説明

ライセンス管理装置および管理方法

【課題】情報処理装置A〜Eのうちn台に対してのみライセンス許可する場合、許可対象装置の切り換えを柔軟に行う。
【解決手段】各装置A〜E内の管理情報は許可状態○もしくは非許可状態×を示す。いずれかの装置からネットワーク経由でライセンス管理装置100に「○→×」の切換要求があると、非許可状態切換部180は管理情報書換部150に「○→×」の書換指示を与え、属性記録部160内の当該装置の属性を「OFF」にする。「×→○」の切換要求があると、許可状態切換部170は「×→○」の書換指示を与え、当該装置の属性を「ON」にする。但し、「ON」属性の装置がn台に達していたときは、1台の属性を「OFF待ち」にし、後で「OFF待ち」属性の装置からアクセスがあったときに、OFF待ち解消部130によって、当該装置について「○→×」の書換指示を与え、当該装置の属性を「OFF」にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライセンス管理装置および管理方法に関し、特に、複数の情報処理装置のそれぞれに対して、ネットワークを介して、特定の処理の実行を許可するか否かを示す管理情報の書き換えを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多種多様な情報処理装置において、様々なプログラムが利用されており、また、様々なコンテンツデータが利用されている。このような状況下において、プログラムやコンテンツデータが不正に利用されないよう、ライセンス管理を行うことは極めて重要である。たとえば、1台の情報処理装置においてのみ利用が許可されるライセンスしか供与されていないにもかかわらず、ユーザがプログラムやデータを複数台の情報処理装置にコピーし、これらを同時に利用する行為は、ライセンスに違反する不正行為であり、本来、ユーザの良心に従って自制されるべきものである。
【0003】
しかしながら、現実的には、これらの不正行為をユーザの良心のみによって撲滅することは困難であり、不正利用に対して様々な物理的な対応策が講じられている。たとえば、下記の特許文献1には、パソコンにおけるアプリケーションプログラムの不正利用を防止するため、固有の管理情報を格納したフラッシュメモリをパソコンに接続することを前提として、プログラムの実行が可能になるようにする対応策が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、個々の情報処理装置とライセンス管理装置とをネットワーク接続し、個々の情報処理装置ごとに、ネットワークを介してアクティベートを行う技術が開示されており、特許文献3には、ボリュームライセンス契約を結んだユーザが利用する複数台の情報処理装置をアクティベートする技術が開示されている。更に、特許文献4には、ユーザが、利用する情報処理装置を変更した場合にも、ライセンスの移行を容易に行うことができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−538364号公報
【特許文献2】特開2010−204886号公報
【特許文献3】特表2008−536209号公報
【特許文献4】特開2009−116392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここ数年来、情報処理装置の多様化は目覚ましく、同一のユーザが、デスクトップパソコン、ノートパソコン、PDA、携帯電話、タブレット型端末などを所有し、時と場所によって、これらを使い分ける利用形態が普及している。このため、プログラムやコンテンツデータの利用ライセンス契約も、1ライセンシーに対して複数台の情報処理装置における利用を許可する形態が一般的になってきている。たとえば、前掲の特許文献3に開示されているボリュームライセンス契約の形態では、ユーザは、予め定められた最大利用台数の範囲内で、アクティベートを受けることができる。
【0007】
上述したように、1人のユーザが多様な情報処理装置を使い分ける利用形態は今後も益々広がってゆくものと予想される。しかしながら、従来提案されているライセンスの管理方法は、そのような利用形態に必ずしも適切なものになっていない。
【0008】
たとえば、5台の情報処理装置を所有するユーザに対して、同時に任意の2台の装置においてのみ何らかのライセンスを供与する契約に基づいて、ネットワーク経由でライセンス管理装置による管理を行う場合を考えてみる。この場合、ユーザは、特定の情報処理装置を利用する際に、ネットワーク経由でライセンス管理装置に接続し、ライセンス供与(アクティベート)を受ける作業を行うことになる。このとき、従来の一般的な管理方法では、ライセンス管理装置側にどの情報処理装置に対してライセンス供与を行ったかを示す履歴を記録しておき、ライセンス供与された情報処理装置の台数が2を超えないような管理を行うことになる。
【0009】
このような従来の管理方法では、ユーザは、既に2台の情報処理装置に対してライセンス供与(アクティベート)を受けている状態では、いずれか1台の情報処理装置に関するライセンスを返上(ディスアクティベート)した後でなければ、別な情報処理装置に対するアクティベートを行うことはできない。したがって、たまたまアクティベート中の情報処理装置が手元になかったり、バッテリー切れで利用できなかったりした場合、新たな情報処理装置をアクティベートすることはできなくなってしまう。
【0010】
そこで本発明は、複数の情報処理装置を利用するユーザについて、予め決められた台数に対してのみ所定のライセンスを供与する管理を行う場合に、ライセンスの供与対象となる情報処理装置の切り換えを柔軟に行うことができるライセンス管理装置および管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の第1の態様は、ネットワークを介して接続可能な複数の情報処理装置に対して、それぞれ特定の処理の実行を許可するか否かを決定する管理情報の書き換えを行うライセンス管理装置において、
情報処理装置からネットワークを介したアクセスがあった場合に、所定の通信路を形成して当該情報処理装置と接続し、情報のやりとりを行う通信制御部と、
接続中の情報処理装置およびそのユーザを特定する認証処理を行う認証処理部と、
接続中の情報処理装置に格納されている管理情報を、特定の処理の実行を許可する「許可状態」もしくは許可しない「非許可状態」のいずれかの状態に書き換える管理情報書換部と、
個々のユーザごとにそれぞれ情報処理装置を登録し、各情報処理装置について、「ON」、「OFF」、「OFF待ち」のいずれかの属性を記録する属性記録部と、
接続中の情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かを確認し、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部に指示を与えるとともに、属性記録部内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更するOFF待ち解消処理を行うOFF待ち解消部と、
接続中の情報処理装置から「非許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部に指示を与えるとともに、属性記録部内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更する非許可状態切換部と、
接続中の情報処理装置から「許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置のユーザについての属性記録部の記録について、
(a)「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n未満(但し、n≧1)であったときは、当該情報処理装置内の管理情報を「許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部に指示を与えるとともに、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(b)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が所定値m未満(但し、m≧1)であったときは、当該情報処理装置内の管理情報を「許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部に指示を与えるとともに、「ON」属性をもつ別な1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更し、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(c)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が前記所定値m以上であったときは、切換要求を拒絶する処理を行う許可状態切換部と、
アクセスのあった情報処理装置について、認証処理部に認証処理を実行する指示を与えるとともに、OFF待ち解消部にOFF待ち解消処理を実行する指示を与え、更に、当該情報処理装置からの要求を非許可状態切換部もしくは許可状態切換部に伝達する統括制御部と、
を設けるようにしたものである。
【0012】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係るライセンス管理装置において、
認証処理部が、属性記録部に登録されていないユーザもしくは情報処理装置からのアクセスを受けたときに、属性記録部に対して、当該ユーザもしくは情報処理装置の新規登録を行い、新規登録が行われた情報処理装置の初期属性を「OFF」に設定するようにしたものである。
【0013】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係るライセンス管理装置において、
管理情報書換部が、情報処理装置に設けられた管理情報格納部に、当該管理情報格納部以外の場所に格納されている情報処理装置の固有番号もしくはユーザIDまたはその双方を含む情報を「許可状態」を示す管理情報として書き込むようにしたものである。
【0014】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1〜第3の態様に係るライセンス管理装置において、
許可状態切換部が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、切換要求を行った情報処理装置に対して選択指示を与え、当該選択指示に対する応答によって選択された候補を変更対象とするようにしたものである。
【0015】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1〜第3の態様に係るライセンス管理装置において、
許可状態切換部が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、予め登録されていた優先順位に従って選択された候補を変更対象とするようにしたものである。
【0016】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第3の態様に係るライセンス管理装置において、
属性記録部が、属性とともに当該属性の変更日時を併せて記録する機能を有し、
許可状態切換部が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、変更日時が最も古い候補を変更対象とするようにしたものである。
【0017】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係るライセンス管理装置において、
管理情報書換部が、複数の個別処理を実行する機能をもった情報処理装置内に格納されている各個別処理についての個別管理情報を、それぞれ別個独立して書き換える機能を有し、
属性記録部が、各情報処理装置の個別処理ごとに、それぞれ別個独立した個別属性を記録する機能を有し、
非許可状態切換部および許可状態切換部が、特定の個別処理を指定した切換要求に応じて、当該特定の個別処理に係る個別管理情報についての書換指示を管理情報書換部に与えるとともに、当該特定の個別処理に係る個別属性を変更する処理を行い、かつ、許可状態切換部は、当該特定の個別処理に係る個別属性の記録を参照して、所定値n,mに対する大小関係の判断を行うようにしたものである。
【0018】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係るライセンス管理装置において、
個別処理として、情報処理装置に格納されているOSプログラムもしくは特定のアプリケーションプログラムの実行処理を設定したものである。
【0019】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第7の態様に係るライセンス管理装置において、
個別処理として、情報処理装置に格納されている特定のコンテンツデータの再生処理を設定したものである。
【0020】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係るライセンス管理装置において、
接続中の情報処理装置から、別個に設けられたサービス提供装置が提供する所定のサービスの利用を要求するサービス利用要求があった場合に、認証処理部による認証処理およびOFF待ち解消部によるOFF待ち解消処理が完了しており、かつ、当該情報処理装置が「ON」属性となっている場合に、サービス提供装置に、サービス利用要求を受け渡して処理を移行するサービス提供移行部を更に設けるようにしたものである。
【0021】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係るライセンス管理装置と、このライセンス管理装置のライセンス管理の下に、各情報処理装置にネットワークを介して所定のサービスを提供するサービス提供装置と、を備えるサーバ装置を構成し、
サービス提供装置が、情報処理装置からのサービス利用要求を、ライセンス管理装置を介して受け取り、受け取ったサービス利用要求に基づいて、当該情報処理装置に所定のサービスの提供を行うようにしたものである。
【0022】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係るサーバ装置と、このサーバ装置にネットワークを介して接続可能な複数の情報処理装置と、を備えるサービス提供システムを構成し、
情報処理装置には、プログラムを格納するプログラム格納部と、管理情報を格納する管理情報格納部と、を設け、
プログラム格納部には、
管理情報格納部内の管理情報が「許可状態」である場合に限り特定の処理を実行するプログラムと、
サーバ装置を構成するライセンス管理装置に対して、「許可状態」への切換要求と、「非許可状態」への切換要求と、サービス利用要求と、を行うプログラムと、
を格納するようにしたものである。
