番目のライザー管3aの光ファイバ延在部22−1b、曲がり部22−c1、光ファイバ延在部22−2b、曲がり部22−c2、光ファイバ延在部22−3b、(n+1)番目のライザー管3aの光ファイバ延在部22−1b、…のように並んでいる。各部の長さは決まっている。従って、光ファイバ22における船舶側の端部からの距離で、どのライザー管3aのどの部(延在部、曲がり部)からのデータであるかが判別できる。また、光ファイバ延在部22−2bのデータに関しては、一本のライザー管3a内において、距離が大きくなるほど水深が浅く点に注意する。また、曲がり部22−c1、22−c2からのデータについては、ライザー管3aの軸に概ね垂直な方向の、ライザー管3aの側面の応力を測定できる。したがって、そのデータについても利用することができる。
【0063】
光ファイバ22は、既述のように複数のブラッグ格子(図示されず)を有している。ブラッグ格子(図示されず)については、第1の実施の形態と同様である。また、光ファイバ延在部22−1b、22−3bの各々は、その両端がライザー管本体31の両端からはみ出している。そのはみ出した部分に関しては、第1の実施の形態と同様である。また、ライザー管本体31及び光ファイバ22は、第1の実施の形態と同様に浮体を含む保護部材(図示されず)により覆われている。
【0064】
次に、ライザー管3a(図8A、図8B及び図9)同士を接続する方法について説明する。
図10は、三つのライザー管3aを接続する方法を示す斜視図である。二つのライザー管3aを接続する方法では、まず、ライザー管本体31同士を接続する。この接続の方法は、従来の技術と同様である。ただし、接続されるライザー管本体31同士における向かい合う光ファイバ22の端23同士が同じ位置になるようにする。一つのライザー管本体31における光ファイバ22の上の端23と下の端とは、円周方向の位置がずれているためである。この図の例では、上側のライザー管本体31と下側のライザー管本体31とで、円周方向に120度ずらすようにする。この図において、ライザー管本体31同士を接続するための接続構造(例示:フランジやボルト/ナットなど)は省略されている。
【0065】
上記の接続をするとき、ライザー管3aの位置(例示:船舶1から何番目のライザー管3aに該当するか)により、光ファイバ延在部22−1b〜22−3bが、ライザー管3(全体)における円周上の位置(中心軸Cに対する方向)がどこになるかが異なることになる。従って、上記接続を行う際、ライザー管3aの位置(例示:船舶1から何番目か)と、光ファイバ延在部22−1b〜22−3bの位置(中心軸Cに対する方向)との関係を把握しておく。
【0066】
ただし、最終的に、光ファイバ延在部22−1bの外側の端23と、光ファイバ延在部22−3bの外側の端23とが、円周上の同じ位置となるように第1端部31a又は第2端部31cにおいて光ファイバ22を更に引き回してもよい(図示されず)。例えば、光ファイバ延在部22−3bの下端を引き回して、光ファイバ延在部22−1bの直下においてライザー管本体31から外側に伸びるようにしても良い。その場合、ライザー管3aの位置に拘わらず、光ファイバ延在部22−1b〜22−3bの位置は同じになる。したがって、ライザー管3aの位置と光ファイバ延在部の位置との関係を把握する必要が無く、取り付けが容易になる他、計測も容易になる。
【0067】
次に、ライザー管本体31の端からはみ出した光ファイバ22(光ファイバ延在部22−1b)の端23と、隣接するライザー管本体31の端からはみ出した光ファイバ22(光ファイバ延在部22−3b)の端23とを接続する。この場合、永久的に接続させる融着接続やメカニカルスプライスを用いることができる。あるいは、繰り返し着脱が可能に接続させるコネクタ接続を用いることができる。融着接続は、例えば、電極棒間に発生させた放電の熱を用いて、ファイバを溶融一体化して接続する。
【0068】
以上のようにして、ライザー管3aを連続的に接続することで、長大なライザー管3を船舶1から海底Gの間に設置することができる。
【0069】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ライザー管3a同士の接続において、光ファイバ22の接続箇所は一箇所なので、ライザー管3a同士の接続を容易に行うことができる。
【0070】
(第2の実施の形態の変形例)
図11は、第2の実施の形態の変形例の構成を示す斜視図である。
上記図10のようにライザー管3aを連続的に接続する場合、一本のライザー管3a当り一往復半も光ファイバ22を引き回すため、光ファイバ22の長さが長くなり過ぎる可能性が有る。そうなると、入射光が光ファイバ22の先端まで届かなくなったり、反射光が計測装置21まで戻らなくなったりすることが考えらえる。それを回避するためには、図11に示すように光ファイバ22を設置する。すなわち、詳細に応力を測定しなくても良い領域では、図の領域P1のようにライザー管本体31に一本の光ファイバ22を一度だけ通すように設置する。一方、詳細に応力を測定したい領域では、図の領域P2のようにライザー管本体31に一往復半も光ファイバ22を引き回すように(図8A及び図8Bのように)設置する。このように、必要な箇所に十分に光ファイバ22を設置し、他の箇所では必要最低限の光ファイバ22を設置して、光ファイバ22の長さを節約することで、光ファイバ22の長さが長くなり過ぎることを防止することができる。
