説明

ライナー付きキャップ及びキャップ付き容器

【課題】 開栓性、密封性及びガスバリアー性に優れ、特に容器口唇部(口部)のザラツキ、擦り傷だけでなく凹凸にも対応して密封性を確保できると共に高いガスバリアー性も得られるライナー付きキャップ及びキャップ付き容器を提供すること。
【解決手段】 容器本体の口部を封じるライナー付きキャップであって、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、天板部の内面に設けられたライナーと、を備え、ライナー7が、天板部の内面に接して配された摺動層7aと、該摺動層7aに積層され摺動層7aよりも柔軟な密封層7bと、を備え、該密封層7bが、少なくとも第1の密封層7b1と第2の密封層7b2とを有し、第1の密封層7b1と第2の密封層7b2との間に、該密封層7bよりも高いガスバリアー性を有する中間層7cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開栓性、密封性及びガスバリアー性等に優れたライナー付きキャップ及びキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスビン、アルミニウムのボトル缶、PETボトル等に使用されている金属キャップや、プラスチックキャップの多くにはライナー材が使用されている。特に、金属製キャップにはライナーが必須であり、このライナーには合成樹脂が広く使用されている。この金属製キャップは、アルミニウム薄板、ブリキ薄板、クロム鍍金薄板等の両面に、数回の塗装を繰り返し、打ち抜き成形したものをキャップシェルとし、溶融樹脂をキャップシェルの中に入れ、型押しする方法(インシェルモールド法)が一般的である。
【0003】
その他、発泡PEディスクを挿入する方法、塩ビゾルを流し込み加熱成形する方法等があるが、コスト、衛生性等の問題があり、使用範囲は限定される。また、プラスチックシェルの成形法もほぼ同じである。このインシェルモールド法は、ライナーの使用量の効率が良く、シール性の良好なものが得られるが、ライナー材がキャップシェルと完全に接着しているために、開栓時に容器の口部とキャップシェルとの摩擦が比較的大きい。このため、開栓に必要なトルクが大きく、開栓が困難であるという問題が時々発生する。
【0004】
このため、多くのライナー材には、脂肪酸アミドを主とした滑剤が添加されている。この滑剤がライナー表面にブリードし、これにより容器口部との摩擦を下げて、低いトルクで開栓することができるように工夫されている。しかしながら、この滑剤のブリード量をコントロールするのが難しく、ブリード量が少なすぎると、充分な滑剤の役目を果たさず、高い開栓力が必要になり、ブリードが多すぎると、滑剤が内容物の上に落下し、異物として見なされるという問題がある。
【0005】
これらの問題に対して、後述するような二層ライナーが提案されている。これは硬度の高い樹脂と柔軟な樹脂とを貼合し、密封性は柔軟な樹脂層で保持し、開栓時の適性トルクは硬い樹脂層とキャップシェルとの摩擦による方式である。この二層シートのライナーは良好な密封性を示すが、長期保存を必要とする内容物に対しては密封性が十分ではない。この主な要因は、ライナーを酸素等の気体が透過して、内容物の劣化に寄与するためである。
【0006】
プラスチックは、一般に硬いほうがガスバリアー性は良いが、ライナー材としては容器とキャップシェルとの間の密封性を保つために、ある程度の柔軟性が必要である。このため、ライナー材は、一般のプラスチックの中でもガスバリアー性の劣る材料が使用されている。高温充填品用のキャップライナーやレトルト処理用のライナーは、特にガスバリアー性の悪い材料を使用せざるを得ない状態である。ライナー材としては柔軟性を持った材料を使用しなければならないため、従来からライナー材のガスバリアー性を上げる方法や材料の提案がなされている。
【0007】
例えば、従来、特許文献1から8に記載されている技術が提案されている。
これらに記載の技術は、ライナー材としてはいくつかの欠点を持っている。例えば、特許文献1に記載のライナー材は、多層構造になっており、バリアー層と柔軟層とを持っているが、ビン口に酸化ケイ素等の薄膜蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムが接する構造になっている。この方式では、蒸着層が固く、ビン口の凹凸を充分カバーできないため、充分な密封性が得られない。
【0008】
また、特許文献2には、中足パッキン付き合成樹脂キャップにおいて、キャップシェル又は中足パッキンにバリアー材をインサート、貼着、蒸着、塗布等で付ける方法が記載されている。この方法は、生産可能なものもあるが、高コストになる。例えば、インサート成形は製造装置が大掛りになり、生産速度が著しく劣るため、高価格のキャップになる。貼着、塗布、蒸着も、同様にコストが掛かる。また、これらのキャップライナーでは、レトルト処理には耐えられない。
【0009】
また、特許文献3には、ガスバリアー性と耐熱性とを備えた容器蓋が記載されている。この技術は、架橋されたブチルゴムとPP(ポリプロピレン)樹脂と流動パラフィンとからなるエラストマーをライナー材に使用したキャップであるが、レトルト処理に耐えるようにするため、架橋してある。このため、ライナーから架橋剤の臭いがして、食品には不適である。また、滑り性が悪いため、PP(ピルファープルーフ)キャップ等の回転して開栓するキャップのライナーとしては不適である。
【0010】
さらに、特許文献4では、摺動層と密封層とからなるライナー材において、摺動層とキャップシェルとの間に不揮発性液体を塗布し、キャップシェルとライナーとの密着を完全にし、酸素等のガスの透過を防ぐという方法である。この方法は、容器に窒素、炭酸ガス等で内圧がかけられている状態で、ライナーがキャップシェルに密着し、良好なシール性を示す。また、ライナーも不揮発性液体でキャップシェルと接しているので、回転が自由なため、低いトルクで開栓することができる。しかし、容器が常圧であったり、減圧状態であった場合、キャップシェルとライナーとの密着が旨くいかず、不揮発性液体のバリアー効果が出ないという問題がある。