【0023】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第1〜第10の態様に係るライセンス管理装置を、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより構成したものである。
【0024】
(14) 本発明の第14の態様は、ライセンス管理用コンピュータが、ネットワークを介して接続可能な複数の情報処理装置に対して、それぞれ特定の処理の実行を許可する「許可状態」もしくは許可しない「非許可状態」に設定する処理を行うことによりライセンスを管理する方法において、
ライセンス管理用コンピュータが、個々のユーザごとにそれぞれ情報処理装置を登録して、各情報処理装置について、「ON」、「OFF」、「OFF待ち」のいずれかの属性を記録するための記憶領域を確保する準備段階と、
ライセンス管理用コンピュータが、情報処理装置からネットワークを介したアクセスがあった場合に、当該情報処理装置およびそのユーザを特定する認証処理段階と、
ライセンス管理用コンピュータが、認証処理段階を終えた情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かを確認し、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置を「非許可状態」に設定するとともに、当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更するOFF待ち解消処理段階と、
ライセンス管理用コンピュータが、認証処理段階を終えた情報処理装置から「非許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置を「非許可状態」に設定するともに、当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更する非許可状態切換段階と、
ライセンス管理用コンピュータが、認証処理段階を終えた情報処理装置から「許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置のユーザについての属性記録について、
(a)「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n未満(但し、n≧1)であったときは、当該情報処理装置を「許可状態」に設定するとともに、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(b)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が所定値m未満(但し、m≧1)であったときは、当該情報処理装置を「許可状態」に設定するとともに、「ON」属性をもつ別な1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更し、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(c)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が前記所定値m以上であったときは、切換要求を行った情報処理装置に対して、切換要求を拒絶する旨の通知を行う許可状態切換段階と、
を行うようにしたものである。
【0025】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第14の態様に係るライセンス管理方法において、
ライセンス管理用コンピュータが、認証処理段階およびOFF待ち解消処理段階を終えた情報処理装置から所定のサービスの利用を要求するサービス利用要求があった場合に、当該情報処理装置が「ON」属性となっている場合に限り、当該サービスの利用を許可するようにしたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、原則として、「許可状態」の情報処理装置については「ON」属性、「非許可状態」の情報処理装置については「OFF」属性が記録され、「ON」属性の装置の数が最大値nに達するまで、任意の装置を「許可状態」に切り換えることができる。しかも、「ON」属性の装置の数がその最大値nに達していた場合でも、そのうちの1台を一時的に「OFF待ち」属性に変更して、「ON」属性に空きを作ることにより、新たな装置を「ON」属性に変更して「許可状態」に切り換えることができる。
【0027】
このため、手元になかったり、バッテリー切れで利用できなかったりしたために、現時点では「非許可状態」に切り換えることができない情報処理装置があったとしても、別な情報処理装置からのアクセスにより「OFF待ち」属性に変更すれば、「ON」属性の空きを作ることができるので、当該別な情報処理装置を「許可状態」に切り換えることができる。
【0028】
しかも「OFF待ち」属性の装置からライセンス管理装置にアクセスがあった場合には、その時点で、当該装置を「非許可状態」に切り換え、「OFF」属性に変更する「OFF待ち解消処理」が行われる。したがって、「OFF待ち」属性の装置が存在している間は、「許可状態」となっている情報処理装置の総数が最大値nを超え、オーバーライセンス状態になっている可能性があるが、「OFF待ち」属性の装置がライセンス管理装置にアクセスしてきた時点で、「OFF待ち」は解消することになる。また、「OFF待ち」属性の装置の最大値を所定値mに設定することにより、オーバーライセンス状態となる台数をm台以下に制限することができる。
【0029】
このように、本発明によれば、複数の情報処理装置を利用するユーザについて、予め決められた台数に対してのみ所定のライセンスを供与する管理を行う場合に、ライセンスの供与対象となる情報処理装置の切り換えを柔軟に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ライセンス管理装置100を用いて複数の情報処理装置A〜Eに対するライセンス管理を行うシステムの一般概念を示す図である。
【図2】図1に示す情報処理装置Aとライセンス管理装置100の基本構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すシステムに、従来提案されているライセンス供与方法を採用した場合の具体的な「許可状態」の変遷例を示す表である。
【図4】図1に示すシステムに、改良型ライセンス供与方法を採用した場合の具体的な「許可状態」の変遷例を示す表である。
【図5】図1に示すシステムに、本発明に係るライセンス供与方法を採用した場合の具体的な「許可状態」の変遷例を示す表である。
【図6】図1に示すシステムを利用して構成したサービス提供システムを示すブロック図である。
【図7】本発明に係るライセンス管理装置100にサービス提供装置200を組み合わせることによって構成されたサーバ装置300の基本構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示すライセンス管理装置100によって実施される処理の手順を示す流れ図である。
【図9】本発明に係るライセンス管理装置100によってライセンス供与を受ける情報処理装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明に係るライセンス管理装置100によってライセンス供与を受ける情報処理装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明に係るライセンス管理装置100によってライセンス供与を受ける情報処理装置の第3の構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明に係るライセンス管理装置100によってライセンス供与を受ける情報処理装置の第4の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0032】
<<< §1.従来提案されているライセンス管理方法 >>>
はじめに、図1を参照しながら、ライセンス管理装置を用いて複数の情報処理装置に対するライセンス管理を行うシステムの一般概念を示す。図示の例は、同一のユーザが5台の情報処理装置A〜Eを保有する例である。具体的には、この例の場合、情報処理装置A〜Eは、デスクトップパソコン、ノートパソコン、PDA、携帯電話、タブレット型端末となっている。このように、1人のユーザが多様な情報処理装置を時と場所に応じて使い分ける利用形態は、今後、益々広がってゆくものと予想される。
【0033】
このような情報処理装置A〜Eは、インストールするアプリケーションプログラムに応じて様々な処理を行う機能を有しており、しかも、情報処理装置A〜Eに共通して利用可能なアプリケーションプログラムが提供されていることも少なくない。このような場合、アプリケーションプログラムの利用ライセンスの供与方法が問題になる。たとえば、同一のユーザが利用するのであれば、台数は問わず、保有するすべての情報処理装置で利用可能なライセンスを供与するという方法も、ライセンス供与の一形態である。ただ、実用上は、同一のユーザが利用しているのか否かをチェックすることが困難であるため、利用する情報処理装置の台数に制限を課したライセンス供与を行うのが一般的である。
【0034】
具体的には、特定の情報処理装置で当該アプリケーションプログラムを利用するためには、まず、ネットワークN(通常はインターネット)を介してライセンス管理装置100にアクセスしてアクティベーションを行うことをユーザに義務づけるようにする。アクティベーションを行った情報処理装置は「許可状態」となり、以後、当該アプリケーションプログラムを自由に利用することができるようになる。一方、アクティベーションが済んでいない情報処理装置は「非許可状態」であり、当該アプリケーションプログラムを利用することはできない。
【0035】
このような方式を採用した上で、ライセンス管理装置100側で、ユーザごとに「許可状態」にすることができる台数を制限すればよい。たとえば、最大2台までという台数制限が課されている場合、ライセンス管理装置100は、3台目の情報処理装置からアクティベーションを求められても、これを拒絶することになる。この場合、ユーザは、現在「許可状態」にある2台の情報処理装置のうちの1台について、アクティベーションを解除する処理を行えば、「非許可状態」にある別な1台についてアクティベーションを受けることができるようになる。
【0036】
結局、図示の例の場合、5台の情報処理装置A〜Eを保有するユーザは、このうちの任意の2台についてアクティベーションを行って「許可状態」にすることができ、当該2台の情報処理装置についてのみ、アプリケーションプログラムを利用することが可能になる。しかも、必要に応じて、「許可状態」の情報処理装置のアクティベーションを解除することもできるので、「許可状態」の情報処理装置を交替させることができる。
【0037】
図2は、図1に示す情報処理装置Aとライセンス管理装置100の基本構成を示すブロック図である。図の左に示す情報処理装置Aは、ネットワーク接続機能をもった一般的な情報処理装置であり、CPU10,記憶装置20,通信制御部30を有している。CPU10は、記憶装置20内に格納されているプログラムに基づいて、所定の処理を行う。この処理には、ネットワークNを介した外部装置へのアクセス処理も含まれており、通信制御部30は、この外部装置へのアクセスを行う際に通信の制御を行う。
【0038】
一方、記憶装置20は、ROM,RAM,フラッシュメモリなどのメモリや、ハードディスク装置、光学式記録装置など、様々なハードウエアによって構成することができる。ここでは、説明の便宜上、格納される情報の内容に着目して、記憶装置20を、作業部21,プログラム格納部22,データ格納部23,管理情報格納部24の集合体として捉えることにする。
【0039】
作業部21は、通常、RAMによって構成され、CPU10が様々な処理を実行する際のデータの一時保存場所として利用される。プログラム格納部22は、通常、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリやハードディスク装置によって構成され、様々なプログラムの格納領域として利用される。データ格納部23も、通常、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリやハードディスク装置によって構成され、様々なデータファイルの格納領域として利用される。また、管理情報格納部24も、通常、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリやハードディスク装置によって構成され、ライセンス管理に利用する管理情報を格納するための領域として利用される。
【0040】
管理情報格納部24に格納される管理情報は、この情報処理装置Aが「特定の処理」を実行することを許可するか否かを示す情報であり、「許可状態」か「非許可状態」かのいずれかを示す情報になる。ここで、「特定の処理」とは、上例の場合、ライセンス管理の対象となる「特定のアプリケーションプログラム」の実行処理、ということになり、この「特定のアプリケーションプログラム」(以下、単に「特定アプリ」という)は、プログラム格納部22に格納されている。
【0041】
管理情報格納部24内の管理情報は、初期状態では「非許可状態」であり、その状態では特定アプリは正常動作しない。すなわち、ユーザが、特定アプリを起動させると、特定アプリの初動ルーチンが管理情報格納部24内の管理情報をチェックし、「非許可状態」であることを認識すると、ユーザにアクティベーションを促すメッセージを提示する。ユーザがアクティベーションを行う旨の指示を与えると、ネットワークを介してライセンス管理部100をアクセスし、アクティベーションの要求(「許可状態」への切換要求)を行う。
【0042】
ユーザがアクティベーションを行わない旨の指示を与えた場合、あるいは、アクティベーションを行ったのにもかかわらず失敗した場合(ライセンス管理装置100に拒絶された場合)、管理情報は「非許可状態」のままであり、特定アプリの実行はそこで中断される。この状態で特定アプリを再び起動すると、再び、ユーザにアクティベーションを促すメッセージの提示が行われることになる。
【0043】
一方、アクティベーションに成功すると、管理情報は「許可状態」に書き換えられ、特定アプリは、正常動作する。以後、この特定アプリによってアクティベーション解除要求(「非許可状態」への切換要求)を行って管理情報が「非許可状態」に書き換えられるまで、管理情報は「許可状態」を維持し続け、ユーザは特定アプリを正常に利用することができる。
【0044】
このように、プログラム格納部22に格納されている特定アプリは、ユーザからのアクティベーションを行う旨の指示に基づいて、ライセンス管理装置100に対して「許可状態」への切換要求を行い、管理情報を「許可状態」に書き換えてもらう処理機能と、ユーザからのアクティベーション解除を行う旨の指示に基づいて、ライセンス管理装置100に対して「非許可状態」への切換要求を行い、管理情報を「非許可状態」に書き換えてもらう処理機能と、を有しており、ユーザは、必要に応じて、この情報処理装置Aを「許可状態」にしたり、「非許可状態」にしたりすることができる。