【0071】
特に、計測したい箇所が予め決まっている場合、図11のような方法を選択することが考えられる。その一例を示しているのが図12である。図12は、ライザー管の応答分布計測システム2を用いる方法を示す模式図である。例えば、ライザー管3の座屈は、ライザー管3を使用しているときは噴出防止装置(BOP)近傍の海底側で発生しやすく、ライザー管3を使用せずハングオフ状態のときは船舶近傍で発生し易い。従って、座屈の監視を主目的とする場合、海底近傍と船舶近傍に特に十分に光ファイバ22を設置し(領域P2:図11の領域P2と同じ)、他の領域では光ファイバ22の設置を抑制する(領域P1:図11の領域P1と同じ)ことも考えられる。
【0072】
本発明により、海水の流れに対するライザー管の応答を精密に計測することが可能となる。また、本発明により、海水によりライザー管に発生する渦励振(VIV)を含む各種振動を正確に計測することが可能となる。また、本発明により、海水でライザー管に発生する各種振動によりライザー管に座屈が発生する可能性を的確に把握することが可能になる。
【0073】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施の形態に記載の技術は、技術的矛盾の生じない限り、相互に組み合わせて適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 船舶
2 ライザー管の応答分布計測システム
3 ライザー管
3a ライザー管(ユニット)
21 応答分布計測装置
22、22−1、22−2、22−3、22−4、22−1a、22−2a、22−3a 光ファイバ
22−1b、22−2b、22−3b 光ファイバ延在部
22−c1、22−c2 曲がり部
23 端
24 接着剤
31 ライザー管本体
31a 第1端部
31b 中央部
31c 第2端部
101 船舶
103 ライザー管
105 加速度計
108 応答

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライザー管本体と、
前記ライザー管本体の表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する少なくとも一本の光ファイバと、
前記少なくとも一本の光ファイバを、前記ライザー管本体の一方の第1端部から他方の第2端部に亘って、前記ライザー管本体に連続的に密着させる接着部と
を具備し、
前記少なくとも一本の光ファイバは、前記ライザー管本体の両端部分の間の中央部分において、前記ライザー管本体の軸方向に沿って延在し、前記ライザー管本体の円周方向に所定の間隔に並んだ少なくとも三つの光ファイバ延在部を備え、
前記少なくとも一本の光ファイバの両端は、前記ライザー管本体の両端からはみ出している
ライザー管。
【請求項2】
請求項1に記載のライザー管において、
前記少なくとも一本の光ファイバは一本であり、
前記一本の光ファイバは、
前記ライザー管本体の一方の外側から、前記ライザー管本体の前記第1端部を介して前記第2端部に伸びる第1光ファイバ延在部と、
前記第2端部から前記第1端部に伸びる第2光ファイバ延在部と、
前記第1端部から前記第2端部を介して前記ライザー管本体の他方の外側に伸びる第3光ファイバ延在部と、
前記第2端部側で前記第1ファイバ延在部の端部と前記第2ファイバ延在部の端部とを接続する第1曲がり部と、
前記第1端部側で前記第2ファイバ延在部の端部と前記第3ファイバ延在部の端部とを接続する第2曲がり部と
を備え、
前記第1光ファイバ延在部、前記第2光ファイバ延在部及び前記第3光ファイバ延在部は、前記ライザー管本体の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ
ライザー管。
【請求項3】
請求項1に記載のライザー管において、
前記少なくとも一本の光ファイバは、前記ライザー管本体の一方の外側から、前記ライザー管本体の前記第1端部及び前記第2端部を介して前記ライザー管の他方の外側に伸びる少なくとも三本の光ファイバであり、
前記少なくとも三本の光ファイバは、前記少なくとも三つの光ファイバ延在部を構成し、
前記少なくとも三本の光ファイバは、前記ライザー管本体の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ
ライザー管。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のライザー管において、
前記ライザー管本体の表面上に配置され、前記ライザー管本体に部分的に固定された温度測定用光ファイバ(図示されず)を更に具備する
ライザー管。
【請求項5】
直列に接続された複数のライザー管の応答分布を計測する応答分布計測システムであって、
計測装置と、