また、この場合、摺動層内及び密封層内を透過するガスには効果が無く、この摺動層及び密封層を透過する酸素等の気体は、スローリークと言われ、シェルフライフの長い商品では、その品質に影響があるので、できる限りそのスローリークを少なくすることが重要である。
【0011】
また、ボトル缶、ガラスビン、PETボトル等に使用されるアルミニウム製キャップに使用されているライナー材は、ポリエチレンを主体としたポリオレフィンライナーが使用されている。また、レトルト処理等の耐熱性を要するものは、スチレン系エラストマーが多用されている。これらのライナー材は、インシェルモールド方式で成形されるのが多い。これらのライナー材は、インシェルモールド方式で成形するため、シートライナーに比べ、材料ロスが少なく、経済性に優れているが、上述したように、ライナーがキャップシェルに完全に接着しているため、開栓トルクが高いという欠点を持っている。
【0012】
PP(ポリプロピレン)樹脂等の合成樹脂のキャップシェルにスチレン系又はオレフィン系ライナー材をインシェルモールドした場合でも、同様に開栓トルクが高くなる傾向にある。この対策として、ライナー材に滑剤を添加し、表面に滑剤をブリードさせて滑性を出し、容器とキャップとの間の摩擦抵抗を下げて開栓トルクを下げるという方法が一般的である。この方法は、滑剤のブリードを一定にさせるのが難しく、ブリード量が少なすぎると開栓トルクが高くなり、上述したように、ブリード量が多いとライナー表面にブリードした滑剤が内容物の上に落下して、異物の原因になる。
【0013】
これに対し、例えば特許文献5に示す二層シートのライナーが提案されている。このライナーは、特許文献4と同様に、柔らかな密封層と硬い摺動層とを貼合したもので、開栓時、摺動層とキャップ天面とで摺動するため、低トルクが得られる仕組みになっている。このライナー材は、シール性、開栓性に優れているが、ライナーがキャップ天面に密着していないために、ライナーを透過した酸素等が内容物を劣化させ、商品サイクルの長いものには酸素バリアー性が足りないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−344269号公報
【特許文献2】特開2001−192057号公報
【特許文献3】特開2002−160759号公報
【特許文献4】特開2008−50031号公報
【特許文献5】特開2007−119059号公報
【特許文献6】特開2003−12013号公報
【特許文献7】特開2008−174249号公報
【特許文献8】特開2004−1862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、アルミニウム、ブリキ等の金属製キャップの場合、容器口との密封性を完全にするため、ライナーを必ず具備している。また、高い密封性を要求する樹脂製キャップにも、ライナーが具備されている。これらのライナー材は、容器(ガラスビン、PETボトル、ボトル缶等)の口部の微細な凹凸を完全に密封するために、ある程度の柔軟性を要求される。この柔軟性をプラスチックやエラストマーに要求する場合、柔軟性が大きい(軟らかい)ほど、一般にガスバリアー性が劣り、耐熱性が下がる傾向にある。
【0016】
ガスバリアー性が下がることにより、内容物の酸化劣化が促進され、シェルフライフを長く取ることができないという問題がある。また、レトルト処理に耐えることができないライナーでは、その使用用途が限定される。
また、柔軟性のあるライナー材は滑りが悪いため、回転して開けるキャップの場合、開栓トルクが高くなり、クレームの大きな要因になる。この対策として、上述したように、ライナー材に滑剤を添加し、滑り性を向上させ、開栓トルクを下げるという方法が採られている。
【0017】
しかし、この場合、滑剤のコントロールが旨くいかず、滑剤を使用しても高い開栓トルクになったり、滑剤量が多すぎて、内容物の上に滑剤が落下してクレームの原因になったりする。一方、この対策として、上記特許文献1では、多層シートライナー材が提案されている。これは、ライナー材が摺動層と密封層とに分かれて、接合されており、PP(ポリプロピレン)樹脂のような硬い樹脂が摺動層としてキャップシェルに接し、エラストマーのような軟らかい樹脂が密封層としてビン口に接し、密封性を維持するようになっている。
【0018】
この場合、開栓はキャップシェルとライナーの摺動層との間で滑りが起るので、ライナー材に滑剤を添加する必要はないため、開栓トルクをコントロールするための滑剤の問題は起らない。しかし、この方式はキャップシェルとライナーとの間で摺動させるため、ライナーとキャップシェルとの間が密着していないので、酸素等のガスがキャップシェルとライナーとの間からライナー天面を通して抜け、内容物を劣化させるため、長期保存には向かない面がある。
【0019】
この改善の一つとして、上記特許文献4では、キャップシェルとライナーとの間に、不揮発性有機液体を塗布する方法が提案されている。この方法は、ライナーとキャップシェルとを密着させ、しかも開栓時にキャップシェルとライナーとの間で摺動させて、安定した開栓トルク値が得られるという特徴がある。この方式は、ガラスビン,PETボトル等の容器に充填されたものが、陽圧状態にあり、常にライナーを内側からキャップシェルに押している状態では良好な結果が出る。しかしながら、上述したように、充填された状態が常圧又は陰圧であると、シェルとライナーとの間に隙間ができ、天面からのガス透過が起り、内容物の劣化を促進させるという問題がある。
【0020】