【0045】
以上、情報処理装置Aの構成について説明したが、図1に示す他の情報処理装置B〜Eも全く同様の構成を有している。したがって、情報処理装置B〜Eのプログラム格納部22にも同じ特定アプリを格納しておけば(もちろん、情報処理装置のハードウエアの相違に基づき、個々の情報処理装置用の特定アプリのプログラムは、相互に若干異なる場合がある)、ユーザは、5台の情報処理装置A〜Eのうちの任意の装置を「許可状態」にすることができる。
【0046】
ただ、前述したとおり、1人のユーザが利用する情報処理装置の台数に制限を課したライセンスを供与する場合、ライセンス管理装置100は、個々のユーザごとに、どの情報処理装置を「許可状態」にしたかを記録しておくようにし、その台数が制限台数に達していた場合には、新たなアクティベーション要求(「許可状態」への切換要求)を拒絶することになる。図2の右側に示すライセンス管理装置100内には、このような記録を行うためのリストが例示されている。このようなリストは、個々のユーザごとに作成され、図示のリストL(甲)はユーザ甲のためのリスト、リストL(乙)はユーザ乙のためのリスト、リストL(丙)はユーザ丙のためのリストである。
【0047】
図示の例の場合、リストL(甲)には、ユーザ甲が所有する5台の情報処理装置A〜Eについての属性が記録されている。ここで、属性は「ON」または「OFF」のいずれかをとり、「ON」属性は対応する情報処理装置が「許可状態」にあることを示し、「OFF」属性は対応する情報処理装置が「非許可状態」にあることを示している。図示するリストL(甲)の例では、A,Dが「ON」属性、B,C,Eが「OFF」属性となっており、これは2台の情報処理装置A,Dが「許可状態」、残り3台の情報処理装置B,C,Eが「非許可状態」にあることを示している。したがって、ユーザ甲は、現状では、2台の情報処理装置A,Dにおいてのみ特定アプリを利用することができる。
【0048】
ここで、このユーザ甲が、もう1台の情報処理装置Bにおいても特定アプリを利用したいと考え、情報処理装置Bからライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求(「許可状態」への切換要求)を行ったとしよう。この場合、ライセンス管理装置100は、ユーザ甲のリストL(甲)を参照することにより、現在、「ON」属性の装置の数が2であることを認識できる。したがって、もし、ユーザ甲に対して供与されているライセンスが、最大2台までという台数制限が課されているライセンスであった場合、ライセンス管理装置100は、「許可状態」の装置の台数が、既に制限台数に達しているとして、情報処理装置Bからのアクティベーション要求を拒絶することになる。
【0049】
結局、ユーザ甲が、情報処理装置Bにおいて特定アプリを利用したい場合は、既に「許可状態」になっている2台の情報処理装置A,Dのうちのいずれかを「非許可状態」にする作業を行う必要がある。図3は、このような作業による「許可状態」の変遷例を示す表であり、各利用段階(ここではフェイズP1〜P3と呼ぶ)における5台の情報処理装置A〜Eの状態(許可状態を○、非許可状態を×で示す)と、ライセンス管理装置100内のリストL(甲)の状態とが示されている。
【0050】
フェイズP1は、上述したように、2台の情報処理装置A,Dが「許可状態○」、残り3台の情報処理装置B,C,Eが「非許可状態×」にある段階であり、リストL(甲)の記録は、A,Dが「ON」属性、B,C,Eが「OFF」属性となっている。もちろん、このフェイズP1に示す段階に至るために、ユーザ甲は、情報処理装置AおよびDを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、それぞれアクティベーション要求(「許可状態」への切換要求)を行ったことになる。
【0051】
このフェイズP1の状態において、ユーザ甲が情報処理装置Aを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション解除要求(「非許可状態」への切換要求)を行うと、ライセンス管理装置100による書換処理T1(図の白矢印)により管理情報が書き換えられ、フェイズP2の状態に遷移する。この遷移により、情報処理装置Aは「非許可状態×」になり、リストL(甲)に記録されている情報処理装置Aの属性は「OFF」に変更される。説明の便宜上、図では、変更のあった属性欄を太線で示してある。
【0052】
こうして、フェイズP2に遷移すれば、「ON」属性をもった情報処理装置(すなわち、「許可状態○」の情報処理装置)はDのみになる。したがって、ユーザ甲が情報処理装置Bを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求(「許可状態」への切換要求)を行うと、「ON」属性の装置の台数は1台であるから、ライセンス管理装置100による書換処理T2により管理情報が書き換えられ、フェイズP3の状態に遷移する。この遷移により、情報処理装置Bは「許可状態○」になり、リストL(甲)に記録されている情報処理装置Bの属性は「ON」に変更される。
【0053】
ユーザ甲は、この図3に示すような手順を踏むことにより、情報処理装置Bを「許可状態」に切り換えることができ、情報処理装置Bにおいて特定アプリを利用することができる。このような方法で、台数制限を課したライセンスを供与すれば、ユーザは、アクティベーション要求とアクティベーション解除要求とを使い分けた切換作業を行うことにより、制限台数の範囲内で、任意の情報処理装置で特定アプリを利用することが可能になる。
【0054】
<<< §2.従来方法の問題点とその改良策 >>>
上述した図3に示す例の場合、フェイズP1からP2へ遷移するために、情報処理装置Aを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション解除作業を行う必要があるが、実用上、そのような作業を行うことができない場合がある。たとえば、情報処理装置Aが故障してしまうと、情報処理装置Aを用いたアクティベーション解除作業を行うことができない。あるいは、バッテリ駆動型の情報処理装置の場合、バッテリー切れの状態ではアクティベーション解除作業を行うことができない。
【0055】
また、当然ながら、当該情報処理装置が手元にない場合もアクティベーション解除作業を行うことができない。たとえば、図1に示すような5台の情報処理装置A〜Eのうち、デスクトップパソコンAと携帯電話Dの2台が「許可状態」となっている場合に、ユーザ甲が、ノートパソコンBとタブレット型端末Eのみを所持して出張に出た場合を考えよう。この場合、出張先で、ノートパソコンBもしくはタブレット型端末Eを用いて特定アプリを利用したいと思っても、「許可状態」となっている2台の情報処理装置A,Dが手元にないので、出張から戻るまで、これらについてのアクティベーション解除作業を行うことはできない。このため、特定アプリがインストールされているノートパソコンBおよびタブレット型端末Eを所持しているにもかかわらず、これらについてのアクティベーション要求はライセンス管理装置100によって拒絶されてしまい、ユーザは出張先で特定アプリを利用することはできない。
【0056】
このように、台数制限を課したライセンス供与を行うために従来提案されているライセンス管理方法には、ライセンスの供与対象となる情報処理装置の切り換えを柔軟に行うことができないという問題があり、ユーザの立場からは、決して使い勝手のよいものではなかった。
【0057】
このような問題を解決するための方法として、ここでは、まず、次のような改良策を説明しておく。この改良策では、情報処理装置からのアクティベーション要求(「許可状態」への切換要求)があった場合には、「ON」属性となっている装置の台数にかかわらず、常に、当該要求を受け入れて「許可状態」への書換処理を行うようにし、同時に、これまで「ON」属性となっていた別な1台の情報処理装置の属性を「OFF」に変更する、という方法を採る。但し、この場合、ライセンス管理装置100側に記録されている「ON」/「OFF」属性と、実際の情報処理装置の「許可状態」/「非許可状態」とが対応しない不整合状態が生じる。そこで、以後、「許可状態」の情報処理装置からライセンス管理装置100にアクセスがあった場合、当該情報処理装置のライセンス管理装置100側に記録されている属性を調べ、もし「OFF」属性であった場合には、不整合状態であると判断し、当該情報処理装置を「非許可状態」に書き換える処理を行い、不整合状態を解消するようにする。
【0058】
以下、この改良策を採用した場合の具体的な処理を図4の変遷例を参照しながら説明する。図4の表も、図3の表と同様に、ユーザ甲についての各利用段階(フェイズP1〜P7)における5台の情報処理装置A〜Eの状態(許可状態を○、非許可状態を×で示す)と、ライセンス管理装置100内のリストL(甲)の状態とが示されている。
【0059】
図4のフェイズP1は、図3のフェイズP1と同様に、2台の情報処理装置A,Dが「許可状態○」、残り3台の情報処理装置B,C,Eが「非許可状態×」にある段階であり、リストL(甲)の記録は、A,Dが「ON」属性、B,C,Eが「OFF」属性となっている。
【0060】
ここで述べる改良型ライセンス供与方法では、このフェイズP1の状態において、ユーザ甲が情報処理装置Bを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求(「許可状態」への切換要求)を行うと、ライセンス管理装置100による書換処理T1(図の白矢印)により管理情報が書き換えられ、フェイズP2の状態に遷移する。ライセンス管理装置100は、「ON」属性となっている装置の台数にかかわらず、常に、アクティベーション要求を受け入れて「許可状態」への書換処理を行うことになるので、既に、2台の情報処理装置A,Dが「許可状態」になっていたとしても、3台目の情報処理装置Bに対しても「許可状態」への書換処理が行われる。したがって、フェイズP2では、図示のとおり、3台の情報処理装置A,B,Dが「許可状態○」になっている。
【0061】
ただ、ライセンス管理装置100は、アクティベーション要求を行った情報処理装置Bの属性を「ON」に変更する処理を行うとともに、これまで「ON」属性となっていた2台の情報処理装置のうちの1台を「OFF」属性に変更する処理を行う。2台のうちのいずれを「OFF」にしてもよいが、図示の例では、情報処理装置Aの属性を「OFF」に変更している。結局、ライセンス管理装置100側に記録されているリストL(甲)上では、情報処理装置Aの属性は「OFF」となっており、本来は「非許可状態」であるべきことを示しているが、実際の情報処理装置Aは依然として「許可状態」となっているため、不整合が生じている。
【0062】
ここに示す改良型ライセンス供与方法では、このような不整合状態を敢えて認めることとし、ユーザの便宜を図っている。すなわち、ユーザ甲は、情報処理装置Bにおいて特定アプリを利用したい場合、本来は、事前の準備処理として、情報処理装置A,Dのいずれかについてアクティベーション解除要求を行い、「非許可状態×」に書き換える処理を行うべきである。しかしながら、情報処理装置A,Dが手元にない等の事情がある場合は、上記準備処理を行うことができないので、上例のように、準備処理なしに、情報処理装置Bによるアクティベーション要求を行えば、「許可状態○」への書き換えが行われ、情報処理装置Bによる特定アプリの利用が可能になる。
【0063】
しかしながら、このフェイズP2の状態は、ユーザ甲に対して「原則として2台の情報処理装置に特定アプリの利用ライセンスを与える」という条件が課せられたライセンス供与がなされていた場合は、例外的な状態(実際の情報処理装置の許可/非許可の状態と、ライセンス管理装置100側に記録されている属性との間に不整合が生じている状態)である。そこで、ユーザ甲が、情報処理装置Aによりライセンス管理装置100へのアクセスを行った時点で、この不整合を解消する処理が行われる。
すなわち、情報処理装置Aによるアクセスが行われると、ライセンス管理装置100は、実際の情報処理装置Aは「許可状態○」であるのに、リストL(甲)に記録されている属性は「OFF」となっていることから不整合状態を認識し、情報処理装置Aを「非許可状態×」とする書換処理T2を行い、フェイズP3の状態に遷移する。これにより、不整合は解消することになる。
【0064】
ただ、このような改良型ライセンス供与方法では、事実上、ユーザが無制限に「許可状態○」にある情報処理装置の台数を増やすことが可能になる。たとえば、フェイズP3の状態において、今度は、情報処理装置Eを用いたアクティベーション要求を行うと、書換処理T3により管理情報が書き換えられ、フェイズP4の状態に遷移する。続いて、情報処理装置Cを用いたアクティベーション要求を行うと、書換処理T4により管理情報が書き換えられ、フェイズP5の状態に遷移し、更に、情報処理装置Aを用いたアクティベーション要求を行うと、書換処理T5により管理情報が書き換えられ、フェイズP6の状態に遷移する。
【0065】
このフェイズP6の状態では、ユーザ甲が所有する5台すべての情報処理装置が「許可状態○」になっている。一方、ライセンス管理装置100側に記録されているリストL(甲)の属性は、アクティベーション要求が行われるたびに、1台が「ON」から「OFF」に変更されることになるので、「ON」属性の装置の台数は常に2台に維持される。図示の例の場合、フェイズP6では、情報処理装置A,Cの2台のみが「ON」属性になっており、残りの3台について不整合が生じている。
【0066】
もちろん、このような不整合状態は、不整合状態となっている情報処理装置からのアクセスがあった時点で解消する。たとえば、フェイズP6の状態において、ユーザ甲が、情報処理装置Bによってライセンス管理装置100へのアクセスを行った場合、ライセンス管理装置100は、当該情報処理装置Bについての不整合状態を認識し、情報処理装置Bを「非許可状態×」とする書換処理T6を行い、フェイズP7の状態に遷移する。これにより、情報処理装置Bについての不整合状態は解消することになるが、情報処理装置D,Eについての不整合状態は依然として残ったままである。
【0067】
結局、図のフェイズP6の状態のまま、5台の情報処理装置A〜Eのすべてを「許可状態」に維持して特定アプリを使い続けるようなユーザがいれば、「原則として2台の情報処理装置に特定アプリの利用ライセンスを与える」という条件付きのライセンス供与は実効性をもたなくなる。このように、ここで述べた改良型ライセンス供与方法には、ユーザの使い勝手が向上するというメリットが得られるものの、台数制限を課したライセンス供与の実効性を担保する上では問題がある。
【0068】
<<< §3.本発明に係るライセンス管理の基本概念 >>>