複数のライザー管本体の各々ごとに、表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する少なくとも一本の光ファイバと
を具備し、
前記少なくとも一本の光ファイバは、
接着部により、前記ライザー管本体の一方の第1端部から他方の第2端部に亘って、前記ライザー管本体に連続的に密着され、
前記ライザー管本体の両端部分の間の中央部分において、前記ライザー管本体の軸方向に沿って延在し、前記ライザー管本体の円周方向に所定の間隔に並んだ少なくとも三つの光ファイバ延在部を備え、
前記少なくとも一本の光ファイバの両端は、前記ライザー管本体の両端からはみ出して、隣り合うライザー管本体と接続し、
前記計測装置は、
互いに接続された複数の前記少なくとも一本の光ファイバへ入射光を出力し、
前記互いに接続された複数の前記少なくとも一本の光ファイバからの反射光を受信し、
前記受信された反射光に基づいて、前記複数のライザー管本体の応答分布を算出する
ライザー管の応答分布計測システム。
【請求項6】
請求項5に記載のライザー管の応答分布計測システムにおいて、
前記少なくとも一本の光ファイバは一本であり、
前記一本の光ファイバは、
前記ライザー管本体の一方の外側から、前記ライザー管本体の前記第1端部を介して前記第2端部に伸びる第1光ファイバ延在部と、
前記第2端部から前記第1端部に伸びる第2光ファイバ延在部と、
前記第1端部から前記第2端部を介して前記ライザー管本体の他方の外側に伸びる第3光ファイバ延在部と、
前記第2端部側で前記第1ファイバ延在部の端部と前記第2ファイバ延在部の端部とを接続する第1曲がり部と、
前記第1端部側で前記第2ファイバ延在部の端部と前記第3ファイバ延在部の端部とを接続する第2曲がり部と
を備え、
前記第1光ファイバ延在部、前記第2光ファイバ延在部及び前記第3光ファイバ延在部は、前記ライザー管本体の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ
ライザー管の応答分布計測システム。
【請求項7】
請求項5に記載のライザー管の応答分布計測システムにおいて、
前記少なくとも一本の光ファイバは、前記ライザー管本体の一方の外側から、前記ライザー管本体の前記第1端部及び前記第2端部を介して前記ライザー管の他方の外側に伸びる少なくとも三本の光ファイバであり、
前記少なくとも三本の光ファイバは、前記少なくとも三つの光ファイバ延在部を構成し、
前記少なくとも三本の光ファイバは、前記ライザー管本体の円周方向に互いに実質的に等間隔で並ぶ
ライザー管の応答分布計測システム。
【請求項8】
請求項5に記載のライザー管の応答分布計測システムにおいて、
前記複数のライザー管のうちの計測対象でない箇所における前記少なくとも一本の光ファイバは、前記少なくとも三つの光ファイバ延在部を有さず、一本の光ファイバである
ライザー管の応答分布計測システム。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のライザー管の応答分布計測システムにおいて、
前記複数のライザー管本体の各々ごとに、表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する温度測定用光ファイバを更に具備し、
前記温度測定用光ファイバは、前記ライザー管本体に部分的に固定され、
前記計測装置は、
互いに接続された複数の前記温度測定用光ファイバへ温度計測用入射光を出力し、
前記互いに接続された複数の前記温度測定用光ファイバからの温度計測用反射光を受信し、
前記受信された温度計測用反射光に基づいて、前記複数のライザー管本体近傍の温度を算出し、
前記反射光と前記温度計測用反射光とに基づいて、前記複数のライザー管本体の応答分布を算出する
ライザー管の応答分布計測システム。
【請求項10】
ライザー管の接続方法であって、
ここで、前記ライザー管は、
ライザー管本体と、
前記ライザー管本体の表面上に配置され、複数のブラッグ格子を有する少なくとも一本の光ファイバと、
前記少なくとも一本の光ファイバを、前記ライザー管本体の一方の第1端部から他方の第2端部に亘って、前記ライザー管本体に連続的に密着させる接着部と
を具備し、
前記少なくとも一本の光ファイバは、前記ライザー管本体の両端部分の間の中央部分において、前記ライザー管本体の軸方向に沿って延在し、前記ライザー管本体の円周方向に所定の間隔に並んだ少なくとも三つの光ファイバ延在部を備え、
前記少なくとも一本の光ファイバの両端は、前記ライザー管本体の両端からはみ出し、
前記ライザー管の接続方法は、
ライザー管本体同士を接続する工程と、
前記ライザー管本体の端からはみ出した前記少なくとも一本の光ファイバの端同士を接続する工程と
を具備する
ライザー管の接続方法。
【請求項11】
請求項10に記載のライザー管の接続方法において、
前記少なくとも一本の光ファイバの端同士を接続する工程は、
前記少なくとも一本の光ファイバの端同士を融着により接続する工程を含む
ライザー管の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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