また、上記特許文献6には、パッキング材とキャップシェルとの間に、酸素遮蔽シートとしてナイロン等の酸素透過性の低い材料を供試した構造のライナーが提案されている。この方式であると、ナイロン等の滑りの悪いバリアー材が直接キャップシェルと接触することにより、開栓トルクが高くなる。また、このようにバリアー層が被覆されていないと、バリアー材は水分と接触することにより、ガスバリアー性、物性の劣化が起こり、充分な性能を発揮できない。
【0021】
また、上記特許文献5に記載されているような摺動層と密封層とが接着された二層ライナー(シートモールドライナーを含む)は、良好な開栓性を示すが、上述したように高いガスバリアー性を必要とするキャップのライナー材としては充分ではない。その原因として考えられるのが、シートモールドライナーとキャップシェルとの間が、開栓時に摺動する構造になっているため、酸素等のガスがキャップシェルとライナーとの間を通過し、さらにライナー材を透過して内容物を劣化させるためと考える。
【0022】
このため、摺動層に一定のガスバリアー性を持たせたものが提案されている。例えば、上記特許文献7では、EVOH樹脂(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)、ナイロン等の酸素遮断シートである空気遮断材と、パッキング材としてポリエチレン等の弾性樹脂材料とから成る構成の容器蓋が提案されている。しかしながら、EVOH樹脂、ナイロン等のバリアー材は水分を吸うことにより、ガスバリアー性が下がるという問題がある。また、これらの空気遮断材の多くは滑りが悪いため、二層シートの摺動層として使用した場合、滑りをコントロールすることが難しい。このため、開栓トルクを、希望する一定の値に収めることが難しいという問題がある。
【0023】
また、これらの空気遮断材は、パッキング材と完全に接着していなければならないが、一般にEVOH樹脂、ナイロン等の空気遮断材は、パッキング材(密封層)として使用されるポリエチレンやエラストマーとは充分な接着力が得られない。したがって、空気遮断材をバリアー材で構成し、パッキング材をポリエチレン等で構成する従来の方法は、実用に供するには生産面、価格面、実用面で多くの困難がある。
【0024】
また、上記特許文献8では、樹脂キャップの中栓のオレフィン樹脂にEVOH樹脂等のバリアー樹脂を一定量ブレンドしてガスバリアー性を向上させる方法が提案されている。この方法は、PETボトルのようにボトル口部の寸法精度が高いものに対してはある程度有効であるが、ガラスビン、リシール缶等のビン口精度が十分でない容器に対しては十分ではない。
【0025】
これらの中栓方式のライナーは、ビン口内径の精度が重要であるが、ガラスビン、リシール缶等は製法上中栓の精度をPETボトル並みに上げることはできない。一方、EVOH樹脂等のガスバリアー性樹脂は硬度が高いので、ポリエチレン等の樹脂にブレンドした場合、ますます硬くなり、それ自体のガスバリアー性は上がっても、パッキンとしての密封(細かい凹凸を密閉する)する能力が著しく悪い方向になるので、通常の容器のパッキンとしては好ましくない。
【0026】
また、密封層に一般に使用されるライナー材のガスバリアー性は低いため、出来る限り薄いことが望ましいが、薄すぎると容器の口唇部(口部)のキズ、塗料しわ等のバラツキを吸収できず、ガス、内容物の急激な漏れ(いわゆる密封性不良)が発生する。また、口唇部のキズ、塗料しわ等の小欠点は比較的薄い密封層でカバーできるが、ビン口部に対する僅かな衝撃による全体的な凹みに対しては、薄い密封層では充分な密封性が得られない。従って、ライナーには、一定の厚さが必要である。このライナー材がガス透過しやすいことと、ボトル口部の欠点をカバーするために一定の厚さのライナーが必要であることとのため、ライナーを透過する気体に対しては充分な対応が出来ないという問題が有った。
【0027】
容器の口唇部とライナーとの密着により、密封性は保たれるが、容器口唇部のザラツキ、傷等を密封するためのライナーは、比較的薄くてもその性能を発揮する。しかし、ライナーの密封層が薄いと、時として大きなモレが発生する。これらの容器口唇部を調べるとザラツキ、傷等は大きくは無いが、ボトル口唇部のバランスが崩れている場合がある。例えば、口唇部にザラツキ、擦り傷等は無いが、口唇部が平滑で無く一部が僅かに凹んでいる、又は一部が僅かに凸状になっている場合がある。これらに対して完全な密封性を得るには一定以上のライナー(密封層)の厚さが必要であることがわかった。このため、従来のライナー(密封層)には一定の厚さが必要であり、ライナー(密封層)からのガス透過を一定以下には下げることが出来なかった。
【0028】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、開栓性、密封性及びガスバリアー性に優れ、特に容器口唇部(口部)のザラツキ、擦り傷だけでなく凹凸にも対応して密封性を確保できると共に高いガスバリアー性も得られるライナー付きキャップ及びキャップ付きボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のライナー付きキャップは、容器本体の口部を封じるライナー付きキャップであって、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、前記天板部の内面に設けられたライナーと、を備え、前記ライナーが、前記天板部の内面に接して配された摺動層と、該摺動層に積層され前記摺動層よりも柔軟な密封層と、を備え、該密封層が、少なくとも第1の密封層と第2の密封層とを有し、前記第1の密封層と前記第2の密封層との間に、該密封層よりも高いガスバリアー性を有する中間層が設けられていることを特徴とする。
【0030】