本発明は、§2で述べた改良型ライセンス供与方法に更に改良を加えることにより、台数制限を課したライセンス供与の実効性を担保しつつ、ライセンスの供与対象となる情報処理装置の切り換えを柔軟に行うことができるようにする技術を提供するものである。
【0069】
以下、本発明の基本概念を説明する。本発明においても、§2で述べた例と同様に、原則として、「許可状態」の情報処理装置については「ON」属性、「非許可状態」の情報処理装置については「OFF」属性を記録するようにし、「ON」属性の装置の数が所定の制限台数(これまでの例では、2台)に達するまで、任意の装置を「許可状態」に切り換えることができるようにする。しかも、ユーザが柔軟な切換処理を行うことができるように、「ON」属性の装置の数が制限台数に達していた場合でも、例外的に「許可状態」に切り換える運用を行うようにする。
【0070】
ただ、§2で述べた例と異なるのは、新たに第3の属性として「OFF待ち」という属性を定義し、上記例外的な切り換えを行う場合、これまで「ON」属性であった1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」にする。すなわち、「ON」属性であった1台を一時的に「OFF待ち」属性に変更して、「ON」属性に空きを作ることにより、新たな装置を「ON」属性に変更して「許可状態」に切り換えることができるようにする。このような運用により、§2で述べた例と同様に、現在、手元になかったり、バッテリー切れで利用できなかったりしたために、「非許可状態」に切り換えることができない情報処理装置があったとしても、別な情報処理装置からのアクセスにより「OFF待ち」属性に変更すれば、「ON」属性の空きを作ることができるので、当該別な情報処理装置を「許可状態」に切り換えることができるようになる。
【0071】
こうして、例外的な「許可状態」への切換処理によって生じた「OFF待ち」属性は、当該属性をもつ情報処理装置が、「本来は『非許可状態』にすべき装置であるが、現在は例外的に『許可状態』になっている装置」であることを示すものである。そこで、この「OFF待ち」属性をもつ情報処理装置からアクセスがあった場合には、当該装置を「非許可状態」に書き換え、その属性を「OFF」に変更する処理を行う(後述する「OFF待ち解消処理」)。
【0072】
一方、台数制限を課したライセンス供与の実効性を担保するために、「ON」属性の数に制限を加えるだけでなく、「OFF待ち」属性の数にも制限を加えるようにする。たとえば、「ON」属性の数の最大値をnに設定し、「OFF待ち」属性の数の最大値をmに設定した場合、「ON」属性の装置の数がn台に達していた場合でも、「OFF待ち」属性の装置の数がm台に達していなければ、例外的に「許可状態」に切り換える処理が行われる。この場合、「ON」属性の1台の装置が「OFF待ち」属性に変更される。「ON」属性の装置の数がn台に達し、「OFF待ち」属性の装置の数もm台に達していた場合は、「許可状態」に切り換える処理は実行されない。
【0073】
したがって、例外的な切換処理が行われると、「許可状態」となっている情報処理装置の総数が値nを超え、オーバーライセンス状態になるが、それでも、「許可状態」となっている情報処理装置の総数は、「n+m」を超えることはない。このような運用を行えば、「原則としてn台の情報処理装置に特定アプリの利用ライセンスを与える」という条件が課せられたライセンスを、ある程度の実効性を担保しつつ供与することができ、しかも、ユーザには、装置切換に関する柔軟な使い勝手を提供することができる。
【0074】
ここでは、n=2,m=1に設定した場合の具体的な処理を、図5の変遷例を参照しながら説明する。図5の表も、図4の表と同様に、ユーザ甲についての各利用段階(フェイズP1〜P7)における5台の情報処理装置A〜Eの状態(許可状態を○、非許可状態を×で示す)と、ライセンス管理装置100内のリストL(甲)の状態とが示されている。
【0075】
まず、フェイズP0と言うべき初期状態(図示せず)において、5台の情報処理装置A〜Eのすべてが「非許可状態×」となっており、リストL(甲)の記録もすべてが「OFF」属性となっているものとし、この初期状態から、ユーザ甲が、情報処理装置Aを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求(「許可状態」への切換要求)を行うことにより、図5に示すフェイズP1の状態が得られたものとしよう。
【0076】
このフェイズP1では、情報処理装置Aのみが「許可状態○」、残り4台の情報処理装置B,C,D,Eが「非許可状態×」にあり、リストL(甲)の記録は、Aが「ON」属性、B,C,D,Eが「OFF」属性となっている。このフェイズP1の状態において、ユーザ甲が情報処理装置Dを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求を行うと、ライセンス管理装置100による書換処理T1(図の白矢印)により管理情報が書き換えられ、フェイズP2の状態に遷移する。この遷移により、情報処理装置Dは「許可状態○」になり、リストL(甲)に記録されている情報処理装置Dの属性は「ON」に変更される。この時点で、「ON」属性の数は最大値2に達している。
【0077】
続いて、このフェイズP2の状態において、ユーザ甲が情報処理装置Bを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求を行うと、ライセンス管理装置100は、リストL(甲)の属性を確認する。その結果、「ON」属性の台数は最大値n=2に達しているが、「OFF待ち」属性の台数(=0)は最大値m=1には達していないことがわかるので、これまで「ON」属性であった1台を一時的に「OFF待ち」属性に変更して「ON」属性に空きを作り、情報処理装置Bを「ON」属性に変更して「許可状態○」に切り換える処理を行う。
【0078】
すなわち、書換処理T2により、情報処理装置Bの管理情報が「許可状態○」に書き換えられ、フェイズP3の状態に遷移する。また、リストL(甲)は、太線欄に示すとおり、これまで「ON」属性であった情報処理装置Aが「OFF待ち」属性に変更され、情報処理装置Bの属性が「ON」に変更される(なお、情報処理装置Aの代わりにDの属性を「OFF待ち」に変更してもよい)。このような運用を行えば、フェイズP2において「許可状態○」となっている2台の情報処理装置A,Dが、現在、手元になかったり、バッテリー切れで利用できなかったりしても、情報処理装置Bを「許可状態○」に切り換えて、特定アプリを利用することができる。
【0079】
フェイズP3では、3台の情報処理装置A,B,Dが「許可状態○」になっており、1台分が余分にライセンスされたオーバーライセンス状態になっている。リストL(甲)の「OFF待ち」属性は、当該情報処理装置がオーバーライセンス状態にあることを示している。当該オーバーライセンス状態は、情報処理装置Aからライセンス管理装置100へのアクセスがあった時点で解消する。すなわち、「OFF待ち」属性をもつ情報処理装置Aからのアクセスがあると、前述した「OFF待ち解消処理」を経て、情報処理装置Aは書換処理T3により「非許可状態×」になり、その属性は「OFF待ち」から「OFF」に変更される。フェイズP4は、このときの状態を示している。こうして、フェイズP4では、「OFF待ち」属性の装置はなくなり、オーバーライセンス状態は解消する。
【0080】
このフェイズP4の状態において、ユーザ甲が情報処理装置Eを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求を行うと、ライセンス管理装置100は、リストL(甲)の属性を確認する。その結果、「ON」属性の台数は最大値n=2に達しているが、「OFF待ち」属性の台数(=0)は最大値m=1には達していないことがわかるので、これまで「ON」属性であった1台を一時的に「OFF待ち」属性に変更して「ON」属性に空きを作り、情報処理装置Eを「ON」属性に変更して「許可状態○」に切り換える処理を行う。
【0081】
すなわち、書換処理T4により、情報処理装置Eの管理情報が「許可状態○」に書き換えられ、フェイズP5の状態に遷移する。また、リストL(甲)では、これまで「ON」属性であった情報処理装置Dが「OFF待ち」属性に変更され、情報処理装置Eの属性が「ON」に変更される(なお、情報処理装置Dの代わりにBの属性を「OFF待ち」に変更してもよい)。
【0082】
フェイズP5においても、3台の情報処理装置B,D,Eが「許可状態○」になっており、1台分が余分にライセンスされたオーバーライセンス状態になっている。この状態で、今度は、ユーザ甲が「ON」属性をもつ情報処理装置Bからのアクセスを行い、アクティベーション解除要求(「非許可状態」への切換要求)を行った場合を考えよう。そうすると、情報処理装置Bは書換処理T5により「非許可状態×」になり、その属性は「ON」から「OFF」に変更される。フェイズP6は、このときの状態を示している。この時点で、実際に「許可状態」にある装置はD,Eの2台のみであり、オーバーライセンス状態は解消している。ただ、リストL(甲)上の属性は、「ON」属性の装置はEのみであるが、装置Dは依然として「OFF待ち」属性の状態である。
【0083】
続いて、このフェイズP6の状態において、ユーザ甲が情報処理装置Cを用いてライセンス管理装置100にアクセスし、アクティベーション要求を行うと、「ON」属性の装置はEの1台のみであるから、最大値n=2には達していない。そこで、書換処理T6により、情報処理装置Cの管理情報が「許可状態○」に書き換えられ、フェイズP7の状態に遷移する。また、リストL(甲)では、情報処理装置Cが「ON」属性に変更され、結局、「ON」属性の装置が2台、「OFF待ち」属性の装置が1台になる。もちろん、この後、情報処理装置Dからのアクセスがあれば、「OFF待ち解消処理」により、その属性は「OFF待ち」から「OFF」に変更される。
【0084】
このように、図5に示す実施例に係るライセンス供与方法では、ユーザ甲に対して「原則として2台の情報処理装置に特定アプリの利用ライセンスを与える」という条件が課せられたライセンス供与を行いつつ、例外として、3台の情報処理装置での利用も可能となるような柔軟性が与えられている。しかも、どのような場合でも、4台以上の情報処理装置での利用が許可されることはない。これは、「OFF待ち」属性の台数が、最大値m=1に制限されているためである。すなわち、「ON」属性の台数が最大値n=2となっており、「OFF待ち」属性の台数が最大値m=1となっている場合には、更なるアクティベーション要求は拒絶されるので、「許可状態○」となる情報処理装置の台数が「n+m=3」を超えることはない。
【0085】
実際、図5に示す例の場合、フェイズP3において、ユーザ甲が情報処理装置CまたはEについてアクティベーション要求を行った場合、当該要求は拒絶される。同様に、フェイズP5において、ユーザ甲が情報処理装置AまたはCについてアクティベーション要求を行った場合、当該要求は拒絶される。このように、本発明に係るライセンス供与方法によれば、「原則としてn台の情報処理装置に特定アプリの利用ライセンスを与える」という条件が課せられたライセンス供与を前提として、例外として「n+m」台の情報処理装置での利用まで可能となるような柔軟性が与えられる。しかも、「n+m」台を超える利用はできないので、台数制限を課したライセンス供与の実効性も担保することができる。
【0086】
<<< §4.本発明に係るライセンス管理装置の実用的な利用環境 >>>
§3では、本発明に係るライセンス管理の基本概念を説明したが、本発明に係るライセンス管理装置は、実用上、個々のユーザが、情報処理装置をネットワークに接続して、ネットワーク経由で様々なサービスを利用する環境で用いるのが好ましい。なぜなら、既に述べたとおり、本発明における「OFF待ち」属性は、ユーザの便宜を考慮して、例外的な「許可状態」への切換処理によって生じるものであり、「本来は『非許可状態』にすべきであるが、現在は例外的に『許可状態』になっている」ことを示す属性であるためである。すなわち、この「OFF待ち」属性をもつ情報処理装置をもつユーザには、できるだけ速やかに、ライセンス管理装置100へアクセスしてもらい、「OFF待ち」を解消してもらうのが、基本理念に合致した利用形態ということになる。
【0087】
このような点を考慮すると、本発明は、ネットワークに接続せずに、いわゆるスタンドアローン形式で利用する情報処理装置についてのライセンス管理には、必ずしも適しているとは言えない。たとえば、アクティベーション要求のために一度だけライセンス管理装置100にアクセスして、「許可状態」としてしまえば、以後、ネットワークに接続せずに利用し続けることができる情報処理装置について、本発明によるライセンス管理を行った場合を考えてみよう。この場合、ユーザは、実質的に、n台分のライセンス契約で「n+m」台分のライセンスを得ることができる。もちろん、オーバーライセンス状態となっているm台(「OFF待ち」属性のm台)については、ライセンス管理装置100にアクセスすると「非許可状態」に書き換えられてしまうことになるが、スタンドアローン形式で利用している限りは、他のn台の情報処理装置と同等の機能を果たすことになる。
【0088】
したがって、実用上は、本発明に係るライセンス管理装置を、当該ライセンス管理装置によるライセンス管理の下に、各情報処理装置にネットワークを介して所定のサービスを提供するサービス提供装置とともに利用するのが好ましい。そうすれば、上例の場合、n台の情報処理装置については、当該サービス提供装置からのサービス提供を受けることができるが、オーバーライセンス状態となっているm台(「OFF待ち」属性のm台)については、そのようなサービス提供を受けることができないので、ユーザは、必要な台数分のライセンス契約を締結せざるを得なくなる。
【0089】
図6は、このような利用形態を示すブロック図である。図において、ライセンス管理装置100は、§3で述べた基本概念に基づくライセンス管理機能をもった装置であり、情報処理装置Aは、このライセンス管理装置100の管理下でライセンス供与を受ける装置である。既に述べたとおり、この情報処理装置Aは、ネットワークNを介して、ライセンス管理装置100へのアクセスを行うことができる。なお、ここでは便宜上、1台の情報処理装置Aしか図示していないが、実際には、多数のユーザが、それぞれ複数の情報処理装置を用いて、ライセンス管理装置100からのライセンス供与を受けることになる。
【0090】
一方、サービス提供装置200は、ライセンス管理装置100のライセンス管理の下に、各情報処理装置にネットワークN(たとえば、インターネット)を介して所定のサービスを提供する構成要素である。インターネットが普及した今日では、インターネットNを介して情報処理装置に様々なサービスの提供が行われている。たとえば、Webページを利用した様々な情報の提供、音楽/動画/電子書籍などのコンテンツデータの配信、アプリケーションプログラムの配信、OSプログラムやアプリケーションプログラムのアップデート、データファイルの保管、ASP(Application Service Provider)機能の提供などのサービスを列挙することができる。
【0091】
また、最近ではクラウドコンピューティングという考え方に基づき、クライアントとなる情報処理装置A側の負担を著しく軽減し、サーバとなるサービス提供装置200側に大部分の機能をもたせるようなサービス提供形態も一般化しつつある。このようなサービス提供形態では、従来、情報処理装置A側に保存していた種々のデータも、サービス提供装置200側に保存することになる。たとえば、一般的な電子書籍閲覧アプリケーションプログラムには、閲読中断箇所を記憶しておくためのしおり機能や、注目箇所をマークしておくマーキング機能など、種々の便利機能が備わっているが、クラウドコンピューティングでは、そのような機能もサービス提供装置200側が提供することになろう。
【0092】
情報処理装置Aにおいて、このような電子書籍閲覧アプリケーションプログラムを動作させる場合、スタンドアローン形式での利用では、種々の便利機能を利用することはできない。したがって、実用上、ユーザは、情報処理装置Aをサービス提供装置200にネットワーク接続した状態で利用せざるを得ないであろう。
【0093】
図6に例示する実施形態の場合、サーバ装置300は、ライセンス管理装置100とサービス提供装置200とによって構成されている。また、情報処理装置Aには、サーバ装置300に対して、「 (1)『許可状態』への切換要求(アクティベーション要求)」、「 (2)『非許可状態』への切換要求(アクティベーション解除要求)」、「 (3)サービス利用要求」を行う機能が備わっている。ここで、「 (1)『許可状態』への切換要求」および「 (2)『非許可状態』への切換要求」がなされた場合は、ライセンス管理装置100によって、§3で説明したとおりの処理が実行される。
【0094】
一方、「 (3)サービス利用要求」は、サービス提供装置200に対して、様々なサービスの提供を要求するものであるが、サービス提供装置200は、情報処理装置Aからのサービス利用要求を、まず、ライセンス管理装置100を介して受け取るように構成されている。サービス提供装置200は、サービス利用要求を受け取ると、当該要求に応じて情報処理装置Aに所定のサービスの提供を行うことになる。
【0095】
要するに、図6に例示する実施形態では、情報処理装置Aが「許可状態」となっている特定アプリを用いてサービス提供装置200から何らかのサービスを受けるためには、まず、ライセンス管理装置100にアクセスしなければならない構成になっている。したがって、もし情報処理装置Aが「OFF待ち」属性の装置であったとすると、ライセンス管理装置100にアクセスした時点で、「OFF待ち解消処理」によって「非許可状態」への書き換えが行われてしまうことになり、サービス提供装置200からのサービスを受けることはできないことになる。
【0096】
結局、この図6に示す例では、特定アプリがインストールされた情報処理装置が多数あったとしても、当該特定アプリを用いてサービス提供装置200から所定のサービスの提供を受ける台数は、常に、ライセンス供与されたn台分だけに制限されることになる。すなわち、オーバーライセンスにより「n+m」台分の情報処理装置が「許可状態」になっていたとしても、超過したm台分は「OFF待ち」属性となっているため、サーバ装置300にアクセスしても、「OFF待ち解消処理」が実行されるだけで、サービス提供装置200からのサービスを受けることはできない。
【0097】
たとえば、前述したように、5台の情報処理装置A〜Eのうち、情報処理装置A,Dの2台が「許可状態」となっている状態で、情報処理装置B,Eのみを所持して出張に出た場合を考えよう。この場合、前述の例と同様に、n=2,m=1という設定であれば、出張先で、情報処理装置Bを用いて「 (1)「許可状態」への切換要求」を行えば、情報処理装置Bは「許可状態」になる。そこで、情報処理装置Bから「 (3)サービス利用要求」を行えば、特定アプリを用いてサービス提供装置200から所望のサービスの提供を受けることができる。一方、情報処理装置A(あるいはD)は「OFF待ち」属性に変更されるので、出張から戻ったユーザが、情報処理装置Aから「 (3)サービス利用要求」を行うと、「OFF待ち解消処理」により「非許可状態」に書き換えられてしまうので、所望のサービスの提供を受けることはできなくなる。
【0098】
このように、本発明に係るライセンス管理装置100を、図6に例示するようなサーバ装置300に組み込んで利用すれば、ユーザには、ライセンスの供与対象となる情報処理装置の切り換えを柔軟に行うメリットを提供しつつ、サービス提供装置200からのサービス提供を受けることができる台数をn台に制限することができる。
【0099】
<<< §5.本発明に係るライセンス管理装置の基本構成 >>>
ここでは、本発明に係るライセンス管理装置の基本構成を、§4で述べた実用的な利用環境に適用した場合の実施例に基づいて説明する。図7は、本発明に係るライセンス管理装置100にサービス提供装置200を組み合わせることによって構成されたサーバ装置300の基本構成を示すブロック図である。
【0100】
ライセンス管理装置100は、§3で説明した基本概念に基づいて、ネットワークN(この例では、インターネット)を介して接続可能な複数の情報処理装置に対して、それぞれ特定の処理の実行を許可するか否かを決定する管理情報の書き換えを行う機能を有する。ここでは「特定の処理」の一例として、これまで述べた実施例と同様に「特定アプリの実行処理」を例にとって説明する。また、このライセンス管理装置100は、実用上、多数のユーザが所有する情報処理装置についてのライセンス管理を行うことになるが、ここでは、便宜上、これまで述べてきた実施例と同様に、ユーザ甲が利用する5台の情報処理装置A〜Eについてのライセンス管理を行う場合を説明する。
【0101】
個々の情報処理装置A〜Eには、それぞれ特定の処理の実行を許可するか否かを決定する管理情報が書き込まれている。図では、各情報処理装置A〜Eの右下に○印「許可状態」もしくは×印「非許可状態」を付して、いずれの状態の管理情報が書き込まれているかを示してある。具体的には、図示の例の場合、情報処理装置A,Dの2台が「許可状態」にあり、これら2台においてのみ特定アプリの実行が可能である。
【0102】
より具体的に説明すれば、各情報処理装置A〜Eは、図2の左側に示す情報処理装置Aと同様の構成を有しており、管理情報は、管理情報格納部24に格納されている。また、プログラム格納部22には、管理情報格納部24内の管理情報が「許可状態」である場合に限り特定の処理を実行するプログラムと、ネットワークNを介してサーバ装置300にアクセスし、このサーバ装置300を構成するライセンス管理装置100に対して、「許可状態」への切換要求と、「非許可状態」への切換要求と、サービス利用要求と、を行うプログラムと、が格納されている。
【0103】
一方、ここに示す実施形態の場合、ライセンス管理装置100は、図に一点鎖線で囲って示す各構成要素からなる。すなわち、ライセンス管理装置100は、認証処理部110,通信制御部120,OFF待ち解消部130,統括制御部140,管理情報書換部150,属性記録部160,許可状態切換部170,非許可状態切換部180,サービス提供移行部190によって構成されている。以下、これら各構成要素の機能を順に説明する。
【0104】
まず、通信制御部120は、情報処理装置A〜EからネットワークNを介したアクセスがあった場合に、所定の通信路を形成して当該アクセスを行った情報処理装置と接続し、情報のやりとりを行う構成要素である。ネットワークNがインターネットである場合、TCP/IPプロトコルを用いて、情報処理装置との間でパケット通信を行い、情報の送受を行う。
【0105】
認証処理部110は、通信制御部120を介して接続中の情報処理装置と交信し、当該情報処理装置およびそのユーザを特定する認証処理を行う構成要素である。すなわち、情報処理装置からのアクセスを受けると、認証処理部110は、当該アクセスが、どのユーザのどの情報処理装置からのアクセスであるかを、所定の信頼度が確保できる認証方法で特定する。ユーザの認証は、通常、アカウントとパスワードを用いて行われる。また、情報処理装置の認証は、通常、当該情報処理装置に付された固有番号によって行われる。このようなユーザや情報処理装置の具体的な認証方法は、公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0106】
なお、ライセンス管理装置100による実体的な処理は、認証処理部110によって特定されたユーザおよび情報処理装置が、属性記録部160内のリストに登録されていることを前提として実行される。したがって、認証処理部110は、属性記録部160に登録されていないユーザもしくは情報処理装置からのアクセスを受けたときには、属性記録部160に対して、当該ユーザもしくは当該情報処理装置の新規登録を行い、新規登録が行われた情報処理装置の初期属性を「OFF」に設定する処理を行う。
【0107】
たとえば、ユーザ甲が、初めてライセンス管理装置100に対するアクセスを行った場合、属性記録部160内には、当該ユーザについてリストL(甲)が作成され、アクセスに用いた装置(たとえば、情報処理装置A)が、初期属性「OFF」をもつ装置として、このリストL(甲)に登録されることになる。続いて、ユーザ甲が、別な装置(たとえば、情報処理装置B)を用いてアクセスを行った場合、同様にして、当該装置が初期属性「OFF」をもつ装置として、このリストL(甲)に登録される。
【0108】
管理情報書換部150は、通信制御部120を介して接続中の情報処理装置と交信し、接続中の情報処理装置に格納されている管理情報を、特定の処理の実行を許可する「許可状態」もしくは許可しない「非許可状態」のいずれかの状態に書き換える構成要素である。具体的には、管理情報書換部150は、接続中の情報処理装置で動作しているアプリケーションプログラム(ライセンス管理装置100に対してアクセスを行っているプログラム)と協働して、上述した書換処理を実行する。後述するように、このような書換処理の指示は、許可状態切換部170,非許可状態切換部180,OFF待ち解消部130から与えられる。
【0109】
属性記録部160は、個々のユーザごとにそれぞれ情報処理装置を登録し、各情報処理装置について、「ON」、「OFF」、「OFF待ち」のいずれかの属性を記録する構成要素である。図には、甲乙丙という3人のユーザについて、それぞれリストL(甲),L(乙),L(丙)が作成され、リストL(甲)に5台の情報処理装置A〜Eが登録され、3通りのいずれかの属性が記録された状態が示されている。このようなリストの初期登録は、上述したとおり、認証処理部110によって実行される。なお、各情報処理装置についての属性は、後述するように、許可状態切換部170,非許可状態切換部180,OFF待ち解消部130によって変更される。
【0110】
OFF待ち解消部130は、接続中の情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かを確認し、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部150に指示を与えるとともに、属性記録部160内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更するOFF待ち解消処理を行う構成要素である。より具体的には、このOFF待ち解消処理は、属性記録部160を参照して、接続中の情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かをチェックする前段階と、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部150に指示を与えるとともに、属性記録部160内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更する後段階と、によって構成される。前段階で「OFF待ち」ではない、との判定結果が得られれば、後段階を行うことなく、OFF待ち解消処理は完了する。
【0111】
統括制御部140は、このライセンス管理装置100の動作を統括制御する構成要素であり、アクセスのあった情報処理装置について、認証処理部110に認証処理を実行する指示を与えるとともに、OFF待ち解消部にOFF待ち解消処理を実行する指示を与え、更に、当該情報処理装置からの要求を、その内容に応じて、許可状態切換部170、非許可状態切換部180、もしくはサービス提供移行部190に伝達する機能を果たす。前述したとおり、情報処理装置からの要求には、 (1)「許可状態」への切換要求、 (2)「非許可状態」への切換要求、 (3)サービス利用要求、の3通りがあるが、 (1)「許可状態」への切換要求があった場合には、これを許可状態切換部170に伝達し、 (2)「非許可状態」への切換要求があった場合には、これを非許可状態切換部180に伝達し、 (3)サービス利用要求があった場合には、これをサービス提供移行部190に伝達する処理が行われる。
【0112】
許可状態切換部170は、接続中の情報処理装置から「許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置のユーザについての属性記録部160の記録に基づいて、次の3通りのいずれかの処理を行う。たとえば、ユーザ甲の情報処理装置からの切換要求の場合、リストL(甲)を参照して、次の3通りのいずれかの処理を行うことになる。
【0113】
(a)「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n未満(但し、n≧1)であったときは、当該情報処理装置内の管理情報を「許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部150に指示を与えるとともに、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更する。
【0114】
(b)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が所定値m未満(但し、m≧1)であったときは、当該情報処理装置内の管理情報を「許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部150に指示を与えるとともに、「ON」属性をもつ別な1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更し、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更する。
【0115】
(c)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が前記所定値m以上であったときは、切換要求を拒絶する処理を行う。
【0116】