このライナー付きキャップでは、第1の密封層と第2の密封層との間に、該密封層よりも高いガスバリアー性を有する中間層が設けられているので、一般にガスバリアー性の低い柔軟な材質で形成される密封層の中間にガスバリアー性の高い中間層が挿入されることで、口部のザラツキや凹凸等に対応した十分な密封性が得られる密封層の厚さを確保しつつ密封層を透過する酸素等のガスの少なくとも一部を中間層で遮断して高いガスバリアー性を得ることができる。
例えば、硬度の高い樹脂等をキャップシェル内面と接する摺動層とし、それと完全に密着した複数層の弾性体を密封層(主にエラストマー等)とし、これら密封層の中間にガスバリアー層である中間層を介在させることにより、ガスバリアー性の優れたライナーが得られる。すなわち、ライナーを、摺動層、第1の密封層、中間層及び第2の密封層の順による多層にして、中間層にガスバリアー性を持たせることにより、密封性、ガスバリアー性、開栓性、対レトルト性等に優れたライナー材を提供できる。
特に、ザラツキ、引っかき傷等の口部の欠点に対して充分に密封性能が発揮できる厚さの第1の密封層と、その下にガスバリアー層である中間層を設けることにより、ライナーのバリアー機能を充分なものにし、さらに大きな口部の凹みや凸部に対しての密封機能として中間層の下部にさらに柔軟層である第2の密封層を配置することにより、より完全な密封性能を得ることができる。
なお、中間層は、少なくとも密封層よりも高いガスバリアー性を有する材質であることが必要であるが、より好ましくはさらに摺動層以上の高いガスバリアー性を有する材質である方がよい。
【0031】
また、本発明のライナー付きキャップは、前記第1の密封層が、前記第2の密封層より前記口部側に配され、その厚さが、前記第2の密封層と同じ又は該第2の密封層よりも薄く設定されていることを特徴とする。
すなわち、このライナー付きキャップでは、第1の密封層が、第2の密封層より口部側に配され、その厚さが、第2の密封層と同じ又は該第2の密封層よりも薄く設定されているので、第2の密封層に対して同じ厚さ又は薄い第1の密封層により口部のザラツキや引っ掻き傷等に対して十分な密封性能を発揮可能であると共に、厚い第2の密封層により口部の大きな凹みや凸部に対しても十分な密封性能を発揮可能である。さらに、第1の密封層に対して同じ厚さ又は厚い第2の密封層を透過する酸素等のガスがガスバリアー層である中間層によって遮断されると共に第1の密封層が薄く、透過する酸素等が大幅に少なくなるため、高いガスバリアー性を得ることができる。
【0032】
また、本発明のライナー付きキャップは、前記中間層が、ガスバリアー性樹脂で形成されていることを特徴とする。
すなわち、このライナー付きキャップでは、中間層が、EVOH樹脂(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)等のガスバリアー性樹脂で形成されているので、押出成形で中間層を形成することができ、低コストであると共に生産性に優れている。
【0033】
さらに、本発明のライナー付きキャップは、前記中間層が、ナイロンMXD6で形成されていることが好ましい。このナイロンMXD6(メタキシリレンジアミン(MXDA)とアジピン酸との重縮合反応から得られる結晶性のポリアミド)は、主鎖中に芳香族環を有する脂肪族ポリアミドであり、レトルト処理が行われたときに酸素や炭酸ガスに対してEVOH樹脂やPET(ポリエステル)樹脂、ナイロン6等のバリアー樹脂よりも優れたガスバリアー性を得ることができる。
【0034】
また、本発明のライナー付きキャップは、前記中間層が、金属箔で形成されていることを特徴とする。
すなわち、このライナー付きキャップでは、中間層が、アルミニウム箔等の金属箔で形成されているので、非常に高いガスバリアー性を得ることができる。
【0035】
また、本発明のライナー付きキャップは、前記密封層が、スチレン系エラストマーで形成されていることを特徴とする。
すなわち、このライナー付きキャップでは、密封層が、低MFRのSEBS(スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン)とPP(ポリプロピレン)樹脂と流動パラフィン等のブレンドであるスチレン系エラストマーで形成されているので、レトルト処理に耐えるライナーが得られる。
【0036】
本発明のキャップ付き容器は、容器本体の口部にキャップを装着したキャップ付き容器であって、前記キャップが、上記本発明のライナー付きキャップであることを特徴とする。
すなわち、このキャップ付き容器では、キャップが、上記本発明のライナー付きキャップであるので、良好な開栓性、密封性及びガスバリアー性に優れ、特に口部のザラツキ、擦り傷だけでなく凹凸にも対応して密封性を確保できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るライナー付きキャップ及びキャップ付き容器によれば、第1の密封層と第2の密封層との間に、該密封層よりも高いガスバリアー性を有する中間層が設けられているので、摺動層による開栓性、密封層による密封性、及び中間層によるガスバリアー性の向上を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るライナー付きキャップ及びキャップ付きボトルの一実施形態において、キャップを示す一部を破断した側面図である。
【図2】本実施形態において、ライナーを示す断面図である。
【図3】本実施形態において、キャップ付きボトルを示す要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係るライナー付きキャップ及びキャップ付き容器の一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。
【0040】