なお、上記(b)の場合、「ON」属性をもつ1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理が行われるが、許可状態切換部170が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、次のような方法で選択された候補を変更対象とすることができる。
【0117】
第1の方法は、切換要求を行った情報処理装置に対して選択指示を与え、当該選択指示に対する応答によって選択された候補を変更対象とする方法である。たとえば、図5に示す変遷例において、フェイズP2からP3へ遷移する際に、装置Bの属性を「ON」に変更するとともに、これまで「ON」属性であった装置AまたはDのいずれか一方の属性を「OFF待ち」に変更する処理が行われる(図示の例では、装置Aが選択されている)。このようなとき、切換要求を行った情報処理装置Bに対して選択指示を与え、ユーザ甲に対して、装置AまたはDのいずれを「OFF待ち」にするかを選択してもらうようにする。ユーザ甲が装置Aを選択した場合は、図示の例のとおり、装置Aの属性を「OFF待ち」にすればよい。ユーザ甲は、「非許可状態」にしてもよいと思う方の装置を選択する操作を行えばよい。
【0118】
第2の方法は、予め登録されていた優先順位に従って選択された候補を変更対象とする方法である。たとえば、5台の情報処理装置A〜Eについて、A,B,C,D,Eの順に優先順位を登録しておけば、上例のフェイズP2からP3へ遷移する際には、2つの候補A,Dのうち、優先順位の高い装置Aが自動的に選択され、図示の例のとおり、装置Aの属性が「OFF待ち」になる。この方法を採用した場合、ユーザが選択操作を行う必要はなくなる。
【0119】
第3の方法は、変更日時が最も古い候補を変更対象とする方法である。この方法を採用する場合、属性記録部160に、属性とともに当該属性の変更日時を併せて記録する機能をもたせておくようにする。たとえば、リストL(甲)等の属性欄の隣に変更日時欄を設け、属性が変更された場合に、その時点の日時を記録するようにする。そうすれば、許可状態切換部170が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、変更日時が最も古い候補を変更対象とすることができる。
【0120】
たとえば、図5のフェイズP2からP3へ遷移する場合、2つの候補A,Dの属性の変更日時に着目すると、候補AはフェイズP0からP1の遷移で属性が「ON」に変更され、候補DはフェイズP1からP2の遷移で属性が「ON」に変更されているため、変更日時が古い候補Aが選択され、装置Aの属性が「OFF待ち」になる。一方、図5のフェイズP4からP5へ遷移する場合、2つの候補B,Dの属性の変更日時に着目すると、候補BはフェイズP2からP3の遷移で属性が「ON」に変更され、候補DはフェイズP1からP2の遷移で属性が「ON」に変更されているため、変更日時が古い候補Dが選択され、装置Dの属性が「OFF待ち」になる。この第3の方法は、変更日時がより古い候補ほど、ユーザの利用確率が低くなるであろうとの予想に基づくものである。
【0121】
さて、結局、許可状態切換部170が行う3通りの処理のうち、処理(a),(b)の場合は、「許可状態」への切換要求は受け入れられ、接続中の情報処理装置は「許可状態」に書き換えられる。これに対して、処理(c)の場合は、「許可状態」への切換要求は拒絶される。この場合、接続中の情報処理装置に対しては、たとえば、「ライセンス許容台数がオーバーしています」等のエラーメッセージを表示させるようにするのが好ましい。なお、所定値n,mは、予め、許可状態切換部170内に設定しておくようにする。§3では、n=2,m=1に設定した例を示したが、n≧1,m≧1であれば、任意の数値を設定することができる。また、ユーザごとに異なるライセンス契約を結ぶ場合には、所定値n,mも、ユーザごとに異なる値が設定されるので、個々のユーザのn,m値を許可状態切換部170内に設定しておくようにし、各ユーザに対応したn,m値を用いて、上記判定を行うようにすればよい。
【0122】
これに対して、非許可状態切換部180は、接続中の情報処理装置から「非許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部150に指示を与えるとともに、属性記録部160内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更する処理を行う。「非許可状態」への切換要求は、「許可状態」の情報処理装置の台数を減らす要求であるため、常に受け入れられる。
【0123】
一方、サービス提供移行部190は、接続中の情報処理装置から、サービス利用要求があった場合に対応する構成要素である。図7に示す実施形態は、ライセンス管理装置100にサービス提供装置200を組み合わせてサーバ装置300を構成した例である。図7に示すシステム全体は、このサーバ装置300と、このサーバ装置300にネットワークNを介して接続可能な複数の情報処理装置A〜Eと、によって構成されるサービス提供システムということになる。ここで、サービス提供装置200は、ライセンス管理装置100とは別個に設けられた装置であり、情報処理装置A〜Eからサービスの利用を要求するサービス利用要求があった場合に、所定のサービスを提供する機能を有している。具体的なサービスの内容は、既に§4で例示したとおりである。
【0124】
サービス提供移行部190は、認証処理部110による認証処理およびOFF待ち解消部130によるOFF待ち解消処理が完了しており、かつ、当該情報処理装置が「ON」属性となっている場合に、接続中の情報処理装置から与えられたサービス利用要求を、サービス提供装置200に受け渡して処理を移行する機能を果たす。
【0125】
ここに示す実施形態の場合、接続中の情報処理装置から与えられたサービス利用要求は、統括制御部140を介してサービス提供移行部190へ伝達されるので、統括制御部140は、認証処理部110による認証処理およびOFF待ち解消部130によるOFF待ち解消処理が完了している場合に限り、サービス利用要求の伝達を行うようにしている。サービス提供移行部190は、サービス利用要求が伝達されてきたら、属性記録部160を参照し、当該情報処理装置が「ON」属性となっている場合に、接続中の情報処理装置から与えられたサービス利用要求を、サービス提供装置200に受け渡し、「OFF」属性となっている場合には、サービス利用要求を拒絶する(既にOFF待ち解消処理が完了しているため、「OFF待ち」属性になっていることはない)。なお、サービス利用要求を拒絶する場合には、接続中の情報処理装置に対しては、たとえば、「ライセンス許容台数がオーバーしています」等のエラーメッセージを表示させるようにするのが好ましい。
【0126】
以上、図7に示すブロック図を参照しながら、ライセンス管理装置100の基本構成を説明したが、実際には、このライセンス管理装置100は、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより構成されるものであり、図に個々のブロックとして示したライセンス管理装置100の構成要素は、コンピュータに組み込まれた専用プログラムの機能として実現されることになる。
【0127】
<<< §6.本発明に係るライセンス管理装置の基本動作 >>>
続いて、図7に示すライセンス管理装置100の基本動作を、図8に示す流れ図を参照しながら説明する。上述したとおり、図7に示すライセンス管理装置100は、実用上、コンピュータにプログラムを組み込むことによって構成されるので、図8の流れ図に示す手順は、結局、ライセンス管理用コンピュータが、ネットワークを介して接続可能な複数の情報処理装置に対して、それぞれ特定の処理の実行を許可する「許可状態」もしくは許可しない「非許可状態」に設定する処理を行うことによりライセンスを管理する手順ということになる。
【0128】
なお、この図8には、ネットワークを介して情報処理装置からのアクセスがあった後の手順しか示されていないが、その前に、ユーザおよび情報処理装置を登録する準備段階が行われていることが前提となる。すなわち、この図8に示す手順を実行する前に、ライセンス管理用コンピュータは、個々のユーザごとにそれぞれ情報処理装置を登録して、各情報処理装置について、「ON」、「OFF」、「OFF待ち」のいずれかの属性を記録するための記憶領域を確保する準備段階を実行しておく必要がある。
【0129】
準備段階が完了した後の手順は次のとおりである。まず、ステップS1において、情報処理装置からネットワークを介したアクセスがあった場合に、当該情報処理装置およびそのユーザを特定する認証処理段階が実行される。この認証処理段階の詳細は、図7に示す認証処理部110による機能として説明したとおりである。
【0130】
次のステップS2では、認証処理段階を終えた情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かを確認し、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置を「非許可状態×」に設定するとともに、当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更するOFF待ち解消処理段階が実行される。この処理は、既に述べたとおり、図7に示すOFF待ち解消部130によって実行される処理であり、属性記録部160を参照して、接続中の情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かをチェックする前段階と、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう管理情報書換部150に指示を与えるとともに、属性記録部160内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更する後段階と、によって構成される。前段階で「OFF待ち」ではない、との判定結果が得られれば、後段階を行うことなく、OFF待ち解消処理は完了する。
【0131】
続くステップS3では、アクセスがあった情報処理装置からの要求が、 (1)「許可状態」への切換要求、 (2)「非許可状態」への切換要求、 (3)サービス利用要求、の3通りのいずれであるかが判定され、その判定結果により、3通りのステップへと分岐する。このような分岐処理は、図7に示す統括制御部140によって実行される。
【0132】
ここでは、まず、 (2)「非許可状態」への切換要求であった場合を説明する。この場合は、図示のとおり、ステップS4へと分岐する。ステップS4は、この認証処理段階を終えた情報処理装置から「非許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置の属性を「ON」から「OFF」に変更するとともに、当該情報処理装置を「許可状態○」から「非許可状態×」に設定する非許可状態切換段階の処理であり、図7に示す非許可状態切換部180によって実行される。
【0133】
一方、 (1)「許可状態」への切換要求があった場合は、図示のとおり、ステップS5へと分岐し、図7に示す許可状態切換部170による次のような許可状態切換段階の処理が実行される。
【0134】
すなわち、認証処理段階を終えた情報処理装置から「許可状態」への切換要求があった場合、ステップS5において、当該情報処理装置のユーザについての属性記録を参照して、「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n未満(但し、n≧1)であると判定されたときは、ステップS6へ分岐して、当該情報処理装置の属性を「OFF」から「ON」に変更するとともに、当該情報処理装置を「非許可状態×」から「許可状態○」に設定する処理(a)が実行される。
【0135】
また、ステップS5において、「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n以上であると判定されたときは、ステップS7に分岐する。そして、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が所定値m未満(但し、m≧1)であると判定されたときは、ステップS8へ分岐して、当該情報処理装置の属性を「OFF」から「ON」に変更し、当該情報処理装置を「非許可状態×」から「許可状態○」に設定するとともに、「ON」属性をもつ別な1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理(b)が実行される。
【0136】
一方、ステップS5において、「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n以上であると判定され、かつ、ステップS7において、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が所定値m以上であると判定されたときは、ステップS9に分岐し、切換要求を行った情報処理装置に対して、切換要求を拒絶する旨の通知を行う処理(c)が実行される。
【0137】
以上述べたいずれの場合も、処理終了後には、ステップS10へ進む。そして、接続中の情報処理装置がアクセスを終了するまで、ステップS3へと戻り、同様の要求処理が繰り返される。
【0138】
また、情報処理装置から、 (3)サービス利用要求があった場合は、ステップS3からステップS11へ分岐し、サービス提供移行部190による次のような処理が実行される。まず、当該情報処理装置が「ON」属性であるか否かが判定される。そして、「ON」属性でない(すなわち、「OFF」属性である)と判定された場合は、ステップS12において、利用要求を拒絶する処理が行われ、ステップS10へと進む。一方、「ON」属性と判定された場合は、当該サービスの利用は許可されることになる。すなわち、ステップS13へと進み、サービス提供装置200へサービス利用要求を受け渡す処理が実行される。
【0139】
図5に示す変遷例を、この図8の流れ図の手順と対照して説明すると、次のようになる。まず、フェイズP1からP2への変遷は、装置Dからのアクセスによる (1)「許可状態」への切換要求に基づくものであり、ステップS5からステップS6を経る処理(a)により、装置Dの属性が「OFF」から「ON」に変更され、「非許可状態×」から「許可状態○」への書換処理T1が実行される。
【0140】
続くフェイズP2からP3への変遷は、装置Bからのアクセスによる (1)「許可状態」への切換要求に基づくものであり、ステップS5,S7,S8を経る処理(b)により、装置Bの属性が「OFF」から「ON」に変更され、「非許可状態×」から「許可状態○」への書換処理T2が実行される。また、別な装置Aの属性が「ON」から「OFF待ち」に変更される。
【0141】
次のフェイズP3からP4への変遷は、装置Aからのアクセスによる (2)「非許可状態」への切換要求に基づくものであり、ステップS4の処理により、装置Aの属性が「ON」から「OFF」に変更され、「許可状態○」から「非許可状態×」への書換処理T3が実行される。
【0142】
そして、フェイズP4からP5への変遷は、装置Eからのアクセスによる (1)「許可状態」への切換要求に基づくものであり、ステップS5,S7,S8を経る処理(b)により、装置Eの属性が「OFF」から「ON」に変更され、「非許可状態×」から「許可状態○」への書換処理T4が実行される。また、別な装置Dの属性が「ON」から「OFF待ち」に変更される。
【0143】
次のフェイズP5からP6への変遷は、装置Bからのアクセスによる (2)「非許可状態」への切換要求に基づくものであり、ステップS4の処理により、装置Bの属性が「ON」から「OFF」に変更され、「許可状態○」から「非許可状態×」への書換処理T5が実行される。
【0144】
最後のフェイズP6からP7への変遷は、装置Cからのアクセスによる (1)「許可状態」への切換要求に基づくものであり、ステップS5からステップS6を経る処理(a)により、装置Cの属性が「OFF」から「ON」に変更され、「非許可状態×」から「許可状態○」への書換処理T6が実行される。
【0145】
なお、フェイズP3において、装置CもしくはEからのアクセスによる (1)「許可状態」への切換要求が行われた場合や、フェイズP5において、装置AもしくはCからのアクセスによる (1)「許可状態」への切換要求が行われた場合は、ステップS5,S7からステップS9を経る処理(c)により、切換要求を拒絶する処理が実行される。
【0146】
<<< §7.管理情報のバリエーション >>>
ここでは、各情報処理装置内に格納される管理情報のバリエーションについて述べておく。既に述べたとおり、本発明において各情報処理装置内に格納される管理情報は、特定の処理の実行を許可するか否かを決定する情報であり、ネットワークを介して接続されたライセンス管理装置100によって書き換えがなされる情報である。情報処理装置内にインストールされたプログラムは、この管理情報を参照することにより、特定の処理を実行してよいか否かを判断する。すなわち、管理情報が「許可状態」であれば、特定の処理を実行し、「非許可状態」であれば、特定の処理の実行を中止する。
【0147】
このように、管理情報は、「許可状態」/「非許可状態」のいずれかの状態を示すことができる情報であればよいので、最も単純な例としては、1ビットのフラグによって管理情報を構成することができる。たとえば、管理情報格納部として、不揮発性メモリ内の1ビットの記憶領域を割り当てておき、当該ビットが「0」であれば「非許可状態」を示し、「1」であれば「許可状態」を示している、とする取り扱いをすればよい。ただ、実用上は、ユーザの不正利用を防ぐために、情報処理装置の固有番号もしくはユーザIDを含む情報を管理情報として用いるのが好ましい。
【0148】
図2の左側に示すように、一般的な情報処理装置Aは、CPU10,記憶装置20,通信制御部30を有しており、図示の装置Aの場合、記憶装置20には、作業部21,プログラム格納部22,データ格納部23,管理情報格納部24が設けられている。図9は、このような情報処理装置Aにおいて、情報処理装置の固有番号「AAAAA」を管理情報として用いた構成例を示すブロック図である。通常、CPUには、個体固有のユニークなCPU番号が格納されており、図9に示す例は、このCPU番号を「情報処理装置Aに固有の固有番号」として利用した例である。
【0149】
この例では、図示のとおり、データ格納部23にはユーザID「U12345」が格納されており、プログラム格納部22には、3つのアプリケーションプログラムα,β,γが格納されている。また、プログラム格納部22,データ格納部23,管理情報格納部24は、いずれもフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって構成されており、書き換えが可能である。ここでは、プログラムα,β,γがインターネット経由でダウンロードする作業により、プログラム格納部22に格納されたものとしよう。これに対して、CPU10内に格納されている固有番号「AAAAA」は、書き換えることができず、また、個々の情報処理装置ごとに異なるユニークな番号になっているため、ライセンス管理を行う場合の管理情報として用いるのに最適な情報である。
【0150】
この固有番号「AAAAA」を管理情報として用いたライセンス管理の手順は次のとおりである。ここでは、便宜上、プログラム格納部22に格納されているアプリケーションプログラムαを特定アプリ、すなわち、ライセンス管理の対象となる「特定のアプリケーションプログラム」とし、管理情報は、この特定アプリαの実行を許可するか否かを決定する情報であるものとする。この場合、管理情報格納部24内に固有番号「AAAAA」が格納されていれば「許可状態○」であることを示し、格納されていなければ「非許可状態×」であることを示す。
【0151】
さて、ユーザが特定アプリαをダウンロードし、これを最初に起動すると、特定アプリαの初動ルーチンは、不揮発性メモリ内に管理情報格納部24を確保する初期化作業を行うとともに、インターネット経由でライセンス管理装置100にアクセスし、「許可状態」への切換要求(アクティベーション要求)を行う。当該要求が受け入れられると、管理情報書換部150から特定アプリαの初動ルーチンに対して、「許可状態」に書き換える指示が与えられる。この指示を受けて、初動ルーチンは、CPU10内の固有番号「AAAAA」を管理情報格納部24にコピーする処理を行う。この処理は、管理情報を「非許可状態」から「許可状態」に書き換える処理に対応する。
【0152】
特定アプリαの初動ルーチンには、起動時に管理情報格納部24内の管理情報をチェックする機能が備わっている。そもそも管理情報格納部24が確保されていない場合は、上述した初期化作業が実行されるが、以後は、管理情報格納部24に格納されている管理情報と、CPU10内に格納されている固有番号とが一致するか否かの判定(すなわち、管理情報が「許可状態」を示しているか、「非許可状態」を示しているかの判定)を行う。そして、一致との判定結果が得られた場合は、特定アプリαは、本来の処理ルーチンを実行することになる。不一致との判定結果が得られた場合は、ユーザにアクティベーションを促すメッセージを提示する。ユーザがアクティベーションを行う旨の指示を与えると、ネットワークを介してライセンス管理部100をアクセスし、「許可状態」への切換要求(アクティベーション要求)が行われる。
【0153】
一方、特定アプリαには、「非許可状態」への切換要求(アクティベーション解除要求)を行う機能も備わっており、ユーザがアクティベーション解除を行う旨の指示を与えると、ネットワークを介してライセンス管理部100をアクセスし、「非許可状態」への切換要求が行われる。これに応じて、管理情報書換部150から特定アプリαに対して、「非許可状態」に書き換える指示が与えられる。この指示を受けて、特定アプリαは、管理情報格納部24内の固有番号「AAAAA」を削除する処理(理論的には、1ビットでも改変する処理でよい)を行う。この処理は、管理情報を「許可状態」から「非許可状態」に書き換える処理に対応する。
【0154】
このように、管理情報として、CPU固有番号「AAAAA」を利用するメリットは、管理情報を別な情報処理装置へコピーして利用するような不正行為を防止できる点である。すなわち、不正行為を行うユーザが、「許可状態」にある情報処理装置Aの管理情報格納部24内に格納されているデータを、そっくり別な情報処理装置Bへコピーしたとしても、情報処理装置Bを「許可状態」にすることはできない。情報処理装置Aにおいて「許可状態」を示す管理情報はCPU内の固有番号「AAAAA」であるが、情報処理装置Bにおいて「許可状態」を示す管理情報は別な固有番号「BBBBB」であるため、管理情報をコピーするという不正行為によって、「非許可状態」にある装置を「許可状態」に改変することはできない。
【0155】
なお、ここでは、情報処理装置の固有番号として、CPU固有番号を用いた例を説明したが、情報処理装置の固有番号としては、管理情報格納部24以外の場所に格納されている装置固有の何らかの番号であれば、どのような番号を用いてもかまわない。たとえば、通信制御部30内に格納されているMACアドレスなどを情報処理装置の固有番号として利用することも可能である。
【0156】
また、図示の例では、データ格納部23内にユーザID「U12345」が格納されている。一般に、ネットワーク経由でサーバ装置にアクセスする場合、何らかのユーザアカウントを用いたログインが行われる。ユーザID「U12345」は、このようなユーザアカウントを含めて、ユーザを特定する識別情報であれば、どのようなものでもかまわない。データ格納部に、このようなユーザIDが格納されている場合は、このユーザIDを管理情報として利用することができる。この場合、上述した例における固有番号「AAAAA」の代わりに、ユーザID「U12345」を用いればよい。
【0157】
ユーザIDを管理情報として用いた場合、同一ユーザが所有する装置間でコピーを行う不正利用を防ぐことはできないが、少なくとも、異なるユーザが所有する装置間でコピーを行う不正利用を防ぐことは可能である。
【0158】
図10は、情報処理装置の固有番号「AAAAA」とユーザID「U12345」との双方を管理情報として用いた構成例を示すブロック図である。図示のとおり、管理情報格納部24内には、固有番号とユーザIDとを組み合わせた管理情報が格納されている。実際の管理情報としては、たとえば、「AAAAA−U12345」のように両者をハイフンで結合したようなデータを用いればよい。この場合、「許可状態」への書き換えを行うには、CPU10内の固有番号とデータ格納部23内のユーザIDとをそれぞれ読み出し、両者をハイフンで結合させたデータを管理情報として、管理情報格納部24内に書き込む処理を行えばよい。また、「許可状態」であることを確認する場合も、管理情報格納部24内の管理情報が、CPU10内の固有番号とデータ格納部23内のユーザIDとをハイフンで結合させたデータと一致するか否かの判定を行えばよい。
【0159】
もちろん、管理情報として、情報処理装置の固有番号やユーザIDを利用する場合、更に余分な情報を付加するようにしてもかまわない。たとえば、特定アプリαに固有のアプリケーションコード「ααα」を付加して、「AAAAA−U12345−ααα」のようなデータを用いることもできる。また、これらのデータを所定のアルゴリズムで暗号化したデータを管理情報として格納してもよい(この場合、一致判定には復号化処理が必要になる)。要するに、情報処理装置に設けられた管理情報格納部24には、それ以外の場所に格納されている情報処理装置の固有番号もしくはユーザIDまたはその双方を含む情報を「許可状態」を示す管理情報として書き込むようにすればよい。
【0160】
<<< §8.個別処理ごとのライセンス >>>
これまで、特定の処理の実行を許可するか否かのライセンスを、個々の情報処理装置について付与する例を述べたが、ここでは、「特定の処理」として、複数の個別処理をそれぞれ別個に設定した例を説明する。
【0161】
たとえば、図9もしくは図10に示す例の場合、プログラム格納部22には、3つのアプリケーションプログラムα,β,γが格納されている。§7では、そのうちの特定アプリαについてのライセンス管理を行う例を述べたが、もちろん、他のアプリケーションプログラムβ,γについても、同様のライセンス管理をそれぞれ別個独立して行うことが可能である。
【0162】
図11は、このように、アプリケーションプログラムα,β,γについてのライセンス管理を別個独立して行う例を示すブロック図である。この場合、アプリケーションプログラムα,β,γの実行処理を、それぞれ「個別処理α」,「個別処理β」,「個別処理γ」と呼べば、情報処理装置Aに対して、個別処理ごとにライセンスを付与する必要がある。
【0163】
そのため、管理情報格納部24内には、個別処理ごとにそれぞれ別個独立した管理情報が格納される。図11には、3つの管理情報M(α),M(β),M(γ)が格納されている例が示されているが、これらは、それぞれ「個別処理α」,「個別処理β」,「個別処理γ」に対応する管理情報であり、それぞれ独立して「許可状態」もしくは「非許可状態」の設定が可能である。したがって、「許可状態」への切換要求や「非許可状態」への切換要求は、「個別処理α」,「個別処理β」,「個別処理γ」のいずれかを特定した要求になる。
【0164】
このような個別処理ごとのライセンス供与を行うためには、ライセンス管理装置100側にも、これに対応した処理機能を設けておく必要がある。具体的には、図7に示す構成において、管理情報書換部150には、複数の個別処理を実行する機能をもった情報処理装置内に格納されている各個別処理についての個別管理情報を、それぞれ別個独立して書き換える機能をもたせておく。また、属性記録部160には、各情報処理装置の個別処理ごとに、それぞれ別個独立した個別属性を記録する機能をもたせておく。たとえば、リストL(甲)について、情報処理装置Aについての属性を記録する代わりに、情報処理装置Aの「個別処理α」についての個別属性,「個別処理β」についての個別属性,「個別処理γ」についての個別属性をそれぞれ記録できるようにしておく。
【0165】
一方、許可状態切換部170および非許可状態切換部180には、特定の個別処理を指定した切換要求に応じて、当該特定の個別処理に係る個別管理情報についての書換指示を管理情報書換部150に与えるとともに、当該特定の個別処理に係る個別属性を変更する処理を行い、かつ、許可状態切換部170は、当該特定の個別処理に係る個別属性の記録を参照して、所定値n,mに対する大小関係の判断を行うことになる。もちろん、必要に応じて、個々の個別処理について、それぞれ異なる値n,mを設定することも可能である。
【0166】
なお、本発明に係るライセンス管理装置によって供与されるライセンスは、ユーザが利用する情報処理装置において「特定の処理」の実行を許可するためのものである。これまで述べた実施例では、「特定の処理」として、「特定のアプリケーションプログラムの実行処理」を例にとって説明したが、もちろん、本発明にいう「特定の処理」は、アプリケーションプログラムの実行処理に限定されるものではなく、OSプログラムの実行処理を「特定の処理」としてもかまわない。この場合、「非許可状態」の情報処理装置は、「許可状態」に切り換えるまで、OSプログラム自体が本来の動作を行わないことになる(もちろん、最低限、「許可状態」に切り換えるためのアクティベーション要求機能は動作するようにしておく)。
【0167】
また、特定のコンテンツデータの再生処理を「特定の処理」とすることも可能である。図12は、「特定の処理」として、情報処理装置Aに格納されている特定のコンテンツデータの再生処理を設定した例を示すブロック図である。ここでは、プログラム格納部22に格納されているアプリケーションプログラムαが、コンテンツデータの再生プログラムであるものとし、データ格納部23内に格納されているデータD1,D2,D3が、当該アプリケーションプログラムαによって再生されるコンテンツデータであるものとしよう。コンテンツデータは、音楽/動画/電子書籍など、どのようなデータであってもかまわない。通常、これらのコンテンツデータD1,D2,D3は、インターネット経由でダウンロードされる。