本実施形態のライナー付きキャップ1は、図1から図3に示すように、アルミニウム製ボトル缶、PETボトル、リシール缶、ガラス壜等の口金部(口部)3がネジ形状になっているボトル(キャップ付き容器)8において、それに使用されるライナー付きキャップである。すなわち、このキャップ1は、ボトル本体(容器本体)2の口金部3を封じるライナー付きキャップであって、天板部4と該天板部4の周縁から垂下した筒状周壁部5とからなる有底筒状で樹脂製又は金属製のキャップシェル(キャップ本体)6と、天板部4の内面に設けられたライナー7と、を備えている。
【0041】
また、本実施形態のキャップ付きボトル(キャップ付き容器)8は、図3に示すように、上記キャップ1をボトル本体2の口金部3に巻き締めた状態で備えている。
上記キャップシェル6は、例えばポリオレフィン樹脂又はポリスチレン樹脂等の樹脂成形されたものや、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材から加工されたものである。
【0042】
上記ライナー7は、天板部4の内面に接して配された摺動層7aと、該摺動層7aに積層され摺動層7aよりも柔軟な密封層7bと、を備えている。
上記摺動層7aは、通常の硬質の樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)でも良いし、バリアー樹脂(例えばEVOH樹脂、ナイロン等)でも良いし、多層シート(例えばPP/EVOH/PP)でも良い。
この摺動層7a全体の厚さは、必要とするバリアー性が得られる程度の厚さであれば出来る限り薄いほうが好ましい。なお、摺動層7a全体の厚さは、少なくとも100μm以下であることが望ましい。
【0043】
上記密封層7bは、少なくとも第1の密封層7b1と第2の密封層7b2とを有し、第1の密封層7b1と第2の密封層7b2との間に、該密封層7bよりも高いガスバリアー性を有する中間層7cが設けられている。すなわち、密封層7bは、多層構造を有している。
なお、中間層7cは、少なくとも密封層7bよりも高いガスバリアー性を有する材質であることが必要であるが、より好ましくはさらに摺動層7a以上の高いガスバリアー性を有する材質である方がよい。
【0044】
密封層7bにバリアー層である中間層7cを設ける場合は、一例として密封層7bとしてスチレン系エラストマーのシートの中間にガスバリアー層としてEVOH樹脂の中間層7cを積層する。この場合の中間層7cの厚さは、密封層7bの10%以下に調整する。中間層7cを厚くすることによりライナー7のガスバリアー性を高めることが出来るが、コストが上がるためである。この密封層7bの積層シートの厚さは、0.2mm〜1.0mmとされる。この厚さ範囲とした理由は、この厚さが薄すぎると密封効果がみとめられない場合があると共に、厚すぎるとコストが高くなると共に適切なキャッピングが困難になるためである。
【0045】
上記第1の密封層7b1は、第2の密封層7b2より口金部3側に配され、その厚さが、第2の密封層7b2と同じ又は該第2の密封層7b2よりも薄く設定されている。
なお、ライナー7が口金部3に接する部分である第1の密封層7b1の厚さが20μm以上であると共に、中間層7cと摺動層7aとの間に介在する第2の密封層7b2の厚さが150μm以上であり、合計が200μm以上であることが好ましい。例えば、第1の密封層7b1の厚さを50μmとし、第2の密封層7b2の厚さを300μmとしてもよい。ただし、製造上は第1の密封層7b1と第2の密封層7b2との厚さを同じに設定することで第1の密封層7b1と第2の密封層7b2との区別が不要になるが、上記理由により、第1の密封層7b1を薄く設定することが好ましい。
【0046】
上記密封層7bは、スチレン系エラストマーで形成することが好ましい。
すなわち、密封層7bの密封材としては各種エラストマーが適しているが、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが価格面、耐熱面、摺動層との接着性、成形性等で適切である。特に、レトルト処理を考慮するとスチレンブロックコポリマーとPP樹脂と流動パラフィン等の柔軟材とのブレンドであるスチレン系エラストマーが好ましい。
なお、第1の密封層7b1と第2の密封層7b2とは、互いに同じ材料で形成しても良く、異なる材料で形成しても構わない。いずれの場合も、摺動層7aより硬度の低い樹脂を密封層7bとして使用することが重要である。
【0047】
上記エラストマーに使用されるTPS(スチレン系エラストマー)は低MFR(230℃−5kgで0.01g/10min以下のもの)のSEBS(スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン)又はSEPS(スチレン・エチレン−プロピレン・スチレン)である。SIS、SBS、SIBS等の他のSBCは耐熱性が不十分でレトルト処理には耐えられない。このレトルト可能なTPS(スチレン系エラストマー)に使用される柔軟材としては、流動パラフィンが一般的であるが、ポリブテン等も使用できる。
【0048】
上記中間層7cは、ガスバリアー性樹脂又は金属箔で形成されている。
特に、中間層7cにガスバリアー性樹脂を採用する場合には、ナイロンMXD6で形成することが好ましい。
すなわち、中間層7cとして密封層7bに挿入するバリアー材はEVOH樹脂、PA(ポリアミド樹脂:ナイロン)、PAN(ポリアクリロニトリル)等の有機バリアー樹脂が好ましく、特にナイロンMXD6が好ましいが、アルミニウム、鉄、スズ等の金属箔でもよい。この場合、摺動層7aとしては密封層7bと接着させるためPP樹脂であることが望ましい。
【0049】
このライナー7用のシートの成型は幾つかの方法があるが、例えば三層Tダイ押出機を使用して、エラストマー層(第1の密封層7b1)/バリアー層(中間層7c)/エラストマー層(第2の密封層7b2)の構成のシートを作製し、これを摺動層7aとしてのシートに接着させる方法がある。この場合、摺動層7a(例えばPP樹脂層)を押出溶融させながら接着する方法、あるいは予め摺動層7aのシートを作製し、これに接着材層を押出機で押出ながら密封層7bと摺動層7aとを接着させる方法がある。その他幾つかの方法が考えられるが、設備等により最適方法が選ばれる。
【0050】
このように上記中間層7cを挟んだ密封層7bをPP樹脂層の摺動層7aに積層し、この積層シートをディスク状に打ち抜いてキャップシェル6の内面と接するようにキャップシェル6に入れる。
なお、ディスク(ライナー7)の大きさは、キャップシェル6の内側に向かって形成されている係止突起より大きく、かつキャップシェル6のライナー設置部の内径よりも小さく設定され、ライナー7がキャップシェル6より外れないが、自由に回転できる大きさで無ければならない。
【0051】
上述したように、中間層7cとして金属箔を使用することも可能である。この場合は、中間層7cの両面に合成樹脂膜が構成されていることが重要である。この合成樹脂膜は、第1の密封層7b1及び第2の密封層7b2と強固に接着することが重要である。なお、この合成樹脂膜は、第1の密封層7b1と密着する部分と第2の密封層7b2と密着する部分と同一の構成であっても良いし、別々の構成であっても良い。
【0052】
例えば、金属箔である中間層7cの両面をPP樹脂でラミネートしてあっても良いし、あるいは両面をエポキシフェノールの塗料を焼付塗装してあっても良い。この場合、塗料には密封層7bと接着するために変性オレフィン樹脂等を添加していることが好ましい。例えば、厚さ0.02mmのアルミニウム箔の両面にエポキシフェノールの塗料を塗布し、焼付け乾燥させる。このとき、エポキシフェノール塗料に変性ポリプロピレン等の変性オレフィン樹脂を5〜30%添加した塗料をこのアルミニウム箔に片面又は両面塗装する。
【0053】
さらに、この両面にTPS(ポリスチレン系エラストマー)のシートを貼合する。この積層シートの片面にPP樹脂シート等の硬い樹脂を貼合する。これを上述と同じようにディスク状に打ち抜き、キャップシェル6に挿入する。この場合、重要なのはPP樹脂面をキャップシェル6と接する面になるように挿入する。
【0054】
さらに別のタイプとしては、上述の塗装アルミニウム箔を、例えば厚さ0.5mmのTPSシートの両面にラミネートする。これをディスク状に打ち抜き、キャップシェル6に挿入し、これにインシェルモールド方式によりTPS等のエラストマーを第1の密封層7b1として形成することが出来る。この方法はキャップシェル6が金属でも樹脂キャップでも同じである。この場合、アルミニウム箔のキャップシェル6との接する部分もPET樹脂フィルム等の貼合、又は合成樹脂塗料を付与してあることが望ましい。これは、アルミニウム箔単独であると滑りが悪く、開栓時のコントロールが難しいためである。
【0055】
このように本実施形態のライナー付きキャップ1は、第1の密封層7b1と第2の密封層7b2との間に、該密封層7bよりも高いガスバリアー性を有する中間層7cが設けられているので、一般にガスバリアー性の低い柔軟な材質で形成される密封層7bの中間にガスバリアー性の高い中間層7cが挿入されることで、口金部3のザラツキや凹凸等に対応した十分な密封性が得られる密封層7bの厚さを確保しつつ密封層7bを透過する酸素等のガスの少なくとも一部を中間層7cで遮断して高いガスバリアー性を得ることができる。
【0056】
特に、第1の密封層7b1が、第2の密封層7b2より口金部3側に配され、その厚さが、第2の密封層7b2と同じ又は該第2の密封層7b2よりも薄く設定されているので、第2の密封層7b2に対して同じ厚さ又は薄い第1の密封層7b1により口金部3のザラツキや引っ掻き傷等に対して十分な密封性能を発揮可能であると共に、第1の密封層7b1に対して同じ厚さ又は厚い第2の密封層7b2により口金部3の大きな凹みや凸部に対しても十分な密封性能を発揮可能である。さらに、厚い第2の密封層7b2を透過する酸素等のガスがガスバリアー層である中間層7cによって遮断されると共に第1の密封層7b1が薄く、透過する酸素等が大幅に少なくなるため、高いガスバリアー性を得ることができる。
【0057】
また、中間層7cを、EVOH樹脂(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)等のガスバリアー性樹脂で形成することで、押出成形で中間層7cを形成することができ、低コストであると共に生産性に優れている。
さらに、中間層7cを、ナイロンMXD6で形成することで、レトルト処理が行われたときに酸素や炭酸ガスに対してEVOH樹脂やPET(ポリエステル)樹脂、ナイロン6等のバリアー樹脂よりも優れたガスバリアー性を得ることができる。
【0058】
また、中間層7cを、アルミニウム箔等の金属箔で形成することで、非常に高いガスバリアー性を得ることができる。
また、密封層7bを、低MFRのSEBS(スチレン・エチレン−ブチレン・スチレン)とPP(ポリプロピレン)樹脂と流動パラフィン等のブレンドであるスチレン系エラストマーで形成することで、レトルト処理に耐えるライナーが得られる。
このように、本実施形態のキャップ1を備えたキャップ付きボトル8では、良好な開栓性、密封性及びガスバリアー性に優れ、特に口金部3のザラツキ、擦り傷だけでなく凹凸にも対応して密封性を確保できる。
【実施例1】
【0059】
次に、本発明に係るライナー付きキャップ及びキャップ付き容器を、実際に作製した実施例により評価した結果を、具体的に説明する。
本発明の実施例として、上記本実施形態のライナー付きキャップを次のようにして作製した。
【0060】
まず、ライナー材として密封層は共押出しにより、両側にエラストマー(TPS等)の層で挟んだナイロンMXD6またはEVOH樹脂層を構成する。このナイロンMXD6、EVOH樹脂とTPS等とを接着させるために変性オレフィン樹脂を挿入させてシートにする。従って、このシートはTPS/接着材層/ナイロンMXD6またはEVOH樹脂層/接着剤層/TPSの構成になる。