【0168】
この図12に示す例の場合、「プログラムαによるコンテンツデータD1の再生処理」,「プログラムαによるコンテンツデータD2の再生処理」,「プログラムαによるコンテンツデータD3の再生処理」が、それぞれライセンス付与の対象となる「特定の処理」(個別処理)ということになり、個々の個別処理ごとに、それぞれ「許可状態」/「非許可状態」という設定がなされる。図の管理情報格納部24内に示されている管理情報M(D1),M(D2),M(D3)は、それぞれ「コンテンツデータD1の再生処理」,「コンテンツデータD2の再生処理」,「コンテンツデータD3の再生処理」に対応する管理情報であり、それぞれ独立して「許可状態」もしくは「非許可状態」の設定が可能である。したがって、この場合も「許可状態」への切換要求や「非許可状態」への切換要求は、特定の「個別処理」を特定した要求(再生コンテンツを特定した要求)になる。
【0169】
このように、「特定のコンテンツの再生処理」を「個別処理」として取り扱い、個々の個別処理ごとに「許可状態」/「非許可状態」の切り換えができるようにしておけば、コンテンツD1は装置A,Bで再生できるようにし、コンテンツD2は装置C,Eで再生できるようにし、コンテンツD3は装置A,Dで再生できるようにする、というように、きめの細かいライセンス管理が可能になる。
【符号の説明】
【0170】
10:CPU
20:記憶装置
21:作業部
22:プログラム格納部
23:データ格納部
24:管理情報格納部
30:通信制御部
100:ライセンス管理装置
110:認証処理部
120:通信制御部
130:OFF待ち解消部
140:統括制御部
150:管理情報書換部
160:属性記録部
170:許可状態切換部
180:非許可状態切換部
190:サービス提供移行部
200:サービス提供装置
300:サーバ装置
A〜E:ユーザ甲が利用する情報処理装置
L(甲)〜L(丙):各ユーザのリスト
N:ネットワーク(インターネット)
P1〜P7:変遷フェイズ
S1〜S13:流れ図の各ステップ
T1〜T6:管理情報の書換処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続可能な複数の情報処理装置に対して、それぞれ特定の処理の実行を許可するか否かを決定する管理情報の書き換えを行うライセンス管理装置であって、
情報処理装置からネットワークを介したアクセスがあった場合に、所定の通信路を形成して当該情報処理装置と接続し、情報のやりとりを行う通信制御部と、
接続中の情報処理装置およびそのユーザを特定する認証処理を行う認証処理部と、
接続中の情報処理装置に格納されている管理情報を、前記特定の処理の実行を許可する「許可状態」もしくは許可しない「非許可状態」のいずれかの状態に書き換える管理情報書換部と、
個々のユーザごとにそれぞれ情報処理装置を登録し、各情報処理装置について、「ON」、「OFF」、「OFF待ち」のいずれかの属性を記録する属性記録部と、
接続中の情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かを確認し、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう前記管理情報書換部に指示を与えるとともに、前記属性記録部内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更するOFF待ち解消処理を行うOFF待ち解消部と、
接続中の情報処理装置から「非許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置内の管理情報を「非許可状態」へ書き換えるよう前記管理情報書換部に指示を与えるとともに、前記属性記録部内の当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更する非許可状態切換部と、
接続中の情報処理装置から「許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置のユーザについての前記属性記録部の記録について、
(a)「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n未満(但し、n≧1)であったときは、当該情報処理装置内の管理情報を「許可状態」へ書き換えるよう前記管理情報書換部に指示を与えるとともに、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(b)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が所定値m未満(但し、m≧1)であったときは、当該情報処理装置内の管理情報を「許可状態」へ書き換えるよう前記管理情報書換部に指示を与えるとともに、「ON」属性をもつ別な1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更し、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(c)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が前記所定値m以上であったときは、切換要求を拒絶する処理を行う許可状態切換部と、
アクセスのあった情報処理装置について、前記認証処理部に認証処理を実行する指示を与えるとともに、前記OFF待ち解消部にOFF待ち解消処理を実行する指示を与え、更に、当該情報処理装置からの要求を前記非許可状態切換部もしくは前記許可状態切換部に伝達する統括制御部と、
を備えることを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のライセンス管理装置において、
認証処理部が、属性記録部に登録されていないユーザもしくは情報処理装置からのアクセスを受けたときに、属性記録部に対して、当該ユーザもしくは情報処理装置の新規登録を行い、新規登録が行われた情報処理装置の初期属性を「OFF」に設定することを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のライセンス管理装置において、
管理情報書換部が、情報処理装置に設けられた管理情報格納部に、当該管理情報格納部以外の場所に格納されている情報処理装置の固有番号もしくはユーザIDまたはその双方を含む情報を「許可状態」を示す管理情報として書き込むことを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のライセンス管理装置において、
許可状態切換部が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、切換要求を行った情報処理装置に対して選択指示を与え、当該選択指示に対する応答によって選択された候補を変更対象とすることを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のライセンス管理装置において、
許可状態切換部が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、予め登録されていた優先順位に従って選択された候補を変更対象とすることを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のライセンス管理装置において、
属性記録部が、属性とともに当該属性の変更日時を併せて記録する機能を有し、
許可状態切換部が、「ON」属性をもつ情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更する処理を行うにあたり、変更対象となる「ON」属性をもつ情報処理装置の候補が複数存在する場合には、前記変更日時が最も古い候補を変更対象とすることを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のライセンス管理装置において、
管理情報書換部が、複数の個別処理を実行する機能をもった情報処理装置内に格納されている各個別処理についての個別管理情報を、それぞれ別個独立して書き換える機能を有し、
属性記録部が、各情報処理装置の個別処理ごとに、それぞれ別個独立した個別属性を記録する機能を有し、
非許可状態切換部および許可状態切換部が、特定の個別処理を指定した切換要求に応じて、当該特定の個別処理に係る個別管理情報についての書換指示を管理情報書換部に与えるとともに、当該特定の個別処理に係る個別属性を変更する処理を行い、かつ、許可状態切換部は、当該特定の個別処理に係る個別属性の記録を参照して、所定値n,mに対する大小関係の判断を行うことを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載のライセンス管理装置において、
個別処理として、情報処理装置に格納されているOSプログラムもしくは特定のアプリケーションプログラムの実行処理が設定されていることを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項9】
請求項7に記載のライセンス管理装置において、
個別処理として、情報処理装置に格納されている特定のコンテンツデータの再生処理が設定されていることを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のライセンス管理装置において、
接続中の情報処理装置から、別個に設けられたサービス提供装置が提供する所定のサービスの利用を要求するサービス利用要求があった場合に、認証処理部による認証処理およびOFF待ち解消部によるOFF待ち解消処理が完了しており、かつ、当該情報処理装置が「ON」属性となっている場合に、前記サービス提供装置に、前記サービス利用要求を受け渡して処理を移行するサービス提供移行部を更に備えることを特徴とするライセンス管理装置。
【請求項11】
請求項10に記載のライセンス管理装置と、このライセンス管理装置のライセンス管理の下に、各情報処理装置にネットワークを介して所定のサービスを提供するサービス提供装置と、を備えるサーバ装置であって、
前記サービス提供装置は、情報処理装置からのサービス利用要求を、前記ライセンス管理装置を介して受け取り、受け取ったサービス利用要求に基づいて、当該情報処理装置に所定のサービスの提供を行うことを特徴とするサーバ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のサーバ装置と、このサーバ装置にネットワークを介して接続可能な複数の情報処理装置と、を備えたサービス提供システムであって、
前記情報処理装置には、プログラムを格納するプログラム格納部と、管理情報を格納する管理情報格納部と、が設けられており、
前記プログラム格納部には、
前記管理情報格納部内の管理情報が「許可状態」である場合に限り特定の処理を実行するプログラムと、
前記サーバ装置を構成するライセンス管理装置に対して、「許可状態」への切換要求と、「非許可状態」への切換要求と、サービス利用要求と、を行うプログラムと、
が格納されていることを特徴とするサービス提供システム。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のライセンス管理装置としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項14】
ライセンス管理用コンピュータが、ネットワークを介して接続可能な複数の情報処理装置に対して、それぞれ特定の処理の実行を許可する「許可状態」もしくは許可しない「非許可状態」に設定する処理を行うことによりライセンスを管理する方法であって、
前記ライセンス管理用コンピュータが、個々のユーザごとにそれぞれ情報処理装置を登録して、各情報処理装置について、「ON」、「OFF」、「OFF待ち」のいずれかの属性を記録するための記憶領域を確保する準備段階と、
前記ライセンス管理用コンピュータが、情報処理装置からネットワークを介したアクセスがあった場合に、当該情報処理装置およびそのユーザを特定する認証処理段階と、
前記ライセンス管理用コンピュータが、前記認証処理段階を終えた情報処理装置の属性が「OFF待ち」であるか否かを確認し、「OFF待ち」であった場合に、当該情報処理装置を「非許可状態」に設定するとともに、当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更するOFF待ち解消処理段階と、
前記ライセンス管理用コンピュータが、前記認証処理段階を終えた情報処理装置から「非許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置を「非許可状態」に設定するともに、当該情報処理装置の属性を「OFF」に変更する非許可状態切換段階と、
前記ライセンス管理用コンピュータが、前記認証処理段階を終えた情報処理装置から「許可状態」への切換要求があった場合に、当該情報処理装置のユーザについての属性記録について、
(a)「ON」属性の情報処理装置の数が所定値n未満(但し、n≧1)であったときは、当該情報処理装置を「許可状態」に設定するとともに、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(b)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が所定値m未満(但し、m≧1)であったときは、当該情報処理装置を「許可状態」に設定するとともに、「ON」属性をもつ別な1台の情報処理装置の属性を「OFF待ち」に変更し、当該情報処理装置の属性を「ON」に変更し、
(c)「ON」属性の情報処理装置の数が前記所定値n以上であり、かつ、「OFF待ち」属性の情報処理装置の数が前記所定値m以上であったときは、切換要求を行った情報処理装置に対して、切換要求を拒絶する旨の通知を行う許可状態切換段階と、
を有することを特徴とするライセンス管理方法。
【請求項15】
請求項14に記載のライセンス管理方法において、
ライセンス管理用コンピュータが、認証処理段階およびOFF待ち解消処理段階を終えた情報処理装置から所定のサービスの利用を要求するサービス利用要求があった場合に、当該情報処理装置が「ON」属性となっている場合に限り、当該サービスの利用を許可することを特徴とするライセンス管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−174084(P2012−174084A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36682(P2011−36682)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】