【0061】
これはバリアー層である中間層がPAN(ポリアクリロニトリル)等の他のバリアー樹脂でも同様である。このシートの厚さを0.4mmに設定し、中間層の厚みを全厚の10%(0.04mm)とした。これをPP(ポリプロピレン)シート(厚さ0.6mm、接着剤層も含む)に貼合した。この貼合は、PP(ポリプロピレン)樹脂を接着剤としたポリサンドラミネート方式により貼合した。このシートをφ37.6mmのディスク状に打ち抜き、呼び径38mmアルミニウム製PP(ピルファープルーフ)キャップのキャップシェル6に挿入した。
【0062】
上述したように、ボトル缶、ガラスビン、PETボトル等の容器には密封性を阻害する欠点があるが、その主なものは口部の僅かなす擦り傷、グイチと金型の合わせ部に生成される僅かな凸部や、ボトル缶のように口部を絞られながら成型される場合の塗料のシワ等が、モレの原因に繋がる。また、ビン口の擦り傷等の欠点のほかに口部全体の平滑度が充分でなく、全体的に僅かに広く凹んでる場合がある。この場合、特に広口容器に発生し易い。このため、本実施例では、供試した呼び径38mmアルミニウムボトル缶の口部の欠点を、ビン口の擦り傷等の僅かな凹凸(小欠点)と、口部の0.5mm以内の全体的な凹み(大欠点)との2種類に分けて本発明のライナー付きキャップの評価を行った。
【0063】
本発明の実施例として、内外面を合成樹脂で塗装したアルミニウム板を呼び径38mmキャップのシェルに成型し、実施例のライナー材として摺動層と多層の密封層と中間層とで構成されたライナーとし、このライナーを備えたアルミニウムボトル缶のキャップとして評価した。
【0064】
<実施例、比較例>
内外面を合成樹脂で焼付け塗装した厚さ0.24mmのアルミニウム板を、呼び径38mmPP(ピルファープルーフ)キャップのキャップシェルに成型し、これに本発明のライナーとして、両面TPS(スチレン系エラスストマー)でバリアー樹脂としてPA(ナイロンMXD6)またはEVOH樹脂の3層(正確にはバリアー樹脂とTPS(スチレン系エラスストマー)層の間に接着材層があるので5層)のシートを成型し、これに摺動層としてPP(ポリプロピレン)樹脂のシートを貼合したものを供試した。
【0065】
このときの密封層の構成層としては、容器口部と接する層を第1の密封層とし、摺動層と接する部分を第2の密封層とし、各々の厚さが異なるものを数種類作製した。バリアー層である中間層としては、PA(ナイロンMXD6)及びEVOH樹脂を使用した。
これを直径37.6mmのディスク状に打ち抜いてキャップシェルに挿入し、密封性、ガスバリアー性その他を評価した。
【0066】
また、これらを、ビタミンCが約400ppm入った水溶液を275ml充填した口径38mmのボトル缶(300ml入り)にキャッピングした。キャッピングはヘッド圧を1000Nで行なった。このキャッピング直前には、ヘッドスペース部に液体窒素を滴下し、内圧がほぼ100kPaになるように調整した。これを123℃−20分のレトルト処理を加え、60℃恒温室に保管し、以下の評価試験を実施した。
なお、本発明の実施例及び比較例のライナー材は必要に応じ、着色材、安定剤、滑剤が添加されている。
【0067】
<評価方法>
口径38mmボトル缶の口部の欠点を、小欠点品(ボトル缶口唇部の引っ掻き傷等)と大欠点(0.5mm程度の口唇部の凹み)との2種類に分け、各々に本実施例のキャップと比較例のキャップとについて評価を行った。
【0068】
(酸素バリアー性)
酸素透過によるビタミンCの減少量を調べるために、レトルト1日後ビタミンC量を測定し、これをさらに60℃恒温室に1ヶ月放置の促進試験を行い、そのビタミンCの変化量を自動電位滴定装置で調べた。なお、試料数は各3である。
・評価 ◎=減少率≦5%、○=5%<減少率≦8%、△=8<減少率≦15% ×=減少率>15%。
【0069】
(耐落下性能)
上記で充填、レトルト処理したボトル缶に対して、レトルト前後の内圧を測定し、モレの有無を確認した。さらに、漏れが認められないものに対して、倒立状態で高さ20cm及び30cmから傾斜角10°の面を持った鉄板に垂直落下させた後、内溶液のモレ、及び内圧変化により、モレの有無を確認した。
・評価 ◎=30cm落下でモレ無し、○=20cmで漏れないが30cmで漏れが認められたもの、△=レトルト処理では漏れないが20cm落下で漏れが認められたもの、×=レトルト処理で漏れが認められたもの。なお、試料数は各10である。
【0070】
(開栓トルク)
上述の充填レトルト処理品を、60℃恒温室に1ヶ月放置後取り出し、開栓トルクを測定した。この測定は、キャップが回転するのに必要なトルク値(第1トルク)を測定した。なお、アルミニウムのブリッジが切れるときのトルク値(第2トルク)は除いている。この開栓トルクは適正な範囲があり、高すぎると開栓が困難になり、低すぎると輸送途中、取り扱い途中でキャップが緩み、漏れが発生する可能性がある。したがって、評価は、次のように行った。
・評価 ◎=50N・cm<開栓トルク≦150N・cm(最適正トルク値)、○=150N・cm<開栓トルク≦200N・cm(やや高いトルク値)、○=30N・cm≦開栓トルク≦50N・cm(やや低いトルク値)、×=開栓トルク>200N・cm(高すぎるトルク値)、×=開栓トルク<30N・cm(低すぎるトルク値)。
【0071】
【表1】

【0072】
表1中の密封層の層構成について、「内容物面側」から「摺動層面側」まで、例えばTS(μm)/EV(μm)/TS(μm)の順で記載している。
表1中の表記は、以下の通りである。
TS1=TPS(スチレン系エラストマー)
=PPとSEPS(MFR=0.00)と流層パラフィンとのブレンド物
TS2=TPS(スチレン系エラストマー)
=PPとSEBS(MFR=0.00)と流層パラフィンとのブレンド物
EV=EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)
PP=ポリプロピレン樹脂
PA=ポリアミド樹脂(ナイロンMXD6)
Al=アルミニウム箔
【0073】
ボトル缶は、欠点別に分け、次の2種類を供試した。
1)口部微小傷=天面の僅かな引っかき傷、塗料シワのボトル缶に対するシール性。
2)口部変形=口部が僅かに変形(0.5mm程度の凹み)のボトル缶に対するシール性。
なお、これら供試ボトル缶は、両方の欠点を同時に持たないものである。
【0074】
酸素バリアー=ビタミンCの減少率を測定(試料数各3の平均値)。
耐落下衝撃性能=充填品を10°角の鉄盤上に20cm、30cm高さから倒立落下、モレの有無を測定。試料数は各10である(10個中1個でも漏れが有ればその試料はモレとした。)。
開栓トルク値=トルクメーターで測定。なお、第1トルク(開栓時動き始めるトルク値)のみ測定した。
【0075】
<実施例の評価結果>
・実施例1の評価
第1の密封層がやや薄いために微小傷に対して酸素バリアー性がやや劣るが、使用可能な範囲であった。
・実施例2の評価
第1の密封層がやや薄いが、バリアー層である中間層としてPA樹脂を使用した場合、微小傷にも良好なバリアー性を示すという結果であった。
・実施例3の評価
第1の密封層がやや厚くなると、微小傷に対しても中間層のバリアー材がEVOHでも、バリアー性は良好な結果であった。
・実施例4の評価
第1の密封層がやや厚くても第2の密封層が薄いと、変形ボトルに対しては酸素バリアー性、耐落下衝撃性はやや劣るという結果であったが、使用可能な範囲であった。
【0076】
・実施例5の評価
第1の密封層がやや厚い場合、第2の密封層をやや厚くすると、酸素バリアー性、耐落下衝撃性が良好という結果であった。
・実施例6の評価
密封層のエラストマーの構成を、SEPSからSEBSに変えて実施例5と同一の構成で評価したが、ほぼ同一の結果が得られた。
・実施例7の評価
第2の密封層がやや薄くても第1の密封層がやや厚いと、酸素バリアー性、耐落下衝撃性は良好であるという結果であった。
・実施例8の評価
第2の密封層が薄くても第1の密封層が厚いと、酸素バリアー性、耐落下衝撃性は良好であるという結果であった。
・実施例9の評価
バリアー層である中間層として20μmのアルミニウム箔を使用しても、酸素バリアー性、耐落下衝撃性は良好であるという結果であった。
【0077】
<比較例の評価結果>
・比較例1の評価
バリアー層である中間層が無いと、密封層が厚くても酸素バリアー性は劣るという結果であった。
・比較例2の評価
摺動層をガスバリアー性樹脂で形成した場合、酸素バリアー性はやや劣る程度であったが、開栓トルクが使用限度を超えるという結果であった。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…キャップ、2…ボトル本体(容器本体)、3…口金部(口部)、4…天板部、5…筒状周壁部、6…キャップシェル(キャップ本体)、7…ライナー、7a…摺動層、7b…密封層、7b1…第1の密封層、7b2…第2の密封層、7c…中間層、8…キャップ付きボトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部を封じるライナー付きキャップであって、
天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、
前記天板部の内面に設けられたライナーと、を備え、
前記ライナーが、前記天板部の内面に接して配された摺動層と、
該摺動層に積層され前記摺動層よりも柔軟な密封層と、を備え、
該密封層が、少なくとも第1の密封層と第2の密封層とを有し、前記第1の密封層と前記第2の密封層との間に、該密封層よりも高いガスバリアー性を有する中間層が設けられていることを特徴とするライナー付きキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のライナー付きキャップにおいて、
前記第1の密封層が、前記第2の密封層より前記口部側に配され、その厚さが、前記第2の密封層と同じ又は該第2の密封層よりも薄く設定されていることを特徴とするライナー付きキャップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のライナー付きキャップにおいて、
前記中間層が、ガスバリアー性樹脂で形成されていることを特徴とするライナー付きキャップ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のライナー付きキャップにおいて、
前記中間層が、金属箔で形成されていることを特徴とするライナー付きキャップ。
【請求項5】
請求項3に記載のライナー付きキャップにおいて、
前記中間層が、ナイロンMXD6で形成されていることを特徴とするライナー付きキャップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のライナー付きキャップにおいて、
前記密封層が、スチレン系エラストマーで形成されていることを特徴とするライナー付きキャップ。
【請求項7】
容器本体の口部にキャップを装着したキャップ付き容器であって、
前記キャップが、請求項1から6のいずれか一項に記載のライナー付きキャップであることを特徴とするキャップ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−57272(P2011−57272A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211132(P2009−211132)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】